会長記者会見
2025年2月13日
福留会長記者会見(三井住友銀行頭取)
辻専務理事報告
事務局から2点ご報告申しあげる。
1点目は、本日の理事会において、お手元の資料のとおり、次期会長を三菱UFJ銀行の半沢頭取とすることを内定した。次期会長は、今後の理事会における正式な選定手続を経て、2025年4月1日付で就任する予定である。
2点目は、本日の理事会において、お手元の資料のとおり、スタートアップ融資実務ハンドブックを作成した。ハンドブックそのものは、会員銀行限りの利用を前提としているので、本日は一部のページを抜粋して配付している。内容について不明な点があれば、会見後、事務局に問合せをいただきたい。
会長記者会見の模様
1月28日に埼玉県八潮市で流域下水道管の破損に起因する道路陥没事故が発生し、多くの方々が避難生活を余儀なくされている。また2月4日から、全国各地で発生している大雪災害では、広域にわたり甚大な被害が発生しており、中には命を落とされた方もいらっしゃる。亡くなられた方々に対して謹んでお悔やみを申しあげるとともに、被災された皆さまには心からお見舞いを申しあげる。
いずれの災害についても、災害救助法が適用されているが、被災地域が一日も早く復旧・復興を果たすとともに、被災された方々が通常の生活を一刻も早く取り戻すことができるよう、銀行界としても預金払戻しや融資に係る柔軟な対応を行うなど、しっかりと支援して参る。
(問)
1点目、金利のある世界がいよいよ到来しつつある。日本銀行は今後も物価・経済が見通しどおりなら、政策金利を引き上げる方針を堅持している。企業・家計への影響と金融界が果たすべき役割について伺う。
2点目、貸金庫に関連して伺う。三菱UFJ銀行の貸金庫事案を受けて、一部の銀行においても管理態勢の強化が図られる等、業界全体に動きが出始めている。全銀協では、取組事例集を取りまとめたと聞いているが、その経緯と狙いについて聞かせてほしい。また、これまでの事案の一連の流れに対する受止めと今後の貸金庫サービスのあり方についての見解をお願いしたい。
3点目、冒頭の説明にあったとおり、次期会長に三菱UFJ銀行の半沢頭取が内定した。足元で不祥事案を抱える企業のトップが会長に就くことについて、疑問を抱く向きもあると思うが、次期会長を半沢頭取とすることとした判断根拠と、内定に関する受止めをお願いしたい。
(答)
1点目は、企業・家計ともに、金利上昇によるお借入への影響という観点からお答えしたいと思う。まず企業への影響についてであるが、金利上昇局面ではあるものの、企業業績は好調を維持しており、設備投資への意欲は引き続き旺盛である。積極的な投資が生産性の向上をもたらし、それがさらなる業績改善につながるというマクロ的な好循環のトレンドは、当面、変わらないと考えている。
しかしながら、財務基盤が弱い企業への影響には注意が必要である。帝国データバンクの試算によれば、借入金利が0.25%上昇した場合、約1.8%の企業が経常赤字に転落するとされている。また、利上げというよりは、物価高や人手不足などを要因とする倒産件数が増加傾向にあることも踏まえると、中小企業の経営状況には、よく目を配らなければならない。こうした企業に対しては、財務体質の改善に向けたアドバイスのほか、生産性向上や収益力強化に向け、DXを活用した業務効率化や販路拡大のお手伝いなど、資金繰り支援以外の切り口からも、引き続き積極的なサポートを行っていく必要がある。
次に、家計への影響についてだが、昨年10月には、短期プライムレートの引上げに伴い、多くの銀行が変動金利型住宅ローンの基準金利を見直したことはご承知の通りであるが、大抵のローンには「5年ルール」や「125%ルール」が設定されており、5年間は返済額が変わらず、その後の増加額も急変しない形になっている。ただし、中長期的には家計に少なからぬインパクトを与えることになるので、政府が強力に旗振りする賃上げの動向が、今後の家計の安定において極めて重要なポイントになると見ている。
銀行界としては、新規および既存のお客さまに対し、金利変動が将来の返済額にどの程度影響を与えるかをシミュレーションで可視化し、具体的なイメージを持っていただくことで、家計管理や財務管理の後押しをしていきたいと考えている。
また、金利上昇に対するヘッジ手段の一つとして、資産運用を検討されるお客さまもいらっしゃると思うので、リスク管理も含めた丁寧なサポートを行い、安心してご利用いただけるよう努めて参る。
2点目の貸金庫に関しては、改めて、会員行においてお客さまの信頼を損なう事案が発生したことについて、全銀協会長として大変申し訳なく思っている。
会員行においては、昨年12月に全銀協から発信した通達も踏まえ、貸金庫の管理態勢の点検を実施し、引き続きその高度化に努めるとともに、従業員一人ひとりに対して、法令遵守はもとより、高い倫理観と良識に基づいて行動することの必要性を改めて徹底していくところである。
全銀協は、会員各行のこうした取組みを更に後押しすべく、昨日、「貸金庫の管理態勢の強化等に向けた取組事例集」を作成し、会員行に展開している。
本事例集では、「貸金庫の管理態勢」と「人事運営・教育研修」の二つの項目について記載している。「貸金庫の管理態勢」については、「副鍵の管理」、「従業員による貸金庫入退室・開閉の管理」、そして「牽制・モニタリング」の三つの観点から、それぞれの具体的な取組事例を取りまとめている。
全銀協として、会員行に対し、本事例集にもとづいた対応を一律で求めるものではないが、本事例集を参考に、管理態勢の整備を進めていくことを強く期待している。
また、貸金庫サービスは、災害対策や安全対策を目的として、貴重品や重要書類を安全に保管しておきたいというお客さまのニーズが一定あるサービスと認識している。今後の貸金庫サービスのあり方については、こうしたお客さまのニーズや各行のビジネス戦略も踏まえつつ、各会員行においてそれぞれが検討していくものだと考えている。
3点目の全銀協次期会長人事については、ご案内のとおり、半沢頭取は現在、わが国のリーディングバンクである三菱UFJ銀行を率いられ、その手腕、実績は申し分ない。全銀協においても、前回会長を務められた当時は、ロシアによるウクライナ侵攻に起因する供給制約、エネルギー・食糧等の価格の高騰、そして労働需給の逼迫等を背景に、世界的にインフレ圧力が高まるなど、社会・経済情勢が非常に不透明ななか、銀行界の多岐にわたる課題に対して、大変見事なリーダーシップを発揮された。以上を踏まえ、本日の正副会長会議、理事会において、新会長として最もふさわしい方であると判断した。
ご質問のなかにあった不祥事案については、三菱UFJ銀行は、事案発生の原因究明および真因分析にもとづく再発防止策を策定し、鋭意、改善に向けて取り組まれているものと承知している。半沢頭取には、こうした不祥事案から得た教訓やノウハウを業界活動に活かしていただくことにも期待している。
(問)
幹事社質問に関連して、全銀協会長人事について問う。平年の会長内定は就任の前年、とりわけ9月から10月に決定することが多かったと承知している。今回、2月という直前になった理由をお伺いしたい。また、理事会において、半沢頭取の就任に関して、反対意見やそのほかの意見などは出なかったかどうかについて確認したい。
(答)
次期会長の内定については、いつまでに、という決まりはなく、全銀協の基準に従い、適当な人物を候補とし、選定するにふさわしい環境が整い次第、正副会長会議で議論を行ったうえで理事会に諮るのが通例である。先ほど三菱UFJ銀行の不祥事案についてご指摘があったが、同行は再発防止策を策定し、改善に向けた取組みに着手したところである。そうした状況も踏まえ、このたび内定に至った経緯である。
2点目のご質問については、内部会合であるため具体的なお話はできないが、理事の方々より内定に反対する意見は寄せられなかった点についてはお伝えする。
(問)
バーゼル規制に関して伺う。米国では、バーゼルIIIの適用を指揮していたマイケル・バー副議長が任期途中で辞任する予定であり、適用が先送りされるのではないかという見方が強まっている。英国においてもバーゼルIIIの最終化の適用開始を予定よりも遅らせる旨の発表があるなど、国際的な規制の足並みがそろわない状況が続いている。日本は先んじて適用を開始しているが、このように地域によって導入状況に差異があることによって、競争環境において邦銀が劣後しないかなどの観点でどのように分析されているかについて伺いたい。
(答)
ご指摘のとおり、バーゼルIIIの導入状況については、地域によって差異が生じている。バーゼルIIIは世界的な金融危機の再発を防ぎ、国際金融システムのリスク耐性を高めることを目的に議論されてきたので、日本が欧米を待たずに先行して適用したことは、適切な措置であったのではないかと考えている。欧米においても遅かれ早かれ導入が進められると思うが、唯一心配しているのは、今後、適用まで間が空くことにより、国際合意よりも緩和的な内容で導入される可能性がある点である。したがって、グローバルベースで早期に適用されていくことが強く望まれる。
なお、欧米の各銀行は、バーゼルIIIで規定される、最低限維持しなければならない自己資本比率、通称「第1の柱」に加えて、監督当局より「第2の柱」として、銀行ごとのリスクに応じた資本の上乗せが求められている。したがって、各国の規制の強弱を比較するには、この「第2の柱」も含めた総合的な検証が必要であり、今後、公表される規制の詳細を注目している。
(問)
1点目は、先日、石破首相と米国のトランプ大統領の初の日米首脳会談が行われ、経済分野でも幅広い意見交換がなされたと承知している。日米首脳会談の結果全般に対する受止めについての所感と、それに関連して、銀行業界として何か取り組むべきものがあるか、現時点でお考えがあれば伺いたい。
2点目は、1問目の関連として、会談後、トランプ大統領は日本も含むすべての国に対する鉄鋼やアルミニウムに対する25%の追加関税の導入や、USスチールの問題について、子会社化される、いわゆる買収は認めず、50%未満の出資なら認めるなどの発言を行っている。USスチールの問題は、日本製鉄の当初のM&Aのスキームが政治的な影響で大幅に修正される見通しになっているが、こうした問題に関する会長の受止めを伺いたい。
(答)
1点目について、皆さまご存じのとおり、日米首脳会談では安全保障や日米間の経済関係に関して幅広く議論され、共同声明では、自由で開かれたインド太平洋を堅持するとともに、暴力の続く混乱した世界に平和と繁栄をもたらす、日米関係の新たな黄金時代を追求する決意が確認されたと承知している。
重要トピックのほとんどが共同声明でカバーされたと思っており、全般的な受止めについて端的に申しあげると、非常に良い会談だったと考えている。地政学リスクを巡り、今なお世界的に不透明な状況が続くなか、日米関係の重要性や結び付きの強さを互いに確認し、かつ、それを世界に対してクリアに印象付けたことは、極めて重要な意味を持つと思う。また、石破首相とトランプ大統領、お二人の個人的な信頼関係が良い滑り出しになった、ということも大きな成果だと思っている。
石破首相は会談前に、トランプ大統領の印象として、「テレビで見ると声高で、個性強烈で、恐ろしい方だという印象がなかったわけではない」と述べられたが、私としても「ああいうタイプの方とビジネスの場で対峙したら、相当手強いだろうな」という印象を持っていた。一方で、それは「ひとたび味方になれば、極めて心強い」ということでもあり、今回の首脳会談の結果を受け、そうした思いを強くしている。今後も日米相互の国益に資する取組みを通じて、両国のパートナーシップがさらに高い次元へと引き上げられることを期待している。
銀行界としての取組みについて、これは引き続きということになるが、第2次トランプ政権が始動し、さまざまな政策が大きく転換するなど状況が絶えず変化していることを踏まえ、こうした変化の動向をつぶさに捉え、お客さまともしっかり共有したうえで、一喜一憂せず、柔軟かつしなやかに対応していくことに尽きると思っている。
個別行の頭取としては、例えば分析資料の配布やセミナー開催などを通じて、お客さまと対話を重ね、サプライチェーンの再構築などの事業戦略を伴走していきたいと考えている。
2点目は、まず、日本製鉄によるUSスチールの買収案件については、トランプ大統領は自ら仲介と仲裁をすると表明され、林官房長官も、「日鉄がこれまでとは全く異なる大胆な提案を検討している」とおっしゃっている。
全銀協としては詳細を知り得る立場にないので、コメントすることは差し控えるが、当事者および日米両国が納得するかたちで進展することを期待しており、しっかりと見守っていきたいと考えている。
関税の引上げについて申しあげると、導入に伴う貿易や経済への影響を気にする声があることは当然だと思っている。
もっとも、現在、日本政府は米国政府に対し、適用除外を申し入れているとのことで、他国も含め影響が出るとしても、大変複雑な波及経路を通じて、影響が徐々に表れてくるのではないかと考えており、現段階で具体的に予想することは難しいと言わざるを得ない。
したがって、今後も政策の動向を慎重に注視するとともに、個々のお客さまの状況をきめ細かく把握し、必要に応じて柔軟かつしなやかに対応していくことが重要と考えている。
(問)
地域金融機関の一部で増加している仕組み貸出について伺う。
JGBリパッケージローンや国債リパッケージローンと呼ばれる少し特殊な商品である仕組み貸出は、金利動向によっては逆ざやとなる可能性がある。商品の特性を理解しないと思わぬ損失につながるおそれがあるとして、金融庁が警戒を強めており、地銀に再度の注意喚起を行ったと報道している。全銀協としてリスクをどう認識しているか。また、会員行への呼び掛け等があれば教えてほしい。
(答)
昨年1月に続き、金融庁から地方銀行に対し、仕組み貸出のリスク管理強化について要請が行われたことは承知している。
商品性の概要を申しあげると、まず、投資家はSPCに対しローンを貸し付け、SPCはそれを原資にJGB等の債券を購入したうえでデリバティブを取り組み、債券のクーポンをリパッケージしたかたちで投資家に金利を支払うというものである。そのデリバティブにはオプションが組み込まれており、債券の現物よりも魅力的な利回りが提供されることが一般的である。
当然ではあるが、リターンが上乗せされているのであれば、投資家はリターンに見合った相応のリスクを負うことになる。相場動向次第では利回りが急激に悪化する可能性があるほか、ローン商品であるため、通常、時価評価が行われないことから、中途解約時に思わぬ損失が顕在化するリスクもある。
金融庁は、こうした仕組み貸出の特性を踏まえ、銀行界に対し、例えば、短期的な収益ではなく、経営戦略上の位置付けや経営体力とリスク量のバランス、類似商品におけるコストやオプション条件等の検討も含め、仕組み貸出に関する取組状況を確認し、適切な管理体制の構築を行うことなどを改めて要請したものと認識している。
今回、金融庁から多面的な指摘、要請があったことを踏まえ、会員行には改めて自行の取組みを見直し、さらなる管理体制の高度化に努めるよう期待している。
(問)
1点目、今回、日銀による政策金利の引上げがあった。間もなく始まる2025年度の利上げの回数や、年度最後の政策金利の着地点について、現時点での会長としての予想等があれば所見を伺いたい。
2点目、先月来、社会的な問題になっているフジテレビの問題で伺う。企業が相次いでCMを止めるなか、最近では一部出稿を再開している企業も出始めている。なかなか個社の案件なので難しいとは思うが、CMを再開するに当たって、企業のトップも務めている頭取として、どういった点が重要になるか。事案の受止めも含めてお答えいただきたい。
(答)
1点目は、今後の利上げのタイミングやペースについて、全銀協会長として具体的な予想を述べることは差し控える。一般論として、日本銀行の植田総裁は、今後の政策運営を判断するに当たり、今回の利上げによる影響をはじめ、賃上げの持続性や基調的インフレ、あるいは金融情勢に関するさまざまなデータや情報を参照するとしている。
足元、わが国経済は、実質賃金がプラスとマイナスを行ったり来たりするなど、非常に繊細な状況が続いている。来年度の賃上げについては、大企業を中心に昨年と同水準の引上げを目標とすることが公表されているが、こうした動きが中小企業にも波及し、わが国全体として賃上げのモメンタムが定着していくか、注視する必要がある。
このほか、総裁会見にもあったとおり、トランプ政権が米国経済に及ぼす影響も最大の注目点の一つになる。日本銀行はこうした経済の動向を入念に確認しながら、その都度、利上げの是非を判断していくものと思われる。
続いて、ターミナルレートに関してだが、物価や経済に対して、緩和的でも引締め的でもない名目ベースの金利である中立金利が大きな目安になる。もっとも中立金利は、ご承知のとおり画一的に推計されるものではなく、日本銀行もプラス1%から2.5%と幅のある水準を示している。
個人的には、今の物価上昇や賃上げモメンタムが失速しない限りは、政策金利は、少なくとも日本銀行が示す中立金利の下限である1%には到達するのではないかと思っている。そして、賃金と物価の好循環が定着し、本格的な経済成長が継続していけば、その先の水準への到達も十分にあり得ると個人的には考えている。
2点目は、フジテレビの問題について、現時点では、事実関係が明らかになっていないため、一連の問題に対する直接のコメントは差し控えさせていただくが、仮に報道されているような人権侵害があったとすれば、それは当然許されないことだと考えている。銀行界としても、本件を他山の石としつつ、引き続き人権を尊重した業務運営に努めていく。
また、スポンサー各社がフジテレビへの広告の出稿を再開するに当たり重要な点は、フジテレビの対応について、視聴者が納得しているかどうかに尽きると考えている。今後、独立した第三者委員会による事実関係の調査を通じて、本件に関する対応の問題点や根本原因が明らかにされ、それにもとづく再発防止策が策定されるものと認識している。これら一連の対応について、視聴者の理解が得られれば、広告出稿の再開が可能になるのではないかと考えている。
(問)
本日、ホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議を打ち切ることを決めた。経営統合の協議に入ってから1ヶ月半ほどだが、こうしたことについての受止めと、日本の自動車産業に与える影響について全銀協の会長としてどのように見ているか、ご所感を伺いたい。
(答)
個別企業の経営戦略に関わる事項については全銀協会長としてのコメントは差し控える。
自動車業界においては、ハイブリッド車や電気自動車といった、世界的に進展する二酸化炭素排出量削減や脱炭素化のトレンドに対応したモデルの開発、あるいはデジタル化およびAIの進展に伴い、インターネットへの常時接続機能を備えたコネクテッドカーの開発などが重要な課題となっており、今後、そのために必要となる設備投資や研究開発費の負担は一層増大していくことが予想される。
したがって、自動車メーカー各社にとっては、ほかのメーカーと連携し、設備投資や研究開発を共通化してコストダウンを図りつつ、製品ラインナップを強化して競争力を高めていくことが、事業戦略上、ますます重要なテーマになっていくと考えられる。
しかしながら、各社が長年培ってきた技術や企業文化の融合は一朝一夕には進められるものではなく、それぞれが抱える広大なサプライヤー群の交通整理も当然課題となる。また、生産台数は中規模であっても、特定のエッジを売りに存在意義を発揮しているメーカーもあるので、合従連衡のあり方については、いわゆる合併から、緩やかなアライアンスまで多種多様であり、各メーカーはどのような戦略を取っていくのか、日々検討を重ねているものと推察される。
銀行界としては、お客さまの置かれている状況やご意向をしっかりと踏まえ、経営戦略や財務戦略の立案・実行に向けたコンサルティングを提供するとともに、M&Aや設備投資などに必要な資金のファイナンスを通じて、競争力強化、企業価値向上に貢献して参りたいと考えている。
(問)
1点目は、日本銀行の政策金利について伺う。今回、日本銀行が政策金利を0.5%程度に引き上げることを決定した。日本において約17年ぶりの水準になるが、グローバルで見るとまだまだ低いという見方もある。率直に0.5%という水準をどう見ているのか。緩和的なのかそうではないのか、ご見解を伺いたい。
2点目は、トランプ大統領就任による米国の金融政策の動向について伺う。1月末のFOMCでは、4会合ぶりの政策金利据置きが決定された。トランプ大統領が利下げを要求するというスタンスを取っているが、政権運営により、今後米国の政策金利がどうなると見ているのか。また、金利の変化によって為替を含め日本はどのような影響を受ける可能性があるか、見解を伺いたい。
(答)
1点目、先月の利上げによって、政策金利の誘導水準が0.5%程度に引き上げられた。日本銀行が、2023年7月に長期金利の変動幅を「目途」とするイールド・カーブ・コントロールの運用の柔軟化を決定し、金融政策の正常化に踏み出して以降、その取組みが着実に進捗するなか、個人的には0.5%は、あくまで通過点であると思う。確かに0.5%という金利水準は諸外国対比でまだまだ低い水準にあるが、各国の政策金利は、それぞれの国における経済状況やインフレ動向等を考慮し、総合的に判断された結果であるため、名目上の金利水準をグローバルベースで一概に比較することはできない。そのうえで足元の0.5%という政策金利の水準について考えてみると、まず、日本銀行は、経済が過熱も冷え込みもしない金利水準である中立金利を、プラス1%から2.5%の間と推計しており、0.5%からはまだ距離があるといえる。
そして、政策金利を見るうえでは、名目金利から物価上昇率を差し引いた実質金利が重要な意味を持つが、0.5%から足元の2%を超える物価上昇率を差し引けば、実質金利は依然としてマイナスということになり、引き続き緩和的な金融環境が維持されていると認識している。
2点目、ご指摘のとおり、トランプ大統領の政策はいずれもインフレ的だが、金融政策は低金利を志向している。そのなかで1月末のFOMCでは、4会合ぶりとなる政策金利の据置きが決定された。今後の米国金利の動向について申しあげると、これまでコアCPIが低下トレンドをたどってきたことから、もう一段の利下げの可能性は十分にあると考えている。ただし、昨晩発表のコアCPIは比較的強めに出ており、潜在的なインフレ圧力には根強いものがあるため、今後の見通しはこうした経済指標次第で大きく変わってくる可能性がある。
最近のドル・円相場は、米国金利の動向に大きく左右される状況が続いているが、当然ながら、日本の金融政策の正常化の影響も受ける。日米の金融政策が逆方向に進んでいるという現在のトレンドが続くとすれば、やはり中長期的には両国の金利差が縮小していくため、どちらかといえば円高方向にバイアスがかかっていく展開になると思っている。ただ、足元では、金利差は依然として大きく、その縮小スピードも不透明な状況である。当面は、現在の1ドル150円半ばを中心として、上下に方向感なくボラタイルな動きを見せるのではないかと予想している。
もう一つのご質問の趣旨は、為替の変動やその水準が日本経済に与える影響ということかと思う。これまでもこの会見で何度か申しあげているとおり、為替の変動は複雑な経路をたどって、各経済主体にプラス・マイナス両面の影響をもたらす。この変動が急激であればあるほどインパクトが大きくなるため、為替動向およびお客さまの状況に引き続き注視していく必要があると考えている。
(問)
日本銀行の政策金利について。先月0.5%に利上げし、17年ぶりの金利水準となった。同じ0.5%ではあるが、今と17年前では物価や経済環境が異なるので、それぞれの持つ意味は異なると思う。当時の0.5%と今の0.5%を比べて、会長はどのような違いを感じるか、体感をお聞きしたい。
(答)
前回政策金利が0.5%に引き上げられたのは2007年であり、当時、私は海外にいたため、「体感」はできていなかったかもしれない。ただ、私はずっとディーラーとして金利の世界におり、アメリカから状況を見ていた。2007年当時は、2002年2月から始まった、戦後最長の景気拡大といわれる「いざなみ景気」が続いている最中で、銀行界では公的資金の完済が相次ぐなど、いよいよ日本経済はバブル崩壊後の最悪期を脱したのではないかという期待感があったと思う。ただし、当時は「実感なき景気回復」という言葉があったように、個人所得は伸び悩んでおり、消費マインドやインフレ期待も弱い状態が続くなど、明るい先行きがなかなか見通せる状況ではなかったとも記憶している。実際、その後リーマンショックが起こり、さらには東日本大震災という未曾有の大災害に見舞われ日本経済は再び低迷し、2013年4月に時の黒田総裁が異次元の金融緩和に着手して、2016年1月からはマイナス金利政策が導入されたという流れだった。
一方、現在は、企業業績は過去最高水準ともいえる好調が続いている。17年前は伸びずじまいだった個人所得も、今では2年連続の5%超えの賃上げが期待され、政府からは「すでにデフレではない」というコメントも出ている。物価と賃金の好循環、賃金・消費・企業業績の好循環など、さまざまな好循環が社会全体に定着しつつあり、日本の再成長に向けた高揚感が広がっているのではないかと見ている。もちろん、海外発のリスクや国内の人手不足など、景気回復の制約となり得るファクターも当然あるが、このままわが国経済が明るい、成長型の新たなステージに向けて進んでいくことを期待している。
(問)
トランプ大統領の就任を受けて、米国の金融業界を中心に、今後の見通しについて前向きな声が聞かれているが、一方でトランプ大統領が掲げる関税政策や移民政策などは先行きに不透明な要素も少なくないと思う。こうした点も踏まえて、改めて大統領就任に対する受止めについて伺いたい。
(答)
ご指摘のとおり、トランプ大統領の就任に伴って、金融界を含め、米国の経済界から、特に規制緩和による経済活動の活発化や大型減税の延長による景気拡大を期待する声が多く上がっている。先月、スイスで開催されたダボス会議に参加してきたが、米国勢の期待感と強気なムードが非常に印象的だった。米国経済が引き続き堅調に推移していることを踏まえても、エネルギー分野の規制緩和をはじめとする各種政策による経済へのプラス効果が先行して現れる可能性は十分にあると思っている。そのほか、ご指摘にあった関税政策や移民政策など、さまざまな分野において大きな政策の転換が進められている。そうした政策全体のネットでの影響は、さまざまな要素が複雑に絡み合って、徐々に米国経済、そしてグローバル経済に現れると見られるため、現段階で先行きを見通すのは大変難しいと考えている。また、当然のことながら、セクターや企業によって見方が変わってくる面もあるので、銀行界としては、政策の動向を注視しつつ、個々のお客さまの状況に応じて、攻守両面で、柔軟、かつ、しなやかに対応していきたいと思っている。
(問)
1点目は、資産運用立国に関して伺う。今年1月に新NISAが始まってから1年が経過した。昨年は岸田前首相が資産運用立国議連を立ち上げるなど加速する動きも出てきたが、これまでの資産運用立国の取組みの振返りと今後の期待、また、銀行界での足元の取組みが何かあれば伺いたい。
2点目は、サイバーセキュリティについて伺う。昨年末から年始にかけて銀行界においてもサイバー攻撃と見られるシステム障害がいくつかの銀行で発生した。社会の公器である銀行のシステムは今後ますます狙われる可能性があるかと思うが、業界としてサイバー攻撃を防ぐために普段からどのような取組みを行っているか。
(答)
1点目の資産運用立国については、政府は2022年の資産所得倍増計画の公表を皮切りに、家計、販売会社、企業、資産運用業、アセットオーナーといったインベストメントチェーン一つ一つの主体に対し、矢継ぎ早に対策を講じてきたと認識している。今や18歳以上の国民の4人に1人がNISA口座を保有しており、新NISA制度が開始した昨年1月から9月までで買付額は13兆円を超え、すでに2023年1年間の約2.6倍まで拡大している。貯蓄から投資への動きは明らかに加速しており、資産運用立国の盛り上がりを日々、ひしひしと感じている次第である。
そうした中、昨年8月上旬の株式相場の急変を受け、特に運用初心者の方々を中心に動揺が広がったことは記憶に新しいと思う。幸い、NISA口座から一方的に投資資金が流出するという事態は発生しなかったが、相場急変時を含めてタイムリーな情報提供に努め、フォロー体制を強化していくことが重要である。また、新NISAをきっかけに投資を始めたお客さまが急増している今こそ、安定的な資産形成の実現に向けた「長期・積立・分散投資」の意義をご理解いただけるよう、繰り返し、分かりやすくお伝えしていく必要があると考えている。
顧客本位の業務運営の観点では、お客さまのライフプランを踏まえ、バランスのとれたポートフォリオによる適切なリスクテイクを促すことが重要である。足許では、金融庁が、顧客ニーズを的確に捉えた金融商品の提供を促すために、プロダクトガバナンスの高度化の一環として、組成会社と販売会社の間における情報連携に関わる議論が進められており、銀行界は販売会社の立場からその議論に積極的に参画している。
さらに、少し毛色の変わった話を申しあげると、昨年1月、大手金融機関グループは、資産運用立国実現プランにもとづき、グループ内の資産運用ビジネスに関し、運用力向上・ガバナンス強化等に向けた対応方針を公表した。新興運用業者促進プログラム、通称、日本版EMPの取組みも含め、各グループにおいて運用戦略の高度化を積極的に進めている。
銀行界としても、資産運用立国の実現は日本の再成長の切り札として大いに期待しており、我々自身にとっても新たな成長機会をもたらす極めて重要な取組みと捉え、インベストメントチェーンのさまざまな切り口において貢献していきたいと考えている。
2点目のサイバーセキュリティについては、サイバー攻撃の件数は、地政学的な緊張の高まりなどを背景に、日本のみならず世界中で増加傾向にある。また、その手口は日々高度化するとともに多様化が進んでいる。特に直近では、航空事業者、金融機関、通信事業者など国民生活や経済活動を支える重要インフラ事業者に対する広範な攻撃も確認されており、サイバーセキュリティを強化する必要性はより一層高まっていると認識している。
こうした状況を踏まえ、各会員行においては、昨年10月に金融庁が制定した「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」の内容や、自社の規模・特性も踏まえつつ、サイバー攻撃からの多層的な防御策の導入、サイバー攻撃演習を通じたコンティンジェンシープランの整備・検証などの対策強化に取り組んでいるものと理解している。
また、全銀協においては、金融ISACと共同で、地域金融機関向けのサイバーセキュリティの管理態勢強化に関する意見交換会を開催した。意見交換会では、今般のDDoS攻撃の手口やその特徴を踏まえた対策について紹介するとともに、サイバーセキュリティ関連の規程整備やサイバー人材の確保・育成、サードパーティリスク管理等、多岐にわたる議題を採り上げた。
全銀協は、今後もこうした意見交換会を定期的に開催し、会員各行のサイバーセキュリティ管理態勢の整備をサポートしていく。
(問)
1点目は、主要な米銀のネットゼロ・バンキング・アライアンスからの脱退について伺う。邦銀への影響と加盟を継続する場合のリスクをどうお考えか。国際的な枠組みが形骸化すると指摘する声もあるが、今後の脱炭素を取り巻く事業環境の展望について伺いたい。
2点目は、冒頭に説明のあったスタートアップのハンドブックについて、策定した目的や狙い、今後の活用に対する期待について伺う。また、策定の経緯と絡むと思うが、スタートアップ・ファイナンスにおいては大手行や一部の地銀が先行して取り組んでいると思うが、一部ではとどまらずに銀行界全体でリスクマネーの供給役にならないと、スタートアップの資金需要に応えることは難しいという認識か。このスタートアップ・ファイナンスにおける銀行のリスクテイクのあり方についても所見を伺いたい。
(答)
1点目のネットゼロ・バンキング・アライアンス、通称NZBAは、ネットゼロへの移行を目的とする銀行界のイニシアティブだが、ご指摘のとおり、昨年末から米国およびカナダの主要な銀行が断続的に脱退している。
このような動きを受けて、日本の銀行界がどのような対応をするかは個別行の判断であるので、全銀協会長としてはコメントする立場にはない。
邦銀各行はそれぞれ、2050年のネットゼロ実現に向けて、社内体制の整備、高度化や顧客支援の取組みを進めてきた。全銀協としても、「全銀協カーボンニュートラル・イニシアティブ」を策定し、会員行を支援するために資料作成や情報提供に取り組んでいるところである。
NZBAを脱退した米国やカナダの銀行は、顧客の気候変動対応を支援する方針は変わらないと表明しており、邦銀各行においても、今後NZBAを脱退するかどうかにかかわらず、顧客のネットゼロに向けた取組みを引き続き積極的に支援していく方向性自体に変わりはないと認識している。
2点目について、おっしゃるとおり、スタートアップは、わが国の産業構造を変革し、将来の経済成長を担う極めて重要な存在である。しかし、現時点において、わが国のスタートアップを取り巻くファイナンス環境は必ずしも成熟しておらず、スタートアップの数や規模は米国などと比べて、極めて限定的なものにとどまっている。
銀行はわが国のデットプレーヤーの中核として、スタートアップの創出・育成に積極的に貢献することが求められている。一方で、銀行によるスタートアップ融資については、現時点ではプレーヤーが限られているうえに、歴史が浅いことから、適切な融資手法や審査手法、リスク・リターンの考え方などについて、業界内でのコンセンサスがいまだ確立されていないのが現状である。そのため、健全かつサステナブルな形でスタートアップ融資市場を活性化し、地域金融機関などの新規参入を促すべく、融資実務に関する基本的な事項を取りまとめた「スタートアップ融資実務ハンドブック」を作成した。
スタートアップ・ファイナンスの担い手についても質問いただいた。今後、わが国のスタートアップエコシステムが一層成熟し、求められる資金量が増大していくことが想定される。また、大学発ベンチャーをはじめ、地理的にもエコシステムが拡大していくと見られ、全国津々浦々でより多くのプレーヤーがスタートアップ融資に取り組んでいくことが必要だと考えている。
また、銀行のリスクテイクのあり方についての質問もいただいた。スタートアップ融資がコーポレートデットと大きく異なる点の一つは、融資先の非連続な成長を前提としており、その実現可能性が不確かななかでの融資となることである。リスクテイクに当たっては、スタートアップ企業の特性や実態を踏まえ、事業計画や資金繰り計画をより深く把握するとともに、営業支援なども通じてリスクを極小化していくことが重要である。また、リスクが高いからこそ、個別案件単位の貸し倒れリスクというよりは、ポートフォリオ全体のリスク・リターンをコントロールするというアプローチも有効な選択肢の一つである。
最後になるが、今回作成したハンドブックは、あくまで現時点におけるグッドプラクティスを参考に作成したものであり、各行においてさらに進んだ取組みが次々に生み出されていくことを期待している。
わが国のスタートアップエコシステムが成熟するなかで、銀行および銀行グループが求められる具体的な支援の内容も当然に変化していくと考えており、銀行界として、こうした変化に対応しながら、継続的な取組みを行って参る。
(問)
日本経済に対する再成長の期待について言及されていたが、当面のリスクをどう見ているか伺いたい。例えば、中東ではイスラエルとハマスが停戦に合意したが、まだ予断を許さない状況。このほか、原油価格の動向など、いろいろとあると思うが、どこを注視しているか。
(答)
昨年の選挙イヤーを経て、今年、世界各国で政策転換が行われる公算が非常に大きく、その動向と世界経済への影響を注意していく年だと思う。
なかでも、やはり鍵を握るのはアメリカで、特に関税、地政学リスクへの対応、そして環境政策、この3点に注目している。
まず、関税についてだが、今月初め、カナダ、メキシコ、中国に対する関税を巡って株価が急落するなど、市場に強いインパクトを与えたことは記憶に新しいところである。今後も関税を材料にディールが繰り広げられ、そのたびに市場に影響を与える可能性があるほか、実際に関税が課された場合には、米国および関税を課された国を中心に経済的な影響は避けられない。また、これまでフリートレードをコンセプトに構築されてきた貿易のあり方が大きく変わってしまう可能性も当然ある。
地政学リスクに関しては、現在、大統領令にもとづいて既存の対外援助プログラムの見直しが進められている。その結果次第で地政学リスクや地域紛争への対応方針も変わっていく可能性がある。
さらに、ご承知のとおり、環境政策の面では、米国はパリ協定からの離脱を決定し、化石燃料の推進に向けた方針転換を打ち出している。大国のこうしたドラスティックな政策転換は、国際社会、そして日本経済にもさまざまな影響をもたらすので、緊張感を持って見守っているところである。
また、これはリスクとは言えないと思うが、個人的にはAI関連技術の動向にも注目している。先日、皆さまご承知のとおり、中国のスタートアップであるディープシーク社が一時マーケットを賑わせた。実は、この企業の名前はその前週のダボス会議で何回も耳にしていた。世界中で技術開発競争が過熱するなかで、今回のように既存の有力プレーヤーの地位を脅かす企業が突然登場し、今までの前提を変えてしまうようなことがあれば、マーケットにおけるリスクとなる可能性もある。そういう観点でもよく見ていきたいと考えている。
(問)
政府から第7次エネルギー基本計画の原案が示され、カーボンニュートラルの実現に向けて最適な電源構成が議論されているなか、電力会社は今後資金需要が大幅に増加すると予想される。足元では直接金融市場を通じた社債の発行による資金調達が行われているが、間接金融市場の重要プレーヤーである銀行界として、その資金ニーズに対してどのように対応していくのか、見解を伺いたい。
(答)
ご承知のとおり、わが国でも、生成AIをはじめとした計算需要の増加に伴い、データセンターや半導体工場の電力消費量が大幅に増加することが見込まれている。昨年12月にまとめられた「次期エネルギー基本計画」の原案にもあるとおり、電力業界はこうした電力需要の増加に対応するため、再生可能エネルギーの拡充や原子力発電所の再稼働・リプレース・送配電網の増強など、多面的な取組みを、今後集中的に進めていくものと見られている。長期かつ多額の投資が発生することから、業界各社にとって資金調達が最重要課題の一つとなっているのはおっしゃるとおりだと思う。
電力事業は、日本の家計や産業を支える非常に大切な基盤であり、国民にとって非常に重要なセクターであることはいうまでもない。与信方針は、個別行の経営判断に属する事項であるため、全銀協会長としてコメントするものではないが、私個人の意見を申しあげれば、銀行界として今後も可能な限り電力会社をしっかりとサポートし、その資金需要に応えるべく知恵を絞っていくことが重要であると考えている。
そうした資金支援の検討に当たっては、電力会社のキャッシュフローの予見性や安定性を高めるための制度整備や、民間金融機関、資本市場、政府などによる適切なリスクシェアリングもポイントとなる。いずれにしても、これらの点について、電力会社、政府をはじめさまざまなステークホールダーと議論を重ね、電力セクターの資金ニーズに応えられるよう、しっかりと取り組んでいくことが重要だと認識している。