2023年3月16日

半沢会長記者会見(三菱UFJ銀行頭取)

辻専務理事報告

 事務局から1点ご報告申しあげる。
 本日、お手元の資料のとおり、体験型投資学習アプリ「まねらん」をリリースした。本アプリは、アプリ内通貨を使ったバーチャルな株式投資を無料で体験することができるほか、当協会の金融教材とも連携し、お金に関する知識が学べる内容としている。今後、教育現場や職域での普及を目指し、金融リテラシーの向上に貢献して参りたい。

 

会長記者会見の模様


(問)
 1点目は、昨年7月の会長就任からの取組みを振り返って、総括をお願いしたい。
 2点目は、次期日本銀行総裁に植田氏が任命されることが決まったが、黒田総裁下での10年間の金融政策の振返りと、今後の金融政策への期待について伺いたい。
(答)
 1点目の、昨年7月に全銀協会長に就任してからの取組みについての総括だが、全銀協会長に就任して以降、「サステナブルな環境・社会構築に向けて、新たな価値創造・成長への挑戦を支えていく」ことを今年度の基本方針として活動してきた。
 改めて今年度を振り返ると、歴史に刻まれるような出来事が相次ぐ、激動の年だったと受け止めている。昨年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵攻等に起因する供給制約や、エネルギー・食料等の価格の高騰、労働需給の逼迫などを背景に、世界的にインフレ圧力が高まった。こうした背景から、各国で大幅な金融引締めが実施され、それを受けた日米金利差拡大を背景として、歴史的な円安を記録するに至っている。さらに足元では、金融システムの安定を脅かす動きも発生している。
 他方、「ウィズコロナ」を前提に経済活動が正常化の方向へ向かっており、今週からは、マスクの着用が緩和されるなど、「ポストコロナ」を見据えた明るい動きも実感できるようになっている。
 こうした環境下、冒頭申しあげた今年度の基本方針のもと、「三つの柱」を掲げて取り組んできた。
 第一の柱である「金融起点の多様なサービス提供を通じたお客さまや社会への貢献」については、ポストコロナを見据えた資金支援をはじめとして、さまざまな社会課題に向き合い、意見発信、施策展開を行ってきた。
 まず、カーボンニュートラルの実現に向けたサポートとして、お客さまの脱炭素に向け、特設サイトの新設やお客さまと銀行員の対話ツールをリリースするなど、お客さまとのエンゲージメント向上策を展開した。
 また、銀行界として「スタートアップに関する申し合わせ」を行い、事業価値や将来性をベースとした経営者保証の判断、人材面での事業サポートなど、スタートアップに対する支援強化を推進した。
 さらに、「貯蓄から投資へ」の加速に向けたNISA制度の拡充をはじめとする税制改正要望や金融リテラシー向上への対応等の検討を官民一体となって進めてきた。このほか、政策金融に係る検討、人的資本への意見発信を行った。
 第二の柱である「デジタル化を踏まえた安定的かつ利便性の高い金融インフラの実現」では、昨年11月に電子交換所を開設し、手形・小切手の電子化の加速に道筋を付け、また、来月より開始予定である税・公金の支払いにおけるQRコード導入準備など、デジタル完結・データ駆動社会への転換を進めてきた。このほか、キャッシュレス社会の進展に向けて、全銀システムの参加資格を資金移動業者に拡大するなど、お客さまの利便性向上に資する金融インフラの構築に努めてきた。
 第三の柱である「健全性・信頼性を確保した強靭な金融システムの維持・向上」については、マネー・ローンダリング対策の高度化に向け、本年1月に共同機関を設立した。この機関では、会員行にAIを活用したモニタリングサービスを提供する予定であり、各行のマネー・ローンダリング対策業務の高度化が実現する。そのほか、TIBORの頑健性を高めるため、ユーロ円TIBOR廃止やフォールバック条項の導入に向けた検討、国際規制に関する意見発信を行ってきた。
 以上の「三つの柱」にもとづく各施策については、一定の結論を出したものや成果として花開いたものもあるが、多くの施策は、今後も継続的に取り組むなかで、さらに大きく発展していく可能性があると認識している。
 このようななか、来月からみずほ銀行の加藤頭取にバトンを引き継ぐことになるが、銀行界が抱える重要課題は多岐にわたり、また、お客さまからいただいている期待も多様である。私自身は3月末をもって会長職を退くことになるが、引き続き、銀行界の一員として、業界が抱える課題を解決し、お客さまからの期待に応えていくため、個別銀行の立場から、加藤新会長をしっかりとサポートしていきたい。
 2点目の黒田総裁下10年の金融政策の振返りと、今後の金融政策への期待についてだが、金融政策については、全銀協の会長としてコメントすることは適切ではないため、個人の見解として答えたい。
 黒田総裁は4月8日に任期を迎える予定だが、およそ10年の在任期間中、2%の物価安定目標をできるだけ早期に達成することを目指し、量的・質的金融緩和に始まり、マイナス金利政策など数多くの政策を導入してきた。その結果、デフレ的な状況から脱却したという意味で、これまでの金融緩和は一定の効果があったと考えている。
 一方、異次元緩和が継続されるなかで、イールドカーブが大きく歪むなど、市場では一部機能の低下が見られている。また、金融機関にとっても、預貸金利鞘の縮小、運用環境の悪化など、収益に相応のマイナスインパクトがあったことも事実である。
 日本銀行総裁・副総裁の後任人事については、植田氏を総裁、内田氏と氷見野氏を副総裁とする人事案が3月10日に参議院の本会議で可決され、正式に決定したと認識している。
 今後は新たな布陣のもとで金融政策の舵取りが行われることになるが、持続的かつ安定的な物価上昇を展望できる局面が訪れ、大規模金融緩和策を調整していく過程では、金融・資本市場のボラティリティが高まることも想定される。そうしたリスクをできる限り低減させるためにも、政策の予見性を高めるフォワードガイダンスを含めた市場との十分な対話が重要だと考えている。
 日本銀行が責務として掲げる金融システムの安定性維持のためにも、金融市場が健全に機能するよう、日本銀行が適切に決定・判断することを期待している。


(問)
 アメリカではシリコンバレーバンクが破綻したが、金融システムや邦銀への影響についての見解と、流動性など何か問題が顕在化しているようなことがあれば教えてほしい。
(答)
 米国においてシリコンバレーバンクが経営破綻したが、主な原因は、同社の預金が粘着性の低いITベンチャー企業からのものが中心であったなか、長期の債券投資を中心に運用していたことで、評価損・売却損の拡大と預金引出しの同時発生に耐えきれなくなったことと理解している。また、同日に破綻したシグネチャーバンクについては、先行して清算を発表していたシルバーゲートバンク同様、暗号資産関連企業との取引で知られており、足元の暗号資産業界を取り巻く混乱の影響があったものと認識している。いずれの銀行も調達基盤が特定の業界や分野に集中していたことが共通しており、本件は金利上昇による保有債券の含み損の拡大に加え、個社固有の問題が伴って生じた事案と受け止めている。
 金融システムへの影響に関しては、すでに報道されているとおり、FRB、FDIC、米財務省が共同声明を発表し、シリコンバレーバンクの預金全額保護の措置が取られている。このことでベンチャー系企業の資金決済が完全に滞る事態はいったん回避され、資金繰りの連鎖破綻、システミックリスクの顕在化のおそれは低下したものと思われる。そのため、現時点においては、グローバルな金融システム不安に陥るリスクは小さいと見ている。
 本件における邦銀への影響についてだが、外債保有リスクは、大手行を中心にヘッジ等により一定程度コントロールができている。また、地域金融機関においても、すでに相応の外債の売却を進めており、昨年12月のYCC変更後の日本国債の価格下落を踏まえても、総じて資本ポジションを健全な水準に維持している。このようなことも踏まえ、鈴木財務大臣は14日の記者会見で、「日本の金融機関は充実した流動性を維持しており、金融システムは総体として安定していると評価している。現時点では今回の破綻が日本の金融システムの安定に重大な影響を及ぼす可能性は低いと考えている」と発言されたものと理解している。
 今回の経営破綻は、個社固有の問題に起因する部分が大きいが、リスク管理が高度化した今日においても、預金流出や経営破綻が数日で起こり得るということが示された。銀行界としては、急速に変化する外部環境に適切に対応しながら、お客さまの資金繰り支援や経営基盤強化といった、まさに銀行に期待される役割をしっかり果たして参りたいと思う。


(問)
 昨日の夕方からは、欧州を中心にクレディ・スイスの経営不安の方がむしろ広がっており、アジア時間に入ってもこれがグローバルに影響している。クレディ・スイスに端を発した経営不安の影響により、例えば、BNPパリバが今朝、ノベーションを拒否する等、カウンターパーティーリスクも懸念される状況だが、直接的もしくは間接的も含めて、邦銀への影響はどのようなところにあるか伺いたい。
(答)
 昨日、クレディ・スイス・グループの株価が急落し、過去最安値を更新しているとの報道がなされていることは承知している。本件は、同社の業績不振が続くなか、同社が過去の財務報告の内部管理に「重大な弱点」があったと発表したことが1つの要因であると報道を通じて理解している。さらに、同社の筆頭株主が追加出資することはないとコメントしたことや、足元で注目されている米国のシリコンバレーバンク関連の事案とタイミングが重なったこともあり、市場が大きく反応したものと受け止めている。
 これを受け、スイスの連邦金融市場監督機構とスイス中央銀行は、「クレディ・スイスは金融システム上、重要な銀行に課される資本・流動性の要件を満たしている」との共同声明を出し、また、「必要であれば、スイス中央銀行は、クレディ・スイスに流動性を提供する」と表明している。同社はこれを使って最大500億スイスフラン、約7兆円を調達する用意がある、と発表したと承知している。
 この共同声明のとおり、リーマンショック以降、グローバルな金融機関を中心に、資本や流動性などのリスク管理の強化を進めてきており、足元の欧州金融機関の資本水準は、総じて相応の頑健性を有している。これは本邦金融機関も同様であり、現時点では、わが国の金融市場、金融システムに影響が生じるといった兆候は見られていない。ただし、インフレや金利動向、地政学的なリスク要因など、金融市場を取り巻く環境が大きく変化している。したがって、与信費用や業績全体への影響など、個社の状況を含め、世界の経済情勢や市場動向など、日本を取り巻くさまざまな環境を引き続き注視していくことが必要と考えている。


(問)
 1点目は、世界的なインフレの高止まりで、利上げを迫られているなか、今回のシリコンバレーバンクの破綻などで金利を上げにくくなったことも指摘されている。特に米国の金利動向の先行きをどのように見ているか、併せて為替相場についてもどのような影響があるか、現時点の見通しを伺いたい。
 2点目は、日本銀行が先月、民間金融機関とともにCBDCのパイロット実験を行うと発表している。銀行の勘定系システムとの接続など、実験は具体的な技術の検証に入るが、銀行界としてどのように協力して発展させていく考えか伺いたい。
(答)
 1点目の米国の金利や為替の見通しについて、全銀協会長の立場で答えるのは相応しくないため、あくまで個人的な見解として述べさせていただく。
 まず米金利について申しあげる。FRBはインフレ率の高止まりや堅調な労働市場を受けて、物価の押下げを目的として、これまで利上げを続けていたが、米国のシリコンバレーバンク破綻を契機に金利が低下し、例えば米国の10年金利は、3月2日につけた今年ピークの4.0%台から、足元では3.4%台で推移している。今後の市場金利の見通しについては、引き続き、主要各国の中央銀行高官の発言や政策動向、経済指標などに応じて、振れ幅の広い動きが想定される。政策金利については、金融システムの健全性をめぐって不確実性が残るなか、FRBは利上げに踏み切りにくくなったとの見方も出てきている。他方で、3月14日に発表された米国CPIは6.0%と、8ヶ月連続で鈍化したものの、引き続き高水準にあり、FRBは来週のFOMCにおいて、金融システムの安定と物価安定の両立に向け、非常に難しい判断を求められている状況と理解している。こうした点を踏まえると、今後の金利見通しは、現時点では不透明と言わざるを得ない。
 為替相場について申しあげると、ドル円相場は、昨年10月に1ドル151円台をつけて以降、政府・日本銀行の為替介入や米国の利上げペースの鈍化観測、日本銀行の政策の見直しなどにより、1月半ばには120円台後半まで円高が進んだ。その後は、米国の堅調な労働市場・景気の動向を受け、いったん130円台後半まで円安が進行したが、足元では、米銀の破綻を契機とした米金利低下を受け、130円台前半まで戻している。米国金融政策について、利上げの累積的な効果などにより、インフレ率が低下に向かい、少し長い目で見れば、緩和方向に転じるとの大きな見立ては変わらないが、それを前提とすれば、日米金融政策のスタンスの違いから、ある程度、円高方向に調整されるとみるのが自然だと思う。ただし、為替相場は複数の要因による影響を受けるので、なかなか見通しを一言で申しあげるのは難しいという点はご理解いただければと思う。
 2点目のCBDC関連の質問だが、日本銀行は、2月17日に第5回CBDC連絡協議会を開催し、4月からパイロット実験を実施することを公表した。パイロット実験は、これまで中央システムの処理性能などを中心に検証してきた概念実証を発展させ、日本銀行が実験用システムを構築し、エンドツーエンドでの処理フローの確認や、外部システムとの接続に向けた課題対応策の検討などを行っていくものとされている。また、CBDCフォーラムを設置し、リテール決済に係る民間事業者の参加を募ることが示されている。参加者の選定方法はまだ明らかになっていないが、仲介機関の業務プロセスや、CBDCシステムと仲介機関の勘定系システム等との接続に向けた課題対応策についても検討するとされており、銀行界としても積極的に参画して参りたいと考えている。
 先の連絡協議会においても、全銀協からは、パイロット実験に向けた具体的な論点として、CBDCと他の決済システムとの相互運用性、ホールセール型CBDCの活用の、主に2点について言及した。
 1点目の相互運用性については、CBDCは小売店での財・サービスの購入時の支払いを含め、あらゆる決済に利用できることが重要と考えている。このためには、店舗側でも決済用端末の準備といった対応が必要なことから、決済サービスとしては、言わば後発のCBDCにおいて、ネットワーク効果が発揮される環境をどのように整えていくのか、すでに普及している現金との前提条件の違いに留意しつつ、十分な議論が必要であるという点を申しあげた。
 2点目のホールセール型CBDCは、1件当たりの決済の期間短縮やコスト低下、取引の安全性向上に資するといったメリットが挙げられ、クロスボーダー送金への活用も見込まれる。日本の決済システムの効率化・安全性向上という観点で、パイロット実験の一つのテーマとして検証することが考えられる点を申しあげた。
 CBDCを導入するか否かは、現時点では決まっていないとされているが、民間事業者も含めたパイロット実験では、具体的な実装可能性について検証を進めるとみられ、引き続き銀行界も主体的に関わり、意見発信を行って参りたい。


(問)
 日本銀行の新体制について伺いたい。植田新総裁は、現在の金融緩和を継続することや政府との共同声明に関して見直しの必要がないことなどの考えを表明している。こうしたことを受けて、今後の出口戦略をどのように見ているか伺いたい。
(答)
 日本銀行の金融政策関連について、全銀協会長としてコメントすることは適切ではないため、あくまで個人の見解としてお答えする。
 2013年に政府・日本銀行が2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現する、との共同声明を公表し、これまで日本銀行はそれにもとづいて金融政策を運営してきた。4月に日本銀行総裁に就任する植田氏は、国会での所信聴取で、この共同声明について、「直ちに見直す必要があるとは考えていない」としている。その理由として、「物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなってきており、政策連携が成果をあげてきた」と述べている。今後の金融政策については、物価や賃金の動向、海外の経済情勢、市場の動向等、日本を取り巻く経済状況をしっかり見極めたうえで検討を進められるものと受け止めている。
 一方、植田氏は、所信聴取において、イールドカーブ・コントロールやETF購入などに係る出口戦略の具体的な選択肢には言及していない。出口戦略については、日本経済が賃金上昇を伴うかたちで成長し、物価安定目標に向けて持続的・安定的に物価が上昇する局面が訪れれば、日本銀行は実行することになると思う。
 出口戦略の実行時には、金融・資本市場のボラティリティが高まることも想定される。そうしたリスクの低減、および金融システムの安定性維持のためにも、市場との十分な対話などを行いながら、引き続き、金融市場が健全に機能するよう、日本銀行が適切に決定・判断することを期待している。


(問)
 1点目は、全銀システムについて。APIゲートウェイの構築について決定したとのことだが、その効果や目的について、また、次期全銀システムの基本方針についても併せて伺いたい。
 2点目は、今週からマスクの着用が緩和された。全銀協もガイドラインを更新したが、足元の各行の動きも踏まえ、店舗運営のあり方についてどのように考えているか。また、5月からコロナの5類への移行も予定されているが、さらに検討されていることがあれば併せて教えてほしい。
(答)
 まず、APIゲートウェイについては、昨年9月の全銀ネットの理事会で、一定の条件が充足される前提で構築する方針を決定した。その後の検討により、必要な条件の充足が確認できたことから、本日の全銀ネットの理事会にて、2025年7月をサービス提供開始予定として、開発に着手することを正式に決定した。
 APIゲートウェイによる接続は、現在の中継コンピューターによる方式と異なり、標準的な仕様の接続方式である。これにより、システム面での対応負荷が軽減され、既存の加盟行の負担軽減はもとより、今後、資金移動業者の参加検討が進むことで、相互運用性の確保された決済インフラに発展することも期待できる。
 次に、現行の全銀システムの更改期限が2027年に到来することを踏まえ、次期全銀システムの開発に向け、本日の理事会において基本方針を取りまとめた。
 全銀システムが、わが国決済システムにおける重要インフラとして、今後も持続可能で、将来の変化にも対応できるよう、「安全性」「効率性」「柔軟性」を並立させることを基本コンセプトとして策定した。
 具体的には、為替取引などの主要業務を担うエリアと、主要業務に付加される機能・サービスを提供するエリアに分け、相互に連携する構造を想定している。
 また、基盤技術については、全銀システムで現在採用しているメインフレームの販売・保守終了が予定されていることを踏まえ、オープン化を図り、接続方式は、将来的にAPIゲートウェイによる接続へ一本化する方針とした。
 その他の機能も、決済の安全性・サービスレベルは維持する前提で、極力、統合・スリム化を図りつつ、利便性向上に資する新たな機能実装の準備を進めていく。
 全銀システムは、1973年の稼動以降、運用期間中にオンライン取引を停止したことはない。今後も安全性・信頼性を維持しつつ、将来にわたって持続可能なシステムとなるよう、新たな参加者を迎えつつ、進化を続けていきたい。
 2点目のマスク着用の緩和、5類への移行等の質問に関して、全銀協では、新型コロナウイルス感染症の拡大初期から、お客さまの生活維持と事業継続に必要不可欠な金融・社会インフラとして、「新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン」を策定し、会員各行は店舗での業務継続に注力してきた。また、感染が深刻化する状況においても、できる限り平時と同様の店舗運営を継続すべく、業界指針を策定し、業界一丸での不断の努力とお客さまのご理解により、これまで大きな支障なく金融機能を提供し続けることができたと考えている。
 ご質問にもあったが、政府は、本年1月に、「特段の事情がない限り、5月8日から『5類感染症』に位置づける」との方針を示し、現在、実施に向けた議論を進めている。また、マスク着用については、「個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判断に委ねることを基本」とし、「事業者が感染対策上または事業上の理由等により、利用者または従業員に着用を求めることは許容される」との考え方が政府から示され、今月13日に適用開始となった。
 政府の方針を踏まえ、全銀協では、今月6日にガイドラインを改正・公表し、13日に適用を開始した。ガイドラインでは、マスクの着用は「個人の判断に委ねる」ことを基本としたうえで、従業員については、お客さまへの配慮等を踏まえ、会員各行が必要と認める場合には、従業員にマスク着用を周知する、としている。これを踏まえ、多くの加盟行では、店頭などお客さまとの接点がある業務に携わっている従業員に対して、マスクの着用を推奨していると理解している。
 また、お客さまに対しても、銀行店舗の安心・安全の確保等の観点から、状況に応じて必要な場合にマスク着用のお願いをさせていただく、としている。
 感染症法上の位置づけ変更後の店舗運営については、マスク着用以外の感染対策を含め、社会情勢や政府方針も踏まえ、今後検討していくことになると思う。銀行界としては、引き続き、社会情勢に則した感染防止策を講じ、お客さまのご理解をいただきながら、安定的な金融サービスの提供に努めて参りたい。


(問)
 公正取引委員会が3月上旬にフィンテックを活用したサービスに関するフォローアップ調査報告書を公表している。全銀システムを資金移動業者に開放する点や、APIゲートウェイの構築など評価している点もある反面、例えば3万円を境にした振込手数料の慣習といった、課題も指摘されている。今回の公正取引委員会の報告書の受止めについて教えてほしい。
 もう一つは、ファイアーウォール規制など全銀協として要望していたことについて、市場制度ワーキング・グループでの積残しの課題もまだあると思うが、今後の展望や期待について教えてほしい。
(答)
 公正取引委員会の報告書は、2020年4月に公表された「家計簿サービス等に関する実態調査報告書」および「QRコード等を用いたキャッシュレス決済に関する実態調査報告書」における五つの提言に関するフォローアップの位置付けと認識している。
 銀行界は、3年前の実態調査報告書の提言も踏まえ、「参照系APIの接続促進」、「銀行間手数料の廃止・内国為替制度運営費の創設」、「全銀ネットにおける開示強化」、「全銀システムの資金移動業者への参加資格拡大」等に取り組んできた。そうした取組みについて、総じて一定の評価をいただいたものと受け止めている。
 そのなかで、個々のテーマに関して、フィンテックを活用した金融サービスをさらに向上させる観点から、主に「APIの活用促進」、「透明性向上に向けた取組み」、「振込手数料」、「資金移動業者の全銀システム参加」の4点について、競争政策上の考え方が示されていると理解している。
 「APIの活用促進」に関しては、取得可能な情報の拡大や整備しているAPIのラインナップの公開などについて触れられており、情報管理やセキュリティ確保を前提に、各行の戦略を踏まえ、対応の検討が進められるべきものと考えている。
 「透明性向上に向けた取組み」に関しては、API接続料に関する標準料金体系の策定や、接続料の根拠・合理性についての説明が望ましいとされており、会員行への周知を行いつつ、対応を促していくものと捉えている。
 「振込手数料」に関しては、新設の内国為替制度運営費において、振込金額による差分を設けなかったことも踏まえて、過去の慣例の踏襲ではなく、振込金額による手数料区分の要否について検討すべきとされている。これは、手数料区分を設けること自体を否定する考え方ではないと受け止めているが、各行においてシステムコストや顧客影響を踏まえつつ、事業戦略の判断を行うことが必要と理解している。
 「資金移動業者の全銀システム参加」に関しては、競争条件のイコールフッティングの確保と決済システムの安全性を前提に、今後も必要に応じて全銀システムの運用方法等の見直しを行うことが望ましいとされている。
 本日の理事会では、APIゲートウェイでの接続サービスを、2025年7月に開始するべく、開発に着手することを決定した。今回の報告書のなかで、資金移動業者の全銀システムへの参加検討が促進されることへの期待も示されており、全銀システムとしても、資金移動業者の参加を促す活動を継続していきたい。
 銀行界としては、デジタル化を踏まえた安定的かつ利便性の高い金融インフラの実現を目指しており、安定的かつ健全な金融システムが維持されることを前提に、今後もフィンテック企業との連携も含め、金融サービスの向上に貢献して参りたい。
 2点目の、ファイアーウォール規制の見直しについては、昨年12月に公表された市場制度ワーキング・グループの第二次中間整理では、明確な結論を得るには至らなかった。これは、銀行グループの証券会社における処分事例が発生した直後であり、緩和について議論することは現時点では難しいとのワーキング・グループでの声を踏まえた結果と理解している。
 しかしながら、第二次中間整理では、適切な顧客情報管理の確保や利益相反管理、優越的地位の濫用防止等の状況を確認しながら、外務員の二重登録禁止規制や、中堅・中小企業、個人顧客の情報の取扱い等、ファイアーウォール規制のあり方について引続き検討を行う方針が明記された。
 過去の銀行・証券の兼職解禁や、2022年6月のホームベースルール撤廃の際に示された考え方と同様、兼職組織を通じて、銀行・証券一体でお客さまへ付加価値の高いサービスを提供していくことの意義や、その担い手としての銀行・証券への期待を反映し、継続検討していく方針が維持されたと考えている。
 今後の議論に向けて、現在、全銀協内では、好事例の横展開等を実施し、業界全体で第二次中間整理に示された顧客情報管理を含む適切な管理態勢の確認、構築に取り組んでいる。
 そのうえで、次回以降のワーキング・グループにおいて、ファイアーウォール規制見直しの結論を出していただけるよう、銀行界の取組み状況、規制緩和による日本経済の成長、本邦資本市場の強化、お客さまにとってのメリットなどをしっかりと発信して参りたい。
 私どもとしては、ファイアーウォール規制の緩和の実現によって、「貯蓄から投資へ」の加速と成長領域への資金供給が増えることを通じ、家計の資産所得拡大と企業の持続的な成長の実現、国際競争力ある本邦市場の確立に尽力していきたいと考えている。


(問)
 1点目は、本年2月に日本証券業協会と共同で子ども・若者の貧困問題に関する会員向けセミナーを開催されたが、改めて全銀協として子どもの貧困問題にどのように取り組まれるか伺いたい。
 2点目は、3月16日にリリースした体験型投資学習アプリ「まねらん」について、開発の背景や狙いを伺いたい。
(答)
 1点目について、これまで全銀協では子どもの貧困問題対応について中期計画の一項目に定め、取組みを進めてきた。2021年12月には、日本証券業協会とMOUを締結し、日本の未来を担う子ども・若者の育成・成長をサポートするため、「子ども・若者の貧困対策」を共同領域とし、活動の強化にも努めてきた。
 2022年3月には、全銀協・日本証券業協会共同で「子ども・若者の貧困問題に関するセミナー」をオンライン形式で開催し、地域を問わず多くの方にご参加いただいた。課題解決には地域単位での取組みが重要であるため、先月は、大阪と福岡でセミナーを開催し、合計で200名を超える方に参加いただいた。当日は、各地域の自治体・NPO法人、銀行および証券会社から、課題認識や取組内容などを共有いただき、改めてこの問題に対して、金融業界が取り組む意義が明確になった。
 今年度は、会員行において、「公益社団法人日本ユネスコ協会連盟」(日本ユネスコ協会連盟)との協働も進んでいる。日本ユネスコ協会連盟では、各地域における自治体やNPO団体などの取組みを、より組織的・有機的に繋げるべく、試験的な取組みとして、「地域協働型包括教育支援事業」を6地域で開始している。全銀協としても、各地域の取組み・運営について、種々サポートをしており、2022年10月には、同協会が主催する、「ふくいユネスコフォーラム」に後援している。
 また、金融庁が2月20日に開催した「Regional Banking Summit」では、「地域」をテーマに、複数の会員行が「地域との協働」や「地域課題の解決」について講演を実施したほか、日本ユネスコ協会連盟等が、子どもの貧困問題に関する金融業界の役割などについて講演を行っている。
 個別行の話になるが、三菱UFJフィナンシャル・グループも、日本ユネスコ協会連盟への人材派遣や寄附金の支援を行うなど、子どもの貧困問題解決に貢献すべく活動を強化しているところである。
 このように、銀行界にとって、子どもの貧困問題への取組みは、まさに各地域の課題解決につながる重要なテーマであり、今後も課題解決に貢献して参りたい。
 2点目の、本日リリースした体験型投資学習アプリについて、これまで全銀協による金融経済教育は、インプットを中心に展開してきたが、金融リテラシーを向上・定着し、実際の投資促進へつなげていくためには、知識のインプットだけではなく、アウトプットを通じた実践的な教育の重要性が高まっていると認識している。また、資産形成の裾野を広げていくためには、これから資産形成を始める、若年社会人をメインターゲットとした教材コンテンツを拡充することが課題であった。
 そのような背景から、今般、記者会見の冒頭でご紹介した体験型投資学習アプリ「まねらん」を、グリーンモンスター社と開発し、本日リリースに至った。
 本アプリは、実際の株価情報にもとづくチャートを用いた値動きの確認とデモ取引、過去からの株価の推移を短期間で体験して取引ができるモード、さらには自身の保有する株式資産の確認などができる機能を備えている。
 仮想の資金を用いることで、投資の未経験者の方が投資を行う際の心理的障壁となっている、現実の損失が発生しないため、特に未経験者の方が、投資に向けた一歩を踏み出すきっかけとして使っていただくことを期待している。
 また、全銀協の既存教材と本アプリを関連づけることで、投資一辺倒に偏らないライフプランを考えていただけるよう、さまざまな金融知識の向上に資する内容としている。教材の学習によりアプリの機能や仮想資金の元手が増える仕様とすることで、継続的な利用や知識の習得を促進する仕掛けとなっているので、ぜひ皆さまも一度試していただければと思う。
 今後は、本コンテンツの周知や機能の追加・改善を行いながら、教育現場や職域での活用を通じて、銀行界として金融リテラシーの向上に貢献して参りたい。


(問)
 G7の関連で伺う。今年は日本が議長国を務めている。4月にはワシントンでG20など国際会議もあり、5月には新潟でG7の会合もある。金融分野では、アジアにおけるトランジションファイナンスの議論の活性化も期待されるところだが、議長国としてどのようなリーダーシップを期待するか。
(答)
 日本が今年のG7議長国を務めるに当たり、先日、G7財務トラックのプライオリティが財務省より公表された。喫緊の課題であるウクライナ支援・対ロシア経済制裁の取組み、そして世界経済の強靱化に向けた取組みなど、重要な論点が多く盛り込まれたと理解している。
 特に気候変動・サステナビリティに関するテーマは、日本政府としても「GX実現に向けた基本方針」において、10年で150兆円という大規模な資金動員計画を打ち出しており、重要なテーマと認識している。これまでの脱炭素に向けた取組みを、表明の段階から具体的な実行段階に移していくことが必要である。日本はG7唯一のアジアからの参加国であり、アジアが経済成長と両立した脱炭素化を進めていけるよう、G7での議論を主導いただきたい。そして、脱炭素に向けたトランジションが世界で加速するよう、前向きなメッセージが出ることを期待している。
 サステナビリティ開示については、ISSBにおいて、開示基準の詳細公表に向け、議論中と理解している。グローバルに一貫性のある開示基準が導入されることは、開示する企業にとっても、また、開示を利用するステークホルダーにとっても重要である。G7においてもこの観点を踏まえ、議論が進展することを期待している。
 また、金融デジタル化推進には、金融システムの安定性、強靱性が不可欠となる。金融安定理事会等で議論されているサイバー事象報告の改善に向けた検討等を踏まえ、経済安全保障が確保されたデジタル化に向けて議論を深めていただきたい。
 経済安全保障については、各国が施策を推進する一方、こうした国ごとの活動がグローバルな経済活動に対し過度な阻害とならないよう、実効性と強靱性のバランスの取れたかたちで国際秩序が維持・強化されることを期待している。
 さまざまな地球規模での課題解決に向けて、国際協調は欠かせない。日本で開催される今回のG7で、国際協調に向けた議論を日本がリードしていくことを期待している。


(問)
 2022年の年間目標に対する手形・小切手削減の目標達成の見込みと、2026年までの全面電子化に向けた課題認識や銀行界としての今後の取組みについて伺いたい。
(答)
 手形・小切手の電子化は、2021年度の政府成長戦略も踏まえ、銀行界・産業界の双方で業界団体ごとに自主行動計画を策定し、対応を進めているところである。2021年は、手形・小切手の年間削減目標536万枚に対し、達成率95%であったが、2022年は削減ペースが鈍化し、達成率は67%程度の見込みである。削減の内訳を見ると、手形は削減ペースを維持し、主な代替手段であるでんさいの発生記録請求件数も順調に増加している一方、小切手は手形ほど削減が進んでいない点が課題と認識している。企業のDX推進の観点からも、手形・小切手一体での削減に向けた機運を、今後一層高めていく必要がある。
 このような課題認識や足元の作業状況などを踏まえ、今後検討すべき対応事項について、関係者間で共有・議論するため、2022年11月末に手形・小切手機能の「全面的な電子化」に関する検討会を開催した。また、今月下旬にも2022年の総括を行うため、再度検討会を開催することを予定している。
 銀行界としては、手形・小切手の利用実態について分析を進めており、電子的な決済サービスへの移行の障壁有無や、代替サービスの十分性につき引き続き検証を行い、必要な対応を検討する方針である。
 サービスの改善については、1月に、でんさいネットにおいて、支払期日の3営業日前まで発生記録できるようにしたほか、1円から利用できる機能改善を実施したところである。さらに、インターネットバンキングを契約していなくても、スマートフォンやタブレットなどで、でんさいを利用できるチャネルを2024年中にリリースする予定である。
 今後も、2026年度末を期限とする手形・小切手機能の全面的な電子化実現に向けて、銀行界として主体的に取組みを進めつつ、利用者である産業界や関係省庁との連携をさらに強化して取り組んでいく考えである。


(問)
 2点伺いたい。1点目は、東京証券取引所での議論もあり、PBR1倍割れ企業の対策が注目されている。銀行界も低PBR企業の多い業種だが、こうした議論の受止めを教えてほしい。
 2点目は、本年6月末に米ドルLIBORの公表停止が予定されている。また、TIBORに関しては全銀協TIBOR運営機関からフォールバック条項に関する市中協議結果も公表されたが、金利指標改革の進捗について総括をお願いしたい。
(答)
 1点目のPBR1倍のご質問だが、東京証券取引所は、上場企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図るべく、2022年4月に3つの市場区分に再編した。その後、「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」において、PBRが継続的に1倍を下回るプライム市場およびスタンダード市場の上場企業に対し、2023年春から改善策等の開示を求める方針が検討されていると認識している。
 ご指摘のとおり、邦銀のPBRは長引く低金利環境による経営環境の厳しさ等を背景に、1倍割れの水準で推移している。欧米でも、銀行のPBRは他業種と比して低く、国際金融規制強化の影響なども踏まえた評価と受け止めているが、わが国の銀行界が将来の成長性を市場や投資家に示せていないことも、低水準の一因となっていると思われる。
 そのような状況も踏まえ、各行が株価を含む企業価値の向上に向けて、持続可能かつ成長性のあるビジネスの確立に取り組んでいる。特に、2021年11月には改正銀行法が施行され、従来の金融のみならず、非金融を含めた多様なサービスを提供することが可能となった。これを受け、お客さまの本業を支援する事業、観光・町おこしなど地域経済の活性化に取り組む事業、投資専門子会社を通じた事業再生や事業承継等を支援する事業など、各行が多様な取組みを行っていると理解している。
 このように、各行が創意工夫しながら収益力を強化することで、持続的な成長を実現し、PBRをはじめとした経営指標の改善に向け、不断の経営努力を行うことが肝要と考えている。
 2点目のLIBORとTIBORについてだが、まず米ドルLIBORについて申しあげると、米ドルLIBORはグローバルに幅広く利用されており、国内主要行を中心にLIBOR公表停止が及ぼす移行実務の負荷は相応に大きい。米ドルLIBORの公表停止まで4ヶ月を切ったなか、本邦銀行界としても、移行対応について期限を意識して丁寧に進めていく必要があると認識している。
 銀行界では、お客さまと移行に関するご相談を進めており、すでに移行のための契約変更手続を完了したお客さまも出てきている。一方で、引き続き移行方針に関するご相談や契約変更手続などを継続中のお客さまがいることも事実である。
 これまで、全銀協では、お客さまのご理解を深めていただくための説明資料を作成・公表したほか、当局動向等をホームページに掲載するなど、会員行とお客さまのコミュニケーションをサポートする施策を実施してきた。引き続き、会員行に対し、しっかりと移行に取り組むよう周知して参る。
 次にTIBORについて申しあげる。全銀協TIBORは現在もすでにIOSCO原則を遵守した指標であるが、より一層の透明性・頑健性・信頼性の向上を図る観点で、「原則7」の「データの十分性」、および、「原則13」の「移行」、の改善に向けた対応を2024年度中に完了するべく、「全銀協TIBOR改革Next」に取り組んでいる。
 運営機関は「原則13」の「移行」について、全銀協TIBORのフォールバックに関する論点を整理すべく、市中協議を実施し、昨日、結果を公表した。今後、ウェブサイトや各種セミナー等を活用し、市中協議結果の周知活動を行っていく。また、「原則7」の「データの十分性」に関する課題に対応するべく、ユーロ円TIBORの2024年12月末廃止を目指し、来年度以降に市中協議を実施する予定である。
 このように、いずれの対応もお客さまと金融機関双方への負荷が予想されるが、銀行界には過去の金利指標改革で培った経験が蓄積されており、そのノウハウを活用しながら、お客さまに混乱を来たさないよう円滑な対応に努めて参る。


(問)
 本日は最後の会見であり、会長から一言お願いしたい。
(答)
 まず、この9ヶ月間、全銀協の会長を務めるにあたり、こちらにお集まりの皆さまをはじめ、各方面の皆さまから多大なるご支援を頂戴した。改めて御礼を申しあげる。
 冒頭の質問でも触れたが、改めて振り返ると、不確実性と一言で申しあげるには不十分なほど、さまざまな変化が生じ、また、その振れ幅も大きく、スピードも速い9ヶ月間だったというのが実感である。足元、米国のシリコンバレーバンクが破綻するなど、引き続き潜在リスクがいつどのようなかたちで顕在化するのか見通すことが難しい状況である。
 一方、先日よりマスク着用の緩和も実施されるなど、明るい兆しも見え始めており、ポストコロナを見据え、社会・経済活動が今後一層、正常化に向かっていくことを期待している。
 銀行界の取組みを申しあげれば、この4月には税・公金の支払いにおいてQRコードが導入され、来年1月には新たなNISA制度が開始されるなど、さまざまな面で新たなステージを迎えると理解している。
 こうしたなか、来月から、みずほ銀行の加藤頭取が全銀協会長に就任される。加藤頭取は、現在、わが国のリーディングバンクの一つであるみずほ銀行を率いられ、大変見事なリーダーシップを発揮されている方である。また、全銀協においても、副会長として、所管する業務委員会でマネー・ローンダリング対策や資産所得倍増プランへの対応などに尽力され、その手腕・実績は申し分ない方である。また、同世代のバンカーとして非常に信頼のおける方であり、今後、持ち前のリーダーシップを発揮され、必ずや銀行界を、そして日本経済を力強く牽引いただけるものと期待している。
 加藤新会長に対しても、私が皆さまからいただいたご協力・ご支援を心からお願いし、私からの御礼のご挨拶とさせていただく。
 皆さま、この9ヶ月間、本当にお世話になりました。どうもありがとうございました。