2017年6月15日

平野会長記者会見(三菱UFJフィナンシャル・グループ社長)

髙木専務理事報告

 今般、小山田会長から退任の申し出があったことから、本日の理事会において、新たに、三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長を会長に選任した。
 お手元には、平野会長の略歴をお配りしている。

 

会長記者会見の模様

 平野です。最初に、ご挨拶と併せて、お詫びをいたしたい。本日の理事会で小山田の後を引き継ぎ会長に就任したが、今回は協会長任期途中での交代となった。皆さまには大変ご迷惑をおかけした。誠に申しわけない。改めて、お詫びを申しあげたい。
 協会の運営については4月に小山田が説明したとおりで、活動方針や三つの柱は変わらない。これらを受け継いで、小山田が就任会見で掲げた、「様々な環境変化への対応を着実に実行し、日本の持続的成長の実現に貢献する一年」を実現すべく、誠に微力だがしっかりと職責を果たしていきたいので、引き続きご支援のほど、よろしくお願い申しあげる。


(問)
 冒頭、三つ質問したい。
 一点目、平野会長としては3年ぶり二度目の全銀協会長登板となるが、当時三菱東京UFJ銀行の頭取として全銀協会長になり、今回は三菱UFJフィナンシャル・グループの社長として、立場の違いもあるし、今回イレギュラーなかたちでの登板になる。改めて、率直にどのような心境で二度目の会長職に臨むのか。
 二点目、活動方針に変わりはないということだが、新会長として特にどういった点に注力して今後1年間やっていくのか。
 最後に、マイナス金利の影響について、去年の2月の導入からもうすでに1年半近くたって、特に地銀の決算を見ると8割ぐらいが減益になっている状況で、マイナス金利が本来の目的をきちんと達し得ているのか、それとも地銀の苦境もそうだが、金融仲介機能に悪影響を与える副作用のほうが大きくなってきていると考えるのか。1年半たった現時点での認識を教えてほしい。併せて、マイナス金利で逆境に金融機関は立たされているが、それをきっかけとしたビジネスモデルの変革の必要性についてもお願いしたい。
(答)
 最初の、全国銀行協会の役割であるが、これは変わることはない。日本の経済のインフラを支える重要な機能を担った金融機関のあるべき姿を求めて、私どもはこれまでも活動してきたし、これからもそうしていくつもりだ。ただし、その時々の環境によって金融機関に期待される役割、課題も異なる。そういった今日的な課題にしっかりと取り組んでいきたい。
 二つ目の質問がそれに絡むが、今期の全銀協の活動として三つの柱を掲げている。第1の柱は、「日本の経済成長・成長戦略への一層の貢献」である。これに関連して、国民の安定的な資産形成の実現に取り組んでいきたい。つみたてNISAについては、当局等とも連携しながら、利用促進のための周知活動を行い、来年の1月にはスムースに取扱いを開始したい。また、個別行の話だが、フィデューシャリー・デューティー向上に向けた対応等を進めていくことで、「貯蓄から資産形成へ」の流れを加速させる必要があると考えている。
 加えて、金融仲介機能の向上を通したお客さまの成長への貢献も引き続き重要な課題である。このところ、お客さまの事業力や成長性に着目した融資、事業仲介、ビジネスマッチングの取組みなどが活発化している。特に地方銀行では、M&A戦略の立案、相手先の選定、交渉、外部専門家との連携などの包括的なサービス、あるいは事業承継や経営、営業面でのサポートを行う専門部署を設けて、コンサルティング業務を展開する銀行が増えている。地方銀行協会で公表したデータによると、事業承継の相談受付件数は、平成23年には9,200件だったが、平成27年度は2万4,000件と2.6倍に増えており、今後もこうした活動は大変重要だと考えている。
 二つ目の柱、「IT技術の革新を踏まえた顧客利便性が高く、安心・安全な金融インフラの整備、構築」に関しては、決済の高度化に向けた取組み、あるいはFinTechをはじめとしたテクノロジーを活用した新たなビジネスの創出に向けた取組みを進める。これまでも全銀協では、「オープンAPIのあり方に関する検討会」等の会合で各種の検討、準備を進めてきた。オープンAPIについては、今般銀行法改正等がなされたが、新たなテクノロジーの活用の技術的な対応等に関して、会員行で共有、把握し、業界全体として取組みがさらに活性化するように、全銀協としてもしっかりと対応を進めていきたいと考えている。
 三つ目の柱、「公正・健全な金融システムの維持・進化」に関しては、国際金融規制への対応が引続き重要である。例えば、トランプ政権は金融規制の見直しに言及し、ドッド・フランク法をはじめとする規制の見直しに関する報告が一昨日公表された。今後詳細な分析が必要だが、銀行界のビジネスにどういう影響を及ぼすのか、経済の持続的な成長にも影響があるのかなどを検討したうえで、本邦の当局とも連携しながら意見発信等を行っていきたい。
 三番目の質問のマイナス金利の影響だが、マイナス金利も含めて、日銀の金融緩和の狙いは物価安定目標の達成にあると考えている。現状、持続的、継続的な物価下落という意味でのデフレからは脱却したと言って良いのではないか。その意味では、効果があった。しかしながら、一般に望まれているのは景気の好循環、すなわち消費や設備投資の増加で、さらに言えば潜在成長率の引上げによって日本経済を安定的な成長軌道に復帰させることだと思う。そうした観点から現状を見ると、住宅ローン金利や企業の調達金利は低下し、個人向け、法人向けとも貸出残高は増加基調が続いているものの、消費、設備投資が力強く拡大する状況にまでは至っていない。すなわち、実体経済を大きく動かすためには金融緩和だけでは足りず、成長戦略、あるいは構造改革の着実な実行が必要だと考える。
 一方、マイナス金利の影響については、運用商品、保険・年金の利回りの低下、イールドカーブのフラット化による金融機関の資金収益への影響は顕在化している。また、いずれ市場からの国債購入も限界に達する事態もあり得る。日銀はそうした状況を考慮して、昨年9月にイールドカーブ・コントロールを軸とした、いわゆる「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」への移行を決定したと理解している。日本銀行はこれまでも、政策の効果、副作用、両面を検証しながら、その時々の状況に応じた政策運営を行ってきたが、今後も同様の対応をすると期待している。
 関連として質問のあったビジネスモデルだが、銀行全体の収益環境については、マイナス金利を受けた預貸金利鞘の縮小による資金収益の下押しの圧力に加えて、そもそも少子高齢化等を背景とした構造的な問題が顕在化してきていると言うべきだと思う。こうした金利環境、構造変化に対応するために、FinTechに代表される新たな技術、ビジネスモデルを取り入れ、また各行がお客さまや営業地域の特性等を押さえながら、従来型の預貸ビジネスを超えたソリューション提供機能を進化させるなど、まさにビジネスモデルの変革が必要だと認識している。


(問)
 東芝について伺う。多くの銀行の融資先でもあるが、前回、小山田会長は、例えば原発リスクの遮断や財務体質の改善、適正意見のついた決算の提出、またガバナンス再構築を時間軸に沿って進めていくことが求められると発言していた。改めて、今後、融資を継続していくためにどのようなことが東芝に求められているとお考えか。
 もう1点、東芝は昨年度大幅な赤字を計上し、債務超過に陥り、融資先としてのリスクも増加していると思うが、個別行として融資をする際に、金融支援とみなされるような低い金利ではなく、より高い金利をしっかり確保できているのか。
(答)
 東芝に関するご質問だが、一般的に個別企業に対する取引に関してはコメントを差し控えるべきだと思う。
 ただし、東芝については、やや社会的あるいは経済的な問題にもなっているので、若干、個別行として、しかし一般的なコメントをさせていただく。
 先ほど、ご指摘があったとおり、東芝が抱える課題はさまざまあり、ガバナンスの問題に加え、各種事業リスクがあった。その結果として発生した資本不足の問題に対して、これからどのように対応し、将来の新たな東芝の成長戦略を可能にしていくのか、それを考えなければいけないという状況にあると認識している。
 重要なのは、現在進行中のメモリ事業の売却の問題であろう。この問題は、先ほども申しあげたとおり、まず大きな事業リスクとしての原子力事業の切り離しを、ウエスチングハウスに関するチャプター11のファイリングというかたちで行ったということである。しかしながら、今後、新たな事業モデル、東芝によれば社会インフラ、エネルギー、あるいはデバイスといった分野をコアにした企業に生まれかわっていくためには、資本あるいは資金が必要となる。そのために、東芝はメモリ事業の売却に向けて、動いていると考えている。
 売却について、重要なのは、時間軸を意識する必要があることだと思う。私どもが細かな内容、あるいはどういった先への売却が適当だということを申しあげるつもりは全くないが、売却価格、確実性について株主・投資家をはじめとしたステークホルダーへの説明責任を十分果たせるよう対応いただく必要があるのではないか。
 また、融資リスクについて、これも一般的な話であるが、さまざまな企業がその歴史のなかで大変難しい局面に直面することはかつてもあったし、これからもあるということである。したがって、私どもとしては、先ほども少し触れたが、東芝にはこれまでのリスクに対する対応、今般の資本増強、および将来のビジネスモデルについて、しっかりご説明をいただき、それに即して私どもの融資方針を決めていくということであろうと考えている。


(問)
 金融機関の預金残高が1,000兆円を超え、右肩上がりになっていると思うが、現状をどのように捉えているか。また、企業の内部留保について、設備投資などに対して消極的な姿勢がまだあるが、その点をどう捉えているか、伺いたい。
(答)
 確かに、全国銀行116行の預貸残高を見ると、今年の5月末の貸出残高は前年比2.6%増と、それ自体は拡大しているが、預金残高の拡大ペースは4.4%増である。日銀のデータでは、とりわけ企業預金が前年比7.8%増で、預金全体の伸びを牽引している。企業の貯蓄、投資バランスが、まだ貯蓄過剰や預貯金超過の状況にあり、言葉を変えれば、投資がキャッシュフローの範囲内で行われているということである。これは長年蓄積されてきたデフレマインドの下で、負債の増加を伴う、レバレッジを効かせた力強い支出の拡大にまではまだつながっていないということである。したがって、先ほども少し申しあげたが、金融緩和に加え、官民挙げての成長戦略の着実な実行が必要なのではないかと思っている。
 資金需要について少し触れておくと、全国銀行の貸出残高は、直近5月にかけて69ヶ月連続で前年同月を上回っている。業種別に偏りはあるが、中小企業も含め多くの業種で増えていることは間違いない。資金使途別に見ても、設備資金が盛り上がっているわけではないが、増加基調にはある。報道されているとおり、経済全体の需給ギャップが、久方ぶりにプラスに転じたということだが、確かに私どもの資金需要の面から見ても、それは裏づけられるので、銀行界としては、先ほども申しあげたとおり、事業力評価の発揮等による金融仲介機能の質の改善やビジネスマッチング、海外進出支援などを通じて、お客さまの資金需要を創出し、一層の拡大をサポートさせていただくという取組みを続けていきたいと思っている。


(問)
 カードローンについて2点伺う。3月に申し合わせも出されて、現在、いろいろと対応され始めているかと思うが、そもそもこの数年間で銀行のカードローン残高が5.6兆円まで急拡大している実態については、健全なのかそうでないのか、認識を改めて教えていただきたい。
 もう1点は、金融庁の会合などでも銀行にも総量規制をかけるべきではないかといった指摘もあるが、当然、全銀協としては反対の立場だと思う。仮に総量規制をかけられた場合、顧客も含めてどんなデメリットが考えられるか教えていただきたい。
(答)
 現状、銀行カードローン残高の増加傾向が続いているのは事実である。私どもでは、必要な資金を、返済していただける能力があるお客さまに対してタイムリーにご提供申しあげる、これが金融機関としての役割だろうと考えている。
 総量規制に関して申しあげれば、これは貸金業者に対する規制ということであって、銀行と貸金業者とではどこが違うのかというのが、一つの論点になっている。銀行のカードローンと貸金業者のローンとの差異については、まず一つ、お客さまの層が異なるということが統計的に見られ、また、もう一つは、審査の内容である。銀行の場合は、単純に貸金業者の保証に依拠して貸出を行っているわけでは必ずしもなく、とりわけ年収の3分の1を超えるようなかたちでの貸出が行われる場合には、より慎重な審査を行い、それにふさわしい貸出審査モデルを採用しているということである。具体的に言えば、例えば銀行における過去の借入れや返済の履歴であるとか、取引の内容、その他プラスアルファの与信審査が可能な状況にあるということだと思っている。加えて言えば、金利水準も貸金業者の場合と銀行ではレンジが異なるということもある。
 したがって、銀行のカードローンに関して言えば、必ずしも一律に3分の1の年収規制を貸金業者と同じように課すのが適当だとは私どもは考えていないということであり、まさにお客さまが必要とされ、返済が可能な貸出を提供していくことが私どもの機能だと考えている。


(問)
 4月施行の銀行法の改正で可能になった、グループで共通する業務の集約についてお伺いする。この法改正でシェアードサービスを活用してどんな業務を集約できると捉えているか。また、銀行界の活用は進むだろうかという点も含めて、可能であれば、三菱UFJフィナンシャル・グループでの検討状況も含めてお伺いしたい。
(答)
 4月から施行された改正銀行法で、金融グループ内での共通・重複業務の持株会社への集約が可能になった。具体的には、グループ内の資産運用業務、融資審査、システムの設計、運用、メンテナンス、職員の教育研修、広告宣伝といったかなり幅広い業務が子会社に代わって持株会社によって行える業務に加わったということである。現在、金融機関が提供する金融サービスはかなりのスピードで多様化が進んでいる。また、地域金融機関においては再編等の潮流の変化がある。加えて、厳しい収益環境でもある。そうしたことから、グループ内での共通・重複業務の持株会社への集約化を通じたグループ一体の運営、あるいは集約による業務の効率化、コストの削減等の取組みは進んでいくものと私は考えている。
 個社についてだが、三菱UFJフィナンシャル・グループでは、研修所やシステムセンターなどのファシリティ、およびシステム基盤の共同化を今進めている、あるいは検討に着手している。また、外部調達に関するグループのコストマネジメントといった取組みもこれから進めていきたいと考えている。


(問)
 トランザクションレンディングについてだが、最近、企業による日々の売買や、決済のデータを利用する形態の融資がネット銀行などで展開され始めている。この手法の将来的な可能性について、会長はどのように捉えているか。また、メガバンクがこの分野に進出する可能性を現時点でどのように捉えているか。
(答)
 トランザクションレンディングは、企業の受注や発注といった資金決済の取引データを利用して審査するものである。もともとはアリババ、Amazon、そして日本でも楽天などといったネットの通販運営業者が自社のECモールの出店者に対して融資サービスを行っている。最近では、一部のネット銀行も同様のサービスを展開していると承知している。
 もともと銀行の企業向けの運転資金の融資でも、お客さまのご商売のデータ、あるいは計画をもとに必要な資金を提供しているという意味では、トランザクションレンディングと同様の融資を行っているわけだが、トランザクションレンディングの強みは何かといえば、生のデータをリアルタイム、かつ直接入手して分析できる点にある。それに加えて、最近ではAIの活用によって審査の自動化、あるいは省力化が進んできており、より迅速、低コストで融資ができるということである。その結果、お客さまにとっても利便性が高まっているということである。また与信について重要なのは、貸出の実行に加え、その後の途上管理であり、よりきめ細かなフォローアップができる可能性があると思っている。そのため、当然銀行としてもこうした分野にこれから入っていくところが増えてくるのではないかと思う。
 加えて、これは大変重要なことだと思うが、XML電文が今後開始される。もう一つ、官民データの利活用が検討されている。仮にこうしたものが入ってくると、これまでの入出金のデータに比べると、より詳細かつ具体的な取引データが入手でき、より精度が高く、お客さまにとってより利便性の高いかたちでサービスを提供できるようになる可能性は十分にあると見ている。


(問)
 三菱UFJフィナンシャル・グループ個社の話だが、ガバナンスに関わるので、教えていただきたい。今回の株主総会で初めての外国人社外取締役を選任することになったが、外国人の社外取締役を招くことの意義を教えていただきたい。また、グローバル展開をいち早くされている三菱UFJフィナンシャル・グループにしては、随分導入が遅れた印象を持っているが、その点についての考えを伺いたい。
(答)
 極力、この場では個社の話は避けたいので、一般論でお答えする。まず、外国人社外取締役の導入は、日本の産業界においても徐々に進みつつある。これは、企業の海外における事業展開が活発化するにつれ、それぞれの地域における知見、それはビジネスに関するもの、規制に関するもの、あるいはマクロ的なトレンドに関するものなどがあると思うが、それを是非活用したいということであろうと思う。
 逆に言えば、日本の企業であっても、仮に社外取締役が日本人のみで構成されていたとすると、社外取締役としては、執行サイドからだけではなく、もっと直接、外部からの目を入れたいというニーズがおそらく出てくるということであろうと思う。すなわち、ガバナンス上、社外取締役ご自身のニーズということがあるのではないかと思う。
 ただ、難しい点がないわけではない。すなわちコーポレートガバナンスの強化、高度化は、一定の時間をかけて進めていく必要がある。これは私の持論だが、コーポレートガバナンスは形式ではなく中身である、あるいは運営の仕方であり、議論の中身であると考えている。そうなると、やはり一定の時間をかけて、ステップを踏んで進めていくのが適当なのではないかと思っている。
 三菱UFJフィナンシャル・グループに関していえば、私どもとしては、そういった一定の時間軸で、この10年、グループが発足して以来、まずは委員会を充実させ、取締役を充実させ、指名委員会等設置会社に移行し、今回は外国人取締役の導入を図ったということだが、そのような着実なステップを踏むことが大事なのではないかと考えている。


(問)
 2点伺いたい。まず、今日、内閣府の研究会で、平成24年1月から続いている景気回復が足元でも続いているとの見解が示された。バブル期の4年3ヶ月を抜いて景気回復期間は戦後3番目になった可能性が高いということだが、過去の景気回復期と比べると、なかなか経済成長率は低くて、賃金の伸びも低いのではないかとの指摘もある。会長としては、消費者に回復の実感は行き渡っていると思われるか。また、景気回復が続いていてもデフレ脱却には至っていないということと思うが、先ほども会長が言及された、成長戦略の進捗が遅れているのではないかという点に関するご認識を伺いたい。
(答)
 内閣府の統計は承知しており、2012年11月を景気の谷と見ると、足元まで55ヶ月の景気回復が続いている。実際、先ほども触れたが、私ども全国銀行の貸出も確かに伸びており、実体経済が緩やかながら拡大していることは間違いがないと思う。
 ただ、かつてのバブル景気、いざなぎ景気などに比べると、拡大のペースが緩やかだというのが今回の景気回復の一つの特徴である。これはなぜかということだが、まず、日本の国内だけでなく、最近はグローバルな影響もさまざま出てくることで、ここ数年言われて久しい構造的長期低成長、いわゆるセキュラー・スタグネーションであり、そのような海外経済の成長力の鈍化が一つの要因である。もう一つは、長年蓄積されたデフレマインドを払拭して日本経済を本格的な成長軌道に戻すのはそう簡単ではないということだと思う。
 逆に、これを前向きに考えれば、景気の過熱による日本経済全体のひずみ蓄積が比較的少ないため、景気の拡大がより持続しうるのもまた事実だと思う。
 ただ問題は、緩やかな景気拡大で満足して良いのかということだと思う。少子高齢化あるいは社会保障費の増嵩といった財政問題などの中長期的な課題が山積しており、それが一つの理由となって消費者マインドが改善しない、将来に対する明るい見通しがなかなか持てないということがある。加えて、国際社会における日本の相対的な地位が低下することも懸念される。
 したがって、先ほども申したが、成長戦略、構造改革、これまでも前進感があったと思うが、さらにこれに本腰を入れて取り組んでいくことを通じて消費者、そして企業経営者のマインドが大きく改善され、さらに成長力が高まるという、いわゆる景気の好循環にぜひ持っていく必要がある。私どもも、そのつもりで頑張っていきたいと考えている。


(問)
 カードローンついて、アンケート結果が金融庁の会合で公表された。問題は返済能力を超えた貸し過ぎがあるのか否かということだが、アンケート結果では、融資の上限などいろいろな対応をとっていることがほとんどだったと認識している。今後、フォローアップはどう行っていくのか。今後の取組みについても、カードローン業務を行うに当たっては、留意すべき事項を周知していくと書かれていたが、これはどういうかたちで周知や継続をしていくのか。貸し過ぎを防ぐためにという点をもう一度お願いしたい。
(答)
 今回のアンケートは、現状を把握する位置づけである。具体的には、従来から課題であると言われていた、例えば年収証明不要とか、あるいは迅速なご融資ができるとか、そういった不適切な広告宣伝を自粛する、それがどこまで進んでいるか、あるいは社内における融資審査の高度化がどこまで進んでいるか、等の項目を確認した。
 結果を見れば、各金融機関はかなりのスピードで課題に対する対応を行ってきていると言える。どのようにアンケート結果を評価すべきかという議論があるわけだが、相当数の金融機関は、仮に今できていないとしても、検討中であると回答してきている。
 今後、私どもとしては会員行の検討状況をしっかりフォローしていく必要があると思っている。必要に応じて再度の調査を行うことも含めて、これからも協会として、啓蒙活動だけでなく、各行の取組状況をしっかりモニタリングする(確認する)活動を続けていきたいと思っている。


(問)
 カードローンについて伺う。先ほど、資金を必要としている人で返済能力があれば3分の1を超えて貸してもいいのではないかというお考えだったと思うが、カードローンは無目的でいつでも貸せるのが大前提で、実際に借りている人にはギャンブルで借りる人も相当数いると思う。無目的でも返す能力があればどんどん貸してもいいのではないかという考えなのか確認したい。
 2点目、銀行と消費者金融の違いで、銀行はいろいろな信用チェックの方法があると言われたが、銀行カードローンがこの数年伸びてきた背景には、テレビCMなどで口座を持たない一見のお客さまにカードローンをたくさん販売してきたということがあるのではないかと思う。銀行が一見のお客さまに対し、しかも最短30分という売り文句で販売することは、消費者金融と違うと本当に言えるものなのか。
 3点目、先ほどのアンケートに対する対応だが、今申しあげたような点も含め、年収証明を取得するなど、実際は検討中のところが相当数あるわけだが、過剰融資を防ぐ効果が本当に出てくるかどうか、考えを伺いたい。
 最後に、日銀の金融緩和で長期化することのリスクへの懸念が強まっていることについてどう思っているか伺いたい。
(答)
 まずカードローンの質問についてだが、目的を限定しない貸出をどう管理するかということだと思う。私どものグループ傘下の銀行のホームページをご覧いただくとわかるが、それぞれの収入ごとに適正な与信の規模があると考えており、貸出枠の金額に応じて金利設定も異なっている。加えて、お客さまの属性や過去の履歴、その他から、適切な与信審査モデルをつくり、それにもとづいて貸出をする。そのモデルが間違っていないか、不十分ではないかということは、延滞の発生、いわゆる代弁率が動くことで測定することができる。消費者金融の専業者の場合であっても銀行でも同じかもしれないが、そのあたりのモデルの調整もしながら、取り込めるデータは極力取り込んで、より質の高い貸出をやっていくことが重要だと思う。高額な借り入れをされる方の例を申しあげると、例えば入学資金や冠婚葬祭、あるいは少し高額な耐久消費財をお買い求めになる場合がある。また、あるセグメントのお客さまに関して言うと、オートローンとの関係で、実はカードローンのほうが金利は安いというケースがあり、また、オートローンを借りようと思うと、審査に数週間かかるが、カードローンであれば比較的迅速な審査が可能なので、まずはカードローンを一時お使いになってつなぐといったケースなどがある。
 実際、借入枠が多いほど費消率は低いというのが、私どもの経験的なデータとしてある。したがって、金額や年収対比の多寡というのは、私どもがそれぞれのケースで蓄積したさまざまなノウハウを駆使しながら分析をしていく、これが健全な消費者ローンやカードローンのあり方ではないかと考えている。
 マイナス金利政策の長期化については、確かに大変難しいところだと思う。今、出口戦略についての議論が少し始まっているが、確かに、この政策が長期化することがあれば、先ほど申しあげたようなマイナスの局面、副作用が出てくることがあるだろう。もう一つ重要なのは、海外での金融緩和からの出口が進むなかで、どのタイミングで日本が出口に向けて動き出すのか。そして、実体経済の状況がどうなっているのか。非常に複雑な方程式を解くような問題だと思う。
 したがって、重要なのは実体経済で何が起こっているのかをしっかりと日銀も把握され、私どももそれをしっかりお伝えし、そして、日銀がある行動を起こしたときに市場がどう反応するのか。日本だけでなく、グローバルな市場のなかで日銀の金融政策の動きがどう捉えられるのか。それらを市場との対話も通じてしっかり検討していくことが重要だと考えている。


(問)
 繰り返しだが、一見客を相手にした場合、消費者金融と違うと言えるのかどうかを伺いたい。
(答)
 先ほども少し申しあげたが、私どものグループには銀行があり、カード会社があり、消費者金融会社があるところ、あくまで社内のデータで見ればということであるが、やはりお客さまの層が違うと言える。また、消費者金融専用会社、私どもの場合であればアコムだが、それと銀行のカードローンの貸倒率を比較すると、銀行カードローンの保証はアコムがやっているので同じではないかとお考えになる方がおられるかもしれないが、実は相当差異がある。また、ご指摘のように、口座を持っておられるお客さまとそうでないお客さまの間にも差異がある。したがって、そういった一種のグラデーションというか、それぞれの属性のお客さまに対してどう対応するか、私どもとしても十分留意しながら、過剰借入の問題が起こらないよう、取り組んでいきたい。
 かつて起こったような多重債務の問題が再現すれば、何のためにこれまで努力を重ねてきたのかがわからなくなる。これは、皆、共通した認識だと思うので、今申しあげたような対応をこれからも続けていくことが重要だと思う。


(問)
 日本銀行の出口戦略について、会長は市場との対話が大事だとおっしゃったが、これまでになく資産を膨らませて金融緩和をしているところ、市場との対話さえしていれば大丈夫なのか。会長個人の考えでも結構なので、今後出口戦略を進めていくうえでどのあたりにリスクがあると認識か。
(答)
 まず、出口の話をする前に、今現在の状況をお話しすると、確かに日銀の総資産は500兆円を超えているが、昨年の9月に打ち出されたイールドカーブ・コントロールへのシフトが実質的には非常に重要であったということだと思う。日銀は、量的緩和を抑制的に運営していくとは明示しなかったが、その後の政策運営を見ていると、おそらく現在のスタンスは、イールドカーブ・コントロールと、量的金融緩和をやや抑制的に運用していくことのコンビネーションだろうと思う。
 そして、今現在、市場で大きな混乱が起こってはいない。そういう意味では、去年の9月以来、現在のところ市場との対話は比較的うまくいっているのではないかと考えている。
 これから何に気を付けなければならないかだが、日銀が市場との対話を通じて、メッセージを出していく必要があり、これは政策の予見性を高めることであろうと私はそう思う。これにはフォワードガイダンスという言葉が使われるが、アメリカではFRBもExitに近付きつつあり、まさにフォワードガイダンスを都度市場にも示しながら、政策の予見可能性を高めて、出口に向かっている。
 加えて、市場と言っても一つではなく、金利や為替、クレジットもある。それらが実体経済に与えている影響も含め、しっかりと把握することが大事なのではないかと考えている。


(問)
 最後におっしゃったアメリカも含めて、他国の金融政策の動きもこれから非常に大事になってくるかと思う。今朝未明にFRBが追加利上げを決めたが、一方でアメリカの物価上昇のペースは鈍化していると言われている。今後、来年までのアメリカ経済の動向についてどう見ているか、リスクも踏まえて教えてほしい。
(答)
 まず、FOMCでは、ほぼ予想どおりに利上げが行われた。加えて、今後も年3回程度という比較的緩やかな利上げを想定しているということも理解できる。また、年内にもバランスシートの縮小に着手する意向も示された。
 ここでは二つ、気を付けなければならないと思う。一つは、アメリカの国内経済に足元では少し弱い指標が出てきている点であり、FRBは、これをやや一過性のもの、短期間の調整ではないかと見ている。全銀協の意見ではないが、私自身もアメリカ国内の経済に関しては、基本的に景気の回復局面にあると思っている。一時は、トランプ政権の政策、すなわち減税、規制緩和、インフラ投資の3点セットがあれば、アメリカ経済が一気に成長するのではないかという期待が高まったが、その期待は若干剥落している。しかし、これを除いてみても、基調はやはり強含みだと思う。
 もう一つは海外経済がどうなるのかだが、これにも幾つかポイントがある。まず、トランプ政権の今後の通商問題あるいは移民政策に対する取組みが、アメリカの成長のスピードを落とすだけではなく、海外の経済に対する影響も与えるのではないかということ。さらに、全く別の話だが、アメリカの利上げが始まったときに、新興国において金融上の問題が発生するのではないかということである。もちろんかつてのアジア危機の時代と今は違っていて、さまざまなセーフティネットが整備されているので同じことが起こるとは思わないが、海外への影響も十分に考えなければいけない。この点、アメリカの当局、FRBには、今後もよく見ながら政策運営を進めていただくことを期待している。


(問)
 先般、イギリスで総選挙があり、保守党が過半数を失うなど、メイ政権の安定性に少し疑義が生じている。これによりEU離脱の交渉もスムースにいかないのではないかという懸念も生じている。一方、欧州はイタリアやギリシャなども金融問題を抱えているが、当面の欧州経済をどのように見通されているか。特に邦銀、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱東京UFJ銀行に関連して、どのような懸念、心配を持たれているか伺いたい。
(答)
 欧州の経済は、大陸とイギリスでは異なった見方をすべきだと思う。一般的にいえば、アメリカについて申しあげたのと同様に、欧州全体の経済は回復局面にあると思う。それは、ドイツもそうであるし、フランスは若干ドイツに比べると回復が遅れているが、それでも決してかつてのような状況にあるわけではない。ただ、イギリスに関して申しあげると、今回の総選挙における保守党の過半数割れが、今後のBrexitの交渉を難しくすることは、おそらく間違いないと思う。このように、イギリスの今後に関する見通しがより不透明感を増すことにより、イギリスに対する、あるいはイギリス国内における投資が抑制されることを懸念している。そのインパクトは、経済規模を見れば分かるが、Brexitの問題がイギリスに与える影響の方が、EU諸国に与える影響より、おそらくはるかに大きい。その点は気をつけて見ていく必要がある。
 一方、ご指摘のとおり、EU諸国についてもさまざまな問題がある。最近、金融機関の救済が新聞でも報道されている。これが今後の欧州の金融セクターにおける問題解決の一つの先例になるとすれば、それはむしろプラスに捉えてもいいのかもしれないが、南欧諸国を中心にさまざまな課題がくすぶっているのは事実である。したがって、それらの点に十分留意しながら、日本の金融機関としても欧州での取組みを考えていかなければならない。
 最後に、Brexitに伴い、金融機関にとってはEU諸国に対する営業活動の拠点や、ブッキング拠点をどこに設けるかという問題がある。いずれにせよ、国際展開をしている金融機関はBrexitを所与のものとして準備が進んでいることをつけ加えたい。


(問)
 カードローンは本当に悪いことなのか。借り手の事情を無視して貸し込んだケースがあるようなので、そこは激しく是正すべきだが、ただ、それをもってカードローンが縮小となれば、目利き力を活かして金融仲介機能を発揮するという金融機関のミッションの放棄にならないか。
 年収による総量規制についても言われているが、それを適用してしまうと、今まさに金融機関が批判されている形式主義に陥った貸出ということになり、これは、金融排除ではないか。金融のプロを標榜するならば、多重債務者から距離を置くのではなく、むしろそういう人たちに積極的にアプローチして、債務整理を含めたソリューションを提供するのが本道ではないかと思うが、それは理想主義に過ぎるのか。
(答)
 カードローンについて、確かに一部行き過ぎがあったということは、すでに私ども自身も懸念しているところであって、それを是正しつつ、まさに今、ご指摘のような持続可能なビジネスモデルとして、これを進化させていくことによって、お客さまのニーズにお応えするということを目指していくべきだと考えている。単純に、なくなればいいということではないという意味では、今おっしゃったとおりと思う。


(問)
 日銀の出口戦略について。先ほど、FRBのバランスシートの縮小の話があったが、実際、FRBがバランスシートの縮小に向かったときに、日銀はどうなのか、市場が不安に思うのは当然だと思う。果たして出口議論を日銀がどこまで封印し続けられるかどうか、会長の考えを伺いたい。
(答)
 いずれは出口に向かわないといけないということは、おそらく全ての関係当事者が理解しているところだと思う。ただ先ほども申しあげたとおり、タイミングはものすごく難しく、複雑な連立方程式を解くようなものである。今この時点で、このタイミングだということを予見するのも非常に難しく、この問題に対する解は、繰り返しになるが、国内だけでなく、海外の状況も正しく把握して行動をとるということであり、私ども民間の金融機関も協力をするということに尽きると思う。


(問)
 先ほど、米国の利上げによって新興国からの資金が流出される懸念もあるが、今はセーフティネットが敷かれているとの発言があった。アジア通貨危機から来月で20年を迎えるなか、当時は外貨調達や外貨準備の問題といった課題があったと思うが、改めて20年前と違い、現在どのようなセーフティネットが敷かれているのか、教えてほしい。
(答)
 個人的な感慨だが、20年経つのだと改めて思う。当時私はニューヨークにおり、毎日資金繰り会議を開催、調達側、運用側の担当者と大きなテーブルで、毎日どこで返済があるのか、どこで預金があるのか、貸出はどこで必要なのか、どのようにプライオリティを付けてお客さまにご利用いただくのか等々議論したが、あの頃の記憶は非常に鮮やかである。
 先に述べたとおり、アジア通貨危機以来、各国の政府、各企業、金融機関がさまざまな取組みを行ってきており、その結果、対応力は間違いなく高まっていると思う。
 まずは国家のレベルだが、アジアを中心とする新興国の経済は飛躍的な発展を遂げており、経常収支も多くの国で黒字化、あるいは赤字幅が縮小している。結果として、対外債務への依存度が低下し、外貨準備も積みあがっている。
 また、国家間のセーフティネットが敷かれたが、これはチェンマイ・イニシアティブあるいはチェンマイ・イニシアティブ・プラスにもとづく通貨スワップ協定が日本主導で行われたものである。加えて、もう一つややテクニカルに言えば、多くの国は変動相場制に移行しており、これらの枠組みが、為替相場の投機的な動きを抑制する方向に働くだろう。
 企業では、アジア通貨危機の際、対ドル固定相場の下、為替リスクのヘッジ無しに、低金利のドル調達に依存していたことが、借入れ返済を困難とする要因になった。現在は、企業もかなりヘッジをしていることは間違いないし、地場借入れの比率も高めている。
 金融機関についても、リーマン・ショック後であるが、国際金融規制が強化されており、ストレス時の自己資本の充実、あるいは流動性の確保がかなり高いレベルに達しており、金融機関もストレス耐性が十分に高くなり、健全性が維持できる状況になりつつあると思う。したがって、当時のようなシステミック・リスクが同じかたちで繰り返されることはないだろうと思う。
 ただし、1点だけアジア通貨危機当時と少し違う状況であるのは、超金融緩和がこれだけ長く続くなか、キャッシュの流動性、一見、過剰流動性とも言えるような状態が、世界各地で発生している可能性があるため、十分留意する必要があるということである。バブルに対する警戒は常に持っていなければいけない、自信過剰になってはいけないということだと思う。


(問)
 オープンAPIについて教えてほしい。全銀協としてもう少し踏み込んで検討会をつくっていこうと考えるのか、それとも、まずは個別行で研究してほしいというかたちなのか。
(答)
 全銀協では、昨年以来、オープンAPIのあり方に関する検討会を設置し、そこでセキュリティの対策や利用者保護、APIの仕様の標準化などについての議論をし、3月に中間報告書を出している。今年度は、この方針に沿って活動しており、現在、FISC、金融情報システムセンターで、銀行とFinTech企業がAPIの接続を行う際に利用するチェックリストを策定し、6月中に公表することを予定している。また、現在、英国の取組みなども参考にしながら、FinTech企業との残高照会や入出金明細照会において、APIの電文仕様を標準化する取組みも進めている。細かい点についても対応している。
 それに加えて、もう一点、非常に重要なのは、全銀協の会員のなかにも、技術的な疑問や懸念を持っている金融機関がある。したがって、地銀協や第二地銀協とも連携のうえ、金融機関を対象にしたオープンAPIの説明会を開催しようと思っている。また、オープンAPIの場合は、金融機関とFinTech企業のコミュニケーションが大事である。そうした場も利用しながら両者間の議論を深めていきたいと考えている。
 いずれにせよ、数値目標も設定されており、全銀協としても有効な施策だと思うので、会員各行の取組みを促すような施策をこれからも打っていきたいと考えている。


(問)
 経営統合などの銀行再編についての会長の認識を伺いたい。マイナス金利の環境のなかで、持続可能なモデルとして、再編も一つの手段と言われているが、人口減少のなかで、再編は必要なのか、進んでいくのか、現時点での認識を伺いたい。
(答)
 私どもの業界としては、今ご指摘のような厳しい経営環境、つまり低金利が続き、少子高齢化で経済が大きくは伸びないというなかで、何らかの構造改革をしなければいけないという意識は強いと思う。そして、その一つの選択肢として経営統合があるということだと思う。ただ、単に経営を効率化するということだけではなく、複数の金融機関が統合されることにより、これまで単体の金融機関では実現できなかったようなサービスをお客さまに提供するという前向きな施策を取り組むことができるという点でも、こうした経営統合の取組みを捉えるべきではないかと考えている。
 個別行の例が適当かどうかはわからないが、三菱東京UFJ銀行は過去二度の合併を行っており、そのなかでお客さまが大きく広がり、さまざまな経済分野や産業分野に対する知見を深め、一方の金融機関が持っていたサービスや商品と、もう一つの金融機関が持っていたサービスや商品を組み合わせて、これまでは提供できなかったお客さまに提供できるようになったということがあるが、このようなかたちで、お客さまの利便性やお客さまへのサービスの質の向上も併せてめざしていくという観点が必要なのではないかと考えている。