2006年11月21日

畔柳会長記者会見(三菱東京UFJ銀行頭取)

斉藤専務理事報告

 事務局から、本日の理事会で決定した事項に関連して、3点ご報告する。
 1点目は、お手元の資料のとおり、地球温暖化対策等に係る数値目標を設定したことである。
 全銀協においては、平成13年9月に決定した「銀行業界の環境問題に関する行動計画」にもとづきこれまで環境問題に取り組んできたが、今般、この問題にさらに積極的に対応するということで、地球温暖化対策および廃棄物対策に関する数値目標を設定した。
 まず、温暖化対策としては、2010年度における電力使用量を2000年度比12%減とすること、次に廃棄物対策として、2010年度における再生紙購入率を70%以上、紙の再利用率を85%以上とすることを目標とした。
 なお、今回、全銀協として、電力と紙の使用量について数値目標を定めたのは、銀行業という業務の性格上、特にこうした資源を費消する業界であるためである。
 本件について、さらに詳しくお知りになりたい点があれば、会見終了後、事務局にご照会いただきたい。
 2点目は、例年同様、年末に向けた金融の円滑化について、お手元の資料のとおり、申し合わせを行ったということである。
 3点目は、準会員の新規加入があった。本日付で台湾の台北に本店のある「第一商業銀行」の加入を承認した。この結果、全銀協の会員は250会員となる。

会長記者会見の模様

(問)
 景気と金融政策に関連した質問をさせていただく。このところ消費の関連を中心に弱めの経済指標が相次いでおり、銀行の貸出も伸びが鈍化している。これを反映して、このところ株価も冴えない動きとなっている。政府は、今月の月例経済報告で景気判断をいくぶん下方修正するとも報じられているが、銀行界の代表として現状の景気の認識と先行きについて、どのように見ているのか。また、日銀の福井総裁は、金利の引上げについていかなるタイミングも排除していないということで、年内もしくは年明けの利上げについて含みを持たせる発言をしているが、この年内もしくは早期の利上げについてタイミングは適切であると考えるか。
(答)
 景気の見方に関する最初の質問であるが、今回の景気拡大は非常に息長く続いていると思うが、そのベースは企業業績の順調さであると思う。9月期の決算状況や同時に出されている来年3月期の予想を見る限り、引き続き全体として増収増益基調が維持されていると見ている。先般発表された7-9月期の実質GDP成長率も前期比年率プラス2.0%と市場の予測を上回り、かつ7四半期連続でプラス成長を記録した。確かに、個人消費が、天候不順や原油価格高騰などにともなう消費マインドの悪化から減少したということはあったが、輸出や設備投資が引き続き堅調に増加するなど、全体としては景気拡大が続いていることが改めて確認されたと認識している。ただ、先行きを展望すると、住宅市場を中心とした米国経済の減速が、引き続き心配な材料の一つであり、減速が長期化すれば、輸出の鈍化を通じてわが国の企業収益の足を引っ張る可能性があり、国内経済に与える影響を留意すべきだと思う。しかし、米国経済のソフト・ランディングは十分可能であるという見方が出ているし、わが国の設備投資も企業収益の改善が続いていく中では、引き続き底堅く推移すると見ている。雇用情勢も改善傾向が続いており、当面、景気拡大の勢いはやや鈍化するにしても、依然として回復傾向が続くのではないか。
 ただ、そうした判断のベースとなっている企業業績に関して、下期の業績予想がやや慎重な見方になってきている点は、気になるところである。来年度、すなわち再来年3月期の業績予想がどう出るかが、今後、非常に注目されるところではないかと思う。各企業にお聞きすると、そういう予測をする時期は来年の 1~3月になるのかと思う。したがって、ベースの景気認識は変わっていないが、そういうところを慎重に見守っていくような時期かと考えている。
 後半の利上げに関する質問だが、いろいろなデータが出る中で、次の利上げの時期に関する市場の見方は、一時の10~12月というのは多少後退しているのではないかと思うが、年度内という見方はかなり有力に残っているし、一方で来年の後半という見方も出ている。さらに、銀行の窓口から見た企業の資金需要、あるいは銀行の貸出について申しあげると、日本銀行が発表している銀行貸出平残を見ても、10月は全体としての伸びはまだプラスだが、伸び幅が少し小さくなっている。このうち都銀の10月の貸出平残は、前年比マイナスになっている。このように、貸出が力強く拡大していくような状況でないことは、前から申しあげているとおりである。また、実質GDPがプラス成長を記録してはいるが、米国経済の減速や設備投資の先行指標である機械受注統計が一進一退となるなど留意すべき点はある。したがって、内外経済の先行きを慎重に見極めることが大切なポイントであり、その点を含め日本銀行が総合的に適切に判断されるのではないかと思っている。


(問)
 もう1点、個別行の問題になるが、旧UFJ信託の統合を巡って、今日、三菱UFJフィナンシャル・グループと住友信託と和解した。和解に至った理由と解決金という名目になっているが、25億円を支払うということについて、これは手続き上の瑕疵を認めたということなのかどうか見解をお聞かせ願いたい。
(答)
 本日午前に和解に至ったのでその旨発表させていただいたが、この訴訟が円満かつ全面的に解決したことは、私どもとしても、従来からその可能性を真摯に検討してきていたので、最善の結果であったと考えている。
 和解勧告理由書の具体的な内容は当事者限りの扱いになっており、開示できない。ただし、本件の和解勧告は、東京高裁が本件紛争を早期に円満かつ全面的に解決する必要性を重視して、かつ仮処分時における最高裁決定の枠組みの中で解決するために勧告されたものと認識しており、結果としてそういう方向でまとまったことは良かったと考えている。
 金額であるが、これは今申しあげた本件紛争を早期に円満かつ全面的に解決するための和解金額として、裁判所からの強い勧告を受けて双方が合意したものであり、妥当なものと認識している。


(問)
 今の裁判に続く話であるが、25億円の解決金を支払うことを骨子とするとあるが、骨子、25億円を支払うこと以外の何らかの条件があるのか。
 もう1つ、訴訟が長引くことのイメージダウンというのはやはり社長自身もお感じになっていたのかどうかをお聞きしたい。
(答)
 基本的には25億円で和解するということで発表させていただいたものであり、その他何か本質的な話があるわけでなく、当初、銀行や信託銀行も当事者になっていたが、フィナンシャル・グループとして最終的に一本化して和解するということなどがある。
 もちろんいろいろな理由があってそうなっているが、1つの訴訟が起きていることについては真摯に解決に向けて早期に努力することが、われわれ社会的存在としても重要と認識しており、そういう姿勢で取り組んだ。


(問)
 前回も出たと思うが、経団連から要請されている自民党への政治献金について、どのように全銀協の中で話が進んでいるのか。そして畔柳会長自身、政治献金という問題についてどうお考えになっているのか。
(答)
 昨日も日銀記者クラブでの決算発表の際に回答させていただいたが、全銀協自体が経団連の団体会員になっており、そういう要請があったときには従前からも会員各行に伝えている。全銀協が全体としてどうしようかというテーマではなく、個々の判断である。前回は依頼された直後のタイミングの記者会見であったが、その後もそれほど時間が経っていない中で、いろいろ検討していると昨日申しあげたところであり、昨日と今日で変わりはない。


(問)
 畔柳会長自身はどうお考えか。
(答)
 今、検討しているところである。


(問)
 検討というか、会長自身が、銀行が政治献金するということをどのようにお考えなのかということである。いまさら検討するという問題ではなく、長年銀行員をされてきて、あるいは経営におられるわけであるから、これまでの経緯もご承知かと思うので、会長自身のご意見をうかがっている。
(答)
 私は銀行を代表する立場であるし、今日は全銀協の会見でもあり、個人的意見を申しあげるような場だとは思わない。強いて申しあげれば、昨日も申しあげたが、私は企業というものは、株主のものだけということではなく、お客様、従業員、株主、地域社会、そういうステークホルダーに全体として支えられ、それらの支持があって維持できるし、成長もさせていただけるものと思っている。いろいろなものを総合的にバランスをとって利益の還元などを行いながら経営していくものと思っている。


(問)
 そのステークホルダーの中に政党というものが入っているのか。
(答)
 いつもご説明している中に政党というものは入っていないが、政党はやはり社会の一部だろうとは思う。政治の基盤なくして、自由主義経済の維持はありえない。


(問)
 検討しているということは、政治献金に応ずるという可能性も否定しないと解釈してよいか。
(答)
 私一人が経営している会社ではないので、検討の機関もあり、いろいろな役員もいるので、そういう人々と話し合いながら、検討を続けているところである。


(問)
 いつ頃に結論を出されるのか。
(答)
 いつ結論を出すということを決めているわけではない。


(問)
 今の政治献金の話だが、聞くところによると、経団連の方は年内にも政治献金の払い込みを、ということを打診されているようなので、検討されているという時期は、年内が一つの区切りになるのではないかと思うが、その点はどうか。
(答)
 今、お答えしたとおり、いろいろなことを総合的に検討している段階なので、この場で今、申しあげることはない。


(問)
 献金をしない、見送るという可能性もあるのか。
(答)
 総合的に検討しているわけで、先ほど申しあげたとおり、いろいろな人と意見を交わしながら検討している段階である。


(問)
 昨日、日銀クラブでの会見で、前回の会見で政治献金を検討されている理由として、社会貢献ということを挙げられていたが、それはご自身の考えではなくて、経団連の要請の中にある考えだ、という話を聞かされたが、経団連では、例えば三木会長の意向というのも反映されているのか。
(答)
 昨日のご質問に対しては、経団連からそういう考え方で要請が来たということをご紹介したわけで、特に経団連の三木副会長が、ということは一切ない。


(問)
 この件について、三木会長は特にご発言はされてないのか。
(答)
 経団連からの要請に、三木会長は介在していない。


(問)
 経団連の方で、法人税を30%台に引き下げてほしいという要望を出されて、政府税調の新しい会長になられた本間さんもそれに応えるようなご発言をされているが、銀行業界としてそういった議論をどのように捉えているかを教えてほしい。
(答)
 銀行業界として、本件に関して議論したことはない。企業の成長をベースに、これから日本経済全体をより発展させていくにはどういう税制のあり方が望ましいのか、あるいは欧米と比較してどうなのか、そういうところからいろいろ議論されていると思う。一方では他の見方もあると思うし、いろいろな意見が出ているということは理解しているが、銀行業界としてどうだというような立場ではない。


(問)
 実効法人税率が下がると繰延税金資産への算入額が減る構図にあると思うが、例えばメガバンクのように高収益をあげているところはいいのだろうが、地銀等、あるいは小さな信金・信組の場合、法人税引下げが改定自己資本比率の悪化要因になるということは、どのように捉えているか。
(答)
 そういうこともあるとダイレクトに結びつけて考えたことはなかった。ただ、いろいろなことがそれから生じるのだろうし、銀行界として、いま単純にパッとお答えできることではないだろう。