2004年9月21日

全国銀行協会

平成17年度税制改正に関する要望

1.金融システムに対する信頼を一段と高めるために
(1)欠損金の繰戻還付制度等の拡充および不良債権の無税償却基準の見直し
(2)早期事業再生のための税制措置の拡充
2.金融・資本市場の活性化と国際的な金融取引の推進のために
(1)金融所得課税一体化の推進
(2)株式投資信託に関する税制の整備
(3)確定拠出年金税制の見直し
(4)資産流動化関連税制の拡充
(5)非居住者等に対する公社債の非課税措置の拡充等
(6)東京オフショア市場における源泉所得税免除措置の恒久化
(7)日米新租税条約施行に伴う事務負担の軽減
3.経済活性化と課税の適正化のために
(1)住宅投資の促進に資する税制措置の拡充
(2)登録免許税の軽減・簡素化
(3)印紙税の軽減・簡素化
(4)財形制度における税制の整備
4.適切な経営環境を確保するために
(1)連結納税制度の見直し
(2)金融機関の組織再編成の円滑化のための税制の見直し
(3)外国税額控除制度等の見直し

1.金融システムに対する信頼を一段と高めるために

わが国金融機関は、金融システムに対する信頼回復に向け、不良債権の最終処理と企業の再生支援に最大限の努力を行ってきており、着実な進捗をみている。不良債権問題の解決には、引き続き金融機関の自助努力が必要であることは言うまでもないが、不良債権問題に終止符を打ち、金融システムに対する信頼を一段と高めるためには、税制面からも支援を行っていくことが重要である。

また、不良債権問題は債務者における過剰債務問題の裏返しでもある。これまで企業再生に向け、制度面の整備や産業再生機構の創設に加え、民間のファンド・企業再生会社が数多く設立されるなど、各方面での取り組みが本格化しているが、このような取り組みをさらに後押しする観点から、債務者の早期事業再生を可能とする税制の整備が必要である。

(1) 欠損金の繰戻還付制度等の拡充および不良債権の無税償却基準の見直しを行うこと。具体的には、

  1. 欠損金の繰戻還付制度の凍結措置を解除し、繰戻期間(現行1年間)を2年に延長すること。特に、金融機関については、繰延税金資産の問題を解決するため、繰戻期間を15年に延長するとともに、繰越期間(現行7年間)について一段の延長を図ること。
  2. 金融機関が実施している自己査定に基づき、幅広く無税償却を認めること。

法人税における欠損金の繰戻還付・繰越控除制度は、事業年度ごとの課税負担を平準化し、経営の中長期的な安定性を確保するうえで重要な制度であり、企業再生および不良債権処理を促進するためにも不可欠である。こうした背景から平成16年度税制改正において、繰越控除期間が5年から7年に延長された。しかしながら、繰戻還付制度の見直しは見送られ、現状、繰戻期間が1年に限定されている上に平成4年度以降凍結されているなど、十分な措置が講じられているとは言いがたい。また、欧米主要国との比較においてもわが国の制度は著しく見劣りする。

一方、わが国金融機関は、平成14年10月の「金融再生プログラム」等に基づき、不良債権の最終処理を加速している。しかしながら、不良債権処理を積極的に推進してきた結果、繰延税金資産が必然的に高まり、本年6月には金融審議会金融分科会第二部会より、「自己資本比率規制における繰延税金資産に関する算入の適正化および自己資本のあり方について」が公表され、自己資本比率規制における繰延税金資産の算入制限を導入することが適当との方向性が示された。

繰延税金資産は、企業会計と税務上の取扱いの差異や税務上の繰越欠損金によって生じるものであり、特に、わが国においては、無税償却・引当の範囲が極めて限定的であることにより、貸倒引当金等が税法上損金として認められる時点が遅いことが繰延税金資産の発生・増加の大きな要因となっている。さらに、主要国で自己資本比率規制において繰延税金資産の算入制限を講じているのは米国のみであるが、その米国においても、税制上の措置を実施した後に算入制限が導入された経緯がある。

このような状況を踏まえ、①欠損金の繰戻還付制度の凍結措置を解除し、繰戻期間(現行1年間)を2年に延長すること、特に、金融機関については、繰延税金資産の問題を解決するため、金融庁の要望も踏まえ、繰戻期間を15年に延長するとともに、繰越期間(現行7年間)について一段の延長を図ること、なお、この場合、合併法人の欠損金を被合併法人にも繰り戻して還付できるようにするとともに、既存の繰越欠損金についても繰戻還付の対象とすること、②金融機関が実施している自己査定に基づき、幅広く無税償却を認めること、をパッケージとして実現することを要望する。

(2) 早期事業再生のための税制措置を拡充すること。具体的には、

  1. 私的整理ガイドライン等を活用した企業再生において、債務者側における資産評価損等の取扱いについて、会社更生法等適用時に準じた取扱いとすること。
  2. 法的整理、および私的整理ガイドライン等を活用した企業再生において、再建計画上将来無税化が見込まれる金額を特別勘定処理することにより、債務免除益課税を繰り延べること。

わが国金融機関が不良債権問題の解決に向けて最大限の努力を行っている一方で、産業面において、過剰債務企業が抱える優良な経営資源の再生が引き続き重要な課題となっている。デフレからの脱却を確実なものとし、新たな成長に向けた基盤の重点強化を図るうえで、今後、これまで以上に、早期事業再生への取組みが幅広く行われることが必要である。

このような観点から、これまで企業再生・事業再生に向けた様々な枠組みが整備されてきたが、過剰債務を抱える企業が債権者から債務免除を受ける際、実質的な債務超過にあり担税力がないにもかかわらず、一時に生じた債務免除益に対して課税がなされることが、迅速な再生を図る上で大きな障害となっている。事業再生において、再生に取り組む企業や関係者の努力が最も重要であることは言うまでもないが、税制面においても、再生に取り組む企業を積極的に支援することが必要である。

具体的には、「私的整理に関するガイドライン」等を活用した企業再生において、会社更生法等を適用した場合と同様に、債務者側における資産評価損の損金算入を可能とすること、また、期限切れとなった欠損金を優先的に債務免除益と相殺可能とすること、を要望する。

さらに、法的整理、および「私的整理に関するガイドライン」等を活用した企業再生において、再建計画上将来無税化が見込まれる金額を特別勘定処理することにより、債務免除益課税の繰り延べを可能とする制度の創設を要望する。

2.金融・資本市場の活性化と国際的な金融取引の推進のために

わが国経済がデフレから脱却し、持続的な景気回復を成し遂げるためには、資金仲介機能を担う金融・資本市場の活性化を図ることが大切である。そのためには、税制面からも金融所得課税の一体化や確定拠出年金税制の見直し等を通じて、個人金融資産を効率的に活用できる魅力的な金融・資本市場の確立を後押ししていく必要がある。

また、金融のグローバル化が進展するなか、わが国金融・資本市場のプレゼンス向上のために、非居住者に係る税制措置の見直し等、国際的な金融取引推進に資する税制を整備していくことが重要である。

(1) 金融所得課税の一体化を推進すること。具体的には、

  1. 金融所得課税の一体化にあたっては、金融資産に対する課税の簡素化・中立化を図る観点から、実務面における十分な検討を踏まえ、課税方式の均衡化とともに、損益通算を幅広く認めること。
  2. 納税の仕組みについては、実務面から十分な検討を行い、納税者、金融機関が受入可能な実効性のある制度とするとともに、その導入にあたっては十分な準備期間を設けること。

少子高齢化に伴う貯蓄率の低下に伴い、個人金融資産を効率的に活用することが、わが国経済の活力を維持するための鍵となっており、魅力的な金融・資本市場を構築する観点から、個人投資家にとって簡素でわかりやすく、中立的な税制の整備が喫緊の課題となっている。こうした背景から、本年6月に政府税制調査会金融小委員会から、「金融所得課税の一体化についての基本的考え方」が示され、金融商品に対する課税方式を均衡化し、損益通算の範囲を出来る限り広げていく方向性が打ち出された。

個人投資家にとって魅力的な金融・資本市場は、金融商品がリスクに見合ったリターンを形成し、個人投資家のリスク選好に応じて自由に金融商品を選択できる市場であり、そのためには、金融商品に対する課税が簡素でわかりやすく、かつ金融取引における選択を歪めることのない形にする必要がある。また、実効性のある税制を構築する観点から、個人投資家の税制面の事務負担や商品を提供する金融機関の負担や準備期間に十分配慮することが、実務上きわめて重要である。

したがって、金融所得課税の一体化にあたっては、①金融資産に対する課税の簡素化・中立化を図る観点から、実務面における十分な検討を踏まえ、課税方式の均衡化を図るとともに、預金を含め損益通算を幅広く認めること、さらに、②具体的な納税の仕組みについては、実務面から十分な検討を行い、納税者、金融機関が受入可能な実効性のある制度とするとともに、その導入に当たって十分な準備期間を設けること、をセットで要望する。

(2) 株式投資信託に係る税制を整備すること。具体的には、

  1. 公募株式投資信託の償還(解約)益について、他の公募株式投資信託の償還(解約)損や株式等の譲渡損との通算を可能とすること。
  2. 公募株式投資信託の収益分配金に係る源泉徴収不適用申告書について、事務負担を軽減すること。

個人投資家にとって、簡素でわかりやすく中立的な税制を整備することは、わが国金融・資本市場を活性化する上で必要不可欠である。こうした背景から、平成 15、16年度税制改正において、公募株式投資信託の償還(解約)損と株式等の譲渡益との損益通算および譲渡損失の繰越控除が認められた。

しかしながら、公募株式投資信託の償還(解約)益については他の公募株式投資信託の償還(解約)損や株式等の譲渡損との通算が認められていない。

投資家にとって償還(解約)と譲渡とは経済的にみて実質的に差異はなく、税制面でも同じ取扱いとすることが適当である。個人投資家にとってよりわかり易い税制とする観点からも、公募株式投資信託の償還(解約)益と他の公募株式投資信託の償還(解約)損や株式等の譲渡損との通算を、金融所得課税の一体化を待たず早急に実現することを要望する。

また、平成16年度税制改正において、銀行を含む証券業者等が顧客から公募株式投資信託の受益証券を買い取った場合、当該証券業者等が支払を受ける収益の分配について、一定の要件のもと源泉徴収を免除する措置が講じられた。しかしながら、免除措置の適用にあたっては、収益の分配の支払を受ける都度、源泉徴収不適用申告書を受託銀行を経由して税務当局に提出することが義務付けられており、これが証券業者等と受託銀行の双方にとって多大な事務負担をもたらしている。源泉徴収不適用申告書の提出期日を見直す等、同申告書に係る事務負担の軽減を要望する。

(3) 確定拠出年金税制を見直すこと。具体的には、

  1. 退職年金等積立金に対する特別法人税を撤廃すること。
  2. 確定拠出年金制度の拠出限度額を引き上げるとともに、マッチング拠出を認めること。

高齢化社会における自助努力による老後の生活保障を図る観点から、公的年金を補完するものとして、確定拠出年金は大変重要である。また、昨今は、厚生年金基金の解散が急増するなど、既存の企業年金を取り巻く環境にも厳しいものがある。こうしたことから、確定拠出年金に係る税制は、欧米における同種の年金と同様に、拠出時・運用時非課税、給付時課税を基本として、十分な優遇措置が講じられるべきである。

特に、平成16年度税制改正において、公的年金等控除の縮小及び老年者控除の廃止がなされる等、給付時課税に対する優遇措置が縮小されていることに鑑み、運用時課税となる退職年金等積立金に対する特別法人税については、これを撤廃することを要望する。

また、平成16年度税制改正において、確定拠出年金の拠出限度額が引き上げられたが、老後に必要とされる生活資金の水準や、確定給付年金制度に拠出限度額が設けられていない点等を勘案し、拠出限度額の更なる引き上げ及び企業型年金加入者による追加拠出(いわゆる「マッチング拠出」)を認めることを要望する。

(4) 資産流動化関連税制を拡充すること。具体的には、

  1. SPC(特定目的会社)等の不動産取得に係る不動産取得税等を非課税とすること。少なくとも、現行の不動産取得税の軽減措置・特別土地保有税の非課税措置の適用期限(平成17年3月末)を延長すること。
  2. SPC等が支払う利益配当について、損金算入が認められる要件を緩和すること。

資産流動化はリスク分散・管理のための極めて有力な手段であると同時に、一般企業や内外投資家に対しても多様な資金調達手段や投資商品の選択肢を提供するものである。こうした観点から、平成10年9月からいわゆるSPC法が施行され、さらに平成12年5月に、SPC法および投信法の改正が行われた。また税制面においても、SPC等(以下、特定目的会社(SPC)と投資法人の両者を「SPC等」と総称する)の不動産の取得に係る不動産取得税の軽減等の措置が講じられたほか、配当可能所得の90%超を配当する等の要件を満たす場合、当該配当を損金算入する規定の整備が図られた。

流動化資産の受皿にすぎないSPC等に担税力はなく、課税はただちにこれらの発行する証券の利回り低下をもたらし、資産の流動化を阻害する。経済活性化の観点から、金銭債権や不動産等の資産流動化促進が求められるなか、こうした資産流動化のツールであるSPC等の税負担は、極力軽減されることが必要である。

したがって、SPC等の不動産取得に係る不動産取得税等を非課税とするか、少なくとも現行の不動産取得税の軽減措置・特別土地保有税の非課税措置の適用期限(平成17年3月末)を延長することを要望する。

また、SPC等の利益配当について損金算入が認められる要件について、事後的に配当が配当可能所得の90%以下となった場合の宥恕措置を導入する、適格機関投資家以外からの借入を認める等、資産流動化のために国内SPC等をより一層活用する観点から、更なる緩和措置を講ずることを要望する。

(5) 非居住者等に対する公社債の非課税措置を拡充すること。具体的には、

  1. 非課税措置の対象となる非居住者等の範囲を拡大すること。
  2. 非居住者等が、適格外国仲介業者を通じて国債等を保有する場合、本邦におけるカストディ銀行の各人別帳簿管理を不要とする等、事務負担を軽減すること。
  3. 非居住者等の受け取る国債以外の振替制度を利用した公社債の利子について非課税措置を設けること。

海外投資家によるわが国国債への投資の円滑化は、わが国金融・資本市場の国際化、円の国際化、国債市場の流動性向上等に資するものであり、こうした観点から、平成11年9月に、海外投資家(非居住者等)が保有する一括登録国債(現在の振替国債)を対象として、利子非課税措置が講じられた。その後、一連の税制改正において、非課税措置の適用範囲が拡充され、平成16年度税制改正では、外国法人が適格外国仲介業者を通じてTB・FBを保有する場合にも非課税措置が適用されることとなった。

このように非課税措置の適用範囲は数次の改正で拡充されてきたものの、現行制度は、依然として、非課税となる海外投資家(非居住者等)が限定されているほか、適用範囲も商品毎に区々となっており、海外投資家にとってもわかりづらい制度となっている。国債の円滑な消化、ひいては円の国際化を推進するためにも、非課税措置の対象となる海外投資家の範囲を拡大する等の措置を早急に講じることが必要である。

具体的には、法人格のないファンド等についてTB・FBおよびストリップス債における非課税措置の対象となる範囲を利付国債並みに拡大するとともに、利付国債についても非課税措置の対象範囲を明確化することを要望する。また、本年3月から発行が開始され、外国政府・外国中央銀行・国際機関等の極めて限定された海外投資家のみ購入可能となっている物価連動国債についても、その保有制限を緩和するとともに、他の国債と同様に非課税措置を適用することを要望する。

また、非居住者等が適格外国仲介業者経由で国債を保有する場合における、日本国内の金融機関(サブ・カストディアン)の各人別帳簿管理を不要とすることや、所有期間明細書や支払調書の簡素化・廃止等、欧米の制度に比べて事務が著しく煩雑となっている点について、その改善を要望する。

あわせて、わが国証券市場の活性化と国際化を進める観点から、国債以外の公社債の振替制度が平成17年度にも開始されることに合わせて、非居住者等が同制度を利用した国債以外の公社債についても、上記の事務負担軽減を踏まえた非課税措置が適用されるよう税制上の措置が図られることを要望する。

(6) 東京オフショア市場における源泉所得税免除措置を恒久化すること。

東京オフショア市場は、本邦金融市場の国際化、円の国際化の促進に資するため、昭和61年12月に創設された。取引の自由度や利便性が海外の主要オフショア市場にできるだけ近いことが重要とされ、源泉所得税についても租税特別措置として免除措置がとられてきた。

わが国金融市場は、国際金融センターとして一層の発展が期待されており、そのためにも、東京オフショア市場において、先進主要国のオフショア市場と同様、将来にわたって源泉所得税を課さないことを明確化するため、現行の源泉所得税免除措置を恒久化することを要望する。

(7) 日米新租税条約施行に伴う事務負担の軽減のため、居住者証明書の提出方法を簡素化すること。

日米間の投資交流の促進は、両国の金融・資本市場の活性化に資するものである。このような背景から、平成16年3月30日に批准された日米新租税条約に投資所得に対する源泉地国課税の大幅軽減等の措置が盛り込まれ、平成16年度税制改正では、「租税条約の実施に伴う所得税法及び地方税法の特例等に関する法律」及び関係政省令で、日米新租税条約に定められた新しい適用関係に即した課税方法や関連手続が規定された。

この結果、米国の投資家が日本で支払を受ける利子・配当等に対して免税・軽減税率の優遇措置の適用を受けるためには、米国の投資家は権限のある当局(米国のIRS:内国歳入庁)の発行した居住者証明書の原本をその保有銘柄の数だけ提出することが必要となり居住者証明書の搬送・受領・確認等の事務代行を行っているわが国常任代理人銀行等のみならず、米国の投資家にとって大きな事務負担が発生している。さらに、このような負担が海外投資家の日本離れを誘引し、将来的に日本の金融・資本市場の発展を阻害する要因となる可能性もある。

ついては、日米新租税条約施行に伴う事務負担の軽減のため、居住者証明書の提出方法の簡素化を要望する。

3.経済活性化と課税の適正化のために

現在、わが国経済は長いトンネルを抜けて、ようやくデフレ脱却の道筋が見えつつある。現下の回復基調をより確実なものとし、自律的な経済成長へと繋げていくためには、住宅投資の促進に資する税制措置の拡充により、民間部門の投資・消費需要を喚起することが重要である。

また、金融取引を含む各種の経済取引には、その担税力に着目して登録免許税や印紙税といった流通税が課せられるケースが多い。しかしながら、そうした流通税の負担は経済取引に悪影響を与え、経済の活性化を阻害している面がある。税率の軽減等、課税の適正化を通じて、経済の活性化を図ることが必要である。

(1) 住宅投資の促進に資する税制措置を拡充すること。具体的には、

  1. 住宅借入金等の所得税額の特別控除制度について、平成16年居住分の年末残高の限度額および控除率を平成17年居住分以降も適用すること。
  2. 住宅ローン利子の所得控除制度の創設を検討すること。

住宅は国民の重要かつ基盤となる資産である。また、住宅投資の拡大に伴う経済活性化の効果は大きく、わが国経済の現下の回復基調をより確実なものとするためにも、住宅投資の促進が求められている。

平成16年度税制改正では、住宅借入金等の所得税額の特別控除制度を平成17年以降毎年段階的に縮小し、平成20年に廃止することとされたが、景気回復局面に入ったわが国経済を下支えしていくためには、同制度は引続き重要である。平成16年居住分の年末残高の限度額および控除率を平成17年居住分以降も適用することを要望する。

また、今後の住宅取得促進税制の恒久化等を視野に入れて、住宅ローン利子の所得控除制度の創設を検討すべきである。

(2) 登録免許税の税率をその手数料的な性格から低額の定額税率とする等、軽減・簡素化すること。特に、貸出債権取引市場の発展のため、(根)抵当権の移転に係る登録免許税を軽減すること。

現行の登録免許税は、手数料的な性格を持つ流通税であるにもかかわらず負担が極めて重く、わが国経済の構造改革のために必要な企業の組織再編成や不動産取引等の経済取引に影響を与え、経済の活性化を阻害している面がある。

平成15年度税制改正においては、土地取引の活性化等の観点から、不動産登記に係る登録免許税のうち、所有権の移転等に係る税率は引き下げられたが、金融機関にとって関係の深い(根)抵当権の移転に係る税率は見直されていない。

したがって、登録免許税が持つ手数料的な性格を踏まえ、低額の定額税率とする等、税率構造を大幅に見直すことを要望する。特に、不良債権処理をはじめとする資産流動化に資する貸出債権取引市場の発展のため、 (根)抵当権の移転に係る登録免許税を大幅に軽減することを要望する。

(3) 印紙税について、金融取引に悪影響を及ぼさないよう、軽減・簡素化すること。

印紙税は、本来軽微であるべき流通税としては極めて高い税率となっており、金融取引に悪影響を及ぼさないよう、その整理、簡素化を図るべきである。

また、郵便貯金や政府系金融機関に関する書類(通帳、証書、受領書等)に対しては印紙税が課されておらず、同じ金融取引でありながら、民間金融機関との間に大きな不権衡が生じているため、早急にその格差是正を図ることを要望する。

(4) 財形制度における退職等の事由による非課税期間を、転職等に伴う非課税継続措置が認められる期間(2年間)に合わせること。

財形制度は、勤労者の財産形成・生活の安定、ひいては国民経済の発展に寄与する重要な制度である。

財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄を行う勤労者が退職等をした場合、非課税措置の不適格事由に該当するが、計算期間が1年超の利子等については、退職後1年までに発生するものは非課税とされている(退職等の事由による非課税期間)。一方で、勤労者が一定期間(非課税継続適用期間)内に転職等した場合には、非課税措置を継続できることとされており、平成16年度税制改正により、この非課税継続適用期間が退職等した日から2年間(従来は1年間)に延長された。

この結果、勤労者が退職等をすると退職後1年以降に発生する利子等については課税扱いとされ、当該利子等について金融機関が源泉徴収した場合、その後2 年以内に転職等による非課税措置の継続がなされると還付請求が必要となる等、利用する顧客にとって理解しがたいものとなっており、金融機関の事務負担も大きい。

したがって、財形制度における退職等の事由による非課税期間を、転職等に伴う非課税継続措置が認められる期間(2年間)に合わせることを要望する。

4.適切な経営環境を確保するために

わが国金融機関は、顧客サービスの質の向上や収益性・効率性の強化に向けて、合併・統合等を通じた組織再編成を積極的に行い、内外の子会社等を含めた効率的なグループ経営を一層高度化している。しかしながら、こうした経営努力を行う過程で多額の税負担が発生し、円滑な組織再編の阻害要因となるケースも発生している。わが国金融機関の自助努力を後押しする観点から、税制面における一層の経営環境整備が必要不可欠である。

(1) 連結納税制度の見直しを行うこと。具体的には、

  1. 連結納税グループへの子会社の新規加入時の資産時価評価について、円滑な金融再編を阻害しないよう措置を講ずること。
  2. 連結納税採用時等における繰越欠損金の使用制限を緩和すること。

わが国金融機関は、欧米と同様、既に本格的なグループ経営の時代に突入しており、グループ経営の効率性向上、国際的競争力の維持・強化のためには、経済環境の変化に応じて組織形態を柔軟に変更し、経営資源を効率的に活用することが求められている。

このような背景から、平成14年度税制改正において、わが国企業の組織再編成に対応し経済構造改革に資することを目的として連結納税制度が創設され、平成16年度税制改正において、その採用の障害となっていた連結付加税が廃止された。

しかしながら、銀行および銀行持株会社にとっては、依然として連結納税制度の採用に当たっては、いくつか障害となる規定がある。特に子会社が新規に加入する際の資産の時価評価や、連結納税採用時等の子会社の繰越欠損金の使用制限等が、連結納税の採用を思いとどまらせており、現状では、多くの金融機関が連結納税を採用していない。

したがって、制度創設の趣旨に立ち返り、連結納税制度の利用を促進する観点から、①連結納税グループへの子会社の新規加入時の資産時価評価について、円滑な金融再編を阻害しないよう措置を講ずること、②連結納税採用時等における繰越欠損金の使用制限を緩和する等、連結納税制度を見直すことを要望する。

(2) 金融機関等が会社分割・合併等を行った場合における(根)抵当権の移転に係る登録免許税を非課税とすること。少なくとも、会社分割について講じられている現行の軽減措置について、合併と同等となるよう、軽減税率の適用期限および移転登記の期限(権利取得後3年以内)を撤廃もしくは延長すること。

わが国金融機関は、経営体力の強化、グループの競争力向上等のため、会社分割・合併等による統合・再編を積極的に行っているが、こうした組織再編成を行った際に、税法上の規定により多額の税負担が発生する場合がある。具体的には、銀行や銀行の子会社等である住宅ローン保証会社は、その業務の性質上、膨大な件数・金額の(根)抵当権を設定しているが、こうした(根)抵当権者である金融機関等が会社分割・合併を行った際には、事実上、形式的な(根)抵当権の移転のために多額の登録免許税負担が発生する。

今後、会社分割・合併等の組織再編成が引き続き予想されるなかで、こうした登録免許税の負担は円滑な組織再編を阻害しかねない。したがって、金融機関等の組織再編成の円滑化の観点から、登録免許税の非課税化が必要であり、少なくとも会社分割について講じられている現行の軽減措置について、合併と同等となるよう、軽減税率の適用期限及び移転登記の期限(権利取得後3年以内)の撤廃もしくは延長を要望する。

(3) 外国税額控除制度およびタックスヘイブン税制を見直すこと。具体的には、

  1. 外国税額控除の繰越控除限度額および繰越控除対象外国法人税額の繰越期間(現行3年間)を延長すること。
  2. 間接外国税額控除の対象を曾孫会社以下まで拡大すること。
  3. タックスヘイブン税制における合算課税済留保金額の損金算入可能期間(現行5年間)に係る制限を撤廃すること。少なくとも損金算入可能期間を延長すること。また、課税対象未処分所得の計算にあたり、「配当可能利益を構成しない利益」を控除すること。

海外拠点の新設、統廃合、企業買収・売却等が積極的に行われるなか、外国税額控除制度は、国際的な二重課税を排除する制度として重要な役割を果たしている。昨今では、わが国金融機関においても、事業再構築の一環として、海外子会社の売却等が進められており、海外において売却益が発生するケースも生じている。しかしながら、わが国の現行の外国税額控除制度においては、繰越控除限度額等の繰越期間が3年とされていること等から、部分的に国際的な二重課税が発生するケースが生じている。

また、組織再編成の一環として、海外において従来の事業持株会社の上位にさらに統轄持株会社を設立し、その結果、事業持株会社傘下で実際に事業を行う会社の形態が、従来の孫会社から曾孫会社に変更になる事例も発生している。しかしながら、曾孫会社は間接外国税額控除の対象とならず、国際的な二重課税を回避できないという問題が生じている。

したがって、外国税額控除の繰越控除限度額(余裕額)および繰越控除対象外国法人税額(限度超過額)の繰越期間を少なくとも5年に延長するとともに、間接外国税額控除の対象を曾孫会社以下まで拡大することを要望する。

さらに、タックスヘイブン税制において、課税済留保金額を課税済配当等の額を限度に損金算入できる期間は、配当支払等の前5年以内の課税済留保金額に限られている。しかしながら、こうした期間制限によって、二重課税が部分的に生じるおそれがある。平成16年度税制改正によって帳簿の保存期間が5年から7 年に延長されたことを踏まえ、損金算入可能期間を少なくとも7年に延長することを要望する。また、課税対象未処分所得の計算にあたり、「配当可能利益を構成しない利益」を控除することも併せて要望する。