2008年7月22日

杉山会長記者会見(みずほ銀行頭取)

斉藤専務理事報告

 事務局から4点ご報告する。
 1点目は、ATMコーナーにおける携帯電話の通話自粛の呼びかけに関する全銀協申し合わせを行ったことについてである。
 昨今、振り込め詐欺が急増しており、なかでも還付金詐欺など、被害者を巧みにATMコーナーに誘導し、携帯電話でATM操作を指示して資金を騙し取るという手口が増加している。そこで本日の理事会において、資料のとおり3点について申し合わせを行った。このうち、「2.」の周知活動については、本日資料配付しているポスターをATMコーナーに掲示して、お客さまに注意を呼びかけていくこととしたものである。
 2点目は、「全銀協エコプロジェクト」の展開についてである。
 内容については、資料配付しているが、環境問題に対する社会的関心が急速に高まっており、全銀協においても、会員各行とともに環境問題に主体的かつ積極的に対処すべく「全銀協エコプロジェクト」を展開することとした。
 具体的には、7月28日に、国際金融アナリストの末吉竹二郎氏を講師にお招きし、「銀行界における環境配慮行動のあり方について」というテーマで講演会を開催する。そのほか、銀行の各種取組みの紹介や子供向け環境関連コンテンツを掲載するWEBサイトを7月末に公開する予定である。
 3点目は、お手元の資料のとおり、平成21年度の税制改正要望の骨子を取りまとめた。正式な要望については、今後、この骨子をもとに、さらに検討を進め、9月に正式決定をしたうえで、改めてご報告する。
 最後に、このほど業界内の紛争解決支援機関として「あっせん委員会」を設置することとした。
 利用者保護の更なる推進の観点から、銀行界の苦情・紛争解決支援の取組みを強化するために、全銀協は、紛争解決支援機関として「あっせん委員会」を設置し、併せて金融商品取引法上の「認定投資者保護団体」の認定申請を行うということを、本日の理事会において決定した。来月には金融庁に「認定投資者保護団体」の正式申請を行う予定である。この「あっせん委員会」の運用開始は、10月を予定している。
 私からの報告は、以上である。なお、本日ご報告した内容について、さらにお知りになりたい点があれば、会見終了後、事務局にご照会いただきたい。

 

会長記者会見の模様

(問)
 国内外の景気について、どのように見ているか。
(答)
 日銀短観の6月調査では業況判断DIが低下するなど、企業経営者のマインド悪化が続いていることが示された。前回の3月調査時点と比べると、今回の調査時点では金融市場はやや落ち着き、円高にも歯止めがかかっていた。他方でこの間、原油をはじめとする原材料価格が急騰しており、これが今回の景況感を悪化させた主因ではないかと考えている。
 実際、原材料・燃料コストの増加による企業収益の圧迫は、極めて深刻な状況だ。短観でみた2007年度の経常利益は、前年比マイナス1.0%と2001年度以来6年ぶりの減益となった。また、2008年度についても、現時点で同マイナス4.4%と減益幅の拡大が見込まれている。原油だけでなく、鉄鉱石や石炭などの大幅な値上げがすでに決まっていることなどを考えると、2年連続の減益となる可能性が大きい。
 足元で業績が悪化し、先行きに対する不透明感も高まるなかで、企業の設備投資に対する姿勢も慎重になっているようだ。2008年度の設備投資計画は前年比マイナス1.4%となっており、2002年度以来6年ぶりのマイナスとなる可能性もある。
 他方で、企業がコスト上昇を販売価格に転嫁する動きを強めている様子もうかがえる。販売価格判断DIはプラス4%ポイントに上昇したが、これがプラスになったのは1991年以来のことである。最近は、ガソリンや食料品価格の上昇を受けて消費者のマインドが悪化しており、個人消費も力強さを欠く状況が続いている。企業による価格転嫁が進めば、消費者物価の上昇率が高まり、個人消費はさらに弱含むリスクがある。
 このように、資源高が企業業績の悪化と物価上昇を通じて、設備投資や個人消費を中心とする国内需要を押し下げる圧力として働いている。日銀は先日、4月にまとめた経済・物価情勢の展望(展望リポート)の中間評価において、物価見通しを上方修正する一方で、成長率見通しを下方修正したが、こうした情勢を踏まえてのものであろう。
 輸出は今のところ、新興国向けを中心に堅調を保っており、景気を下支えしている。しかし、米国の住宅公社の問題から金融不安が再び高まり、新興国の一部ではインフレが深刻化するなど、海外経済の先行きに対する不透明感は強い。
 日本経済は現在「踊り場」の状況にあると認識しているが、以上で述べてきたように、国内・海外経済ともに下振れリスクは強まっているだけに、今後の動向を注意深くみていく必要があると考えている。


(問)
 先週、メリルとかシティが多額の損失を発表するなど、サブプライム問題に端を発する混乱はまだ続いているが、今後の見通しと、日本の金融機関への影響について考えをお聞かせ願いたい。
(答)
 サブプライム問題に端を発した国際的な金融資本市場の混乱は、しばらく小康状態を続けていたが、足元で再び混迷の度合いを深めているようだ。特に、米国の金融市場が動揺をみせていることは気がかりである。先週から今週にかけて、米国の大手金融機関の決算発表が続いているが、住宅ローンの貸し倒れが高水準で推移し引当負担が増加するとともに、追加的な証券化商品等の評価損が発生し、全体的に減益基調となっている。また、米国の地方銀行で、積極的に住宅ローンを提供していたインディマック銀行が閉鎖されたり、米国の住宅公社2社(ファニーメイ、フレディマック)の株価が急落して米国の財務省とFRBが緊急声明を発表するなど、あわただしい状況となっている。

 もっとも、3月のベア・スターンズ救済を含め、これまで米国当局は、金融システム全体の危機回避に向けて様々な努力を続けており、今回も、適切な対応がなされるものと考えている。特に、米国の住宅公社2社は米国住宅金融市場において極めて大きな役割を担うとともに、その発行・保証する債券は、広く世界中で保有されている。
 今回、米国政府において両社の救済方針が明確にされたことは、グローバル金融市場の混乱を回避するという観点からも望ましいものであると考えている。

 翻って、わが国の状況であるが、米国の状況とははっきり異なると言ってよいのではないかと考える。サブプライムおよびそれに関連する分野の損失は、全体としてみれば欧米の金融機関に比して相対的に限定されており、経営を揺るがすようなものとはなっていない。また、金融市場においても、信用収縮の懸念は見られない。なお、今回問題となっている住宅公社2社の発行する債券の、邦銀の保有額については、その全体感が公表されていないこともあり、コメントは差し控えたい。いずれにしても、先ほど申しあげたように、米国政府において両社の救済方針が明確にされたことは望ましいことであると考える。米国はあわただしい状況になっているが、総合的に見て、わが国金融システムの健全性・安定性が懸念されるような状態にはないと考えている。

 最後に、米国の今後の動向についてであるが、これを正確に見通すことは非常に難しい。いずれにせよ、金融・資本市場の安定に向けて、先般の金融安定化フォーラム(FSF)報告にもあるように、金融機関が損失を「早期に認識」し、それを「開示」するとともに、必要な場合には速やかに「資本を増強」する、といった手当てが重要であろう。


(問)
 先週末、旧長銀の最高裁の判決が出て、大野木元頭取は無罪となったが、こうなると破綻に至った原因がどこにあったのか、やや不明確に見えるが、会長はこの点についてどのようにお考えか。
(答)
 旧長銀の件は存じあげているが、個別銀行のことなので、私からのコメントは差し控えさせていただきたい。敢えて申しあげれば、例えば、10年ほど前のいわゆる金融危機のような逆境においても、金融機関の代表者は常に適切な判断を求められているということであり、改めて身の引き締まる思いである。


(問)
 先ほど会長が言われた住宅金融公社の経営難に関して、アメリカで金融システム不安が再燃したと思うが、全銀協会長として、アメリカの金融システムへの注文というのは何かあるか。
(答)
 先ほどの回答のなかでも申しあげているが、やはり金融機関が損失を「早期に認識」し、それを「開示」するとともに、必要な場合には速やかに「資本を増強」する、といった手当てを進めていくことが引き続き重要となろう。なお、今般、FRB・財務省において両社の救済方針が明確にされたことは、グローバル金融市場の混乱を回避するという観点からも望ましいことである。米国当局におかれては、今後とも、必要に応じて適時適切な対応を講じていかれるものと考えている。


(問)
 先週だと思うが、マンション開発のゼファーという会社が民事再生手続を行ったが、理由として、金融機関の不動産セクターへの融資姿勢が厳しくなってきたというのをあげている。そういうことを踏まえて、金融機関の融資姿勢について教えていただきたい。
(答)
 渡辺金融担当大臣が金融機関はリスクを取って貸出をやるべきだというふうにおっしゃっておられることは十分に認識している。私どもとしては、先月も申しあげたとおり、貸出をできるだけ伸ばしたいと考え、前向きに取り組んでいるところである。ただし、場合によっては、お客さまといろいろ相談し、様々な検討を行ったにもかかわらず、最終的に資金ニーズにお応えできないケースもあるかと思う。また、景況感悪化の影響が、不動産業を含め一部に出てきていると認識している。
 私どもとしては、このように厳しい環境にある場合にも、できるだけ融資に応じられるように、いろいろと条件を工夫しながら、お客さまと相談していくスタンスに変わりはないし、これからもこのスタンスを変えるつもりはない。引き続き「適切なリスク管理のもと、適切にリスクを取って、円滑な資金供給を行うこと」にしっかりと取り組んでいきたい。なお、足元の状況は、10年ほど前に貸し渋りと批判を受けたような状況にはないと思う。


(問)
 本日、東証でシステム障害が発生し、債券先物取引等が一時、午後まで中断した。マーケットの中枢において生じたシステム障害について、金融機関の立場からコメントをいただきたい。また、本件によりトレーディング業務に影響があったか。
(答)
 みずほグループも、かつてシステム障害により、お客さまに多大なご迷惑をおかけしており、本件に関してはコメントを申しあげにくいが、反省を踏まえて一般論を申しあげれば、今回のようなシステム障害については、再発防止の対応を確実に行うことが重要だと考えている。
 私ども金融機関は、決済システムという経済社会における重要なインフラを担っており、システム障害がお客さまに多大なご迷惑をおかけするということは十分認識している。先般、金融庁から発出された文書の趣旨も踏まえ、今後も、安全かつ確実な決済サービスの提供が重要であることを肝に銘じて運営してまいりたい。
 なお、みずほ銀行に関して言えば、本日の東証のシステム障害に伴う業務への大きな影響はなかったと認識している。


(問)
 先週、同じみずほグループ傘下のみずほコーポレート銀行の齋藤頭取に関する週刊誌報道があったが、今日その報道を受けて渡辺金融担当大臣が、一般論と前置きしながら、取材記者との間合いの取り方が大事という発言をされたが、それを受けて今回の問題をどのように捉えているかお聞かせ願いたい。
(答)
 そういう報道がなされていることは十分承知している。お騒がせしていることについては誠に遺憾と思っているが、本件に関してはプライベートな問題なので、この場でのコメントは差し控えさせていただきたい。


(問)
 その質問に関連して、齋藤頭取は先方の会社の社外監査役を務めていらっしゃると思うが、社外監査役を今後も務めることについて妥当性などの見通しはどのように捉えているか。
(答)
 先ほどもお答えしたように、恐縮ではあるが、やはりプライベートな問題であるので、この場でのコメントは差し控えさせていただきたいと思う。


(問)
 今の質問に関連して、プライベートな問題とのお答えだが、社外監査役の立場というのはプライベートな問題とは切り離して、ある意味、公な立場ではないかと捉えることもできるかと思う。企業との関係という意味で独立性が非常に求められる立場だと思うがいかがか。一般論でも結構なのでお聞きしたい。
(答)
 なかなか一般論でも申しあげにくい。私はみずほ銀行の頭取の立場でもあると同時に、全銀協会長の立場でもあるので、申し訳ないがコメントは差し控えさせていただきたい。繰り返しになるが、プライベートな問題であるので、この場でのコメントは控えさせていただきたい。


(問)
 プライベートな問題とのことで恐縮だが、この問題の事実関係確認の努力、事実関係の確認を社としてグループとしてやられたのか。事実関係をどのように把握しているか。
(答)
 齋藤頭取から話を聞いている。実際に写真に撮られたということは事実である。それ以上のことは、私は知らない。


(問)
 それを踏まえたうえで、行動に対して問題は何もなかったという認識か。社外取締役とか、取材先とか含めて、いかがか。
(答)
 何度もご質問をいただいているが、やはり、プライベートな問題であるので、この場でのコメントは差し控えさせていただきたい。