2021年10月14日

髙島会長記者会見(三井住友銀行頭取)

岩本専務理事報告

(なし)

 

会長記者会見の模様


(問)
 二つ質問する。1問目は景気認識等について。上半期が終わったが、上半期は引き続きコロナ禍で制約が多い経済環境だったと思う。前年度と比べて銀行を取り巻く事業環境はどうだったか、認識を聞かせてほしい。また、足元、新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が減少しているが、一方でさまざまなリスク要因もある。今後の経済、銀行の事業環境の見通し、対応すべき課題などについて考えを聞かせてほしい。
 2問目は、政府の「成長戦略実行計画」で示された、中小企業の事業再生のためのガイドラインについて。前回の会見で、全銀協として議論をスタートさせているという発言があった。現在の主な論点、方向性、策定までのスケジュール感などを聞かせてほしい。
(答)
 7月の就任会見において、「本年度は日本の社会・経済全体にとって重要な転換点になると考えている」と申しあげた。上期を振り返ると、予想どおりというか、私が全銀協会長に就任してからの3ヶ月間だけを見ても、予想以上のペースでさまざまな変化が加速した局面だったと感じている。
 まず新型コロナウイルス感染症について申しあげると、デルタ株の流行を背景に第5波が到来し、8月20日には過去最多となる2万5,000人を超える新規感染者が記録されたことは、ネガティブサプライズであった。一方で、ワクチン接種については、菅前総理のリーダーシップもあり、当初目標の1日100万回接種を上回るペースで急速に進み、背中さえ見えなかったアメリカを追い抜く接種率となっている。新型コロナウイルス感染症の帰趨は依然としてまだまだ不透明であるが、ワクチン接種が進展したことにより、社会・経済活動の正常化に向けた道筋は確実に視野に入りつつあると思う。
 また、デジタライゼーションについても、ウィズコロナ・ポストコロナを見据えた新たなワークスタイルや会議形式が着実に普及してきているほか、デジタル庁も発足し、それを契機にさまざまな施策の検討が新たにスタートしている。銀行界においても、長年のテーマであった手形・小切手機能の完全電子化に向けて、7月に自主行動計画を策定・公表し、2026年の全面的な電子化に向けた産業界との連携も含めた取組みを深めている。
 また、気候変動問題、カーボンニュートラルへの対応についても、政府あるいは私どものお客さまの動きに接しない日はないほど、さまざまな取組みが進んでおり、着実に理念から実行ステージへと移りつつあると感じている。全銀協としても、企画部内に「サステナビリティ推進室」を7月に設置したが、あまりの動きの速さ・多さに多忙を極めている状況である。
 このようなさまざまな変化が加速してきたなかにおいて、下期に当たっては、改めて、「わが国全体が重要な局面を迎えるなかにおいて、銀行界が社会的使命と責務をしっかりと果たし、社会・経済の支えとなれるよう」決意を新たにしている。
 下期を見通すと、日本経済は、堅調な外需が引き続き景気の下支えになることに加え、ワクチン接種の進捗や緊急事態宣言の解除に伴う行動制限の緩和を受け、消費活動が活性化し、回復基調が続いていくことが期待される。
 もっとも、感染症をめぐる帰趨は依然として不透明なところがあるほか、足元、半導体や各種原材料の供給制約によるサプライチェーンの目詰まりが、資源価格の高騰を長期化させ、景気回復の足を引っ張る懸念が高まっている。さらに、FRBをはじめとする各国中銀の金融政策動向、アフガニスタン情勢を含めた地政学リスクの高まりなど、国内外の下振れリスクには注意が必要である。
 銀行界の取組みとしては、上期に続き新型コロナウイルス感染症対応が最優先であり、デジタル、気候変動、AML/CFT対応の共同化に向けた検討も進めていく予定である。新型コロナウイルス感染症対応に関しては、上期は第5波の襲来で再び非常時に戻ってしまったが、下期は経済活動の正常化が進むなかで、コロナ禍によってダメージを受けたお客さまの事業の再生・再構築に向けた取組みを一層加速させていかなければならないと考えている。
 岸田内閣の発足に伴い、政府としてもさまざまな検討、取組みが加速していくことが見込まれる。わが国経済・社会が力強く回復・成長できるよう、引き続き銀行界一丸となって、力を尽くして参りたい。
 2点目は、中小企業向けの事業再生ガイドラインに関してのご質問であった。「成長戦略実行計画」で示された、中小企業の実態を踏まえた事業再生のためのガイドラインについては、先月の会見でも申しあげたとおり、全銀協において主要な論点を整理し、議論を行っている。
 現時点で決まったものはないが、具体的なイメージとして、新たなガイドラインにおいては、中小事業者・金融機関双方にとって指針となるような総合的な考え方を示すとともに、民間金融機関が第三者の専門家と協力して行う事業再生を後押しするような内容にしたいと考えている。経済合理性や経営規律の確保、モラルハザードの回避といった論点もしっかりと押さえつつ、丁寧に議論を進めていこうと考えている。
 スケジュールについては、まだ決定したわけではないが、弁護士・学者といった専門家の方々、各業界団体の方々、および関係省庁などからの意見を幅広く伺うため、研究会を近々立ち上げる予定である。中小企業の事業再生のためのガイドライン策定は、ポストコロナにおける事業者の方々のビジネスモデルの再構築や財務基盤の改善を支援するうえで、政府による各種需要喚起策や雇用・転職などの労働環境整備、そして企業自らによる経営の効率化と併せて、非常に重要な取組みの一つと認識している。全銀協として、引き続き関係者の方々と緊密に連携し、丁寧に議論を進めて参りたい。


(問)
 全銀システムの健全性についてお尋ねするが、サイバーセキュリティの観点も含めて、今の時点で問題はないと考えているか。また、各銀行でシステム障害が起き、全銀システムに接続できなくなった場合の対応についてもお聞きしたい。これに関連して、みずほ銀行が先週の会見で、「システムを使いこなせていない」という発言があったが、この部分への受止めを伺いたい。
 もう一つは、このところ日本で敵対的TOBが目立つようになってきているかと思うが、そのことについての受止めと、敵対的TOBに対する資金支援のあり方についてのお考えをお尋ねしたい。
(答)
 最初は、全銀システム全般に関するご質問であった。
 全銀システムの通信ネットワークは、限られた参加者のみが利用可能で、インターネットやインターネットに繋がっている機器とは接続しない、「閉域網」という形式を採用しており、外部環境からは直接アクセスできない仕組みになっている。
 したがって、ウェブや外部メールを経由したサイバー攻撃にさらされるリスクはないわけだが、例えば、保守あるいは点検の際に使用する機器等を経由して、マルウェアあるいはランサムウェアというものに感染するリスクなど、全てのリスクを完全に排除できているわけではない。
 このため、2019年から稼動している第7次全銀システムでは、サイバーセキュリティの強化を主要なテーマの一つとして取り上げ、不正通信の検知機能や、マルウェアなどに感染した場合の遮断機能の強化を図るなど、環境変化を踏まえつつ、健全性の確保に向けた検討・対応を行ってきている。
 この他にも、加盟銀行および全銀システムの一層の安定運用を図るために、毎年度、加盟銀行も参加して、障害時を想定した運用訓練も実施している。
 次に、各行のシステム障害により全銀システムに接続できなくなった場合の対応であるが、まずは障害の早期復旧に努めることとなるが、復旧の目途がつかない場合には、お客さまへの影響を最小化するため、例えば、記憶媒体に振込データを書き込んだうえで、全銀ネットが障害発生銀行に代わって、振込データを「代行発信」、「代行受信」するという方法が考えられる。
 先月の会見でも申しあげたが、全銀システムは1973年の稼動開始以来、一度もオンラインサービスを停止することなく稼動を続けている。安全性、信頼性確保のため、今後も不断の努力を続けていく所存である。
 続いて、先日のみずほ銀行の記者会見における発言の受止めということであるが、ひとたび障害が発生した場合の復旧力、いわゆるレジリエンスを組織全体としてどのように改善していくのか、という課題認識を表現されたものだと理解している。こうした観点から、ベンダーとの協力関係の強化などにも取り組んでいかれるということであり、適切な対応が着実に取られることを期待している。
 二つ目は、日本における敵対的TOBに関しての質問であった。あくまでTOB一般に関するご質問と理解したうえでお答えを申しあげたい。
 敵対的TOBについて、そもそも何をもって「敵対的」とするかということ自体がなかなか難しいことではあるが、仮に、「経営陣の賛同を得ずに経営権の支配を目的として開始されたTOB」を敵対的TOBとしてみた場合、本邦におけるTOB全体に占める案件数は、必ずしも多いわけではない。ただし、ここ数年、限界的に増加しているというのはご指摘のとおりである。
 「敵対的」と呼ばれるTOBのなかには、複数の企業が、ある特定の企業の買収に名乗りをあげて競い合うという「対抗的」なもの、あるいは当初は経営陣から賛否を示されていない、あるいは反対されていた場合であっても、最終的には賛同を得るというケースもある。そもそも件数が多くないことに加え、TOBはある面では個別性が高いため、個々の事案ごとにその背景も全て異なり、受止めを一般的に申しあげるのはなかなか難しい。
 したがって、敵対的TOBに関する資金支援の考え方についても、敵対的だから良い・悪いという類いの判断ではなく、基本的には個々の案件の状況をしっかりと総合的に考えて、対象となっている企業の企業価値の中長期的な向上に資するか否か、利益相反はないかといった点などを総合的に考慮したうえで、個々の金融機関において個別に判断される性格のものだろうと考えている。


(問)
 銀行の経営権取得について伺いたい。そもそも一般的に上場企業というのは株が取引されており、その株に値段がついているということは、その会社の経営権にも値段がついて、当然取引の対象になると見ているが、銀行の経営権を取得する場合、公共性の高い業種であることを鑑みて、何か考慮すべきことはあるのか。
(答)
 銀行の経営権取得に関するご質問である。これもあくまで一般論としてのご質問という理解のもとにお答えしたいと思う。
 銀行の経営権の取得については、国によってさまざまな考え方がある。例えば、アメリカでは、銀商分離の考え方のもと、銀行持株会社や、銀行ではない者が銀行の25%以上の議決権を取得することは原則禁止されている。片や欧州においては、制限のある国もあるが、多くの国においては一定の条件のもとで事業会社が銀行の支配権を取得すること、あるいは逆に銀行が事業会社の株式を取得することも認められている。
 ご指摘のとおり、わが国においては銀行法や金融商品取引法などに定められたルールや手順に則れば、市場参加者が銀行の経営権を取得することは可能であるが、いわゆる銀行主要株主規制のもとで規制されている。これは、2000年代初頭に、異業種による銀行業への参入の動きが本格化したことを受け、2001年に整備されたものと理解している。
 当時、銀行界は平成の金融危機の最中にあったこともあり、銀行主要株主規制の創設を議論した金融審議会において、こうした異業種からの銀行業への参入は「積極的に評価すべき」とされたうえで、他方で、「銀行の公共性」、あるいは「銀行経営の健全性の確保」という観点から、20%以上の株式を取得する場合は、その適切性を審査すべく当局による許可制とし、さらに50%を超える支配株主となる場合は、当局による各種の命令の対象とされたことが、歴史的な背景であったと理解している。
 したがって、銀行の経営権を取得する場合は、今申しあげた、「銀行の公共性」や「銀行経営の健全性確保」の観点が、極めて重要になってくると考えられる。それこそが、まさに主要株主認可において審査される、申請者の資金の源泉や株式の保有目的、あるいは財産および収支の状況、そして、人的構成などが銀行業務の健全性かつ適切性を阻害するものではないか、といった点に表れているのではないかと考えている。


(問)
 財務省の事務方のトップである次官が雑誌に寄稿し、財政赤字の拡大への危機感を訴えた。日本の経済の消費が活性化しないのは、将来不安があるからだと経済界からも言われている。財政健全化に向けて、コロナ禍でも経済対策は大きなものを打たれてきたが、また、これからも次の選挙に向けて各政党は的確な経済対策を打つと言っているが、そうした財源であるとか、いつまでに財政健全化をどういうふうに図るかといったことを、国民の不安を払拭するためにも政治が示すべきだという意見もあがっているが、髙島会長はグローバルにも、海外からの視点というのもよくご存知だし、国内経済の方の事情もよくご存知でいる立場からして、どのようにこれを捉えているか。
(答)
 個別の矢野事務次官の寄稿に対して、全銀協としてコメントする立場にはないと思っている。
(問)
 財政健全化についてもノーコメントか。
(答)
 今回の寄稿に関して、鈴木大臣も発言自体は政府の方針に反するものではないとコメントされている。一般的に申しあげて、健全な財政は極めて重要であるのは間違いないと思う。


(問)
 貸倒引当金に関して。金融検査マニュアルが2019年末に廃止され、貸倒引当金の算入方法が柔軟化された。コロナ禍もあり、大手行は特定業種などへのグループ引当を導入するなど、状況に合わせた引当金の積増しを行っている。一方、地方銀行を含め、銀行界全体で見ると、新しい試みをしている先は少なく、引当が十分ではないのではないかといった指摘もある。グループ引当はもちろんだが、欧米で見られるような予想損失モデルを用いた手法の検討も含めて、今後の引当金のあり方について考えをお聞きしたい。
 もう1点は、高齢者取引について。認知判断能力が低下した顧客の預金引出しについて、親族などの代理人が取引する際の考え方を全銀協が2月に公表した。その後の各行の運用状況や見えてきた課題について、会員行からフィードバックを受けていれば、その内容を教えてほしい。
(答)
 最初は、引当金に関してのご質問であった。将来の信用リスク評価をより的確に引当に反映するための工夫、いわゆる「フォワードルッキング手法」や「グループ引当」全般に関するご質問である。
 ご質問のなかにもあったとおり、2019年12月の金融検査マニュアルの廃止と同時に公表された「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」では、将来の定量・定性情報を活用した引当手法である「フォワードルッキング手法」や、リスク特性に応じ分類した債務者グループに固有の引当率を設定する「グループ引当」の導入が可能になった。
 個別行の話になるが、三井住友銀行においてもこうした考え方にもとづき、2020年度決算において、新型コロナウイルス感染症の影響が大きいポートフォリオに対して、フォワードルッキング引当を計上している。
 他方、どのような引当の見積り方法が信用リスクをより的確に反映することになるのかという判断は、金融機関ごとに異なってくると考えている。重要なことは、金融機関の経営理念、対象顧客の選定などの経営戦略・方針・クレジットポリシー、内部管理やリスク管理態勢の十全性の状況などを踏まえたうえで、適切な引当の見積り方法を検討するということであろう。したがって、特定の引当方法の導入の有無だけをもって、引当が十分かどうかを評価するということはなかなか難しいと理解している。
 また、ご指摘にもあったとおり、欧米では予想損失モデルにもとづいた手法が導入されている。この手法は、平時に将来損失に備えた引当金を繰り入れ、景気が悪化した際に取り崩すことにより、景気変動による業績のぶれを抑制する、いわゆるカウンターシクリカル効果が期待されているものである。
 しかしながら、一概に予想損失モデルといっても、計上する引当額や計上のタイミングについては、会計基準によって大きな相違があるほか、導入により期待された効果が得られたのかどうか、その評価は必ずしもまだ定まっているとは言い難いのではないかと思う。わが国への適用も含めて、今後も議論が必要であると考えている。
 いずれにしても、貸出方針や貸出ポートフォリオの異なる金融機関にとって、引当方法は一律に定まるというものではなく、それぞれの金融機関において、適切な方法をしっかりと検討する必要がある。各行においては、引き続き、当局、公認会計士、投資家などのステークホルダーとの対話を通じて、信頼性、実効性のある枠組みを作り上げていくことが重要であると考えている。
 それから、二点目は代理人取引に関してのご質問であった。
 認知判断能力の低下したお客さまへの対応については、ご指摘のとおり、本年2月、全銀協で「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方」を取りまとめ、公表した。この中で、実務上、判断に迷うことが多かった代理人との金融取引に関して、会員各行が実務面で参照できるように考え方を示している。この考え方の公表以降、複数の会員行が認知判断能力の低下した方を対象とした、あるいは将来の認知機能の低下に備えた、新たな商品やサービスをリリースしている。
 こうした状況を踏まえて、全銀協でも会員行の態勢整備や取組状況の全体像を把握するために、年内を目途にフォローアップ調査の実施を予定している。本調査により把握できた好事例の還元や明確になった課題への対応などを通じて、銀行界全体の取組みの底上げに努めて参りたい。
 今後も認知判断能力が低下する方の増加が予想されるなかで、ご本人およびそのご親族などに寄り添った丁寧な対応を行うことは、公共性・社会性を使命とする金融機関の責務である。全銀協としても、引き続き会員各行の取組みをサポートして参りたい。また、先ほど申しあげたフォローアップ調査の内容、結果等については、皆さまとシェアできる機会をつくれないかと考えている。


(問)
 ここ数年、金融庁が銀行主要株主認可を下すケースが散見される。先ほど指摘があったように、濫用的な買付者を排除するための仕組みだと私も考えているが、この制度の意味合いを会長としてどのように捉えているか。足元の状況に鑑みて、この仕組みが適切に機能しているとお考えか。
 2点目が、日本銀行のコロナオペの期限が来春に到来すると思う。今般、新たに気候変動対応オペの取扱いを開始することになると思うが、0.1%の付利が受けられるコロナオペの利用は相応にあったと思う。今後、コロナオペが終了した場合にマイナス金利残高への抵触など、銀行収益に与える影響をどのように見ているのかお聞かせいただきたい。
(答)
 一つ目は、先ほどのご質問に関連するものと理解。あくまで銀行主要株主規制に関する一般論という理解のもとでお答えする。先ほども申しあげたとおり、銀行業の公共性に鑑みて、銀行経営の健全性を確保することが、まさにこの制度の趣旨であり、その観点から、既存銀行の相当程度の株式を取得して銀行経営に関与しようとする株主については、法人であれ個人であれ、取得時および取得後を通じた行政による適切なチェックを行うことが、この制度の目的であると承知している。
 異業種による銀行への参入や、いわゆるビッグ・テックなどのテクノロジー企業の躍進など、足元、社会経済情勢は大きく変化している。制度としての適切性、有効性はもちろん不断に検証されていく必要があるが、少なくとも現時点において、本制度に何らかのかたちで大きな欠陥、あるいは不備が広く指摘される状況にはないと考えている。
 二点目の日本銀行のコロナオペについて。新型コロナウイルス感染症の拡大以降、日本銀行は企業の資金繰り支援、いわゆるコロナオペなどの大規模な金融緩和策を実施され、状況に応じて期限の延長など臨機応変な措置を取られてきた。これらは、感染症の動向や公衆衛生上の措置に経済活動が大きく左右される非常に厳しい状況下において、企業倒産の抑制や金融市場の安定化に十分寄与してきたと考えている。コロナオペの期限は来年3月までとされており、9月22日時点においては、約78兆円の利用残高となっている。仮にコロナオペを終了した場合には、各金融機関の利用状況や当座預金の運営状況にもよるが、ご指摘のとおり、マクロ加算残高の2倍加算がなくなることにより、政策金利残高、つまりマイナス金利を適用する残高に抵触したり、0.1%ないしは0.2%の付利がなくなることにより、収益に影響が出る金融機関もあると考えられる。コロナオペを延長するかどうかの判断は、日本銀行の専管事項であるので、全銀協の会長としてコメントをするのはふさわしくないと考えているが、期限が延長されるか否かにかかわらず、銀行界としては、引き続きお客さまの資金繰り支援に全力を挙げて取り組み、役割を果たしていくことが非常に大事だと考えている。


(問)
 1点目は、中小企業の事業再生の関連で、経営者保証について。中小企業の倒産時に、個人保証を行う経営者がそのまま個人破産となるケースも多く、事業再生の早期決断や再スタートを妨げる要因になっているのではないかという指摘もあるが、銀行界としての見解をお願いしたい。また、既存の経営者保証ガイドラインの見直しの必要性についてどうお考えかも含めて、対応方針についてもお願いしたい。
 2点目は、本日衆議院が解散され、事実上の選挙戦に入ったわけだが、これについての銀行界としての受止めと、選挙後の新政権の期待感があればぜひお願いしたい。
(答)
 1点目は、中小企業の経営者保証に関してのご質問である。経営者による個人保証については、2013年に策定された「経営者保証に関するガイドライン」の冒頭で、「経営への規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する面がある一方、経営者による思い切った事業展開や、保証後において経営が窮境に陥った場合における早期の事業再生を阻害する要因となっているなど、企業の活力を阻害する面もある」と指摘されている。
 現行の「経営者保証に関するガイドライン」は、まさにこうした課題認識に対応するために策定されたものであり、そのなかでは、保証契約を検討する際や金融機関等の債権者が保証履行を求める際の、事業者・経営者・金融機関の自主的なルールを定めている。
 具体的には、事業者、経営者において、「法人個人の一体性の解消」、「財務基盤の強化」、「財務状況の適時適切な情報開示」といった要件を将来にわたって充足すると見込まれる場合、金融機関は経営者保証なしの融資などを検討するとしている。
 また、保証債務の整理時の対応についても、個々の案件の個別事情を踏まえ、関係当事者が具体的な対応を検討するということではあるが、保証人の手元に残す資産、いわゆる残存資産の範囲に関する一定の目線を示すとともに、保証人による正確な情報開示を前提としつつ、残存する保証債務の免除要請について誠実に対応する、といった点を明確にしている。
 経営者保証ガイドラインの見直しについては、その見直しの要否も含めて現時点で決まったことはないが、大切なことは、引き続き、事業者・金融機関をはじめとした関係者が、現行ガイドラインの趣旨、内容をよく理解して、これがあまねく活用されていくことだと考えている。銀行界としても、中小企業の方々の早期の事業再生などを後押しできるよう、引き続き本ガイドラインの一層の普及、積極的な活用に取り組んで参りたい。
 2点目の選挙についての質問だが、全銀協として選挙あるいはその争点についてコメントする立場にはなく、直接の回答は差し控えたいと思う。あくまで個人的な見解として申しあげれば、ぜひ今のコロナ禍の難局を乗り切り、ウィズコロナ・アフターコロナに向けた健全かつ前向きな政策論争が行われることを期待している。


(問)
 先日、日本銀行の黒田総裁の在任期間が歴代で最長になった。改めて、黒田総裁のもとで進められてきた低金利環境の長期化が銀行経営に与える影響について伺いたい。また、各国中銀ではテーパリングや出口政策の具体的な議論がスタートしているが、日本銀行の出口政策の見通しについてどのようにお考えか、これが1点目である。
 2点目が、全銀協が進めている、AIを活用したAML/CFTの高度化に向けた共同機関やシステムについて、足元の取組状況やそのシステムの具体的なイメージがあれば伺いたい。
(答)
 1点目の日本銀行の金融政策について。金融政策は日本銀行の専管事項であるため、全銀協会長としてコメントする立場になく、あくまで個人的な意見としてお答えしたいと思う。
 低金利環境の長期化が銀行収益に与える影響については、銀行の預貸利鞘の縮小や運用環境の悪化によって、金融機関全体の収益環境が厳しくなり、その結果として金融仲介機能にも影響が生じる可能性があるということは、これまでも申しあげてきているとおりである。
 ただし、本年3月に各種政策の点検が行われ、貸出促進付利制度が設けられるなどして、金融機関の収益悪化を一定程度減ずる方向で配慮がなされたことや、気候変動対応オペといった新たな資金供給の制度設計にも取り組んでいただいていることは理解しており、評価したいと思う。
 また、新型コロナウイルス感染症の拡大以降は、企業の資金繰り支援、いわゆるコロナオペや、ETF買入れの増額などの大規模な金融緩和策により、企業倒産の抑制や金融市場の安定化に寄与してきたということも事実である。
 そのなかで、出口政策については、足許、ECBが債券購入量の減額を決定しているほか、FRBもテーパリングの開始を予定するなど、諸外国において具体的な検討がまさに進んでいる。他方、日本銀行においては、9月の金融政策決定会合後の黒田総裁の会見において、2%の物価目標達成に向けて粘り強く金融緩和を続けるとコメントされた。
 国・地域ごとに金融・経済情勢は異なるため、それぞれの中央銀行のスタンスに違いがあるということ自体についてことさら申しあげることはないが、いわゆる異次元緩和の導入から8年以上経過、マイナス金利の導入から5年以上経過しているなかにおいて、金融機関にとって厳しい収益環境が長期間続いていることによる副作用については、効果との対比において、より厳しく見極めていくことが必要になってきていると思っている。
 日本銀行におかれては、2%の物価目標実現に向けた金融政策の効果と副作用のバランスなどについて、引き続き、総合的かつ適時、適切な検討、判断をお願いしたいと思っている。
 2点目は、AML/CFTの共同機関・システムに関してのご質問であった。
 以前に報告申しあげたとおり、昨年度の実証実験によって、AIを活用した取引モニタリングやフィルタリングについてその有効性が確認され、将来的な業務の効率化の可能性を見いだすことができたと認識している。これを踏まえて、今年7月、実用化に向けた最初のフェーズとして、全銀協が事務局となる「AML/CFT業務共同化に関するタスクフォース」を設置した。このタスクフォースの目的は、共同化の対象とすべき内容や共同化する場合の運営組織のあり方などを広く検討することである。
 現在、このタスクフォースにおいては、地銀協、第二地銀協の皆さまの協力も受けて、会員行の抱えている具体的な課題を分析しているところである。今後、各行に共通する課題や共同化が望ましい領域の特定、そしてその実現可能性などを分析するなかで、共同機関・システムの具体的なイメージをつくっていく予定である。
 本件については、8月末に公表された政府の行動計画においても、令和6年春までに「実用化を図る」とされており、今後、タスクフォースのなかで、オブザーバーとして参加いただいている金融庁ともしっかりと議論しながら対応を進めていきたい。
 また、昨日(10月13日)、この共同機関の実用化に向けて、制度面のあり方を検討する金融審議会の「資金決済ワーキング・グループ」の初回会合が開催された。全銀協もオブザーバーの立場で参加しており、この議論の状況をよくフォローするとともに、関係者の方々としっかりと連携して参りたい。


(問)
 振込手数料に関連して1点質問する。先日、内国為替制度運営費が適用されたことで振込手数料を各行おおむね引き下げたが、改めて収益への影響がどうなるか、また、このことがデジタルシフトやATMの共同化がさらに進むきっかけになるのではないかとも考えるが、この点、ご見解をお願いしたい。
(答)
 振込手数料の見直しに伴う収益影響だが、手数料の設定方針はそれぞれの銀行で実は非常にさまざまであり、一概に申しあげるのがなかなか難しいというのがまず前提認識である。
 しかしながら、ご指摘のとおり、多くの銀行において振込手数料を引下げの方向で見直してこられたので、為替収益の減収要因になっている可能性は高いだろうと考えている。
 デジタルシフトはまさに各行が経営戦略、あるいは事業戦略にもとづいて判断する部分であるが、すでに窓口やATM、あるいはインターネット・バンキングなどの受付チャネルによって、振込手数料に差を設けている銀行も多い。
 また、あくまでも一般論であるが、デジタルチャネルの利便性をより広く実感していただくために、手数料に限らず、例えばUI/UXのさらなる向上といったさまざまな取組みにより、デジタルシフトをさらに促す動きが出てくる可能性は高いだろう。
 ATMの共同化について申しあげると、キャッシュレス化の進展などにより、ATMの設置台数は年々減少傾向にある。加えて、コロナ禍を受けたお客さまの行動様式の変化などもあり、今後もこうした減少傾向が続く可能性が高い。
 こうした環境変化のなかで、ATMの共同化は、各行がATMネットワークを最適化するための手段の一つと認識しており、例えば私ども三井住友銀行も、2019年9月から三菱UFJ銀行と共同利用を開始している。
 都市部に限らず、ATMネットワークの維持に対する期待が強い地方においても同じような問題意識で、お客さまの利便性にも配慮しながら、ATMの共同化や相互開放を進める動きがある。
 今後も、各行がATMネットワークの最適なあり方を模索するなかで、ATMの共同化は一つの選択肢となり得るだろう。


(問)
 システム投資に関連して。先日、三菱UFJ銀行がアメリカのユニオンバンクの売却を公表した。その際、増え続けるIT投資を継続するために規模がある程度必要と判断したということだったが、一部には、邦銀は米銀と比べてITの投資額が少ない、デジタルの分野で劣後しているという指摘も出ている。これについてどう思われるか。
(答)
 確かにそういう議論があるが、私ども邦銀と米銀のIT投資を比較する際に、投資の実額だけに着目してもあまり実質的な議論にはつながらないと考えている。IT投資は、取り扱っている業務の幅や取引のボリューム、これまでのIT投資の結果として蓄積された各行のIT資産の状況、あるいは従業員の人数・スキルといった、さまざまな要素を踏まえて必要な規模が決まってくるものだと思う。
 邦銀と米銀では、商業銀行の基礎となる預貸金業務の占める割合や、従業員の雇用形態といった、比較の前提となる要素が大きく異なっているので、投資の実額のみで適切に比較するのは現実的には難しいと思う。本質的に重要なのは、各行がどのような目的で、どのような投資を、どれだけ効率的に行っているかを見ていくことだと思う。
 一般的なお答えをしにくい質問なので、恐縮だが、私どもSMBCグループの例を使って若干お話させていただく。
 私どもの銀行のIT投資は、お客さまに新たな価値を提供するために行う、いわゆる「攻めの投資」と、銀行システムという社会インフラを安全かつ確実に運用するために行う「守りの投資」の二つに分けて考えることができる。SMBCグループの中期経営計画においては、2020年度から2022年度までの3年間で、5,000億円のIT投資を計画しており、そのうちの1,000億円は経営枠と位置付け、DXなどの戦略的な部分に機動的に投資できるような運用としている。
 そして、この5,000億円の内訳だが、約4割を今申しあげた経営枠も含めた戦略投資といった「攻めの投資」に充てており、残り6割をシステムインフラの更新、システム運行のレジリエンス、あるいはシステムセキュリティの向上といった「守りの投資」、これはrun the businessなどとよくいうが、そのための投資に配分している。
 こうしたIT投資のポートフォリオは、Gartner社という定期的に業界の動向を調査・分析してレポートを出している調査会社の分析に照らし合わせても、実は米銀と全く遜色のないものになっていると考えている。また、私どもだけではなく、多くの銀行においても同じような状況ではないかと推察する。
 いずれにしても、IT投資については、各行のビジネスモデルや経営戦略、投資の目的や内容、あるいは効率性といった、実態を踏まえた議論をしっかりと行っていくことが重要だと思う。


(問)
 今月、岸田政権が発足したが、岸田総理が掲げる経済面での各種政策について、銀行界としての意見や要望、期待などがあればお聞きしたい。
 もう一点、金融所得課税について岸田総理は「当面見直さない」と発言しているが、この点について銀行界としての見解をお聞かせいただきたい。仮に、見直しがされた場合に、銀行ビジネスに与える影響についても併せてお聞かせいただきたい。
(答)
 まずもって、岸田総理大臣のご就任および新内閣の発足に対し、心からお祝いを申しあげたい。党役員人事も含め、「適材適所」で安定感のある政権が立ち上がったと受け止めている。
 岸田総理は、先日の就任会見や所信表明演説のなかで、新型コロナウイルス感染症対策、新しい日本型資本主義の実現、外交・安全保障の3点を重点的な領域、政策パッケージとして掲げられた。経済政策においては、成長と分配の好循環に向けて政策を総動員するとともに、今後、「新しい資本主義実現会議」を設置し、デジタル、グリーンなどの研究開発への投資を含め、ポストコロナ時代の社会ビジョンを策定される方針と認識している。
 銀行界としても、現下の難局を乗り越え、新たな創生につなげるために、引き続きお客さまの資金繰り支援に全力を挙げて取り組むとともに、ポストコロナ時代を見据えて、2050年のカーボンニュートラルの実現やデジタルトランスフォーメーションといった重要課題にしっかりと取り組み、わが国の持続的な成長の実現に向けてしっかりと役割を果たして参りたい。その視点でも、大いに期待したいと考えている。
 二つ目は、金融所得課税についての銀行ビジネスへの影響というご質問であった。金融所得課税については、いわゆる「1億円の壁」の打破を念頭に置いて、政策の選択肢の一つとして、その見直しが、以前からたびたび議論されてきたことは承知している。
 この「1億円の壁」とは、給与所得の税率が最大45%まで累進的に上がっていくように設定されるのに対し、金融所得の税率は一律20%に定められていることから、給与所得と比べて金融所得が多い方については、税負担率が下がることになり、財務省の統計によると、実際に年間所得が1億円を超えてくると税負担率が低下する現象を指している。
 本件は、岸田総理が掲げる「成長と分配の好循環」の実現に向けた政策の総動員という文脈のなかで、さまざまある政策アイデアの一つとして取り上げられているが、先般、これはすぐに手をつけることはないとも発言されている。したがって、金融所得課税の見直しだけを切り離して、銀行ビジネスへの影響を評価するというのは難しい。また、今後そのあり方が検討されるということなので、今の時点で具体的にコメントするのは適切ではないと考えている。
 わが国においては、諸外国と比べても家計の金融資産に占める預貯金の比率が圧倒的に高く、国民の安定的な資産形成を促進する観点から、株式や投資信託等の資産への投資を促す「貯蓄から投資へ」が長年の課題であり、税制面においても、NISAなどの政策対応がなされてきた。仮に、今後見直しの議論が実際に行われる際には、私どもとしては、こうしたこれまでの取組みも踏まえ、バランスの取れた検討が進められることを期待したい。


(問)
 1点目は、銀行のシステム障害についてである。足元、みずほ銀行を中心に障害が相次いでいる。外為取引でも先日あり、影響件数自体は少なかったが、心配されている方は一定数いると思う。今後も障害が続くと、日本の金融システムそのものへの不安につながるおそれもあると思うが、会長のご所見を伺いたい。
 2点目は、電子インボイスと全銀EDIシステムの連携に向けた検討を進めていると思うが、足元の取組状況と課題、今後の展望について教えていただきたい。
(答)
 最初のご質問は、システム障害の金融システムへの影響という視点であった。これはまさにご指摘のとおり、外国為替取引か内国為替取引かを問わず、企業間決済の遅延はお客さまの資金繰りや取引上の信用にも影響し得るものなので、私ども銀行が担っている責務は極めて重いものであるというのが、まず基本的な認識である。
 取引量の多い内国為替取引を例として申しあげると、わが国では、1973年の全銀システムの稼動当初から、振込に伴う即時入金を実現しており、また、2018年の全銀モアタイムシステムの稼働により、多くの銀行で24時間365日の振込が実現している。
 したがって、わが国の企業間決済は、このような「常時稼働」を前提にした決済環境を所与のものとしている。こうした点は、わが国の金融システムの一つの特徴あるいはメリットというか、誇るべき点だと我々は思っている。同時に、各行においてもこうした決済環境を安定的に提供すべく、日頃から態勢を整備し、努力を続ける必要があることも言うまでもないところである。
 また、銀行が提供する決済システムは、お客さまの日々の生活や事業の営みを支える極めて重要な社会インフラである。先月の会見でも申しあげたとおり、システム障害については、迅速かつ適切にお客さまに対応できる体制、お客さまへの影響を極小化する体制を構築することが極めて重要だと考えている。一連のシステム障害だけをもって、金融システムへの影響を計ることは難しいわけだが、私ども銀行界としては、より多くのお客さまに安心して日々の取引をご利用いただけるよう、引き続き不断の努力を重ねて参りたいと考えている。
 二つ目は、電子インボイスの導入に関するご質問である。
 ご指摘のとおり、2023年のインボイス制度の導入に向けて、現在、会計ソフトベンダーを中心に構成される「電子インボイス推進協議会」において、国際標準規格である「Peppol」に準拠しつつ、電子インボイスの日本標準仕様の策定が進められていると認識している。全銀協も今年1月から「電子インボイス推進協議会」に参加して連携を図っている。
 銀行界としては、電子インボイスの導入を、わが国の企業間取引における受発注・請求から決済までの流れを一気通貫にデジタル化して、企業の生産性向上につなげる好機と捉えている。そこで重要になるのが電子インボイスと、私どもの全銀EDIシステムのシームレスな連携である。
 全銀EDIシステムは、支払企業から受取企業に振込を行う際に、振込電文に追加情報を添付することができるシステムであるが、電子インボイスに格納された受発注や請求などの情報を添付して振込を行っていただくことにより、受取企業側においては、請求データと振込とを突合する消込み作業の大幅な効率化が実現できる。多くの企業にご利用いただくためにも、広く普及している会計ソフトにおいて、電子インボイスと全銀EDIシステムの両方に対応していただくことが極めて重要と考えており、会計ソフトベンダーとの連携も強化している。
 また、全銀ネット「次世代資金決済システムに関する検討タスクフォース」の傘下に、新たなワーキング・グループを設置して、電子インボイスと全銀EDIシステムの連携などについて議論を進めていく予定である。関係省庁や産業界とも緊密に連携しつつ、この機会を捉えて、全銀EDIシステムの利用促進に取り組んで参りたい。


(問)
 冒頭の質問で、敵対的TOBの買収資金についてのお答えがあった。髙島会長は、敵対的だからといって、良いとか悪いとかではないとお話しいただいたが、我々からすると、銀行は敵対的TOBの買収資金の融資については極めて保守的な判断をしていると思っていた。その認識は違うのか、ということを改めてお聞かせいただきたい。
 仮に保守的であるとしたらなぜ保守的になるのかということと、その一方で、友好的なTOBの資金については積極的に出しているように見受けられる。企業が企業を買収する際に、相手方経営陣が賛同を表明している典型的な友好的TOBの中でも、よくこんな金額を出すなと思うのは、いわゆるMBO案件である。少数株主がないがしろにされているように見える案件でも、メガバンクは融資を行っており、こんな融資をやっていいのかなと思うことがしばしばあるが、この辺りについて髙島会長のお考えをお聞かせいただきたい。
(答)
 あくまで私の個人的な見解ということでお聞きいただきたい。一部、先ほどの回答の繰り返しになるが、やはり最終的に長期的な視点で、それぞれの案件がその企業の企業価値に対して本当にポジティブなのかネガティブなのか、ということをしっかりと判断するということに尽きるだろう、と私は考えている。
 友好的TOB、特にMBO案件には融資を出し過ぎではないかとのコメントもいただいたが、これについては、いろいろと評価が分かれるところではないかと考えている。
 いずれにしても、その買収案件が、社会にとって、あるいはその事業のステークホルダーにとって総合的に本当に有用な取引なのかということにこだわるべきというのが私の考えである。