2011年7月15日

各 位

金融調査研究会

金融調査研究会第1研究グループ報告書「安定的な経済成長のためのプルーデンス政策のあり方」について(金融調査研究会)

 金融調査研究会(座長:貝塚啓明東京大学名誉教授)第1研究グループ(主査:清水啓典一橋大学大学院商学研究科特任教授)は、今般、標記報告書を取りまとめました。

 本研究会では、平成22年度において、「安定的な経済成長のためのプルーデンス政策のあり方」を研究テーマとして取りあげ、検討を行いました。その成果は、「安定的な経済成長のためのプルーデンス政策のあり方」と題する提言として取りまとめ、平成22年12月17日にシンポジウム「安定的な経済成長のためのプルーデンス政策のあり方を考える~金融規制改革パッケージの検証と今後の展望~」を開催するとともに、事務局である全国銀行協会ウェブサイトにおいて公表しております。
 本報告書は、同提言に加え、研究会の各メンバーが執筆した研究論文を収録し、安定的な経済成長に資する金融危機下における規制・監督のあり方やその課題等を理論面から論じたものとなっています。本報告書に所収された論文は、研究グループのメンバー各人の責任で執筆されたものであり、執筆者の所属する機関の意見を反映したものでも、また、全国銀行協会の意見を表明したものでもありません。
 本研究会としては、この報告書が、本分野に関心を持つ企業関係者、研究者等、多くの方々にご活用いただけることを期待しています。

【本件に関するご照会先】
金融調査研究会事務局
一般社団法人全国銀行協会 金融調査部 福田、藤澤
〒100-8216 東京都千代田区丸の内1-3-1
Tel.03-5252-3789
Fax.03-3214-3429

 

別紙

 

「安定的な経済成長のためのプルーデンス政策のあり方」の概要

提言 「安定的な経済成長のためのプルーデンス政策のあり方」

 当研究会の提言として、平成22年12月20日に事務局である全国銀行協会ウェブサイトで公表したものを再録している。
 本提言は、平成22年、11月のソウルにおける20か国・地域首脳会合(G20)において合意された金融規制改革パッケージについて、評価と残された課題を指摘したうえで、「各国毎の特性を反映した規制とすることにより、経済の安定的な成長との両立を図るべき」、「マクロ・プルーデンスの視点と各国金融市場の実態に合った監督を重視すべき」、「プロシクリカリティにより配慮して規制の見直しを検討すべき」等の具体的な提言を行っている。

 

第1章 グローバル金融危機後の国際的金融規制

(清水啓典 一橋大学大学院商学研究科教授)

 金融規制改革にとって学ぶべきグローバル金融危機の教訓を整理したうえで、バーゼルIIIの評価を行い、その問題点を指摘して今後のあるべき方向性を示している。そこでは過去四半世紀、銀行規制の中核であった自己資本比率規制は既に陳腐化しており、今後は世界一律規制から各国ごとの特性を考慮した個別的規制に移行すべきであることを指摘している。

 

第2章 マクロ・プルーデンス政策の枠組みについて

(黒田晁生 明治大学政治経済学部教授)

 欧米主要国における金融規制監督体制の改革とその問題点を整理し、さらに日本の金融政策の失敗の教訓を振り返ったうえで、日本における今後のマクロ・プルーデンス政策のあり方を検討し、ミクロ・プルーデンス政策を担ってきた金融庁と金融政策を担う日本銀行との間で後者が過大な役割を負わない形で、両者が連携しつつ適切な役割分担をする重要性を指摘している。

 

第3章 バーゼル銀行監督委員会による自己資本規制の経済学的評価について:資産価格決定モデルから見た不可思議さ

(齊藤誠 一橋大学大学院経済学研究科教授)

 バーゼルIIIの中核である自己資本比率規制の強化に関する理論的説明として、バーゼル銀行監督委員会から発表された資産価格決定モデルについてその妥当性を検討している。そこでは、この自己資本比率規制強化の理論的基礎が経済学的には正当化されない不自然なものであり、規制強化案が政治的影響の下に決定された可能性を示唆している。

 

第4章 世界金融危機前後における日本の銀行行動に関する実証分析

(安田行宏 東京経済大学経営学部准教授)

 国際的金融危機時における日本の銀行の貸出行動を分析し、大企業の資金需要に対応して大企業向け貸出が増加した一方で中小企業貸出は減少していたこと、日本の金融システムでは直接金融市場の困難を間接金融市場が補完した形で大企業の資金調達が行われ、またそれ故に緊急保証などの公的な中小企業支援策は合理的な政策対応であった点などを指摘している。

 

第5章 条件付き転換保険証券の金融システム安定効果

 

(中村恒 東京大学大学院経済学研究科常勤講師)

 規制回避行動やToo-big-to-fail問題など、数量規制の強化による規制改革に存在する限界を克服する可能性の一つとして、条件付き転換保険証券による金融システム安定化効果を検討したものである。現状ではなお実効性に問題があるが、数量規制偏重の規制体系からの転換の可能性を探る必要性を指摘している。

 

(※ 肩書きは平成23年3月現在)

以上