2017年5月18日

小山田会長記者会見(三菱東京UFJ銀行頭取)

髙木専務理事報告

 (なし)

 

会長記者会見の模様


(問)
 5月に入って各行の決算内容が発表された。マイナス金利の下で厳しい結果がかなり出たが、足元の収益環境について決算内容を踏まえて受止めをお願いしたい。
 2点目はカードローンの関係で、4月に日弁連が改めて総量規制を求める声明を出された。協会としては自主的な申し合わせをされたが、それを踏まえて改めて今後どのように全銀協として取り組まれていかれるか、見解をお願いしたい。
(答)
 最初の決算を踏まえた収益環境であるが、まず28年度の各行の通期決算は総じて見ると三つのポイントがあろうかと思う。一つはマイナス金利等を受け預貸利鞘の低下とそれに伴う資金収益の減少がかなり大きかったということである。それから、海外発の金融市場の不安定さを受けた運用商品販売の伸び悩み、そして米国の金利上昇等も受けた債券売却損益の悪化、こういったものを背景として足元の銀行業界の収益環境はかなり厳しい状況にあると言えるかと思う。現時点で開示している全国銀行114行の業務純益を集計すると、前年度比でマイナス約16%と、まさにそういった厳しい環境を反映した結果となっていると思う。
 業態別に見ると、まず当行を含むメガ3行が公表した平成28年度決算に関しては、各グループの個別事情により違いがあるが、政策株式売却、与信関係費用の落ち着き、あるいは一時的な税効果等といった要因による押し上げもあり、3メガグループ合算の当期利益は前年比マイナス1.4%で小幅な減益にはとどまっているものの、本業の儲けを示す業務純益については前年から1割程度の減益になっている。
 また、預貸ビジネスの割合の大きい地銀や第二地銀については貸出金利の低下に伴う資金収益縮小の影響がより大きく出ており、業務純益で約20%、当期利益で約15%の減益で、こちらも大変厳しい経営環境に置かれている。マイナス金利の影響で銀行の本業たる預貸ビジネス、資金利鞘がかなり厳しい環境にあり、また、それ以外の要因も幾つかあって、全体としては厳しい状況になったということである。
 29年度の銀行ビジネスを取り巻く環境を展望しても、マイナス金利を受けた預貸利鞘の縮小による資金収益への下押し圧力が継続していくということ、あるいは足元もそうだが、グローバルな政治情勢であるとかマーケットの不透明性や不確実性など厳しい経営環境が続くと思われるので、収益力を大きく回復していくという道筋はそう容易なものではないのではないかと思っている。確かに足元は調達金利の一段の低下を受けて、貸出ボリュームの増加がうかがえる点はプラスの側面とは言えようかと思う。例えば全国銀行116行の貸出残高は平成23年9月以降、昨年度末にかけて67ヶ月連続で増加しているし、貸出先別に見ても、個人、法人向けとも拡大基調を維持している。ただ、こういった貸出の増加がマイナス金利に伴う利鞘縮小をカバーするということにはなかなか至らないと考えている。
 このように貸出ビジネスの厳しさが当面続くと予想されるなかではあるが、どのように収益をあげていくかについては、金融仲介機能の向上に加えて、非金利収益、手数料ビジネスをどのように伸ばしていくかということが各行共通の課題になろうかと思う。各行がお客さまや基盤とする地域の特性、あるいは自身の強みを踏まえた経営戦略の下で、個人のお客さまの安定的な資産形成に関する運用商品の提案、あるいは事業承継や国内外でのビジネスマッチング、M&A支援、FinTech等の急速な進化を遂げるテクノロジーを活用した新たなビジネス創出を通じて、お客さまから真に評価される金融サービスを提供していくことが重要だと考えている。
 2点目のカードローンであるが、3月に全銀協で申し合わせを行ったが、それ以降も各種報道や国会での質疑、日弁連の会長声明など、銀行カードローンに対していろいろな指摘があることは全銀協としてもよく認識しているところである。大切なことは、申し合わせを申し合わせにとどめることなく、その実効性をどう高めていくかということだと思う。各行がカードローン業務の質の向上を図ることで、多重債務の発生抑制や過剰な借入れの防止につなげていくことが必要だと思う。
 全銀協としては、銀行のカードローン業務をしっかりと見直していく必要があると思っており、本日は全銀協の取組みの状況を少し丁寧にご説明させていただきたいと思う。
 まず、3月に申し合わせを行ったが、4月には全銀協の関係部会を開催している。この部会において、申し合わせの内容の実施に当たり考慮すべき事項として、例えば、申し合わせにある配慮に欠けた広告の抑制について、「総量規制対象外」であるとか「年収証明不要」といった表示はないかなど、各行が自行のカードローン業務の見直しを行う際のポイントを具体的に例示し、会員行に周知を行っている。また、5月にも再度部会を開催し、その際には、4月の部会以降、新たに国会等で指摘をいただいた内容、例えばホームページにおける表示の詳細な確認を行っているか、アフェリエイト広告の丁寧な点検を行っているかということを追加して、同様に会員行で共有している状況である。加えて、申し合わせの審査体制の整備については、貸金業法の総量規制の趣旨を踏まえて、各行における方針検討のなかで貸金業法と差分があれば、その理由についてしっかりと説明を行うことができるかということとともに、過剰な借入れとならないような仕組みを検討することを周知しているところである。全銀協としては、会員行の適切な業務運営に資する取組みを今後も継続していきたいと考えている。
 その一環として、こういった情報発信に加えて、会員行が申し合わせを受けてどのような業務運営の見直しを行ったか、または検討しているかを把握するために、会員行を対象にカードローン業務に関するアンケートを実施している。このアンケートは集計したうえで内容を会員行と共有し、改めて必要な見直しを促していく。加えて、全銀協として多重債務防止のための消費者向けの啓発活動も実施していきたいと考えている。例えば、全銀協のウェブサイトでのカードローン借入れに際しての注意喚起であるとか、会員行が使用できるようなツールの作成等を検討している。
 このように、全銀協では会員行の自律的な取組みを後押しするべく、環境認識の共有や必要な情報の発信、各行の取組みのフォローといった対応を重ねて、健全な消費者金融市場の形成に資する取組みを実践していきたいと考えている。
 次に総量規制だが、貸金業法における総量規制は、原則、年収の3分の1を超える貸付けを行わないというものである。本規制の導入後、貸金業者による貸付残高は減少し、多重債務者も減少したということを踏まえると、相応の効果はあったと認識している。お客さまにとって過剰な借入れとならないといった観点において、貸金業法の総量規制である年収の3分の1という基準は当然意識することが重要である一方、年収やご返済の能力等はお客さまによってさまざまであり、また、お客さまのライフイベントや資金ニーズも踏まえると、一律に年収の3分の1のみで判断するということでは必ずしもないと考えている。また、貸金業法の総量規制は貸金業者からの借入額のみを対象としたものであるが、銀行カードローンでは総量規制を十分に意識しつつ、貸金業者の借入額のみではなく、他行のカードローンも考慮したり、さらに個々の銀行におけるお客さまの属性、あるいは固有に保有するお客さまの情報を活用した審査も可能であると考えている。重要なことは、お客さまにとって過剰な借入れとならないということ、また、銀行が貸し過ぎないということであって、そのためには申込時の貸付審査に加えて貸付実施後の途上管理、保証会社と連携した代弁率のコントロールなど、トータルでの与信管理が必要であると考えている。
(問)
 アンケートがあったが、いつをめどに公表するのか。また、どのような調査をされているのか。
(答)
 アンケートについては5月末を目処に一旦集計をして、これを会員行に周知していきたいと思っている。会員行はそれぞれアンケートを通じ、全体の状況や他行の状況を認識し、それを踏まえて再度自行の状況を点検、必要な見直しを行っていく、そういったプロセスを重ねていきたいと思っている。


(問)
 全部で3点お伺いしたい。一つは、お話しされた取組みにあるように、銀行業界では広告表現の見直しとか、収入証明を確認するという動きが出てきているが、これで本当に過剰融資を防げる効果を発揮できるのか。
 次に、銀行のなかには、高い収益を得るために現場にノルマを与えてどんどん貸していこうという姿勢が、濃淡はあるものの見られる。こういうことが改まらないと、なかなか今起きている問題を解消できないのではないかと思うが、どう考えるか。
 3点目は、先ほどのアンケートについて、公表の考えがあるのか。
(答)
 まず最初の質問だが、各行は広告や収入証明についていろいろと対応を重ねており、自己点検をして、しっかり見直していくということである。これ以外にも、例えば、貸金業法では貸付限度は原則年収比の3分の1ということであるが、仮にそれ以外の上限を設けるのであれば、この3分の1を意識しながら、自行の取組みをどう評価できるのか、代弁率の状況や貸倒率の状況を見ながら、お客さまの借入れニーズに対し、返済能力があるお客さまに適正に貸出をしていくということを意識した審査が必要であろうと思う。また、途上管理として、貸付け後のフォローをしっかり行うことも含めて、トータルに見直していくということだと思う。
 また、2点目の質問の営業姿勢については、健全な消費者金融市場を育成していくという観点で、資金ニーズのあるお客さまに対し、しっかりと返済能力やこれまでの返済実績を確認していくということが大切である。そして、そういうことを積み重ねていかないとマーケット自身がサスティナブルには成長していかないと思うので、営業姿勢のあり方についても、当然、各行ではいろいろ点検することになろうかと思う。
 アンケート結果については、取りまとめたうえで、ある程度要約したかたちで公表できるかどうか検討していきたいと思う。


(問)
 2点ある。1点目が今日発表されたGDPだが、1月から3月までは実質で前の3ヶ月と比べてプラス0.5%、年率に換算してプラス2.2%ということで、5期連続のプラスとなった。消費や輸出が全体を押し上げたということだが、見方によっては消費も10月から12月に横ばいだった反動で基調は弱いのではないかとかいう指摘や、設備投資も海外発のリスク要因を意識して、伸びてはいるが弱かったのではないかという声もある。回復に向けてしっかりとした動きが出てきたと評価されるか。また、景気リスクはあまりないとお考えか。
(答)
 今日発表された1-3月期のGDP統計であるが、お話があったとおり、年率2.2%と、5期連続のプラス成長ということで、4月の日銀の景気判断においても、わが国の景気は緩やかな拡大に転じつつあるとされたが、今回のGDP統計の結果はまさにその証左の一つと言えるのではないかと考えている。需要項目別には、昨年後半の回復は、輸出増加を主因とする外需主導型の色彩が強かったが、今回の1-3月期は個人消費や設備投資を中心とした内需が牽引役となっており、日本経済が自律的な景気拡大局面に入りつつあることが読み取れるのではないかと思う。また、国内の在庫調整も一巡しつつあるなかで、これまでGDPの押し下げ要因となっていた在庫投資がプラスの寄与に転じたことも、先行きの景気にとっては明るい材料であり、日本経済は緩やかな拡大基調を維持すると予想している。昨年前半にかけて減速していた企業収益が為替水準の円安方向へのシフトなどから再び増勢を強めつつあるし、国内の生産サイクルも在庫調整局面を抜け出しつつあることで、今後の企業部門の投資マインドは堅調に推移するのではないかと思う。
 家計においても、底堅い消費はまだ続いていくのではないかと思う。就業者数の増加を支える企業の旺盛な採用意欲もあり、耐久消費財の購買意欲も出てきているので、その辺はポジティブに見ていいと思う。ただ、海外はいろいろ不確定要因がある。前回の会見でも触れたが、不透明感が強まっている米国のトランプ政権の政策運営の動向、あるいは英国のEU離脱の交渉の行方、地政学的リスクの高まり、こういったものが輸出動向やマーケットに大きな影響を及ぼし、結果として国内の景気を押し下げる要因になってくるのか、こういったリスクはよく見ていかないといけないと思う。
 日本経済は上向きの景気循環のなかにあって、外的ショックに対しても、堅調な雇用情勢に支えられた内需の底堅さという相応の耐久力を持っていると思うが、海外のリスク要因については、しっかり目配りをしていくことが必要であると思う。
(問)
 2点目、秋篠宮ご夫妻の長女の眞子さまが大学時代の同級生である小室圭さんと婚約されるという報道があった。こちらについて喜ばしい話題であると思うが、会長のご所見をお願いしたい。
 また、一部報道では、小室さんは金融業界にお勤めになられたことがあって、三菱東京UFJ銀行に勤務されていたという話もあった。なかなかお答えしにくいことではあると思うが、人柄や仕事ぶりなどについても、もし可能であればお聞きしたいと思う。
(答)
 まず、眞子さまのご婚約については、大変喜ばしいことと受止めているし、大変嬉しく思っている。小室さんのお話で、私ども三菱東京UFJ銀行に在籍していたのではないかということだが、これは個人に関することであるので、大変恐縮だが、回答は差し控えさせていただきたいと思う。


(問)
 2点お願いしたい。先日、ロンドン支店の大口の法人預金に関してマイナス金利を適用するという報道があり、現在、お客さまに通知しているところだと思うが、一方で、日本でも去年の2月からマイナス金利が始まって、おそらく長期化しそうだというなかで、国内の法人や個人のお客さまへの対応は、現時点ではそういったことはしていないが、今後もその取扱いに変更がないのかどうか教えてほしい。
 もう1点は、海外でのM&Aが加速していくなかでは当然かもしれないが、日本郵政の話のように、なかなか期待したような業績をあげられずに巨額の損失を計上するという事例が散見される。海外に打って出る流れは止められないと思うが、今後、海外のM&Aで成否を握るポイントは、会長としてどのようにご覧になっているか教えてほしい。
(答)
 まず、マイナス金利だが、個別行の案件になるが若干コメントをすると、今お話しのとおりロンドン支店で記帳される一部の大口のユーロ建ての定期預金において、お客さまの合意の下でマイナス金利を適用することを予定している。ただ、現時点では適用に至っていない。今、具体的なお話をさせていただいているところである。
 預金金利設定については各行がそれぞれの状況にもとづいて判断するものだが、国内について、個別行として申しあげると、現在、個人あるいは法人のお客さまの国内預金にマイナス金利を適用している例はないし、また、現時点では、今後も適用を予定していない。国内においては、なかなか預金にマイナス金利を付与するのは難しく、特に法人のお客さまについては、トータルでの取引採算を意識しているが、直接的にマイナス金利を国内の預金に適用することは現状考えていない。
 それから2点目、M&Aは難しいというか、高値づかみかどうかということだが、高値かどうかというのは、シナジーや、M&A後の成長戦略のあり方とリンクしていると思う。確かに今、日本企業の海外におけるM&Aは件数、金額とも高い水準で推移しているが、グローバルに業界の再編、あるいは集約が進んでいるなか、日本だけではなく、世界各国で海外のプレーヤーも買収案件に応札するため、買収価格に反映されるプレミアムが上昇しやすい状況にあると思う。日本市場が少子高齢化の下で成熟度を高めるにつれ、日本企業が成長を海外に求めるという動きは当然強くなってくると思うし、また、グローバルな産業再編、あるいはいろいろな競争の激化にしっかり備えていかないといけないということで、日本企業として海外事業をしっかり取り込むという戦略のなかに、M&Aが位置づけられていくと思う。
 ただ、大事なことは、しっかりとしたデューデリジェンスを行うこと、すなわち、本質的な買収先の価値あるいは本業とのシナジーを見極め、実現可能性の高い成長戦略が描かれているかどうかをプロフェッショナルや専門性を駆使して確認していくことを含めて、冷静に交渉していくということだろうと思う。
 また、買収後だが、買収時に想定しなかったような市場の変化、あるいは規制環境の変化、競争環境の変化、いろいろなものが出てくるので、ポスト・マージャー・インテグレーション、つまり買収後の経営管理あるいはそのガバナンスの効かせ方が非常に大事だろうと思う。したがって、買収後の適切な経営戦略をスピーディーかつ柔軟に実行できるか、その実行力、実践力が問われていると思うので、海外でM&Aを進めるにあたっては、買収前のデューデリジェンス、シナジーの見極めと、ポスト・マージャー・インテグレーション、この両輪をしっかり機能させていく必要があると思う。


(問)
 東芝について伺いたい。先日はウエスタンデジタルが、東芝が売却しようとしている半導体ビジネスの差止めの請求を行っている。各行が引き当てを積むような先に対し、預金者のお金を預かる立場の業界や個別行として、今後継続して融資していくことが責任ある銀行の立場だと考えているか。
 また、多くの金融機関の融資先でもあるかと思うが、今後、東芝に望むことがあれば教えていただきたい。
(答)
 東芝は社会的にも非常に重要な事業を営まれている。ご指摘のとおり非常に厳しい環境にあられると思うが、メモリー事業への外部資本導入などを通じて財務体質を強化していくといったような具体策を、今、いろいろ詰めているところである。
 ウエスタンデジタルとはしっかりこれからも交渉していくだろうと思うが、財務体質の強化に向けた取組みや、先般のウエスチングハウスのチャプター11の申請で将来のリスクを遮断していくとか、あるいは分社化によるガバナンス体制の再構築であるとか、そもそも決算がまだ監査法人の意見を得られていないことに課題があるなか、一つ一つ取り組んでいくことが必要だと思う。まずはこれらの取組みを、時間軸を意識して、しっかり仕上げていただくことが、東芝に求められていると思うし、私どももぜひそれは期待したいと思う。
 財務体質やガバナンスを強化し、あるいは監査法人との関係をしっかりともう一度構築していけば、今後の再建もなし得る状況だろうと思う。今非常に大事な時期なので、その状況をよく見守っていきたいと考えている。


(問)
 決算を踏まえて収益環境が非常に厳しいというお話があった。全体状況を見てみると、メガバンクも地銀も地方での貸出などで消耗戦を繰り広げているようにも見える。地銀は仕方ないとしても、メガバンクが地方で単純な貸出ビジネスを展開するということにどこまで意味があるのだろうかと思う。この点について会長はどのようにお考えか。
(答)
 収益環境がマイナス金利で非常に厳しくなるなかで、各行それぞれ戦略があろうかと思う。個別行の話で恐縮だが、三菱UFJフィナンシャル・グループあるいは三菱東京UFJ銀行としては、貸出単体というよりは、どちらかというと、どういうかたちでお客さまに付加価値をつけていくか、よりグループを挙げてシームレスにどのようなサービスを提供していくか、まさにソリューション・ビジネスをどうしていくかが一番の根幹にあろうかと思う。
 貸出は、リレーションをつくるうえで一定の意味はあるが、競争して金利を安くしながらシェアを取っていくという話ではないと思う。また逆に、いろいろなソリューションを提供するに当たって、地方銀行と協働していく余地もあろうかと思う。そういう意味では、地方においてメガバンクが貸出を伸ばすというよりは、お客さま基盤は地方銀行がしっかりしたものをお持ちなので、地域それぞれのリレーションシップ・マネージャーとうまく協働しながらシナジー・ビジネスを広げていくということだと思う。
(問)
 将来、やはり地銀と協業、協力、役割分担が必要になっていくというお考えか。
(答)
 今も地方銀行とはいろいろなかたちで協働したり、商品供給について話し合いをさせていただくなど、連携は出てきていると思う。また、先ほど申しあげた役割分担、機能分担という意味でも、地方銀行のリレーションシップ・マネージャー機能の強さを前提にしながら、メガバンクが一緒に、いろいろなサービスを提供していくということはすでに行われていると思う。これをさらに将来に向けて発展させていくということだろうと思う。


(問)
 1点目は、今年度、全銀協はキャッシュレスの研究を進めていくと聞いた。その狙いと背景、キャッシュレスをどのように金融界として受止めていくのかを伺いたい。
 2点目は日銀の金融政策である。出口戦略が話題になっているが、金融界として注文があれば聞かせてほしい。
(答)
 まずキャッシュレスだが、日本のキャッシュレス比率は諸外国に比べて低い。米国は40%、中国、韓国は50%、日本はそれに対して20%ということで、キャッシュレスを進めていく余地は大きいと思う。また、キャッシュレスにより全体として決済が効率化されていく、あるいはキャッシュレスを前提に、デジタル化の推進のなかで、いろいろなサービスや付加価値を付けやすくなっていく、ということであり、日本としてキャッシュレスの比率を上げていく、あるいは、全銀協がそれを後押ししていくことは非常に大事だと思う。クレジットカードだけではなく、電子マネー、モバイル決済、あるいは我々が個別行として試行しているMUFGコインのような仮想通貨決済等、多様なキャッシュレスでの支払い手段が出てきているが、これらをしっかり融合させながら、お客さまにとって利便性の高いプラットフォームをどう作っていくのかは大事なテーマだと思う。そのためには利用環境の整備やセキュリティ対策、利用者が便利にかつ安心して使えるような環境をつくっていくことが求められていると思う。
 また、国全体としてeペイメントを進めていくとか、国のインフラとしてのキャッシュレスを進めるということもあろうかと思うので、関係省庁や関連企業と連携したうえで推進していきたいと考えている。
 次に日銀の出口戦略だが、市中流通量の国債の4割を日銀が保有するなか、出口のあり方が日本経済、あるいは財政のあり方に大きく影響を及ぼしてくる。したがって、今、出口をどうしていくのか、報道、あるいは自民党でも問題意識が高まっている状況だと思う。日銀はこの重要性は当然意識されていると思うし、黒田総裁もツールはいろいろあるという話をされている。また、今後もさらに様々なシナリオを想定されていかれると思うが、やはり市中との対話というか、マーケットとの対話を重視していただきたいと思う。まずは2%への物価上昇に向けて対応を進められているが、タイミングや機会を捉えながらコミュニケーションをさらに深めていくことは必要だろうと思うし、またお願いしたいと思う。


(問)
 カードローンについて、年収の3分の1という水準を意識することを言及していたが、こちらの取材では大手行の姿勢を見ても、年収に対する貸付割合にばらつきがあるように聞いている。例えば全銀協として、意識するということだけではなく、ある程度の目処を示す考えはないのか。もしないのであれば、いつも銀行業界は足並みをそろえることが多いなかで、今回はそういうことは考えていないことに何か理由があるのか。
(答)
 カードローンについては、貸付金額を原則年収の3分の1を上限とするという貸金業法を認識したうえで、もしそれと違う上限額を設定するということであれば、なぜ違うのかというのはよく見ていく必要があろうと思う。三菱東京UFJ銀行でも、年収の3分の1を超えるところに一定の上限を設けているが、これは貸金専業者だけではなく、他のカードローンも含めた上限額としている。そして、グループの信用保証会社であるアコムからいろいろ情報を得ながら審査している。年収の3分の1までの貸倒率と、それを超えた上限額までの貸倒率を比較すると、むしろ3分の1を超えた一定上限のところまでの方が貸倒率が低いというデータも出てきている。おそらく各行がこういったかたちでそれぞれの代弁率、貸倒率を見ながら、それぞれのお客さまの返済能力や借入れ実績、銀行の口座情報、銀行のお客さまの基盤や地域特性などを丁寧に見ていくことで、いろいろなバリエーションがあろうかとは思う。ただ、やはり銀行にとって貸し過ぎない、お客さまにとって過剰な借入れにならないということが非常に大事であり、資金ニーズのある方に返済能力の範囲のなかで機動的に資金需要にしっかりお応えしていく、その目線をどこに置くかということは、まさに経営の問題として、主体的に取組みながら、PDCAを回していくのだと思う。
 今回アンケートを実施するが、会員行には申し合わせでも整理したいろいろなポイントを意識しながら、具体的な経営判断や取組みをぜひ進めていただきたいと思っている。
(問)
 先ほどの収益環境について大変厳しいという話だが、そうしたなかで大手行はそれぞれ中期経営計画、あるいは御行は構造改革を発表しているが、どうしても店舗改革も含めて、どちらかというと守りというか、効率化が中心となっているように見える。しばらくは守りの経営というかたちが続くのか、それとも、ここで攻めるんだといった考え、御行の話でもいいので聞かせてほしい。
(答)
 個別行でそれぞれ戦略があろうと思うが、三菱UFJフィナンシャル・グループとしては、今お話があった構造改革として、改めてグループを再構築していくことを発表した。これは守りというよりは、むしろこういう経営環境のなかでチャレンジをしていくということであり、今後、2023年度までに、収入ベースで1,800億円、コスト削減で1,200億円と、約3,000億円の効果を出していく。FinTechやデジタル化が進むなかで環境も変わってくる、お客さまのニーズも変わってくる、一方で、我々はいろいろなソリューションを提供する余地もある。グループの機能を集約して、それぞれの事業会社の機能を強化することで、よりシームレスに、かつタイムリーにお客さまのニーズにお応えできるというような状況になるよう、戦略を立て、むしろ攻めの経営をしっかりやっていきたいということである。
 一方で、申しあげたデジタル化の推進のなかで、コスト削減の意識も出てこようが、これは両面あるということだと思う。店舗戦略について言えば、店舗の最適化をどう図っていくか。これは、リアル店舗とネットをうまく融合させながら、店舗の最適化を図っていくということなので、必ずしも集約ありきとか、コスト削減ありきということではなく、やはりお客さまから見て非常に使い勝手がよく、付加価値が感じられる、そういった戦略を進めていきたいと思う。


(問)
 2点質問させていただく。1点目は、先ほどの東芝の質問の追加だが、今後の継続融資に対するお考えをあまり明示的にお答えいただけていなかったが、例えば、今の残高の維持とか、さらに追加の支援とか、御行のお考えについて、もう少し明確にお答えいただきたい。
 もう1点は、人材の活用の観点の話だが、最近、若い支店長が結構誕生している。みずほ銀行でも34歳支店長と出ているが、そういった業界の動きと、特に御行についての状況を教えていただければと思う。
(答)
 最初の東芝への質問だが、これは個社のことであるし、具体的なコメントは控えさせていただければと思う。若干付言させていただくと、先ほど申したように、東芝はいろいろな取組みをされており、それを我々はしっかり見守りながら、そして主力行のスタンスもよく見ながら、的確な対応をとっていきたいということである。東芝の今の努力をしっかり見守りながら、必要な対応を図っていくということだと思う。
 2点目のみずほ銀行をはじめとして若返りが進んできているということだが、これも個別金融機関のお話であり、またみずほ銀行については報道ベースということであるが、年功序列にとらわれずに有能な若手を積極的に登用していくということは、組織の活性化あるいは活力増進という意味では非常に意義があると思う。みずほ銀行では、聞くところによると、公募制を導入しながら、そのなかで手を挙げた人を積極的に登用されているということだと思う。働き方改革ということもあるが、各社の業務戦略に合わせて、人材登用のあり方や若手社員に対するインセンティブの付与、あるいは適材適所となるポスト登用、処遇、人材のポジショニングは非常に経営戦略を進めていくうえで大事であり、やる気を引き出すという意味で、若手登用を進めていくことは意義があると思う。我々も個別行では実力本位を徹底して、年次や資格等にかかわらず、ポスト登用に軸足を置いた人事制度あるいは処遇、運用を実現することを課題と認識しており、今、ポスト登用に向けた登用率の引上げ、現場と本部の積極的なローテーション、若手登用、そうしたものに取り組んでいるところである。
 ただ、若手の早期の登用というのは非常に大事だと思うが、一方で、少子高齢化を考えると、シニア層の活用も非常に重要なところがあると思うので、若手からシニアまでトータルにどのように登用、活用していくか、人材戦略の高度化が必要になっているタイミングであろうと思う。


(問)
 地銀の再編について二つお聞きする。先ほど決算の総括にもあったが、厳しい環境が続く。国内業務が中心の地銀には、このマイナス金利のなかで、どのような対応・対策が求められると思うか。
 また、銀行再編の効果について、規模の利益やコスト削減以外にどのようなメリットが期待されると思われるか。
(答)
 非常に厳しい環境のなかで、再編というのは一つの重要な選択肢だと思う。後者のご質問からお話しすると、再編による規模のメリットやコスト削減もあるが、統合することによって、いろいろなリソースが出てくる。それを前向きなソリューションの提供や、サービス内容の幅を広げるために、今まさにFinTech、ICTの進展もあるなか、こういったものをどう取り込んでいくか、統合することにより充実化するリソースをそういったものにどう振り向けていくかということは、大きなポイントになるのではないかと思う。粗利を増やしていくうえでも意義があるのではないかと思う。
 また、こういう環境のなかで、地方銀行でも金融仲介機能をどう強化していくのか、いろいろ取り組まれている。単なる貸出ということではなく、お客さまのニーズをどう引き出し、そのニーズを踏まえたソリューションをどう用意していくのか、さらに進めていかなければならないなか、今申しあげた統合の効果として生み出しやすくなるということもある。あるいは、貯蓄から資産形成へということで、個人のお客さまにおいては、さらにお客さまの資産運用の幅を広げるべく運用商品ビジネスの高度化を行っていくということもあろうかと思う。これは成長資金として企業に供給していくことにつながる。また、企業のオーナーへの事業承継や資産運用のご提案など、幅広いビジネスのポテンシャルがあると思うので、そのようなところにフォーカスをして新たなビジネスモデルをつくっていくということだろうと思う。


(問)
 金融庁が顧客本位のサービスを求めるなかで、銀行でも販売している貯蓄性の保険商品や投資信託で手数料の開示が一般のお客さまに対してわかりづらく、それがハードルとなって貯蓄から投資への流れが生まれにくくなっているのではないかとの指摘があるが、その辺はどのように受け止められているか。
(答)
 投信手数料等については、目論見書に記載され、重要事項説明書等を用いながら、お客さまに具体的な商品の内容や手数料の内訳等について説明しているところであるが、今後はまさに顧客本位の業務運営のなかで、お客さまによりわかりやすいかたちでご説明する、ということだと思う。特にこれから大事なのは、これまで運用商品での資産運用をされていなかった、預貯金だけのお客さまにどのようなかたちで資産形成に向いていただくのかということだと思うし、そういったお客さまにしっかり説明をしていくためには、手数料の内訳や手数料をどういったものの対価として頂いているのかについてきちんと説明しながら、お客さまのご理解を得ていくということだと思う。それが今回のフィデューシャリー・デューティーであり、我々としてはインベストメントチェーンのなかで具体的な活動として推進していかなければならないと認識している。


(問)
 代理人による預金払戻請求への対応について、金融庁は4月の主要行との意見交換のなかで、預金者本人の意思が確認できない場合の代理人による預金の引出請求について、銀行界の柔軟な対応を求めている。銀行界としては、何とか払い出そうと努力されていると感じているが、不正な引き出しになるリスクを考えると、現実的には難しい場面も出てくると思う。金融庁のこうした要請について会長はどのように受け止めているのか。また、不正な引き出しにならないようにしつつ、最大限対応するにはどうするべきと考えているか。
(答)
 高齢化社会の進展等を踏まえると、代理人による預金の払戻しのニーズは大きく存在すると思う。したがって、銀行界としても、そういった要望に対して、的確、柔軟に対応していくことは必要だと考えている。不正引き出しにならないように留意しつつも、硬直的な対応となることなく、預金者本人が来店できないのであれば、その理由や資金使途、その金額の妥当性について、丁寧にお伺いしながら、柔軟に対応していくことが必要だろうと思う。もちろん第三者からの預金払戻しは、家族といえども、通帳や届け印をお持ちであったとしても、預金者本人の意思にもとづかない場合は不正な引き出しとなるので、銀行としては、しっかり確認する必要がある。ただ、まさに高齢者の方やご本人が来店できないときに、そういうニーズは厳としてあるので、そのバランスをどう取っていくか。基本的には、お応えしていくためにどうしていったらいいかということで、お客さまに確認する内容も含めて、具体的なものを我々としてプロセスを明確化して、柔軟に対応していくということだと思う。
 そういった個々の対応に加えて、代理人キャッシュカードの発行であるとか、本人に代わり銀行取引を任せたい代理人を事前に指名していただくという代理人届けといった手続を取り扱う銀行も増えてきており、予めこういった枠組みを紹介しながら対応させていただくこともあるのではないかと思う。
(問)
 金融庁の顧客本位の業務運営に関する原則についてだが、先日、金融庁で公表したパブコメの内容を見ても、原則の表現が抽象的で、本当に金融機関に根付くものなのかという懸念は強かったように思う。この原則によって銀行界は、顧客本位の姿勢をよりよい方向に変えることができると考えているのか。また、三菱UFJフィナンシャル・グループでも取組みの状況についての指標を開示しているが、PDCAサイクルを回すためにKPIを開示する効果も含めて考えを伺いたい。
(答)
 顧客本位の業務運営、フィデューシャリー・デューティーをどう徹底していくかだが、これは終わりがあるということではないと思う。常にレベルを高めていかなければいけない。今回のお話のなかでも、競い合いながらというところもあると思うが、我々として、こういう厳しい経営環境だからこそ、お客さまに真の価値をお届けし、お客さまにぜひご利用いただくという循環をつくり出していかなければいけないと思う。そのためには、お客さまのニーズをどう引き出し、お客さまにとって最適な、最善のソリューションをどう提供していくのか。あるいは、それが本当にお客さまのためによかったのかどうかというフォローアップも含めて、そういう循環をしっかり回していかなければいけないということと思う。そのための一つの道しるべとなる原則が今回公表されたということと思う。どう肉付けし、実践に移していくのかは、各行がそれぞれの経営戦略のなかでしっかり取り組んでいかなければいけないことだと思う。
 したがって、その原則を踏まえながら具体的に経営方針、運営方針を定め、それを行内に浸透させ、従業員教育を行い、インセンティブをしっかり与え、お客さまにしっかり向き合う、そういう循環をつくっていくことが、今のタイミングで求められていることだと思う。それは各行が創意工夫をしながらやっていくことだと思う。そうしたなかでKPIの活用というのは重要なファクターになってくると思う。我々は5月2日に方針と具体的なKPIの内容を開示させていただいたが、我々が目指すものを、お客さま、あるいはいろいろなステークホルダーに対して説明するとともに、行員に対しても、こういうKPIを設けて、経営としてこういったものに価値を置いているのだということを浸透させていきたい。お客さまとのコミュニケーションをとるために、KPIを軸に対話をしていくことは大事だと思うし、それを具体的な成果というかたちで持続的に示し、中長期的にそのレベルを上げていく、そういったかたちで見える化を進めていくことは非常に価値があると思っている。


(問)
 顧客本位という言葉について少し違和感を感じている。そもそも顧客本位というのは、三方よしの近江商人ではないが、数百年前からそれが当たり前であって、それを今さら顧客本位と言われているということは、金融業界は今まで顧客本位ではなかったということなのか。例えば個人に損が出るのをわかっているような商品を売りつけていたのか。それともM&Aに不慣れな企業に減損が出るような海外企業を売りつけたのか。そもそも顧客に背中を向けて仕事をしてきたから今顧客本位と言っているのか。どのように総括されているのか。
(答)
 我々としては、経営の大事な理念として、顧客本位を常に掲げてきて、その実践に努めてきた。ただ、これには終わりはないということだと思うし、特に今はインベストメントチェーンにおいて、貯蓄から資産形成の大きな流れ、うねりをつくっていこうというときに、まだまだやるべきことはあるのだろうということと思う。中長期的にお客さまの本当のニーズをどう引き出し、お客さまがこれまでの運用のスタイルをどう考え、お客さまにとって最善の道はどういったことなのか、ということに我々が踏み込んでいくということであり、まだ我々としてやるべきことはあると思う。これは金融仲介機能が成熟化するなかで、いろいろな課題が出てきているということであり、自ら、銀行がもっと主体的にお客さまに対して働きかけていく、あるいは、そのようなソリューションをご提案させていただくという意味で、顧客本位のレベルをさらに上げていくという、そういう取組みを行っていくということだと思う。


(問)
 1点目は先日発表された構造改革について。三菱UFJ信託銀行の法人貸出部門を三菱東京UFJ銀行に今後統合されていくということだが、統合に関するメリットはあると思う一方で、東芝など同じ貸出先にそれぞれが融資されているケースなどへの課題もあると思う。法人貸出を統合するメリットと、現状で認識されている課題について教えていただきたい。
 2点目は、フランス、ドイツと欧州情勢が少し落ち着きを見せるなか、アメリカではトランプ大統領がFBIの長官を解任したり、ロシアゲートなどと言われたりしているが、直近のトランプ政権をどう見られているか。
(答)
 先ほど言及したが、構造改革プランということで、今回、私どもとしてやや先を見据えた方針を発表させていただいた。そのなかで、一つの大きな柱がバンキングの統合である。これは、三菱UFJフィナンシャル・グループとして総合金融サービスをシームレスに提供していくということで、お客さまの高度化、多様化するニーズに対してしっかり応えていく。そして、それぞれの事業会社が自社の強みを磨きあげて、それをグループ一体で運営していくということであり、バンキングについては銀行に集約する一方で、信託は不動産、証券代行、年金、アセットマネジメント、資産管理といった信託銀行ならではの業務にさらにリソースを投入していくことで、グループ全体として一層強くなっていくことを目指したものである。
 これから1年かけて統合のプロセスを進めるが、まず一つはお客さまにしっかりご理解をいただくということだろうと思う。これは、貸出もあるが、我々としてのソリューションをいろいろなかたちでグループ一体で運営していくことの実感をお客さまにしっかり持っていただくことが大事だろうと思う。今後具体的にお客さまとコミュニケーションさせていただき、その結果として三菱UFJフィナンシャル・グループの取引地位が上がったり、いろいろなかたちで接点が増えていくということをぜひ期待したいところである。
 さらに、統合するなかで、人材を他の成長分野に振り向けることも可能になってくるので、そのような人材を有効に活用しながら、さらなるソリューション力や付加価値を高めていく道筋をつくっていくことが大事だと思う。この1年間、しっかりと対応していきたいと思っている。
 2点目の、今の足元の米国の状況だが、不透明感が強まってきたと思う。コミー長官の解任問題やロシア政府との関係の問題、昨日もFBIの捜査に圧力をかけた疑いが出てきており、一部トランプ大統領の弾劾まで取り沙汰されている状況である。トランプ政権の政権遂行能力に対する懸念がかなり出てきているので、この状況はよく見ていかないといけないと思う。今、市場ではリスクオフの動きが強まってきているが、加えて、今後、減税やインフラ投資、規制緩和、あるいはオバマケアの代替策など、トランプ政権が進めようとしている政策に遅れが出てきたり、議会との関係でいろいろ出てくるということになると、掲げていた政策の遂行そのものが厳しい環境になってくる可能性もある。いずれにしても、我々としてどう対応すべきなのか、よく見ていかなければいけないと思っている。


(問)
 ESG、社会的な責任投融資の関係だが、先日、公的年金のGPIFがクラスター弾の製造企業の株に投資していたことが国会で取りあげられたが、全銀協では、2010年に、会員にそういった使途の融資はしないと申し合わせをされている。その後、申し合わせの内容に変化があったのかどうか、会員企業の取組みのフォローをどう把握されているのか伺いたい。
(答)
 本件は、平成22年8月に、クラスター弾の製造等を資金使途とする与信を国内外を問わず行わないということを申し合わせたが、この申し合わせは引き続き今も何ら変わりはない。各行はこの申し合わせにもとづいて、クラスター弾の製造を資金使途とする与信を禁止する運営を行っている状況である。
 三菱東京UFJ銀行についても少し申しあげると、クラスター弾を含む国際条約で禁止された武器、兵器、いわゆる非人道的兵器、こういったものの製造、開発を使途とする与信は禁止するということで、融資稟議にて都度チェックをする体制を徹底している状況である。
(問)
 民間の団体や、研究者によると、使途に限定したものではなくて、その企業への融資をやめるべきではないかという議論があって、ヨーロッパでは大手行を含めてそういう動きはかなり広がってきている、日本は少し遅れているのではないかとの指摘があるようだが、使途に限定せずにさらに踏み込むべきなのか、そこまでは難しいのかという点を併せて伺いたい。
(答)
 まずは、具体的な使途についてしっかり確認し、そのような融資は行わないという申し合わせ、これを徹底していくことだが、企業としてどうしていくか、これは各行の判断もあろうかと思う。現在の世界的な状況、あるいはまさにご指摘のESG投資のステークホルダーからの問題意識、そういうものを踏まえながら今後検討していくということだろうと思う。