2005年9月20日

全国銀行協会

平成18年度税制改正に関する要望

1.金融・資本市場の活性化と国際的な取引の推進のために
(1)金融所得課税の一体化の推進
(2)確定拠出年金税制の見直し
(3)資産流動化関連税制の拡充
(4)外国金融機関等との債券現先取引に係る利子非課税措置の恒久化・適用期限の延長
(5)東京オフショア市場における源泉所得税免除措置の恒久化・適用期限の延長
(6)非居住者等に対する公社債の非課税措置の拡充
2.金融機関の適切な経営環境を確保するために
(1)不良債権の無税償却基準の見直しおよび欠損金の繰戻還付制度等の拡充
(2)連結納税制度の見直し
(3)金融機関の組織再編成の円滑化のための税制の見直し
(4)外国税額控除制度の見直し
(5)銀行協会に係る非営利法人課税
3.経済活性化と課税の適正化のために
(1)IT投資促進税制の適用期限の延長
(2)住宅取得の促進に資する税制措置の拡充
(3)登録免許税の軽減・簡素化
(4)印紙税の軽減・簡素化

1.金融・資本市場の活性化と国際的な取引の推進のために

わが国経済は回復を続けており、長期の停滞から民需中心の成長に移行しつつある。こうしたなか、デフレからの脱却を確実なものとし、わが国経済が自律的な成長軌道をたどるようにするためには、資金仲介機能を担う金融・資本市場の活性化を図ることが大切である。そのためには、税制面からも金融所得課税の一体化や確定拠出年金税制の見直し等を通じて、個人金融資産を効率的に活用できる魅力的な金融・資本市場の確立を後押ししていく必要がある。

また、金融のグローバル化が進展するなか、わが国金融・資本市場のプレゼンスを向上させる観点からも、非居住者等に係る税制措置の拡充等、国際的な金融取引の推進に資する税制を整備していくことが重要である。

(1) 金融所得課税の一体化を推進すること。具体的には、

  1. 課税方式の均衡化を図るとともに、損益通算を幅広く認めること。なお、公募株式投資信託の償還(解約)益については、早急に措置を講ずること。
  2. 納税の仕組みについては、実効性のある制度とするとともに、その導入にあたっては十分な準備期間を設けること。

少子高齢化に伴う貯蓄率の低下に伴い、個人金融資産を効率的に活用することが、わが国経済の活力を維持するための鍵となっており、魅力的な金融・資本市場を構築する観点から、個人投資家にとって簡素でわかりやすく、中立的な税制の整備が喫緊の課題となっている。こうした背景から、昨年6月に政府税制調査会から、「金融所得課税の一体化についての基本的考え方」が示され、金融商品に対する課税方式を均衡化し、損益通算の範囲を出来る限り広げていく方向性が打ち出された。

個人投資家にとって魅力のある効率的な金融・資本市場とは、金融商品がリスクに見合ったリターンを形成し、個人投資家のリスク選好に応じて自由に金融商品を選択できる市場であり、そのためには、金融商品に対する課税が簡素でわかりやすく、かつ金融取引における選択を歪めることのない形にする必要がある。その際、実効性のある税制を構築する観点から、個人投資家の税制面の事務負担や商品を提供する金融機関の負担や準備期間に十分配慮することが、実務上きわめて重要である。

したがって、金融所得課税の一体化にあたっては、1.金融資産に対する課税の簡素化・中立化を図る観点から、実務面における十分な検討を踏まえ、課税方式の均衡化を図るとともに、預金を含め損益通算を幅広く認めること、さらに、2.具体的な納税の仕組みについては、実務面から十分な検討を行い、納税者、金融機関が受入可能な実効性のある制度とするとともに、その導入に当たって十分な準備期間を設けること、をセットで要望する。

なお、現行の税制では、公募株式投資信託および株式等の譲渡損益の通算が認められているが、公募株式投資信託の償還(解約)益は損益通算の対象に含まれていない。投資家にとって償還(解約)と譲渡とは経済的にみて実質的に差異はなく、税制面でも同じ取扱いとすることが適当である。個人投資家にとってよりわかり易い税制とする観点からも、公募株式投資信託の償還(解約)益については、他の公募株式投資信託の償還(解約)損や株式等の譲渡損との通算を早急に実現することを要望する。

(2) 確定拠出年金税制を見直すこと。具体的には、

  1. 拠出限度額を引き上げるとともに、マッチング拠出を認めること。
  2. 退職年金等積立金に対する特別法人税を撤廃すること。

高齢化社会における自助努力による老後の生活保障を図る観点から、公的年金を補完するものとして、確定拠出年金の果たす役割は大きい。厚生年金基金の解散が増加するなど、既存の企業年金を取り巻く環境が厳しくなるなか、その重要性はますます高まっている。こうしたことから、確定拠出年金に係る税制は、欧米における同種の年金と同様に、拠出時・運用時非課税、給付時課税を基本として、十分な優遇措置が講じられるべきである。

平成16年度税制改正において、確定拠出年金の拠出限度額が引き上げられたが、老後に必要とされる生活資金の水準や、確定給付年金制度に拠出限度額が設けられていない点等を勘案し、拠出限度額の一段の引き上げ、および企業型年金加入者による追加拠出(いわゆる「マッチング拠出」)を認めることを要望する。

また、平成16年度税制改正において、公的年金等控除の縮小および老年者控除の廃止がなされる等、給付時課税に対する優遇措置が縮小されていることに鑑み、運用時課税となる退職年金等積立金に対する特別法人税について、現在のような時限的な課税停止措置ではなく、これを撤廃することを要望する。

(3) 資産流動化関連税制を拡充すること。具体的には、

  1. SPC(特定目的会社)等を通じた資産流動化に係る登録免許税の特例措置の適用期限を延長すること。
  2. SPC等が支払う利益配当について、損金算入要件を緩和すること。

資産流動化はリスク分散・管理のための極めて有力な手段であると同時に、一般企業や内外投資家に対しても多様な資金調達手段や投資商品の選択肢を提供するものである。こうした観点から、平成10年9月からいわゆるSPC法が施行され、さらに平成12年5月に、SPC法および投信法の改正が行われた。税制面においては、SPC等(以下、特定目的会社(SPC)と投資法人の両者を「SPC等」と総称する)を通じた資産流動化における所有権等の移転に係る登録免許税軽減等の特例措置が講じられたほか、配当可能所得の90%超を配当する等の要件を満たす場合、当該配当を損金算入する規定の整備が図られた。

流動化資産の受皿にすぎないSPC等に担税力はなく、課税はただちにこれらの発行する証券の利回り低下をもたらし、資産の流動化を阻害する。経済活性化の観点から、金銭債権や不動産等の資産流動化促進が求められるなか、こうした資産流動化のツールであるSPC等の税負担は、極力軽減されることが必要である。

したがって、SPC等を通じた資産流動化における所有権・抵当権等の移転に係る登録免許税の特例措置の適用期限(平成18年3月末)を延長することを要望する。

また、SPC等の利益配当について損金算入が認められる要件について、事後的に配当が配当可能所得の90%以下となった場合の宥恕措置を導入する、適格機関投資家以外からの借入を認める等、資産流動化のために国内SPC等をより一層活用する観点から、一段の緩和措置を講ずることを要望する。

(4) 外国金融機関等が特定金融機関等との間で行う債券現先取引(いわゆる外債レポ取引)により支払を受ける利子の非課税措置を恒久化すること。少なくとも適用期限を延長すること。

わが国金融機関は保有する外債をもとに特定金融機関等(証券会社等)を通じて外国金融機関等から外貨を調達しているが、この一連の取引の中では、特定金融機関等と外国金融機関等との間で、外債を使った債券現先取引(いわゆる外債レポ取引)が行われている。

円滑な国際金融取引の確保等の観点から、外国金融機関等が特定金融機関等との間で行う債券現先取引により支払を受ける利子については、時限措置として非課税措置が創設されたが、わが国金融機関の円滑な外貨資金調達や金融・資本市場の国際的なプレゼンス向上等の観点から、同措置の恒久化を要望する。少なくとも現行の特例措置の適用期限(平成18年3月末)の延長を要望する。

(5) 東京オフショア市場における源泉所得税免除措置を恒久化すること。少なくとも適用期限を延長すること。

東京オフショア市場は、本邦金融市場の国際化、円の国際化の促進に資するため、昭和61年12月に創設された。取引の自由度や利便性が海外の主要オフショア市場にできるだけ近いことが重要とされ、源泉所得税についても租税特別措置として免除措置がとられてきた。

今後も、わが国金融市場は、国際金融センターとして一層の発展が期待されており、東京オフショア市場において、海外の主要オフショア市場と同様、将来にわたって源泉所得税を課さないことを明確化するため、現行の源泉所得税免除措置を恒久化することを要望する。少なくとも、現行の免除措置の適用期限(平成 18年3月末)を延長することを要望する。

(6) 非居住者等に対する公社債の非課税措置を拡充すること。具体的には、非居住者等の受け取る国債以外の振替制度を利用した公社債の利子について非課税措置を設けること。

海外投資家によるわが国公社債への投資の円滑化は、わが国資本市場の国際化、円の国際化、公社債市場の流動性向上等に資するものであり、こうした観点から、国債についての非課税措置が設けられ、数次の改正で拡充されてきた。

わが国資本市場の活性化と国際化をさらに進める観点から、国債以外の公社債の振替制度が平成18年1月に開始されることに合わせ、非居住者等が同制度を利用した国債以外の公社債の利子について非課税措置を適用することを要望する。なお、その際には、本邦におけるカストディ銀行の事務負担が極力軽減される制度とすることもあわせて要望する。

2.金融機関の適切な経営環境を確保するために

わが国の金融機関は、長年の懸案であった不良債権問題の解決に目処をつけ、金融システムの活性化や国際競争力の向上に向け、財務体質の一段の強化や合併・統合等を通じた組織再編成、内外の子会社等を含めたグループ経営の高度化などに積極的に取り組んでいる。

税制面においても、新たな局面を迎えた金融機関のこのような取り組みを後押しする観点から、不良債権税制や連結納税制度の見直しを進めるなど、一層の経営環境の整備が必要不可欠である。

(1) 不良債権の無税償却基準の見直しおよび欠損金の繰戻還付制度等の拡充を行うこと。具体的には、

  1. 金融機関の自己査定等に基づき、幅広く無税償却を認めること。
  2. 欠損金の繰戻還付制度の凍結措置を解除し、繰戻期間を延長するとともに、繰越期間について一段の延長を図ること。

金融庁が本年3月に公表した金融改革プログラム「工程表」では、繰延税金資産の自己資本への算入適正化ルールについて、平成17年度上期を目途に規制内容・実施時期等を盛り込んだ自己資本比率告示を改正することとされた。

しかし、繰延税金資産は、企業会計と税務上の取扱いの差異や税務上の繰越欠損金によって生じるものであり、特に、わが国においては、無税償却・引当の範囲が極めて限定的で、貸倒引当金等が税法上損金として認められる時点が遅いなかで、「金融再生プログラム」等に基づき不良債権処理を積極的に推進したことが、金融機関の繰延税金資産の発生・増加の大きな要因となってきた。

また、法人税における欠損金の繰戻還付・繰越控除制度は、事業年度ごとの課税負担を平準化し、経営の中長期的な安定性を確保するうえで重要な制度であり、今後とも企業再生および不良債権処理を促進するために不可欠である。平成16年度税制改正において、繰越期間が5年から7年に延長されたが、繰戻還付制度の見直しは見送られ、現状、繰戻期間が1年に限定されている上に平成4年度以降凍結されているなど、十分な措置が講じられているとは言いがたい。欧米主要国との比較においてもわが国の制度は著しく見劣りする。

このような状況を踏まえ、1.金融機関が実施している自己査定等に基づき、幅広く無税償却を認めること、および、2.欠損金の繰戻還付制度の凍結措置を解除し、繰戻期間(現行1年間)を少なくとも2年に延長するとともに、繰越期間(現行7年間)を10年に延長すること、なお、この場合、合併法人の欠損金を被合併法人にも繰り戻して還付できるようにするとともに、既存の繰越欠損金についても繰戻還付および繰越期間延長の対象とすること、を要望する。

(2) 連結納税制度の見直しを行うこと。具体的には、

  1. 連結納税グループへの新規加入会社の資産時価評価について、所要の措置を講ずること。
  2. 連結納税採用時等における子会社の繰越欠損金の使用制限を緩和すること。

わが国金融機関は、欧米と同様、既に本格的なグループ経営を行っており、顧客ニーズに最大限応えるとともに効率性の向上、国際的競争力の維持・強化を図るため、経済環境の変化に応じた組織形態の柔軟な変更や経営資源の効率的な活用が求められている。

このような背景から、平成14年度税制改正において、わが国企業の組織再編成に対応し経済構造改革に資することを目的として連結納税制度が創設され、平成16年度税制改正において、その採用の障害となっていた連結付加税が廃止された。

しかしながら、銀行および銀行持株会社にとっては、連結納税制度の採用に当たり、依然としていくつか障害となる規定がある。特に子会社が新規に加入する際の資産の時価評価や、連結納税採用時等の子会社の繰越欠損金の使用制限等が、連結納税の採用を思いとどまらせており、現状では、多くの金融機関が連結納税を採用していない。

したがって、制度創設の趣旨に立ち返り、連結納税制度の利用を促進する観点から、1.連結納税グループへの子会社の新規加入時の資産時価評価について、円滑な金融再編を阻害しないよう措置を講ずる、2.連結納税採用時等における繰越欠損金の使用制限を緩和する等、連結納税制度を見直すことを要望する。

(3) 金融機関の組織再編成の円滑化のための税制を見直すこと。具体的には、

  1. 銀行持株会社の受取配当の益金不算入の特例措置の適用期限を延長するとともに、適用要件を緩和すること。
  2. 金融機関等が会社分割・合併等を行った場合における(根)抵当権の移転に係る登録免許税を非課税とすること。少なくとも、会社分割について、合併と同等となるよう、現行の軽減税率の適用期限および移転登記の期限を撤廃もしくは延長すること。

法人税法における受取配当の益金不算入制度本来の趣旨からすれば、配当に係る二重課税の排除が全面的に認められるべきである。しかしながら、平成14年度税制改正において、連結納税制度創設に伴う財源措置として、受取配当の益金不算入制度が縮小された。その際、収入のほとんどを子会社(銀行等)からの配当が占め、制度縮小の影響が甚大である銀行持株会社については、金融機能の早期健全化等の観点から、特例措置が設けられた。ついては、引き続き金融機能の早期健全化等の観点から、同特例措置の適用期限(平成18年3月末)を延長するとともに、銀行の組織再編成の実態に合わせて、適用要件を緩和することを要望する。

また、わが国金融機関は、経営体力の強化、グループの競争力向上等のため、会社分割・合併等による統合・再編を積極的に行っているが、こうした組織再編成を行った際に、税法上の規定により多額の税負担が発生する場合がある。具体的には、銀行や銀行の子会社等である住宅ローン保証会社は、その業務の性質上、膨大な件数・金額の(根)抵当権を設定しているが、こうした(根)抵当権者である金融機関等が会社分割・合併を行った際には、事実上、形式的な(根)抵当権の移転のために多額の登録免許税負担が発生する。

今後、会社分割・合併等の組織再編成が引き続き予想されるなかで、こうした登録免許税の負担は円滑な組織再編成を阻害しかねない。したがって、金融機関等の組織再編成の円滑化の観点から、登録免許税を非課税とすることを要望する。少なくとも会社分割について講じられている現行の軽減措置について、合併と同等となるよう、軽減税率の適用期限(平成18年3月末)および移転登記の期限(権利取得後3年以内)の撤廃もしくは延長を要望する。

(4) 外国税額控除制度を見直すこと。具体的には、

  1. 繰越控除限度額および繰越控除対象外国法人税額の繰越期間を延長すること。
  2. 間接外国税額控除の対象を曾孫会社以下まで拡大すること。

海外拠点の新設、統廃合、企業買収・売却等が積極的に行われるなか、外国税額控除制度は、国際的な二重課税を排除する制度として重要な役割を果たしている。昨今では、わが国金融機関においても、事業再構築の一環として、海外子会社の売却等が進められており、海外において売却益が発生するケースも生じている。しかしながら、わが国の現行の外国税額控除制度においては、繰越控除限度額等の繰越期間が3年とされていること等から、部分的に国際的な二重課税が発生するケースが生じている。

また、組織再編成の一環として、海外において従来の事業持株会社の上位にさらに統轄持株会社を設立し、その結果、事業持株会社傘下で実際に事業を行う会社の形態が、従来の孫会社から曾孫会社に変更になる事例も発生している。しかしながら、曾孫会社は間接外国税額控除の対象とならず、国際的な二重課税を回避できないという問題がある。

したがって、外国税額控除の繰越控除限度額(余裕額)および繰越控除対象外国法人税額(限度超過額)の繰越期間を少なくとも5年に延長するとともに、間接外国税額控除の対象を曾孫会社以下まで拡大することを要望する。

(5) 銀行協会に係る非営利法人課税に関して、法人税等の取扱いを現状の公益法人課税と同等の内容とすること。

全銀協ならびに地方に所在する65銀行協会は、経済活動を支える手形交換制度や各種決済制度の企画・運営、一般消費者を対象とする相談業務などわが国経済の発展に資する非営利事業を営んでおり、その大多数は民法第34条に基づく社団法人となっている。

現在、政府において、現行の公益法人制度を抜本的に見直すなかで、「新たな非営利法人制度」の法制化に向けた具体的な制度設計に関する検討が進められている。税制面については、政府税制調査会が本年6月に「新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方」と題する報告書をとりまとめた。

今後、上記の報告書に基づき具体化に向けた検討が行われるが、民間による非営利活動を促進・支援する観点から、銀行協会に係る非営利法人課税に関し、法人税、所得税、印紙税、法人住民税、法人事業税、固定資産税等の取扱いを現状の公益法人課税と同等の内容とすることを要望する。

3.経済活性化と課税の適正化のために

わが国における現下の景気回復基調をより確固たるものとし、持続的な経済成長へと繋げていくためには、IT投資促進税制の適用期限の延長や住宅取得の促進に資する税制措置の拡充により、民間部門の投資・消費需要を喚起することが有用である。

また、金融取引を含む各種の経済取引には、その担税力に着目して登録免許税や印紙税等の流通税が課せられるケースが多いが、そうした負担は経済取引に悪影響を与え、経済の活性化を阻害している面があるため、その軽減・簡素化により、課税の適正化を図ることが必要である。

(1) IT投資促進税制の適用期限を延長すること。

IT投資の促進は、短期的な需要創出効果だけでなく、広くわが国企業全体の事業効率化、付加価値向上を通じ、中長期的な産業の競争力強化、経済社会の活性化につながると期待される。こうした考えに基づき、平成15年度税制改正において、情報通信機器等を取得した場合の特別償却または法人税額の特別控除制度(いわゆるIT投資促進税制)が創設された。

同税制は、ソフトウェア投資を含めIT投資全体を対象としていること、対象事業者を限定していないこと、企業が状況に応じて対応できるよう税額控除と特別償却の選択制とされていること、等から、広く利用されるに至っている。

金融機関にとってもIT投資は経営戦略上重要であり、また、情報セキュリティ対策に係るIT投資の必要性は、近年、一層高まっている。こうしたなか、平成16年12月に公表された「金融改革プログラム」においても、「ITの戦略的活用等による金融機関の競争力の強化」がうたわれている。

このような状況を踏まえ、現行のIT投資促進税制について、金融機関を含むわが国企業のIT投資を一層促進する観点から、適用期限(平成18年3月末)を延長することを要望する。

(2) 住宅取得の促進に資する税制措置を拡充する観点から、住宅ローン利子の所得控除制度の創設を検討すること。

住宅は国民の重要かつ基盤となる資産である。また、住宅投資の拡大に伴う経済活性化の効果は大きく、わが国経済の現下の回復基調をより確実なものとするためにも、住宅投資の促進が求められている。

しかしながら、平成16年度税制改正では、住宅借入金等の所得税額の特別控除制度を平成17年以降毎年段階的に縮小し、平成20年をもって廃止することとされた。

住宅取得の促進に資する税制措置は極めて重要であり、今後の住宅取得促進税制の恒久化等を視野に入れて、米国に見られるような、住宅ローン利子の所得控除制度の創設を検討することを要望する。

(3) 登録免許税の税率をその手数料的な性格から低額の定額税率とする等、軽減・簡素化すること。

現行の登録免許税は、手数料的な性格を持つ流通税であるにもかかわらず負担が極めて重く、わが国経済の構造改革のために必要な企業の組織再編成や不動産取引等の経済取引に影響を与え、経済の活性化を阻害している面がある。

登録免許税が持つ手数料的な性格を踏まえ、低額の定額税率とする等、大幅に軽減・簡素化することを要望する。

(4) 印紙税について、金融取引に悪影響を及ぼさないよう、軽減・簡素化すること。

印紙税は、本来軽微であるべき流通税としては極めて高い税率となっており、金融取引に悪影響を及ぼさないよう、その整理、簡素化を図るべきである。

また、現在、郵便貯金や政府系金融機関に関する書類(通帳、証書、受領書等)に対しては印紙税が課されておらず、同じ金融取引でありながら、民間金融機関との間に大きな不権衡が生じているため、早急にその格差是正を図るべきである。

こうしたことから、印紙税について軽減・簡素化することを要望する。