平成29年3月 全国銀行協会

(1) 基本認識

  1. 銀行は、消費者の経済活動に係る様々なニーズに応えるため、消費者の資産運用・資金需要に応える商品や、安全な決済サービス等を広く提供している。銀行業務に関する規制緩和が進展するとともに、国民の安定的な資産形成を図る観点から、顧客本位の業務運営が求められる状況のなか、銀行は、いままで以上に創意と工夫を発揮し、より多様化する消費者のニーズに的確に対応すべく様々な金融商品・サービスの開発・提供に努めていくことが期待されている。
    他方、金融商品・サービスの多様化・高度化がさらに進展するなかで、これに伴うトラブルを未然に防ぎ、市場の健全な発展を図っていくことも重要である。そのためには、銀行は、消費者との間により適正かつ健全な取引関係を構築していく必要があると考えられる。
  2. 銀行取引は銀行と顧客との契約関係として捉えられ、本来、銀行・消費者はそれぞれが自己責任にもとづいて行動すべきものである。しかし、現実には、銀行・消費者間には金融商品・サービスに関する情報量および交渉力において大きな格差が存在していることから、商品・サービスの提供者としての銀行には、消費者との間に適正かつ健全な取引関係を構築するうえで、そうした格差をできるだけ是正するよう努める責務がある。
  3. 情報量の格差の面では、消費者が金融商品・サービスを自らの意思にもとづいて選択・活用できるようその正しい理解を促していくことが、一層重要な責務となっている。
    銀行は、消費者に対し、顧客本位の業務運営を実現する観点から、各行の方針に応じて、金融商品・サービスの選択に必要と考えられる情報、金融商品・サービスの販売・推奨等に係る重要な情報および消費者が負担する手数料その他費用の詳細を正確・適切に、分かりやすく提供すべきである。特に、契約に当たって消費者に対して金融商品・サービスの説明を行う際には、一般的な情報提供を行うにとどまらず、そのリスクの内容等に応じ、消費者の知識、経験、財産の状況および契約を締結する目的に照らして、消費者に理解されるために必要な方法・程度による説明を行うとともに、消費者において同種の金融商品・サービスの内容と比較することが容易となるような配慮が求められる。
    また、銀行は、各行の方針に応じて、取引における消費者との利益相反の可能性について正確に把握し、利益相反の可能性がある場合には、当該利益相反を適切に管理すべきである。
    さらに、勧誘という局面においても、消費者の誤った判断を誘発するような不適切な勧誘があってはならない。虚偽情報の提供や、不確実な事項についての断定的判断の提供または確実であると誤認させるおそれのあることを告げる行為があってはならないのはもちろんのこと、消費者の知識、経験、財産の状況および契約を締結する目的にも目を配るとともに、勧誘の方法および時間帯にも配慮し不適当な勧誘を行わないようにすべきである。
    特に、複雑またはリスクの高い金融商品の販売・推奨等を行う場合や、金融取引被害を受けやすい属性の顧客グループに対して商品の販売・推奨を行う場合には、商品や顧客の属性に応じて、当該顧客にふさわしい商品の提供に努めるべきである。
  4. また、交渉力の格差の面では、銀行には、契約を締結するに当たって消費者の立場にも常に配慮し、契約内容の公正さを確保することが求められる。
    銀行取引においては、契約内容をあらかじめ定型化することにより、大量で反復継続的に行われる取引を円滑かつ迅速に処理するため、多くの場合約款が使用される。
    消費者は、約款等に定められた条項をそのまま承諾して取引関係に入ることになるので、銀行は、約款等の合理性を常に確保し、必要に応じて見直すとともに、消費者に対しあらかじめその内容を明示するなどの対応を図るべきである。

(2) 契約内容について

1.契約書・約款等作成にあたっての基本事項

  1. 契約書・約款等の作成に当たっては、正当な事由なく消費者の権利を制限したり義務を加重することのないよう十分配慮しなければならない。特に、民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定(任意規定)の適用による場合に比し、消費者の権利を制限したり義務を加重する契約条項を置く場合には、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する内容であってはならない。契約条項は、民法、消費者契約法等の関連規定の趣旨を十分踏まえたうえ、適正な取引慣行にもとづいて規定されなければならない。
  2. 契約書・約款等には、取引の内容に応じた重要事項を盛り込み、消費者が取引の内容を十分理解したうえで契約できるよう契約内容の明確化を図るべきである。期間、適用金利または支払方法等といった基本事項はもとより、消費者において生じうる金銭面その他の義務または負担についてできる限り明らかにすべきである。
  3. 契約書・約款等は、各行が自らの判断と責任において作成しなければならない。全銀協の各種規定ひな型等は、多くの銀行が取り扱う基本的な取引について規定内容の標準化や消費者の予見可能性の確保等を目的として制定されている。しかし、これらのひな型等はあくまでも参考例であり、各行を拘束するものではない。

2.個別契約条項について

銀行取引における契約書・約款等においては、債権の適切な管理・保全を通じた銀行経営の健全性確保の要請や大量な取引の円滑かつ迅速な処理の必要等から、消費者の権利を一部制限する条項や消費者の義務を加重する条項等を盛り込まざるを得ない場合がある。このような条項を置くに当たっては、当該取引の性質や個々の条項の趣旨等に照らし、その必要性、合理性および表現の適正性等を十分検討しなければならない。
このような観点から、銀行が特に注意を要すると考えられる条項の類型を次のとおり例示する。

類型例1.銀行の責任を免除または限定する条項
  • 銀行取引における損失等について銀行の責任を免除または限定する旨の条項を置く場合には、債権の管理・保全や取引の大量処理の要請等十分な必要性が認められるかを検討しなければならない。
  • 当該条項は、銀行の債務不履行または不法行為によるものでないなど正当かつ合理的な事由にもとづくものでなければならない。また、銀行が無限定に免責されるとの誤解を招かないよう契約書・約款等上の表現に注意すべきである。
    【注意が必要な条項の例】
    • 印鑑照合に関する条項
    • 災害等により損失が生じた場合に銀行の免責を認める条項
    • 担保保存義務の免除に関する条項
    • 届出事項の変更に関する条項
類型例2.銀行側に取引内容の決定・変更権限を与える条項
  • 契約書・約款等において、取引の内容を銀行が一定の要件にもとづいて決定または変更する旨の条項を置く場合には、民法等の規定による取扱いでは取引の円滑な処理に困難を来すおそれがある、大量に行われる取引を円滑かつ迅速に処理しなければならない、取引の性質上他の方法によることが現実的に困難である、または、担保物の価値の下落・保証人の信用状態の悪化等により債権の保全に支障を来すおそれがある等、十分な必要性が認められるかを検討しなければならない。
  • 当該条項において銀行に付与される権限は、上記の必要性からみて合理的と考えられる範囲に止められるべきである。
  • 銀行による権限行使の要件および効果は、信義則に照らして妥当と考えられるものとし、かつ、契約書・約款等においてできる限り明らかにされるべきである。
  • 銀行が決定、変更した取引内容について消費者が知る方法は、契約書・約款等においてできる限り明らかにされるべきである。
    【注意が必要な条項の例】
    • 担保の処分等の方法、時期、価格等の決定に関する条項
    • 債務の返済等にあてる順序の決定に関する条項
    • 手数料に関する条項
    • 違約金、解約手数料等の水準を定める条項
    • 利息等の計算期間を定める条項
    • 増担保請求権に関する条項
    • 利率の変更に関する条項
    • 預金の払戻限度額等に関する条項
類型例3.銀行による契約の解除または消費者の期限の利益の喪失を認める条項
  • 一定の要件にもとづき銀行が契約を解除したり消費者の期限の利益を喪失させることができる旨の条項を置く場合には、取引の性質に応じ、消費者の信用状態が著しく低下すると認められる等取引の継続が困難と判断される合理的な根拠があるものか、また、解除等の権限発動の要件が消費者の有する権利を喪失させるに足る重要な事実にもとづくものと考えられ、些細な事実にもとづいて徒に消費者の権利を奪うものとなっていないかを十分に検討しなければならない。
  • 上記の契約の解除等の権限発動の要件は、契約書・約款等においてできる限り明らかにされるべきである。
    【注意が必要な条項の例】
    • 解約に関する条項
    • 期限の利益喪失条項
類型例4.消費者が有する権利に一定の制限を加える条項
  • 消費者が有する権利に一定の制限を加える条項を置く場合には、取引の性質や債権の管理・保全の要請等十分な必要性が認められるかを検討しなければならない。
  • 当該条項における消費者の権利の制限は、上記の必要性からみて合理的かつ必要最小限と考えられる範囲に止められるべきである。
  • 消費者の解除権を放棄させる条項は、消費者契約法に照らして無効となるため、注意すべきである。
    【注意が必要な条項の例】
    • 預金の譲渡・質入れを禁止する条項
    • 担保の現状変更等に事前の承諾を求める条項
    • 保証人からの相殺を禁止する条項
    • みなし到達に関する条項
類型例5.消費者に一定の義務を課す条項
  • 消費者に届出、報告または費用の支払等に関して一定の義務を課す条項を置く場合には、取引の性質に応じ、その必要性を十分検討するとともに、消費者に過度の負担を求めるものとならないよう注意すべきである。
  • 契約の解除に伴い消費者が支払う損害賠償の額または違約金を定める条項を置く場合には、その額は同種の契約解除に伴って銀行に生ずる平均的な損害の額を超えてはならない。
  • 消費者が支払う遅延損害金の条項を置く場合には、利息制限法、消費者契約法等の関係法令が定める率を超えてはならない。
  • 消費者に課される義務の内容およびその履行手続は、契約書・約款等においてできる限り明らかにされるべきである。
    【注意が必要な条項の例】
    • カード・暗証の管理等に関する条項
    • 届出事項の変更に関する条項
    • 違約金、解約手数料等の水準を定める条項
    • 遅延損害金に関する条項
類型例6.法律の強行規定と同趣旨の内容を定める条項
  • 民法、商法その他の法律の公の秩序に関する規定(強行規定)で定められた消費者の権利に関する事項について、契約書・約款等において確認的な条項を置く場合には、当該権利に制約を課すものであるかのような誤解を招かないよう契約書・約款等上の表現に注意すべきである。
    【注意が必要な条項の例】
    • 偽造・盗難カードによる払い戻し等に関する条項
    • 根保証の極度額や元本確定期日等に関する条項
類型例7.消費者の不作為をもって新たな消費者契約の申込みまたはその承諾の意思表示をしたものとみなす条項
  • 消費者の不作為をもって、当該消費者が新たな消費者契約の申込みまたはその承諾の意思表示をしたものとみなす条項を置く場合には、消費者契約法の趣旨および目的に照らし、当該条項の性質、当該条項を含む契約が成立するに至った経緯、消費者との間に存する情報の質、量、および交渉力の格差等の事情を総合的に勘案し、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものとなっていないか、十分に検討しなければならない。

3.表現上の留意点

  1. 契約書・約款等は、明確、平易で消費者が理解しやすい表現を用いて作成すべきである。
    契約書・約款等においては、契約内容を的確に表現するために専門用語を使用せざるを得ない場合もあるが、一般的通念に照らし、消費者がおよそ理解できないような表現を用いることがないよう注意すべきである。また、必要に応じて定義規定を設ける等により、消費者の理解を促すよう配慮すべきである。
  2. 解釈に疑義を生じかねない表現は、消費者との間に無用の混乱や紛争を招きかねず、回避すべきである。
  3. 契約書・約款等の実質的な理解のしやすさを考慮し、一定の活字の大きさの確保を図るとともに、明瞭に印刷されているかに注意すべきである。

(3) 契約締結に関する行為について

1.金融商品・サービスに関する情報提供

  1. 銀行は、各行の方針に応じて、次の例示も参考にしながら、消費者に対し、当該消費者の知識、経験を考慮のうえ、金融商品・サービスの選択に必要と考えられる情報、金融商品・サービスの販売・推奨等に係る重要な情報(リターン、リスク、取引条件のみならず、選定理由、当該消費者との利益相反の可能性がある場合の具体的内容および取引・業務に及ぼす影響等も含む)および消費者が負担する手数料その他費用の詳細(当該手数料等がどのようなサービスの対価に関するものであるかという情報を含む)を、金融商品・サービスの複雑さやリスクに応じた方法および程度で、正確・適切に、分かりやすく提供すべきである。
    また、情報の提供に当たっては、情報を重要性に応じて区別し、より重要な情報については特に強調する等、消費者の注意を促すとともに、消費者が同種の金融商品・サービスの内容と比較することが容易になるよう配慮すべきである。
    【例】
    • 主要な金利は店頭に表示するとともに、取扱いサービスに係る主要な手数料の一覧は店舗内に掲示するかまたは備え置く。
    • 複数の金融商品・サービスをパッケージとして販売・推奨等する場合には、個別購入の可否を示すとともに、パッケージ化しない場合と比較可能なよう、各商品の重要な情報を提供する。
    • 複数の所属保険会社を有する乗合代理店として複数の保険商品を比較説明・推奨販売する場合には、比較可能な商品について概要を明示するとともに、特定の保険商品を提示・推奨する場合には、その理由を分かりやすく説明する。
  2. 約款等は、店舗に備え置く等適宜の方法により、消費者がその内容をあらかじめ了知できるようにすべきである。
  3. 銀行は、相当程度の専門知識が要求される金融商品取引について、市場動向の急変や市場に重大なインパクトを与える事象が生じた場合等は、顧客に対して、適時適切な情報提供に努めるべきである。
  4. 情報提供に当たっては、消費者の利便に資するよう、ウェブサイトも活用するなど情報への様々なアクセス手段を工夫すべきである。特に、インターネット・バンキングに関する情報や約款等は必ずウェブサイト上でも提供するとともに、その他の金融商品・サービスについても商品の選択に当たって必要と考えられる情報をウェブサイト上で提供することに努めるべきである。
  5. 消費者から特定の契約目的を告げて金融商品・サービスに関する情報の提供を求められた場合には、銀行は、業務上可能な範囲において消費者の理解の手助けとなる情報の提供に努めるべきである。
  6. 銀行が広告または広告類似行為をする場合には、リスクに関する事項や手数料に関する事項等、金融商品・サービスについて消費者の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項については、消費者が見落とすことのないよう、文字の大きさや表示方法に留意して表示すべきである。
  7. 銀行は、情報提供(広告および広告類似行為を含む)において、不当景品類及び不当表示防止法を遵守し、事実に相違する表示または消費者を誤認させるような表示を行ってはならない。なお、全国銀行公正取引協議会の会員銀行は、同協議会が定める「銀行業における表示に関する公正競争規約」を遵守しなければならない。

2.適正な勧誘

  1. 銀行は、次のような形で勧誘を行ってはならない。なお、このほか金融商品・サービスに応じ、関係業法、各業界が定めるガイドライン等の定めを遵守しなければならない。
    • 重要事項について告げないか事実と異なることを告げること
    • 不確実な事項について断定的判断を提供し、または確実であると誤認させるおそれのあることを告げること
    • 重要事項または当該重要事項に関連する事項について消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について消費者の不利益となる事実を故意に告げないこと
    • 脅迫的または消費者を著しく困惑させるような勧誘
    • 勧誘の方法や時間帯に配慮しない勧誘
    • 銀行としての取引上の優越的地位を不当に利用した勧誘
    • 適正な取引慣行に反する特別の利益の提供を約しての勧誘
  2. 銀行は、リスク商品を販売する場合には、消費者の知識、経験、財産の状況および契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行ってはならない。そのために以下の事項に留意すべきである。
    1. 消費者の知識、経験、財産の状況および契約を締結する目的等について銀行が消費者に確認のうえ必要に応じて記録を残し、確認した内容に応じた勧誘を行う。
    2. a.の記録を別の商品・サービスの勧誘・契約時に使用する際には、適宜、当該記録の内容が古くなっていないか確認する。
    3. 消費者の申し出にもとづき、当該消費者の契約締結目的や意向が変化したことを把握した場合は、a.の記録を変更する。
    4. リスクや仕組みの複雑さに応じ、消費者への適合性を踏まえて勧誘を行う。
    5. 高齢者の勧誘に当たっては、各業界が定めるガイドライン等を踏まえ、ライフサイクルに応じた金融商品・サービスのニーズに配慮しながら特に丁寧な勧誘に努めることとする。また、不適当と認められる場合には勧誘を停止する。
  3. 銀行が金融商品・サービスの販売・推奨等を行うに当たっては、それにより得られる収益の多寡に拘泥するのではなく、各行の方針に応じて消費者の知識、経験、財産の状況および契約を締結する目的を把握し、当該消費者に適した金融商品・サービスを提供すべきである。そのために、以下の事項に留意すべきである。
    1. 複数の金融商品・サービスをパッケージとして販売・推奨等する場合には、当該パッケージ全体が当該消費者にふさわしいか留意する。
    2. 複雑またはリスクの高い金融商品の販売・推奨等を行う場合や、金融取引被害を受けやすい属性の顧客グループに対して商品の販売・推奨を行う場合には、商品や顧客の属性に応じ、当該顧客にふさわしい商品の提供に努めるべきである。
  4. 銀行が、保険や投資信託などを販売する場合であって、複数社の類似した商品を取り扱う場合には、十分な情報提供を行い、消費者のニーズにより合致した商品について勧誘するよう努めるべきである。
  5. 銀行が保険を販売する場合であって、消費者が当該行に対して住宅ローンの申し込みを行っている場合には、書面を交付して、保険契約の締結が住宅ローンの貸付条件ではない旨を説明すべきである。

3.重要事項の説明

  1. 契約締結に際しては、消費者が取引の内容を十分に理解したうえで、金融商品・サービスを選択できるよう、その取引に関して重要と考えられる事項を適切な方法により説明すべきである。また、当該契約の目的となるものの内容、取引条件、当該契約の目的となるものが消費者の財産その他の重要な利益についての損害または危険を回避するために通常必要であると判断される事情について、事実と異なることを告げたり、消費者を誤認させるような説明をしてはならない。
  2. 説明すべき重要事項は、取引の種類、性格(リスクの存否等)または金融商品・サービスに対する消費者の認知の度合い等に応じて異なるので、銀行は、次の例示や各業界が定めるガイドライン等も参考にしながら、説明すべき重要事項およびその適切な説明方法に関する基準を定める等適切な業務運営を確保するための措置を講じるべきである。
    (注)次の例示は銀行取引、説明事項のいずれをも網羅するものではない。また、金融商品によっては関係業法等において一定の説明義務が課せられているものがあり、これらは当然ながら遵守されなければならない。
    1. 消費者の資産の運用に係る金融商品の場合

      イ.一般の預金等
      【例】

      • 適用金利とその適用期間(定期預金のキャンペーン金利等については、当初金利の適用期間および継続後に適用される金利)
      • 変動金利定期預金における基準指標や利率設定方法
      • キャッシュカードが発行される場合における暗証番号管理の重要性等
      • 手数料に関する事項
      • 預金保険に関する事項

      ロ.投資性の強い預金等
      「イ.」の事項(商品の性質上該当しないものを除く)に加え以下の事項
      【例】

      • 預金保険の適用有無
      • 元本欠損(外貨建ての場合は円建て元本の欠損)が生じるおそれがある旨
      • 金融商品の取引の仕組みのうちの重要な部分およびリスクの内容
      • 金融商品の購入は消費者自身の判断と責任において行うべきものであること
      • 中途解約・換金の可否および中途解約・換金時の手数料・諸費用に関する事項
      • 為替手数料その他消費者が負担する可能性がある手数料、諸費用に関する事項
        (注)「投資性の強い預金等」とは、円建て元本の欠損が生じるおそれがある外貨預金、元本保証はあるが中途解約の場合に発生する違約金により実質的に元本欠損が生じ得るデリバティブ預金等をいう。

      ハ.その他のリスク商品
      「イ.」の事項(商品の性質上該当しないものを除く)および「ロ.」の事項に加え以下の事項
      【例】

      • 預金等でないこと
      • 銀行が保険や投資信託等他社の商品を販売する場合は、他社の商品である旨
      • 保険商品についてはクーリングオフの可否および可能な場合はその期間
      • 元本の支払いが保証されていない場合はその旨
      • 元本を上回る損失が生じるおそれがある場合はその旨
      • 長期の商品について税メリットを強調して販売する場合は将来の税制改正により影響があること
      • 販売手数料を要する場合は同手数料に関する事項
      • 契約後に何らかの手数料(例えば運用等に係る年間手数料)を要する場合は同手数料に関する事項
      • その他金融商品取引法、保険業法等の関係法令が定める事項
    2. 融資に係る金融商品の場合

      【例】

      • 適用金利、利率変更ルール等
      • 期間、返済・利払い等の方法、期限前返済の取扱いの可否およびその方法
      • 手数料に関する事項
      • 担保・保証に関する事項
      • 融資取引にデリバティブ取引が含まれているときは、商品内容やリスクに関する事項
      • リボルビング方式の融資については、その返済の仕組み
      • 金利変動型または一定期間固定金利型の住宅ローンについては、全銀協の「住宅ローン利用者に対する金利変動リスク等に関する説明について」の申し合わせを踏まえた、金利変動リスクについての十分な説明
      • 消費者が保証人となる場合については、保証の法的効果とリスク等
      • 個人信用情報機関への登録および登録情報の利用
      • 融資に際して書面で取得する個人情報の利用目的
      • その他消費者の義務または負担に関する事項
    3. 外国為替に係るサービスの場合

      【例】

      • 適用される相場、為替リスク
      • 手数料に関する事項
  3. 重要事項の説明に関しては、次の事項に留意すべきである。
    1. 金融商品・サービスの説明は、そのリスクの内容等に応じ、当該消費者の知識、経験、財産の状況および契約を締結する目的に照らして、当該消費者に理解されるために必要な方法および程度によるべきである。また、消費者が契約内容等に関して個別に説明を求めた場合には、銀行は、可能な限りこれに応じるべきである。
    2. 消費者の合理的な予想と必ずしも一致しない可能性があると考えられる契約条項については、個別に説明することが望ましい。
    3. 審査等の手続を要し、その結果取引に応じられないことがありうる金融商品・サービスについては、消費者に対し、その旨をあらかじめ伝えるべきである。
    4. 消費者の理解を深めるため、必要に応じ、契約書、概要説明書またはパンフレット等を活用すべきである。特に、リスク商品の契約に当たっては、商品の概要、リスクの内容、手数料・諸費用等を記載した書面をあらかじめ消費者に交付しなければならない。この場合、単に交付すればよいというのではなく、消費者が当該書面の内容を十分理解することが重要である。
      また、金融商品の契約に当たって、書面をあらかじめ消費者に交付する際には、金融ADR制度について説明を行うべきである。
    5. 書面を利用して説明する場合であっても、分かりやすい口頭の説明にも留意すべきである。その際の情報量については、個々の消費者の理解度を考慮することも必要である。
      (注)金融商品によっては関係業法等において概要説明書等の交付義務が課せられているものがあり、これらは当然ながら遵守されなければならない。

4.契約締結意思等の確認

  1. 契約は、消費者の自己責任にもとづく契約意思を十分確認のうえ締結しなければならない。
  2. リスクの大きな金融商品・サービスについては、必要に応じ、確認書を受け入れる等消費者が取引内容を理解したうえで契約を締結したことを確認する手続を講じるべきである。特に保険募集に当たっては、各業界が定めるガイドライン等も踏まえて消費者の意向を把握、確認するとともに、保険契約締結時において、当該保険契約の内容が消費者の意向と合致していることを確認すべきである。なお、確認書を受け入れる場合は、単に受け入れればよいというのではなく、消費者が当該確認書の内容を十分理解することが重要である。

5.契約書面等の交付

  1. リスク商品や融資等の契約が成立したときは、契約内容を記載した書面を消費者に交付しなければならない。なお、消費者ローン契約書等消費者から契約書の差入れを受ける方式で契約が締結された場合には、当該契約書面の写しを交付しなければならない。
  2. 契約内容を記載した書面が複写式の場合であって、複写書面を消費者に交付する場合には、原本と複写書面とで重要事項の記載内容に齟齬(複写書面では抜け落ちている記載がある等)があってはならない。
  3. 対面によらない形式で契約が締結された場合には、消費者が必要時に契約条項の確認ができるよう対応が図られている場合を除き、郵送等の方法により、契約締結後すみやかに契約内容を記載した書面の写しを送付しなければならない。

6.契約締結後における対応

  1. 銀行は、契約内容等の変更に当たっては、その内容を消費者が正しく認識できるよう、通知または店頭への掲示等必要と考えられる対応を図るべきである。
  2. 銀行は、高齢者に対して金融商品を販売した後についても、きめ細かく相談にのる等、丁寧なフォローアップを行うべきである。
  3. 銀行は、当該取引に係る照会先が取引店以外の部署等である場合には、消費者に対し、その照会先をあらかじめ明示しておくべきである。特に、銀行が保険や投資信託等他社の商品を販売する場合は、契約締結後の照会先(銀行か当該他社か)をあらかじめ明らかにしておくべきである。なお、用件ごとに照会先が異なる場合には、その旨を明らかにしておくべきである。
  4. 銀行は、消費者からの照会または苦情を取引店のほか取引店以外の部署(お客様相談室等)においても受け付けることとしている場合には、消費者に対し、その旨および当該部署への連絡方法等をあらかじめ明らかにしておくべきである。
  5. 銀行は、消費者からの契約内容に関する照会または苦情に対し誠意をもって適切に対応すべきである。
  6. 銀行は、金融商品取引に関して消費者から苦情の申し出があり、当事者間の話し合いでは消費者の理解が得られない場合や、損害賠償金額の確定が困難である場合には、改めて金融ADR制度について説明すべきである。

7.その他の留意事項

  1. 消費者への情報提供および重要事項の説明に当たっては、非対面取引の増加や仲介・代理といった取引(契約)形態の多様化に留意すべきである。なお、インターネット・バンキングを通じた金融商品・サービスの提供に当たっては、全銀協通達「インタ-ネット・バンキングにおいて留意すべき事項」に留意すべきである。
  2. 銀行は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律を遵守するとともに、成年後見制度等の対象でなく意思表示を行う能力がありながら、視覚・聴覚や身体機能の障がいのために銀行取引における事務手続き等を単独で行うことが困難な方に対しても、視覚や聴覚に障がいのない方等と同等のサービスを提供するよう配慮すべきである。
  3. 契約に伴い銀行が消費者から個人情報を取得する場合の取扱いについては、関係法令のほか銀行が加入する認定個人情報保護団体が定める個人情報保護指針を遵守しなければならない。
  4. 本留意事項の内容については、銀行本部の担当部署のみならず、営業店の担当一人ひとりに十分理解されていなければならない。

以上