2023年10月19日

加藤会長記者会見(みずほ銀行頭取)

辻専務理事報告

(なし)

 

会長記者会見の模様


 10月の定例会見を始めさせていただく。
 ご質問に入る前に、私から今回起きた全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)が運営する全国銀行データ通信システム(全銀システム)の障害について一言申しあげる。
 まず、今回の全銀システムの障害により、お客さまをはじめ関係者の皆さまに多大なるご迷惑とご心配をおかけした。昨日の全銀ネットの会見でも理事長からお詫びを申しあげたが、銀行界の代表として、改めてお客さま、関係者の皆さまにお詫び申しあげる。
 全銀ネットでは、復旧までの対応が長期化したことも含めて、今回の障害の原因究明・真因分析と再発防止策の検討に鋭意取り組んでいる。全銀協としても、今回の事象の重大さを踏まえ、全銀ネットと一体となって、お客さまや社会の皆さまからの信頼回復に全力で取り組んでいく。
 昨日、全銀ネットの加盟金融機関は、障害によりお客さまに生じた損失の補償にかかる申し合わせを行った。各金融機関において、この申し合わせの内容にもとづいて対応していく。


(問)
 今お話にあったが、改めて今回の全銀ネットの不具合によって多くの国民が非常に被害を受けていると思うが、そのことに関する受止めをお願いしたい。
 また、今回の障害、直接な原因は全銀ネットだが、一方で障害発生からの初動対応を含めて各金融機関の対応はどうだったのか、こういった事態に備えての対応ができていたのかどうかといったところの考えもお願いしたい。
(答)
 全銀ネットが運営する全銀システムの障害により、皆さまに大変なご迷惑、ご心配をおかけした。決済サービスを提供する銀行界を代表して、深くお詫び申しあげる。企業、個人、幅広いお客さまに、また五・十日を含む2日間ということもあり、多大なご迷惑をかけてしまい、痛恨の思いである。本当に申し訳ない。わが国銀行界の代表として、また全銀ネットの理事の1人として、今回の事象を非常に重く受け止めている。
 今回の事象は、銀行振込を取り扱うすべての預金取扱金融機関およびそのお客さまに影響が及んだ。したがって信金、信組、労金なども参加する全銀ネットで検証していくことになるが、全銀協も一体となって再発防止と信頼回復に取り組んで参る。
 改めて今回の事象の概要を簡単に申しあげる。10月10日、11日の2日間、一部の金融機関との通信に不具合が生じた。その結果、仕向・被仕向、合わせて約500万件の振込処理が遅延し、うち約87万件の取引の処理が当日中に完了しなかった。復旧については、12日から暫定復旧しており、現在完全復旧に向けて検討を進めている。真因分析も含めて時間を要している点、ご心配をおかけしている。
 システムベンダーからは、一部のプログラムに不具合があったとの速報を受けているが、拙速に結論を出すのではなく、なぜ不具合が発生したのか、なぜそれに気付くことができなかったのか、といった深度ある検証を徹底的に行う必要があると考えている。お客さまに安心して決済サービスをご利用いただけるよう、銀行界も全面的にこの検証に参加する。
 私個人としては、原因・真因の検証の着眼点として、東阪両系のRC(中継コンピュータ)の同時更改、事前テスト、実施時期など、システム更改に関わる設計からリリースまでの各プロセスの適切性があると思っている。
 加えて、BCP・SCPの有効性、具体的には、ベンダー・預金取扱金融機関との連携、代替手段、お客さま向けの告知など、障害発生後の対応の適切性もしっかり振り返る必要があると思っている。
 さらに、その背景として、50年間トラブルがなかったことで過信があったのではないか、全銀ネットのガバナンスはしっかり機能していたか、過信から作業中の態勢やBCP、各種訓練が形骸化していなかったか、こういったことにもしっかりと踏み込んで確認していく必要があると考えている。
 また、その体制としては、全銀ネットの理事会の直下にタスクフォースを設置する。専門家の目線も取り込みながら、検証や再発防止策の検討を進めていきたいと思っている。
 次に、復旧までの銀行側の対応について。今回のRCの更改に向けては、対象行も参加した各種試験や移行リハーサルが行われている。また、今回のRC更改とは別に、金融機関と全銀システムの通信が不能になった場合の有事のバックアップ、BCPも用意している。具体的には、振込データを媒体などで受け渡しする方法で、毎年全行参加で訓練を行っている。
 しかしながら、今回、結果として当日中に処理が完了しない取引が多数出てしまったことからも、こうした試験やリハーサル、BCPや訓練が有効に機能したとは言えないと私は考えている。BCPの部分では金融機関側にも改善の余地がなかったか。これは当然にして検証していく必要がある。
 障害が起きないように最善を尽くすことは大前提だが、システムに絶対大丈夫というものはない。障害が起きてしまった場合に、影響をなるべく小さく、短期間で復旧する対策も大変重要である。今回うまくいかなかった部分がどこで、その理由は何なのか、全銀ネット、加盟金融機関双方の対応について、しっかりと検証していきたいと思っている。


(問)
 マーケット環境について伺いたい。足元の長期金利が0.8%を超える水準まで上昇してきているが、こうした背景も含めて現在のマーケット環境をどう見ているか。あと銀行においては、債券運用の方針などでも変更の可能性があるかどうかといった点についてもお願いしたい。
(答)
 まず為替であるが、足元のドル円相場は1ドル150円に近い水準で推移するなど、円安が進展している。
 プラス面では、製造業などの輸出企業の採算性の改善や、インバウンド需要の喚起が挙げられる。一方、マイナス面では、物価上昇を通じた家計負担の増加が懸念される。特に、家計の負担が増加することで節約志向が高まり、個人消費が下押しされる可能性には、十分注意が必要であると考えている。
 続いて金利について。日本銀行がイールドカーブ・コントロールにおける長期金利の上限を、厳格な0.5%から柔軟化したことで、足元の長期金利は0.8%程度まで上昇している。現状、金利上昇による日本経済への影響は大きくないと考えているが、仮に長期金利がこれ以上大きく上昇すれば、借入の利払い費増加や、円高に伴う輸出採算の悪化を通じて、経済活動に下押し圧力が生じる可能性がある。引き続き金融政策動向を含め注視していきたい。
 債券運用の運営方針は個別行の戦略になるので、運用環境について申しあげる。日本においては、当面金融緩和は継続されると見ており、運用利回りと調達コストが逆ざやとなる可能性は低いと考えている。長期金利の上昇による保有債券の評価損には注意が必要だが、運用利回りの改善を通じ、銀行収益にはプラスに寄与すると理解している。各行のリスク許容度を踏まえ、適切に運営されるべきと考えている。


(問)
 1点、全銀システムの関係だが、システム障害をめぐって、今、全銀協として補償に関して各金融機関にどのような対応を取っているのか。先ほど申し合わせとおっしゃっていたが、対応状況について教えていただきたい。
(答)
 ご心配をお掛けしており、申し訳ない。
 原因・真因の検証はまだ継続中であるが、まずは何よりお客さま対応を最優先に取り組む必要がある。10月18日、全銀ネットの加盟金融機関間で、今般のシステム障害により生じた損失の補償に誠心誠意対応することの申し合わせを行った。具体的には、取引先の金融機関で振込ができずに、他の金融機関で振込したことによる手数料の差額や、着金が遅れたことで借入金の返済ができずに、発生してしまった延滞金や遅延損害金、着金が遅れたために一時的に借入れをして支払いをした場合の金利負担など、今般のシステム障害が原因で発生した費用が補償の対象となる。
 一般的には、このような対応は個々のお客さまによって事情が異なるので、各金融機関がそれぞれ判断して取り組むものだが、今回は広範な金融機関のお客さまに影響が及ぶ事象ということで、業界を挙げて迅速に対応すべく、申し合わせを行った次第である。
 なお、みずほ銀行をはじめ一部の金融機関では、障害発生直後から手数料の減免や仮払いによる立替えなどの対応をしている。
 最終的な負担者が誰になるかは法的な責任の所在などにもよるため、現時点では決まっていない。また、10月18日の全銀ネットの会見では、金融機関毎に対応にばらつきが出るのではないかといったご質問・ご指摘もあった。各金融機関において円滑なお客さま対応をするためにも、引き続き金融機関間で検討を進めていく。
 なお、全銀協では、こうした対応を会員銀行や一般に周知しているほか、例えば今回の障害による入金遅延が原因で手形・小切手の不渡りが発生しないよう、不渡り猶予の特例措置を行うなどしている。


(問)
 全銀システムの障害について、事前のテスト環境を本番に近い環境でできていたのか、今後検証されるところだと思うが、テストに参加していた銀行側の責任について現時点でどのように捉えているか教えてほしい。
(答)
 今回のRCの更改に向けては、先ほど一部申しあげたとおり、システムベンダー単独のテスト、全銀ネットが参加するテスト、さらに対象行も参加するテストと、複数のテストを重ねて本番を迎えた。これは過去の全銀システム関連の案件と比較した際に、決して不十分な水準というわけではない。
 しかしながら、結果としてこれだけ大きな障害、お客さま影響が発生したことは大変重く受け止めなければならない事実だと思っている。今回のテストの内容や、システムベンダー・全銀ネット・対象行の連携が適切だったかどうか、しっかりと検証していく必要があると考えている。


(問)
 2点伺う。1点目、今回の全銀システムの障害の対応について、過去にみずほ銀行でも大規模なシステム障害があったが、会長としてその経験を今後の対応でどのように活かしていくのか教えてほしい。
 2点目、岸田政権が資産運用立国のもと、国内の資産運用会社の強化を打ち出している。販売会社である銀行界として、現状の国内の資産運用会社の課題や政権が進める海外業者を呼び込む効果をどのように捉えているか。
(答)
 1点目、本日は全銀協会長としての会見ではあるが、全銀システムにも関連するご質問ということで、みずほ銀行としての対応を簡潔にお話しさせていただく。
 決して誇れることではないが、みずほ銀行は過去に大規模なシステム障害を経験しており、今回の全銀システムの障害に際しても、その経験にもとづいた支援を行っていた。
 例えば、障害初日の夜間のプログラム改修がうまくいかなかったことを踏まえて、2日目から、みずほのシステム人材をサポートとして派遣し、3日目の朝の復旧に貢献している。
 また、補償の申し合わせについては、みずほ銀行の過去のシステム障害時にどのような補償対応を行ったか、参考情報として提供している。
 今後の原因・真因分析、再発防止策の策定についても、会長行という立場のみならず、みずほ個別行としての経験、ノウハウを惜しまずに提供し、業界全体としてのお客さまからの信頼回復に努めていきたいと思っている。
 2点目、国内大手資産運用会社の課題や海外投資家を呼び込むことのメリットである。個人的見解としてお話しさせていただく。
 まず、国内大手資産運用会社については、運用資産規模が大きな課題と思っており、米国最大手の資産運用会社の運用資産規模が約10兆ドルであるのに対して、国内では最大手でも10分の1程度と言われている。
 その要因の一つとしては、海外プロダクトの運用力があると思う。国内運用会社は、海外運用については外部委託をしているケースも多いと認識しており、海外プロダクトの運用力強化は運用の専門人材の育成や確保などに時間はかかるのかもしれないが、国内運用会社にとってはまだまだ成長や発展の余地がある領域だと思う。
 また、国内大手資産運用会社は大手金融グループの系列会社が中心であり、販売会社の意向や利益を優先した商品組成が行われているという指摘もしばしばなされている。グループ系列会社との利益相反管理の徹底や、経営の独立性確保などは当然として、資産運用会社と販売会社のそれぞれが専門性や役割を発揮し、顧客にとって魅力的な商品を供給していくことが重要だと思う。
 最後に、海外投資家を呼び込むメリットについて申しあげる。多様なリスクアペタイトを持つ海外投資家のマネーが市場に流入することで、市場の厚みが増して市場の活性化につながる。これを通じて、企業への成長資金の供給や、株価、時価総額の上昇など、さまざまな面で恩恵が期待できるのではないかと考えている。


(問)
 質問は2点。1点目は、(全銀ネットのシステム障害に係る)補償に関してである。まだ始まったばかりだと思うが、現在、補償の相談件数が加盟行でどのぐらい積み上がっているか。あるいは金額や規模感が分かれば教えてほしい。まだ全体が分からないのであれば、個別行として、みずほ銀行の数字が分かれば教えてほしい。
 2点目は、2021年の銀行法改正による規制緩和で導入された銀行業高度化等会社を活用した取組みについてである。地域商社の設立などの取組みが出ていると思うが、この2年の取組み状況に関して会長の受止めを教えてほしい。
(答)
 1点目は、補償の規模についてである。各金融機関によって今回のシステム障害の影響規模は異なる。例えば、障害発生直後から手数料の減免や仮払いによる立替えなどの対応で、お客さまの損失を防いでいる金融機関もあるので、補償の影響や規模は一概に申しあげられない。
 重要なことは、被害に遭われたお客さまに各金融機関が誠心誠意向き合うことだと考えている。一般的には個々のお客さまによって事情が異なるので、各金融機関がそれぞれ判断して取り組むものだが、今回は広範な金融機関のお客さまに影響が及ぶ事象ということで申し合わせを行った次第である。みずほの件数については手元に数字を持ち合わせていない。
 2点目は、銀行業高度化等会社の活用である。2021年の銀行法改正により、銀行業高度化等会社において地方創生や持続可能な社会の構築に資する多様な業務が可能になったと認識している。これを受けて、地域産品を取り扱う商社事業や地域の魅力を高める観光事業、再エネ電力の販売を手掛ける電力事業など、各行が多様な取組みを行っていると承知している。その中には、特定の地域において、太陽光発電事業と電力小売り事業を併せて運用することで、地産再生エネルギーを地域内で消費し、地域の脱炭素と経済活性化を同時に実現する取組みもある。今後も銀行法改正の趣旨を踏まえ、各行がグループのリソースを総動員し、お客さまや社会の課題解決に取り組み、同時に、銀行グループ自身も共に成長を図っていくことが重要である。
 一方で、先般の規制緩和を活用した取組みはまだ始まったばかりであり、各行、試行錯誤している状態である。こうした取組みを持続可能なビジネスモデルとして確立するには、さらなるノウハウの蓄積や人材の育成など、まだまだ時間を要する。今後も各行が創意工夫を凝らし、不断の取組みを図っていくことを期待している。


(問)
 先ほどもお話があった資産運用立国に絡めて1件お伺いしたい。私は英語で記事を書いていて、英語に訳すのが難しい日本語がいろいろあり、昔、景気の踊り場を「ダンスフロア」と書いて意味が分からないと言われたことがある。「運用の高度化」という言葉を英語に訳そうと思うとなかなか訳せない。おそらく私が、運用の高度化が何のことか分かっていないからである。会長からご覧になって、運用の高度化というのは、何を目指して何をすべきものとお考えか。
(答)
 私も資産運用業高度化をしっかり理解をしたいと思っており、私なりの個人的見解として申しあげる。金融庁の「資産運用業高度化プログレスレポート」を参考にすると、資産運用業とは単に資産運用会社のみを指すのではなくて、販売会社、信託銀行、生保会社なども含むものと捉えている。それらの資産運用業に加えて、投資家およびアセットオーナーがインベストメント・チェーンを構成すると解釈している。
 そのうえで、インベストメント・チェーンに関わる事業者それぞれが専門性や役割を適切に発揮し、運用力や価値提供力を高めて顧客利益の最大化を図っていく。これが資産運用業の高度化の意味だと私なりに解釈をしている。そのアプローチはさまざまあると思うが、それぞれの主体が画一的ではなく創意工夫をしながら機能強化を図っていくことが大事だと思う。
 例えば運用会社は、運用資産の多様化や運用対象地域の拡充によりリターンを向上させる。アセットオーナーは、専門性を高めて運用ガバナンスを強化する。我々販売会社は、顧客の最善の利益にかなう商品選定の強化を図る。そのように各主体が一歩踏み出すことで、全体としての資産運用業の高度化が図られるのではないか。
 そして、ご質問の英語については、私も決して得意ではないが、例えば岸田総理はニューヨークの演説では、sophisticated asset managementと表現されているので、それが適切な英語なのではないかと思う。


(問)
 2点質問する。1点目、個人向けの外貨預金に関して、一部の銀行で金利を大幅に引き上げるような動きが出ているが、銀行が個人から外貨預金を集める目的や、提案時の留意点はどのようなところだとお考えか。
 2点目、円安に関する質問に関連して、輸入企業へのマイナスの影響が大きいということだが、為替リスクのヘッジのためにどういう対策を取られて、銀行界としてはその支援をどのようにしているか。
(答)
 1点目は、個人の外貨預金を集める目的と留意点である。外貨預金を集める目的は、各行の調達構造や戦略が異なるため、個人的見解としてお答えする。
 一般的に、銀行の外貨調達に占める個人のお客さまの外貨預金の割合は、決して大きくない。外貨預金の金利の引上げの目的は、お客さまを銀行につなぎ留める、あるいはお客さまを呼び込む点が大きいと考えている。
 円貨預金の金利は足元の物価上昇率を大きく下回っている。このような状況において、外貨預金は比較的金利が高く、相場観に合う顧客の運用ニーズにマッチした商品ともいえる。
 お客さまにとっての留意点は、外貨を購入する際には売買コストが生じること、一定期間換金できないこと、為替リスク、預金保険の対象外であることなどが挙げられる。お客さまに商品性をしっかりと説明し、ご理解いただくことが重要であることは、申しあげるまでもない。
 2点目は、円安におけるお客さまの為替リスクのヘッジ、銀行界の支援についてである。
 輸入企業のお客さま、特に価格転嫁がしづらい業種、例えば中堅、小売りのお客さまにおいては、足元の日米金利差や底堅いボラティリティを利用し、為替ヘッジに注力する動きが見られる。
 為替予約を長期化することで執行レートの改善を図るお客さまや、通貨オプションを利用されるお客さまなど、さまざまである。例えば、大企業の石油の元売りなどのお客さまは、1か月から2か月先の為替先物予約でヘッジされる方が多い。一方、大企業の小売りなどのお客さまは、期間が1年から3年先の長期の為替予約をされる傾向がある。私の感覚ではあるが、中堅・中小企業のお客さまは、商流が不確実ということもあり、全体の為替リスクの3割から5割程度のヘッジに抑えている方が多いのではないかと思う。また、円安水準の長期化を受け、想定為替レートを見直す動きも見られる。
 輸出企業のお客さまは、大企業を中心に円安メリットを享受している。淡々と為替先物予約によるヘッジをするお客さまが多いと感じる。一方で、日米金利差により、為替先物予約のコストが大きくなっている。通貨オプションを利用し、コストを抑えたうえで、一定の円安メリットを享受されるお客さまも一部に見られる。
 各行は、お客さまの商流構造や事業計画などをヒアリングし、潜在する為替リスクやニーズを丁寧に確認している。そのうえで、その時々のマーケット環境に応じて、お客さまのニーズとリスク許容度に沿うプロダクトやヘッジ手法などを提案させて頂いている。


(問)
 先ほど会長が、踏み込んで確認すると言っていたことの一つに、ガバナンスについても挙げられていたが、具体的にどんな点を確認する必要があるのか、検証する必要があると考えているのか伺いたい。全銀ネットは一般社団法人なので全銀協が株主ではないのかもしれないが、責任の所在が全銀ネットだけにあるのかという点についても伺いたい。全銀ネットの意思決定機関である理事会は、全銀協のトップや関係者が占めていて、あまりシステムに精通した方もいないのではないかと思うが、物を決めるあり方についても何か検証の対象になり得るのかどうかという点についても伺いたい。
(答)
 まず、全銀ネットと全銀協の関係をご説明する。全銀ネットは2010年までは「内国為替運営機構」として、全銀協の前身である東京銀行協会がその業務を担っていた。その後、2010年4月に施行された資金決済法において、同業務が免許制・兼業禁止となったことから、2010年10月、一般社団法人全国銀行資金決済ネットワークとして独立したという経緯である。
 現在の全銀協と全銀ネットの関係は、全銀協が一般社団法人である全銀ネットの社員、株式会社でいえば全銀協が100%株主に当たり、いわゆる親会社というかたちになる。
 全銀ネットの理事長は、全銀協の副会長兼専務理事が就任している。資金決済法制定に関わる金融審議会の議論で、継続的・戦略的な意思決定を行う体制構築が求められたことを受け、前身組織のトップが1年交代であったところを、複数年継続して就任可能な人材が理事長を務めている。
 株式会社の取締役会に当たる理事会が、重要事項の意思決定に加え、理事長の業務執行を監督している。理事会は各行の社長、頭取級で構成されている。
 今回の全銀システムの障害を踏まえ、理事会のメンバーが果たして十分なガバナンスを効かせていたかどうかは、しっかりと検証する必要がある。
 加えて、傘下の会議体でどのような議事決定がなされていたのかということも確認するとともに、体制や判断能力が適切だったか、全銀ネットのガバナンスのあり方についてはしっかりと検証していく必要がある。


(問)
 もう1点、2027年に第8次の全銀システムが稼動する予定になっている。銀行界としてもそれに向けた準備も進めているところだと思うが、今回のトラブルを受けて、その要件の見直しやあるいは検証も必要になってくると思う。今後のスケジュールなどにも銀行にとって影響がないのかどうかという点についてはいかがか。
(答)
 本日の全銀ネットの理事会で、予定していた次期全銀システムの計画書制定の決議を見送った。今回発生した障害の原因・真因を検証して、再発防止策を策定したうえでスケジュールを決めていく。しっかりと対応していきたい。


(問)
 計画書はどういう位置付けのものか。
(答)
 実施事項やスケジュールなどを含むプロジェクト計画書である。


(問)
 金融と直接関係はないが、日本の業界団体のトップということで伺いたい。本日、アステラス製薬の日本人社員が中国で逮捕されたことが明らかになった。これに対する受止めと、日本企業が中国でビジネスを展開することに影響があると見ているか伺いたい。
(答)
 日本人社員が拘束されたのは4月頃と認識しているが、本日逮捕された件の詳細は認識しておらず、内容を存じあげていないので答えづらいが、関係者の方々は大変心配されているだろう。仮に、正当な理由がないかたちで拘束・逮捕されているのであれば、一刻も早く解放されるべきである。
 一般論になるが、日本の中国ビジネスにおいては、当該国の国内法にもとづくコンプライアンスに照らし合わせてビジネスを展開していくことが原理原則である。中国で行うビジネスのチャンスとリスクのバランスを踏まえて取り組むべきだと思う。
 あくまでも、これは一般的な見解と理解してほしい。


(問)
 旧ジャニーズ事務所の関連で恐縮だが、アメリカでは、性犯罪で米銀が訴えられた事案があった。米国の大富豪による性犯罪で銀行口座が使われていると知りながら取引を続けたという理由で銀行が訴えられて、和解金を支払ったという事案である。日本でも旧ジャニーズ事務所のように、性加害を引き起こした企業に対して銀行はどう向き合うべきなのか、改めて会長の見解を教えてほしい。
(答)
 旧ジャニーズ事務所との関係については、各行がそれぞれの定めている人権方針に照らして判断していくものである。広告や宣伝で契約している場合、例えば、契約の見直しや同事務所への働きかけなどが考えられるが、銀行界での統一的な対応というよりも、各行の人権方針に照らし合わせた対応を考えていくことになる。
 本件については、大きな社会的な問題として注目を集めている状況が続いている。個人的な意見として、例えば、記者会見の運営方針など、本来の論点とは異なる所に関心が集まり過ぎていることが気になる。
 本件は、非常に長期にわたって未成年に対する性加害が行われた事案である。まずは、被害者への救済や補償を進めることが、喫緊の課題である。また、再発防止も重要である。同事務所における再発防止は当然だが、関係業界においてもそのレビューが求められるのではないか。
 長年こうした被害が放置されてしまったことは、大変遺憾である。同事務所だけでなく、関係業界や日本社会全体への信用や信頼も毀損されており、絶対に許されることではない。被害者への救済や補償、再発防止が迅速に進むことを切に願っている。


(問)
 ジャニーズ問題の発言を踏まえて、今、会長としてもこうしたところに対しての対応は非常に重要だと言っていた。個別に頭取を務めているみずほ銀行も旧ジャニーズ事務所との主要取引行の一つかと思う。もちろん個別の事業者に対しての融資なので答えにくいかと思うが、これについてどのように考えるか伺いたい。前提として、先月、業界は違うが日本損害保険協会(損保協)の新納会長が、10月18日に社名が変わった同事務所について、看板が変わってもそこで評価が変わるものではないと釘を刺す発言をしていた。これに関して、今後の融資等を含め金融機関はどう考えるべきか、一つ聞かせてほしい。
 もう1点、再来週、金融政策決定会合を控えている。足元の経済状況があるかと思うが、簡潔に日本経済の状況、先ほど金融緩和は継続されるべきだと言っていたが、日本経済が強いのか弱いのか、この辺りの認識を簡潔に聞かせてほしい。
(答)
 取引については、被害者の救済や補償を含めた再発防止策を踏まえて各行で適切に判断することである。ただし、個別の事案であり、みずほ銀行で取引があるかないかも含めて、コメントは控えさせていただきたい。
 次に、日本経済についてである。インバウンド需要やコロナの収束による個人消費の復活により、日本経済は穏やかに回復している。また、半導体不足でやや苦戦をしていた製造業も回復の兆しがあり、再生可能エネルギーなどの脱炭素関連の投資もある。基本的に、景気は穏やかに回復しており、その力強さを感じている。
 一方で懸念材料は海外の状況である。欧米では、金利が高止まりする状況があり、また中国も足元回復したという話もあるが、不動産関係もあり、非常に低調な状況が続いている。これが大きく日本経済に影響する可能性は否定されるものではない。注視していく必要がある。


(問)
 個社の話になるので難しいかもしれないが、一般論に置き換えていただいても結構である。東芝のTOBが成立した。JIP(日本産業パートナーズ)と3メガが最終的に同じ方向を向いたが故に成り立ったかと思っている。ただ、今後、デットとエクイティは目指すゴールが違うと思う。コンフリクトが生じる可能性もあるかと思う。レンダー側とエクイティ側の考え方の違いについてどのように整理されているのか伺いたい。
(答)
 一般論でお答えする。LBOファイナンスにおいて、エクイティスポンサーとデットレンダーの目指す方向は、ともに対象会社の企業価値向上であるが、立場は異なるかと思う。
 エクイティスポンサーは、ハンズオンの経営支援を通して、より対象会社に近い立場で業績改善やガバナンス向上に取り組む。その後、上場や事業会社への譲渡など、最適なエグジットを目指していく。また、キャピタルゲインによる高リターンを追求するため、深いリスクを取り、より経営にコミットしている。
 一方、レンダーは、買収案件が成立するようデットで支援をする。案件の成立という意味では、エクイティスポンサーと同じ方向だが、ローンの実行後は、コベナンツ管理や事業計画の進捗確認を通して返済状況をモニタリングし、安定的な利息収入を求めていく。
 エクイティスポンサーは、エグジットを見据え、深いリスクを取り、より経営にコミットするのに対して、デットレンダーは、スポンサーがエグジットした後も、コーポレートローンとして取引継続を目指す場合もある。このように、エグジットの有無、経営へのコミットの深度、などは違いがあるが、冒頭申しあげたように、対象企業の企業価値向上という意味では、パートナーであると考えている。


(問)
 コンフリクトは生じないのか。例えば、お金を返すために資産・事業の流動化をする。銀行は金を返してもらいたい、企業価値を向上させたいエクイティサイドは、それは再投資に回したい。これはコンフリクトになると思う。
(答)
 アプローチの違いだと考える。借入を返済すれば、バランスシートが良化し、企業価値向上につながると考えられる。一方で、カーブアウト後に再投資をすることが企業価値向上につながるとも考えられる。こうしたアプローチの違いが結果として意見の相違になることはある。その際に、両者間のディスカッションや、ディールの前提条件であるモニタリングポイントをしっかり作るなど、事前にお互いの立場を理解し合うかたちをできるだけ作ることで、企業価値が毀損することがないようにするという点は、共有できるのではないか。立場によって意見対立や差異はあるが、最終的には、どういうかたちで企業価値を高めていくかを論点にしながら、それをすり合わせていくことなのではないかと思う。


(問)
 米国金利関連でお伺いする。足元、米国金利が上昇しているが、それに伴って銀行が保有する債券の含み損というリスクも改めて出てきていると思う。その辺りの会長のご見解をお伺いしたい。
(答)
 米金利の上昇に伴う債券の含み損に関するご質問である。今後の金利動向を注視する必要はあるが、日本の金融機関は総じて健全な財務を維持していると考えている。
 昨年度、米国金利が大きく上昇したことで、外国債券を中心に多くの銀行が、ポートフォリオの健全化に取り組んだ。また、4月に日本銀行が公表した「金融システムレポート」にあるように、日本の金融機関は、仮に有価証券の評価損がすべて実現損になったとしても十分な自己資本を有している。
 一方、今年度に入っても、米国では政策金利の高止まりを織り込むなかで、長期金利は上昇基調である。年度初の米10年債金利は3.5%程度だったが、足元は5%に近づいている。加えて、外国債券は運用利回りとその調達コストが、逆鞘になっており、今後の動向には注意が必要である。
 外国債券を含めたその有価証券投資は、各国の経済、金融政策動向に加え、各行のリスク許容度を踏まえたうえで運営されるべきと考えている。そのなかで、売却による債券評価損の実現などを各行が判断する必要がある。