2016年6月16日

國部会長記者会見(三井住友銀行頭取)

髙木専務理事報告

(なし)

 

会長記者会見の模様


(問)
 金融政策について、日本銀行が今日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決めた。現在の金融政策への評価については、これまで会見の場で度々伺っているが、前回5月の会見以降、例えば国債のプライマリーディーラーの資格を返上するとの報道があるほか、金融界からマイナス金利政策に対する不満のような声も聞こえてきている。今日の昼の日本銀行の政策決定、公表後、円高が急速に進み、株価も大きく下がっているが、これまでに伺ったマイナス金利政策に期待される効果が果たして出ているのかどうかも含めて、改めて金融政策の評価について伺いたい。
(答)
 まず、本日の金融政策決定会合では、金融政策の現状維持が決定された。これは、日本銀行が、足元の経済や物価情勢についての認識や、これまでの金融政策の効果等を見極めるということで、金融政策の現状維持を判断されたものと思う。
 詳細については、先ほど公表されたばかりであり、まさに今、黒田日本銀行総裁が会見をされておられると思うので、これ以上のコメントは差し控えたいと思うが、日本銀行におかれては、今後も経済や物価情勢についてのリスク要因であったり、これまでの金融政策の効果等を十分に検証していただいて、適時適切に対応していただきたいと思う。
 マイナス金利政策について申しあげると、以前申しあげたことと重なる部分もあるが、預貸金利鞘が縮小することになるので、銀行収益にとっては、短期的にはマイナス影響があるが、金利全般により強い下押し圧力を加えることで、円安あるいは株高という経路によって消費であるとか投資を刺激し、実体経済の拡大を狙うものと思っている。したがって、金融政策の効果が実現されていけば、わが国経済がデフレから脱却し、経済の好循環がより強まってくるということで、中長期的には銀行収益にもポジティブな影響が出てくることが期待されるという認識は変わっていない。
 一方、前回の会見でも申しあげたが、こうした金融政策の効果が実体経済に及ぶまでには、相応のタイムラグが伴うことから、まずは、現在の政策の効果を見極めることが重要だと思っている。そういう意味では、本日の日本銀行の判断もそういう観点からなされたものと思っている。
 足元では、設備投資など企業の前向きな動きはまだ出てきていない。現在の状況をいろいろ見ていて私が思うところは、企業の意思決定において、金利がさらに下がるのではないかということで様子見をしている企業も多くあると思う。将来的に金利の下げ止まり感が出てくれば、実体経済へのプラス効果も実現されていくと期待している。したがって日本銀行におかれては、こうした観点も踏まえて、マーケットの参加者や企業がマイナス金利政策の意図や狙いを十分に理解し、実体経済への政策効果が早期に生じるよう、コミュニケーションの面にも配慮して運営していただきたいと思う。
 また、政府には、デフレの脱却、経済再生に向けて、構造改革を伴う成長戦略、財政政策の実行を併せてお願いしたいと思う。もちろん、我々金融機関としてもお客さまの抱える潜在的な資金需要を顕在化させ、そのニーズにしっかり応えるなど、金融面から経済に貢献していきたいと思っている。これが基本的な考え方である。


(問)
 消費税率引上げの再延期について伺う。このところ非常に大きなニュースが続いているので、いささか旧聞に属するような感じも否めないが、やはり夏の参院選のテーマでもあり、また国家財政に関わるような大きな問題でもあるので、ここで会長のご所見を伺いたいと思う。
(答)
 安倍総理は、6月1日に消費増税導入を延期することを発表された。その記者会見において、「中国など新興国経済に陰りが見える」、「世界的な需要の低迷、成長の減速が懸念される」という、まさにG7で共有されたリスク認識の下、「アベノミクスのエンジンを最大限ふかさなければならない」、「デフレからの脱出速度をさらに上げていかねばならない」という強い意思をお示しになられた。消費増税導入の延期は、こうした中での重い政治判断であったと私は理解をしている。
 消費増税導入の延期によって、今後は、日本の財政規律への信認を維持できるかどうかが大きなポイントの一つになると思う。わが国の財政に対する信認が大きく後退し、日本国債の格下げ等が起これば、市場の動揺や予期せぬ金利の変動等を招きかねないほか、わが国の経済にも大きな悪影響を及ぼす恐れがある。6月2日に閣議決定された「骨太方針2016」では、消費増税導入の延期後も「2020年度の基礎的財政収支黒字化という財政健全化目標を堅持する」旨が表明されており、今後、歳入、歳出の両面から取組みを進め、政府目標の達成に向けた具体的な道筋を付けていくということが極めて重要になってくると思う。
 少し具体的に申しあげると、歳入面については、2019年10月に消費税率を8%から10%に引き上げるために必要な経済環境を創り上げることが必要だと思う。政府には、今回の消費増税導入の再延期によって生まれる2019年10月までの時間を最大限に活用し、日本再興戦略、あるいはニッポン一億総活躍プランなどに盛り込まれた政策の着実な実行により、わが国経済の構造改革に取り組んでいただき、デフレ脱却、そして持続的な経済成長を実現していただきたいと思う。そうすれば、歳入の一段の増加にもつながってくると思う。もちろん、私ども金融機関もファイナンス面を中心に、日本経済の成長に貢献をして参りたいと思う。
 一方、歳出面について、最大の歳出項目である社会保障費については、昨年12月に決定した「経済・財政再生計画」、および本年6月の骨太方針に示された改革項目の実行を加速していくことであるとか、社会保障給付の効率化、適正化、あるいは負担の見直しなどを図ることが不可欠だと思う。また、社会保障の充実策を今後検討するとの報道があるが、優先順位を付けて、例えば子育て支援など、本当に必要な分野に絞って対策を講じていく必要があるのではないかと思う。
 いずれにしても、安倍政権には、強いリーダーシップを発揮していただき、わが国の財政健全化に全力で取り組んでいただきたいと思う。


(問)
 外国為替市場の値動きについて伺いたい。今日の日銀の金融政策決定会合の内容公表後に急速に円高が進み、一時1ドル103円台と2014年以来の円高・ドル安水準まで進んでいる。円高の進行が日本の企業にとってはマイナス面もあると一般的にいわれているところだが、会長として今の相場の動向と、日本経済に与える影響についてどのように考えているか。
(答)
 まず、為替相場の水準についてはコメントがしにくい面があるわけだが、今回の米国のFOMCの決定、日本銀行の金融政策決定会合での決定を受けて、ドル円相場は一時103円台に突入し、現在は104円台で推移していると思うが、大変円高が進行した。私は、今の103円、104円という水準は日本経済のファンダメンタルズからやや乖離した円高になっているのではないかと思う。
 日米の実体経済を見ると、米国経済は回復基調が続いており、本年中に1回か2回の利上げという見通しになっているわけだが、今後FRBがいずれかの段階で利上げをしていく方向には変化はないと思う。
 一方、日本経済は緩やかな回復基調は崩れていないとしても、現在は足踏み状態にある。本日のマーケットの状況は、日米の政策当局による金融政策を材料として短期筋のスペキュレーションによって生じている面もかなりあるのではないかと私自身は受け止めており、このトレンドが今後も続く筋合いにはないのではないかと思っている。もちろん今の円高、それに伴う株安は、相当マーケットがリスクオフの状態になっていることに加え、6月23日に国民投票が予定されているBrexitの問題が影を落としている。したがって、来週の英国のEU離脱に関する国民投票の行く末、あるいは先ほど申しあげたアメリカのFRBの利上げのタイミング、世界経済の先行き、その他地政学リスクなどの不安材料、不透明要因が完全に払拭されるかというと払拭されないと思うので、おそらく今後もリスクオン、リスクオフのスイングが続く展開を想定しておくべきだと考えている。先ほど申しあげたように、足元の103円、104円というのは急激な円高になっていると思う。したがって、これが続くということはないと思うが、今後当面のマーケットを想定したときには、先ほど申しあげたBrexitの問題とか、FRBの利上げの問題があるので、しばらくリスクオンになったり、リスクオフになったりする状況が続いていくのではないかと思う。
 ただ、水準についてはなかなかコメントしにくいが、急激な円高というのはやはり企業経営にとっては大きな影響が生じる。現在いろいろ企業の方から決算報告あるいは決算説明を受けているが、皆さまの想定しているドル円の相場は大体105円から110円である。したがって、足元がこれを上回る円高になってきているので、もしこの水準が続くとすれば企業業績にも影響が出てくるのではないかと思う。


(問)
 さきほどBrexitについて言及されたが、足元マーケットが不安定な状況のなか、実際に英国がEUを離脱した場合、ドル資金が枯渇して混乱が生じるおそれはないのか。足元、ドルの調達コストが上昇しているが、日本の銀行はドル資金を十分に確保できている状況なのか。また、ポンドについて、どのような対策を講じられているのかについてお伺いしたい。
(答)
 Brexitについては、6月23日の国民投票まであと1週間となったわけだが、一部の世論調査によれば、EU離脱賛成派が反対派を上回るという調査も出てきており、予断を許さない状況と認識している。もちろん、最終的には英国の国民が判断されることではあるが、私個人としては、EU離脱による経済・金融面に対する影響が大きいと考えており、英国のEU残留を希望している。
 当行個別行の状況で申しあげると、国民投票実施前後において為替相場や金利など、金融市場が予期せぬ反応を示す可能性があるため、特に英ポンドについては十分な流動性をすでに確保し、対応を実行済みである。したがって、英国のEU離脱により直ちに大きな影響を受けるとは考えていない。ドル調達については、今のところ、それほど大きな影響が出ないのではないかと見ているが、当然リスクシナリオは想定しており、コンティンジェンシープランはすでに策定している。もともとドル調達については、私どもでは、企業からのドル預金やドル建の債券の定期的な発行などにより、安定的に調達を行っており、十分なドル調達を手当てしているため、ドルの調達について今のところ問題を抱えているということはない。もちろん、足元、少しドル調達コストが上がってきているため、それによる収益影響は若干あると思われるが、ドルのアベイラベリティについて心配する状況ではないし、Brexitが実際に発生したとしても直ちにドル調達で問題が発生するとは見ていない。


(問)
 三菱東京UFJ銀行のプライマリーディーラーの返上についてだが、マイナス金利で銀行も負担が重くなってきていることをまた一つあらわす現象かなとも思うが、まずこの動きの受止めについて伺いたい。また、個別行の話になるが、改めて三井住友銀行としては、こういう他行の動きも踏まえてどのように考えているのか。その背景、理由についても教えてほしい。
(答)
 まず、ある銀行がプライマリーディーラーの資格を返上するという報道がされているが、当該銀行はまだ何も発表しておらず、決定していないという状況だと思う。私も事実関係を承知しているわけではないので、今の段階でコメントできる状況ではない。では、我々、三井住友銀行がどう考えるかということだが、我々は総合的に判断して、今の時点でプライマリーディーラーの資格を返上する考えは持っていない。


(問)
 総合的な判断というところについてもう少し伺いたいが、マイナス金利で応札が4%とか幾つか条件があって、今の環境下で買い入れるとかなり負担が重いというか、損が出てしまうのではないかという懸念もあって、今回そういう動きが出ているとも見受けられるのだが、負担がさほど重くないという判断なのか、それ以外にプライマリーディーラーに残っていくことのメリットのほうが大きいという判断があるのか。もう少し、そのあたりの解説をお願いしたい。
(答)
 ある銀行がどのような観点で検討されているのかわからないので、これについては申しあげようがない。プライマリーディーラーのメンバーになっているということは、もちろん義務の面もあるが、一方で、財務省との意見交換の機会があるとか、それから国債市場特別参加者向けの入札があるとか、そういう意義もある。これらを総合的に判断して検討するということだと思う。これはもちろん各行の判断だが、我々は総合的に判断して、返上する考えはないということである。


(問)
 マイナス金利について、先ほど会長から、企業経営者が、さらに金利が下がるのではないかという思いからなかなか実体経済に影響が出ていないのではないかという話があった。仮に効果が出てくるとすれば、いつごろ、あるいは、どうすれば出てくると思われるか。
 また、日銀は三次元での追加緩和もあり得るというが、マイナス金利が深掘りされるならば、金融仲介をしている銀行にどういう影響が出ると思われるか。
(答)
 最初の質問のいつごろというのは、今の段階ではなかなか申しあげられない。企業が設備投資をするときには、もちろん金利も一つのファクターであるが、国内で設備投資をする場合は、日本経済の期待成長率がある程度見込めないと設備投資をしないということだと思う。したがって、先ほど申しあげたとおり、金融政策に加えて成長戦略、構造改革ということと、財政健全化を意識したうえで必要な分野に財政政策を打っていくという政策パッケージで日本経済を回復軌道に乗せていくことが必要だと思う。また、世界経済の不透明要因ももちろん投資判断には影響するので、そういったことを含めて、日本経済を回復軌道に乗せて投資できる環境へ持っていくことが必要だと思う。我々金融機関としては、企業のニーズにしっかりと対応する、先ほど潜在的な需要を掘り起こすというニュアンスで申しあげたが、そういった努力もしながら貢献していくということだと思う。
 マイナス金利が深掘りされた場合だが、まずマイナス金利のマイナス幅を拡大することについては、足元のマイナス金利政策導入による影響をよく検証し、次の判断をしていただきたいというのが基本スタンスである。先ほど、金融機関に短期的にはマイナスの影響を与えると申しあげたが、当然、深掘りされれば、金融機関に与える影響は拡大していく。その意味では、金融機関にとっては厳しい環境になっていく。しかしながら、我々金融機関にとっては、金融仲介機能の発揮が銀行の使命であるので、そういった環境の中でも各金融機関が努力をして、金融仲介機能を発揮していくことが必要であるし、それが我々に求められていることだと思う。


(問)
 先日閣議決定された日本再興戦略についてどのように評価されているか。また、銀行界としてどのように貢献されていくのか。
(答)
 「日本再興戦略2016」では、安倍政権の新・三本の矢のひとつである「名目GDP600兆円」の実現に向けて、有望成長市場の開拓、人口減少に伴う供給制約や人手不足を克服するための生産性革命、新たな産業構造への転換を支える人材強化の三つが柱とされている。
 有望成長市場の開拓については、AIやビッグデータの活用によって第4次産業革命を起こす、これは、経団連の言葉に置き換えると「Society5.0」という世界をつくっていこうということであるが、そうした第4次産業革命や世界最先端の健康立国など、官民を挙げて取り組む重点10分野について、意欲的な目標が掲げられている。
 わが国では、生産年齢人口が減少していくので、日本経済を持続的に成長させていくためには、潜在成長率を引き上げていくことが必要であり、そのためにはイノベーションによる経済成長、生産性向上が不可欠だと思う。これは金融業界でも、フィンテックと呼ばれる新しいIT技術を使って、新たな金融サービス・商品に結びつけていくことや、現在の業務を新しい技術を使ってより効率化していくなど、金融業界にも大きな影響をもたらしてくるものだと考えている。
 そうした取組みと人材育成の強化とあわせて、今回の日本再興戦略で示されたプランは非常に良いものが盛り込まれていると考えており、今後は、これらをどう実行、実現していくかがわが国に問われてくると思う。
 銀行界としてどのように貢献していくかについては、もちろん資金仲介機能や、資金供給機能を果たしていくことが最も重要であるが、それに加えて、成長戦略のサポートという面でも我々金融の果たすべき役割は大きいと思う。例えば、銀行界としては、成長市場に進出する企業へのファイナンスの供与や、海外の成長を取り込むために中堅・中小企業の海外展開を支援するといった取組みも必要になる。また、先ほど申しあげたとおり、フィンテックと呼ばれる新しい技術を使って新たな分野にも挑戦していきたいと考えている。
 成長分野への貢献という点では、当行個別行の例で申しあげると、成長戦略の医療、介護、環境、農業といった分野のうち、農業分野において、昨日、秋田県の大潟村あきたこまち生産者協会と農地所有適格法人を設立し、私どものノウハウ、ネットワーク、ファイナンスなどを提供させていただきながら、農業の成長産業化に貢献していくことを発表させていただいた。こうした地方の農業への取組みは、農業の攻めの経営という面のほか、地方創生にも資することから今回取組みを始めたわけだが、そうしたさまざまな分野で各金融機関がそれぞれ工夫して取り組んでいくことも、我々が果たすべき役割だと考えている。


(問)
 為替について、先ほど企業業績について言及があったが、円高により、金融機関、特に国際業務を拡大するメガバンクの経営にどのような影響があるとお考えか。
(答)
 円高となった場合の銀行業績への影響に関して、三井住友フィナンシャルグループの影響について申しあげると、ドル円が10円の円高になった場合、概算で、SMFG連結の当期利益は、130億円程度減益になる。
 一方、自己資本比率は、外貨建のアセットが多いこともあり、10円の円高で、概ねプラス0.1%から0.2%程度改善すると見ている。


(問)
 イギリスのファイナンシャル・コンダクト・オーソリティがコミッションしたレポートのなかに、イギリスの銀行が、マネロンの規制が厳しくなり過ぎているとか、資本規制のコストが上がり過ぎているため、銀行がややこしいお客さまというか、少し面倒くさいお客さまは新しくアカウントを作らなかったり、お客を絞っている動きがあるらしい。マネロンが厳しくなって、お客さまの選別を厳しくする、調べる際にお金がかかるのであれば、コストコンシャスなのでお客さまを削るのは経済論的にいえば普通の動きだと思うが、ファイナンシャル・コンダクト・オーソリティはそれではいけないといっている。銀行業界からすれば、規制は厳しくする、あれはするなこれはするな、でもこれはしろといわれると、何をしろというのか、という感じにならないか。
(答)
 まず、イギリスのファイナンシャル・コンダクト・オーソリティがどういうことをいわれているのか、あるいは実際にどういう状況になっているのか承知していないので、それについて直接的なコメントは避けたい。
 一般的に、規制と銀行行動、利用者利便の向上とコンプライアンス、規制遵守は、ある場面においては相反する概念になることもあるが、我々は規制を遵守しながら、どのようにしてお客さまに商品・サービスを提供していくかという命題を解いていかなければいけない状況にあると思う。したがって、マネロン等で我々に課せられる義務が大きくなってきているのも事実であり、言い換えれば、これは規制の社会的なコストだと思うが、そういう規制の社会的コストも勘案して我々としてどう判断していくかという問題だと思う。一般的に国際的な金融規制そのものにいえるわけだが、以前も話したかもしれないが、もともとリーマン・ショック以降の国際金融規制の強化は銀行経営の健全性、金融システムの安定性に大きく貢献をしてきた。足元でもいろいろな規制の議論がされているが、そうした規制が、例えば銀行の金融仲介機能をそぐことにならないか、市場の流動性を低下させることにならないか、いろいろな規制が輻輳的に重なってくることで意図せざる結果が出ていないかといった検証を常にしながら、進めていかなければいけないと思う。


(問)
 日銀のマイナス金利政策について、先ほど銀行収益にとっては短期的にはマイナスの影響とおっしゃった。同時進行で行われていた黒田日銀総裁の会見で、2015年度の金融機関の収益は大手行も地銀も極めて高い収益で、今のところ収益に大きなマイナス影響を与えたり、信用仲介機能を阻害することになっていないと思うと発言されている。先ほどの会長の発言とはギャップがあるように思うが、黒田総裁の発言についてどう考えるか。
(答)
 まず、マイナス金利政策が導入されたのが2月16日からであるため、収益影響は2015年度決算においてはそれほど含まれていない。一方、2016年度は、まさにマイナス金利政策がフルに効いてくる。もちろん日銀に預けている当座預金のうち、マイナス0.1%が適用される金額は、日銀当預残高全体の1割程度と少ないが、市場金利が大きく下がっている。我々は基本的に預金が貸出を上回る預超になっており、調達基盤は預金である。預金金利の引下げ幅には限界があるので、結果として、預貸金利鞘が縮小していく。この影響は、今年度フルにきいてくる。したがって、2016年度の決算においては、それなりの影響を与えるだろう。先般の各行の決算発表においても、前提条件がばらばらなので、金額は区々だったが、当行では数百億円程度のマイナス影響は出てくるだろう。それに加えて、足元の国際的な経済の減速、ボラタイルな金融市場を勘案すると、2016年度の銀行決算は非常に難しい環境にあると認識している。その中でも、我々はしっかり努力をしていく。