2016年1月14日

佐藤会長記者会見(みずほフィナンシャルグループ執行役社長)

髙木専務理事報告

(なし)

 

会長記者会見の模様


(問)
 年が明けてから金融市場がかなり大きな動きになっており、金利も低下し、円高株安が進んでいる。今年の経済見通しについて伺いたい。
(答)
 今年初めての会見でありますが、本年も宜しくお願いします。
 ご指摘いただいたとおり相当相場が荒れており、日経平均株価は本日14時55分現在の数字で17,230円と前日比485円程度下落している。なお、昨年の最安値は16,795.96円で、奇しくもこれは本日と同じ1月14日の終値である。また、本日の日本国債10年物の利回りは、瞬間的にではあるが0.190%と史上最低の水準となった。
 このように全体的にマーケットがリスクオフの方向に進んでおり、今年は荒れ模様のスタートとなった。昨年も、今年同様、世界経済の混乱の煽りを受けてリスクオフの動きによる年初の国内市場の混乱はあったが、そもそもの要因は原油価格の大幅な下落を受けた景気に対する不安とギリシャの問題であった。
 今年は、一つ目には中国株の下落および中国経済に対する先行き不安が大きいと思う。今月7日に人民元の対ドルレート基準値が2011年3月以来4年10ヶ月ぶりの水準にまで切り下げられたことも、中国経済に対する不安を助長する形になった。二つ目には、原油価格の問題だが、価格の下落が長期化するのではないかという観測が今回のマーケットのリスクオフの動きに大きく影響していると思う。さらに三つ目として、サウジアラビア、イランあるいは北朝鮮などの地政学リスクの高まりもリスクオフの要因の中に加えることができるのではないか。今申しあげた複数の要因は今後しばらく継続すると考えられるので、マーケットの動きに注意を払っていく必要があると思う。
 もう少し長期的な視点でグローバル経済の見通しについて申しあげれば、まず米国経済は非常に強く、欧州経済も一時の不調から比べると、DIも含めて持ち直し感が強まっている。一方で、中国を中心とした新興国などの経済がスローダウンしており、先進国経済との引っ張り合いの状況になってくると考えられる。全体としては基本的に回復基調になると思うが、そのテンポは緩やかなものになっていくのではないか。
 米国では、昨年12月の非農業部門雇用者数が前月から29万2千人増と、10月以降3カ月連続で30万人に迫る増加ペースが続いており、雇用・所得の改善などを背景に個人消費も順調に伸びている。また、ユーロ圏の経済についても、経営者の心理を含めて一時の不安要因が払拭されてきていると思う。昨年7~9月のユーロ圏の実質GDP成長率は、ドイツやスペインの経済の牽引により前期比+0.3%となっており、全体的に欧州の景気もそう悪くはないだろうと考えている。
 一方、不安材料は、中国経済のさらなる下押し、資源国経済の悪化、さらには足元はマイナス要因として働いているとは思っていないが、米国の利上げがキャピタルフローに今後与える影響なども含めて、リスクファクターに事欠かない展開となってくるだろう。
 特に、中国経済の下振れは最も大きな不安要因の一つであろう。この会見の場でもこれまで何度も申しあげてきたが、基本的な構造問題があまり解決されない中で、中国経済の下振れが起こってきているということを考えると、かなり大きな影響を及ぼしてくると考えるべきだろう。中国政府は、金利、人民元、財政出動による景気刺激策など、あらゆる手段を通じて経済の引上げを図ろうとしているが、こうした刺激策が大きな効果を上げる前に今回の株価下落が起こっていると個人的に感じている。
 前回も申しあげたように、今後、2017年に中国共産党常務委員の改選があるという政治情勢も踏まえると、これから必死になって景気刺激策を講じてくるだろうが、不安要因が払拭されるかどうか非常に注意深く見ていかなくてはならない。
 中国経済についてもう一つだけ付言しておくと、足元中国の外貨準備の残高がかなりの速度で減少しており、これは中国政府が人民元の買い支えをしていることが大きな原因と考えられている。
 ご承知のとおり、人民元は対ドルでは随分人民元安の方向に振れてきたが、一方で米国との貿易において中国は大幅な黒字を抱えており、中国政府としては米国との関係から人民元がこれ以上大幅に対ドルで安くなっていくことは避けたいという政治的配慮もあるのではないかと巷では言われている。
 また、人民元は他通貨に対してはそれほど大幅な人民元安になっている訳ではないものの、中国政府にとって、さらなる大幅な人民元安は輸入物価の大幅な上昇等も招きかねず、あまり歓迎されるべきでないため、外貨準備を使った人民元買いのオペレーションが行われているのではないかと言われている。これはドル売り圧力になるため、米国債にとっては金利上昇圧力になるが、一方で、先ほど申しあげたようなマーケット全体としてリスクオフのセンチメント、すなわちドル買いというセンチメントもあるので、中国を中心とした新興国のオぺレーションとマーケットのオペレーションとがせめぎ合うかたちで、相当神経質な展開がこれから続くと考えている。
 日本経済について申しあげると、国内のファンダメンタルズは、消費、設備投資等を含めて悪い状態になっている訳ではない。しかし、今申しあげたようにグローバル経済がどのような展開をみせるかによって、シナリオが相当異なってくると思う。楽観的なシナリオでは、米国が安定して景気を回復し、中国経済も持ち直してくることで、金融マーケットも落ち着きを取り戻すと考えられるので、若干先行き不安で停滞していた設備投資、あるいは賃上げの動き等についても積極的な対応が出てきて、日本経済を大きく引っ張っていくということが考えられる。
 一方、世界経済のマイナス要因が顕現化するシナリオとなると、リスクオフから急激な円高が進み日本の産業の足を引っ張る、ということも考えられなくはないので、その場合には非常にセンシティブな状況になると思う。
 ただ、もう少し中期的な見方をすると、いつも投資家にも申しあげているのだが、日本経済にはこの先三つ大きなバズーカ砲が残っている。一つ目は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、2020年まで累計30兆円といわれるようなGDP上積みの可能性があるということ。二つ目は、TPPの批准が成功裏に行われれば、それ以降は毎年10兆円以上のGDP上積み要因になってくるということ。三つ目は、昨年は約3兆円の消費がインバウンドによってもたらされたが、今年はさらにそれを上回るだろうといわれていること。したがって、世界経済に大きな混乱がなければ、日本経済は相対的に順調な回復に向かっていくのではないかと考えている。
 いずれにせよ、先ほどのような中国経済、原油価格、地政学リスクといった三つの大きなリスクファクターがどう動いていくのかということについて、これから注意深く見ていかなくてはならない状況にある。


(問)
 ゆうちょ銀行の限度額について、昨年末に民営化委から1,300万円に引き上げるという所見が出され、大きな資金シフトが懸念されているが、改めて銀行界への影響、あるいは所見をどう受け止めるか、伺いたい。
(答)
 ゆうちょ銀行の限度額問題等に関する私どものスタンスは、昨年12月25日に「郵政民営化を考える民間金融機関の会」として公表した共同声明のとおりであるが、改めて申しあげる。
 先般の日本郵政グループの株式上場により、郵政民営化は新しい局面に入ったと認識している。ただし、依然としてゆうちょ銀行の完全民営化に向けた具体的な道筋は示されておらず、公正な競争条件が確保されている状況にはなっていない。この認識は従来と全く変わっていない。
 今般、郵政民営化委員会が公表した所見では、利用者の利便性向上の観点から限度額規制を緩和する方向が示され、「まずは引上げ額を300万円程度とすることが妥当」という見解が示された。ただし、所見では、その実施にあたっては、「貯金残高に係る目標額の変更」や「日本郵便に対する委託手数料の変更」などの手段を適切に活用すること、あるいは限度額引上げ後の状況について郵政民営化委員会に「定期的に報告させること」という考えも示された。そのうえで所見では「特段の問題が生じないことが確認できれば、必ずしも株式処分のタイミングに捉われることなく、段階的に規制を緩和していくことが考えられる」という見解も示されているものの、同時に、ゆうちょ銀行のバランスシートの大きさ、さらなる巨大化や金利リスクといったものを認めたうえで、それへの対応をとる必要があるとの見解も示されていると捉えている。私どもの予てからの懸念、一つ目は「不公平な競争環境をさらに悪化させる懸念」、二つ目は「民間金融機関との協調・連携の流れに水を差し、地方創生の推進力に悪影響をおよぼす懸念」、三つ目は「金利上昇に伴うリスクが一層増加する懸念」、そして四つ目は「ゆうちょ銀行自身が中期経営計画で掲げた『資金運用戦略の高度化』を阻害する懸念」について、しっかりと共有いただいたと理解している。
 郵政民営化法の基本理念では、「利用者利便の向上」とともに「同種の業務を営む事業者との対等な競争条件を確保するための措置を講じる」ことが掲げられている。したがって、今後、日本郵政グループにおいてこれらの懸念が現実化して弊害を生じさせることがないような適正な対応について早急に検討が進められることや、ゆうちょ銀行において自らの中期経営計画の実現に向けた貯金規模のコントロール等の具体的な取組みが行われること、さらには問題が発生した場合にその解消に向けた措置が講じられるような実効的な枠組みが構築されることが、この限度額の引上げについて必要不可欠な条件となると考えている。
 今後についても、さらなる限度額の引上げを前提とするのではなく、我々民間金融機関との競争関係あるいは協調関係がどのように進むのかについて慎重な検証が求められる。
 私見ではあるが、例えば預貯金の残高推移を、地域ごと、預貯金種類ごとに相応の期間をとって定点観測することや、ゆうちょ銀行や郵便局による貯金獲得に向けた過度な営業態勢がとられていないか、またそれが地域金融機関に対して経営上の圧迫要因になっていないか等について現場の声をしっかりとヒアリングすることなどにより、引上げの影響度をしっかりと見定めていくことが極めて重要と考えている。
 一方で、今般の所見ではゆうちょ銀行の新規業務について、地域金融機関との連携を含めた中期経営計画を具体化するために必要とする場合には、「行政として優先順位を上げて検討することが望ましい」との見解が示されており、優先的に導入を検討し得る業務として、地域活性化ファンド等への出資が挙げられている。従来の、例えばゆうちょ銀行本体での融資業務への参入といった議論にはなっておらず、この点についてもある程度われわれ民間金融機関の考え方が取り入れられていると受け止めている。
 ゆうちょ銀行とわれわれ民間金融機関が公正な競争条件の下で切磋琢磨すると同時に、それぞれの機能や郵便局のネットワーク等も含めた経営基盤を活かしつつ協調・連携することを通じて、地方創生や成長戦略の実現に貢献していくことは大変意義のあることと考える。
 私ども銀行界としては、限度額が引き上げられた場合のさまざまな懸念の現実化を防ぐ適正な対応と、ゆうちょ銀行と民間金融機関による協調・連携の実行との両立を通じて、わが国の金融市場そして地域経済あるいは国民経済の健全な発展に繋がるような将来像が実現されていくことを切に希望する。


(問)
 2点質問がある。まず1点目、原油価格の急落で石油大手企業の経営も圧迫されてきている。日本においては、石油元売り大手などの再編も出ているが、銀行として、業界への先行きをどのように見ているか、そしてアメリカ等でもエネルギー企業の破綻懸念などが高まっているが、そのようなエネルギー企業、関連企業へのエクスポージャーがあるとは思うが、影響をどのように捉えているか。
(答)
 低迷する原油価格は、1バレル30ドルあるいは30ドルを切るレベルにまで来ている。低迷が長期化している理由として、一つはOPEC総会で減産の合意に至っていないということが大きく、これを受けて、今年の1月12日には1バレル30ドルを割っている。
 2014年後半から続いている原油安のトレンドは、需給両方に要因があると思っているが、まず需要サイドの理由の一つとしては、中国などの新興国経済の減速に伴う需要の減速が非常に大きいということだと思う。
 一方で、供給サイドであるが、今申しあげたとおりOPEC総会で減産協調ができなかった。これにはいくつかの要因が複合的に絡んでいると思うが、サウジアラビアを見ても、リーダーの転換期にあるなかで、OPEC諸国全体をまとめあげる力がまだ未知数ということもあるのではないかと思う。また、サウジアラビアとイランの国交断絶といった追加的要因も考えると、OPEC自身が減産協調を通じて生産調整に入る可能性は低くなってきている。
 さらに、これからイランの原油がマーケットに出てくる、あるいは米国が輸出を始めるということを考えると、原油価格が上がる方向で調整がすぐに始まることは、考えにくいのではないかと思う。
 先ほど申しあげた需要サイド、すなわち中国経済の問題や発展途上国の問題等も考えると、需給のバランスはそう簡単には解決せず、しばらくはこの情勢が続く、あるいは場合によっては1バレル20ドルに向かって進んでいくということもあり得るのではないかと思う。
 この原油価格の低位安定の影響はいくつか考えられる。一つは当然ながら産油国経済の問題で、これはロシアやインドネシア、さらには中東諸国の問題ということだが、サウジアラビアについて申しあげると、2015年の財政収支見込みは約11兆6,000億円相当の赤字になっている。このように産油国の財政は非常に厳しい状態が続くことになる。世界のマネーフローでいうと、産油国の余剰資金は主としてロンドンに預金されているわけだが、そうしたオイルマネーの逆流・縮小が起こる可能性がある。オイルマネーが投入されてきた金融商品に少なからぬ影響が出てくることで、金融市場に波乱が生じ得ることには留意しておくべきだと思う。
 もう一つ、すでに起こっている問題だが、例えば米国のエネルギーセクターを中心としたハイイールド債の価格が相当落ち込んでおり、そうしたハイイールド債を保有している投資家などにもネガティブな影響が出ている。また、サブプライム問題ほどではないにしても、エネルギーに関連したハイイールド債を組み込んだ投資商品がグローバルにどこでどのようなかたちで売られているのかということが、今後少し問題として出てくる可能性があり、再びグローバルな金融市場やクレジット市場全般の危機に発展するという可能性も払拭することはできないと思う。
 日本経済について考えると、原油安は基本的にはプラスに働くと考えられる。ただし、サブプライム問題の際もそうであったが、日本経済はグローバル経済と強くリンクしているので、対岸の火事と捉えていたものが回りまわって、日本の経済、投資家、あるいは企業に対して、ネガティブな影響を及ぼすことには十分注意していかなくてはならないだろう。
 金融機関のエネルギー関連あるいは原油関連のエクスポージャー等については、他行の内容を知っているわけではないので、みずほについて申しあげると、エネルギー業種向けのエクスポージャーは、全体から見ると非常に限定的である。また、原油のリスクを直接取っているようなプロジェクトファイナンスについてはさらに限定的であり、この問題が我々のクレジット、あるいはバランスシートのクオリティに大きな影響を与えるという状況にはなく、原油安に起因した危機に結びつく可能性も低いのではないかと思っている。
 ただし、この原油価格低迷の影響については、今後もしっかり見ていく必要があると思っている。


(問)
 2点目はシャープの支援について。すでに銀行は御行と三菱UFJだが、昨年から一部債務の株式化を実施し、何度か支援もしている。今回もまた、色々と支援するかどうかがキーになってくると思うが、実際シャープの再建の可能性、再建計画の実効性は本当にあるのか。
 やはりシャープは日本を代表するメーカーの一部でもあると思うので、銀行サイドからのお話、ご見解を伺いたい。
(答)
 シャープが再建できるかどうかというストレートなご質問として受け止めると、お答えできない。ただし再建計画が去年発表されており、その実行という観点においては2015年度の計画について、なかなか到達が難しい状況になっているということは客観的な事実としてお伝えすることはできる。一方で2016年度、17年度に向けての展望が、根っこから瓦解しているという状況ではない。したがって、このような厳しい環境の中ではあるものの、ご承知のとおり色々な手段を考えて再生、再建を果たそうとしておられるという状況であることを踏まえてお答えすると、メインバンクとしてシャープという日本経済にとっても決して無視できない企業の支援体制をしっかりと整えながら、計画の実現、再建に向けて今後ともシャープの考えていることをサポートしていく。


(問)
 冒頭から、新年入り後の海外経済のリスクについて、いくつか細かく説明されていたが、そういう状況が、少し昨年末から見ても変わってきた印象を受ける。その中でメガバンクの海外戦略も秋までに考えていたところから修正が迫られるのかという気もするが、そのあたりのお考えを伺いたい。
(答)
 日本の金融機関、特にメガバンクと欧米の金融機関とではスタンスが若干異なると感じているが、メガバンクにとっての海外戦略の重要度は何ら変わっていないと思う。ただし、昨年あるいは一昨年と同じようなかたちで貸出残高が伸びていくこと、例えば年率20%程度の伸びを示していくということは、客観情勢から考えると難しくなってきているとは言えるだろう。
 特にアジアについて見てみると、先ほど申しあげたように中国経済の減速の影響を受けたり、あるいは一部の国においては資源価格の影響も受けることから、経済そのものの伸びが鈍化する可能性がある。したがって、従来と同じように、例えばアジアで貸出残高を伸ばしていくという手法で国際部門を強化していくことは、当面の間は少し難しくなってくるだろうと思う。
 一方、欧米のマーケットについて考えると、特に米国の経済は強いが、グローバル経済の中で強い地域が限られているが故に、一般的には、強い金融機関は経済の強い地域における強い会社に対する攻勢を押しなべて強めてくることになる。そうした優良企業に対しては優良金融機関が同じようにセールスしてくることになるため、貸出についてはスプレッドが縮小してくる。競争環境が厳しくなるという観点からは、そうした先進国マーケットにおける貸出収益は縮小する可能性があり、したがって欧米でも環境が厳しくなってくるのではないか。
 ただし、今申しあげたのは貸出についての環境ということであり、少し目を転じて、例えばクロスボーダーのM&A、社債発行市場、あるいは株式発行市場といったような貸出以外の分野においてどういうビジネスがありえるかを考えると、そこにはまだ拡大の余地が残っていると思う。今後は、グローバルビジネスにおいて、従来以上に貸出に依存しないビジネスモデルを組み立てていくことによって、海外業務の拡大を維持していくことができるかどうかが勝負の分かれ目になってくるのではないかと考えている。
 そのような観点からは、例えば欧米の金融機関がインベストメントバンキングを縮小、あるいはそこから撤退しているという状況は、日本の金融機関にとっては決してマイナスではないとも捉えられる。そういった点を踏まえたうえで、我々自身がしっかりと収益の源泉を多様化し、貸出だけに頼らずクレジットリスクに晒されにくいビジネスモデルを作りあげていくことができるかについては、今まで日本の金融機関がそういうビジネスモデルを十分築きあげてこられたわけではないだけに大きなチャレンジになってくる。それに成功することができた日本の金融機関は、海外においてさらに発展できる余地が十分に生じてくると思うので、私は海外を引き続き重要なマーケットとして見ていると同時に、そこに対するアプローチの仕方は今のマクロ経済を踏まえて変えていくということが肝要ではないかと考えている。


(問)
 昨年末、金融審議会の決済ワーキングの方でまとめられた報告書についての質問だが、決済ワーキングの報告書の中で、銀行による「ロー・バリュー送金」の提供を、2018年度を目途に目指すということが盛り込まれたかと思うが、銀行界としてはどういうかたちで進めていくおつもりか。
(答)
 今ご指摘をいただいたように、昨年12月に公表された金融審議会「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」の報告書で、「国際送金における『ロー・バリュー送金』」を2018年を目途に提供するという案が報告されている。
 国際送金について申しあげると、クロスボーダーの経済活動や人々の往来がこれからも活発化していく中で、従来のいわゆる「コルレス方式」による銀行間送金に加え、利便性という観点から様々な決済手段が検討されていく環境なのであろう。したがって、これまでの国際送金とは別に、「急がない、安価な」国際送金を提供してほしいというお客さまのニーズに応える観点から、銀行界としても積極的に検討していくべきであろう。
 昨年12月に公表された報告書では、例えばアジアの決済ネットワーク事業者との接続などにより銀行が「ロー・バリュー送金」を提供するという具体的な案が報告されているが、こうした具体的な案を詰めていくということは、利便性向上の観点からも大変重要なことである。銀行界としても、ワーキング・グループの報告書の内容なども踏まえ、関係者と協議しつつサービスの内容や開始時期なども含めた具体的な検討をしっかりと進めて参りたい。


(問)
 郵政について確認でお伺いしたい。先ほど会長は「公正な競争条件が確保されていないうちに預入限度額が引き上げられる」ということをおっしゃたが、逆に、「公正な競争条件が確保された状態」とはどういうことを指しているのか。
 また、郵政民営化委員会は、繰り返し「暗黙の政府保証」は存在しないということをいっているが、実際にそれがあるかないかが問題ではなくて、利用者がそういうものがあるんだというパーセプションがあること自体が問題と考えているのか。
(答)
 公正な競争条件にはいくつかの要素がある。重要なものを申しあげると、ゆうちょ銀行の完全民営化に向けた具体的な道筋を示すことであるが、それが示されていない今の状況では、ご指摘のとおり、受け止め側のパーセプションは、ゆうちょ銀行には国の信用がバックにあるというものである。我々民間金融機関にはそうしたファクターはないので、これは決定的に重要である。したがって、完全民営化に向けた具体的な道筋が示されていない中では、公正な競争条件が確保されているとは考えられない。2番目の質問についてもまさにおっしゃったとおりであり、我々は完全民営化に向けた具体的な道筋を示してほしいということを申しあげている。


(問)
 日本郵政・ゆうちょ銀行との連携について伺いたい。昨日、地銀協の寺澤会長が記者会見で、ゆうちょ銀行の方から地銀に対して連携の協議をしないかという申し入れがあったという話をされており、今後、銀行の代理店業務を郵便局に任せるというようなことを検討していく見通しとなっているが、大手行に対しては、ゆうちょ銀行から何か提携の申し入れがこれまでにあったか。また、大手行としてゆうちょ銀行と今後連携することを考えていくことはできるのか。
(答)
 大手行の情報をまとめて持っているわけではないので、みずほ個別行として申しあげる。今のところ、みずほに対してゆうちょ銀行から具体的な提携の話は私の知る限りでは来ていないと思う。ただし、ゆうちょ銀行の中期経営計画には資金運用戦略の高度化がはっきりと謳われており、みずほが今後アセットマネジメント業務を大きく拡大していく観点からも、ゆうちょ銀行がみずほのアセットマネジメント業務における重要な取引先になっていく可能性は十分にある。
 今後の可能性として、そういった分野における協働・協調・取引関係は拡大していく余地は大いにあるだろう。また、ゆうちょ銀行の資金運用戦略の高度化は、ゆうちょ銀行が抱えているリスクを縮小させるという国民経済的な観点からも重要である。もちろん我々はビジネスとして取り組んでいくが、それ自体が大きな意味で国民経済的なリスクを縮小していくことにもつながるので、個別行としても力をいれていきたい。ゆうちょ銀行も考え方が全く違うということにはならないと思うので、協調関係を構築できる可能性は高いのではないか。