2002年1月22日

山本会長記者会見(富士銀行頭取)

菅野専務理事報告

 私からはまず、UFJ銀行の寺西頭取を次期会長に内定したことを報告する。
 次期会長については、当初、昨年9月18日の会見でご報告したように、同日の理事会で、当時UFJ銀行の頭取に就任される予定であった三和銀行の室町頭取を次期会長に内定したが、その後、皆様ご存知のように、UFJ銀行において、室町さんに替わり、寺西さんが頭取に就任された。このため、正副会長会議において、再度、次期会長の推薦について審議を行った結果、UFJ銀行の寺西頭取を次期会長に推薦することを決定し、本日の理事会で了承した。
 なお、会長の正式な選任は、本年4月の定例総会後の理事会において行われる。
 次に、本日の理事会では、四半期情報開示を平成14年度第1四半期から実施するにあたっての開示時期および当面の開示内容についての考え方を、昨日の企画委員会で、お手許の資料のとおり取りまとめたことを報告した。
 開示時期については、3月決算期末および9月中間決算期末を除く、第1、第3四半期末(6月末と12月末)としており、また、開示内容については、金融再生法ベースのカテゴリーによる開示、自己資本比率、時価等情報等を挙げている。
 なお、本件については、今回の開示内容を第一ステップとし、今後とも四半期実績の開示の体制整備を含めて検討していくこととしている。
 次に、準会員として、日証金信託銀行の2月1日からの加入を承認した。この結果、2月1日現在の全銀協会員数は、正会員140行、準会員47行となり、72の特別会員とあわせて、合計259会員となる。
 私からは以上である。


会長記者会見の模様


(問)
 先週末にダイエーの再建計画についての発表があった。一方で、各種統計資料を見る限り景気は厳しい状況である。このような中で、銀行界が不良債権処理を進めることはデフレ圧力を強めることにつながるとの見方が出てきている。今後もさらに不良債権処理を進めていかなければならない銀行界として、現状の景況感も踏まえ、政府に対してどのような政策を求めていきたいと考えるか。
(答)
 不良債権問題については、従来から各金融機関が経営の最重要課題として取組んできており、今後も早期に不良債権問題を正常化させるために、政府の方針も踏まえて、その処理のスピードを早めているところである。
 一方で、景気の実態を見ると、経済指標のうえでは、輸出減少が和らぎ在庫調整も進んでいるようだが、他方、消費低迷や製造業の空洞化の加速、設備投資や公共工事の減少に直面している企業はここへきて危機感を一段と強めている。その中で、不良債権の新規発生が続いており、金融機関は財務的対応を求められるが、他方、不良債権の最終処理を加速することが、新たなデフレ圧力となるばかりではなく、企業経営に対する不安を過度に高めて、信用不安を引き起こさないかという点が懸念される。これは、私どもが予てより申しあげてきたことであり、最近になって海外の経済学者や金融関係者、政府当局者からも数多く不況の一段の深刻化を心配する声があがっている。
 それを避ける意味でも、経済危機にしっかり対処してもらいたいというのが、政府に対する私共の強い期待である。景気のダウンサイドリスクが払拭できない中で、景気安定化装置として財政政策発動の余地は残しておくべきであろう。
 また、構造改革の中にも、景気に少なくとも悪影響を及ぼさない改革が多くある。例えば、国民の不安をなくすような年金制度や医療制度の改革、情報化や高齢化社会に適応した都市インフラの整備、規制緩和や技術開発による成長産業の育成、教育の充実による人的資源の強化などは、景気にプラスの影響をもたらすか、少なくともマイナスの影響を及ぼさないものであり、これらについては従来以上に積極的に取組んで頂きたいと考えている。
 我々は従来から一貫して、金融サイドの不良債権問題と産業サイドの過剰債務問題を一体として解決するべきと主張してきた。昨年来、不良債権問題については、強いフォーカスがあてられ、「私的整理に関するガイドライン」や「RCCの活用」等の具体的施策もそろってきている。反面、産業サイドの過剰債務の解消については、既存業界の構造問題の解決等に資する政策がもっと拡充されて良いと思う。例えば、企業の不採算部門からの撤退や新規事業への転換を加速させるような制度や税制を強化したらどうかと考えている。
 こうしたことを踏まえ、関係省庁間でより一層の連携強化が図られ、効果的な複合政策が進められることを希望したい。


(問)
 あえて伺うが、今の小泉内閣が掲げている構造改革において、経済政策では財政構造改革や不良債権処理が柱となっている。いま、おっしゃった話は不良債権処理=構造改革という考え方を多少変えるべきだ、ということなのか、いま、採られている政策にオンしていく話なのか。
(答)
 不良債権処理の問題が銀行界の経営の最重要課題であることは従来から申しあげているとおりである。
 一方で我々が一生懸命処理をしても新たな不良債権が発生してくるという状況は金融に携わる方々の間で広く理解を頂いている様であり、例えば、先日、報道されていたところによるとアメリカのハバード経済諮問委員長が竹中大臣の訪米の際「不況の下で不良債権処理を行うことは至難の業である」といった報道や、イギリスの中央銀行総裁も同様なことをおっしゃっているという報道などもある。いずれにしても、景気が悪いと不良債権が発生するということは金融に身をおく立場としては共通した認識であると考えており、こうした点から、不良債権問題の正常化のためには景気回復が不可欠な要素・要因と考えている。また私見であるが、財政については景気安定化のためには弾力的な対応をし、景気の更なる悪化を食い止めていくことが重要であると考えている。ただ、財政の中身ということを申しあげると、先ほど申しあげたとおり、財政の持っている資源配分機能については、今後の成長を支えるものに対して重点的に配分されることが必要であると考えている。そういった点では今回の予算編成はかなり明確な意図をもった配分が行われていると評価している。


(問)
 昨年末以降首相官邸を含め、金融危機対応による公的資金注入についての発言が目立っている。かかる中、「金融危機」とはどの様な状況であると認識しているか。また、公的資金注入の必要性について、改めて会長のお考えを伺いたい。
(答)
 昨年末以来、小泉総理をはじめ政府首脳の方々が、金融危機発生時の対応についてご発言をされているのは、報道等で承知している。
 先月の記者会見では「政府は万一の場合には、タイムリーに決定をしスピーディーに行動をすることが必要」と申しあげたが、現行の預金保険法では、万一特定の銀行の信用が大きく揺らぐことがあっても、これが金融システム全体に拡がることを防ぐことが可能な仕組みが設けられている。
 「金融危機」がどの様な状況を指すかというご質問であるが、一般論として言えば先月も申しあげたとおり、「ある金融機関の預金がある種の原因で一気に流出する」とか「資金の大幅な移動が起きる」という様な場合であろうが、預金保険法102条では「我が国又は当該金融機関が業務を行っている地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずる恐れがあると認める時」とあり、正にその状況を金融庁の検査やモニタリング体制の中で、政府が的確に判断されることであると考える。こうした意味で「万が一の場合にはタイムリーに決定しスピーディーに行動することが必要ではないか」と申しあげた。
 小泉総理が年頭会見等で「金融危機を起こさないためには、あらゆる手段を講じる」とおっしゃったのは、地域や我が国全体の金融秩序の状況を、行政として正確に把握し、預金保険法102条の対応が必要と判断されるケースについては間違いなく機動的に対応するという強いメッセージであると理解している。
 ただ、現状は、大手行においては積極的な不良債権処理を行った後のこの年度末決算で一定の自己資本を維持する見込みであると承知しており、先ほど申しあげたような改正預金保険法に想定されているような金融システム不安が存在している状況ではないと考えている。つまり、現時点で公的資金の注入が必要な状況にはないと考えている。


(問)
 ダイエーに関し、主力銀行による支援も含めた「新3ヵ年計画」が発表されたが、銀行として企業再建についてどの様に考えるか、またどの様に取組んでいるか、改めて会長の考えをお伺いしたい。
(答)
 まず、ダイエーについて申しあげる。
 今回提示された計画は、不採算店舗の閉鎖や非本業事業からの撤退を前倒しで実施することによって、グループ収益力・財務構造の飛躍的改善を図るものであり、支援要請については前向きに詳細を検討しているところである。
 主力3行はダイエー現経営陣の取組みを高く評価しており、新3ヵ年計画においても従来同様一致して支援する方針である。
 次に、企業再建について、一般論として私の考えをお話させて頂く。
 経営不振に陥っている企業の状況やその理由は実に様々であり、予てより銀行として、各企業の状況をきめ細かく個別に検討し、再建可能な企業についてはあらゆる支援・アドバイスを実施することにより再建の方向で取組んでいる。 昨年4月の緊急経済対策以降「金融再生と産業再生」を目指す方針の下、例えば「私的整理に関するガイドライン」や「産業再生法の改正」、「デットエクイティスワップの活用」「RCCの機能拡充」など企業再生に関する環境整備は、この1年間で着実に整備されてきた。
 また、個別銀行のケースで見れば、例えば富士銀行の場合、本部内にお取引先企業の財務内容改善などのアドバイスを行ない経営改善に向けたサポートを行う部門を立ち上げたり、マネジメントバイアウトなどの手法で企業再建をサポートする専門会社や、グループ内のみずほ証券でM&A専門チームが確立されるなどの体制整備を行っている。こうした体制で、個社の状況に応じてきめ細かく対応し、着実に実績を上げてきている。
 経営不振企業の再建は、銀行にとって極めて重要な役割であると認識しているが、まずは、企業の経営者自身が、経営環境の循環的変化や経済構造自体の大きな転換を明確に認識し、的確、且つ大胆な経営努力を行っていくことが不可欠である。こうした自助努力を大前提として、銀行としても、できる限りの支援・アドバイスを行っていくべきと考えている。


(問)
 ダイエーの支援に関して「私的整理に関するガイドライン」がどのくらい活用されたのか。
(答)
 具体的な計画の細目が決まっていないので何とも申しあげられないが、私ども主要3行の検討にあたっては、「私的整理に関するガイドライン」を十分念頭において検討を行っている。


(問)
 中小企業向け貸出の問題でお伺いしたい。多くの銀行がリスクに見合った利ざやを確保することにより収益を拡大しようということは、前向きな試みとして評価されているところが多い。しかし、一方で、中小企業向け貸出の残高が減ったり、返済不能となる企業が増えて、特に来年度以降、中小企業の破綻等が増える可能性も言われている。このような中、健全化計画では中小企業向け貸出を伸ばすこととなっていたはずが9月期決算を見ると達成できていない銀行が多いことについてどのように考えているか。また、中小企業の窮状の問題について、今後どのような取組みが必要と考えているか。
(答)
 中小企業貸出の円滑化ということについて申しあげる。中小企業の貸出については、健全な中小企業に対し十分な資金供給をするということが健全化計画にも盛り込まれている。そういう意味で私どもは健全な中小企業に対しては競争して貸出を行っている。以前にも申しあげたとおり、中小企業・個人というものは、私ども大手銀行にとっても一番大事なマーケットである。この分野で、一生懸命、業績を伸ばしていくということを心がけている。
 ただ、残念ながら、現在の景気の状況、さらには中小企業は製造業を中心に、いわゆる空洞化や象徴的な意味での中国問題といった中で構造変化の嵐に巻き込まれているといった状況があり、その様な厳しい状況の中では、健全な中小企業に対する健全な信用供与を行っていくということがなかなか果たせないというのが今の実態である。数字だけを見るとなかなか苦戦しているというのが、大手銀行、地域金融機関を問わず現在の金融機関の状況である。
 中小企業の窮状については、率直なところ、私どもも大変悩むところである。我々の営業基盤である中小企業層というものをきちんと確保していくということは、中長期的視点から大変大事なことである。ただ、他方で、現実の問題として、いま申しあげたような状況の中小企業に対して、我々は中長期的に顧客基盤を保持していくという観点から、様々なアドバイスや支援をしているわけであるが、構造変化の中でいかんともしがたいものもある。そうした先について銀行が経済合理性を超えて大きく支援をしていくということは、銀行も株式会社である以上なかなか難しい。基本的なスタンスは、再建できる企業については、最大限のアドバイス、サポートをしていくことである。また、どうにも自助努力でやれないところまできてしまった企業の場合には、むしろ傷が深くなる前に何らかの手を打つことを企業主にお勧めするしかないというのが今の我々の立場である。


(問)
 ダイエーの再建計画について、先ほど、ガイドラインを念頭において検討したということであったが、これは債権放棄が決まれば、ガイドラインの手続きに入るという主旨なのか、あるいは、念頭にはおいているが、ガイドラインの手続きとは別に進めるということなのか。
 また、ダイエーの再建策を検討するにあたって、首相等の記者会見での発言でも暗に触れられていたように国側から何らかの働きかけがあったのか。そういう私企業の再建問題に国が関わってくるということについてどのように考えるか。
(答)
 ダイエーの再建計画を検討するにあたっては、ガイドラインの精神を念頭においているが、具体的な手続きについて、ガイドラインの手続きを使うかどうかは、現時点では明確に申しあげられない。いま考えられている枠組みは、ガイドラインの精神を遵守しながら、ガイドラインの手続きは使わない方向ではないかと考えている。ただ、これは、これから詳細を検討していく中で決まっていくことであるので、断定的なことは現時点では申しあげられない。
 企業の再建への政治や政府からの関与についての質問であるが、ダイエーの再建について言うと、私ども主力行が政府や政府関係当局等から具体的な指示を受けたことはない。総理や何人かの大臣がこの問題についてコメントしていることについては承知しているが、ダイエーの影響の大きさからご発言されているものであろうと考えている。


(問)
 ガイドラインをもともと作る際に、債権放棄の不透明性が批判され、そういったことを背景に、全銀協なり経済界が一体となって作ったかと思うが、出来たばかりのガイドラインでありながら、その枠組みと違う形で支援をするというのはそもそも趣旨に反していると思うが、その点どうお考えか。
(答)
 ガイドラインを適用する企業というものがどういう企業かについてはガイドライン研究会の中で議論されている。非常に関係者が多い、あるいは時間がかかると商圏を失ってしまう等いくつかのケースについては、ガイドラインにしたがって、多くの債権者がこれに対応し、短期間・スピーディーな合意が図れれば再建も容易になるだろうということであったと理解している。
 今回の件について、そうした対象となるようなケースかどうかについては、先ほど申しあげたように、詳細をこれから議論するものであるから、その中で最終的に結論が出てくるであろうと思う。ガイドラインの精神を踏まえながらこれから考えていくということである。


(問)
 ダイエーの件で2点あるのだが、ガイドラインについてダイエーの高木社長が会見のときに「今回は3行とダイエーだけで纏め上げたものであるからガイドラインは適用する必要がない」とおっしゃったのだが、そもそもガイドラインを作った会長として、そういう関係者の少ない中で合意できればどんな大きなケースでも使わなくて良いという考えを持っているのかどうか伺いたい。
 もう1点は、今のデフレの状況の中で地方には苦しい中小のスーパーがたくさんあって、日々、法的整理をされているのに対し、ダイエーは何故法的整理されないのかという気持ちが出てくるかと思うのだが、どのようにお考えか。
(答)
 全てのものがガイドラインに従わなければならないということを決めたわけではない。ただ、ガイドラインを作る過程で議論された透明性・公平性というものは非常に大事な視点であって、ガイドラインに則ってやらない場合でもこの精神に準拠した計画を作りたいというのが私の想いである。
 それから2点目のダイエーは救って中小のスーパーで苦労している人達をどうするのかというご質問であるが、私どもは、ダイエーだから救うとか他は救わないとか、そういうことではなくて個別に再建できるかどうかということを十分に吟味をしたうえで対応している。前にも申しあげたとおり、企業というのは、基本的に大きかろうが小さかろうが従業員・経営者あるいはオーナー、皆が一生懸命やっているので、できることであれば新しい構造変化の中あるいは景気変動の中で生き残って欲しい、何とか再建して欲しいというのが我々の想いである。
 そのために、我々は手を貸していくということであるが、結果として我々の金融的な支援ができない状況になってしまうこともある。そういう場合は残念ながら法的整理なりでマーケットから退出を余儀なくされるということであり、一般化して、小さいものは法的整理をされるが大きいものはされないということは全くない。


(問)
 前回のダイエーの再建計画で主力行が行った1200億円の優先出資について、今回、全額減資することになったが、このことに対する責任問題についてはどのようにお考えか。
(答)
 最終的にどのような再建策となるかは確定していないが、当時優先株に投資したことについては、その時点ではベストな判断であったと考えている。


(問)
 再度確認するが、3月末決算に向けて積極的な不良債権処理を行ったとしても、大手行については公的資金を再注入するような大きな不安が生じるようなことは、今後も含めて、無いという認識か。
(答)
 前回の会見でも申しあげたが、根拠の無い風説をベースとして、公的資金を注入するかどうかという仮定の議論をすることは差し控える必要がある。
 先ほどは、例えば大幅な資金のシフトが起きるような事態は、現在の財務状況を見る限りでは考えられないということを申しあげたものである。風説の流布等によって一部にそのような資金シフトが起こるようなことは100%無いかと言われれば、マーケットの持つパワーの大きさを考えれば、何とも言えない部分はある。しかしながら、ファンダメンタルズの部分を見る限りは、問題ないと考えている。
 仮にそのような事態になれば、先ほども申しあげたように、政府には現在のスキームを使ってタイムリーな意思決定をして欲しいと期待しているということである。


(問)
 今のお話はペイオフとの絡みで言っているのか。
(答)
 ペイオフとは関係のない話である。
 ペイオフに関係なく、現在の預金保険法において、先ほど申しあげたような危機的な状況が起きた場合には、資本注入あるいは資金援助等ができることになっているわけである。したがって、万一の場合には、総理が議長を務められる金融危機対応会議において資本注入等の適切な措置をタイムリーに発動することをお願いしたいと申しあげているものである。


(問)
 ダイエー以外にも、ゼネコン・不動産業界といったところをはじめ、まだまだ不安が囁かれているところがあり、そうした企業の倒産が引き金となってある銀行から資金シフトが起こり、資本再注入が必要であるといった事態に陥る可能性はないのか。
(答)
 そういう仮定の話には何とも申しあげようがない。ただ、大手行について言えば、3月決算に向けてかなり思い切った引当金を積む、あるいは償却をするという計画を発表しているところであり、当然、予想されるような問題先については、すでに十分な対応を計画しているものと認識している。


(問)
 先ほど、ダイエーの処理について「私的整理に関するガイドライン」の精神を遵守して対応すると言われたが、社長の経営責任の問題や主要3行だけで処理するなど根幹の部分でガイドラインとかなり違っている。どこがガイドラインに準拠しているのか。
(答)
 細かく再建計画の中身について個別に議論することは控えさせて頂く。ただ、経営責任の問題については、フォーマルなガイドラインについての解釈ということでガイドライン研究会で承認された「Q&A」があるが、そこでは「経営者責任を明確にする観点から、経営陣の退任を原則としています。しかしながら、例えば、経営悪化に伴って、旧経営陣はすでに退任しており、新しいスポンサーや、主力の金融機関から新たに派遣された経営者が、新経営体制の下で、再建計画を作成し、債権放棄の申し出を行うなどのケースがあります。そのようなケースまで退任を必須としているわけではなく、その場合には、個別に対応する必要があります。」とされている。高木社長以下現在の経営陣は新しく再建を行うために前経営陣に替わって就任した経営者達であり、私の個人的な印象を申しあげれば、非常に意欲に富み経営力・実行力もある人達だというように考えている。そういう意味で、ガイドラインに書かれているとおりに、「退任が原則となっているから退任」というと、「再建をするための人達なのに何故だ」ということになるので、研究会でもこういった議論を「Q&A」で説明しているということである。


(問)
 主要3行だけでやることについてはどうか。
(答)
 3行だけでやるかどうか、その他の債権者についてどうするのかという細目については現在検討しているところであり、何とも申しあげられない。ただ、一般論で申しあげれば、現実に全てのものが私的整理ガイドラインの手続きに従わなければならないということではなくて、関係者の間でスピーディーに合意ができ、それが透明性や公平性を確保できるということであれば、ガイドラインに定める具体的な手続きによらず私的整理をすることはあり得るということが、研究会の場でも一致した意見であったと私は記憶している。


(問)
 最近の政府の動きを見ていると、公的資金の注入は、金融危機を起こさない、金融危機を未然に防ぐための手段であるかのように受け取れるが、このような見方についてどう考えるか。
(答)
 公的資金を入れることについては、マーケットの評価が分かれると思う。例えば、資本のダイリューションが起きるとか政府の介入がより強くなって経営の自主性が損なわれるのではないかといったいろいろなマイナスの効果もあるし、投資家サイドからはいろいろなプラス・マイナス両側の議論がある。いずれにしても、金融システムの危機というような状況がないときにこの法律の発動はできないわけであり、現在はそういった状況にないと考えている。公的資金を入れるという議論の前に、例えば私どものグループについていえば、3000億円を超えるマーケットからの資本調達を準備しているが、そういった自助努力ということがまず前提だろうと思う。そのうえで、ある銀行の危機的な状態が金融システム全体に波及することが懸念されれば、これは総理大臣が金融危機対応会議を招集して決定をするということである。そういった仮定の議論について私がここであれこれ申しあげるのは差し控えたい。


(問)
 政府は、ここ2、3年は小さな金融機関でも預金保険法102条を発動し、実質的にペイオフを延期するような、幅広く適用することを考えているように思われるが、この点についてどう考えるか。また、預金保険法102条は申請主義のように読めるが、強制とも読める。どちらと考えられるか。
(答)
 最初の質問については、これはまさに金融システムの安定化という観点から預金保険法をどう運用するのかという、政府の、特に総理大臣の主宰する金融危機対応会議の判断であるので、私が申しあげるような話ではない。ただ、不況がさらに長引けば不良債権の発生がなかなか止まらないというようなことであると、苦しい銀行が引き続き出てくるであろうということは予想できるところである。ただそれに対してどう対応するかというのは、これはまさに政府の判断する領域であり、私が仮定の議論として申しあげる問題ではなかろうと思う。
 2番目の預金保険法102条の手続き論については、私が理解するところでは、まず認定するのは総理の主宰する金融危機対応会議であり、認定が行われた後に当該銀行自己資本の充実策を検討し、それがうまくいかない場合には政府に資本注入を依頼するというのが資本についての手続きだというように理解している。その意味では認定がまず先にあり、そのうえで、自分で調達するのか、あるいは公的資本を申請するのか、ということだろうと思う。いずれにしても、まず最初に行動を起こすのは政府で、金融危機対応会議がまず認定をするところから全てがスタートすると認識している。