平成31年2月14日

藤原会長記者会見(みずほ銀行頭取)

岩本専務理事報告

 事務局から1点報告する。
 ご承知のとおり、天皇陛下のご退位および皇太子殿下のご即位に伴い、本年4月27日から5月6日は10連休となり、この連休中は銀行休業日となる。
 このため、全銀協において、10連休に伴い銀行取引においてお客さまにご留意いただきたい事項を取りまとめるとともに、改元を名目にしてキャッシュカードをだまし取ろうとする詐欺を防ぐため、お手元の資料のとおり、会員銀行において配布するチラシを作成した。
 内容についてご質問があれば、会見終了後、事務局にご照会いただきたい。
 

会長記者会見の模様


(問)
 銀行の決算について、メガバンクと地方銀行の第3四半期の決算発表がほぼ出揃ったが、最近のマクロ経済環境を含めて今回の銀行の業績についての会長のご所見を伺いたい。
(答)
 昨年5月の会見で、2017年度の銀行決算について、業務純益は「苦戦」、当期利益は「堅調」と申しあげた。2018年度の第3四半期決算の所感を一言で申しあげれば、業務純益は引き続き「苦戦」、当期利益については「堅調」よりもむしろ「変調」といった厳しい決算になったのではないかと思う。
 決算の内容をみると、全国銀行の貸出残高は、足元で前年比プラス2~3%のペースで増加しており、昨年末時点で88ヶ月連続の増加となっているものの、依然として利回りが下げ止まったと言える状況にはない。
 これに加え、年末年始の世界的な株安や債券相場の乱高下などに象徴されるとおり、不安定な市場環境を受けて、国債等債券関係損益も低調に推移したことから、国内の対顧部門や市場部門を中心に、業務純益は引き続き苦戦を強いられた。
 また、これまで堅調だった当期利益についても、特に株式等関係損益による押し上げ効果が大幅に減少するなど、変調の兆しが見られた。
 ただし、ファンダメンタルズは基本的に堅調さを維持しており、また市場も足元では落ち着きを取り戻していることから、金融システムは全体として引き続き安定している。
 今後については、米中摩擦やBrexitなど、グローバリゼーションの巻き戻しに伴う、構造的に不安定な状況に備えておかなければならない。そうしたなか、様々なリスクに対する「守り」と収益改善に向けた「攻め」をバランスよく進めていくことが重要だと思う。
 3メガについては、商業銀行単体ベースの合計値をみると、実質業務純益は前年同期比で▲12%の減益となった。国債等債券関係損益が▲69%と大幅に減少するなど、市場関連収益が低調に推移したことがその要因である。また、当期利益についても、保有株式の売却益や与信関係費用の戻入などによる押し上げ効果が大幅に減少するなど、厳しい内容となった。
 次に地域銀行であるが、これまでに公表された内容をみる限りでは、実質業務純益で全体の約6割、当期利益では約8割が減益と厳しい決算が続いている。内訳をみても、国債等債券関係損益、与信関係費用、株式等関係損益がいずれも低調であるなど、3メガとほぼ同様の構造であることが窺える。
 今後の銀行経営についてであるが、先ほども申しあげたように、ファンダメンタルズは堅調さを維持する一方、足元では、米中摩擦、Brexit、中国経済の減速などのリスクファクターが存在している。これらの影響の発現経路としては、まず市場がネガティブ・シグナルを発し、それが企業活動や投資行動に影響を与え、一定のタイムラグを伴って実体経済を下押しすることが考えられる。こうした観点から、我々としては、特に市場、海外、与信管理といった部門で、モニタリングレベルを従来以上に高めていく必要がある。
 こうした「守り」を固める一方で、収益改善に向けた「攻め」も進めていかなければならない。その方策として、まずは、銀行の本業である金融仲介機能の質をさらに高めていくことが重要だろう。企業を支えるという強い矜持のもと、例えば、事業性評価などを通じて、リスクマネーを適正なプライシングで積極的に供給することによって、銀行としても、過度な貸出競争を回避しつつ、残高と利鞘の両方を適切な形で改善していくことが求められている。
 また、「金融」の前に、お客さまの抱える様々な課題をともに考えるパートナーとなることが重要な局面だと思っている。例えば、家計の安定的な資産形成、事業承継や相続、ビジネスマッチングといったニーズに対して、銀行のノウハウやネットワークを活用して課題解決を図ることが、結果的に非金利収益の拡大にもつながってくる。
 さらには、デジタルテクノロジーを積極的に取り込むことで、キャッシュレスなど付加価値の高い決済サービスや、データ利活用など新たなビジネスモデルを構築するとともに、銀行自身もインフラ構造を抜本的に改革、効率化することで、コスト競争力や生産性を高め、時に痛みを伴う改革も厭わない姿勢が求められる状況にある。
 先月の会見で、2019年は「不安定のなかに安定を模索する1年」になると申しあげた。厳しい環境が続くが、今こそ銀行としての矜持をしっかり持って、その存在価値を発揮していくことが必要だと思う。
(問)
 2問目は、金融政策について。日本銀行のマイナス金利政策が導入されてから間もなく3年経つが、日銀の金融政策については、マーケットでは正常化の方向よりも、どちらかと言えば追加緩和の可能性が取り沙汰されている状況になっているし、アメリカなども金融政策に今、揺れ動いているところだと思うが、会長はかねてから金融政策は日銀の専管事項だということで、なかなかお答えしにくいとは思うが、日銀の金融政策に対する要望があれば伺いたい。
(答)
 ご指摘のとおり、金融政策は日本銀行の専権事項であり、個人的な考えとして申しあげる。
 この場でも何度か申しあげてきたが、大きく二つの論点があると考えている。一つは、「物価目標は2%という絶対値にこだわりすぎるべきではない」という点、もう一つは、マイナス金利政策長期化の「副作用、例えばリバーサル・レートといった状況に陥っていないかということに目配りが必要」という点である。
 まず、1点目の物価目標についてであるが、6年にもわたる異次元の金融緩和でも、足元の2018年12月におけるインフレ率は生鮮食品を除く総合で0.7%に止まり、2%の当初目標は達成が展望できていない状況にある。日本銀行は、根強いデフレマインドの存在が物価の上がりにくい要因であると説明している。
 しかし一方で、日本経済自体は底堅く、景気回復期間は今年1月で戦後最長になったと見られる。つまり、ほぼ6年にわたる日本銀行の強力な緩和政策を経て、低インフレでも経済はよくなることが分かったわけである。
 また、物価に関しては、構造的な変化もみられる。例えば、グローバル化やデジタル化、シェアリングエコノミーによって需給の関係も変わってきている。かつてのようには物価が上昇しにくくなっているという見方は、わが国だけでなく、グローバルにも指摘されている。
 すでに金融政策は、物価目標2%達成に向けた「有事の短期決戦」から、「平時の持久戦モード」に転換している。
 こう考えると、個人的には、物価目標については、達成までの時間軸だけでなく、そのレベルにおいても、2%に固執することなく、例えば、オーストラリアのようにレンジで示すなど、より柔軟化する余地があるのではないかと考えている。そうすることで、ピンポイントの物価目標の数値の存在で金融政策が縛られるという副作用がより緩和されるのではないかと思う。
 物価目標はあくまで手段であって目的ではない。そして、物価の安定を図ることを通じて持続的な経済成長を実現する、というのが金融政策の理念であると認識している。
 現在の日本銀行の金融政策は、期待に働きかけるものである故、物価目標の見直しを議論すると政策効果の減退を招く可能性があると指摘されることもあるが、他方で日本銀行の分析によれば、日本のインフレ期待の形成は、合理的期待形成ではなく、過去の「実績」に追随しやすい、すなわち「適合的な期待形成」の側面が米国などに比べて強くみられるとのことである。
 そうであれば、デフレ的な状況から脱し景気拡大が続いている現在の状況を、「実績」としてしっかりと積み上げつつ、できる限り長期にわたって持続可能なものにしていくための政策運営という視点を、より重視する必要があるのではないかと考える。
 次に2点目の、マイナス金利政策の長期化等に伴う副作用についてであるが、これも以前から申しあげてきたように、例えば、企業の6割が実質無借金であるなか、むしろ年金等の運用利回りに対する不安感の広がりなどを通じた人々のマインドへのマイナス効果や、銀行収益の圧迫等に伴う将来的な金融仲介機能への影響などが懸念される。
 最近、黒田総裁も、「政策のベネフィットとコストを比較衡量」した政策運営の必要性を述べられている。
 金融仲介機能への影響といった副作用はある日突然現れるものではないと思うが、累積された副作用が顕在化してしまってからでは対処が難しくなるため、常にフォワードルッキングな対応が重要だと考える。
 コストすなわち副作用が、ベネフィットを凌駕してしまうような金利水準、すなわち「リバーサル・レート」になっていないかといった点や、金融緩和による需要の先食いが金融緩和の長期化を招き、低金利が低金利を生むといった状況に陥るリスクが高まっていないか、などについて精査されることを期待している。
 また、現時点の環境下ではなかなかすぐには難しいかとも思うが、将来の政策対応余地を確保する、すなわち「有事の際に金利を下げられるように、できる時に着実に、ただし慎重に上げておく」、いわば「のりしろ」を作っておくといった視点も含めて、正常化に向けた検討を進めておくことも重要だと思っている。
 超緩和策の長期化は、1点目に申しあげた物価目標のあり方とも密接に関わっていると考えており、両者の望ましいあり方を一体的に見直すべき時期に来つつあるのではないか、と個人的には考えている。


(問)
 冒頭の話にも出た米中の貿易摩擦を解消するための閣僚級の協議が今日から始まっている。結果次第では世界経済に大きな影響を与えるかと思うが、この件についての会長のご所見をお願いしたい。
(答)
 米中の閣僚級の貿易協議の行方については、我々も非常に高い関心を持って見ている。米中の摩擦は、貿易問題のみならずデータの覇権争いという様相も呈しており、マーケットでも、問題の解決には時間を要し、少し長期化するのではないかという見方は多い。
 昨年12月1日に米中首脳会談が開催され、米国による制裁関税引上げの90日間の猶予が発表された。米国側は中国との構造改革をめぐる協議で合意が得られなかった場合には、制裁関税を拡大するという方針を打ち出しており、それが年末年始のマーケットの反応が示すような不透明な状況を醸し出していたということだと思う。
 米国、中国というGDP世界第1位、第2位の国の間で貿易制限措置の応酬が続けば、高度に発達したグローバル・サプライチェーンを寸断することになり、当事国のみならず多くの国の経済に悪影響を及ぼす。それが世界の企業の事業活動や投資意欲を萎縮させかねず、翻って日本経済が腰折れするおそれがある。こうしたリスクに備えておかなければならない。特に、貿易摩擦が一段と激化した場合の米国による自動車・部品への関税措置の発動、さらには企業マインドへの悪影響には十分な注意が必要である。
 米国が議会のねじれの下で非常に難しいかじ取りを迫られているなか、米中摩擦の問題がエスカレートし、その影響がグローバルに広がっていくことのリスクについて、一段とモニタリングレベルを上げていく必要がある。そのような意味においても、貿易協議の行方をしっかりと注視していきたい


(問)
 窓口で取り扱う外貨建て保険について、為替リスクの説明不足とか運用利回りの表示方法、サポート等々をめぐってトラブルになるケースが多いと言われている。顧客本位の業務という点で考えれば改善する余地は多々あるかと思う。生命保険協会とのすり合せもあると思うが、銀行業界ならびに全銀協としてどういう対応を考えているか。
(答)
 この問題については、生命保険協会ともしっかりと連携し、「顧客本位の業務運営」を徹底することが最も重要である。
 外貨建て保険は、一般に貯蓄機能と保障機能を併せ持つ保険商品と位置づけられる。円貨建て保険と比べると通常は予定利率が高いことから、為替リスクを含め、運用に対するリスク許容度の高いお客さまが契約するケースが多いと認識している。
 この外貨建て保険の販売に関しても、冒頭に申しあげた顧客本位の業務運営を徹底していくわけであるが、その際、とりわけ、お客さまの目的や、知識、経験、財産の状況を踏まえて、お客さまにとってふさわしい商品を提案する「適合性の原則」を徹底すること、さらには為替リスクや元本割れリスクがあるということについて「説明責任」を果たすことが重要だと思っている。
 特に、高齢者の方々にとっては「のこすニーズ」が高くなるなど、お客さまごとのニーズが多様化していくことから、それぞれのニーズもしっかり把握したうえで、外貨建て保険を購入いただくことの適合性の確認を十分にチェックする必要がある。また、高齢者の方々のなかには、理解力、判断力が衰えている方がいるということも念頭に置く必要があり、お客さまが正しく理解されていることをしっかり確認する対応も重要である。
 全銀協としては、昨年7月より生命保険協会との間で外貨建て保険の苦情対応に関する意見交換を始めた。また、昨年10月には、会員銀行における取組みや苦情発生を踏まえた改善対応の事例を収集して精査・分析を行い、苦情につながるケースの抑制に向けて有効と考えられる対応を取りまとめ、会員銀行宛てに通達を発信している。
 今後はさらに、生命保険会社が新たに作成する募集補助資料等を活用し、為替リスクや元本割れリスク、実質的な利回りなどについて、お客さまへのより丁寧な説明を徹底することや、高齢者に対する説明の際の親族の同席やアフターフォローなど重点的に取り組むべき事項について、会員銀行に周知徹底して参る。
 また、銀行が取り扱う商品は、外貨建て保険等の保険商品の他に、預金商品、投資信託など多岐にわたっている。これらの商品をお客さまのニーズ、あるいは知識、経験も踏まえて比較検討できるようなかたちで分かりやすくご説明をすることも重要であり、生命保険協会とも連携のうえ、顧客本位の業務運営の徹底に向けた取組みを進めていきたい。


(問)
 今お話のあった高齢化対応の関係だが、今年は日本でG20が開催される。日本は高齢化先進国であることから、金融関連でも高齢化対応が一つのテーマになる見通しかと思う。高齢化社会における金融の果たすべき役割について、日本はどのような意見を発信できると考えているか、ご所見を聞かせてほしい。
(答)
 この問題を含め、日本はよく「課題先進国」と言われるが、私は日本が「課題解決先進国」にならなければいけないと思っている。G20では、その課題のひとつとして高齢化社会への対応がクローズアップされる。2025年には、わが国の全人口のおよそ3割が65歳以上になると予測されている。少子・超高齢化は、例えば担い手不足、生産性の低下、社会保障費の増加、格差の問題など、多くの社会的課題につながっており、それらへの対応は待ったなしの状況にある。
 特に、金融に関して言えば、個人の金融資産1,800兆円のうち、60歳以上が保有する割合はその3分の2に迫るというデータもある。経済の血脈たる金融を担う銀行界にとって、この課題への対応をリードしていくことは社会的な使命であると考えている。
 資産寿命の延伸、あるいは金融仲介機能を通じた生産性の向上など、これまでの取組みの延長線上でなすべきことも多くあるが、認知機能あるいは身体機能が低下する高齢者の方々への対応のあり方に関しては、金融だけに閉じたアプローチでは十分とは言えない。
 例えば、金融と介護サービスなどの非金融との一体化も考えられる。信託銀行では、信託財産の管理に関するさまざまな金融サービスと介護・警備・家事代行といった非金融の生活サポートサービスのなかから、必要なものを選んでパッケージで購入できる商品を提供しているところもある。
 また、銀行が持つさまざまなデータを最大限活用して、金融・非金融を有機的につなぐ複合的なソリューションを提供するといった可能性も、デジタル技術を活用したデータビジネスのなかで広がっていくであろう。
 さらに、今の高齢者の方々への対応という視点だけでなく、若年層の資産形成をサポートするところから考えていくことも重要である。昨日2月13日は「NISAの日」で、つみたてNISAの加入数が103万口座を超えたというニュースもあったが、若年層にとっての将来の健康寿命と資産寿命のマッチングを図っていくことも不可欠である。NISA、iDeCoなど、制度面の手当てがされてきており、金融機関としても「貯蓄から資産形成へ」の流れを加速すべく取り組んでいく必要があると思っている。G20は、日本が自ら課題解決先進国として、その意見発信を行う好機だと思っているし、銀行界としても尽力していきたい。


(問)
 Fintechを使った業務効率化と印鑑について伺う。前回はデジタルデバイドへの配慮等も言っていたが、国内では、特に中小企業を中心に印鑑の利便性や重要性、どうしても判子が必要という書類を重視する傾向がまだまだ根強いのが現実で、高齢者もそうである。中小企業が国内法人の9割を占めているなかで、海外からは日本のFintechだとか、業務効率化への一番のハードルは判子だという声も挙がっているぐらいである。こうした課題認識と業務効率化、利便性や生産性、それから効率性の両立、デジタルデバイドと両立させていくためにどういう取組みをしていけばいいとお考えか。
(答)
 デジタルテクノロジーの活用について申しあげると、かなり広い分野で、新たなビジネスの創出やお客さまに対するサービスの向上を通じ、社会的課題を解決できる可能性があると思っている。そのような意味で、必ずしも印鑑の存在だけをもってわが国の業務効率化のハードルになっているとは考えていない。
 個人的見解だが、重要なことは、全面的に一つの選択肢を強いるということではなく、多様な選択肢をご提供するということではないか。そのなかでサービス間の競争が生じ、結果として業界のお客さまサービスのレベルアップに繋がれば、それは目指すべき一つの方向感だと思っている。
 つまり、銀行がもつ公共性や社会インフラとしての役割を踏まえると、デジタルデバイドが懸念される方々に対しても、「排除」ではなく「包摂」という概念で事を進めるべきだということである。
 ご指摘のとおり、デジタルテクノロジーを活用した手続は、利便性向上や生産性向上という観点からは非常に大切で、私もそれを広く浸透させていくべきだという考えがベースにある。実際のところ、私どもが銀行に入った頃は、払戻請求書に印鑑を押して窓口で現金を下ろすということが一般的な光景として見られていたが、今では、ほとんどの方がATMで現金を下ろされているし、その先にはキャッシュレス化も展望される。一度、利便性の高い手段を体験していただくことで、自然とそこに引き入れることができるのではないかという考えのもと、「排除」ではなく「包摂」と申しあげている。
 最近では、銀行の窓口でキャッシュカードとテンキーによる暗証番号入力で手続をされるお客さまが増えている。また、皆さまも交通系のICカードなどを利用されていると思うが、先ほど申しあげたとおり、こうした体験を通じて、その利便性を実感いただく機会を増やすことでデジタルテクノロジーを活用したサービスの普及が図られていくと思う。新たなやり方を強いるのではなく、利便性を実感していただくことで自然と引き入れる努力を続けていかなければならない。
 お客さまの大切な資産をお守りするという銀行としての責務をしっかりと果たしつつ、お客さまの利便性と業務の生産性・効率性を両立させていきたい。


(問)
 先ほどの外貨建て保険に関する質問と関連するが、報道で生保協会と連絡会を立ち上げて、トラブルとか苦情の軽減を図っていくというのがあったと思う。これを実際やるのか、どういった取組みなのかを教えてほしい。
(答)
 先ほど申しあげたとおり、生命保険協会との連携という観点で、昨年7月に外貨建て保険に関する意見交換を始めている。なお、それを踏まえて、10月には、全銀協から会員銀行に対して各行の取組事例等について周知・徹底した経緯もある。
 これまでも生命保険協会との間で、保険全般の苦情発生状況等を共有する意見交換会を毎年開催してきているが、近時の外貨建て保険に係る苦情の増加を踏まえ、今年度に入り、外貨建て保険にテーマを絞った意見交換会をすでに3回実施している。
 ご質問の連絡会については、苦情につながるケースの抑止に向けた取組みを一層推進すべく、この意見交換会を連絡会とする方向で生命保険協会と協議しているところである。
(問)
 経営者保証ガイドラインの活用状況についてお聞きしたい。金融庁の直近の調査でも、新規融資に占める無保証の割合というのが2割に届かなかった。これについてどう評価されているか。また経営者の交代時に、新旧の経営者の双方から保証を取る二重徴求を当局は問題視しているが、これについてどう対応すると考えているか。
(答)
 経営者保証の問題については、まずは銀行として事業性評価の重要性をしっかりと認識したうえで、担保・保証に過度に依拠せず目利き力を発揮していくことが重要だ、という基本姿勢を申しあげておきたい。
 ご指摘のあった2割弱という数字が多いのか少ないのかという評価は難しいが、経営者保証ガイドラインの策定以降、無保証の新規融資の割合は着実に増加してきている。
 ガイドラインの活用のためには、経営者の方々に対する周知が非常に重要であり、銀行界として、営業現場における個別の説明だけでなく、ウェブ広報動画の作成やパンフレットの配布、あるいは各銀行のホームページ等におけるガイドラインの活用状況の開示などを地道に行ってきた。引き続き、ガイドラインの周知やさらなる活用に向けて、しっかりと対応していきたい。
 次に、新旧経営者双方からの保証徴求、いわゆる二重徴求についてだが、金融庁の調査によれば、代表者の交代時における二重徴求の割合は減少の傾向にあり、直近では2割を下回る状況になってきている。
 この二重徴求の背景を少し具体的に申しあげる。一般的に、事業の承継には5年から10年の期間がかかると言われている。その間に、旧代表者から新代表者に対して、資産の承継のみならず、会社の経営権や支配権等の移転も進められていく。その進捗にあわせて、保証の要否についても見直しを検討していくことになる。したがって、代表者の交代が行われた時点においては、ガイドラインの要件に照らしても、二重徴求が一定程度は起こり得ることになる。
 全銀協としては、引き続き中小企業向けの周知活動を実施していく。加えて、会員銀行間のミーティングを定期的に開催して、ガイドラインをめぐる動向や活用状況、取組事例等を共有していきながら、銀行界におけるガイドラインの活用促進に向けて不断に努力して参りたい。


(問)
 冒頭の決算についての発言のなかで、攻めの策として過度な貸出競争を回避しながら、残高と利鞘の改善を図っていくことの必要性について話があったが、これはずっと見ていると、相変わらず金利の潰し合いをやっているように見える。先ほど「担保に依存しない」という話もあったが、藤原さんから見て、そういうかたちのもの、評価に値する部分は出てきていると見えているのか。
(答)
 非常に難しい課題だが、多くの銀行は、抜本的な構造改革に乗り出しつつある状況だと思う。
 銀行をめぐる現在の経営環境を俯瞰してみると、確かに非常に厳しい状況にある。先ほど申しあげた長引く超緩和政策や海外情勢のリスクなど、銀行界を取り巻く不安定要素はかなり多い。そうしたなかで、例えばデジタルテクノロジーを活用して、ビジネスの抜本的な構造改革に着手するとともに、独自の貸出モデルを開拓している金融機関も出てきている。いずれにしても、各行がそれぞれに創意工夫を凝らし、ご指摘の課題に向き合わなければならない時代に来ている。
 わが国の銀行の現在の預貸率は約7割である。預貸率が下がり続けているなかで良質な貸出機会を掘り起こしていくことは簡単ではない。したがって、先ほど申しあげたとおり、「金融」の前にお客さまの家計やお取引先の事業ニーズを考えるという発想の転換が非常に重要だと思う。そこから付加価値の高い貸出も生まれる。過去には、特定の貸出領域で競争に勝っていくためにはどうしたら良いかという発想に陥り、例えば、住宅ローンなど既存の特定領域に過度にリソースを振り向けてしまう傾向が見られたこともある。しかし、課題解決のベストパートナーとして、家計の安定的な資産形成、あるいは超高齢社会における事業承継やビジネスマッチングなど、貸出以外の提案を行い、その結果として収益の多様化が図られるという発想も大事である。お客さまの課題解決やビジネス創出に力点を置けば、これまで以上に銀行が評価される余地があると思う。
 また、長引く低金利環境のもとで、銀行の収益構造が変化していくなか、こうした攻めとともに、守りすなわちコスト競争力の強化が急務となっている状況である。コスト競争力強化の手段として、飛躍的に進展しているテクノロジーを活用することも併せて重要だと思う。
 その一方で、時代に合わなくなった事務や来店のお客さまが少なくなった店舗の配置を見直すことによって、コスト構造を改めることも大事だ。その際、従業員の働き方にしっかりと思いを致しつつ、その転換を図り、生産性を高め、将来に向けて稼ぐ力をさらに強化する必要がある。このように、銀行としての矜持を持って「正しく稼ぐ」ことが改めて重要な局面である。まだ道半ばではあるが、各経営者がリーダーシップを発揮してこの課題に取り組むべき時期に来ていると思う。


(問)
 外貨建て保険で、保険の銀行窓販は、数年前にも手数料体系を変えたり工夫をしてきたと思うが、それにも関わらずこういう問題がまた起きた。この根本的な原因がどこにあるのかというところだが、一つは、売るのは銀行の窓口だが、説明資料は保険会社が作る。責任の所在が曖昧になっていることが背景にあるのではないかという気もするが、今回のケースで言うと、問題が起きた責任の所在は銀行と保険とどちら側にあるのか、その根本的な問題はどこにあるのかをもう少し伺いたい。
(答)
 銀行が取り扱う金融商品は預金のみならず多岐にわたっている。例えば、投資信託一つをとってみても、多くの投資信託運用会社が作ったものを販売している。このように提供する金融商品によっては、商品の製造主体と販売主体が別々の会社になっているケースがあるということを前提に、あるべき姿を考えなければならない。
 その際、我々が最も意を用いなければならないのは、顧客本位の業務運営を徹底することである。外貨建て保険において、責任の所在が曖昧になっているのではないかとのご質問だが、私は必ずしもそのようなことはないと思っている。例えば、今取り組んでいる事例で申しあげると、新たに準備している募集補助資料等を作るうえでも、販売会社である銀行から説明資料を作成する生命保険会社に対して、実際に販売の現場でどうなっているのかを伝え、連携をしながら各生命保険会社が資料の作成を行っている。
 このように製造主体、販売主体がそれぞれに役割と責任を持つが、お客さまと直接向き合う銀行が、最後までお客さまに対して責任を持つ立場にあるということは紛れもない事実であり、私は最も重要なことだと思っている。現場でお客さまと接する販売主体である我々自身が、他責とすることなくお客さまに責任を持って対応する必要があるし、逆に言うと、説明資料の改訂など必要なことがあるのであれば、それは我々の方から生命保険会社に対して、現場の状況をお伝えしつつ対応を求めていく、そういった銀行の立ち位置が問われているのだと思っている。
 本当の意味での顧客本位の業務運営とはそうしたことの実践であり、決して責任をなすり付けたりせず、自らに問いかける、我々自身がそういった矜持を持ってお客さまに対応することから始まると考えている。


(問)
 今のご説明で確認したい。藤原さんがおっしゃったことは、日本で製販分離の制度が導入されたときから、一番初めから言われた理念だが、それが今、全銀協会長の口から改めて出なくちゃいけないのは、導入の理念が果たされていないということである。製販分離というのは、銀行のディストリビューション・チャネルを使うことによって、そのルートから顧客ニーズを吸い上げて、製造に反映させてよりよい製品を売り出すという理念だったはずである。それを今、改めて語らなくてはいけないのは、制度導入の理念が実現できていないという反省か。
(答)
 我々は常に現実から目を背けてはいけない、と思っている。事実、これだけの苦情があったということを踏まえれば、原点に立ち返り、本来どうあるべきだったのか、何をすべきだったのかについて、真摯に受け止めなければならない。
 また、そのような状態になっていること自体に対するご批判があるなら、それを真摯に受け止めて、正面からお答えする必要がある。顧客本位の業務運営が叫ばれて久しい。我々自身は、その取組方針や計画の策定、人材育成、お客さま対応などに取り組んできたが、改めて胸に手を当てて考える必要があると言える。
 特に、マーケットの状況が非常に不安定になっている。年末年始には、為替が104円に近づき、日経平均が2万円を切るなど、ボラティリティが高い状況が訪れた。そうしたなか、我々はリスク性商品に対する感度を上げるべきだろう。
 従来の「適温経済」から「変温経済」へ構造的な転換の兆しもある。一層目線を上げて、この問題についても議論しなければならない。制度導入時の理念は変わらないが、外的環境は変わってきている。そうした事を踏まえて、実務面で、我々がやらなければならないことも少し変わってくるのかもしれない。例えば、アフターフォローのあり方やその対象となるお客さまの層など、もう一度よく考えて、この問題について対処していきたいと思う。

別添資料:藤原会長記者会見(みずほ銀行頭取)