2026年7月16日

加藤会長記者会見(みずほ銀行頭取)

松本専務理事報告

(なし)

会長記者会見の模様


(問)
 日本銀行のQT(量的引き締め)について、バランスシートを縮小し、日本銀行の保有国債が減っていくと、負債サイドでは、当座預金も減っていく。要は、日本銀行の保有国債が減っていくことによって当座預金が減るので、市中銀行の資金繰りとか短期金利の影響をどう見るかを伺いたい。FedがQTをコロナ前に実施したとき、2019年9月にレポレートが10%ぐらい上昇した日もあった。この点も含めて、日本銀行のQTの影響を伺いたい。
(答)
 日本銀行の国債買入れの減額に伴ってどのような影響があるかというご質問である。各行違いがあるので、一般的な話をさせていただくと、大きく二つあるかと思う。
 一つ目は、資金需給のタイト化である。ご説明いただいたように、日本銀行のバランスシートが圧縮されると、市場の余剰資金も減少し、徐々に資金調達環境が変化していく。
 二つ目は、金利の上昇圧力である。資金需要が徐々にタイト化することで、当然ながら市場金利に上昇圧力がかかることが想定される。短期・長期の金利動向およびそれに伴う影響が銀行ビジネスにどう波及するか、注視する必要が出てくる。
 この環境下において、各銀行はしっかりと資金需要に応えていく必要があるため、さらなる預金獲得への取組みや、資金調達手段の多様化も進んでいくのではないか。
 同時に、そのような市場金利の変動に適切に対応していくことも重要になる。銀行のバランスシートを適切にコントロールするということであり、ALM運営を一層高度化する必要がある。
 一方、日本銀行は国債の買入れについて、「国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で行っていくことが適切」という方針を示している。このような方針のもと、現時点で市場が急激な流動性不足や、先ほど話された過去の事例のような、金利の急騰といった混乱に陥るリスクは低いと見ている。
 このような動きは、金融政策の正常化プロセスにおけるメカニズムであると考えている。銀行界としては、市場環境の変化を注視しつつ、円滑な金融仲介機能の維持に努めたい。


(問)
 2点伺う。1点目は、防衛産業への投融資についてである。政府はスタートアップなどへの投資促進を求めていると思うが、改めて全銀協としての方針を伺いたい。特に、例えば殺傷能力の高い武器製造を使途とした資金供給、この辺りの方針に変更があるかなど、検討の余地があるか教えていただきたい。
 2点目、高市政権が掲げる17分野の成長戦略において、官民で370兆円の投資計画も先月まとめられた。この規模に対する評価と、銀行業界としてどう向き合っていくかという姿勢を改めて教えてほしい。
(答)
 1点目は、防衛産業への向き合い方と与信方針についてである。
 昨今、安全保障環境が大変厳しさを増しており、防衛力強化と、それを支える産業基盤の強靭化はわが国にとって極めて重要な課題である。
 そして、現在議論されている日本成長戦略においても、防衛分野は戦略17分野の一つであるので、官民で重点的に投融資を行っていく領域だと認識している。
 また、デュアルユースと言われる、AI・無人化・宇宙分野など新たな技術領域において、スタートアップ企業の有する技術を活用していくことも重要である。
 そのような中で銀行界として防衛産業にどう向き合っていくかであるが、まず、銀行界としては、クラスター弾など国際条約で禁じられている非人道兵器の製造を資金使途とする与信案件や、クラスター弾の製造を行っている企業に対する与信については、その資金使途に関わらずこれを行わないこととする旨をすでに申し合わせており、この部分に変更はない。
 一方、防衛関連企業一般については、取引を有する金融機関も多いと認識をしている。各金融機関においては、条約等で禁じられているものを除けば、一律的な制限はない。通常の与信と同様に、案件単位、企業単位で個別に対応可否を判断している。
 繰り返しになるが、国際条約等を踏まえる必要はあるが、各種リスクや採算性等を勘案の上、投融資を判断する点において、通常の与信と大きく変わらないと考えている。これが1点目のご質問に対するお答えである。
 2点目の、高市政権が掲げる17分野の成長戦略についての受止め方であるが、17分野の成長戦略においては、日本産業・経済にとって重要な製品・技術等に、2040年度までに官民累計で370兆円超の国内投資を行うことが想定されている。今後の追加分を含めると、さらに投資額が拡大し得ると公表されている。また、8つの横断的課題として、金融を通じた潜在力の解放が挙げられている。つまり、金融は17分野全ての官民投資に共通する重要な要素だと認識している。
 4月の記者会見でご説明した今年度の全銀協の活動方針では、日本経済の潜在力解放に向け、変革への挑戦を力強く後押しする1年にするとお伝えした。まさに、今、戦略17分野の説明をさせていただいたように、我々銀行界としては官民で連携しながら、将来に向けた日本産業のさらなる成長をしっかり支えていきたい。
 その中で、特に期待されている銀行の中心的役割は、デットによる成長資金の供給だと考える。加えて、今後、議論が進む中で、日本が直面する構造的な課題や各分野間の相互連関なども踏まえて今投資すべき分野はどこなのか、当該投資に経済合理性や社会実装の可能性があるのかなど、様々な論点が出てくるかと思う。そうした議論において、貸し手としての目利き力が一層求められると考えているので、我々は金融のプロとして、強い日本経済の実現のために、資金供給だけに留まらない力を発揮していきたい。
 また、官民を挙げて370兆円超という巨額な投資を支えるためには、デットだけではなくエクイティも必要になるので、多様な金融仲介プレイヤーとの連携・協力が不可欠である。特にAI、半導体、量子、宇宙、バイオ、創薬、先端医療、フュージョンエネルギー等、投資規模が大きい、回収期間が長い、かつ不確実性が高い分野については、デット、メザニン、エクイティをそれぞれ活用していく必要があり、分野によっては官の資金供給も必要になると考えている。
 今年度、全銀協では、「中長期的な金融仲介の在り方検討WG」において、三つの検討会を立ちあげており、こうした資金供給を円滑に行うための具体的な処方箋を検討している。これまで、間接金融中心のわが国の資金供給機能の中核を担ってきたのは銀行界であるが、多様な金融仲介プレイヤーや官民の間をつなぐことも、我々銀行界の役割として期待されていると考えており、しっかりと取り組んで参りたい。


(問)
 最近でも、多数の地方銀行等が融資をしている企業が破綻する事案があった。事業性評価にもとづく融資や成長資金の供給において、金融機関の目利き力がますます求められると思うが、期中管理も含め、貸し手としてのモニタリング能力に問題はないのか。今後、成長資金をしっかり供給していくということであったが、金融機関に十分な目利き力が備わっているのか。
(答)
 各行の目利き力について、今この場で申しあげるのは難しいが、我々銀行は、お客さまの預金を原資にそれを信用創造してファイナンスしているので、目利き力を常に磨き上げなくてはいけない。
 リスクマネーの供給という銀行に求められている役割を果たすうえで、あまりコンサバティブになってはいけないが、一方で、銀行全体のリスクポートフォリオの管理も重要であり、まさにバランスが必要である。
 過去、企業の粉飾を見抜けなかったことで、不良債権化している案件もあったが、日頃からの適切なリスク管理、与信判断時の実態把握、期中のモニタリングが重要であると認識している。
 繰り返しになるが、リスクマネーを供給していくには、そこの部分を磨き上げる必要もあるし、デットのみならず、メザニン、エクイティも必要とされる局面もある。一朝一夕ではスキルアップは難しいところもあるが、しっかりレベルアップに努めていくことが必要である。全銀協としても、勉強会あるいはそのノウハウ共有を通じて、銀行界全体でファイナンスの能力を上げていくということに取り組んでいきたい。


(問)
 クレジットカード決済代行会社である全東信の破産手続開始を巡って、中小の飲食店や地方の金融機関への影響が懸念されると思うが、受止めと全銀協としての対応方針を伺いたい。
(答)
 7月6日に全東信が大阪地裁に破産申請し、同日破産手続開始が決定された。調査会社の調べによると、全東信と契約する加盟店は約20万店舗であり、この会社のビジネスの性質上、加盟店は中小零細、業種は飲食業界、小売業が多い。立替払いが受け取れていない売上金が回収不能になる可能性、あるいは早期入金サービスが停止されたことで、一部の飲食店から資金繰りの懸念がすでに表明されているとの声もある。
 これを受け、7月10日、金融庁等の関係省庁から「全東信の破産手続開始を踏まえた金融上の対応」について要請文が発出されている。
 全銀協としては、会員行に対して資金繰りの相談に丁寧かつ親身になって対応すること、また、必要に応じて政府系金融機関の窓口を紹介する等、関係機関との緊密な連携徹底について、すでに周知を行っている。また、同社に対しては融資取引を行っている金融機関が相応の数あり、すでに貸出債権の引当処理を行う方針を公表した金融機関もある。今のところ金融システム全体への影響はないとみているが、今後銀行の業績への影響は注視していきたい。
 この個別案件について詳細は存じ上げないが、同社は長年にわたる粉飾や過去の不正な加盟店契約といった報道も目にする。やはり日頃からの適切なリスク管理、あるいは具体的な与信判断における実態把握等が重要だというのを、改めて我々としても再認識しなければならない。銀行界としては、事業者への資金繰り支援とともに、銀行として適切なリスク管理に努めていきたい。


(問)
 2点お伺いしたい。1点目。防衛産業の絡みの件だが、結局、昨日の大臣の発言などを受けて、全銀協として加盟行に何らか、ある程度ポジティブなアクションを促していくのか、それとも通常の与信と変わらないということなので、みずほ銀行を含めて各行の個別判断に今までどおり任せていく形になるのか。どちらなのか。
 また、個人向け国債について。今、国債の購入促進案について議論が進んでいるところだと思う。具体的にはNISAの対象として所得税や相続税の非課税化や、超長期債や物価連動債の導入案なども出てきていると思うが、購入促進案が出てくることについての率直な受止めと銀行界の影響について、どのように考えているか。関連して、国債の家計保有を促すことについての意義についてどのように考えているのか。
(答)
 1点目の昨日の大臣発言の件だが、実際に意見交換してきたが、個別のやり取りは非公開になっているので、具体的にどういう話があったかはお話できない。全銀協から個々の金融機関に対し、何かこういう方針にしなさいということは当然できないが、要請を伝える機能はあるので、要請があれば伝えることを検討したいと思っている。
 2点目の国債については、日本経済・産業の成長を実現していくうえで、戦略17分野における官民共同投資の取組みなど、財政支出の果たす役割は大変大きい。それを支える財源として、国債の安定消化は重要なテーマと認識している。また、家計の資産所得の拡大という観点からも、安定した利回りが見込める個人向け国債の果たす役割は重要だと考えている。
 一方、資産運用立国の推進に向けては、デットからエクイティまで多様な金融商品を揃えることで、様々なリスクアペタイトを持った投資家のニーズを充足し、十分なリスクマネーを供給できる構造を作っていくことが重要と考えている。
 加えて、商品性の改善等により、貸出の原資になっている銀行預金から個人向け国債への資金シフトが過度に進むと、信用創造機能の発揮が弱められ、成長資金の供給等に影響が出る可能性があることにも留意が必要である。
 個人向け国債の販売拡大については、必要性はあるものの、全体最適の中で適切に議論がなされていくことが大事だと思っている。


(問)
 官民連携の370兆円の投資の件だが、いくら政府に巨額の目標を掲げられても、民間として投資していくためには、モチベーションを上げるための何らかの規制緩和や税制改正などが必要なのではないかと思う。そういったことについて、全銀協として政府に要望などをしていく考えはないか。
 もう1点、中小・中堅企業法人向けの金融デジタルサービスについて、メガバンク間で競争が激しくなることが見込まれるが、地域金融機関のビジネスへの影響についてどのように考えているか。
(答)
 1点目は、370兆円という巨額なファイナンスについて、民間にとってのインセンティブは何かということだが、しっかりと取り組むというのが、そもそも我々としての方針である。デットプロバイダーとして我々の機能を発揮し、国の方針に沿ったかたちでファイナンスをしていくということについて、特に変わりはない。
 ただ、370兆円を我々が全てデットで対応できるということではないので、それに対応するための枠組みをつくっていく必要がある。具体的には、中長期的な金融仲介の在り方検討WGで、デットファイナンスのあり方検討会を設置しており、新しいファイナンスの仕組みであるとか、さらにセカンダリーマーケットを組成するといった、370兆円にしっかり対応することができるようなファイナンスの枠組みをつくっていくことは、引き続き取り組んでいかなければいけないと思っている。
 2点目について、日本経済は企業の投資拡大や持続的な賃上げで、成長と分配の好循環がうまく回ってきているが、物価上昇への対応や人手不足など、様々な課題が残っている。
 特に中小企業は、国内事業者の99.7%を占めており、企業の経営効率化や生産性向上が必要不可欠である。その中で、メガバンクを中心に、法人向けデジタルサービスを展開している。口座管理や資金繰りの予測、会計ソフトとの連携、経費精算などをシームレスに提供することで、お客さまの事務負担を軽減するだけではなく、経営状況の可視化を通じて、本業への集中と迅速な経営判断を後押しする取組みだと考えている。
 こうしたサービスが広がっていくことによる地域金融機関への影響だが、中小企業の経営課題は多岐にわたっており、解決に向けては、資金調達の支援はもちろんのこと、人材確保、販路拡大や事業承継といった様々な支援が必要となる。
 このような分野は、メガバンク中心に展開しているデジタルサービスでの代替は難しいと考えており、長年にわたり地域のお客さまと信頼関係を築いてきた地域金融機関が強みとするところである。
 今後もAI等の新しい技術と、対面を中心とした人と人の関係で成り立つサービスの双方を組み合わせることで、お客さまの利便性と企業価値向上に貢献し、地域経済、ひいては日本経済全体の成長を支えていく。


(問)
 1点目は、対米投資に関連して伺いたい。メガバンクがドル資金調達に懸念を持ち、財務省に支援を要請しているとの報道があった。外貨の需要についてどのようにお考えで、政府にはどのような要望を行っているか。また、こうしたドル調達需要の急増が円安進行の一因になっているという見方もあるが、どのように受止めているか。
 2点目、首都圏では住宅価格の上昇に伴い、超長期の住宅ローンが広がっていると思う。借入金額の増加や借入期間が長期化するなかで、変動・固定ともに金利が上昇し、利用者の負担やリスクが高まっていると考えるが、銀行界としてどう受止めているか。また、利用者に対してどのようなリスクの周知を図っていくのか伺いたい。
(答)
 1点目の対米投資は、昨年7月、日米両政府によって発表された日米貿易合意、ならびに同合意にもとづき、同年9月に政府間で作成された「戦略的投資イニシアティブに関する了解覚書」にもとづいて実行されるものと認識している。
 日米双方にとって有意義であり、特に日本産業の競争力向上、サプライチェーンの強化、日米両国のより一層の関係強化に資する案件やプロジェクトに対し、関係者で必要な対応を検討することが大切である。
 我々民間金融機関が政府と協議しているという報道が出ていることは認識しているが、関係者のコミュニケーションには相手方があり、その有無も含めて具体的なコメントは差し控え、外貨需要に対して、一般的な対応や留意点について申しあげる。
 銀行のバランスシート運営において、国際的に求められる自己資本比率などの資本規制や、流動性カバレッジ比率(LCR)、あるいは、安定調達比率(NSFR)といった流動性規制の枠組みを遵守することが必要不可欠である。特に、邦銀にとって外貨は円貨と違い、預金での調達で賄える部分が相対的に少ないため、短期資金市場の急変の影響を受けやすい。したがって、より機動的かつ安定的な調達手段の確保が重要となる。
 足元では、邦銀は十分な高流動性資産を有し、LCRやNSFRの規制基準は十分上回っているが、対米投資のみならず、政府の戦略分野への対応や、中東情勢を踏まえ、さらなる資金需要の拡大が想定される。
 そういった将来の資金需要に対して、金融機関として必要な支援ができるようなバッファーを持ちつつ、外貨調達状況、各銀行としてのリスク、収益性などを判断材料としながらALM運営を行っており、これが留意点でもある。
 また、為替への影響だが、為替は日米の金利差に加え、地政学リスクなど、様々な要因が加味されマーケットで決まるため、変動要因を一概に申しあげることは難しい。
 2点目について、日本銀行による政策金利の引上げ等を背景に、住宅ローンの金利が変動・固定ともに上昇基調にある。また、住宅価格の上昇等を背景に、借入金額の高額化、ペアローン、借入期間を35年超とする超長期ローン等が増えていることも認識している。
 これらは、家計の返済負担にも直結する重要な課題と認識している。例えば、変動金利型の住宅ローン利用者に対しては、金利変動リスクに関して正しく理解していただくことが大切だと考える。住宅ローンの適用金利上昇時の支払い負担増加に備えた家計の見直しや、余裕資金による繰り上げ返済、固定金利への切り替えへの相談等、柔軟かつ丁寧なアドバイスを徹底していきたい。
 また、5年ルールや125%ルールといった仕組みを利用している場合には、その効果やリスクについても、お客さまに丁寧に説明していくことが求められる。
 固定金利型の住宅ローンを検討されているお客さまに対しては、返済額が固定され、将来の金利上昇リスクに備えて返済計画を立てやすいというメリットがある一方、変動金利型に比べて当初の金利が高くなるデメリットも予めご理解いただく必要がある。
 住宅購入はお客さまにとって大切なライフイベントであり、住宅ローン等のサービス提供を通じてお客さまを支えることは、銀行の重要な役割と認識している。銀行界としては、お客さまの多様なニーズにお応えできる選択肢、態勢を整備するとともに、お客さまごとのライフスタイル、家計状況に合った丁寧なご相談やご説明を徹底していきたい。


(問)
 2点伺いたい。1点目は、フロンティアAIへの対応についてである。前回の会見で、「能動的停止」についても今後想定されるというような話があったと思う。その後、片山大臣等とも面会され、そうした点についても意見交換されたと聞いている。一部報道で業務の代替や金融機関同士の連携といった話も出ている。システムが停止した場合に、メガバンク同士、あるいは銀行間でどのように連携していくお考えか。
 2点目、17の戦略分野について、日本成長戦略のなかには、投融資に関して官民で意見交換を行う「官民戦略投資連携フォーラム」の設置も盛り込まれる見込みである。このフォーラムでどのような議論を期待しているか、国への要望があれば伺いたい。
(答)
 業務の代替といった報道が出ていた点は承知しているが、先月お話ししたのは、万が一の際にはお客さまの資産をしっかり守ることを最優先とし、業務継続よりも安全性を優先して「能動的停止」を行う可能性があるという趣旨であった。
 そのうえで、「能動的停止」に限らず、各行では有事に備えた業務継続計画、いわゆるBCPを策定している。BCPの内容は、銀行ごとに異なるが、実際にどのような対応を取るかは、影響の程度に応じて各行がそれぞれのBCPにもとづいて判断するというのが、基本的な考え方である。
 また、ご指摘のようにシステムが利用できない場合に金融機関同士で連携することは、既存のBCPの中でも有効な手段となっている。例えば、お客さま向け対応として、他行の窓口での手続きや他行ATMのご案内などを想定しているBCPもあると承知している。
 したがって、銀行界全体として、業務の代替については、現時点では検討していないが、全銀ネットにおいては、何らかの事情で、各銀行側にて振込電文の発信ができない場合に備え、代行発信などのBCPも用意している。いずれにしても、お客さまのご利用にできるだけご迷惑をおかけしないよう、様々な仕組みを整え業務継続することで、影響を最小限に抑えることが重要である。そのためにも、事前の準備が何より大切だと考えている。
 二つ目のご質問について、「官民戦略投資連携フォーラム」という意見交換の場が、日本成長戦略の原案に記載されていると認識しているが、詳細は承知していない。この場は、さらなる投融資の促進のための方策等を官民で連携して検討する場だと認識しており、銀行界にとっても、成長投資を支えるための方策を検討する良い機会だと考えている。


(問)
 防衛について追加で伺いたい。例えば、国益に沿って動くとか、人権に配慮しなければならないとか、殺傷能力を基点に考えると、経済合理性だけで判定して良いのだろうかとか、複雑な論点が入ってくるかと思う。これを踏まえたときに、加盟各行はどう審査をすれば良いのかと悩まれるのではないか。このような件に関して、金融庁などに取材に行っても、リスク管理の観点なので、バーゼルルールとは違う場所、違うアングルと言われる。この件に関して、仮に取扱いを議論するとしたらどこになるのか。全銀協のなかで何か意見交換をする場、実務的に会合を開くということは今後あり得るのかというのが一つ目の質問である。
(答)
 全銀協で足元、何か検討する場を設けることは考えていない。それぞれの与信判断については、各行がしっかりと実施するということである。全銀協としては、要請に対する会員行への伝達というかたちで対応することはある。
 一方で、繰り返しになるが、国際条約等で禁止されていることは行わないということが前提としてあり、そこについて再度、必要に応じて会員行に徹底するということはあり得る。ただ、与信については、防衛といえども、ほかの産業と変わらないと思っている。
 あえて言うと、やはり政治的、社会的メッセージが惹起されるような、誤解を生みやすい内容も含まれる側面もあるので、しっかりと誤解なきように取り組んでいくということが、私は大事だと思っている。
 また、特に条約等で禁止されている以外のところでは、個別の案件、個別の会社に対する融資判断をするときに、バランスシート、キャッシュフローを見たうえでしっかりと取り組むということは、ほかの産業と変わらない。それらをしっかり見ながら対応するというところについて、私はそれほど大きな違いはないのではないかと考える。
(問)
 二つ目はモニタリングについてである。特に大企業向けの運転資金などでは、お金に色があるわけでなく、融資した資金が実際にどのように使われるかは、企業の判断に委ねられる部分がある。そうした資金使途の曖昧さを、今後どう考えるのか、論点になってくるのではないかと思うが、いかがか。
(答)
 我々としては、資金使途はしっかりと確認する。ただ、ご指摘の運転資金については、設備資金のように特定の使途にひも付いた融資ではないため、実際には、その資金が企業の資金繰りのなかでどのように使われるかは、ビジネス活動の一環として当該企業が判断する部分が大きい。
 一方で、設備投資などの案件については、しっかりと資金使途が明確に特定されている。ファイナンスの形態は、案件ごとにケース・バイ・ケースで考えるべきものだと考える。
 また、もしご質問の趣旨がデュアルユースに関するものであれば、例えば、防衛関連の比率が高いかどうかといった点については、各行で独自にルールを設けている場合があるかもしれない。ただ、少なくとも我々がそこについて一律のルールを定めるといった考えはなく、銀行業界として一般的に何か一律の制限を設けているわけではない。
 したがって、ご質問にお答えすると、ファイナンスを行う際には資金使途をしっかりと確認する一方で、運転資金については企業の通常のビジネス活動のなかで使用されるものと認識しており、特にそういった点に制限を設ける必要はないのではないかと考えている。


(問)
 6月の日本銀行の利上げを受け、各行は、預金金利、短プラともに引上げた。ただ、追随率を見ると、普通預金は4割で、短プラは10割となっている。預金と貸出の追随率が異なるのは、海外でも当たり前のことなので、日本だけが特殊ではないということは承知したうえで、改めてこの預金と貸出の追随率の差異・非対称についてお考えを伺いたい。補足すると、全銀協が今年度活動方針にて家計の豊かさや資産形成支援を掲げている中、非対称についてはどう整合しているのか。
(答)
 金利水準の設定は各行の戦略なので、個人的な意見としてお答えする。
 預金の金利水準は、バランスシート運営で必要とされる預金量や、決済での預金の粘着性の違い、決済機能の維持や改善にかかるコスト、あるいは金融マーケットの競争環境で決まってくる。顧客への還元が不十分だろうという点がご質問の根幹だと思うが、多くの金融機関で、今回の普通預金の利上げ幅が4割程度だったというのは、全てではないが、おっしゃるとおりである。
 30年前の金利があった世界でも金利は上下したが、当時と比べると環境が違う。例えばデジタルの発展など、サービスの仕方が多岐にわたる。あるいは、他業種からも金融業界に参入し、金利以外のサービスの提供も様々なかたちで行われており、やはり追随率だけでは一概に語れるものではない。
 例えば、金利面ではキャンペーン等で預金金利そのものを優遇して引き上げ、中には定期預金で実質2%近いレートを出している銀行もあるし、ポイントを還元することでお客さまに対してお得感を提供しているところもある。あるいはインターネット・バンキングであるとかアプリの改善など利便性向上に投資を行うところもある。
 つまり、我々はお客さまに選んでいただく側、預金を預けていただく側であり、金利を上げる以外に様々なサービスの提供の仕方がある。貸出金利の追随率が100%で、預金金利が100%ではないというのは、必ずしも差額分を検証していないので分からないが、そういう還元の仕方の違いがあるのではないか。
 お客さまに選んでいただくという立場としては、申しあげたような預金の金利水準、ポイントといった金銭的な便益を図るだけではなく、根っことして、安心・安全に利用いただくことや接遇など、しっかり企業努力をして、お客さまから選んでもらうことが大事だと思う。お得感も様々なかたちで提供しながら、大切なところは安心感・信頼感で選んでもらえるような銀行になっていくよう、頑張っていきたい。


(問)
 金融庁の大規模な再編があり、新しい態勢で間もなく運営が始まると思う。改めて、銀行と証券を監督する局ができたり、資産運用立国を進めるための態勢整備などもあったりするようだが、期待、不安、注文など、全銀協会長としての受止めと、ファイアウォール規制撤廃などいくつかテーマがあるなかで、どういうことを求めたいか。
(答)
 組織再編というのは政府が判断されたものであり、全銀協会長としてお答えする立場にないが、大きく外部環境が変わってきているなか、金融行政においても様々な課題があると思われ、それらに適切に対処するために組織再編を実施されたのではないかと思う。例えば、局の再編や課の新設、新たなポストをつくるというようなところが、今申しあげたような外部環境、あるいは日本の目指すべき金融行政に必要な対応をされたと思っている。
 そういう意味で、資産運用立国の実現に資するような、寄り添った行政を進めていただき、AI等の新しいデジタル技術を用いたサービスもとても速く動いているので、変革に対してもしっかりと進めていただきたい。
 先ほどファイアウォールと言及されたが、これからさらなるファイナンスのニーズが高まっていくなかにおいては、そういったファイナンスニーズに対応するような新しい金融ビジネスのあり方の検討にも、しっかり取り組んでいただきたいと思っている。