2007年9月17日

全国銀行協会

平成20年度税制改正に関する要望

1.金融・資本市場の活性化と国際的な取引の推進のために
(1)金融所得課税の一体化の推進
(2)確定拠出年金税制の見直し
(3)資産流動化関連税制の延長・拡充
(4)非居住者等に対する利子等の非課税措置の拡充
(5)外国金融機関等との債券現先取引に係る利子非課税措置の恒久化・適用期限の延長
(6)東京オフショア市場における源泉所得税免除措置の恒久化・適用期限の延長
(7)租税条約に関する手続の簡素化・合理化
2.経済活性化と課税の適正化のために
(1)住宅取得の促進に資する税制措置の拡充等
(2)株券等の電子化に伴う特定口座制度の整備
(3)印紙税の軽減・簡素化
(4)登録免許税の軽減・簡素化
3.適切な経営環境を確保するために
(1)貸倒れに係る無税償却・引当基準の見直しおよび欠損金の繰戻還付制度等の拡充
(2)外国税額控除制度の拡充
(3)銀行協会に係る非営利法人課税

1.金融・資本市場の活性化と国際的な取引の推進のために

わが国経済は緩やかな拡大を続けているが、これをより息の長いものとしていくためには、グローバル化や少子高齢化の進展などの金融経済環境の変化に適切に対応しながら、わが国金融・資本市場の活性化・効率化を図ることが大切である。

そのためには、1,500兆円に上るわが国の個人金融資産を有効に活用することが重要であり、税制面からも金融所得課税の一体化や確定拠出年金税制の見直し等を通じて、個人投資家にとって魅力のある効率的な金融・資本市場の確立を後押ししていく必要がある。

また、わが国金融・資本市場の国際競争力を強化する観点からも、海外の投資家にとって魅力的な市場を整備することが重要であり、非居住者等に係る税制措置の拡充等、国際的な金融取引の推進に資する税制を整備していくことが必要である。

(1)金融所得課税の一体化を推進すること。具体的には、

  1. 課税方式の均衡化を図るとともに、預金を含め損益通算を幅広く認めること。 なお、公募株式投資信託の償還(解約)益については、早急に措置を講ずること。
  2. 納税の仕組みについては、納税者や金融機関が受け入れ可能な実効性のある制度とすること。また、導入にあたっては十分な準備期間を設け、その間は、上場株式等に係る現行の軽減税率(10%)を維持すること。

少子高齢化に伴う貯蓄率の低下に伴い、個人金融資産を効率的に活用することが、わが国経済の活力を維持するための鍵となっており、魅力的な金融・資本市場を構築する観点から、個人投資家にとって簡素でわかりやすく、中立的な税制の整備が喫緊の課題となっている。こうした背景から、平成16年6月に政府税制調査会から、「金融所得課税の一体化についての基本的考え方」が示され、金融商品に対する課税方式を均衡化し、損益通算の範囲を出来る限り広げていく方向性が打ち出された。

個人投資家にとって魅力のある効率的な金融・資本市場とは、金融商品がリスクに見合ったリターンを形成し、個人投資家のリスク選好に応じて自由に金融商品を選択できる市場であり、そのためには、金融商品に対する課税は簡素でわかりやすく、かつ金融取引における選択を歪めることのない形にすることが重要である。

したがって、金融商品間の課税方式の均衡化を図るとともに、預金を含め損益通算を幅広く認める、いわゆる「金融所得課税の一体化」を推進することを要望する。

また、金融所得課税の一体化を推進するにあたっては、実効性のある税制を構築する観点から、個人投資家の税制面の事務負担や商品を提供する金融機関の負担等に十分配慮しつつ、具体的な納税の仕組みについて検討を進めることが極めて重要であるほか、円滑な導入に向けて、納税者への周知徹底や金融機関におけるシステム対応等に十分な準備期間を設け、その間は、上場株式等に係る現行の軽減税率(10%)を維持することが必要である。

なお、現行の税制では、公募株式投資信託および上場株式等の譲渡損益の通算が認められているが、公募株式投資信託の償還(解約)益は損益通算の対象に含まれていない。投資家にとって償還(解約)と譲渡とは経済的にみて実質的に差異はなく、税制面でも同じ取扱いとすることが適当である。個人投資家にとってよりわかり易い税制とする観点からも、公募株式投資信託の償還(解約)益については、他の公募株式投資信託の償還(解約)損や上場株式等の譲渡損との通算を早急に実現することを要望する。

(2)確定拠出年金税制を見直すこと。具体的には、

  1. 退職年金等積立金に対する特別法人税を撤廃すること。少なくとも課税停止期限(平成20年3月末)を延長すること。
  2. 拠出限度額を引き上げること。
  3. マッチング拠出を容認すること。

高齢化社会における自助努力による老後の生活保障を図る観点から、公的年金を補完するものとして、確定拠出年金の果たす役割は大きく、平成23年度末に廃止が予定されている適格退職年金制度の受け皿の1つとして、その重要性はますます高まってきている。また、確定拠出年金の一層の普及は、より多くの加入者である個人に対して投資性商品を選択する機会を提供し、「貯蓄から投資へ」の流れを後押しすることにも繋がる。

平成18年10月には確定拠出年金法の施行から5年が経過し、厚生労働省の企業年金研究会において、本制度をはじめとした企業年金制度の施行状況の検証を行うなど、制度見直しに向けた検討が進められているところであるが、確定拠出年金に係る税制については、欧米における同種の年金と同様に、拠出時・運用時非課税、給付時課税を基本として、十分な優遇措置が講じられるべきである。

特に、平成16年度税制改正において、公的年金等控除の縮小および老年者控除の廃止がなされる等、給付時課税に対する優遇措置が縮小されていることに鑑み、運用時課税となる退職年金等積立金に対する特別法人税を撤廃することを要望する。少なくとも、現行の課税停止措置の適用期限(平成20年3月末)の延長を要望する。

また、平成16年度には、確定拠出年金の拠出限度額の一部引上げが行われたが、老後に必要とされる生活資金の水準や、確定給付企業年金制度に拠出限度額が設けられていない点等を勘案し、拠出限度額の一段の引上げ、および企業型年金加入者による追加拠出(いわゆる「マッチング拠出」)を認めることを要望する。

(3)資産流動化関連税制を拡充すること。具体的には、

  1. SPC(特定目的会社)等を通じた資産流動化に係る登録免許税の特例措置の適用期限を延長すること。
  2. SPC等が支払う利益配当について、損金算入要件を緩和すること。

資産流動化はリスク分散・管理のための極めて有力な手段であると同時に、一般企業や内外投資家に対しても多様な資金調達手段や投資商品の選択肢を提供するものである。こうした観点から、平成10年9月からいわゆるSPC法が施行され、さらに平成12年5月に、SPC法および投信法の改正が行われた。

税制面においては、SPC等(以下、特定目的会社(SPC)と投資法人の両者を「SPC等」と総称する)を通じた資産流動化における所有権等の移転に係る登録免許税軽減等の特例措置が講じられたほか、配当可能所得の90%超を配当する等の要件を満たす場合、当該配当を損金算入する規定の整備が図られた。

流動化資産の受皿にすぎないSPC等に担税力はなく、課税はただちにこれらの発行する証券の利回り低下をもたらし、資産の流動化を阻害する。経済活性化の観点から、金銭債権や不動産等の資産流動化促進が求められるなか、こうした資産流動化のツールであるSPC等の税負担は、極力軽減されることが必要である。

したがって、SPC等を通じた資産流動化における所有権・抵当権等の移転に係る登録免許税の特例措置の適用期限(平成20年3月末)を延長することを要望する。

また、現行制度では、SPC等が借入を行う場合、利益配当の損金算入が認められる要件として、借入先が適格機関投資家のみに限定されているが、証券化市場のさらなる発展を通じて、金融システム全体のリスクシェアリング機能を高める観点から、一定の要件を満たす場合について、CMBS(商業用不動産ローン担保証券)の発行体からの借入も認めることを要望する。

(4)非居住者等に対する利子等の非課税措置を拡充すること。具体的には、

  1. 非居住者等が受け取る民間国外債の利子等の非課税措置を恒久化すること。少なくとも適用期限を延長すること。
  2. 非居住者等が受け取る振替制度を利用した社債の利子について非課税措置を講じること。

企業活動がグローバル化し、国際的な金融取引が活発化するなか、効率的で多様な資金調達手段を確保することがわが国企業の国際競争力の維持・向上のために重要であり、わが国企業が発行する外債の円滑な消化に資する非居住者等の受け取る民間国外債の利子等の非課税措置の果たす役割は非常に大きい。また、本制度は、海外投資家のユーロ円債への投資を促進することを通じて、円の国際化等にも繋がるものである。

したがって、非居住者等の受け取る民間国外債の利子等の非課税措置を恒久化することを要望する。少なくとも、現行の特例措置の適用期限(平成20年3月末)の延長を要望する。

また、海外投資家によるわが国公社債への投資を円滑化することは、わが国資本市場の活性化や国際化、円の国際化、公社債市場の流動性向上等に資するものであり、こうした観点から、国債や地方債の利子について非課税措置が設けられているが、社債については、その利子について、非課税措置が設けられていない。

わが国資本市場の活性化や国際化・アジアゲートウェイ機能強化等をさらに進める観点から、非居住者等の受け取る振替制度を利用した国債・地方債以外の社債の利子について非課税措置を設けることを要望する。なお、その際には、本邦におけるカストディ銀行の事務負担にも十分配慮した仕組みとすることもあわせて要望する。

(5)外国金融機関等が特定金融機関等との間で行う債券現先取引(いわゆる外債レポ取引)により支払を受ける利子の非課税措置を恒久化すること。少なくとも適用期限を延長すること。

わが国金融機関は保有する外債をもとに特定金融機関等(証券会社等)を通じて外国金融機関等から外貨を調達しているが、この一連の取引の中では、特定金融機関等と外国金融機関等との間で、外債を使った債券現先取引(いわゆる外債レポ取引)が行われている。

円滑な国際金融取引の確保等の観点から、外国金融機関等が特定金融機関等との間で行う債券現先取引により支払を受ける利子については、時限措置として非課税措置が創設されたが、わが国金融機関の円滑な外貨資金調達や金融・資本市場の国際的なプレゼンス向上等の観点から、同措置の恒久化を要望する。少なくとも、現行の特例措置の適用期限(平成20年3月末)の延長を要望する。

(6)東京オフショア市場における源泉所得税免除措置を恒久化すること。少なくとも適用期限を延長すること。

東京オフショア市場は、わが国金融市場の国際化、円の国際化の促進に資するため、昭和61年12月に創設された。取引の自由度や利便性が海外の主要オフショア市場にできるだけ近いことが重要とされ、源泉所得税についても租税特別措置として免除措置がとられてきた。

今後も、わが国金融市場は、国際金融センターとしての魅力を更に向上させ、国際競争力を強化していくことが求められており、東京オフショア市場において、海外の主要オフショア市場と同様、将来にわたって源泉所得税を課さないことを明確化するため、現行の源泉所得税免除措置を恒久化することを要望する。少なくとも、現行の免除措置の適用期限(平成20年3月末)の延長を要望する。

(7)租税条約に基づき利子・配当に対する所得税の軽減・免除を受ける際の「租税条約に関する届出書」の提出に関する諸手続を簡素化・合理化すること。

わが国と諸外国との間の投資交流の促進は、相互の金融・資本市場の活性化に資するものである。このような背景から、平成16年3月に批准された新日米租税条約をはじめとして、その後英国等との間で締結された新租税条約においては、投資所得に対する源泉地国課税の軽減・免除措置が盛り込まれた。

これらの新租税条約においては、当該国の投資家が日本で支払を受ける利子・配当について軽減税率・免除の優遇措置の適用を受けるためには、利子・配当を受け取る都度、その保有する銘柄の数だけ「租税条約に関する届出書」等の必要書類を提出しており、事務代行を行っているわが国常任代理人銀行において、重い負担となっている。

また、会社法の制定後、四半期配当の実施等により企業の配当回数が増加しているほか、日米租税条約をモデルとした諸外国との租税条約の見直しなどが見込まれるため、今後は事務負担がさらに増大すると考えられる。こうした負担の増大は、将来的に、海外からの資金流入を通じたわが国金融・資本市場の発展の阻害要因となる可能性もある。したがって、「租税条約に関する届出書」の提出に関する諸手続の簡素化・合理化を要望する。

2.経済活性化と課税の適正化のために

わが国経済は、厳しい構造調整を経て、民需中心の成長を持続している。現下の景気拡大基調をより息の長いものとしていくためには、引き続き民間部門の投資・消費需要を喚起する必要がある。こうした観点から、住宅取得の促進に資する税制措置の拡充により、経済活性化の効果が大きい住宅投資の拡大を図ることは有用である。

また、金融業界の環境変化に対応して適正な課税を実現する観点から、株券等の電子化に伴う担保株式の特定口座への再受入れを可能とすることが必要である。このほか、財務会計における時価主義の適用に伴って生じている税務会計との乖離(売買目的で保有する金銭債権に係る評価方法等)を縮小することなどの見直しを図ることも必要である。

さらに、金融取引を含む各種の経済取引には、担税力に着目して登録免許税や印紙税等の流通税が課せられるケースが多いが、こうした負担は経済取引に悪影響を与え、経済の活性化を阻害している面があるため、その軽減・簡素化により、課税の適正化を図ることが重要である。

(1) 住宅取得の促進に資する税制措置の拡充等を行うこと。

住宅は国民の重要かつ基盤となる資産である。また、住宅投資の拡大に伴う経済活性化の効果は大きく、わが国経済の現下の景気拡大基調をより息の長いものとするためにも、住宅投資の促進が求められている。

しかしながら、平成16年度税制改正では、住宅借入金等の所得税額の特別控除制度を平成17年以降毎年段階的に縮小し、平成20年末をもって廃止することとされた。

住宅取得の促進に資する税制措置は極めて重要であり、現行制度の適用が平成20年居住分までとされていることを踏まえて、住宅取得促進税制の恒久化等も視野に入れて、住宅取得の促進に資する税制措置の拡充等を検討することを要望する。

(2) 株券等の電子化に伴い、顧客が担保として銀行に差し入れる特定口座内の上場株式等について、特定口座への再受入れを可能とすること。

現在、個人事業主や企業等の顧客が銀行等の金融機関から融資を受ける場合の担保として、個人事業主等の保有する上場株式の現物株券等が利用されている。

しかしながら、株券等の電子化(平成21年1月予定)後は、上場株式の現物株券等を担保として利用することができなくなり、証券口座を通じた担保設定が必要となる。その際、顧客は特定口座内の上場株式等を担保に供することが考えられるが、当該上場株式等が担保解除等により返戻される場合、元の特定口座での再受入れは認められていない。

特定口座の利用が広がるなか、担保に供した上場株式等の再受入れが認められず、特定口座のメリットを享受できなくなることは、顧客の特定口座利用の利便性を損なうとともに、上場株式等の担保利用に対する阻害要因となる懸念がある。

したがって、顧客が銀行借入の担保に供した上場株式等(異なる口座管理機関の間で振替が行われた場合を含む)について、特定口座への再受入れを可能とすることを要望する。

(3)印紙税について、金融取引に悪影響を及ぼさないよう、軽減・簡素化すること。

印紙税は、本来軽微であるべき流通税としては極めて高い税率となっており、金融取引に悪影響を及ぼさないよう整理し、軽減・簡素化することを要望する。

(4)登録免許税の税率をその手数料的な性格から低額の定額税率とする等、軽減・簡素化すること。

現行の登録免許税は、手数料的な性格を持つ流通税であるにもかかわらず負担が極めて重く、わが国経済の構造改革のために必要な企業の組織再編成や、資産流動化等の経済取引に影響し、その活性化を阻害している面がある。

登録免許税が持つ手数料的な性格を踏まえ、低額の定額税率とする等、大幅に軽減・簡素化することを要望する。

3.適切な経営環境を確保するために

わが国金融機関は、不良債権問題から脱却し、企業価値のさらなる向上を図るための成長戦略を着実に実践していく局面を迎えている。もっとも、国際的に見れば、収益性や資本の質という点では依然として劣後しており、わが国経済の持続的成長に資する金融システムを構築するためにも、経営基盤の一層の強化が求められている。

税制面においても、金融仲介機能の向上や国際競争力の強化に向けた金融機関の取組みを後押しする観点から、諸外国に比べ見劣りする不良債権関連税制や外国税額控除制度の見直しを進めるなど、経営環境の一層の整備が必要不可欠である。

(1) 貸倒れに係る無税償却・引当基準の見直しおよび欠損金の繰戻還付制度等の拡充を行うこと。具体的には、

  1. 貸倒れに係る無税償却・引当の範囲を拡大すること。
  2. 欠損金の繰戻還付制度の凍結措置を解除し、繰戻期間(現行1年間)の延長等を図ること。

わが国金融界の長年の懸案であった不良債権問題は克服したものの、その過程においては、貸倒れに係る企業会計と税務上の取扱いの差異や税務上の繰越欠損金などによって、多額の繰延税金資産が発生するという課題が生じた。

今後、わが国経済の持続的成長に資する金融システムを構築するうえでは、繰延税金資産の発生・増加につながる課題は予め解決しておく必要があり、そのためにも、金融機関が実施している自己査定等に基づき幅広く無税償却・引当を認めるなど、貸倒れに係る企業会計と税務上の取扱いの差異はできる限り縮小させていくことが望ましい。少なくとも、現行制度と経済実態との乖離を縮小させるため、貸倒れに係る無税償却・引当の範囲や実務上の取扱い等について、見直しを進めていくことが重要である。

また、法人税における欠損金の繰戻還付・繰越控除制度は、事業年度ごとの課税負担を平準化し、経営の中長期的な安定性を確保するうえで重要な制度であるが、繰戻還付制度については、現状、繰戻期間が1年に限定されているうえに平成4年度以降凍結されているなど、十分な措置が講じられているとは言いがたく、欧米主要国との比較においても、わが国の制度は明らかに見劣りする。

このような状況を踏まえ、①まずは、法的整理手続き開始の申立てがあった場合の個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入割合(現行50%)を引き上げるなど、貸倒れに係る無税償却・引当の範囲を拡大すること、および、②平成20年3月末に期限が到来する欠損金の繰戻還付制度の凍結措置を解除し、繰戻期間(現行1年間)を少なくとも2年に延長すること、なお、この場合、合併法人の欠損金を被合併法人にも繰り戻して還付できるようにすること、等を要望する。

(2) 外国税額控除制度を見直すこと。具体的には、

  1. 繰越控除限度額および繰越控除対象外国法人税額の繰越期間を延長すること。
  2. 間接外国税額控除の対象を曾孫会社以下まで拡大すること。

海外拠点の新設、統廃合、企業買収・売却等が積極的に行われるなか、外国税額控除制度は、国際的な二重課税を排除する制度として重要な役割を果たしており、わが国企業の国際的な業務展開を支えている。わが国金融機関においても、過去に海外子会社の売却等に伴う売却益が発生したものの、現行の外国税額控除制度においては、繰越控除限度額等の繰越期間が3年とされていること等から、部分的に国際的な二重課税が発生したケースがある。

また、組織再編成の一環として、海外において従来の事業持株会社の上位にさらに統轄持株会社を設立し、その結果、事業持株会社傘下で実際に事業を行う会社の形態が、従来の孫会社から曾孫会社に変更になる事例も発生している。しかしながら、曾孫会社は間接外国税額控除の対象とならず、国際的な二重課税を回避できないという問題がある。

したがって、外国税額控除の繰越控除限度額(余裕額)および繰越控除対象外国法人税額(限度超過額)の繰越期間を少なくとも5年に延長するとともに、間接外国税額控除の対象を曾孫会社以下まで拡大することを要望する。

(3) 銀行協会に係る非営利法人課税に関して、法人税等の取扱いを現状の公益法人課税と同等の内容とすること、および、「専ら会員のための共益的事業活動を行う非営利法人」について会員からの会費等を非課税とすること等の措置を講じること。

全銀協ならびに地方に所在する61銀行協会は、経済活動を支える手形交換制度や各種決済制度の企画・運営、一般消費者を対象とする相談業務など、わが国経済の発展と国民生活の安定向上に資する非営利事業を営んでおり、その大多数は民法第34条に基づく社団法人となっている。

現在、政府においては、昨年成立した公益法人制度改革関連法に基づき、現行の公益法人制度を抜本的に見直すための具体的な制度運営に関する検討が進められている。また、税制面については、政府税制調査会が平成17年6月に「新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方」と題する報告書をとりまとめたほか、平成18年12月の与党税制改正大綱においては、「公益法人制度改革については、制度の詳細設計を踏まえ、平成20年中に予定される新制度施行までの間に、それに対応した税制上の措置を講ずる」とされており、平成20年度改正において具体的な措置が講じられる。

具体的な措置を講じる際には、民間による非営利活動を促進・支援する観点から、銀行協会に係る非営利法人課税に関し、法人税、所得税(利子配当等課税)、印紙税、法人住民税、法人事業税、固定資産税等の取扱いを現状の公益法人課税と同等の内容とすること、および、「専ら会員のための共益的事業活動を行う非営利法人」について会員からの会費等を非課税とすること等を要望する。