
(参考)全銀ネット2025年度検討体制図(2025年7月17日現在) [199 KB]
2025年7月17日
辻専務理事報告
事務局から3点ご報告申しあげる。
1点目は、本日の理事会において、お手元の資料のとおり、銀行界における「カスタマーハラスメントへの対応に係る基本方針」を策定した。カスタマーハラスメントに該当する行為には毅然とした対応を行い、銀行の従業員にとって健康で安全な職場を確保することで、お客さまに対して質の高い金融サービスを提供するために策定したものである。
2点目は、本日の理事会において、お手元の資料のとおり、銀行界における男女間賃金格差解消に向けたアクションプランを策定し、取組みを確実に推進していくための申し合わせを実施した。当協会としても会員の取組みを支援し、定期的に取組状況等をフォローアップして参る。
3点目は、本日の一般社団法人全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)理事会において、足元、サイバー攻撃の脅威が増大し、これまで以上にサイバーセキュリティの重要性が高まっている状況を踏まえ、サイバーセキュリティ専門委員会の設置を決定した。これを受けて全銀ネットの検討体制図はお手元の資料のとおりになった。全銀協の案件ではないが、ご参考までに紹介させていただく。
会長記者会見の模様
(問)
冒頭2点質問する。
1点目は、今、説明のあったカスタマーハラスメントの基本方針の策定について。カスタマーハラスメントについては、先日、改正法も成立したが、今後、全銀協としてこの基本方針の策定を踏まえてどのように対応していくのか。
2点目は、米国の関税についてである。足元でも政府間で関税率を巡って交渉が続いているが、米国の関税による日本経済への影響をどう見ているか。また、銀行界として、業績が悪化した企業からの資金繰り支援の相談の声が増えているかについても、併せてお伺いしたい。
(答)
まず、カスタマーハラスメントについてお答えしたい。カスタマーハラスメントは、近年発生事案が増加している社会問題の一つである。先月には、今ご指摘があったように、カスタマーハラスメント対策を事業主の雇用管理上の措置義務とする改正労働施策総合推進法が成立したところである。具体的な措置の内容等は、今後、指針において示される予定と承知している。
全銀協では、本日、「カスタマーハラスメントへの対応に係る基本方針」を策定した。本基本方針は、カスタマーハラスメントの定義を明確にしたうえで、該当する行為に対するお客さま対応の打切りや、警察・弁護士等へ相談したうえでの法的措置を含め、毅然とした対応を行うことを示している。
併せて、会員行の取組みを後押しすべく、取組事例集を取りまとめ、会員行へ通知した。カスタマーハラスメントの未然防止や従業員等への研修・教育、カスタマーハラスメント発生時の顧客対応方法、その後の従業員のケアなど、会員行の具体的な対応事例を掲載している。お客さまの正当な苦情・クレームと、カスタマーハラスメントを区別する必要があるなど、対応の難しさもあるため、会員行が対応を強化するなかで、ぜひ参考にしてもらえればと考えている。
カスタマーハラスメントについては、役職員の人権に関わる重要な問題である。会員行の対応を促し、従業員にとって健康で安全な職場を確保することで、お客さまと末永い関係を築くとともに、質の高い金融サービスの提供にもつなげていきたいと思っている。
2点目は、米国との関税交渉、そして日本経済への影響、企業からの資金繰り支援等の声についての質問であった。これは4月の会見でも少し話したが、米国の関税政策は、自動車をはじめとする製造業を中心に、輸出減速による生産、企業収益の下押しや関税政策を巡る不確実性に起因する設備投資の手控えなどを通じて、日本経済に負の影響を与える可能性がある。
また、こうした企業への影響を経由し、雇用や賃金に波及すれば、個人消費の重石となるほか、為替や金利の変化など、金融市場を通じた影響も想定される。
今月9日が期限とされていた相互関税の上乗せ分の発動の猶予期間は8月1日まで先送りされた一方、発動時の日本に対する税率は25%へと引き上げられることが発表されている。日本政府には、これまでも米国との協議に精力的に取り組んできていただいたと承知しているものの、当初の猶予期間内に交渉妥結には至らず、改めて難しい交渉であることを認識したところである。
今後の日本経済を見通すうえで、米国の関税措置の着地が極めて大きな影響を及ぼすことから、政府には引き続き粘り強く交渉を進めていただき、日本経済にとって良いかたちで決着することを期待しつつ、経済や金融市場の動きに注意深く目を凝らしていきたい。
事業者支援に関して、足元、具体的な資金繰り相談件数が目立って増えている状況ではないが、すでに関税の上乗せ措置が発動している自動車・自動車部品や鉄鋼をはじめとする製造業を中心に、先行きを不安視しつつ、影響がどの程度になるか分からないとの反応も多く見られる。
日本銀行が今月公表した短観の6月調査でも、企業の景況感を表す業況判断DIの現状評価は、全業種・全規模ベースで、前回3月調査からは横ばいだったが、3か月後の先行きについては、米国の追加関税の影響を受ける自動車や金属関連を中心とした製造業だけではなく、インバウンドの頭打ちや中国経済の先行き不安などを背景に、非製造業でも悪化し、6ポイント低下している。
銀行界としては、すでに発動している自動車等に対する品目別関税や、現状10%の基本税率が課せられている相互関税に加え、8月1日まで猶予期間が延長された相互関税の上乗せ部分に係る日米交渉の着地次第では、影響がさらに広がることも踏まえ、事業者に寄り添い、丁寧かつ親身になって資金繰りをはじめとしたさまざまな支援を進めていく所存である。
また、これらの関税措置が常態化する場合には、お客さまの経営環境に長期にわたり影響を及ぼし得ることも念頭に、資金繰り支援にとどまらず、財務・非財務の両面で、お客さまの収益力の回復や事業再生を支援していくことも重要と考えており、取引先企業の経営課題の解決に力を尽くしていく所存である。
(問)
質問は2点。1点目は、米国の関税について。関税政策が発表された4月以降、赤沢大臣が何度も訪米し、米政権幹部との交渉を重ねてきているが、これまでの政府の交渉に対し、どのような評価をされているか。2点目は、地方銀行の再編が相次いでいることに対して、受止めを教えてほしい。人口減や金利の上昇などを背景に、地方銀行を巡る環境は厳しくなってきているが、地方銀行が置かれる現状認識も教えていただきたい。
(答)
まず1点目の米国との関税交渉の評価については、少し繰り返しになるところはあるが、これまでも日本政府には、首相や閣僚など、さまざまなレベルで精力的かつ粘り強く米国との協議に取り組んできていただいたと承知している。両国間で折り合えない点が残っており、相互関税の上乗せ部分の猶予期間の当初の期限であった今月9日までに交渉妥結には至らなかったわけだが、改めて難しい交渉であることを認識したところである。政府には、わが国の国益を守るという方針のもとで、引き続き粘り強く協議を進めていただき、中長期的な日本の経済成長にとって良いかたちで決着することを期待している。
2点目の地銀の再編について。近年、多くの事例がみられる地銀の再編に関しては、4月の会見でもお答えしたが、少子高齢化や人口減少の影響が特に地方において色濃く出ており、足元では、金利のある世界の定着といった環境変化も生じるなかで、各行が健全な経営基盤の構築や、金融仲介機能とサービスの向上、地域社会への貢献などを実現するために、最適な選択を模索した結果であると考えている。
地方銀行が果たすべき地域の経済、産業を支えるという役割は、一層重要さを増しており、地域資源を活用した付加価値の創出や地域課題の解決に向けた取組みの支援により、地域経済の活性化に寄与することが、これまで以上に求められていると思っている。
こうしたなかで、「地域金融力強化プランを年内に策定する」との政府方針を受け、先月開催された金融審議会の総会で、地域金融力の強化に関するWGの立ち上げに関する諮問がなされたところである。WGでは、経営基盤の強化に向け、合併・経営統合や抜本的な事業の見直しを行う地銀等に対し、必要なシステム投資等のコストの一部を交付する資金交付制度の延長・拡充や、先ほど述べたような金融機関における地域活性化の取組みの促進や好事例の共有といった地域金融力の発揮なども検討事項に挙げられている。地域金融の主たる担い手である地銀や第二地銀を会員に抱える全銀協としても、こうした議論に積極的に貢献し、必要な意見発信を行って参りたいと考えている。
(問)
1点目は、企業の設備投資について伺う。米国の関税の影響で、国内企業が4月以降の大型設備投資を手控える見込みだという声がある一方で、先月の日銀短観では、設備投資計画が上方修正された。今年度に入ってからの資金需要をどう見ているか。また、来月からの米国の関税措置が適用された場合、企業の設備投資需要に与える影響はどの程度と見ているか。
2点目は、コーポレートガバナンス・コードについて伺う。コードの適用開始から約10年が経過した。社外取締役の定着や非財務情報の開示・充実など、攻めのガバナンスにつながったとの成果がある一方で、コードというソフトローのかたちを取りながらも、実態は規制としての要素が強まっているとの批判もある。本制度が果たしてきた役割の評価と制度面の課題について教えてほしい。
(答)
1点目は設備投資の動きについてだが、今月初めに公表された日銀短観の6月調査では、利益は前年度から減益予想となる一方、設備投資の計画は昨年同時期の調査をわずかに上回っており、現時点では米国の関税政策を巡る不透明感が高いなかにあっても、企業が成長に必要な投資を着実に進める姿勢が崩れていないことを示唆する結果であったと捉えている。
個別行としても、米国の関税政策を巡る不確実性を理由に、設備投資の計画変更を余儀なくされたといった話は、現時点では目立って聞こえてきておらず、短観が示す結果と認識のずれはないと考えている。資金需要に関しても、国内銀行全体の企業向け貸出は、年初よりは増加ペースが鈍化しつつも、直近5月も底堅い伸びを示していると認識している。このように、足元の企業の設備投資意欲や資金需要に米国の関税政策の影響がはっきりと表れているとは言えない状況かと思う。
もっとも、今後については、すでに発動している自動車等に対する品目別の関税や、現状10%の基本税率が課せられている相互関税の影響を主に受ける輸出型の業種およびその裾野産業では、国内での生産や収益の下振れを通じて、設備投資が抑制される可能性がある。加えて8月1日まで猶予期限が延長された相互関税の上乗せ部分を巡っては、着地までの不透明感が投資の手控えにつながるおそれがあり、実際に25%の相互関税が適用されることになれば、幅広い業種における投資の下押しを通じて、企業向けの貸出に一定のマイナス影響が出てくる可能性があると見ている。
一方で、米国の関税政策の影響を受けるお客さまからの資金繰り支援のニーズや、関税措置を契機としたサプライチェーンの組換え、事業再構築に掛かる資金需要が出てくることも考えられる。こうしたお客さまの経営課題の解決に貢献する資金需要に、銀行界としてもしっかり応えて参りたいと思っている。
2点目のコーポレートガバナンス・コードは、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主な原則を取りまとめたものであり、コンプライ・オア・エクスプレイン、すなわち原則を実施するか、実施しないものがある場合には理由の説明を求めるというプリンシプルベースのソフトローの位置づけで、2015年に策定されたと理解している。
ご質問のとおり、コードの適用開始から10年が経過したが、この間に上場企業において、このコードに沿って政策保有株式の縮減や独立社外取締役の活用、委員会の設置といった取組みが着実に進捗してきている。2014年に策定された責任ある機関投資家の諸原則、いわゆるスチュワードシップ・コードとの両輪で、近年のコーポレートガバナンス改革の進展に貢献してきたものと評価している。
一方で、一部には、このコードを形式的な規制のように捉え、その遵守自体が目的化しており、趣旨を踏まえた中長期的な企業価値向上に資する実質的な取組みに至っていないという課題の指摘があることも承知している。こうした問題意識を踏まえ、経済産業省の「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会」や金融庁の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」等において、持続的成長や中長期的な企業価値向上に資するコーポレートガバナンス改革の実質化に向けた議論が重ねられ、骨太方針にも記載されたとおり、今後コーポレートガバナンス・コードの見直しが進められていくものと理解している。
今後進められる見直しの議論を通じて、コーポレートガバナンス改革の実質化が実現し、わが国における企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上が進展していくことを期待している。
(問)
足元で長期金利が急上昇してきており、今週一時1.6%目前に迫り、16年9か月ぶりの水準にまで達する場面があった。背景としては参院選後の財政悪化への懸念があるという指摘もあり、市場では日本国債の格下げの可能性も取り沙汰されている。こうした長期金利の上昇をどう受け止めているか。また、今後の格下げリスクや日本経済あるいは銀行業界の影響をどう見ているか。
(答)
ご指摘のとおり、本邦金利は総じて上昇傾向にあり、足元では新発10年物国債利回りは2008年以来の水準となっている。金利上昇に関しては、もともと日本銀行の利上げがその背景になってきたと承知しているが、加えて、グローバルな財政懸念や日米関税交渉による市場への影響が懸念されるほか、参院選を控えて物価高対策など財政状況に影響を与える議論も行われているため、国債市場の先行きに対する不透明感が意識されているのではないかと考えている。
政府債務残高が先進国で突出して高い日本においては、財政赤字が拡大し、債務拡大に歯止めがかからない場合には、国債の安定消化が困難となる可能性もある。この際には、急激な円安や経常収支の赤字化、一層の財政収支の悪化と相まって、国債の格下げリスクに留意が必要となる。日本経済や銀行界への影響については、金利上昇によって変動金利型の住宅ローンの返済負担の増加のほか、企業の利払い負担の拡大とそれに伴う設備投資の抑制につながる可能性もある。銀行経営上は、与信費用の拡大、債券ポートフォリオの評価損益の悪化が考えられる一方で、貸出金利や新規の債券投資の利回りは改善が見込まれる。
国債の格下げに関しては、一般的に国債の格付けが企業格付けの上限となるカントリー・シーリングの影響から、本邦企業や金融機関等の格付けや信用力の悪化につながるおそれがある。その場合、貿易・サービスや金融取引の条件の悪化を通じ、原材料などの調達難や外貨建てを含む調達コストの上昇が生じるほか、為替や株式、債券をはじめとした金融市場にも影響が波及する事態も想定され、銀行経営にも与信コストや外貨調達コストの上昇、外貨流動性への影響等の問題も懸念される。
このように、財政懸念を起点とした金利急騰や国債の格下げがもたらす影響は大きいため、状況を注視して参りたい。
(問)
2点お伺いしたい。証券業界で不正アクセスの被害が続いており、口座乗っ取り対策として多要素認証等が喫緊の課題になっていると思う。銀行界への影響や、そういった被害を防ぐための対策がどのようになされているのか。もう1点は、先ほど冒頭の事務局からの説明にもあったが、サイバー攻撃等に関するリスクについて、全銀ネットとしてはどのように対処しているのか教えていただきたい。
(答)
1点目は、今証券業界で課題になっており、それを銀行界でもどう対応しているかということだと思う。フィッシング詐欺等により、多くの証券会社でインターネット取引サービスでの不正アクセス、不正取引による被害が起きており、証券会社各社で多要素認証の導入等によるセキュリティ強化、また被害に遭われた方への補償を行う方針を打ち出している状況かと思う。
こうした被害の拡大を受け、7月15日には金融庁から証券会社等を対象とする監督指針の改正案が、また日証協からはインターネット取引における不正アクセス等防止に向けたガイドラインの改正案が、それぞれ公表された。いずれの改正案においても、フィッシングに高い耐性を持つ多要素認証の実装等の対応策が示されたと認識している。
銀行界では、フィッシング詐欺等の金融犯罪からお客さまの大切な資産をお守りすべく、従前よりインターネット取引に関するセキュリティ強化を進めてきた。具体的には、生体認証の活用による個人認証の強化や、利用限度額の初期値の変更、不審な取引のモニタリング強化、当局との連携強化などの対応を実施している。 また、全銀協では、個人のお客さまがインターネット・バンキング取引における不正な資金の引出しの被害に遭われた場合、お客さま自身の過失がなく、金融機関に速やかに通知していただく等の要件を満たす場合には、原則として補償する申し合わせを2008年に行っている。
銀行界としても、今後も金融犯罪の手口の巧妙化や被害の状況等を注視し、当局等の関係者とも緊密に連携のうえで、金融犯罪の抑止に向けた対応の強化について検討を進めるとともに、被害に遭われたお客さまに対しては引き続き丁寧な対応を行って参りたい。
2点目は、全銀ネットへのサイバー攻撃のリスクへの対応である。サイバー攻撃については、地政学的な緊張の高まりなどを背景に、日本のみならず、世界中で増加傾向にある。全銀ネットは経済安全保障上の基幹インフラに指定されており、また昨年末から年始にかけての大規模なDDoS攻撃のように、金融機関を標的としたサイバー攻撃が頻発していることもあり、サイバーセキュリティ強化の必要性がより一層高まっている状況と認識している。
全銀ネットは、現行の全銀システムにおいて多層的なサイバーセキュリティ対策を講じているほか、24時間365日の常時監視を行っている。これに加えて、先ほどお話ししたような認識のもと、今年度に開始した第5次中期経営計画においてサイバーセキュリティ対策の抜本強化と各種リスク管理の確実な実施を目標に掲げ、足元、各種サイバーセキュリティ対策の見直しや態勢強化に取り組んでいるところである。
取組みの一環として、会見冒頭にご説明のとおり、今月の全銀ネット理事会において各行のサイバーセキュリティ担当役員等で構成するサイバーセキュリティ専門委員会の設置を決議し、4委員会を常設する態勢を整備したところである。お手元にも資料をお配りしているが、会見終了後、全銀ネットのウェブサイトで公表することを予定している。
今後、外部専門家による支援や評価なども受けつつ、全銀ネットとしてのCISOやインシデント発生時の対応を担うCSIRTの設置など、計画的に検討、対応を進めて参る。
引き続き、安心・安全かつ利便性の高い金融インフラを提供していくべく、全銀ネットとしてもしっかり責務を果たして参りたい。
(問)
2点伺う。1点目は、先ほど地方銀行の支援について話があったが、金融審議会で暗号資産についても規制案が盛り込まれた。暗号資産の法的な位置づけを金商法に変更することが盛り込まれたと思うが、こうした動きが銀行業界に与える影響について伺いたい。
2点目が、先ほど公表された男女間賃金格差のアクションプランについて。銀行業界は一般職の影響などもあって男女間賃金格差が大きい業界だと思うが、課題認識と、格差是正のために業界としてどのように取り組まれるのか教えてほしい。
(答)
金融審議会の総会において、先ほど触れた「地域金融力の強化に関するWG」と、「暗号資産制度に関するWG」等の立ち上げに関する諮問がなされたと承知している。
「暗号資産制度に関するWG」は、2025年度の与党税制改正大綱において暗号資産の税制見直しの検討が盛り込まれたほか、4月には金融庁より、今後の具体的な制度改正や必要な施策の検討に向けて、インサイダー規制の導入の検討なども含めた「暗号資産に関連する制度のあり方等の検証」に関するディスカッション・ペーパーが公表されたこと等を受けて設置されたものと理解をしている。暗号資産の位置づけを見直す議論が、今後本格的に進展することを期待している。
わが国においては、現時点では、銀行が暗号資産交換業や暗号資産デリバティブ取引を行うことはできないと理解している。加えて、銀行グループが暗号資産を取得・保有する場合は、必要最小限度の範囲とする必要があるほか、業務運営への支障や重大な損害が生じないような態勢整備を図る必要があると認識をしている。
今後は、WGの議論を踏まえ、利用者保護やリスク管理を前提に、銀行としての暗号資産ビジネスとの関わり方について検討を深めていく段階だと思っている。
なお、暗号資産に係る足元の制度見直しの動きが、直ちに銀行の金融仲介機能に影響を与えるとは考えていないが、投資家層等の拡大などに伴う影響については注視して参りたい。
次に、男女間賃金格差の件だが、全銀協では行動憲章に「多様な人材の活躍を促進する制度や柔軟な働き方を実現する。また健康と安全に配慮した働きやすい職場環境を確保する。」と定めており、多様な人材の活躍、働きやすい職場を実現するよう努めてきたところである。
もっとも、ご質問いただいたとおり、銀行界の男女間賃金には一定の格差があり、ジェンダー平等の観点や、組織のパフォーマンス発揮、社会全体の健全性確保の観点から、対応が必要な課題と認識している。
こうした格差の要因はいくつかあるが、まず、一般的に店頭やバックオフィスで事務作業を担う一般職において女性比率が高く、当該職種においては総合職と比べて賃金水準が低く設定される傾向があること、また管理職等の上位職における女性の比率が少ないこと等が挙げられる。
一部の銀行では総合職・一般職のコース区分を廃止し、性別やコースにとらわれない実力本位での登用や、多様なキャリア形成を促す取組みを行っている。また、女性のキャリア形成支援プログラムや、男女ともに育児や介護と仕事を両立しながら持続的なキャリア形成を可能とする柔軟な勤務体系を導入しているほか、休暇制度の拡充、長時間労働の是正、そのための職場の理解促進に向けた意識啓発なども進めている。上位職の女性比率向上に向けても、登用目標を設定し、着実に進捗させている銀行もある。
三菱UFJ銀行でも、実力本位での登用をより一層促進すべく、総合職と一般職のコース区分を廃止したほか、マネジメントの男女の偏りの是正に向け、「女性のキャリア形成支援」や、「育児・介護・女性の健康課題との両立支援」、また「男性の育児参画による、ともに育てていくことの推進」、そして「上司・同僚の理解・意識づけ」を戦略的に実施しており、女性管理職比率も2025年3月末時点で29.2%まで高まっている。
全銀協では、男女間賃金格差解消に向けた会員行の取組みを支援すべく、会員行にアンケートを実施し、先進的な取組事例集を展開するとともに、賃金格差の要因を深掘りのうえ、冒頭説明があったとおり、アクションプランを策定・公表した。
アクションプランでは、会員行に対し、男女間賃金格差の要因分析や対応策の策定、目標設定のほか、男女間の賃金格差や採用した労働者に占める女性の比率、管理職に占める女性労働者比率などの公表を求めている。全銀協としても、今後も取組事例集を更新・展開するほか、業界全体の男女間の賃金格差等の実績について、会員へ還元し、会員行の取組みを支援していく予定である。
なお、会員各行がアクションプランに沿って着実に取組みを進めるべく、本日の理事会において申し合わせも実施した。各行において、経営トップが強い意思を持って、性別に関係なく、全ての従業員が活躍できる環境を整えていくことを期待している。
(問)
保険会社からの出向受入れに関して伺う。出向者の受入れは、比較推奨をゆがめかねないリスクや、情報漏えいのリスクといった課題が指摘されており、保険会社向けの監督指針や生命保険協会のガイドラインの改正等が検討されている。そのような中、日本生命の社員が出向先の三菱UFJ銀行から情報を不正に持ち出す事案が発生した。本件についての受止めを伺いたい。また、出向者受入れについて情報管理などに課題はあるのか、出向受入れをどうするのか、併せて業界の課題や防止策があれば伺いたい。
(答)
昨日、日本生命から、ご質問のあった事案について公表された。全銀協の会長として、個別事案に関し詳細に言及することは差し控えるが、三菱UFJ銀行としても、日本生命からの出向者による内部情報の漏えい事案に関し、詳細の確認を進めるとともに、出向者に対する業務管理やモニタリング態勢の強化について必要な検討を行って参りたいと考えている。
また、保険会社における不祥事案等を契機として、5月には改正保険業法が成立し、保険会社向けの総合的な監督指針の一部改正案が公表されている。監督指針の改正案においては、保険代理店等に対する過度の便宜供与の防止や保険代理店に対する不適切な出向の防止、態勢整備の厳格化等が示されたと認識している。
保険会社の代理店となっている銀行においては、法令や監督指針の改正の趣旨も十分に踏まえたうえで、従来の態勢や対応の見直しを図っていく必要があり、今後各行において対応が進められていくものと理解している。
三菱UFJ銀行としても、保険代理店としての自立性を確立し、お客さま本位の業務運営をさらに徹底するべく、保険会社と連携のうえで、従前から法令や監督指針の改正等を踏まえた検討を行ってきており、2026年3月末までに、すべての保険会社からの出向者の受入れを廃止する方向で検討を進めている。今後は、保険業務に精通した人材の採用により、これまで出向者が担ってきた業務を内製化するなど、必要な対応を進めて参りたいと考えている。
(問)
三菱UFJ銀行として出向受入れを廃止するという話に関連して、出向受入れはさまざまな課題が指摘されていたと思う。先ほど申しあげたような比較推奨や情報漏えいに関するリスク、三菱UFJ銀行が2026年3月に出向受入れを廃止する理由について、どの事象、例えば今回の問題を受けてやめるのかも含めて、改めて伺いたい。
(答)
先ほど申しあげたとおりではあるが、保険会社における不祥事案等を契機として改正保険業法が成立し、監督指針の改正案が公表された。そのようななか、出向元の保険会社と、今後の態勢について見直しの議論を行い、2026年3月までに出向者の受入れを廃止する方向で現在検討している。
(問)
先ほど質問した、銀行として情報管理に課題は現時点であったかないか、あるいはそれは個社に限らず、業界として銀行が出向を受け入れることに対して、そもそもリスクが内在していたのかといった点の受止めはあるか。
(答)
銀行界全体までは、現時点では申しあげられないが、個別行としての受止めを回答する。
出向を受け入れるに際して、出向元の各保険会社に対して、出向に関する契約書で出向者の守秘義務を明記している。また、出向者個人からは、着任時に機密保持に関する誓約書を受け入れており、情報の適切な取扱いの重要性を徹底するとともに、研修を継続的に実施している。加えて、情報漏えいの防止策として、情報セキュリティに関する手続を適用してきたほか、各種システムによる検知も行ってきたところである。
今回の事案について、まだ詳細は調査中であるが、私用のスマートフォンやカメラが利用されるなど、当行の情報セキュリティを回避した手口であった可能性がある。他社からの受入れ出向を含む全役職員に対し実施しているコンプライアンスの研修の内容は、情報セキュリティや顧客情報の取扱いの観点から随時見直しを行ってきているが、今後も必要な対応を検討していく。
(問)
1点目、サステナビリティ情報の有価証券報告書での開示について、時価総額が一定額未満の東証プライム上場企業は義務化を見送る方針という報道があるが、負担の重さを指摘する企業もいたなか、義務化を見送ることの受止めについて伺いたい。
2点目、先般、能動的サイバー防御法が成立した。銀行界でも対象となる企業が多いと思うが、その影響と今後の対応について伺いたい。
(答)
まず、サステナビリティ開示の件だが、開示基準に沿った情報開示はプライム上場企業の時価総額によって段階的な適用開始時期が定められている。義務化を見送るというよりは、適用開始となる時期の問題ではないかと受け止めている。先日、金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」において示された「中間論点整理(案)」では、そのうち時価総額5,000億円以上1兆円未満の企業は2029年3月期の開始を基本としつつも、国内外の動向等を注視したうえで、本年中を目途に金融庁のワーキング・グループで結論を出すとされていたところである。また、時価総額5,000億円未満の企業は、開示状況や投資家のニーズ等を踏まえ、今後検討し、数年後を目途に結論を出すとされている。
諸外国でも、従業員数や売上高などの企業規模や上場の有無に応じて、段階的な開示基準の導入が行われている。直近では、欧州において企業の負担軽減などの観点で、一部の企業への開示基準の適用を延期する措置が取られている。こうした動向を踏まえると、今申しあげた日本の対応は合理的な対応であると考えている。
サステナビリティ開示基準の導入は、グローバルでの比較可能性を確保しながら、中長期的な企業価値の評価に必要な情報を投資家に提供し、建設的な対話を促進する取組みと理解している。こうした取組みの趣旨と企業による開示に向けた実務負担のバランスをよく検討しながら、今後、開示基準の適用開始時期が定められていくものと考えている。
2点目、能動的サイバー防御に関する新法が5月に成立し、基幹インフラを担う企業は、特定重要電子計算機の事前届出とインシデントが発生した場合の報告を行うことになると認識している。
基幹インフラを担う企業が事前に重要機器の登録を行うことで、登録した機器に関して、政府が掴んだ脆弱性等の情報の提供を受けることができ、いわゆる「ゼロデイ攻撃」に備えることができる。また、インシデントが発生した際の届出により、必要な場合には警察等による攻撃元への無害化措置等も行われるなど、近年その脅威が高まるサイバー攻撃に対し、官民が連携し対応を強化することが期待されていると受け止めている。
金融分野も、基幹インフラとして機器の登録やインシデント報告等が求められるようになるが、新法の施行に向け7月1日に内閣官房に設置された国家サイバー統括室や関係省庁とも連携しながら、銀行界としての具体的な対応の検討を進めて参りたい。
銀行は、国民生活や経済活動における重要な基盤のひとつであり、サイバーセキュリティへの取組強化が必要不可欠である。昨年10月に金融庁から公表された、「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」も踏まえ、継続的に対策を積み上げていくことが重要であると考えている。
金融ISACによる専門性の高い情報共有活動なども活用し、業界としての知見・情報の共有や、各行の取組みの後押しを行い、銀行界全体の態勢の底上げに一層努めて参りたい。
(問)
1点目は参院選について、目下、各社の報道で、与党側の過半数割れもあり得るのではないかという非常に厳しい情勢分析も出ている。仮にそうなった場合、与党は減税などを主張する野党との間で政策調整等を行っていくことになり、財政への不安が広がってくると思う。減税等の積極財政の利点と懸念される点を、会長の立場からお聞かせいただきたい。
2点目は来週行われる日本銀行の金融政策決定会合についてである。足元で物価は上がり続けているが、さまざまな懸念材料がある。日本銀行は、引き続き、物価安定目標の達成の確度が高まれば利上げすると常々言っているが、会長から見て、今、利上げを阻んでいる最大の障害は何と考えるか。
(答)
1点目に対しては、仮定であり、今の段階でコメントすることは難しいが、銀行界として政策について期待していることを説明させていただくと、短期的には、足元で家計が直面する物価高への対応を通じて、景気回復の持続をより確実なものとすることが重要だと思っている。
ご質問いただいたような財政悪化の懸念もあり、そうしたなかで社会保障の持続可能性の確保や、骨太方針にも堅持されている財政健全化といった従来からの中長期的な論点もしっかり検討していただきたいと思っている。
また、経済政策全体としては、需要サイドだけではなく、企業を中心とした日本経済の供給力の押上げに資する政策についても検討いただきたいと思っている。
次に、日本銀行の政策についても、全銀協会長としてではなく、あくまで個人の見解として申しあげる。まず、植田総裁は、経済や物価の基調的な動きが再び上昇基調に戻る確度が高まっていくことに応じて利上げを行う考え方を示している。直近では、政策を判断するにはもう少し情報が必要であり、基調的なインフレの強さや、米国の関税政策の影響、食品インフレの動向などを注視していると発言されている。こうした発言を踏まえると、米国の関税政策などに起因する先行き不透明感が後退し、食料品などの一時的なコストプッシュではない、基調的なインフレ率の上昇に必要となる物価と賃金の好循環が確認されれば、利上げを実施できる環境が整ったと判断されるのではないかと考えている。
足元の経済状況は、国内では春闘が昨年を上回る高い賃上げ率となり、物価と賃金の好循環に向けた着実な前進が見られる一方で、一旦8月1日までは相互関税の上乗せ部分の発動が先送りされたとはいえ、米国との通商関税交渉の行方や、さらには中東情勢など、不確実性は引き続き高い状況にあると思う。こうしたなかで、日本銀行がこれまで同様、内外の経済・物価動向を丁寧に見極めながら、判断していくものと思っている。
(問)
1点目はAIについて。銀行業界でAIを活用する動きが広がっている。会長から見て、期待、リスクに関する考えを聞かせてほしい。
2点目は自然災害への対応について。ここ1か月ほどトカラ列島の近海で地震が相次いでいることもあり、災害への関心が高まっている。東日本大震災など、過去の災害の経験や教訓なども踏まえて、銀行業界としてこうした自然災害にどのように対応していくか。また、個々の銀行の事業継続計画(BCP)の見直しや被災者の支援などについて、方針や考えを伺いたい。
(答)
まず、AIについてであるが、生成AIをはじめとした近年のテクノロジーの発展は、銀行界を含む産業や国民生活のさまざまな場面において、効率性や利便性を大きく向上させ、国民生活や経済の発展に大きく寄与するものと見込まれている。銀行界においても、不正検知や市場分析・予測、マーケティングなど、従来型のAIの利活用に加えて、生成AIの普及により、一層の業務効率化や顧客サービスの向上に寄与するユースケース等が登場しつつある。
各行においては、自社の経営戦略、顧客ニーズ等を踏まえて、最適なAIの開発・運用・管理を行っていくために、日々変化するトレンドのキャッチアップを可能とする体制整備や、経営陣から担当者レベルに至るまで、知見と経験の蓄積がさらに重要になっている状況だと思う。
一方、生成AIの推論に対する説明の難しさ、情報セキュリティやサイバーセキュリティ上のリスク、生成AIが誤った回答を提示するリスク、金融犯罪に悪用されるリスクなど、さまざまな課題への対応に加えて、国際的なルールメイキングへの参画等も不可欠な状況になってきている。
こうした課題を克服し、AIがもたらすメリットを最大限享受するために、当局との連携や事業者との対話も行いながら、銀行界として、AIの利活用に伴うリスクに適切に対処し、新たな金融サービスの創出や業務効率化を積極的に実現していくことが重要だと考えている。
この3月には金融庁からAIディスカッションペーパーが公表されたほか、6月には第1回のAI官民フォーラムが開催されている。今後、ディスカッションペーパーに記載されているような各種論点等についての議論が進められる予定にあると認識しているが、AIがもたらす可能性、課題や、技術革新に取り残されるリスクも踏まえ、銀行界としてもしっかり対応して参りたい。
2問目であるが、まず、先月から断続的に発生しているトカラ列島近海での地震について、被害に遭われた方に加え、避難を余儀なくされている住民の方も多くいらっしゃると認識しており、心からお見舞いを申しあげる。
今回の地震を受けて、全銀協では、7月4日に手形交換に関する特別措置や、個人信用情報上の不利益な取扱いを生じないようにすることのほか、今回の地震が災害救助法の適用対象となったことも踏まえて、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」に沿った対応を行うことを会員行に周知・要請を行ったところである。
ご質問のとおり、過去の大規模災害の経験も踏まえ、銀行界としてはお客さまに対する資金繰りをはじめとした支援に取り組むことに加えて、銀行自身も社会経済に不可欠な金融インフラとして業務継続を確保できるよう、BCPを策定し、平時から準備に万全を期していくことが重要だと考えている。
銀行界のBCPについてであるが、全ての銀行がBCPを策定済みであり、定期的に、あるいは必要に応じて見直しを行い、体制整備を進めてきたと認識している。
また、全銀協が呼びかけて、各行で年に2回、震災や水害を想定した訓練を実施しており、その結果等を会員行に情報還元することで、BCP対応の高度化を促しているところである。
災害発生時には、BCPを踏まえて業務継続を確保し、被災者支援に全力を尽くしていくとともに、必要であれば今後も定期的なBCPの見直しを継続していきたいと思っている。
(問)
店舗運営のあり方についての考えを伺う。大手行では三井住友銀行やみずほ銀行が、Olive LOUNGEやアトリエというネーミングをつけて、従来型の店舗とは全く異なるデザインや考え方を採用した店舗を展開している。日本においても金利が上昇する局面になって、お客さまとのタッチポイントという意味での店舗の重要性が再認識されているということがベースにあると思うが、店舗で要らない機能は何かという部分と、逆に追加していきたい機能は何か。また、金融包摂の観点から、なくしてはならない店舗の重要性はどこにあるとお考えか。
(答)
店舗戦略をいろいろご紹介いただいたが、各行のビジネス戦略そのもので、全銀協として方向性を示すものではないと承知しており、その前提でコメントさせていただく。
インターネット・バンキングの普及やキャッシュレス化の進展等を背景に、銀行店舗への来店客数は減少を続けている。こうしたなかで、私どもとしても来店が必要な手続きを見直して、なるべくオンラインで完結する取引を増やすなど、デジタル技術を活用し利便性の高いサービスの提供を進めるとともに、店舗の統廃合や軽装化を進めてきたというのがこれまでの大きな流れだと思う。
他方で、足元、金利環境の変化等により、資産運用への関心の高まりから店舗での相談ニーズも拡大しており、新規出店の動きもみられる状況だと認識をしている。
具体的には、社会環境やお客さまニーズの変化を受けて、窓口での事務手続きを中心とした従来の駅前立地の店舗だけではなく、地域の特性に応じたお客さまの生活動線にあるショッピングモール内への店舗の出店、また相談対応に特化した店舗出店など、従来とは異なる店舗ネットワークが構築される動きもみられている。
対面でのご提案やお手続きが必要となる場合もあり、そしてご指摘いただいたようにデジタルに不慣れな高齢のお客さまのご来店ニーズもあることから、銀行店舗はお客さまや地域との信頼を築いていく大切な接点であるということに変わりはない。
そうしたなか、各行が変化し続ける社会環境やお客さまのニーズに合わせ、それぞれ特色のある店舗戦略を検討し、銀行店舗での対面コミュニケーションを通じたサービスの提供や、デジタル技術の活用等の新しいソリューションの展開に磨きをかけ続けることで、お客さまの満足度向上に努めていくことが銀行にとって重要であると考えている。
(問)
6月の株主総会シーズンが終わった。いろいろな傾向があったと思うが、会社提案の取締役選任議案が否決されるケースが増えた。また、取締役の賛成比率も恒常的に下がってきている。株主の圧力が強まっていると思うが、ガバナンスの向上に向けて必要との意見もある一方で、欧米と比べて日本は株主の権利が強過ぎるという指摘もある。株主の権利と、経営者も含めたその他のステークホルダーのバランスについて、会長の考えを伺いたい。
(答)
ご質問にあったとおり、今年開催された株主総会では株主提案が増加しており、そのうち可決される事例も増加する傾向が見られている。株主提案権に関して、日本の制度は、株主提案を行い得る議決権要件や会社側による株主提案への制限等の面で、米国や欧州主要国に対し緩和的な制度であるとの指摘もあり、提案が増加する一因となっている可能性がある。こうした点を踏まえて、4月からスタートした会社法改正に向けた法制審議会の議論において、株主提案における議決権数の要件見直しが検討されていると認識している。
また、株主とその他のステークホルダーとのバランスだが、個人の見解としてお答えすると、これはコーポレートガバナンス・コードの原則に記載のとおり、上場企業には、株主を含む多様なステークホルダーが数多く存在しており、バランスというよりは、全てのステークホルダーとの適切な協働や対話を通じて、自らの持続的な成長と中長期的な企業価値の創出を目指していくことが経営の役割だと思っている。