2009年9月24日

全国銀行協会

平成22年度税制改正に関する要望

1.金融・資本市場の競争力強化と国際的な取引の推進のために
(1)金融所得課税の一体化の推進等
(2)非居住者等に対する利子等の非課税措置の拡充
(3)確定拠出年金税制の見直し
(4)資産流動化関連税制の拡充
(5)新たな形態の取引に係る税制の整備
2.適切な経営環境を確保するために
(1)貸倒れに係る無税償却・引当基準の見直しおよび欠損金の繰越控除・繰戻還付制度の拡充
(2)国際課税の見直し
(3)企業グループに関連する税制の見直し
(4)公益法人関係税制の整備
3.経済の活性化と課税の適正化のために
(1)住宅取得の促進に資する税制措置の拡充等
(2)印紙税の軽減・簡素化
(3)登録免許税の軽減・簡素化

1.金融・資本市場の競争力強化と国際的な取引の推進のために

 経済活動のグローバル化や少子高齢化が進展するなか、わが国経済が今後も持続的に成長するためには、金融・資本市場の競争力を強化し、その魅力を向上させていくことが大切である。そのためには、1,400兆円を超える家計部門の金融資産に適切な投資機会を提供することが重要であり、金融所得課税の一体化の推進や確定拠出年金税制の見直し等を通じて、個人投資家にとって利便性の高い効率的な金融・資本市場の構築を後押ししていくことが必要である。
 また、国際的な市場間競争が一層激化するなか、わが国金融・資本市場が内外の利用者の多様なニーズに応えていく観点から、非居住者等に対する非課税措置の拡充や事務手続きの簡素化等、国際的な金融取引の推進に資する税制を整備していくことも求められる。
 さらに、金融機関がこれまで以上に多様で質の高いサービスを提供し、わが国金融・資本市場を支えていくために、新たな形態の取引に係る税制等、時代のニーズにマッチした環境整備も重要である。

(1)金融所得課税の一体化の推進等

  • 金融所得課税の一体化を推進すること。具体的には、金融資産に対する課税の簡素化・中立化の観点から、課税方式の均衡化を図るとともに、預金等を含め損益通算を幅広く認めること。
  • 納税の仕組み等については、一体化の実施時期に応じて、納税者の利便性に配慮しつつ、金融機関が対応可能な、実効性の高い制度とすること。
  • 少額の上場株式等投資のための非課税措置については、投資家の利便性および金融機関の実務負担等に配慮すること。

 少子高齢化の進展から貯蓄率が顕著な低下傾向を示すわが国では、個人金融資産の効率的な活用が経済活力を維持するための鍵となっており、効率的な金融・資本市場の構築が喫緊の課題である。そのためには、個人投資家が自らのリスク選好に応じて自由に金融商品を選択できるようにする必要があり、金融資産に対する課税は、簡素でわかりやすく、金融商品の選択に当って中立的であることが求められる。
 政府税制調査会は平成16年に金融商品に対する課税方式の均衡化と損益通算範囲の拡大の方向性を打ち出している。この流れに沿って、平成20年度税制改正では、上場株式等の譲渡損失と配当等の損益通算が平成21年以降可能とされ、さらに、平成21年に成立した「所得税法等の一部を改正する法律」の附則において「金融所得課税の一体化の更なる推進」が盛り込まれている。
 このような状況を踏まえ、金融資産に対する課税の簡素化・中立化の観点から、金融商品間の課税方式の均衡化を図るとともに、預金等を含め損益通算を幅広く認める、いわゆる「金融所得課税の一体化」をさらに推進することを要望する。

 また、金融所得課税の一体化に係る具体的な納税の仕組みについては、預金等をはじめとする各金融商品の特性を考慮し対象範囲を順次拡大することも想定されることから、一体化の実施時期に応じて、納税者の利便性に配慮しつつ、金融機関が納税実務面でも対応可能な、実効性の高い制度とすることを要望する。

 なお、平成21年度税制改正では、上場株式等の配当所得および譲渡所得等に係る軽減税率が廃止され本則税率が実現する際に、少額の上場株式等投資のための非課税措置を創設するとされた。これを法制上措置するに当っては、口座開設手続き等に係る投資家の利便性および金融機関の実務負担に配慮することを要望する。

(2)非居住者等に対する利子等の非課税措置の拡充

  • 非居住者等が受け取る民間国外債の利子等の非課税措置を恒久化すること。少なくとも適用期限(平成22年3月末)を延長すること。
  • 非居住者等が受け取る振替制度を利用した社債の利子について非課税措置等を講じること。

 企業活動がグローバル化し、国際的な金融取引が広く行われるなか、効率的で多様な資金調達手段を確保することがわが国企業の国際競争力の維持・向上のために重要である。現在、非居住者等が受け取る民間国外債の利子等については、時限的に非課税措置が講じられており、わが国企業が発行する外債の円滑な消化のために非常に大きな役割を果たしている。また、このことは、海外投資家の円建外債への投資を促進することを通じて、円の国際化等にもつながるものである。
 したがって、非居住者等が受け取る民間国外債の利子等の非課税措置を恒久化すること、少なくとも現行の特例措置の適用期限(平成22年3月末)を延長することを要望する。

 また、海外投資家によるわが国公社債への投資を円滑化することは、わが国資本市場の活性化や国際化、円の国際化、公社債市場の流動性向上等に資するものであり、こうした観点から、現在、非居住者等が受け取る国債や地方債の利子等について非課税措置が講じられている。
 したがって、わが国資本市場の活性化や国際化等をさらに進める観点から、非居住者等が受け取る国債や地方債の利子等に加えて、振替制度を利用した社債の利子についても、非居住者等の範囲および対象となる社債の範囲を明確化した上で非課税措置を講じることを要望する。

 なお、非課税措置を講じるに当っては、国債・地方債に係る現行の事務の取扱いを含め、海外投資家にとってわかりやすく、かつ、カストディ銀行他の関係者の事務が簡素化される等、実務面の負担にも十分に配慮した制度とすることをあわせて要望する。

(3)確定拠出年金税制の見直し

  • 確定拠出年金に係る拠出制限を緩和すること。
  • 退職年金等積立金に対する特別法人税を撤廃すること。

 高齢社会における自助努力による老後の生活保障を図る観点から、公的年金を補完するものとして、確定拠出年金の果たす役割は大きく、平成23年度末に廃止が予定されている適格退職年金制度の受け皿の1つとして、その重要性はますます高まっている。また、確定拠出年金の一層の普及は、より多くの個人に対して投資性商品を選択する機会を提供し、「貯蓄から投資へ」の流れを後押しすることにもつながるものである。
 こうした確定拠出年金制度の重要性に鑑みれば、わが国においても、欧米における同種の年金と同様に、拠出時・運用時非課税、給付時課税を基本として、税制上の十分な優遇措置が講じられるべきである。
 平成16年度税制改正では、確定拠出年金の拠出限度額が引き上げられるとともに、公的年金等控除の縮小および老年者控除の廃止等、拠出時非課税と給付時課税の措置がなされた。また、平成21年度税制改正でも、老後の所得保障の観点から拠出限度額がさらに引き上げられた。しかし、老後に必要とされる生活資金の水準や公的年金の給付縮減可能性等を勘案すれば、引き続き、税制面での整備を推進し、確定拠出年金を私的年金制度の中核として発展させる必要がある。
 したがって、(1)個人型確定拠出年金の加入対象者を確定給付型の企業年金のみを実施し企業型確定拠出年金は実施していない企業の従業員まで拡大すること、(2)拠出限度額をさらに引き上げること等、確定拠出年金に係る拠出制限を緩和することを要望する。

 また、運用時非課税を実現し、国際的に見劣りのない制度とする観点から、退職年金等積立金に対する特別法人税を撤廃することをあわせて要望する。

(4)資産流動化関連税制の拡充

  • SPC等を通じた資産流動化における所有権等の移転に係る登録免許税の特例措置を恒久化すること。少なくとも適用期限(平成22年3月末)を延長すること。

 資産流動化はリスク分散・管理のために極めて有効な手段であると同時に、一般企業や内外投資家に対して多様な資金調達手段や投資商品の選択肢を提供するものである。こうした観点から、平成10年にSPC法が施行され、さらに平成12年には、運用対象の拡大等を目的に同法および投資信託法の改正が行われた。
 同様に税制面においても、特定目的会社(SPC)と投資法人の両者(以下、「SPC等」という)を通じた資産流動化における所有権・抵当権等の移転に係る登録免許税軽減等の特例措置が講じられた。
 流動化資産の受皿にすぎないSPC等に担税力はなく、課税は直ちにこれらが発行する証券の利回り低下をもたらし、資産の流動化を阻害する。経済活性化の観点から、金銭債権や不動産等の資産流動化促進が求められるなか、こうした資産流動化のツールであるSPC等の税負担は、極力軽減されることが必要である。
 したがって、SPC等を通じた資産流動化における所有権・抵当権等の移転に係る登録免許税の特例措置を恒久化すること、少なくとも適用期限(平成22年3月末)を延長することを要望する。

(5)新たな形態の取引に係る税制の整備

  • イスラム金融について、取引の実質を踏まえた税制上の措置を講じること。

 イスラム金融とは、イスラム法に則した金融取引を総称するものであり、金利の概念が用いられず商品売買やリース等の形式が用いられること、教義に反する事業に関連する取引が認められないこと、等の特徴がある。近年、中東諸国の潤沢なオイルマネーを背景にイスラム金融の規模は拡大しており、非イスラム教国においても自国市場におけるイスラム金融の育成に積極的に取り組む例がみられる。特に、英国やシンガポール、香港等においては、配当等(利子相当分)を利子とみなすことや、印紙税等の二重課税の排除等の税制上の措置を通じて、イスラム金融の促進が図られている。
 世界的にイスラム金融の存在感が高まるなか、潤沢なオイルマネーを呼び込むとともに、一般企業に対して多様な資金調達手段を提供することは、非常に意義深いものである。こうした状況下、わが国においては、昨年度、銀行の子会社にイスラム金融が解禁されたものの、税制面では一般の金融取引とのイコール・フッティングを図るための措置が十分講じられているとは言い難い。
 したがって、わが国金融・資本市場の競争力強化等の観点から、例えばイスラム債(スクーク)における収益分配金を利子として取り扱うなど、取引の実質を踏まえた税制上の措置を講じることを要望する。

2.適切な経営環境を確保するために

 近時、世界経済が調整局面からの回復途上にあるなか、企業や金融機関を取り巻く環境は急速に変化しており、適切な経営環境を確保するためには、わが国の実情や諸外国の制度に配意した税制面の整備を進めることが一段と重要になっている。なかでも、貸倒れに係る無税償却・引当基準等や外国子会社合算税制等の国際税制について適切な見直しを図ることは金融機関の自己資本の強化等の観点からも極めて意義深いものであり、同様に、会計基準の国際的な収れん(コンバージェンス)に伴う税制上の手当てについて実務上の配慮を行うことも求められる。
 また、民間非営利部門の活動の健全な発展を促進する観点から、公益法人関係税制における適切な措置を引き続き講じることも必要である。

(1)貸倒れに係る無税償却・引当基準の見直しおよび欠損金の繰越控除・繰戻還付制度の拡充

  • 貸倒れに係る無税償却・引当の範囲を拡大すること。
  • 欠損金の繰越期間(現行7年間)の延長、繰戻還付制度の凍結措置を解除し繰戻期間(現行1年間)の延長を図ること。

 わが国金融界は長年の懸案であった不良債権問題から脱却したものの、その過程においては、貸倒れに係る会計上と税制上の取扱いの差異や繰越欠損金などによって、多額の繰延税金資産が発生し、その資産としての脆弱性が問題視されるという状況が生じた。
 米国に端を発する信用不安等を背景とする調整局面から世界経済が回復途上にある現在、わが国経済の持続的回復・成長に資する金融システムを構築するうえで、不良債権問題の再発防止や自己資本の強化等の観点から繰延税金資産の発生・解消にかかわる課題はあらかじめ解決しておく必要がある。そのためには、金融機関が実施している自己査定等にもとづく無税償却・引当を幅広く認めるなど、貸倒れに係る企業会計と税務上の取扱いの差異はできる限り縮小させていくことが望ましい。少なくとも、貸倒れに係る無税償却・引当の範囲や実務上の取扱い等について、債権棄損の実情に応じたものとする観点から見直すことが重要である。
 このような状況を踏まえ、法的整理手続き開始の申立てがあった場合の個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入割合(現行50%)を引き上げるなど、貸倒れに係る無税償却・引当の範囲を拡大することを要望する。

 また、法人税における欠損金の繰越控除・繰戻還付制度は、事業年度ごとの課税負担を平準化し、経営の中長期的な安定性を確保するうえで重要な制度である。特に、景気後退期における不良債権の規模は大きく、その処理に伴い発生する欠損金の控除について十分な繰越期間を設ける必要がある。しかしながら、繰越控除制度については、その期間が7年とされ、欧米主要国との比較において、明らかに見劣りする。また、繰戻還付制度については、平成21年度改正において一部凍結が解除されたものの、繰戻期間が1年に限定されていることから、十分な措置が講じられているとは言い難い。
 したがって、欠損金の繰越期間(現行7年間)を少なくとも10年に延長し、繰戻還付制度の凍結措置を解除し繰戻期間(現行1年間)を少なくとも2年に延長すること、なお、この場合、既存の繰越欠損金についても繰越期間延長の対象とするとともに、合併法人の欠損金を被合併法人にも繰り戻して還付できるようにすること、をあわせて要望する。

(2)国際課税の見直し

  • 外国税額控除制度における繰越控除限度額および繰越控除対象外国法人税額の繰越期間(現行3年間)の延長、外国子会社合算税制における二重課税の排除等、国際課税について適切な見直しを図ること。

 外国税額控除制度は、わが国企業の海外展開を支え、国際的な二重課税を排除する制度として重要な役割を果たしている。
 しかしながら、わが国金融機関において、過去に海外子会社の売却等に伴う売却益が発生したものの、現行の外国税額控除制度において繰越控除限度額(余裕額)や繰越控除対象外国法人税額(限度超過額)の対象期間が3年とされていること等の理由から、部分的に国際的な二重課税が発生したケースがある。
 こうした問題を解決するためには、外国税額控除制度における繰越控除限度額および繰越控除対象外国法人税額の繰越期間(現行3年間)を少なくとも7年に延長することを要望する。

 また、外国子会社合算税制は、租税負担割合の低い国に所在する子会社等を通じてわが国企業が取引を行うことによって、税負担を不当に軽減・回避する行為に対処することを目的として創設された制度である。平成21年度税制改正において、外国子会社配当益金不算入制度が措置されるとともに、外国子会社合算税制についても一部改正がなされたが、これにより、特定外国子会社等である孫会社の特定課税対象金額を子会社経由で配当する場合など一部のスキームで二重課税が生じている。
 わが国金融機関には、同スキームを自己資本調達の際に利用しているケースがあり、欧米の銀行においても利用されている。自己資本規制強化等に係る議論が行われているなか、円滑な資本調達を確保する観点からも、二重課税の適切な排除が望まれる。
 また、現行、特定外国子会社等の判定基準となる租税負担割合は25%とされているが、諸外国において法人税率の引下げが行われていること等から、多くの国がわが国の税率基準に抵触することにもなりかねず、わが国企業の事業活動の阻害要因となることが懸念される。
 したがって、外国子会社合算税制について、二重課税排除措置を講じるとともに、特定外国子会社等の判定基準となる租税負担割合を20%未満に引き下げるなど適切な見直しを図ることを要望する。

(3)企業グループに関連する税制の見直し

  • 企業グループの一体的運営が加速化していることを踏まえ、現行の組織再編・連結納税制度の見直しを含めた企業グループに関連する税制の見直しを図ること。

 わが国においては、法制上、会計上および税制上の措置が企業グループの一体的運営を支えており、金融機関においても本格的なグループ経営を行い顧客ニーズに最大限応えるとともに、競争力の強化を図るため経営資源の効率的な活用を行っている。
 こうしたなか、連結納税制度が平成14年度税制改正において整備されたものの、租税回避防止措置等に強く配慮がなされたことから十分に普及しているとは言い難く、グループ企業の積極的な再編による競争力強化等を阻害している面がある。
 したがって、企業グループの一体的運営が加速化していることを踏まえ、新たに連結納税グループへ加入する子会社の保有資産に対する時価評価課税や繰越欠損金の使用制限など、現行の組織再編・連結納税制度の見直しを含めた企業グループに関連する税制の見直しを図ることを要望する。

 なお、企業グループの経営実態に即してグループの要素を反映した新たな税制を措置する場合には、制度の採用を選択性とすること、および経営上企業に過度な事務負担がかからないよう十分に配慮すること等が望まれる。

(4)公益法人関係税制の整備

  • 現行の公益法人等が新制度に円滑に対応できるようにする等の観点から、固定資産税等について適切な措置を講じること。

 全銀協ならびに地方に所在する銀行協会は、経済活動を支える手形交換制度や各種決済制度の企画・運営、一般消費者を対象とする相談業務、銀行図書館の運営など、わが国経済の発展と国民生活の安定向上に資する非営利事業を営んでおり、その大多数は旧民法第34条にもとづく社団法人・財団法人であり、現在、特例民法法人となっている。
 平成20年度税制改正では、公益法人制度改革関連法(平成20年12月施行)に対応するため、公益法人関係税制が整備され、同法に定める公益社団法人・公益財団法人や、一般社団法人・一般財団法人のうち共益的活動を目的とする法人等について、収益事業課税を適用する等の措置が講じられた。このなかで、固定資産税等に関しては、公益社団法人・公益財団法人の施設について、旧民法第34条にもとづく社団法人・財団法人と同様の非課税措置が講じられるとともに、一般社団法人・一般財団法人に移行した法人の既存の施設(図書館、博物館等)についての非課税措置が平成25年度まで継続するとされ、その後の取扱いは今後検討するとされている。
 公益法人制度改革の目的は、民間非営利部門の活動の健全な発展を促進し民による公益の増進に寄与すること等であり、公益的な性格からこれまで非課税措置が講じられてきた施設の性格に、本来、何らの影響を及ぼすべきものではない。
 したがって、特例民法法人が一般社団法人・一般財団法人に移行する場合の、これらの施設に対する平成26年度分以降の固定資産税等についても非課税とする等、現行の公益法人等が新制度に円滑に対応できるようにする等の観点から、適切な措置を講じることを要望する。

3.経済の活性化と課税の適正化のために

 世界経済は調整局面からの回復途上にあり、わが国経済も、内需の低迷と輸出の減速など厳しい状況にあるものの、持ち直しの動きが見られる。このような経済情勢にあっては、民間部門の投資・消費需要を喚起することが極めて重要な課題となっており、特に、経済活性化の効果が大きい住宅投資の拡大策として、住宅取得の促進に資する税制措置を拡充すること等は有用である。
 また、金融取引を含む各種の経済取引には、担税力に着目して印紙税や登録免許税等の流通税が課せられるケースが多いが、こうした税負担は円滑な経済取引に悪影響を与え、経済の活性化を阻害している面が否定できないため、その軽減・簡素化により、課税の適正化を図ることが必要である。

(1)住宅取得の促進に資する税制措置の拡充等

  • 住宅取得、住生活の安定確保および向上をさらに進めるため、住宅借入金等の所得税額の特別控除制度の恒久化等を図ること。

 住宅は、国民の経済活動や社会生活の基盤となる重要な資産であり、良好な居住環境を形成するためには、社会経済情勢等の変化に左右されることのない、安定かつ公平な住宅取得の機会が、国民に与えられることが重要である。
 こうしたなか、平成18年に制定された住生活基本法においては、政府の責務として、住生活の安定の確保および向上の促進に関する施策を実施するために必要な措置を講じるべきことが規定されている。持家取得に伴う初期負担の軽減により住宅投資を促進し、これが景気浮揚にも資するとの観点から、住宅借入金等の所得税額の特別控除制度は、平成21年度税制改正によって大幅に拡充されている。
 しかしながら、調整局面からの回復途上にあるわが国経済においては、住宅投資が拡大することへの期待は大きい。
 したがって、住宅取得、住生活の安定確保および向上をさらに進めるため、住宅借入金等の所得税額の特別控除制度の恒久化等を図ることを要望する。

(2)印紙税の軽減・簡素化

  • 印紙税について、金融取引に悪影響を及ぼさないよう、軽減・簡素化すること。

 印紙税は、本来軽微であるべき流通税としては極めて高い税率となっており、金融取引に悪影響を及ぼさないよう整理し、軽減・簡素化することを要望する。

(3)登録免許税の軽減・簡素化

  • 登録免許税の税率をその手数料的な性格から、低額の定額税率とする等、軽減・簡素化すること。

 現行の登録免許税は、手数料的な性格を持つ流通税であるにもかかわらず負担が極めて重く、わが国企業の競争力強化に必要な組織再編成や、資産流動化等の経済取引、担保権信託を利用するシンジケート・ローン取引に影響し、経済の活性化を阻害している面がある。
 登録免許税が持つ手数料的な性格を踏まえ、低額の定額税率とする等、大幅に軽減・簡素化することを要望する。