2003年12月23日

三木会長記者会見(東京三菱銀行頭取)

鵜飼専務理事報告

 本日の理事会では、まず、お手元にお配りしているように、「郵政民営化と郵便貯金のあり方について」の「骨子」をとりまとめた。本件については、この後、会長からお話しいただくが、今後、この骨子をベースにさらに検討し、冊子としてまとめる予定である。
 次に、きたる2月3日の火曜日、午後1時30分から、公的金融問題フォーラムを開催することを決定した。お手元に開催のご案内をお配りしているが、「郵政民営化と郵貯・簡保のあり方を考える」をテーマとしたパネルディスカッション形式としており、会長も報告者として参加することとしている。皆様にも、是非、ご出席いただきたいと考えている。
 また、本日の理事会では、次期副会長および次期正副会長の担当委員会を、お配りした資料のとおり内定した。
 次期副会長の正式な選任は、次期会長と同様、来年4月の理事会において行なわれ、また、担当委員会の正式な決定は、次期正副会長が正式に選任された後の正副会長会議において行なわれる。 なお、私事で恐縮であるが、私は、本年度をもって副会長・専務理事を退任することとしている。なお、後任の副会長・専務理事は、当分の間、補充選任をしないこととしている。


会長記者会見の模様


 ご質問をお受けする前に、私から二点申しあげる。
 第一は、郵便貯金の改革についてである。
 ご承知の通り、「郵政民営化」は重要かつ現実的な政策課題となっている。全銀協としても、金融システムの安定性確保や経済の活性化につながり、国民の理解が得られる改革となるよう、郵便貯金の抜本的改革について様々な観点から真剣に検討を重ねてきた。本日の理事会において、「郵政民営化と郵便貯金のあり方について(骨子)」が了承されたので、その内容について報告させていただく。資料として、理事会で決定されたやや分厚い資料とご参考としてそれを要約した「骨子のポイント」という2枚紙を配布させていただいている。
 「骨子のポイント」の2枚紙をご覧いただきたい。最初のページにあるように、国営の郵便貯金が「簡易で確実な少額貯蓄手段」を提供する意義はもはや失われているにもかかわらず、郵便貯金は現在もなお約230兆円という巨大な規模を有している。経済の活力を高め、金融資本市場の活性化を図るには、もはや抜本改革を避けて通ることはできない。
 但し、現状の規模を維持したまま郵便貯金を民営化しても、問題が解決するわけではない。民間金融機関、就中、地域金融機関に深刻な影響を与えることが懸念されるほか、民営化後に経営困難に直面した場合の影響も大きく、金融システムの安定性確保などの観点からみると、郵便貯金は本来、縮小のうえ廃止することが望ましいと考える。
 一方、利用者利便や郵便局ネットワークの有効活用といった観点も踏まえることが必要であり、改革のあり方を考えるに当たっては、郵便貯金の機能毎に国民経済的観点から対応を検討していくことが重要である。
 郵便貯金の機能のうち、自ら定額貯金等の貯蓄性商品を提供し集めた資金を運用する機能については、財投への資金供給という役割が既に失われていることも考えれば、廃止することが適当だと考える。これに対し、決済サービスを提供する機能や国債などの金融商品の販売機能については、利用者利便の確保などの観点から、存続させることが現実的だと思う。
 具体的改革案のイメージは、骨子のポイントの2ページ目に整理してある。四角で囲ったなかをご覧いただきたい。(1)まず、定額貯金などの貯蓄性商品の新規受入を停止するとともに、既存契約分については、それに見合う資産とともに整理勘定へ分離することで廃止する。(2)定額貯金などを分離した残りの部分は、「官業」ではなく民営化されたポストバンクとなる。ポストバンクは、ナローバンクとして通常貯金を受入れ、国債などの安全資産を中心に運用することで決済機能を提供するほか、国債や民間金融商品の販売機能を担い、引き続き郵便局ネットワークを通じサービスを提供する。(3)その場合、ポストバンクには、①「官業ゆえの特典」の完全廃止、②民間金融機関と同一の規制・監督の実施、③三事業の分離、④地域分割による規模の適正化が求められる。特に、政府出資がある場合は、決済機能などに限定したナローバンクとして、リスクを極力抑制するため、預入限度額を設け、運用は国債などの安全資産を中心とし、新たに貸出業務へは参入しないことになる。「官業ゆえの特典」の廃止により、政府保証は解除され、ポストバンクは、預金保険制度へ加入するとともに、納税義務を負うこととなる。(4)ポストバンクは、最長10年の準備期間をとって、雇用や郵便局ネットワークの効率化を進めることになる。 今回の検討に当たっては、竹中経済財政政策担当大臣から提示された5つの基本原則についても十分考慮した。改革案の内容は5原則の趣旨に合致したものとなっていると考えている。
 なお、本日とりまとめた改革案の内容については、竹中大臣をはじめ関係各方面にご説明し、幅広く理解を得られるよう努めて行きたいと思っている。
 次に、「金融機関への証券仲介業の解禁」について申しあげる。 証券仲介業は来年4月、事業会社などに解禁される予定となっているが、金融機関に対しては健全性確保などの観点から慎重に対応する必要があるとして、解禁が見送られている。
 制度導入の趣旨からして金融機関を排除する必然性はなく、むしろ顧客との接点が大きい金融機関への解禁は効果が大きいと考えられる。このため、金融機関にも早期に解禁していただきたいと、金融審議会、金融庁に対して要望活動を行ってきたが、本日午前中に開催された金融審議会第一部会で報告書が取り纏められ、金融機関への証券仲介業の解禁を認めるとする方針が示された。早期決着が図られたことは評価したいと思う。
 銀行と証券会社が協力し、個人投資家の育成や裾野の拡大を図り、証券市場を活性化させることは国民経済的な意義も大きいと考える。
 今般その位置付けが明確化された市場誘導ビジネスと併せて、株式市場を通じるリスクマネーの増加や複線的金融システムへの移行促進など、大きな効果が期待される。
 こうした目的を速やかに実現するため、円滑な業務運営を阻むような必要以上の規制は是非見合わせていただき、早期解禁に向け法的手当てなど所要の措置を速やかに講じていただきたいと考えている。


(問)
 景気についてであるが、株価は1万円台前半で一時に比べ低迷している状況にある。12月12日に発表された日銀の短観でも先行きの見通しについてはやや不安がにじむような内容となっている。為替について警戒されているとの見方があるようであるが、現状の会長の認識と年末の会見であるので来年の見通しについてお聞きしたい。
(答)
 わが国景気が持ち直しているとの認識は変わっていない。輸出が増加し、企業収益が回復しており、設備投資も出てきている。そのため生産も増えている。ただ、そうした状況であるが、なかなか消費に結びつかないという問題があり、また企業が良いといっても非製造業とか中小企業とか地方とかでバラつきがある。バラつきはあるが、総じて景気としては持ち直しの状況が続いていると認識している。
 来年であるが、世界経済すなわち外部環境は引続き力強さが感じられる。これは米国と中国が中心であるがいずれも来年はかなり良いのではないかと思う。したがって、輸出を中心に回復の動きは続くだろうと思うが、非製造業や中小企業の方にどう広がってくるかという問題はあるし、個人消費の方は、年金とか医療とか国民の支出が増えるという問題があるので、なかなか盛り上がってこないのではないか。そうすると自力回復というのは難しく、他の環境が良いことによる緩やかな回復が続くと見ている。また、円高の方も心配がないわけではないが、企業の方がいろいろ円高対抗力をつけており、現地生産やヘッジをしているということもあるので、今の水準であれば大きく足を引っ張るようなことはないと思う。


(問)
 11月29日、足利銀行に対し、預金保険法第102条第1項第3号に基づく破綻処理が行われた。今回の破綻処理に対する会長の評価をお聞きしたい。あわせて、足利銀行に対する公的資金に関しては、今後、ペイオフコストを上回る分については、最終的に民間銀行が負担しなければならない可能性があるということだが、この点についての考えもお聞きしたい。
(答)
 足利銀行の破綻処理であるが、金融庁による検査が行われ、それから監査法人の監査がなされ、その結果が債務超過となった以上は、栃木県で非常に大きなシェアを持っているので地域経済の混乱を防ぐという観点から第102条第1項第3号の適用は止むを得なかったのではないかと思う。
 新経営陣、池田さんのリーダーシップの下、しっかりと再生して欲しいと思っている。
 次に今ご指摘のとおり、負担がどうなるかということだが、ペイオフコストの範囲内のものは預金保険機構の一般勘定で処理をすることとなるが、既に同勘定は約4兆円の赤字に陥っており、これが更にたまっていくということも、そもそも大きな問題である。それに加えてペイオフコストを超える負担がある。これは一義的に金融機関が負担することになっているが、金融システムに不安が生じる場合には国が一部負担することができるという規定になっている。これは一所懸命経営し、ようやく水面上に顔を出した金融機関が皆、また足を引っ張られて弱くなるということで大変大きな問題だと思う。現在、まだ不良債権処理の集中処理期間でもあり、また、地域金融機関にとっては集中改善期間でもある。まだ金融システムが完全に安定したわけではないので、これについては、是非金融システム安定の見地から、極力、財政の負担をお願いしたいと思っており、そのようにお願いして参るつもりである。


(問)
 予防的注入に関してであるが、次期通常国会に法案が提出される。今回の法案は、健全性基準を満たしていない銀行にも、公的資金注入が可能になる制度となると聞いているが、これについて会長のご意見、注文をお聞きしたい。また財源負担の問題等不透明なところがあるが、それについてもお聞きしたい。
(答)
 これは金融システムの不安や地域経済の不安を回避するためのセーフティネットが強化されるという意味があると思う。ペイオフの全面解禁を控えているので、そういうセーフティネットの必要性も理解できる。加えて、審議が進むうちに入口と出口の基準、即ち地域経済や再生が大事であるという入口での注入基準の問題や、公的資金の回収可能性とか剰余金を積むという出口基準もはっきりしてきた。また、公的資金の強制注入や一斉注入をしないということも明確になってきたので、方向感としては良いのではないかと思う。ただ、財源の問題は、先程も申しあげたが公的資金の損失負担により金融機関が揃って弱くなるということになると本当に日本経済のためにも良くないと思うので、その点はよくご配慮いただきたいということを申しあげている。なお、こういう形で公的資金が入るということはセーフティネットも強化されるし良いことだと思うが、何度も申し上げている通り、実際の注入に際しては、公的資金は金融システム安定のため、あるいは地域経済のためであり、個別行の救済のためではないこと、即ち、安易に個別行救済のために入れるようなことはあってはならないことについて、重ねて申し上げる。


(問)
 銀行の窓口で今、一部保険商品が売られているが、それを拡大するという動きがあるが、保険業界からは銀行には保障性商品を販売するに際してリスク評価できるのかという反発があるが、この点をどのように考えているか。
(答)
 これは来年の1~3月に議論する問題であるが、色々と規制緩和が進む中で私どもは保険商品についても広く窓口販売を認めていただきたいと思っている。
 まず、法人・個人を問わず、ワンストップショッピングのニーズというか、銀行の窓口には様々なニーズのお客様がいらっしゃるので、そうした要望に応えていきたいと思っている。顧客利便性の観点から役に立つと思う。投信の実績から見ても銀行がそうした利便性向上を求めるニーズに応えていると思うし、同時に証券会社、保険会社の取扱商品の拡大にも繋がっていると思っている。
 先般、生保協会長の会見かと思うが、銀行は売るだけ売って責任は保険会社に来るということでは困るとのお話があったようだが、そのようなことはない。現在、銀行で個人年金保険などの保険商品を売っているが、我々は保険会社の基準に基づき販売しているし、保険会社の引受審査を経てお客様との契約が成立する。引受審査は保険会社が行っているので、ご指摘のようなことはないのではないか。
 お客様のライフステージに応じた金融商品を提供する見地から、私どもとしては保険についても窓口で販売をしたいと思っている。大きな規制緩和の流れの中で、また顧客のワンストップショッピングのニーズへの対応という観点からそうしたことを要望していきたいと考えている。


(問)
 先ほど金融システムは安定しているとは言えないという言い方をされたが、足利銀行が破綻したという状況を踏まえ、例えば金融システムのなかで地域はどうなのか、地域の金融システムはどうなのかとか、そういう金融システムの現状について色々な斑模様があるかと思うが、そのあたりはどのように認識しているか。}
(答)
 ご承知のように金融界全体の課題は、何と言っても不良債権の処理と収益力の増強の2つである。特にこれまでは不良債権の処理のほうに力点を置いて皆一所懸命にやってきたというのが現状である。したがって、斑模様という以前に、主要行については集中処理期間ということで、金融再生プログラムの目標である 16年度末までに不良債権比率を半減することに向かって一所懸命やっているところであり、また、地域金融機関については地域経済がなかなか厳しいなか、やはり集中改善期間ということで頑張っているところで、金融界全体としてまだそういう状況にある。
 そうしたなかで、然らば不良債権問題は9月の中間決算を見ると山を越えたのかというようなご質問がよくあるが、私は主要行、また地方銀行の大部分については15年度の上期で不良債権処理の峠は越えたというふうに思っている。それは主要行で言えば、りそなを除いて各行とも業務純益が与信関連費用を上回り、新規発生額も少なくなってきたという状況の下で、最終黒字が確保出来たということである。また、地方銀行についてもバラツキはあるが、多くのところが同じような状況であった。したがって、不良債権処理は峠を越えたのかという質問に対する答えとしては、全体としては峠を越えたと思うが、やはり地域金融機関の一部で引き続き問題が残り、また大口問題先が一部に残っているということはあろうかと思う。地域金融機関については、詳しいことは存じ上げないが、地域の経済状況がかなり違うし、また健全性についてもちょっと差があるようなので、地域金融機関のなかでバラツキが生じているように聞いている。


(問)
 郵政の民営化について3点伺いたい。
 まず、ポストバンクに民間が出資するということについて、どうして民間の出資が必要だと考えているのか、その場合、民間というのは銀行業界も含めてということなのか。
 次に、ポストバンクと整理勘定を分けるとどういう規模になるかよくわからないが、運用益に相当アンバランスがでる可能性があると考える。おそらく、このスキームだと、整理勘定からポストバンクの方に補助金を出して、それでバランスさせようということなのだと思うが、そのような理解でよいか。
 最後に、整理勘定の方は、国債を市場に放出して、定額貯金を払い戻していくということになるかと思うが、その場合に、相当大量の国債が市場に放出されることになる。これが、現行の国債管理政策で耐えられるか、これについても将来何らかの提言をするつもりがあるか。
(答)
 ポストバンクに民間が出資するかどうかについては、今のところ特定して考えてはいない。しかしながら、民営化の最初は、政府が100%ないしは100% 近く株式を保有することになると思う。その後、少しずつ株を放出して民営化していくということになるのではないか。株が完全に放出され、民営化されれば、我々と同条件であり、色々な制限はなくてよい。しかし、政府が出資している間は、預入限度や貸出は行わないなど、リスクの少ないナローバンクでやっていくべきであると言っているわけである。ポストバンクにすぐ民間が出資するということは考えていないが、経営がきちんと軌道に乗れば、いずれ株は民間に放出されることになろう。それを購入する先としては、例えば地元の企業などいろいろあろうかと思うが、具体的なイメージが今ある訳ではない。
 二点目のナローバンクが採算的にどうかという点については、ナローバンクで極力採算に合うようにやっていただく必要があろうと思う。ナローバンクとしても通常貯金は受け入れるわけであり、これをリスクのない国債などで運用するということで運用益をあげる。また、窓口で国債の販売も行うし、民間の商品を受託して販売することにより、手数料を稼ぐこともできる。また、民営化することによって、リストラ等、合理化、効率化に努めるわけであり、収益的にはそうした経営努力により、かなりいけるのではないかと思う。先ほど申しあげたとおり、整理勘定の方は、既存の定額貯金と既存の資産をそっくり移すわけであるから、そこで出てきた運用益については、最長10年間にわたり、一部ナローバンクの方へ補填するという対応もあるということを提案している。
 三点目の国債消化の点であるが、整理勘定へ移すのは、既存の定額貯金とそれに見合った資産である。資産のほとんどが国債であるが、定額貯金の期日が来るのに大体あわせた形で現金化、売って行くということであるので、いっぺんに放出するということはない。また、国債市場の動向によっては、混乱をきたさないように国債を担保にした借入等で既存の定額貯金を払い戻すこともできると思う。いずれにしても定額貯金は10年にわたって期日が来るわけであるから、それに応じて現金化すればいいということであり、大きな混乱はないのではないか。また、あっては困ると思う。


(問)
 先ほどの証券仲介業の解禁に関してお伺いしたい。結局これはセカンダリーの部分が解禁になったということで、本来の株や債券の引き受け業務は、まだ銀行本体には認められていない。これを行うには、証取法65条の改正が必要になってくると思う。証券業界はこれに対して大変な警戒心を示している。65条改正に向けて、今後銀行業界としては、何か具体的に取り組んでいくのか。また、65条改正を主張していくのか。
(答)
 今お話があったように、今回の証券の仲介業というのは、直接65条を問題にしたものではない。銀行はポジションを持つわけではないので、リスクもないし、既に様々な弊害防止措置や優越的地位の濫用の禁止などが定められ、証取法や独禁法において措置が講じられている。したがって、証券仲介業の銀行への解禁にあたり、65条そのものを俎上にあげて議論したわけではない。しからば、本丸の65条はどうかといえば、これは、やはり、規制改革、構造改革などの大きな流れというものがあり、また、個人顧客のワンストップショッピングのニーズがある。さらに、証取法65条ができた頃は、確かに銀行は優位な立場であったかもしれないが、その後はご承知のとおり、銀行も資金需要がなく、本当に一所懸命、需要の開拓に努めているところである。証券に対しても、保険に対しても、もはやそういう立場でなくなったということは、皆さんもよくお感じになっているのではないか。そういう点からみても、65条というのは、いずれ廃止の方向で要求していきたいと思うが、今回の仲介業の解禁によって、すぐ次、というつもりは今のところない。