2014年12月18日

平野会長記者会見(三菱東京UFJ銀行頭取)

髙木専務理事報告

 事務局から2点ご報告する。
 1点目は、本日の理事会において、来年度の次期副会長を内定した。
 次期副会長は、9月に内定している次期会長と同じく、理事会での正式な選定手続きを経て、4月1日付で就任予定である。
 2点目は、全銀協および全国銀行資金決済ネットワークでは、今後の全銀システムのあり方に関して、「全銀システムの稼動時間の拡大」、および「金融EDIの活用」に係る検討を行ってきたが、このたび、その結果をお手元の資料のとおり取りまとめた。
 「稼動時間の拡大」については、資料の3ページ目に記載のとおり、これまで未対応の平日夜間や土日祝日をカバーするための「新プラットフォーム」を構築し、全銀システムとして24時間365日、他行宛振込のリアルタイム着金が可能なシステム環境を整備するとしている。「新たに拡大する稼動時間帯」は、各加盟銀行がお客さまのニーズ等を踏まえて個別に接続する時間帯を決めるスキームとするものの、一定の時間帯は「新プラットフォーム」に接続する加盟銀行が共通して稼動時間を拡大する等、お客さまに満足していただくための取組みを銀行界で検討していく。同時に、多くの加盟銀行が、「新プラットフォーム」に、土日祝日を含め、より長い時間接続するよう働きかけ、接続する加盟銀行間でリアルタイム着金が可能となる時間帯を拡大するよう努めていく。
 なお、資料の4ページ目に記載のとおり、平成30年中のサービス提供を目指すとしている。
 「金融EDIの活用」については、資料の6ページ以下に記載のとおり、「国内ニーズ調査」および「流通業界と金融機関との共同システム実験」を行った。その結果、金融EDIの活用による効果が明らかになった一方、課題も浮き彫りとなったことから、各業界の団体・企業等と意見交換を行い、検討を深めていくとしている。
 事務局からの報告は、以上である。

 

会長記者会見の模様

 


(問)
 2014年を振り返っての総括と2015年の景気見通し、および銀行界における課題について伺いたい。
(答)
 2014年もあと2週間を切った。この1年のわが国の経済の歩みを振り返ってみると、経済再生・デフレ脱却に向けた歩みを着実に進めたものの、同時に、なかなかその道のりが平坦ではないことを感じさせられた1年でもあったと思う。
 すなわち、1-3月期は消費税率引き上げ前の駆け込み需要により高成長となったが、その後の2四半期は、反動減や夏場の天候不順等もありGDP成長率はマイナスが続いた。ただし、私どもの見方では、底流では、企業収益や個人消費の基盤となる家計の雇用や所得環境は改善を続けており、全体として見れば、景気回復の基調を支える、企業収益を起点とした所得・投資・支出の好循環は途切れていないと思っている。
 この間の銀行業界の取組みについてであるが、私は、4月の全銀協会長就任時に活動方針として「3つの柱」を掲げた。
 まず、第一の柱、「日本の再生・成長戦略への貢献」では、成長戦略の実行や中小企業向け金融について、全銀協では、11月に中小企業等に対する「金融の円滑化に向けた行動指針」を、これまでの金融円滑化の精神を受け継ぎつつ、「積極的な金融仲介機能の発揮に向けた行動指針」に改定した。また、日本再興戦略に盛り込まれた、NISAの普及促進・制度拡充、あるいはPPP/PFIの推進等にも、銀行界として積極的に取り組んできたところである。
 第二の柱、「安心・安全・便利な金融取引環境・インフラの構築」では、第一に、春以降に急増した法人向けインターネット・バンキングの不正送金について、5月と7月の2回にわたり、セキュリティー対策の強化と補償の考え方に関する申し合わせを行い、被害の拡大防止・抑制に努めるとともに、第二に、反社会的勢力への対応では、警察庁とのデータベース接続協議を本格化した。
 また、より便利な金融インフラ作りという観点では、本日冒頭にご報告した、全銀システムの稼動時間の拡大等、資金決済高度化への取組みに力を注いできた。
 第三の柱、「公正・透明・強固な金融システムの構築」では、まずTIBOR改革に取り組んだ。また、郵政民営化や公的金融、11月に市中協議が公表されたTLACといった国際金融規制への対応では、様々な機会を捉えて、全銀協としての主張を粘り強く発信し続け、一定の成果があったと感じている。
 次に、2015年の見通しと課題について申しあげる。
 来年の内外経済については、特に世界経済は、やや不透明な状況となってきているのは事実である。米国やアジアを中心に全体として見れば引き続き緩やかな回復が続くと見込まれるが、ロシアやウクライナ等、地政学リスク等から、欧州は引き続き低調と思われる。わが国経済も、引き続き回復基調を維持できると思うが、予断を許さない状況であり、官民をあげて経済の好循環を維持・後押しする取組みが不可欠だと思っている。
 政府は、来年10月に予定されていた消費税率引き上げを一年半延期することを決定したが、これから来年にかけ、一番大事なことは、延期によって得た時間を最大限に活用して、デフレ脱却に向けて取組み、「経済成長と財政健全化の両立」を果たすこと。そのために、規制改革を含む成長戦略の諸施策の迅速かつ着実な実行が不可欠であると思っている。繰り返しではあるが、2015年は、まさにわが国の官民の力を結集した「実行力」が問われる一年になると思う。
 そのようななか、私ども銀行界としては、これまで醸成されてきた、デフレ脱却と経済再生に向けた「復活の機運」が萎縮しないよう、積極的に金融仲介機能を発揮し、個人や企業のお客さまの資金需要、ファイナンスニーズに応えていくことが期待されていると考えている。


(問)
 本日、全銀システムに関して、24時間365日稼動可能な新たなプラットフォームを構築すると発表されたが、加盟銀行に期待していることを伺いたい。加えて、会長行でもある三菱東京UFJ銀行についても、個別行としてどう対応する予定か伺いたい。
(答)
 本日発表した「新プラットフォーム」は、お客さまのニーズやICT技術を活用した新たな決済サービスが銀行以外の業界で提供され普及してきているという昨今の動向等を踏まえ、わが国の銀行界としても、銀行振込の中核システムである「全銀システム」の24時間365日稼動を実現させ、お客さまにより利便性の高い決済サービスを提供することを目的とするものである。
 この「新プラットフォーム」を活用し新たに拡大する稼動時間帯は、各加盟銀行がお客さまのニーズ等を踏まえ、個別に接続する時間帯を決めることとし、準備の整ったところから順次参加するという、フレキシブルなスキームを考えている。
 一方、「新たに拡大する稼動時間帯」にリアルタイム着金を実現するためには、「新プラットフォーム」の仕組み上、振込を依頼する側の銀行と、振込を受ける側の銀行の双方が、この「新プラットフォーム」に同時に接続していることが条件になる。
 したがって全銀協としては、多くのお客さまに利便性の向上を感じていただけるよう、より多くの加盟銀行に、土日祝日を含め、より長い時間「新プラットフォーム」に接続していただきたいと期待しており、これからも働き掛けを行って参る。
 三菱東京UFJ銀行としても、英国等諸外国の大手行が24時間365日の送金サービスを実現していることを念頭において、わが国銀行界として決済サービスの高度化を図るという趣旨に鑑みて前向きに検討を進めていきたいと思う。


(問)
 全銀システムに関連していくつかお尋ねしたい。まず1点目は、商流も一体で把握できるようなIT企業や流通企業等による決済サービスが台頭しているという問題意識があると思うが、こうした新しい勢力の台頭に対して、今回の24時間365日稼動により、銀行業界として競争力をどの程度高められるとお考えか。5年・10年といった中長期で考えた時に、24時間365日稼動がどの程度効果的な手段となり得るのか、ということの認識をお伺いしたい。
 2点目は、加盟行のうちどのくらいの銀行が「新プラットフォーム」に接続しそうなのか、今の時点での見通しを伺いたい。
 3点目は、追加的なシステムコスト負担について、このスキームだと、24時間365日接続する銀行から、まずは少しの時間だけ接続してみようという銀行まで、グラデーションが生じると思うが、どういった形で負担を分け合うのか。また、この負担が手数料等の形で利用者に転嫁されることがあるのかないのか、伺いたい。
(答)
 まず、他の決済・送金事業者との競合関係のなかで、お客さまのニーズをどの程度捕捉できるのか、お応えできるのか、という質問についてお答えする。以前にこの場で申しあげたことのやや繰り返しとなるが、まず1番目に、私ども銀行としてお客さまのニーズにお応えすることにより、利便性の点で競争力を極力確保することがもちろん重要である。同時に2番目として、信頼・信用・安全が私ども銀行の持つ競争力の源泉でもあると思っている。銀行は、金融システムの強靭性を維持する観点から国内外の規制の下に置かれているが、こうした規制に相当のコストを掛けて対応しており、これによって信頼・信用を得ている。言い換えれば、極めて事故の少ない強靭なシステムを、コストを掛けて構築・維持しているということである。例えば、災害発生時の対策という点で非常に堅牢性が高いほか、金融犯罪に対しても、犯罪者とのいたちごっこという面はあるものの、業界全体として迅速に対応し、補償の枠組みも構築してきたところである。さらには、万一トラブルが発生した場合には、店頭やコールセンター等での照会対応等、お客さまの安心・安全のために様々な取組みを行っている。こうした点を競争力の源泉として、他の決済事業者との競争環境のなかで私どもならではのサービスを提供させていただくこと、これが「新プラットフォーム」構築の目的とご理解いただきたい。
 2点目の、どの程度の銀行が「新プラットフォーム」に参加するかという質問であるが、これは私どもにとっても重要な観点である。理由は、先ほど申し述べたとおり、ある時間帯に送金側と受取側と両方の銀行が接続していないとリアルタイム着金が実現できないためである。アンケートを実施しているが、かなり多くの銀行が稼動時間の延長について前向きの姿勢を示していることが分かっている。もちろん、これから実施される要件定義等を通じてコストが明確になるなかで、各銀行が最終的に判断することになるが、私自身としては、手ごたえを感じていると申しあげていいと思っている。
 最後に、コスト負担の質問については、各銀行がお客さまに対するサービス提供の対価をどう考えるかという問題であり、私ども全銀協として何らかの指針を示すべきものではない。各銀行がそれぞれのビジネスモデル、あるいは事業上の採算を考慮したうえでお決めになることだと思う。


(問)
 原油価格の下落により、ロシアの通貨ルーブルが暴落している。それに伴う、景気、日本の銀行、あるいはロシアに進出中の日系企業に対する影響をどのように見ているのか。
(答)
 大幅な原油価格の下落は、ロシアに限らず、産油国全般に影響を及ぼすと思うが、ロシアについては、現在の外貨準備の水準等を考えると、ただちに金融面で危機的状況に陥ることはないと思う。ただし、個別企業については、財務状態や業績の悪化を招くおそれがあり、注意が必要である。
 日本の金融機関への影響については、それぞれ状況が異なるため一概には言えないが、ロシアに対しては大手銀行を中心に一定のエクスポージャーを有しているため、今後の原油価格の動向、ロシアの財政状況、あるいはロシアにおける各企業の業績動向は注視する必要がある。また、日系企業への影響に関しても、同じことが言える。
 最後に、プロジェクトファイナンスへの影響について、ご参考までに申しあげる。プロジェクトファイナンスのうち石油開発の案件については、原油価格に相当のストレスをかけて採り上げる案件が多く、またキャッシュリザーブやディファーラル等の仕組みがあることから、ただちに大きな問題が生じることはない。ただし、これ以上の原油価格の下落あるいは長期化によって問題が生じてくる可能性があるため、これについても留意が必要である。


(問)
 円安が加速するなかで、日本企業、特にドル資金の少ない中小企業による海外企業へのM&Aの動きについて、足元の状況を伺いたい。
(答)
 企業の投資については、流動性資金の状況だけではなく自己資本の状況も判断の基準になる。すなわち、外貨建てで見た場合の自己資本が円安により目減りし、リスク耐性が低下することで、投資活動が弱まることは理論上考えられる。
 ただし、日本における少子高齢化や人口減少といった構造的な問題はなくなるわけではないため、成長の機会を海外に求める動きは今後も弱まることはないと思う。つまり、短期的な為替の動向による判断だけではなく、中長期的視点での事業戦略にもとづく海外への投資あるいは買収は続いていくと思う。実際、今年については、件数ベースでみると過去最多になるとの予測もある。


(問)
 衆議院選挙が終わったが、安倍政権への注文や期待について伺いたい。特に、日本企業を取り巻く「六重苦」という問題について、為替の問題は解決できていると思うが、その他の法人税や電力にはまだ問題があると思う。特に、どのような点について注文や期待をされているか。
(答)
 6項目あるが、まず、「行き過ぎた円高」、「高い法人税率」、これらについてはこの2年間で解消、ないしは一定の解決を見る方向に踏み出していると言えると思う。また、「自由貿易協定の遅れ」も、確かにTPPは未了であるが、オーストラリアとの極めてタイムリーなEPAの締結等、成果も現れていると思っている。
 特に、法人税率については、今議論が行われているところであるが、まず、復興特別法人税の前倒し終了が行われ、今年度の法人実効税率は、既に2.4%程度下がっている。加えて、数年内に20%台に法人実効税率を引き下げるという政府の方針が示され、その具体化に向かって議論が続いており、着実に前進していくことを期待したい。自由貿易協定については、先ほど申しあげたとおり、是非、来年の極力早い時期にTPPがまとまることを期待している。
 一方で、「労働規制」、「電力価格」、「環境規制」、これらについては議論が進んではいるものの、具体的にはまだ課題は多いと思う。第一に、労働規制は、直接的には働き方の多様化に資する柔軟な雇用制度を構築することで、労働力を増やす、そして、労働生産性の向上を図るということである。また同時に、多様なワーク・ライフ・バランスの実現を通じた、少子化および労働人口の減少への対策という意味でも重要であると思っている。労働政策というのは、短期的には、需要の誘発効果は限定的ではあるが、中長期的に考えると、日本の産業競争力の改善あるいは人口減少、そして地方創生への対応等、様々な重要な課題に対処する取組みであるので、是非来年、具体的な政策として実現することを期待したい。
 残る電力価格と環境規制の問題は、バランスが難しいところであるが、現状ではやはり、日本の電力コストは極めて高いレベルにある。したがって、まだコスト面での競争力は必ずしも高くないが、再生可能エネルギーへの取組みは、息長く続ける必要がある。また、即効性および実効性の高い取組みとしては、既存の火力発電所の性能の向上やリニューアルに向けた取組みも、原子力発電の取扱いとともに、論点になると思っている。
 こういった様々なエネルギーミックス、選択肢のなかからトータルな組合わせとして、電力供給の安全性・安定性の確保、コスト、環境負荷といったものを総合的に勘案した政策の早期立案が望まれるところである。
 今申しあげたことは、全てアベノミクスの第三の矢である成長戦略に含まれていることであり、冒頭でも申しあげたとおり、実現に向けて迅速な行動を取っていく必要があり、我々もそれを後押ししたいと考えている。


(問)
 円安について伺いたいが、今月の初めには円安がさらに加速して1ドル122円付近をつけるという局面があった。会長はこれまで急速な変動に懸念を示されてきたが、改めて円安が日本の経済に与える影響と、企業に与える影響について、またどんな水準が適切だと思っているか伺いたい。
(答)
 現状、日銀が金融緩和を継続、さらには強化する一方、米国においてはFRBが、ゆっくりとではあるが着実に出口戦略を進めていくなかで、足許で円安の動きが強まっている。これはやむを得ないことであると思う。
 実効為替レートで見てみると、円は1985年のプラザ合意以降で最低レベルを更新する可能性が高いところまで来ている。購買力平価に照らして見ても相当円安が進展した水準といえる。
 仮に今の為替レートがこのまま続く、あるいはさらに円安に進むということになると、自動車であるとか機械といった輸出産業にとっては収益の押し上げ要因になるが、輸入のウェイトが高い内需関連の企業や価格転嫁力の乏しい中小企業にとっては、仕入れコストの増加をなかなか価格に転嫁できず収益の押し下げ要因になる。したがって繰り返しになるが、為替相場の急激な変動は、企業経営にとっては決して望ましいものではないし、私ども金融機関としても円安による中小企業の資金繰りへの影響については十分な目配り、あるいは対応が必要だと考えている。
 適切な円相場の水準に関しては、一つの水準を定めるのは非常に難しいため、コメントは差し控えたい。


(問)
 全銀システムの高度化の件で、2つ教えていただきたい。1点目は、資料の「(3)」にもあるが、『「新プラットフォーム」に接続する加盟銀行が共通して稼動時間を拡大する等』も検討していくとあるが、共通して稼動時間を延ばす場合に、例えば何時までといった目安がもしあるのであれば教えていただきたい。2点目は、税制改正の関係であるが、来年度の改正要望のなかで全銀協としてもシステム投資減税を要望していると思うが、全銀システムの高度化についてはどういう要望を行っているのか伺いたい。
(答)
 まず1点目であるが、現時点で共通の延長時間帯に関して具体的な時間があるわけではない。一部で18時等という報道があるが、例えばこの報告書の1ページ目にある国内のニーズ調査の結果の「〔1〕個人」のところを見ると、「現在のままでよい」という方が19.5%、それから「18時まで」という方が24.0%で、そこから時間を追う毎に徐々に減って、深夜時間帯はほとんどご利用のご希望がない。したがって、こういった分布を見ながら一定の時間帯を設定していくということは考えられる。それは2ページの「〔2〕法人」の平日夕方あるいは夜間のニーズをご覧いただいても一定の傾向が読み取れる。こういったものを参考にしながら、これから固めていくということである。
 もう1点は、税制改正要望についてのご質問であった。これは、今年6月に閣議決定された「日本再興戦略改訂2014」において示された諸課題に対して、銀行業界としても社会インフラを支える立場から、可能な限りの協力を行っていくという考え方が背景にある。今回の全銀システムの高度化は、冒頭でご質問いただいたとおり、私どもの業界として、他の決済事業者との競争力を維持するという観点もあるが、同時に極めて公共性の高い社会インフラ、金融インフラを整備するという観点もある。一方、金融機関の規模、あるいは業態・地域性等によっては、相応の投資コストは掛かるけれども、それに対するベネフィットが見出せない金融機関が出てくる可能性もあり得るので、そうした観点からも金融機関における投資促進のためにシステム投資減税等を要望しているということである。


(問)
 東京電力に対する融資についてお伺いしたい。電力システム改革により、仮に持株会社が社債を発行することになった場合、銀行の融資はどのような取扱いになるのか、東電を例にとって教えていただければと思う。すなわち、銀行融資は、持株会社向けの融資になるのか、それとも今ある既存の融資を各事業子会社に振り向けるのか、どういう形に今後なっていくのか。
(答)
 電力会社に対する今後の融資について具体的な要請をいただいているわけではない。制度が固まったところで東京電力あるいは各電力会社におかれて最善の方法を検討され、私どもと協議をしていくことになるとだけ、ここでは申しあげたい。バンカブルなものにしていかなくてはならない。


(問)
 社債がそうしたスキームになった場合でも、融資については必ずしも持株会社向けの融資になるわけではないのか。
(答)
 それについては、今この時点でお答えするだけの材料を持っていない。


(問)
 昨日、數土会長がコスト削減に関する記者発表のなかで、東電はキャッシュフロー危機の状態にあるという言葉を使われ、向こう2年間で1.3兆円の資金が必要だということだった。2016年度に社債市場に復帰したいという希望をおっしゃっていたが、この必要な資金のなかには銀行借入も入ってくると思われる。昨日大幅なコスト削減による黒字の確保を発表したが、一方で値上げは1年間行わず、またコスト削減に寄与すると言われている柏崎刈羽の再稼働は引き続き見込めないなかで、資金が足りないと東電は言っているわけだが、銀行が追加融資をする条件はどういったものになると現時点でお考えか。
(答)
 一言で申しあげれば、繰り返しになるが、確実な返済可能性と償還可能性に尽きると思う。ただ、この場で何度も申しあげているが、電力事業は国民の生活あるいは国民の経済を支える不可欠のインフラであり、同じ金融という社会インフラを担う私ども金融機関としても、最大限の協力をしていくというスタンスに変わりはないということをご理解いただければと思う。さらに言えば、新総特のなかでも金融機関に対して一段の協力を要請すると言われているわけであって、この計画の着実な履行を前提に私どもとしても真摯に検討するというのが従来からのスタンスである。柏崎刈羽の再稼動等、新総特どおりにものごとが進んでいない部分はあるが、昨日発表のあったコスト削減の徹底等の大変な努力を數土会長以下で進められているなかで、私どもとしては、それらの進捗を踏まえつつ、仮に今後資金の調達についてのご相談があれば、銀行融資、あるいは社債等、様々なファイナンスの可能性について、最大限のご協力をして参りたいと思っている。


(問)
 決済に関してだが、英国でもシンガポールでもこの分野は非常に軽量化されたシステムを使っている。全銀システムにおいても、システム開発において同様の発想というのはあるか。もちろんセキュリティレベルを維持・向上しなければということはあるだろうが、軽量化というような発想は入ってくる余地はあるか。
(答)
 今回、様々な選択肢を検討した。まず、今使っているシステムの稼動延長ができないか、あるいは全銀協の決済システム以外にも日本には決済システムがいくつかあるので、それを活用できないか、といったことである。そして今回、最終的に採ることになったのが、新たなサーバーを設定して現状の稼動時間帯以外はそちらにスイッチしてシームレスな決済を可能とするスキームである。様々な検討の結果、この方法が、私どもが求めている安心・安全・堅牢性、そしてコストの問題等を総合的に考慮したうえで、一番有効なソリューションであると結論づけた。
 英国はそうであるし、シンガポールも同様の傾向はあるが、軽量化の代わりに、上限金額が低い等、取引に制約があるケースがある。そういった点については、私どものシステムの方が、お客さまに対する利便性をより高くできる可能性はあると言えるのではないかと思う。そういった点を考慮した結果、この結論になったということである。加えて、全銀協加盟行、あるいは全銀システムに加盟している金融機関になるべく幅広く入っていただきたい気持ちもあったということを付け加えておく。


(問)
 先日、金融庁の有識者会議が原案をまとめたコーポレート・ガバナンスコードについて、現在パブリックコメントに付されているが、これに対する全銀協、あるいは個別行としての受け止めを伺いたい。
 なかでも政策保有株式に対して経済合理性の説明、議決権行使の基準開示という話がある。もう一つは、独立社外取締役2名以上、また、読み方は難しいが、おそらく言わんとすることはグローバルベースの活動をしている企業は自主的な判断により3分の1以上という話があり、この辺りを中心にお考えを伺いたい。
(答)
 非常に重要なテーマだと思う。私もコード原案を読んだが、まず、コードは、いわゆるプリンシプルベースのアプローチが採られており、また、別の言い方ではソフトローと呼ばれるものである。すなわち、単純に形式的な準拠・適用ではなく、その趣旨、あるいは本来の目的を踏まえ、各企業が自らにとって最も望ましいガバナンスをつくっていくというのがこの原案である。さらに、ステークホルダーとの関係では、いわゆるComply or Explain、すなわち、「準拠しないのであればなぜしないのか、その理由を説明しなさい」というアプローチであり、これが非常に重要と考える。
 こういったことを踏まえ、各企業におけるコーポレート・ガバナンスのあり方は、それぞれ企業で様々であることから、各社自らがしっかりと考え、創意工夫を凝らしていくこと、これが基本だと思っている。
 逆に言えば、株主を含むステークホルダーにお願いしたいのは、各原則の条文の文言を表面的に捉え、それを対象企業に一律に適用して可否を見るのではなく、むしろ対象企業との対話を重視していくという姿勢がより必要であるということであり、それが原則ということである。
 また、コードは来年6月1日からの適用となっている。適用当初は、その時点での状況等の説明を行うことによる対応という道も残されている。つまり、残り5ヶ月半の間に、ここで書かれている原則に全ての企業や金融機関が、完全に対応するのは難しいということも、コードでは理解されていると思う。
 ただ、これまでお話したことを踏まえたうえで、コードがせっかく出来たわけであり、日本の企業、あるいは金融機関におけるガバナンスのより強化を目指すというその趣旨に鑑みれば、可能な限りの適用に向けた対応・準備を各企業はしっかりとするべきということであり、以上が総論である。
 次に個別質問としてあった2点について、まず政策保有株式は、現在も上場企業に関して言うと、政策保有株式の説明・開示は、純投資目的以外の保有株式につき、銘柄数や金額、保有目的等、一定の開示をしてきている。ただ、スタンプで押したような紋切り型の説明ではダメというのが今回の趣旨であり、その趣旨を踏まえた再点検をし、適切な開示を行っていくことになると思う。
 もう1点、独立社外取締役について、これは先ほど申しあげたことの各論となるが、やはり形よりは中身であるということ。中身というのは2つあり、まず一つは独立社外取締役になる方の資格要件、すなわち、資質や経験、力量等がやはり問われる。社外取締役というのは、自らが勤務や経営の経験がない企業を外から見て、適切な監督・モニタリングをし、助言を行うのが役割であるが、それは決して容易なことではない。そういった方々をいかに確保するかということがまず大事である。そして、そういった人材を確保していくためには、人材を育てる必要もあると思われ、そのための仕組みは日本の社会としてつくっていく必要があるのではないかと思う。例えば、米国等で見ていると、CEO退任後に他の業種や企業の取締役に就いて、非常に建設的な意見を述べる方が多い。日本でもそういった仕組みをつくっていくことが大事だろうと思う。CEOやCFO、チーフリスクオフィサー、あるいはロイヤーやアカウンタント等、そういった人の人材プールをつくっていくことが非常に大事だと思う。
 もう1点は、そういった方々に企業側として十分な情報を提供し、事業の実態を深く理解してもらい、それに基づいて如何にプロフェッショナルなモニタリング機能あるいは助言を与えてもらえるようにするのか、その仕組みをつくるのが大事である。例えば、事務局を設置し、事業戦略を常に説明する、また、直接の議案とは別であっても、如何に企業の実態をより深く理解していただくような機会を数多く設けるか等、様々な努力が必要になる。
 そのうえで、人数の問題が出てくる。これは個人的な意見であり、全銀協としての意見ではないが、確かに一人よりは、複数名の方が社外取締役は発言しやすいと思われ、今回のコードの精神はよく分かる。ただ、繰り返しになるが、現在の日本の上場企業全社にすぐさま複数名の社外取締役を、しかも適格性を持った方を配置するのは非常に難しく、それについては、一定程度の時間を掛けてやっていくということも考えなければならないのではないか。これは個人的な意見である。


(問)
 金融庁の「平成26事務年度 金融モニタリング基本方針」において「役割・責任(フィデューシャリー・デューティー)」という言葉を使っている。日本では、年金運用等の受託者責任として限定的に利用されてきた言葉であると思うが、これがモニタリング方針のなかに、金融商品の販売会社、運用会社、資産管理会社に「役割・責任(フィデューシャリー・デューティー)」を求めるとして表記されている。
 フィデューシャリー・デューティー、すなわち、受託者責任の原則は、一般的な法体系のなかの善管注意義務以上の責任というのが一般的な解釈である。金融庁の監督や検査において使われることについて、個別企業や全銀協会員行において、一つひとつの業務を点検するうえでポイントになると思うが、この点は如何か。
(答)
 ご指摘のとおり、従来、フィデューシャリー・デューティーは信託に関して主に使われてきた言葉である。ただ、最近では、特に欧米における運用商品の販売等を見ていると、顧客保護の観点から、販売する側が商品の内容についての十分な吟味をしているのか、ということが問われるケースが出てきている。したがって、それをフィデューシャリー・デューティーと呼ぶのが言葉の本来の意味で適切かどうかは分からないが、趣旨はそういうことだと思っている。とりわけ、これから資産運用のビジネスが日本においても重要になっていくなか、資産運用商品の販売において、これまでにも増して、慎重な対応が必要となるということではないかと私なりに理解している。これについては、私自身もっと考えて参りたいと思っている。


(問)
 銀行員の給与について伺いたい。特に来年度におけるベアの考え方だが、現在、物価が上がり実質賃金が低下している。日本経済全体でそうした問題が指摘されているが、冒頭の説明にもあったとおり、来年度は官民あげた経済の好循環の維持が重要になっていくと思う。銀行界でも30万人程度が働いており、その消費力も結構大きいと考えているが、銀行界全体にベアが広がれば、消費も上がってくると思う。この点をどう考えるか。
(答)
 ベアを含む給与のあり方は、各金融機関がそれぞれの業績、人員政策等を勘案のうえ決めることである。したがって、全銀協としてコメントすることはない。ただし、冒頭申しあげたように、現在のアベノミクスにおける、企業業績、所得、投資、そして経済成長という好循環を創り出そうという政策を理解したうえで、各金融機関が対応していくことになるだろうと思う。


(問)
 決済システムの「新プラットフォーム」に関してお伺いする。公表資料の文中に、「新プラットフォーム」は、主にインターネットバンキング等を利用した振込を念頭に置いており、必ずしも営業店の営業時間の延長を必要とするものではないとあるが、一般の利用者のなかには、窓口の営業時間を延長してほしいというニーズが一定程度あるなかで、インターネットバンキング等に限定した理由をご説明いただきたい。
(答)
 今回の「新プラットフォーム」自体は、営業店窓口、ATM、インターネットバンキング、いずれのチャネルでも対応は可能である。したがって、どのチャネルでお客さまのニーズに応えていくかは各金融機関が判断することになる。すでに一部には営業時間を延長している金融機関もあり、各金融機関のビジネスモデル、あるいは各地域でのニーズ等を考慮したうえで、各行が判断することになる。


(問)
 アメリカとキューバが国交正常化交渉に着手することが明らかになった。アメリカとキューバの関係は、過去に世界の安定を考えるうえで重大な問題を起こしたことがあるが、国交正常化交渉が始まったことに対する受け止めと、両国の関係正常化に対する期待を伺いたい。
(答)
 キューバに関しては、アメリカの金融制裁の対象国といった点で、金融機関に関係がある。もちろん、世界の外交関係、あるいは安全保障における国と国の関係改善は世界経済にとっても望ましい。
 ただ、金融に関しては、キューバと日本の金融機関が大きな取引関係を持っていることはないので、影響は限定的であると思う。


(問)
 最近、信用力の高い企業向けのシンジケートローン等で長期もののニーズが高いと聞いているが、そういった傾向はあるのか。
(答)
 低金利のなかで、長期間固定金利でお借りになりたい方が増えているのは事実である。また、設備投資の需要が少しずつ回復しているので、そうした場合に、より長期の資金が必要になるということがあると思う。


(問)
 東日本大震災の復興関連で伺いたい。現状、貸出先の課題をどのように考えているか。また、今後どのような支援を行っていくのか伺いたい。
(答)
 私も今年7月に被災地に行き、被災企業、東日本大震災事業者再生支援機構、産業復興センターを訪問していろいろと話を伺った。
 一言で言うと、被災企業の大きな課題は、震災の影響で取引が中断され、その取引先がなかなか戻ってこない。それに伴って、ビジネスに支障をきたしている、ということである。
 私どもは、これまで、個人・法人のお客さまに関する融資のご相談、あるいは二重債務問題に対応してきたところであるが、これからは、地域経済の再興のためにどのようなお手伝いができるのかということにも、より視点を移していかなければならないのではないか、と率直に感じたところである。
 今、金融機関で積極的に取り組んでいるが、例えばビジネスマッチングも重要な施策になるのではないかという印象を受けた。


(問)
 先日、三菱UFJ系アセットマネジメント会社の統合の発表があったが、アセットマネジメント業務を強化することで、メガバンクのグループ内でどのようなシナジー効果が期待できるのか。お客さまにはどのようなメリットがもたらされるのかについて伺いたい。
(答)
 ここは全銀協の会見の場であり、個別行の話題にお答えするのは不適切だと思う。ただ、先ほど申しあげたとおり、アセットマネジメントは重要な業務であり、一般論として、アセットマネジメント分野における業界再編の意味についての私見を手短に申しあげる。
 まず、一般にアセットマネジメントは比較的規模のメリットが働きにくいと言われている。というのも、アセットマネージャーがそれぞれの得意分野で、独特な手法で資産運用を行い、多様な商品をお客さまにご提供するという属人性のあるビジネスである。一方で再編にメリットもある。それは共通のインフラストラクチャー、例えば、事務やファンドの管理といった部分には統合の効果がある。
 加えて、販売である。投信会社の場合、投信を販売する金融機関に対するセールス活動が必要になるが、これには、それなりのプラットフォームを作る必要がある。販売を手掛けるフィナンシャルアドバイザーに対する教育の場であるとか、これも一種のインフラかもしれないが、そうした部分を統合し、共通化することで、よりレベルの高い、より生産性の高いサービスが提供できるようになるというメリットがある。
 さらに、品揃えの多様化を目指すアセットマネージャーであれば、単品商売ではなく、売れ行きの良い商品は金融市場の動向によって動くので、それに対応できるような品揃えを十分にしようという場合には、一定の規模に意味がないわけではないと思う。両方の考え方があるであろう。


(問)
 地方銀行の再編の動きが本格化してきていると思うが、金融庁が持株会社の傘下銀行の間で余剰資金を融通しやすくするような規制緩和の方針を出していることについて、会長の所見を伺いたい。
(答)
 地域金融機関の再編に向けては、金融庁からも様々なメッセージが発せられていたが、個々の経営者の判断の下、地域金融機関の経営統合、広域的な連携の動きが出てきたことは、望ましい方向と考える。
 グループ銀行間での資金融通に関しては、金融グループの組織再編、ビジネスモデルの再構築等を実施する場合で、当該組織再編等の目的実現のために必要、かつ、銀行の健全性に支障が生じないと認められる場合に可能とされており、銀行持株会社を設立する場合も、同様に扱って良いという考え方が示されたものである。
 したがって、今後の再編が行われる場合に、より柔軟な対応が可能になると考えられ、前向きな内容ではないかと思う。