2007年3月20日

畔柳会長記者会見(三菱東京UFJ銀行頭取)

斉藤専務理事報告

 事務局から、2点ご報告する。
 1つは、本日、理事会に引続き、総会を開催し、お手許の資料のとおり、19年度の理事を選任した。任期は4月24日からである。なお、会長、副会長については、4月24日に開催する理事会で選任する予定である。
 もう1つは、今般、お手許の資料のとおり、「消費者との契約のあり方に関する留意事項」の改訂を決定した。
 この留意事項は、銀行がお取引する消費者の方々との間には、情報量等に格差があるということを踏まえ、より適切かつ健全な取引関係を構築していくという観点から取りまとめた指針であり、消費者契約法や金融商品販売法、金融商品取引法の制定・改正等の環境変化を踏まえて、今般、改訂を行った。本日付けで会員銀行に周知することとしており、引続き、本留意事項に沿った対応を行うよう、求めてまいりたいと考えている。
 この中の主な変更点であるが、この資料2枚目の「別紙」のとおりである。本件について、さらにお知りになりたい点があれば、会見終了後、事務局にご照会いただきたい。

会長記者会見の模様

(問)
 先月、今回の金利上昇局面で2回目の利上げがあり、今日から短プラが2回目の引上げとなった。1回目の短プラの金利引上げの交渉状況と、全体としての資金需要の動向について教えて欲しい。
(答)
 1回目の日銀の利上げが昨年7月にあったが、短プラの引上げは大変久しぶりであったので、少なくとも私どもの銀行は、少し間を置き、1月後くらい、確か 8月10日ごろからということでお客様にお話をさせていただき、9月末までにほとんどのお客様にご理解いただいたというような推移であった。したがって、私どもの銀行における貸出金利の状況や、利ざやの数字を見ると、10-12月からその効果が出てきているようだ。勿論、預金金利も引上げたし、銀行経営に対するインパクトは、何年か前の利上げとは大分違った様相ではあるが、そういった効果は今、出つつある時期かなと思っている。
 今回の短プラ引き上げは、3月1日に決めさせていただいて、3月20日基準ということで、ご理解いただく努力をしている最中である。


(問)
 顧客還元策について考えを教えて欲しい。御行は昨日から、コンビニATM利用手数料を引下げているし、三井住友銀行は、郵政公社と提携してATM利用手数料の引下げを決めた。こういった形の顧客還元策というものは、これからもどんどん進んで行くのか。
(答)
 話がやや前置きになるが、銀行はさまざまなステークホルダーに支えられていると、いつもこういう場で申しあげている。銀行はお客さま、株主、従業員、あるいは地域、社会というような、さまざまなステークホルダーに総合的に支えられている。したがって、いろいろな還元策は、総合的にバランスをとってやっていくということが、金融機関の社会的な責任でもあるというのが基本的な認識である。したがって、各個別行がいろいろな考えで対応を考えていると思うが、少なくとも私どもの銀行は、昨年においては何よりもまず公的資金を返済することのプライオリティが高いという認識でおり、その返済を実現できた後は、今、申しあげたようなバランスを持って総合的に、還元できることは還元していきたいというのが基本的な考え方である。そういう中で、私どもの銀行は、昨年にまず合併効果の還元も踏まえ、本支店間の振込手数料の無料化に踏み切らせていただいて、加えて、今般のコンビニATMの利用手数料無料化を実施させていただいたところである。これも時々、ご質問にお答えしていたとおり、われわれは店頭でお客様のいろいろな声を集める努力をしているが、そういう中でご要望の強かったところについて対応をさせていただいた。私どものお客様がどこのATMをご利用になっているかをみると、当行ATMとコンビニATMの利用率が、全体の9割になる。したがって、私どものお客様については、全体の9割の方が無料化のメリットを感じていただけるということになる。まだまだいろいろなことをやらなければならないが、私どもとしては、お客様への還元策はいろいろとやっていきたいと思っているし、今後も、店舗の改装や建替えによるバリアフリーの対応、またご要望の強い、お待たせしている時間の短縮化とか、そういう声にも真摯に応えてまいりたい。一方で海外との厳しい競争も行っているので、総合的に収益力も十分に考えながら、それぞれの銀行が自己責任で対応していくことではないかと思っている。他の銀行でもそういう動きが出てきたとするならば、そして私どもの動きが、多少そういうことに対する刺激になったとするならば、良い意味でのサービス競争という形で受け止められるのであるならば、良い方向ではないかと考えている。


(問)
 個別行のことになるが、先週金曜日に提出された業務改善計画について、当日ご会見いただけなかったので、この場を拝借することになるが、頭取の方から改めてどのようなご見解に基づいてあのような行内処分を決められたのかお聞かせいただきたい。
(答)
 今回の件については、いろいろな意味でお客様、先ほど申したステークホルダーの方々にご心配、ご迷惑をお掛けしたことについて、改めてお詫び申しあげる。先月の会見の場においても、われわれは、これを本当に真摯に反省し、再発防止のために内部管理体制を強化し、取り組んでまいりたいということを申しあげ、また、今回の業務改善計画にはその時申しあげた骨子に基づいて、役職員全員の教育を徹底してやるということなどを含めて、盛り込ませていただいた。その一環として、処分に関しても、行内調査をベースに、また先月にいただいた行政処分の内容を踏まえて、社内の基準、手続きに沿って処分案を作成して、またこの案に対して、弁護士など外部の有識者の方などから妥当性に関するご意見を十分いただいて、またその後、社外取締役も入った取締役会に諮って、社外取締役のご意見も十分いただいたうえで、最終的に決定をさせていただいた。今回の件は、なんと言っても、過去の経営者も含めて経営陣の責任は重いものという認識で、経営トップの責任がもっとも重大であるという形で、内容を決定させていただいた。


(問)
 関連であるが、2点お尋ねしたいのだけれども、1点目が今もお話あったけれども、報酬カットという処分があったけれども、これについては今のお話だと、今回の件に関する関与度に応じて決められたのか、その辺の判断基準はどうだったのかというのが1点と、細かいことになるが、頭取をはじめ4方のお名前は報酬カットの対象として出ているけれども、退職された方を含め、相当数の報酬カット対象者が公表されていないが、責任の明確化という観点からするとやや矛盾した気もするし、何らかの理由で伏せられるのであれば、トップ4方も含めて伏せられるのが、むしろ自然かという気もするので、いろいろな意味でちょっと矛盾を感じるのだが、この2点目についても少しご説明をいただけないか。
(答)
 最初の報酬については、繰り返しになるけれども、行内調査をもとに、今般の行政処分の内容も踏まえて、決めさせていただいた。それから公表のあり方であるが、私どもとしては、なんといっても今回の件については、経営陣トップの責任が重いという認識である。したがって、今の経営陣、私どもの組織に現実に存在する、私なども含めた経営陣については、名前も公表させていただいた。関係者については、西日本の駐在であるとか、あるいは審査関係というような関係本部について処分を行ったという形で説明をさせていただいた。過去のトップの責任については、一応退職した人たちであるので、これから要請をしていこうということでもあり、私どもとしては、このタイミングでは、差し控えさせていただいたということである。


(問)
 今、過去の経営陣の方々に要請をしているということだったが、すでに要請をして、それぞれの方々から了解を得ているのか、それとも了解を得てない人もいるのか、もし了解が得られない場合は、例えば損賠の形とかで求めていくのか、その辺をお聞かせ願いたい。
(答)
 先週の金曜日にまさに取締役会などで決めたところであるので、要請はこれからしていくということである。決してゆっくりするということではないが、今後については、やはり今回の件は、先ほどから繰り返しているが、私の意見というよりも、外部の方々の妥当性に関するご意見を踏まえて処分内容あるいはそういうことも決めさせていただいているので、よくそこのご意見を聞きつつ、適切に対応していきたいと思う。


(問)
 でも、これは、強制力はないと思うが。そうするともし過去の方々が、いやおれは払わないといったらそれで終わってしまうような気がするが、そういう場合はどうするのか。
(答)
 それは私どもとしては、よく説明し、強く要請してまいる。


(問)
 法的手段も辞さないといった考えはあるか。
(答)
 まったく今までの中で接触してないわけでもないので、ある程度理解は得られるというふうに考えている。


(問)
 何点か伺いたい。淡路支店の事件が出たときに、金融庁といろいろ話したが、不明な点がかなり多い。まず、なぜ、法人営業の係長か課長が小西氏の団体に派遣されたのか。その団体はどういう団体だったのか。暴力団との関係とか、いろいろ話があるが。また、30年間これが放置されてきたということだが、なぜ検察や警察に話をしなかったのか。
(答)
 本件については、確かに30年前から取引が始まったということはご説明させていただいているが、個別のお客様との取引に関わることでもあり、一方で貸金返還請求訴訟中の案件でもあるので、これまでご説明させていただいた以上の詳細についてのご説明は差し控えさせていただきたい。


(問)
 訴訟の中ですべて明らかになるのか。
(答)
 訴訟の中で明らかになることは明らかになるであろう。


(問)
 すでに提訴されているのか。
(答) はい。


(問)
 なぜ、検察や警察に話しに行かなかったのか。身の危険があると以前のコメントで出ていたが、身の危険とはどういうものか。
(答)
 30年以上前のことを全部この時点で認識できているかということはあるが、行内調査は徹底して行ったうえで、それをベースにこれまでもご説明させていただいている。そして、事件のポイントが経営陣の責任にあって、経営陣が対応を先延ばししてきたということが、われわれとしては問題のポイントと認識している。先延ばしした理由については、危害リスクというものがあったと、2月の記者会見で説明したとおりである。


(問)
 危害リスクというのは、具体的にどのようなものか。
(答) 人命的なものも含まれるリスクと考えている。


(問)
 話は変わるが、アメリカ経済でサブプライム懸念、住宅ローンの問題が浮上しているが、これについて、どういう見通しをお持ちになっているのか。こういうことは日本では起こり得るというふうにお考えか。
(答)
 アメリカのサブプライム問題が、先行きどういうふうに決着するかということは、まだ不透明なところが残っているのではないかと思う。この問題が最初に出たときよりも、ある程度マグニチュードは大きくなりつつあるように個人的には認識している。ただ、現状、それがあるのでアメリカ経済が非常に心配であるというような段階には、まだなっていないと思う。確かに、ある層の住宅に関連するところに信用の収縮のようなことが起きているように思うが、これが今後どういうふうに伝播していく可能性があるかについては、もう少し様子を見極めないとはっきりしないと思う。アメリカからもいろいろな人の説が発せられていると思うので、少し慎重に見極める時期にあると思う。
 先ほどの日本経済のこととも関連するが、アメリカ経済がしっかりしているかどうかは世界経済に影響があるので、非常に注目をしてフォローしている。サブプライム貸出は、貸出全体の中でのシェアや住宅ローンの中でのシェアはそれほど大きなものではないので、私どもの経済調査室の見方でも、今、ただちにそれを非常に心配だというわけではない。ただし、他の住宅の需要者、例えば少し中堅にまで伝播していったりすると心配することにもなるので、よく見極めるところではないかと思う。
 日本の場合、住宅ローンはあるが、サブプライムというあり方ではないかと思う。ただし、収入とローンの関係というのは常にあるわけで、ずっと低金利が続いてきていることから、急激な金利上昇とかになればまた難しい面も出てくるかもしれないが、とりあえずは、アメリカと同じような問題があるという認識はしていない。


(問)
 マグニチュードが大きくなるような可能性もあるというような話があったが、どういうことか。
(答)
 今、私自身がそういうふうに思っているということではなく、そういう可能性があるという人もアメリカの中にはいる。小さい部分の話が、住宅マーケット全体にじわじわと影響していってしまうと、という意味だと思う。まだその段階ではないと思う。


(問)
 銀行代理店制度についてお聞きする。ちょうど、大幅な規制緩和から1年が経とうとしているが、その間の評価と、制度的な見直しも含めて今後の期待について考えをお聞きしたい。
(答)
 昨年4月に銀行法が改正された後、銀行代理店の利用は、銀行や保険・証券といった金融業者が中心であって、一般事業法人を活用するようなものはほとんど見られない。これはやはり、業務制限とか、経験者を配置しなければならないといった規制に加えて、銀行代理店である以上、サービスの質や情報管理、コンプライアンス等の面で銀行窓口と同様のレベルが必要であるので、そう簡単にクリアできるわけではないためではないかと思う。ただし、まったくそういう動きがないというわけではなくて、それを展望されて準備されているところもあり、徐々に活用されていくのではないかと思う。銀行業というのは、われわれも日々経験しているが、コンプライアンスその他、いろいろと大変厳しい面もある。代理店制度ができたからパッと代理店をやって、何か起こったらいけないという面は重視しなければならないと思う。


(問)
 飛鳥会問題の行内処分の話に戻るが、お名前を出していただいた4人の方々の中で、比較的処分の内容が重い方と軽い方に分かれていたと思うが、畔柳頭取の処分内容は比較的軽い方に入っていたと思うが、その辺についてのお考えを伺いたい。先ほどから経営トップの責任というのを非常に重大に捉えているとのご発言があり、言うまでもなく現時点でも経営トップというお立場なので、その辺のお考えをお聞かせいただきたい。
(答)
 再三になるが、行内調査、今般の行政処分の内容を読んでいただいたと思うが、かなり詳しく出ている。そういうものもベースにして処分の内容を決めたということで、それについて十分に外部の方のご意見も伺って、万が一にも自分に甘くならないという姿勢を貫いたつもりであるが、そういうことをベースに最終的に決めたということである。


(問)
 今年から団塊世代の大量退職というのが本格化するが、これに関連して銀行業界にとって、団塊世代の大量退職というのはビジネス上どのように位置づけられるのか。また、退職金を囲い込むために取り組まれる方策としてどういった点を重視されていかれるのか、お考えを伺いたい。
(答)
 非常に範囲が広いテーマであり、確かにあるビジネスから見ると非常に大きなチャンスという見方もあるかもしれないが、団塊世代という非常に大きな人口構造的なものに関する金融面での対応のポイントとなると、やはり、貯蓄から投資へというタイミングだと思う。その世代の方々が今後より充実した人生を歩まれるために、資産管理は極めて重要なテーマだと思うので、そこにお役に立つようにいろいろなアドバイスをよく考えて、貯蓄から投資という動きもあるので、一人一人丁寧な対応をしていくということが大事だと思う。営業本位な考えでやるべきものではないが、ニーズがあるのは確かであるから、ニーズに対してこちらがそういう能力が十分ある態勢を整えてやっていく。何よりも金融商品取引法のようないろいろな法的整備が起こっている最中であり、われわれ自身も、今、基礎を固めているが、一層、そうした点に留意して取り組んでまいりたい。貯蓄から投資へということ自体が、日本経済の構造が変わってきた中での動きであり、そうした動きにできるかぎり適切に対応してまいりたい。


(問)
 再び飛鳥問題の件で恐縮であるが、先ほどお名前を公表しなかった理由で、これから要請していくのでということであったと思うが、他の業界で、例えば、損保の不祥事の処分の時、大量処分があったが、すべて一覧表にして、お名前を出すとか、この処分が適正かどうかというのをみなさんが判断できるよう公表している姿勢がいろいろな業界でも出ている中で、あえてこのように、たとえこれから要請するとはいえ伏せた理由を改めてお聞かせ願いたい。
 また、2月の会見と繰り返しで申し訳ないが、改めて、処分を受けた銀行の頭取としての進退問題と現銀行協会会長をしていることの進退問題、責任について伺いたい。
(答)
 他のケースについて全部データを持っているわけではないが、そういうケースでは、少なくとも退職されているか否か、自分の今の組織の構成員であるか否かが非常に大きな違いになっているのではないかと思う。私自身については前回の記者会見でも申しあげたし、先ほども申しあげたが、二度と起らないようにガバナンスを強化して、内部管理態勢を強化して、今回、業務改善計画を提出し、また、実行しなければならない責任があるので、その責任を果たしていきたいと考えている。


(問)
 名前を公表しなかった件について、公表すべきだったとの意見が多数あると思うが、そのことについてはどうか。
(答)
 いろいろ意見のあることは聞いているが、今日お答えしたのが私の意見である。

別添資料:畔柳会長記者会見(三菱東京UFJ銀行頭取)