会長・副会長および委員会担当 [82 KB]
2026年4月 1日
松本専務理事報告
事務局から1点ご報告申しあげる。
本日付で、みずほ銀行の加藤頭取が全銀協会長に選任された。新体制における会長、副会長はお手元の資料のとおりである。本日はこのほかに、加藤会長の略歴をお配りしている。
会長記者会見の模様
みずほ銀行の加藤です。
このたび、半沢前会長からバトンを引き継ぎ、全国銀行協会の会長を務めることになった。本日お集まりのメディアの皆さまをはじめ、関係各位のご支援を賜りながら、この大役を全うすべく全力を尽くしていく。どうぞよろしくお願い申しあげる。
就任に当たり、まずこの場を借りて、半沢前会長に心より御礼を申しあげる。昨年度は、海外の政策動向への対応や、地政学リスクの高まりなど、グローバルな環境変化が続き、先行きの見通しが一段と難しい1年であった。そのような環境のもと、前会長には、喫緊の課題への対応に加えて、「中長期的な金融仲介の在り方検討WG」を立ち上げ、日本経済の持続的成長に向けて金融仲介機能に期待される役割を多くの関係者とともに議論いただいた。さらに「資金決済システムの将来像に関するスタディグループ」では、わが国の決済基盤を支える全銀システムについて、将来のイノベーション創出や国際競争力にも資する基盤を目指した構想を取りまとめていただいた。いずれも、経済・社会構造の変化を見据え、銀行界として中長期的に正面から取り組むべき骨太なテーマであり、銀行界、金融界の発展に向けて力強く牽引いただいたことに、改めて深い敬意と感謝を申しあげる。
さて、ここからは、わが国の銀行界を取り巻く環境について申しあげる。世界を取り巻く環境は、ご案内のとおり極めて不透明である。特に、足元の中東情勢をはじめとする地政学リスクに加え、インフレ動向、金融政策の変化、サプライチェーンの再編など、複数の不確実性が同時に存在している状況である。特に中東情勢については、長期化するリスクも相応にあり、世界経済に大きな影響を及ぼすことが懸念されている。こうした中で、企業、家計ともに意思決定が難しい局面が続いている。
一方で、こうしたなかにおいても、日本経済は、着実に力強さを取り戻しつつあると私は実感している。例えば、企業の稼ぐ力は過去最高水準に達し、売上高経常利益率は8%台を記録している。また、2025年のM&A件数は5,000件を超え、企業経営者の皆さまのマインドも確実に前向きへと転じている。さらに、2025年第4四半期での家計の金融資産は2,350兆円に達し、資産運用立国の実現に向けて、預貯金から投資へと、資金の流れも大きく変化しつつある。家計資産の半分以上が預貯金であったところが、足元ではその割合が半分を下回っている。NISAの拡充や賃上げの進展も相まって、投資マインドが高まり、日本経済全体が順回転を始めていると考えている。
しかしながら、失われた30年でわが国が失ったものは決して小さくない。名目GDPは世界第5位に後退したとも言われており、グローバル競争力の面では依然として課題が残っている。人口減少下での生産性向上、地域経済の持続性、気候変動対応等を含む社会課題、国際情勢の急変に備えた経済安全保障など、挑戦すべきテーマは多岐にわたる。だから今こそ、わが国が有する潜在力を最大限に発揮し、世界のなかで存在感を高めていくことが求められている。その実現に向け、私たち金融界が果たすことができる役割は極めて大きいと考える。
そこで、今年度の全国銀行協会の活動方針は、「日本経済の潜在力開放に向け、変革への挑戦を力強く後押しする1年」と定めた。まだまだ表に出てきていない日本の力を、しっかりと金融の力で成長軌道に乗せていきたい、後押しをしていきたいと考えている。
今年度は、今申しあげた方針のもと、三つの柱を掲げ、取組みを進めて参る。第1の柱は、「未来につながる成長エコシステムの構築」である。産業の活力と家計の豊かさを両輪とした好循環を、より確かなものにしていく。具体的には、政府が進める産業政策や成長戦略とも連携し、銀行自身の目利き力、リスクテイク力を高めるとともに、多様な金融仲介プレイヤーとの協働を通じ、あるいは分野によっては官民が連携したハイブリッドで対応していきながら、成長投資やスタートアップへの長期的なリスクマネーを供給できる体制を強化していく。
また、事業者の皆さまとの対話を一層深め、事業承継、事業再生、サプライチェーンの強靭化など、地域に根差した企業の変革を伴走支援していく。今年5月には、事業性融資推進法、いわゆる企業価値担保権制度が施行となる。こうした制度等の活用もしながら、担保・保証に過度に依存するのではなく、技術力、知的財産、人的資本、販路といった無形資産も含めた事業性評価を磨き、企業価値向上につながる金融仲介の質を高めていく。
さらに人生100年時代を見据え、2世代、3世代にわたる資産形成を支援する商品・サービスの拡充や、金融経済教育の推進にも積極的に取り組む。年齢や経験、デジタル環境への慣れなどが多様であることを前提に、分かりやすい情報提供と丁寧なサポートを重ね、安心して資産形成に取り組める環境整備を後押しする。家計の豊かさが産業の成長に還元される好循環を生み出し、日本経済の新たな成長ステージへの移行を後押ししていく。
第2の柱は、「信頼性と利便性を両立する金融インフラの革新と実装」である。デジタライゼーションの進展やAIの社会実装、ステーブルコインやトークン化預金など、金融の新たな潮流が世界的に進展している。現行の全銀システムは、これまでずっと堅牢な決済基盤を守ってきたという自負はある。だが、将来のイノベーションの創出、国際競争力の強化、またステーブルコインなど、決済手段の多様化等を踏まえると、しっかりとお客さまのお役に立てる基盤であり続けるためには、自らが変わっていく、進化していくことも重要であると考えている。
今年度は、その次世代の決済システム将来像について、具体的な検討を進めて参りたいと考えている。決済は社会の血流であり、その高度化は企業活動の効率と国民生活の利便性を大きく左右する。銀行界として、信頼性を大前提に、よりオープンで、拡張性のある基盤の実現に向けて議論を進めていく。
また、2027年3月には、手形・小切手の電子交換が廃止となる。5年前には年間で約4,000万枚が流通していたが、足元2025年では1,400万枚まで、およそ65%減少が進んでいる。とはいえ、地域・業種・業態などに偏りがあることも確認をしている。紙の決済手段から電子的手段への移行は、事務負担やコスト、紛失等のリスクを低減し、企業の資金繰り改善と生産性向上にも資する重要な改革である。お客さまの実務に影響が及ぶ点を十分に踏まえ、利用者への丁寧な周知と支援を行い、代替手段へのスムーズな移行が行われることが重要なテーマであると考えている。金融機関自身はもとより、商工団体、官公庁などの関係者とも連携しながら着実に進めていく。併せて、税・公金収納を含む社会全体の手続のデジタル化にも関係者と連携して取り組み、国民生活の利便性向上と社会の生産性向上に貢献していく。
第3の柱は、「金融界の社会的責務を果たす健全かつ強靭な金融システムの共創」である。変化の時代であっても、揺るぎない信頼性と安心感を提供することこそ、銀行に求められる根幹の部分である。デジタル化の進展の裏で、特殊詐欺をはじめとする金融犯罪は巧妙化し、被害額は過去最悪を更新し続けている。また、ランサムウェア、標的型攻撃など、サイバー攻撃によりサプライチェーンに波及するなど、近年サイバーセキュリティのリスクも拡大している。こうした脅威は、個々の金融機関だけでなく、金融界一体となり、さらには官民の連携を深めながら、未然防止と迅速な対応に努めていく。またAML/CFTをはじめ、国際的に求められる対応を着実に進め、わが国金融システムへの信認を一層高めていく。これらは競争領域ではなく、非競争領域として共に創る共創を通じて、社会的責任を果たし、お客さま、社会からの信頼に応え続ける金融界を目指す。
以上、三つの柱について申しあげたが、これらはそれぞれが独立しているのではなく、相互に深く関連している。強靭な金融システムという土台があってこそ、金融インフラの革新が可能となり、革新的なインフラの上でこそ、成長エコシステムは力強く回転する。その循環の中心にあるのが、常に信頼である。お客さま、社会からの信頼に応え続けることを最優先に、変革への挑戦を着実に前に進めていく。
最後に、改めて基本方針に込めた思いを申しあげる。今年度は、日本経済が新たな成長ステージへと踏み出す、極めて重要な転換点であると考えている。日本には、企業の成長意欲、家計の資産、地域に眠る知恵と技術、そして次の世代の可能性といった、数多くの潜在力がある。その潜在力を開放するため、銀行界が変化をおそれず、しかし、信頼の土台を決して揺るがせることなく、挑戦する皆さまに寄り添い続けることが、今まさに求められていると確信している。
こうした取組みを通じて、金融が果たすべき役割を全うし、日本の経済を押し上げていきたい。私自身、全銀協会長として銀行界の先頭に立ち、その責務を全うしていくので、どうかご支援、ご協力のほど心よりお願い申しあげる。
(問)
1点目、今回、全銀協会長就任は2023年に続いて2回目だが、前回就任時と今回を比べて、銀行業界を取り巻く環境はどのように変化したと思っているか。
2点目は、政府の17分野への重点投資の関係で、全銀協としても危機管理投資や成長投資を柱に据えて金融界が役割を果たすと言及されていた。全銀協としては具体的にどのように役割を果たしていくのか。
(答)
まず1点目の2023年との事業環境の違いであるが、大きく言って三つある。
一つ目は、日本経済の状況である。前回の2023年は、政策金利がマイナス0.1%の低金利環境で、コロナからちょうど出口を模索する時期であった。それに対して、今回は足元の政策金利は0.75%で、失われた30年から金利のある世界に移ってきた。今回は金利が定着した世界、いわゆる経済が順回転を始めている世界になってきたと考えている。
そういった経済環境においては、銀行界では底堅く前向きな資金需要を背景に貸出金が増加し、資金収支の改善がみられるところである。また、2026年度は、高市政権の17の戦略分野の具体化が進展することが予想され、国の掲げる17の戦略分野は国内の投資を促す政策であるので、我々としてもしっかりと支えていきたい。
二つ目は、AIの進展である。前回と比べて格段に技術が進捗しており、おそらく今年度は社会実装が進むのではないかと見ている。銀行界においても、報告書や稟議書作成の自動化、不正検知の強化、コールセンター業務の効率化など、社内業務の効率化や高度化においては、すでにAIの利活用は広がっている。今後は、コンサルティングなど、いわゆる対顧サービスでの活用も進むと思われる。AI活用が進むなかで、ハルシネーションや情報漏えい、サイバーセキュリティなど、リスクを踏まえたAIガバナンスも重要になってくる。
三つ目は、地政学リスクの高まりである。前回の2023年もロシア・ウクライナ戦争や米中対立は始まっていたが、今まさに足元にある中東情勢は非常に不透明感が高まっている。今回の不透明感のなかで最大の懸念はエネルギー価格の急騰である。エネルギー自給率の低い日本にとって、エネルギー価格の上昇は、直接的な経済の下押し圧力になる。
こうしたなかで銀行に求められることは、成長投資、産業革新といった経済成長を支えていく、しっかりと資金需要に対応して中長期的なリスクマネーを提供できるようなエコシステムを作っていくことだと思っている。
2点目の政府の政策に対して銀行の果たす役割については、政府として国内投資を促す施策を行うので、銀行界としては日本産業のさらなる成長を支えていきたいと考えている。成長戦略の実現のためには、銀行自身のリスクテイク力を高めることは当然だが、それに加えて、多様なリスクアペタイトを持つ資金の出し手を呼び込むことも不可欠だと思っている。また、分野によっては官民連携の資金供給も必要になると考えている。
全銀協では、2025年度、「中長期的な金融仲介の在り方検討WG」を8回開催し、3月に報告書を公表した。成長投資の実現に向けて、金融仲介プレイヤーに期待される役割は何なのか、銀行がどのような取組みを行う必要があるのかについて、銀行以外の業態も参加して活発な議論を行った。
今年度については、同WGで議論した大きなビジョン、課題を踏まえつつ、中長期の成長資金の担い手不足、あるいは国内資金需要の量的拡大、質的変化に対応するために、より実務的な観点を入れながら、長期デットファイナンスのあり方を検討していきたい。
(問)
イラン情勢の関係で伺いたい。日々の取引先とのコミュニケーションを通じて、原油高や、関連製品の値上がり等ある中、どのような影響が出ていると考えているか。全銀協として資金繰り等に影響が出ている企業等に対してはどのように対応していくのか。
(答)
ホルムズ海峡を含む中東で、緊張感の高まりが続いており、予断を許さない状況が続いている。すでに一部の企業からは、原材料や部品調達への支障が出ているという声も聞こえている。
今日も、株価が上がったり、長期金利が下がったり、為替も円高に一部動いたりということで、非常にボラタイルな環境になっている。これは短期で終わるのか、長期で終わるのかと、様々な記事が出るたびに動くところだが、仮にこの状況が長期に続くと、世界経済に対して非常に深刻な影響があると大変懸念している。
実際に、日本への影響というのはエネルギー価格の急騰である。特に原油・天然ガスの価格上昇は電力、ガス料金、物流コストの上昇を招き、家計や企業の収益を圧迫する。
内閣府のマクロモデルにもとづくと、WTI原油価格が100ドルに上昇した場合、日本の物価を0.6%押し上げ、実質GDPを0.2%押し下げ、企業収益を3.6%押し下げるという数字が試算されている。
特に影響が大きい業種は、原油を原材料あるいは燃料として用いる産業であり、ガソリン、電気、ガス、食品、日用品、幅広い分野の値上がりということで、非常に広範囲にわたる影響が生じると思っている。
金融市場についても、非常にボラティリティが高くなっている。為替については、今日は若干円高の方に振れたが、緊迫化開始時よりは円安になっており、有事のドル買いということと、エネルギー自給率が低く、貿易収支が悪化することが懸念されている。
また、原油高や円安を背景に、インフレ率の上昇が懸念されており、長期金利は上昇している。先行きに備えた手元流動性を確保するお客さまも一部見受けられる。
今申しあげたように、エネルギーあるいは素材産業にとどまらず、製造業全体に段階的に波及する可能性があり、仮にこれが長期になってきた場合、広範囲にわたってお客さまの事業収益や資金繰りにも影響が及ぶという可能性を感じている。
全銀協の取組みとしては、3月27日に、現下の情勢を踏まえた事業者への資金需要や経営課題に対して、柔軟かつ積極的に対応することについて申し合わせを実施しており、会員行に示達した。
銀行界としては、各行において本部および現場で必要な態勢を構築したうえで、お客さまの資金繰り支援に万全を期すとともに、資源価格や為替変動に対するリスクヘッジ手段も提供する等、お客さまの経営の安定に資する支援をしっかり取り組んで参りたい。
(問)
先ほど会長から、中東情勢の不透明感に対する言及があった一方で、物価の上昇基調は続いており、日本銀行の金融政策運営は大変難しい局面になっていると感じている。市場では4月の利上げ観測も出ているが、会長は日本銀行の金融政策に対してどういうことを期待しているか。
(答)
金融政策は日本銀行の専管事項であり、個人的な見解としてお答えする。
2024年にマイナス金利が解除になり、段階的に金融政策は正常化を進めてきた。今後も経済・物価情勢の改善に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく方針であると基本的には認識している。
2025年の12月に、政策金利を0.75%に引き上げており、30年ぶりの高水準だが、それでも政策金利から消費者物価の上昇率を引いた、いわゆる実質金利においてはマイナス1%台とまだ低い水準にある。そうした意味で、金融環境は依然緩和的な状態にあり、利上げ基調は続いていると認識している。
どこまで、どのように、どれぐらいの回数でいくかということはなかなか難しいが、一つは、景気に対して緩和的でも引き締め的でもない、いわゆる中立金利については、日本銀行からは1.1%から2.5%と幅を持って示されているので、徐々に利上げを進めながら、いわゆるターミナルレートは、経済や物価の反応を確認しながら探っていくのではないかと考えている。
ただ、足元の中東情勢の混乱が長期化した場合については、経済に対して懸念が生じるので、そういったことも踏まえながら、金融政策を判断するのではないかと考えている。
政策金利を引き上げると、日本経済に様々な影響が生じる。家計では、預金利息は増えるが、住宅ローンの利用者にとっては金利負担が重くなる。あるいは企業にとっては資金調達コストの上昇につながる。
日本銀行に対しては、経済への影響を丁寧に見極めながら、適切な金融政策の運営を期待している。
(問)
今日発表された日本銀行短観においては、大企業製造業の業況判断DIは4期連続で改善基調だったが、先行きについては製造業・非製造業ともにマイナスを見込んでいる業種も多かった。短観の判断と中東情勢が今後どう影響していくのかにつき伺いたい。
また、足元で地方銀行同士の統合に向けた話が先週もいくつか出てきている。少子高齢化が進展していくなかで、今後も再編はやむなしというところも出てくるかと思うが、今後1年、あるいは将来に向けての見通しを伺いたい。
(答)
まずは短観については、前回の2025年12月の調査と比較して、総じて横ばいから小幅な改善で、事業業績、企業業績ないし投資計画の底堅さは示されたと思う。製造業の業況判断のDIも、大企業、中堅企業がそれぞれ1ポイント改善、中小企業は横ばい、機械製造業などにおいても改善がある。
非製造業では、大企業で横ばいだが、36ポイントと非常に高い水準を維持している。ただ、宿泊や飲食サービスでは中堅・中小企業のDIが低下している。これは中東情勢ではなく、中国からの旅行者の数の減少などが影響したと見ている。先行きについては、製造業・非製造業について、中東情勢の混乱による原油高、それに伴う原材料高の影響、これを一部織り込むようなかたちでやや悪化した結果になっている。
設備投資計画については、前年度対比プラス7.9%の堅調な推移が継続している。昨年度初に米国の関税影響に関する懸念があったが、省人・省力化投資、データセンター、都市開発関連の投資需要は大変旺盛で、堅調に推移している。2026年の計画についても前年度対比プラス1.3%で、まだ計画が決まっていないなかにおいては堅調な数字だと思う。ただ、今回は3月半ばを回収期日とする短観であり、その後の中東情勢を織り込むと、下振れは避けられず、不確実性が一層高まっているのではないかと認識している。
続いて、地域金融機関については、従来から地域経済を支え、重要かつ広範囲の役割を果たすことが期待されている。事業環境が厳しいなかで、この役割をどうやって持続的に果たしていくことができるのかが課題になっていると認識している。
日本銀行が公表している2026年1月の地域経済報告では、幅広い地域で回復の動きが見られ、地域金融機関も金利の上昇等により収益が改善傾向にある。しかしながら、構造的には人口減少、少子高齢化による地域経済の縮小、預金競争の高まりという厳しい事業環境に直面している。
そうしたなか、2025年12月に金融庁が地域金融力強化プランを取りまとめており、地域金融機関は前向きな投資への資金供給に加え、M&A、事業承継など非金融での支援やまちづくりへの参画などに取り組むことが望ましいとされている。事業環境が厳しいなか、地域経済を支えることについて、従来からいろいろ取り組まれている。引き続き、その役割を果たすため、地域金融機関の合従連衡が進んでいることも、この流れの一環だと考えている。
全銀協としては、しっかりと本業に力を注いでいただくために環境づくりをしていく、あるいはサポートするということである。例えば、単独での対応が難しいサイバーセキュリティや、金融犯罪対策での分野での共助など、地域金融機関が期待される役割を果たすための後押しをしていきたい。
(問)
金融仲介機能について伺う。冒頭でも加藤会長から、銀行自身のリスクテイク力とか、金融仲介の質を高めるという話があった。金利上昇局面に入ってくるなかで、預金の獲得競争とか、調達コストも上昇が意識されるようになってきていると思うが、こういう時代が変わってきているなかで、改めて金融仲介機能を維持し、強化するうえで、銀行はどのように変わっていくべきなのか、ALM運営や、貸出姿勢、金利転嫁のあり方など、考えを伺いたい。
(答)
預金の増減については、個別金融機関によって状況は異なるが、全体では個人預金については、貯蓄から投資に資金が流れているということもある。あるいは、法人についても、景気の好循環を背景に、成長投資とか運転資金に手元資金が使われている。もちろん、中東情勢を受けて現預金を手厚くするという動きも一部あるが、基本的には、成長投資に流れているので、預金が減る面もある。預金が大事になってくる一方で、集まりにくくもなっていくということだと思う。
銀行は信用創造をなりわいにしており、その原資は預金である。預金が大幅に減少すると、信用創造機能や流動性リスク管理に影響が生じかねないので、預金の減少は大変重要な論点である。
ただ、足元で大きな問題になっているわけではない。必要な成長投資に銀行がお金を出せないということは生じておらず、貸出残高は約650兆円まで増加している。今のところは、しっかりと企業の資金需要に応えているのではないかと思う。
一方で、今後、高市政権の17の成長分野が具体化していくと、資金ニーズはより一層高まってくる。
そのような背景のなかで、銀行が取り組むべきことは、まずはしっかりと銀行自身のリスクテイク力を高めることが一つだと思う。加えて、多様なリスクアペタイトを持つ資金の出し手の方々と連携する、あるいは官民でしっかり連携することが必要だと思っている。例えば、リスクテイク力を高めるということについては、今年5月からスタートする企業価値担保権を活用しながら、有形資産に乏しいスタートアップに支援を行うというような、様々なリスクを取りにいくことが一例である。
一方で、しっかりと外から資金を取ってくるという意味でいうと、他の金融仲介プレイヤーと連携することも大事だと思っており、直接融資をする仲間を増やすシンジケートローンということもあるだろうし、証券化といったところにもしっかりと他の金融仲介プレイヤーと連携しながら取り組むことが必要だと思っている。官民連携でいうと、GX支援もハイブリッドでの取組みの一例である。
金融機関が資金ニーズにしっかり応えていくために、様々なかたちで能力を高めながら、他のプレイヤーとも連携していくことが大切だと認識している。
そのなかで全銀協としては、「中長期的な金融仲介の在り方検討WG」において、2025年度は大きなビジョン・テーマを議論した。今年度はしっかりと実務について議論をしながら、よりあるべきかたちに近づけるように、業界としてのコンセンサスを得ることに取り組みたい。
(問)
一つは不動産融資について。年末でみると不動産業向け融資残高が前年同月比8%と記録的な伸びを示した。不動産価格の上昇は激しく、バブルといってよい状況になりつつあるかと思う。金融機関の規律は守られているのか。また、それに対して全銀協は何をするのか。一部の地銀が首都圏に出向いたり、不動産仲介に近い事業を行うケースも見受けられるが、どう考えるか。
(答)
足元、不動産価格の上昇が続いている。例えば都心部では旺盛な実需もあり、円安などを背景として海外投資家によるインバウンド投資、建築資材、人件費の高騰という複数の要因が組み合わさった結果、不動産の価格が上昇している。これが8%の上昇の一つの原因になっていると考えている。
一方、80年代から90年代のバブルと比較すると、当時は全国の至る所で地価が上昇し、住宅地や商業地の地価は数年で2倍から3倍になるなど、上昇幅も非常に高かった。足元で不動産価格が上がっている要因の一つは、建材コストが上がっていることであり、全国的ではなく都心が中心で、その価格も2倍、3倍にはなっていない。こういう意味で、確かに加熱感はあるものの、バブルのときと比べるとそこまでの加熱感はなく、現状、不動産融資が金融システム全体に影響を及ぼすほどの状態ではないと考えている。
ただ、今後の動向をしっかり見ていく必要がある。一部の地域や物件においては非常に価格が上昇している。過去の経験を踏まえ、基本的には各行でリスク管理の高度化はすでに実施しているので、慎重な与信判断を継続していくのが一番大事だと思う。また、各行ではストレステストはしっかりと実施しており、自己資本と引当ては十分に確保されている。したがって、今市場の急変が仮にあったとしても、銀行経営の健全性が維持できるように準備されていると認識している。
ただし、今後、金利上昇が続く、あるいはその影響から例えば所有物件を売却する動きが急速に増加するということが起これば、想定以上の不動産価値の急落や、他の市場への影響に及ぶ可能性がある。まずは動向を注視しながら、各行がしっかりと取り組み、そういった事象が仮に起これば、迅速かつ適切な対応をしていく必要がある。しっかり状況を注視していくことが必要である。
(問)
二つ目は給付付き税額控除について。政府で制度設計が行われているところだが、この前提として金融資産、あるいは資産の把握が必要になってくると思う。マイナンバーに合わせて預金を含む金融資産の開示に前向きに取り組む考えはあるか。
(答)
足元で給付付き税額控除が議論されていることは承知している。消費税減税と比べ、家計の負担を緩和しながら、所得に応じて手取りの増加を必要なところにしっかりと届けられる重要な政策である。現在、社会保障国民会議のもとで、制度設計に向けた議論が進められており、金融資産をどこまで紐付けるかというところも含めて、今後様々な議論がなされていくものと認識している。
給付の前提となるのは、マイナンバーカードがしっかり普及し、銀行口座とマイナンバーの紐付けが進むことである。仮に数千万件規模の給付が実施される場合、銀行界では短期間に多くの事務処理が集中し、システム容量やオペレーション面で相応の負担が生じることも想定される。金融資産をいかに把握するかも含め、現在政府内で制度設計に向け議論中であり、実現にあたっては、様々な課題も多いと認識している。
円滑かつ着実に給付できる体制を整えることが銀行の役目だと考えているので、今後も政府や関係省庁と緊密に連携しながら、議論に応じて必要な準備をしていきたい。
(問)
従来から、銀行界は金融資産としての預金の開示には非常に消極的である。ただし、それがなければ給付付き税額控除は理想的なものにはならない。要するに資産が把握できなければ、資産があるのに給付を受けられるという制度になってしまう。そこを協力する意味で、全銀協はどういう対応を取るのか。銀行界が拒否すればこれはできない。
(答)
銀行界としては、政府における議論を踏まえ、それに応じて必要となる準備・検討を進めていく。
(問)
5月以降、企業価値担保権を活用した融資が実行できるようになる。制度に対する全銀協会長としての期待、制度の推進や円滑な実行に向けた全銀協としての支援策について伺いたい。
(答)
企業価値担保権制度が5月にスタートすることから、活用について考えている。有形資産に乏しいスタートアップ、あるいは経営者保証により思い切った事業展開を躊躇される企業へ、事業の将来性にもとづく融資という新しい選択肢を提供できる制度である。特にスタートアップに対して、企業価値担保権を設定し、期中モニタリングを行い、事業計画あるいは将来キャッシュフローの見通し、それらの蓋然性を、適切に検証する機会がこれまで以上に増える。制度が始まることは非常に良いことだと思う。また、経営環境の変化を早期に察知できるようになり、銀行による必要な支援もタイムリーに届けられる。事業者とコミュニケーションがしっかりできることは、企業価値担保権活用の大きなメリットである。
全銀協では、2025年9月、活用に向けたポイントを公表し、各行において制度開始に向けた準備を進めているところである。また、金融庁も積極的に勉強会を開催しており、昨年度は10回開催された。
ただし、施行前ということもあり、制度そのものの認知度がまだ低く、帝国データバンクのアンケートによると、「名前を聞いたことがあるが制度の内容は知らない」という回答が約半数を占めている。当制度のより円滑な活用促進に向けて、一層の周知と徹底、理解醸成が必要である。全銀協としては、活用状況をフォローするとともに、セミナー開催などを通じ、積極的な広報周知活動に努めていく。
(問)
「良いM&Aとは何か」という質問をしたい。経済産業省がM&A指針を作ってから時間が経ち、東証の号令もあって、日本はM&Aの件数が大幅に増えている。一方、足元では、「日本は株主資本主義に寄り過ぎているのではないか」「アクティビスト天国」という声も聞かれる。経済産業省も指針の見直しを検討しており、これまでと逆の方向に向かっていく可能性もあると思う。銀行はM&Aに対して、デットの供給を通じて、そこにガバナンスを効かせるかたちで目利き力を提供していくという機能を持っている。良いM&Aとは何なのかについて見解を伺いたい。
(答)
銀行から見て、良いM&Aは何かというご質問だと理解した。ご指摘のとおり、2025年はM&A件数が5,000件を超え、金額は35兆円を超えた。内容も、中小企業が受ける事業承継案件や上場企業のカーブアウトなど、非公開案件が約30%を占めている。
「良いM&Aは何か」とは、なかなかお答えが難しい。M&Aのファイナンスを提供する各行それぞれが判断するものであり、個別行としてお答えする。
ファイナンスを提供する銀行の立場から言えば、M&Aに絡むすべてのステークホルダー、例えば売り手、買い手、双方の社員、取引先、地域社会が、長い目で見て結果的に良いと思えるのが良いM&Aだと思う。
もう少し短く言えば、「中長期的に企業価値の向上に資するかどうか」、抽象的には「そこに大義はあるのか」ということになるのではないか。
確かに買収価格は企業価値を高めるものであるし、様々な要素の価値を含んでいるので、大事な部分である。ただ、それだけではないというのが、我々ファイナンサーから見る目線である。
社員や取引先、地域社会、こういったステークホルダーからの理解を得る方が、よりPMIがうまくいく可能性が高く、買収後の円滑なPMIができるかどうかというのも一つの論点になる。そういう意味で、先ほど申しあげた「そこに大義はあるのか」ということにつながると考える。
銀行はお客さまからM&Aのファイナンスの依頼を受ける立場であり、お客さまからの依頼を受け、今申しあげた点を確認しながら、中長期的な観点も持ってケース・バイ・ケースで判断し、ファイナンスを行っていく。
いずれにせよ、M&Aは、日本の今置かれている状況では非常に大切な機能だと考えており、しっかりとお客さまの成長を後押しできるよう取り組んでいきたい。
(問)
成長支援について、銀行もリスクテイク力を高めるとおっしゃっている。「中長期的な金融仲介の在り方検討WG」においては、そのうち現行の法規制の枠組みを超える可能性も議論があるとのことだが、そもそも預金取扱金融機関である商業銀行がそこまで全部やる必要があるのか疑問である。お考えを伺いたい。
(答)
すべて銀行だけでやるということではないと考えている。
繰り返しになるが、中長期的な成長投資に必要な資金供給を強化していくには、まずは銀行自身のリスクテイク力を高めるとともに、多様なリスクアペタイトを持つ資金の出し手を呼び込むことが必要だと認識している。
実際に今でもエクイティやメザニンを通じた資金供給は、銀行自身がやっている。これは今後も銀行自身が取り組んでいくと思う。そのような取組みが他の金融仲介プレイヤーを呼び込む阻害要因になる訳ではないと思っており、ボリュームやリスクアペタイトが異なるので、むしろ多様な資金の出し手の呼び水になる面もあるのではないかと考えている。繰り返しになるが、多様なリスクアペタイトを持つ投資家を呼び込むことは、今後の中長期的な成長資金の供給に私は必要だと思っている。
(問)
一つ目は、全銀システムの刷新、手形・小切手の電子交換の廃止といった決済に関する大きな施策について、ビジネスのあり方や消費者への具体的な影響を伺いたい。
二つ目は、ワンウェイ規制の緩和に関して。一般事業持株という方向性が示されているが、メガバンクなどの目指す方向性が一つ示唆されたと思う。ビジネスの可能性を広げるメリットと同時に、TLAC債の条件が悪化するのではないか等、メリット・デメリット両方あると考える。見立てや見解があれば教えてほしい。
(答)
決済システムの見直し、手形・小切手の電子交換の廃止、いずれもお客さまにとってはお金の動きをより早く、安全に、分かりやすくするという意味で、ビジネスや生活の質を高めるためには必要な取り組みだと考えている。
新しい決済システムについては、例えばリアルタイム送金について、事前口座確認や入金結果の即時通知などの利便性向上を目指していきたい。これにより、例えば誤送金の防止に繋がる、あるいは入金確認の手間の削減が進み、より早く、安全に、分かりやすいということに繋がると思っている。
また、デジタルマネーも出てくることでステーブルコインやトークン化預金への対応が求められる。新しい決済システム自身で対応するわけではないが、デジタルマネーの基盤と共存し、円滑に連携しうる、共通インフラの役割も視野に入れて検討するべきかと思う。
手形・小切手の交換廃止については、印紙代や郵送費、保管コストの削減や、喪失、盗難のリスクの軽減につながり、中小企業にとっては事務の削減にも役立つ。
一方、新しい決済システムについては、その参加者である金融機関の負担や移行期間中に決してシステムに障害が生じないかたちの移行方法も検討を進めなければならない。
手形・小切手についても、円滑に電子化していくことは大変大事であり、商工団体や関係省庁の方々との連携を通じて、その移行を丁寧に行っていきたい。
一般事業持株会社への移行はWGで議論したが、すぐに実現するというよりは、将来的に、中長期的な一つの選択肢と考えている。そのなかでは、メリット・デメリット様々あると思う。TLAC債については、今の現行法令では一般事業持株会社での発行は想定されていないと認識している。TLAC債に代わるものがあるかないか、必要かどうかということも含めて、中長期的に一般事業持株会社を検討するなかで議論が必要になってくるのではないか。
(問)
プライベートクレジットについて伺いたい。日本ではこれから本格的な広がりが見込まれていると思う。プライベートクレジットの日本市場における必要性や、今後金融システムにおいて、欧米で出てきているような流動性のミスマッチや、レバレッジの積み上がり、評価の不透明性などのリスクが顕在化する可能性があるか。また、銀行界として、どのような対応や備えが必要と考えているか。
(答)
プライベートクレジットの市場規模は、欧米で急激に伸びており、2兆ドルを超えるとも言われている。また、足元ではクレジットの問題が起きていると認識している。市場が急激に成長した背景としては、投資家の安定した高利回りへのニーズと、企業の迅速かつ柔軟な資金調達へのニーズが合致したことが要因だと思う。
日本においては、存在感は現状小さいと認識している。これには二つ理由があると考えており、銀行借入れや社債での資金調達が充実していること、また、これまでは経済が低成長で中長期的な資金需要が大きくなかったということである。
ただ、今後は成長戦略への支援が増えると、設備投資等への資金需要も増大するので、日本においても、プライベートクレジットは一定の役割を果たしてくると考えている。例えば、銀行が持っている顧客基盤を活用しながら、ファンドが資金提供するようなかたちもあり得る。
しかし、プライベートクレジットは、相対取引であり、公募や社債に比べて透明性が低く、資産評価の難しさや、流動性の欠如というリスクもはらんでいると思う。また、ファンド自体は、開示規制が適用されていないので透明性が低く、銀行と違い、当局からのモニタリングもされていない。その中で急激にニーズが増えてきた欧米では、問題として出てきているのだろう。
繰り返しになるが、日本においてはまだ存在感も小さく、大きな問題が起こっているわけではなく、コントロールできていると思う。ただ、今後仮に国内で大きな存在感を持つこととなり、そこで問題が発生することになれば、金融全体のリスクにつながる可能性も視野に入れなければならない。しっかりと関係者間で議論しながら注視する必要があると考えている。
(問)
自民党が国会に提出しようとしている郵政民営化法の改正案について、与党内や野党との調整が進んでいるようである。その内容についての所感と、銀行界として、例えば自民党の政策担当者や金融の政策担当者に働きかけるなどの考えはあるか。
(答)
郵貯事業改革の目的は、国際的に類を見ない規模に肥大化した郵貯事業を段階的に縮小し、将来的な国民負担の発生懸念を減ずるとともに、民間市場への資金還流を通じ、国民経済の健全な発展を促すものである。銀行界としては、「民でできるものは民で」という考え方に沿う政策として、これまで賛同してきたところである。
昨年の改正案においては、「日本郵政に対して当分の間、ゆうちょ銀行株式の3分の1超の保有義務を課す」、かつ「上乗せ規制のあり方について郵政民営化委員会および政府が検討する」とされている。
銀行界としては、引き続き、日本郵政が保有する金融2社の全株式処分に向けた取組みが着実に進むことを期待しており、これまでどおり変わらない。
また、ゆうちょ銀行に政府関与が間接的に残っている状態では、公正な競争条件の確保の観点から、上乗せ規制の緩和は認められるべきではないと考えている。具体的にどこに働きかけるというよりは、引き続き関係者に訴えていきたい。
地域金融機関は、地域における信用創造機能やコンサルティング支援機能で重要な役割を果たしている。仮にゆうちょ銀行が今のままで民間金融機関と同様の業務を行うと、地域金融機関への影響は甚大である。地域の金融システムあるいは地域経済に悪影響が及ぶことを大変懸念している。民間金融機関の意見が十分に考慮されることを強く期待している。