2014年6月19日

平野会長記者会見(三菱東京UFJ銀行頭取)

髙木専務理事報告

(なし)

会長記者会見の模様


(問)
 法人向けインターネット・バンキングの被害補償のあり方についてお聞きしたい。全銀協で、現在有識者を交えた検討部会で被害補償についての考え方を整理し、夏休みに入る前には結論を出す方向と伺っているが、現在の検討状況を伺いたい。
(答)
 前回の記者会見以降、4回検討部会を開催し、外部有識者を交えて検討を進めているところであり、夏休みに入るまでに全銀協としての考え方をまとめる予定である。したがって、今日の時点で何らかの結論が出ているわけではないが、いくつか論点があるので触れたいと思う。
 まず、法人のお客さまは、個人のお客さまとはやや異なるという点が重要であると思う。皆さまご承知のとおり、平成18年2月に施行された預金者保護法にもとづいて、偽造・盗難カードに対する補償の枠組みが法的に導入された。民法478条の債権の準占有者に対する弁済という規定があるが、それに対する例外規定を法律で作ったという構成である。この法については、当時も議論があったと聞いているが、個人のお客さまの場合には、消費者保護の観点から通常、法で認められている、あるいは求められている以上の対応が必要であろうという趣旨であり、したがってその時点で明らかに法人は対象外とされた立法の経緯がある。そのうえで、個人のお客さまについては、原則補償ではあるが、軽過失があった場合は75%に留め、重過失があった場合には補償しないこともありうるという運用がなされている。その考え方に立ち、延長線上で、インターネット・バンキングについて個人のお客さまに対する被害の補償が行われている。実績については、私ども全国銀行協会でも定期的に報告しているとおり、かなり高い補償率になっている。
 法人に関して何が違うかという点は、基本的には、いわゆる商取引のプロである、個人のお客さまに比べてリスク管理能力も高いものを持っておられるということである。そういう属性を持った法人に対して補償する場合、なぜするのかという合理性の論点がまず最初にある。
 また、いわゆる業界団体が法に定められていないようなケースについて補償を申し合わせるとなると、独禁法上の問題を生じる可能性もあるので、ここは点検を要するところと考えている。
 個人のお客さまについても、法で定められていないインターネット・バンキングの被害補償について一定の申し合わせを行っているが、これについては公正取引委員会とも相談したうえで申し合わせている。今回、もし法人について何らかの対応を行うということになれば、やはり公正取引委員会への相談は必要と思っている。
 いずれにしても、前回も申しあげたが、インターネット・バンキングにおける被害に対しては、まず私ども金融機関がセキュリティレベルの向上に向けての取組みをしっかりと行う。そしてお客さまに対しても、日々新たなインターネット犯罪が発生しているという状況を十分に説明し、お客さまサイドにおける備えを十分にとっていただき、そのうえで、仮に我々金融機関の想定を超えるような被害が発生するのであれば、それについて何らかの補償を行うというのが、一つの考え方としてありうるのではないかと考えている。


(問)
 いわゆる成長戦略、日本再興戦略の改訂に向けた素案が先に公表されている。銀行界には日本企業の稼ぐ力を高めていくうえで、成長資金を供給する役割が期待されていると思うが、今回の成長戦略の改訂案に対する評価と成長戦略の実現、実行に向けて、銀行界としてどのように取り組んでいくのか、お尋ねしたい。
(答)
 まず成長戦略の評価である。
 現在、日本再興戦略の改訂版について、最終的なとりまとめの作業が進んでおり、いくつかの施策が報じられている。それをベースにお話したい。
 一言で申しあげると、現在検討されている諸施策は、安倍政権の3本の矢の第3弾である成長戦略、これが最も実体経済あるいは国民経済にとって重要な施策であるが、その3本目の矢の着実な前進を感じさせる内容ではないかと考えている。
 特に、日本経済の中長期的な成長に資するという観点から三つコメントしておきたい。まず一つは法人実効税率の引き下げ、二つ目が雇用・労働市場の改革、三つ目が医療・介護の成長産業化である。
 法人実効税率については、ご承知のとおり、わが国の法人実効税率が他国に比べて高く、20%台への引き下げ、できれば25%が望ましいのだろうが、これを打ち出してくるのだろうと思う。これにはおそらく二つの意味がある。1点目は、日本企業の今後の成長を促進するという観点であり、新たな投資や事業活動の活発化に対するインセンティブを得られるということ。2点目は、いわゆる立地競争力の観点から、日本の弱点といわれているのがこの点であり、海外からの投資を日本に呼び込む場合にも制約になっているということ。したがって、日本の企業活動をより促進し、かつ、海外からの事業投資を促進するという、二重の効果があるのではないかと期待している。
 二つ目は雇用・労働市場の改革である。少子高齢化が進むなかで、いかに働き手を確保していくかを考えるうえでは、女性、シニア層、外国人等の活躍できる環境整備、あるいは働き方の多様化が求められている。その意味で今回の改革はその第一歩と考えており、前向きに評価して良いのではないかと思う。
 もう1点、ホワイトカラーエグゼンプションと呼ばれている労働時間規制の改革についても、より創造的な働き方、あるいは生産性の高い働き方をしていくという意味では、特に金融界におけるプロフェッショナルの能力をより高め、彼らの仕事に対する意欲、自らの成長を促進するための働き方を可能にするという意味で、極めて重要ではないかと考える。当然この点については、過重労働や健康管理の問題等があり、適切な手当を講じる必要があるが、基本的には前向きに捉えるべきと考えている。
 三つ目の医療・介護の成長産業化であるが、これも二つの観点から考えてみたい。まず1点目は、徐々に高齢化社会が進むなか、医療・介護の充実が必要だが、同時に、シニア層がいかに活き活きと生活できるかを考えるうえでは、単純に高度医療を取り入れるだけでなく、予防医療、あるいは健康管理・増進に向けた努力も重要であり、双方が盛り込まれているという点である。2点目は、成長戦略と同時に財政の再建も考えなくてはならないという意味でも、医療・介護改革というのは、社会保障支出の抑制にも繋がり得るのではないかと、あわせて期待している。
 以上、三つだけ取りあげたが、今回の施策では、一つの項目のなかに、いろいろな副次的効果も期待できるような施策が含まれており、これからの日本の持続的な成長に向け、大きなステップを踏み出すことができる可能性があると思っている。ただし、実効性をいかに確保するかという観点からすれば、これから各論の詰めが残っており、一段と努力していただきたいし、我々も注目していきたい。
 次に銀行界としての取り組みである。
 就任会見の際にも申しあげたとおり、金融機関は実業、実体経済を支える社会インフラである。したがって、今回の成長戦略のなかに盛り込まれた様々な施策について、私どもができることを、精一杯やっていきたいと考えている。端的にいえば、個人の金融資産をいかに日本の成長に結びつけることができるかという観点からは、現在、NISAが注目を集め、かつ成果をあげつつあるが、これらへの取組みや、安定的で長期的な、家計金融資産の形成を支援するような試みを続けていきたいと思う。同時に、各企業や産業、とりわけ成長事業・産業の発掘や育成に向け、積極的な融資活動にも取り組んでいきたいと考えている。
 また、財政の問題とも関係するが、PFIあるいはPPPも今回の成長戦略に盛り込まれると思う。こうした新たな領域にも注力していきたいと考えている。
 最後に、金融機関の決済システムの高度化というテーマがある。全銀システムの更改期にあたっているため、「全銀システムのあり方に関する検討部会」を通じて検討を続けているが、このなかで決済時限の延長、あるいは金融EDI、商流情報の取込み等に関する検討にも着手したところであり、それらも含め、銀行界として政府の成長戦略に積極的に関与し、協力をして参りたい。


(問)
 ネットバンキングについて伺いたい。
 まず、預金者保護法が対象としているスキミングや盗難カードの預金の不正送金や、個人のネットバンキングは、基本的には民法478条の例外ということで、銀行側の無過失責任という建付けだと思う。今年に入って個人も法人も非常な勢いで被害が増えていて、これだけ同時多発的に被害が出ているという状況は、銀行が提供しているシステムに瑕疵があって、無過失責任という建付け自体が揺らぐというか、過失はある程度あるのではないかという考え方もあるかもしれないのだが、その無過失責任という考え自体を変えないのか、そこがもし過失があるという考え方になった場合、個人、法人問わず銀行の補償に対する考えが変わってくるのではないか。
 また、個人と法人を区別されるということだが、預金者保護法自体も厳密にいうとネットバンキングは対象外であって、そこは、その法の趣旨に則って、消費者保護の観点からも原則補償をするという運用が積み重ねられてきた経緯があると思うが、その趣旨からいうと、預金者保護法も個人を対象としているが、必ずしも法人を除外しているということではなく、つまりセキュリティ対策が十分に施せない零細事業者は実質的に個人と変わらないようなケースもあると思えるので、そこの個人と法人を峻別するというのは、そもそも預金者保護法の観点からは導き出せないのではないかという意見もあると思うのだが、そこについてお伺いしたい。
 そして、重ねて恐縮だが、独禁法上の問題、公正取引上の問題は、預金者保護法が必ずしも個人のネットバンキングの被害補償について根拠法があるわけではないので、それについて公正取引上の問題が生じてない以上、何故、法人について独禁法の問題が生じるのか。
(答)
 まず1点目だが、そもそもこれだけの被害が個人・法人を問わず拡大しているということは、インターネット・バンキングを提供している銀行の過失があるとする見方もあるのではないかというお尋ねだと思う。インターネット・バンキングは、利便性、即時性、コストが掛からないといったいろいろな意味で社会の決済インフラとして定着してきたわけだが、インターネットやサイバーの世界においては様々な犯罪が発生している。これは国家レベルでも発生しているし、民間レベルで企業情報が盗取されるというケースもある。そういったインターネットの世界における犯罪行為として全体をとらえることができると思う。
 ただ、今申しあげたように、その利便性の高さからすでに社会インフラ化しているこのシステムを維持し、さらに高度化していく必要があるという考え方が基本にある。
 したがって、私ども金融業界は商品の提供者として、その時点における最高レベルの商品をお客さまに提供する必要があると考えている。また、日本の国内の犯罪だけではなくて海外においてどういう類型の犯罪が発生しているのかを即時に把握してそれを自らの対策に役立てていく努力が必要だと思う。
 そうした観点では、二つに分けて考える必要がある。まず一つは、銀行自身のシステムのセキュリティ対策である。これについては、高いレベルのセキュリティが過去数年間の蓄積によって日本の金融機関において確立されてきていると思う。現に、大規模な金融機関のシステム自体にインターネットの問題や侵入といったことはこれまで起こったことはない。かなり大規模な攻撃は来ているが、これを防いできたということである。
 一方でお客さま側において、本来インターネットユーザーに対応いただかなければならない備えを必ずしも十分にご認識いただけておらず、したがって対応をお取りになっていないケースがあり、そうしたなかで昨年来のインターネット犯罪が急増してきたとも言える。
 したがって、私ども金融業界では、自分自身の備えは当然のこととして、お客さまにおけるセキュリティ対策をいかにしっかりとっていただくかということについて、4月の通達、あるいは5月の申し合わせのなかでお伝えしてきた。細かい内容については触れないが、例えば、銀行としては、ワンタイムパスワード、あるいは電子証明書のICカードへの格納、あるいは事前に登録されているお客さま以外には当日の振り込みを停止するといったいくつかの対策をとっている。お客さまにおいても、OSはサポート終了を迎えていないようなシステムを使っていただく、インターネットのセキュリティソフトについては最新のものに更新していただくといった努力をしていただくということだと思う。それを積み重ねることによって被害を極小化していくことを今後も続けていきたいと考えている。
 2点目の、小規模な事業者に関し、個人と法人とをはっきり分けられるのかというご質問だが、ご趣旨は理解できる。そういう角度からの検討も含めて、外部有識者も交えた検討を進めているところである。確かに、ITのトップを走る企業と家族経営の法人とで、インターネットのセキュリティの備えが全く同じではないかもしれない。おそらく、いくつかの要素を総合的に判断して最終的に補償、非補償という判断をすることになると思う。これについては検討部会の作業の進展を待ちたいと思っている。
 3点目は、法律にもとづかずに補償に応じている個人のインターネット・バンキングについてとりたてて公正取引上の問題がないのに、なぜ法人にはあるのかというご質問だが、問題があってはいけないので、私ども業界団体として補償について何らかの対応をするのであれば、その対応に疑義がないようにしなければならないということである。


(問)
 ネットバンキングの不正送金について、直近で銀行の被害状況はどのくらいの規模なのか。また、昨年末から日本の銀行を狙った不正行為が急増した理由をどのように把握しているか。
(答)
 まず被害状況だが、5月15日の警察庁からの公表によると、5月9日までで14億1,700万円を超え、昨年1年間の被害総額14億600万円を上回ったとの報道がなされている。
 私どもでも被害の数値を公表しているので申しあげると、個人は昨年1月~3月の36件/6,100万円に対し、今年の1月~3月は、356件/5億3,000万円であった。法人は、昨年1月~3月の1件/400万円に対し、今年の1月~3月は21件/1億4,000万円であった。したがって、前年対比で急増しているといえる。昨年の第3四半期、すなわち10月~12月に比べても増えている。
 なぜここにきて増えてきたかという点だが、明快な答えは難しい。この種の犯罪は海外から始まっているケースが多く、徐々に日本の市場に狙いをつけてきているという感覚はある。もう一つは、自戒の念をこめて言うが、セキュリティ対策で犯罪者にすきをみせると、一種のビジネスになるという感覚で、攻撃が増えることになりかねない。インターネットにおける様々なセキュリティ、あるいは日本だけでなく海外における犯罪の現状等もリアルタイムで把握したうえで対策を迅速に講じていく、お客さまにもご協力いただく、これを繰り返すしかないのではないか。私ども銀行もディフェンスを固め、お客さまにもお伝えしてディフェンスを固めていただくことが重要だと考えている。


(問)
 結果として、他国に比べて日本のネットバンキングはセキュリティ対策で一歩遅れた部分があったというご認識か。
(答)
 必ずしもそうは思っていない。学ぶべきものがあるのであれば、貪欲に学ぶべきだということを申しあげている。


(問)
 昨今のアメリカの当局による欧州金融機関への制裁金について伺いたい。特に最近ではBNPパリバ等に対し、経済制裁国との違法行為についての罰金や、ドル建ての決済を禁止するようなことを検討中と司法省が言っているようだが、そういったアメリカの当局によるペナルティについてどう見ているか。司法省だけでなくOFAC等も含め、ご見解をいただきたい。
 御行として、そのような制裁金に対する法務関連費用として引当金といったものは積んでいるのか。
(答)
 大変お答えが難しい質問と言わざるを得ない。
 まず、基本を申しあげれば、銀行はとりわけ公共性が高い産業である。かつマネー・ローンダリングとか、その他の犯罪の温床にもなりかねず、場合によっては犯罪者に利用されてしまうということがある。したがって、各国におけるコンプライアンスルールを厳しく遵守していくことが一番重要。そのための体制作り、あるいは事業運営の方針、非常にリスクが高い領域だということを理解したうえで体制を作り、事業を行うという姿勢が重要と考える。
 海外主要銀行のなかには、決済ビジネスを縮小する動きもあるが、これでは本来金融機関が担っていかなければならない社会的な使命、とりわけ国際的な資金の流れを阻害することになりかねないので、この点をいかに克服できるかが課題と考えている。
 他行の個別事例に言及するのは難しいが、コンプライアンスに関しては、グローバルな動き、そして各国・地域における固有の事情があるので、これらに対していかにアンテナを高くできるかがテーマであろう。今たまたまアメリカが注目されているが、必ずしもアメリカだけではなく、ヨーロッパでも起こりうるし、アジアでも起こりうる。それに対して我々は十分な備えをする必要があるということである。
 引当をあらかじめ積んでいるかということであるが、私どもは内容を開示していないので、一般的な金融機関のルールについて申しあげれば、具体的に損失の金額が確定する、あるいは予見可能性がない限り、あらかじめ引当金を積むのは難しい。


(問)
 先月、自民党の日本経済再生本部が日本再生ビジョンを提出して、そのなかでコーポレートガバナンスの一環として株式の持合いの解消という部分がある。銀行は株式をここ何年間も削減してきており、それによる弊害も一方で出てくると思うが、会長として株式の持合い解消をどう見ているか、ご見解を伺いたい。
(答)
 日本の金融機関における政策投資株式、取引先の株式を保有するという長く続いた取引の形態については、やはりよく考えて対処しなければいけないというのが、回答である。
 この問題には二つの側面があり、一つは、銀行自身のリスク管理の問題。記憶に新しいところだが、リーマンショックの直後、日本の経済に大きな打撃を与えたのは、円高と株安の二つであり、前者は産業に、後者は銀行に打撃を与えた。これは政策投資株式が大幅に値下がりし、それに伴う減損が発生したため決算に極めて甚大な影響を与えたものである。この問題は、それ以前にも金融危機の際に生じたことがあり、それを踏まえて政策投資株式の保有制限が立法化され、自己資本の範囲内での保有というルールができた経緯がある。
 その後、相当なピッチで各金融機関は政策投資株式を削減してきており、例えば三菱東京UFJ銀行の場合は、普通株Tier1の3割ぐらいまで下がってきている。また、単純に保有を落としただけではなく、最近はリスクヘッジのための様々なツールもある。よく使われるのはトータル・リターン・スワップだが、そういったもので価格変動リスクを抑え、オプションを使えば減損リスクを低減させることができ、そういうことを、それぞれの金融機関が工夫している。したがって、リスク管理の観点から、今大きく方針を変更し、急速にこれを削減しなければならないということは、多分ないだろうと思う。ただし、もちろんリスクはある。そのため、お客さまとの関係のなかで、総合的に過大でないかどうか各金融機関とも検討を続けていくことになると思うが、一段落していると考える。
 もう一つの観点が、持合いに関して言われる、ものを言わぬ株主という点。これは、もう一つ別の流れで、現在、スチュワードシップ・コードが推奨されており、主要な機関投資家、保険会社その他もこれに賛同ということで、いわゆる株主としての責任を果たすということ。銀行も株式を持っている以上は、そういう責任があると思う。したがって、それを意識した運用をする必要がある。もちろん、債権者と株主であるということは、場合によっては利益相反を生じる懸念もあるため、社内における厳格な運用が必要になるのは当然だが、お客さまとの総合的なリレーションのなかで株式を持つ、融資をすることについて、銀行として適切な対応を、債権者・株主として努力していく必要があると思っている。


(問)
 成長戦略の関連で2点伺いたい。東京都が国家戦略特区の関係で、アジアを代表する国際金融センターにしたいとの意向を示している。全銀協の立場で、国際金融センターにするためにどういうことが必要と考えているか伺いたい。
(答)
 5月に「東京国際金融センター検討タスクフォース」を都が立ち上げた。そこに日経センター、大和総研、みずほ総研の共同提案が出され、三菱東京UFJ銀行も第1回会合に個別行として出席した。
 いくつかポイントを申しあげたい。
 まず初めに、これは頑張るべき、ということである。過去も何度か東京市場の活性化、あるいは東京市場の国際金融センター化が言われたが、なかなか上手くいかなかった。今回は、一つには東京オリンピックもあるが、安倍政権の成長戦略における金融の役割をバックグラウンドにして、もう一回、再チャレンジしようということだと思う。
 そのなかでまず大事なことは、国全体の成長がなければ金融市場は育たないということ。これは諸外国を見ればそうであり、国の経済成長があってこそ、金融市場の成長もある。例外的にそうでないところもあるが、それは逆にマイナスの効果を生むことすらある。つまり、金融市場が肥大化すると、国が金融市場を支えられなくなり、それはあってはならないこと。日本の経済と日本の金融が成長していくというのがまず大前提であることを確認したい。
 2番目に、何をするのかという中身。これまでは何をするのかが必ずしもはっきりしていなかった。それをはっきりさせ、最後に政府や東京都もしっかりコミットするということだと思う。
 その場合のもう一つの前提としては、金融、あるいは金融市場を一つの産業として見ることをコンセンサスとすること。私の持論で、金融は実体経済のサポート役で前に出てはいけないと言っているが、一方で、産業であることには違いないので、産業としてしっかり認知するというのも大事だと思う。
 中身をどうするかという点については、私見ではあるが、一つは、他の市場とどう区別化・差異化するかであり、日本の国民が持っている金融資産をいかに活用するかということだと思う。二つ目には、海外からの投資を呼び込むことも非常に重要である。内外の投資によって、日本の経済、産業、家計が、より発展し豊かになるという循環を作っていくことが大事と思う。
 次に、地域的にどこを狙うかだが、やはりアジアと思う。現在はシンガポール、香港がアジアにおける金融センターの地位にあるが、今申しあげたような日本の金融資産、あるいは日本の持っている市場としての優れた特徴、例えば、通信インフラ、交通インフラ、セキュリティ等を結びつけることで、アジアの他の市場に負けないような環境を作っていく。当然、税制も考えなければならない。
 これは以前から言われているが、アジアの企業の東京における資金調達、あるいは今注目されているアジアのインフラ資金需要。2010年から2020年で約8兆ドルといわれている巨大なインフラ資金需要を東京で調達する。そこに日本の投資家も参加するという組み立て方があると思う。
 業務的には資産運用であろう。ビジネスとしてはM&Aも重要だが、アセットマネジメントを日本はもっとやるべきだと思う。
 最近、国際会議に出ていると機関投資家、アセットマネージャーの発言力が非常に強くなっている。これまでは国際的な金融会合の中心にいて声が大きいのが投資銀行、商業銀行は数が多いが比較的静か、そして、保険会社やアセットマネージャーは影が薄かったが、昨今は、非常にプレゼンスを上げてきている。これは、世界的な金融資産の蓄積のなかで、それをどのように有効活用するのか、世界的な人口動態の変化に伴って、年金ファンドもそうであるように、運用ビジネスがより重要になってきている。相対的に既存の金融機関の機能が国際金融規制の中で低下している事情もある。つまり、日本におけるアセットマネジメント・ビジネスを強化するための市場を作り、そこに海外のアセットマネージャーたちも積極的に出てくる。それがもう一つの切り口ではないかと考えている。
 これから活発な議論が行われることを強く期待している。


(問)
 会長もメンバーになっている経済産業省の『日本の「稼ぐ力」創出研究会』が中間報告を出して、産業金融の役割が非常に大事であるということを言っている。特に企業の新陳代謝のために、銀行など間接金融がどのような役割を果たしていくべきか。
(答)
 『日本の「稼ぐ力」創出研究会』には私も何回か参加し、活発な議論がなされている。そこでの議論が今回の成長戦略のなかに幾つか取り込まれてくると思う。
 ご指摘のとおり、産業の新陳代謝をどう図っていくかが一つの論点。日本の潜在成長力は長きにわたって低下し続けてきた。人口動態の問題やデフレの問題もあるだろうが、一つ指摘されているのは、産業あるいは企業の新陳代謝が十分進まず、リソース、つまり人や資本あるいは融資などのお金が、成長性が相対的には低い、生産性が相対的に低い事業や産業に留まっていたということ。それをいかに活性化させるかが一つのテーマとなっている。
 会議ではグローバルなセグメントと地域的なセグメントの二つに分けて議論している。企業セグメントでは大企業と中小企業に分けて良いのかもしれない。大企業に関して言うと、グローバルベンチマーキングが議論されている。今の日本の産業は、日本の国内で完結しているところは、少なくとも大企業に関してはほとんどない。何らかの形で国際競争のなかで事業展開をしている。我々もそうである。そういうなかで、世界で伸び、成長性が高い、生産性が高い、将来の発展が期待できるような事業モデルはどういうモデルか、あるいは同じモデルや業態のなかでも差はあり、その原因が何かを研究しようとしている。
 これはメガバンクのなかでも、おそらく同じようなことは行っており、大企業取引に対する一種の目利き力である。どこのセグメントに融資をすればそのセグメントが成長するのか。逆のこともあり、目利きを誤ると、これまで隆としていた企業が、数年を経ずして経営危機を迎えることも起こりかねない。国際的な競争が激しく、かつ変化のスピードが早い環境のなかで、その情報を的確にシェアし、蓄積して、それを共有したらどうか、という話をしており、私どもも協力しようと思っている。ただし、あまり決めつけになってはいけない。これでなければいけないというと間違える。先端的な情報を集めてそれをベースに、産業界も、個別企業も、金融界も、個別の銀行も判断できるようなフレームワークを作れないかということを議論している。
 次に、地域、中小企業については二つある。一つ目はやはり目利き力である。先ほど大企業やグローバル企業で言ったことと同じようなことが、次元は少し違うとは言え、中小企業の世界でも起こっている。そもそも中小企業のほとんどが、日本においては、大企業とサプライチェーンで密接に結ばれており、何らかのグローバルな変化があれば影響が出てくる。加えて、ベンチャー、スタートアップの企業に対するサポートをどうするかという点もある。積極的に新しく起業する方の中から将来のイノベーションが生まれ、将来の成長産業が生まれるため、金融機関としてそこに目を研ぎ澄ますということである。
 二つ目は、中小企業については、非金融サービスが大事である。これは地域金融機関のリレーションシップバンキングの重要な要素であり、典型的には二つある。一つはビジネスの紹介であり、ビジネスマッチングという言葉を使っている金融機関も多い。お客さまとお客さまの商流を結びつける、お金ではなく商流を紹介する。もう一つは経営管理が苦手という中小企業に対して、経営管理についてのフレームワークを提供する。地域金融機関も私どもも積極的に行っている。これらは他の国にはない試みだと思う。そういうことの地道な積み重ねが、目利き力を高め、新たに将来有望な事業を始めたスタートアップ企業のサポートにもつながっていくのではないかと考えている。
 もう一つだけ新陳代謝について言うと、場合によっては、転業や廃業にも踏み込むような助言をしなければいけない局面もあるかもしれない。いわゆる金融円滑化として、企業が資金繰りに困らないようにするフェーズは終わりつつあり、次の段階は、新陳代謝をどう進めていくかである。既存の事業に限界があると思うのであれば、合従連衡や地域的な統合もあるかもしれないが、場合によっては廃業や転業の相談に乗り、そのための資産承継の相談や金融サービスを提供する、言わばトータルソリューションを提供するということであり、一部では始まっている。


(問)
 反社会的勢力の排除について伺いたい。6月4日に金融庁で反社関連の監督指針の改正が行われたが、そこでは水際チェックもさることながら、事後検証を徹底するというメッセージが見て取れたと思う。反社排除には引き続き難しい点があると思うが、どういった点に注意して対応していくのか、課題もあればその点も含めてお願いしたい。
(答)
 反社対応の問題は、今年の全銀協活動のなかの大きなテーマである。これは昨年、業界としての大きな課題として明らかになった。
 まず、入口でのチェックとそのためのデータベースをどう整備するかということ、また、途中で属性が変わったり、場合によっては入口でのチェック漏れということが考えられるので、定期的に既存のお客さまとの関係や属性を洗い直して、精度を高めていくような持続的な努力が必要なのだろうと考えている。
 出口の議論も重要であるが、この点はまだ必ずしも議論が収斂しているわけではない。どういう類型の属性の顧客に対して、どういう種類の取引を排除しないといけないのか、例えば生活口座を排除すべきかどうかという問題である。そこを金融機関としてよく考えていく必要があるということが、私の課題認識の一つである。
 もう一つの課題は、反社会的勢力の明確な定義が金融機関のなかにあるわけではないということである。金融機関はそれぞれの努力で情報を収集し、全銀協は全銀協でデータベースを構築して会員に還元する努力をしている。しかし、一番信頼性が高いと思われるのが、警察庁および各警察がもっているデータであるので、これに対して何らかの形でのアクセスを可能とし、より確度の高い情報が入手できれば、関係遮断についてもより説得力のある毅然とした対応を取ることができることになる。これについては、今、関係当局と協議をしているところであり、前進感のある成果を得たいと考えている。


(問)
 GPIFのポートフォリオについて伺いたい。この秋にもGPIFがポートフォリオを見直して国内債券の保有比率がかなり下がると見られている。銀行は大量に国債を保有しているが、そこへの影響はどう見ているのか。去年の黒田緩和以降、メガバンクを中心に国債の保有残高をかなり下げているが、今後の運用方針と合わせてご意見を伺いたい。
(答)
 GPIFの運用方針の見直しについては、いま、議論が進んでいるところである。今回の成長戦略でも、成長資金の供給という観点と将来の年金制度の維持という観点から、改革に向けて提言がなされるという理解である。
 基本的には債券比率が高いものを、弾力的に、市場環境等に応じて、バランスのとれたポートフォリオの構成に変えるという趣旨だと理解している。今の市場環境でいえば、株式の保有比率を上げるべきではないか、上げても良いのではないかという議論であり、逆に債券はリバランスされるため、売却される可能性がある。
 昨年から日銀による異次元緩和、量的質的緩和が実施され、昨年4月にはやや混乱はあったものの、日銀と私ども市場参加者との対話や、日銀による様々な対応や配慮の結果、市場は比較的安定的に推移している。
 日銀は年間50兆円以上の買い入れを進めており、仮にGPIFのポートフォリオリバランスが行われるとしても、それは吸収可能な範囲ではないかと思っている。昨年から銀行の保有する国債が日銀のポートフォリオに入れ替わる形となっているが、その動きのなかでも市場で混乱はなかった。今後も量的・質的緩和が続くなかでは、吸収可能ではないかと思う。


(問)
 成長戦略の素案について2点伺いたい。1点目は会長が先ほどご指摘された資金決済の高度化に関して、今般の成長戦略の素案では商流情報の添付拡張とともに、即時振込の24時間化が盛り込まれている。全銀システムの更新について検討を進めるなかで決済時間の延長、24時間化も大きなテーマと思うが、どういうスタンスで24時間化の検討を進めるのか。メリットとデメリット両方があると思うが、それについてどう認識されているのか伺いたい。
(答)
 4月に「全銀システムのあり方に関する検討部会」を立ち上げたが、できれば秋には何らかの素案をまとめ、何とか年内に結論を得たいと考えている。
 5月には海外の事情を見ようということで、2008年に24時間365日を導入した英国の実態調査を実施した。一言で申しあげると、英国ではファスターペイメントと既存システムの2階建て。そしてファスターペイメントのなかでも、直接参加の10行と間接参加の約270行の間で対応に差異がある。直接参加行は、基本的には24時間即時入金を実現しているが、間接参加の約270行は必ずしもそうはなっていない。また、金額の上限も10万ポンドであるし、中にはインターネット犯罪などを恐れて上限を低く設定している金融機関もある。また、24時間稼動とはいうものの、深夜時間帯、すなわち夜間12時から朝7時までの利用率は限定的、と聞いている。
 今後は、国内のお客さまがどういうニーズをお持ちかという実態調査をやろうと思っている。法人のお客さま500社、個人のお客さま3,000名を対象とするもので、これらの結果をまず見たい。そのうえでどういうオプションがあるのか、いくつかの選択肢の内どれがニーズ、あるいはコストベネフィットの観点から最適かという解を探し出そうと考えている。


(問)
 調査はこれから実施するのか。
(答)
 これからである。個人のお客さまであれば、今でもネットペイメントをクレジットカードで行っているが、それが銀行振込みでできる、あるいは週末でもリアルタイムで振込みができるようになるというメリットはあるし、法人の場合も一般の商取引は休日には行われないが、B to Cで商売を行っている法人のお客さまについていえば、個人との決済を週末もできる、夜間でもできるという点でニーズがあると思う。それがどのくらいなのかということも見てみたいと思っている。
 実際に導入するとなればそれなりの体制を作る必要があり、銀行システムとして使う以上は、安全、安定、堅牢である必要がある。こうした点を総合的に勘案して結論を導き出したいと考えている。


(問)
 さきほどアセットマネジメントの話があったが、先般の金融資本市場活性化有識者会合において、投資信託を通じた資産形成の重要性が確認され、そのなかでは商品の作り方、提供の仕方、普及のさせ方、説明の仕方等についても色々な議論がされてきた。これらを踏まえ、銀行業界でも投資信託を販売していくうえで、商品選択の仕方や、販売の仕方とかといった点において、一段と向上させる必要があると思うが、その点についてお考えを伺いたい。
(答)
 まさに日本の家計、個人の健全で中長期的な金融資産の形成が、これからの日本経済の成長および高齢化社会への備え、両面を考えたときに極めて重要だと思う。
 銀行における運用性商品の販売に関しては、これができるというのはすばらしいことだと思う。日本において銀行窓口で運用性商品が販売されるようになったということは、お客さまのアクセスの利便性を高めたという意味で非常に重要な進展があったと考えている。
 一方で、作り方、説明の仕方、売り方、フォローアップ等それぞれのフェーズにおいて、私どもが対象とする個々のお客さまの投資に対する経験、リスクに対する選好、生活設計等を含めた総合的な判断にもとづく対応が非常に重要だと思う。このような点も踏まえ、最近金融庁の金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針の改定があった。簡単に言うと、投資信託などの運用性商品について短期的な商品の乗り換え等が行われるようなことがあってはならない、販売員に対する販売手数料重視型の業績評価体系を変えるべきだ、という指摘があった。これは誠にそのとおりであり、私ども、および日本の家計にとって、いかに投資家層の裾野を広げ、フローを重視するのではなく着実に残高を増加させていくか、というところに着目することが重要である。これらを踏まえ、一部では各個別行の販売方針の見直しも行われたと伺っている。これが今後定着していくことを期待している。
 裾野拡大に向けた一つの起爆剤になるのはNISAである。NISAの普及により、商品性も少し変化するかもしれないし、販売手法も変化する可能性がある。より若い方とか女性にもお客さまの裾野が広がり、国全体で見たときにより良いポートフォリオに持っていくのがこれからの私どもの役割だろうと思っている。


(問)
 二つお願いする。成長戦略の各論と思うが、頭取の立場で参加されている経済産業省の『日本の「稼ぐ力」創出研究会』、中間の論点整理でいわゆる持合い株の議決権の5%ルールの例外規定の拡大を中小企業への成長資金の供給の政策案として示しているが、これについてどう受け止めているかまず教えて頂きたい。二つ目は、日本経団連が新体制で始動したので、期待と改めて金融界としてどう支えていくか教えて頂きたい。
(答)
 まず、5%ルールの拡大という書き方が中間報告に出ているが、おそらく活用が正しいだろう。すでに法はできており、例えば事業再生、あるいはスタートアップの会社に関して、金融機関が例外的に株を5%以上持つことが可能という規定がある。これを拡大する必要があるかどうかはよく分からないが、せっかくの制度なので活用すればよいし、活用すべきと考えている。ただ、私自身は、再生は別だが、ベンチャーということであれば別のアプローチ、ベンチャーキャピタル、ベンチャーファンドの方がいいのではないかという気はしている。
 日本経団連は榊原新会長が就任された。榊原さんは東レを技術革新、あるいは海外展開で引っ張ってこられた、そして炭素繊維では世界シェアNo.1に育てられた立派な方だと思うし、卓越したリーダーシップを感じる。是非高いご見識と豊富な経験、国際的な人脈、政府の産業競争力会議の委員を務められたご経験等を生かして、日本の産業界、経済界を引っ張っていただきたいと思っている。私どもも銀行として果たすべき役割、実業・実体経済をしっかり支えるということで、スクラムを組んで頑張って参りたいと考えている。


(問)
 ガバナンスの究極的な目標についてお伺いしたい。ガバナンスといっても、結局はコンプライアンスの問題ではないか、人事に風穴を開けるということではないか、といった意見もあるが、それはあくまで手段であって、ガバナンスが求める究極のものは何か。株式会社としてお金をたくさん稼ぐということなのか、株主によりお金を還元することなのか、ガバナンスの究極の目標を何と考えているか。
(答)
 全銀協としての統一見解はないので、一般論として私の考えを申しあげる。ガバナンスというのは、株主による企業支配が原点である。したがって、その定義によれば、株主の最善の利益のために、株主から付託を受けた取締役、あるいは取締役から選任された経営者が行動しているかをみるのがガバナンスである。
 目指すものが何かといえば、時代によっても異なると思う。今の日本で求められているのは、企業の成長をいかに促すかであり、それは瞬間的なものではなく、持続的な成長を確実にするような方向に向かって、ガバナンスのメカニズムがきちんと機能しているかどうかが問われているのではないかと思う。したがって、投資家である株主の声や、それを代弁する立場にある取締役、社内の取締役だけでなく、多様な意見を持たれた社外取締役の声や厳しい目が経営者に届いて、経営者が最善の判断をしていく、その仕組みを作っていくことがガバナンスではないかと考えている。


(問)
 GPIFのポートフォリオ見直しについて伺いたい。GPIFが大量に国債を売っても吸収可能だという話があったが、銀行が運用方針を変えることがあるのか。
(答)
 端的に言えば、金融機関における債券ポートフォリオの運用というのは、その時々の市場の環境、あるいは方向性を見ながら柔軟に変えていくものである。
 したがって、さきほど吸収可能ではないかと申しあげたが、仮にそうでなければ、その時点で取りうる対応がある。
 当然、私どもは、起こって欲しくないような場合も想定して、様々なストレステストを行っている。コンティンジェンシープランを持っているので、必要なタイミングで発動するということに尽きる。
 今の日本の経済、財政、金融の状況を総合的にみれば、よほど予期できない外的な要因が起こらない限りは、金融市場に大きな混乱をきたすような結果がGPIFのポートフォリオのリバランスから生じることはないのではないか。
 ただし、今の前提条件が変わってくれば話は別である。したがって成長戦略は大事であるし、財政再建も重要であり、この二つは両輪である。


(問)
 それはインフレということか。
(答)
 財政の不均衡がますます拡大し、財政への不信が一つのきっかけになる可能性はある。ただ、そういったことを個別に申しあげる場ではないと思う。
 ただ、金融機関としては、さまざまなケースに対して柔軟に対応できる備えを普段からしており、これが重要であるということだけは申しあげておく。