2009年7月21日

永易会長記者会見(三菱東京UFJ銀行頭取)

斉藤専務理事報告

 事務局から2点ご報告する。
 1点目は、本日、理事会に先立ち、自粛勧告等委員会を開いて、6月26日に金融庁から行政処分を受けたシティバンク銀行への対応について審議した。その結果、全銀協として同行を「厳重注意」とする措置を決定した。
 2点目が、お手元の資料のとおり、平成22年度の税制改正要望の骨子を取りまとめた。正式な要望については、今後、この骨子をもとに、さらに検討を進め、9月に正式決定をすることとしている。その際には、改めてご報告させていただく。
 事務局からの報告は、以上である。

 

会長記者会見の模様

(問)
 景気と資金繰りに対する認識についてである。前回、会長からは、景気は夏場までに底入れするだろうという発言があったかと思うが、7月下旬の現在、底入れの実感について、どのように感じておいでか。また、中小企業の資金繰りについて、日銀短観のDIなどにみられるとおり、厳しいデータが相次いでいる。足元の資金繰りの状況についても、実感をお願いしたい。
(答)
 まず、景況感であるが、引き続き景気全体としては厳しい状況だが、方向感としては底入れしつつあるとの認識である。ご存知のとおり、各国による一連の大型景気対策の効果により、輸出が数量ベースで上昇に転じている。また、生産調整の一巡に伴って鉱工業生産も伸びている。更には、4月に成立した、真水15兆円という過去にない規模の経済危機対策の効果も徐々に出始めており、内需の底支え効果が出つつある。悪材料も少なくないが、申しあげたような環境の下、4~6月の実質GDP成長率は、まだ正式な数値は発表されていないが、おそらく0%に非常に近くなると思う。1~3月の成長率は▲14.2%、その前の10~12月も修正後で▲13.5%であった。この急激な落ち込みからみると、やはり、そろそろ底入れの時点に到達したのではないかと思う。
 今後については、やはりさまざまなリスク要因があるが、メインシナリオとしては、前回申しあげたとおり、本年末から来年初には回復局面に入るのではないか、と見ている。ただ、景気回復のピッチは強いものにはなりえないと見ており、本当の意味での回復となるとグローバルベースも含めてかなり時間がかかるのではないかと認識している。
 次に、企業の資金繰りについてである。これは銀行側から見ると貸出動向ということになるが、この観点からまず申しあげると、6月の国内銀行貸出残高は405兆で、前年同月比3.1%増である。これが3月は4%程度の伸びを示していたため、資金需要は次第に減退しているというのが現在の状況と思う。特に中小企業については、5月の貸出残高が前年同月比▲2.8%となっており、銀行側から見ると中小企業の資金需要は相当落ちているといえる。設備投資が大幅に減少しており、減少運転資金も一巡した状況とみている。
 一方、企業側から見た金繰りについては、日銀から資金繰り判断指数(DI)が公表されているが、6月は、大企業から中堅・中小企業まで、そのベクトルが若干好転している。ただ、絶対水準は中小企業で▲20、中堅企業もまだマイナスであり、やはり資金繰りは苦しいと判断されているところが多いということである。
 従前から申しあげているとおり、全銀協としては、円滑な資金供給が社会的使命と認識しており、業界を挙げて資金需要にお応えしていく所存である。


(問)
 銀行の決算についてである。米国金融機関の4~6月期決算が公表され、市場予想を上回る業績が相次いでいる。邦銀の決算も今月末に発表されると思うが、この見通し、着地はどうなると見ているか。
(答)
 4~6月期の決算は、現在、三菱東京UFJ銀行でも集計中であり、まだ結論が出ているわけではないが、感覚的に申しあげると、やはりわが国の銀行決算は非常に苦しい状態が続いていると思う。昨年度は、証券化商品や株式減損、与信関連費用の問題が非常に大きいウエイトを占めていた。このうち、証券化商品と株式減損の問題は、4~6月はほとんど生じていないであろうと想定できる。ただ、トップラインはそう簡単に伸びる状況ではないし、与信関連費用は、足元の景況感を反映してのことと思うが、高止まりしている状況である。そう考えると、4~6月の邦銀決算は、サプライズの少ない、決して良くない決算になるのではないかと感じている。
 良くないというのは、ボトムラインの収益が良好と言える水準からはほど遠いという意味である。


(問)
 国際的な自己資本規制のところであるが、先日、三菱東京UFJ銀行の方で、「金融財政事情」に論文を寄稿したり、若干動きもあるようだが、改めて国際的議論の行方とか日本としての欧米に対する主張の仕方、この辺りをどう考えているか改めてお聞きしたい。
(答)
 今回の金財に対する寄稿や佐藤前金融庁長官によるフィナンシャル・タイムズへの寄稿等のように、日本からもさまざまな形で意見発信を行っていく必要があると考えているのは、これまでも申しあげてきたとおり。
 今回の一連の金融危機に対する再発防止という問題認識から始まった議論は、金融監督、自己資本比率規制等、さまざまな場で各々が議論されながら、バーゼル委員会でも協議が重ねられているというのが現在の状況である。しかしながら、現在の議論のように自己資本比率規制や「資本の質」等の偏った議論になってしまっていることは、当初から危惧していたところである。
 例えば、コアティア1や資本バッファーを過剰に積まざるをえない規制の議論があるが、資本をより多く積まなければならないという状況が起こるとすると、産業としての金融の機能を弱めることになる。また、資本を調達するためのコストは非常に負担も大きく、それを何重にも積まないといけない状況になると、自力でマーケットから調達しようとしたときにそれだけ過大な資本を調達できるのかという根源的な問題もある。万が一、これを調達することが出来たとしても、維持もしなければならない。プロシクリカリティの議論等もあるが、過剰に資本を要求されると、例えば貸し渋りや経済成長に必要な潤沢な資金を供給できない等の状況が起こりうるし、逆から言えば、資本を非常に厚くしたうえでROEを上げようとすると、ハイリスクな投資等に走る可能性があるなど、副作用が出る懸念もある。
 本来の目的から言えば、金融危機再発防止はパッケージの議論でなければいけないし、金融のシステミック・リスクを排除するのも、当然トータル・パッケージで考える必要がある。欧州で議論されているマクロ・プルーデンス等は、非常に大事な議論だと思う。また、米国で発表された包括的な規制案にもあるとおり、破綻処理の整備も大事。日本の例で言えば、早期是正措置や預金保険機構の整備等も含め、多岐に亘る監督手法があり、本来はこういうものをひとつひとつバラバラで議論するのではなく、パッケージで議論しなければいけないことを強く思っている。
 日本の経験から言っても、極めて厳しい不況からの脱却の過程で、最低所要自己資本比率を上げようという議論はなかった。むしろ、資産の側の不良債権がかかえるリスクを如何に処理し、その上でどうやって資本を注入するか、という議論が行われた。即ち、資産査定を厳格にやり、かつさまざまな監督手法を駆使して不況を乗り越えてきたという経験がある。このようなことからすると、自己資本比率規制だけを議論することは、いかがなものかと思う。伝統的商業銀行のようにコア預金がたくさんあり、預金のほうが貸出よりも非常に大きい典型的商業銀行と、自己勘定でディーリングしている銀行とを、同じ基準で規制することには疑念を払拭しえない。我々はこのような点を、総合的かつさまざまな形で意見発信していきたいと考えている。
 意見発信は今後もやっていきたい。3ヶ月ごとぐらいを目処にして、いろいろな活動を続けていきたいと考えている。


(問)
 アメリカの大手金融機関の決算はおおかた好決算だったと思うが、一方で、CITのように破綻は免れたもののまだ資金繰りに困っている金融機関も多く、アメリカの金融業界にまだ爆弾があるのではという指摘もある。会長のご意見をお聞かせいただきたい。
(答)
 ご指摘のとおり米銀大手4行の4~6月決算をみると、全社黒字で結論から言うと久しぶりに良い決算だったと言えると思う。ただ、内容を見てみると、各行共通で債券と株式のトレーディングが好調で、これは5月以降のタイミングを捉えた結果と思う。なかには、資産売却から巨額の利益を得ているというところも見受けられた。したがって、ボトムラインは好結果だったということであるが、大手行の全てが良かったというわけではない。引き続き不良債権の問題が重い。これは証券化商品だけの問題ではない。証券化商品の問題はある意味では一服しているが、商業用不動産、中小企業貸出、個人ローンの劣化が進んでいるとの印象を受ける。したがって、こうした資産の劣化が逆流して、一服している証券化商品や価格に跳ね返ってくる可能性が十分ある。だから、表面上は好決算だが、まだまだ不安定感が充満しているとの印象を受ける。地銀を見てみると、今年に入って52行が破綻した。去年1年間の破綻件数は25件程であり、半年くらいで倍破綻している。この背景にはサブプライムローン問題は当然あるが、むしろ証券化商品というよりは、先ほど申しあげた商業用不動産、個人向けローン、中小企業貸出等が相当傷んでいるのではないかという印象を受ける。質問にあった中小企業向け貸出では顧客数100万社といわれている銀行持株会社のCITの状況を考えると、アメリカの金融界の業績が安定するには、かなりの時間を要するのではないかと思う。


(問)
 先日、三菱UFJフィナンシャル・グループがモルガン・スタンレーとコーポレートファイナンスでジョイントベンチャーを設立することを発表した。米国金融界の状況と問題は違うかもしれないが、勝算ないしMUFGのスタンスは変わらずという見方でよいか。
(答)
 個別行の話になるが、全く変わらない。私自身、当初より、当然あのような方向で取り組まなければならないと強く思っており、そのひとつが米国で実現して良かったという印象である。


(問)
 先日、日銀が企業金融支援策を現状の方式のまま3ヶ月延長すると決めたが、それに対する評価をいただきたい。また、今後、一部修正するのか廃止するのか、色々検討されることになると思うが、全銀協としてはどのような条件が整った場合に縮小してもかまわないとお考えか。
(答)
 日本銀行および政府による、いわゆるセーフティネットは、現下の金融・経済危機において通常では採らないものを実施しているという位置づけの政策ばかりである。先日、日本銀行が9月末期限の措置を12月末まで延長されたが、全銀協としても、個別行としても、非常にありがたい措置だと思っている。というのも、現在はそうしたセーフティネットを解除するタイミングでは全くないとの認識だからである。ただ、異例な措置であり、通常は採らない手段をそろえているわけであり、いずれかの時点で出口の議論はなされるはずである。ただし、それは、私どもが申しあげるべきものではなく、マクロ、ミクロの問題を総合的に当局が判断され、もはや経済の底割れ懸念はない、金融の混乱は生じないという判断をされたときに、出口を迎えるのではないかと思う。日本銀行の施策の多くは12月末、政府の施策の多くは3月末が期限である。それに向かって当局が足元の状況をご判断されるものと思う。そこで景気の底割れはない、金融界も安定しているといった条件がそろえば、当局が適切にご判断されるものと思う。


(問)
 過去の会見でも言及されているとおり、政策金融機関による最近の対応については緊急対応という認識だと思うが、実際にエルピーダメモリの支援が行われ、6月26日の政投銀法の改正では、今後も2011年度末を目処に見直すとは言いながら3分の1超の株式を政府が保有するなど国が何らかの形で関与するという方向性が出されている。これは、ある意味、一時的な対応ではなく、緊急対応で大きくなった官製金融を固定化する方向になっているとも見受けられる。これに関して改めてご意見を伺いたい。可能であれば、将来的な官製金融の役割について、どこまでであればやるべきかということについてもお聞かせいただきたい。
(答)
 現在は、金融危機、経済危機から脱却することに、全力を挙げているところである。こういう折りに、民間銀行から政策金融問題についてコメントするのは非常に難しいのはご理解いただきたい。我々民間銀行は、冒頭申しあげたとおり、危機脱却に向けて精一杯対応しているが、政策金融機関の対応出来る範囲は非常に広く、また、リスクの高い部分にも対応いただいている。以前の会見でも申しあげたとおり、総力を挙げて政策効果をあげるために、現在、民間銀行はインタープリターとして政策金融機関と一緒に協調していくスタンスにあり、同時に、政策金融機関自体も一生懸命対応いただいているところである。こうしたなかにおいても、将来的にあるべき原則論を申しあげると、やはり「官から民へ」「官業は民業の補完に徹する」との大きな流れ、大原則からは外れないようなかたちで運営していただきたいと思う。経済・金融の状況が巡航速度になれば、こうした議論も具体的にさせていただきたいと考えている。


(問)
 本日、衆議院が解散され、今後、経済政策、金融政策を巡って論争が行われると思うが、会長として、もしくは頭取として、あるいは個人の立場で、どう言った点を注目しているのか、コメントいただきたい。
(答)
 マニフェスト議論もあろうが、全銀協会長の立場から言えば、金融危機の状況から早く脱却することが最大の使命であると思っている。したがって従来から政治に対しては、この金融危機の状況から早期に脱却すべく政策を打っていただいているか、という観点から見ている。今後も、早く金融・経済の安定化を目指さなければ、日本経済の浮上というものはない。それが経済や社会に非常に影響を与える「イロハ」の「イ」だと思っている。金融・経済の安定化に向けた努力をお願いしたいし、そうした対応に対しては、最大限評価させていただきたいと思っている。


(問)
 これから自民党、民主党を中心に大きい論戦が行われると思うが、現段階で比較した場合の評価を聞かせてほしい。
(答)
 現段階で個別の政党を比較する議論はしたくない。ただ、今回の一連の金融危機対応においては、与党、野党とも精一杯議論をしていただき、早期の実行につなげていただいた、と思っている。その意味では自民党、民主党という別はない。


(問)
 本日、税制改正要望の骨子が配付されている。これまでも協会として様々な要望等を出してきていると思うが、今後、いろいろなパターン、シナリオが考えられるなか、このような政府側、与党側への要望スタンスについて、協会として変わることはあるのか。あるいは、何か考えていることがあればお聞かせいただきたい。
(答)
 今回の税制改正要望骨子は、従来とスタンスを変えていない。要望項目は三つの柱の構成としているが、金融所得課税の一体化について、第一の柱の第一番目の要望に掲げている。これは、将来にも亘る課題であるので、重点的にお願いしていきたいと思っている。なお、他の項目も、多少かたちを変えているものもあるが、基本的には従来から要望しているものが中心であり、同様のスタンスでお願いして参りたい。


(問)
 個別行の政治献金に関する質問をさせていただきたい。
 以前、安倍政権の時、御行が政治献金の再開を検討した際、総理が献金を辞退すると明言したことがあったが、現状、政治献金を再開したいという考えはお持ちか。
 また、民主党は政治献金を原則禁止するという方針を明らかにしているが、どう評価しているか。
(答)
 個別行の政治献金に対するスタンス、ということだが、仮に政治献金を再開したいと思っても、当時の安倍総理が示された「献金は法人税を納付している企業であることが前提」という必要条件がある。残念ながら個別行としては、まだ法人税を納付する状況になく、少なくとも必要条件すら満たしていないため、再開の可能性についてコメントできる状況ではない。
 また企業献金の全廃については、政治資金規正法の改正案が、民主党より衆議院に提出されたということは承知している。昨今の献金絡みのいろいろな事件が後を絶たないというところから思い切った改正案にされたと理解している。
 ただ、一方で政治活動には一定の資金が必要である。企業献金を全廃した場合、透明性のある政治資金を確保する枠組みがないと、法律はできても資金が確保されず、現実には政治活動ができないと思う。
 したがって、政治家が透明性のある資金を確保できる枠組みについてしっかりと議論することが重要だと思う。


(問)
 先日ロンドンの国際会計基準審議会が、金融商品の分類の見直し等についての草案を発表された。これについての評価をお願いしたいというのと、邦銀、もしくは保険会社等に影響がある、大量に商品を保有している関係から非常に影響があると思うのだけれども、どのような対応を取られていくお考えなのかを教えていただきたい。
(答)
 IASBの草案が7月14日に公表された。私どもは、さまざまな働きかけを行ってきたので、これまでの議論の流れは理解している。9月14日が期限となっているコメントについても提出を予定している。
 草案全体は、現在全銀協でも分析しているところである。ご指摘の金融商品の分類の見直しについてだが、日本では有価証券を大きく3つに分け、ディーリング等の売買を目的とした有価証券と、満期保有を目的とした有価証券、その間に存在する売却可能である「その他有価証券」という区分が設けられていた。このうち今回の改正では「その他有価証券」をなくすということであるが、邦銀の場合、「その他有価証券」に属しているのが、国債や政策保有株式である。草案にはいくつかの選択肢があるが、B/Sには影響が無い一方でP/Lには影響がある等、これまでの基準に比べてさまざまな現象が起こりうる案になっていることは事実である。ただし、日本ではこれらの問題はもうすでに14日の公表の前から「論点整理」が行われ始めていた。政策保有株式は日本の銀行の特徴的な慣行であり、また、国債についても、貸出を越える多額の預金に対して、日本の銀行では金利収入を目的として信用力の高い国債で運用を行っている。このような諸事情を加味出来ない基準はおかしいのではないかという議論をしている。
 現状の認識では、国債の背景等について相当程度IASBにもご理解頂いていると認識している一方で、政策保有株式等を含めた他の項目については、いろいろと検討すべき要素があると考えており、これらを含めて議論していきたいと思っている。
 今後は、これまでの「損益計算書」は「包括利益計算書」となり、これまでP/Lだと認識されていた損益は、計算途中の損益の位置付けとなり、その下の「その他包括利益」が合算されることで、最終的に「包括利益計算書」が出来上がる。更に他にも、B/SとP/Lの区分や基準体系の問題等の検討事項がある。現状分析中でもあり詳細までは申しあげられないが、いまから十分な議論をしていくと共にさまざまな意見発信を行いたいと考えている。


(問)
 先ほど国際的な自己資本規制のルール見直しのところで、自己資本比率規制や資本の中身に偏った議論になっているのは危惧したとおりだという話があり、これから民間としてもいろいろな形で意見発信を強化していきたいという話があったが、逆に言うとそれは、ここまでの部分は日本当局の意見や主張が必ずしも十分に通っておらず、金融危機の発信源である欧米の声にやや押し込まれてきたというところがあって、だからこそ、これから意見発信をさらに強化していかないといけないというのが現状かと思う。
 なぜそういうふうになってしまったのか、日本の当局としての意見や主張のやり方が遅かったりまずかったりという部分を感じているか。また、こういうルールを巡る国際的な議論は、今後もいろんな形で続いていくと思うが、そのときに日本の立場・意見というものをもっときちんと伝えていくうえで課題というか、もっとこうしていかなくてはいけないという問題意識があれば、それも含めてお聞かせいただきたい。
(答)
 当局は当局の立場から今回も精一杯頑張っておられると理解している。バーゼルの銀行監督委員会の場でも、日本の立場で主張すべきところは強く主張しておられるであろうと認識している。
 ただし、形勢が悪くなっているのは、当初対立していた欧州勢と米国勢の意見が、同じ方向になってきたという面がある。米国のストレステストが出たときに、「意外感がある」等と申しあげたとおり、このあたりから議論が欧州型の規制強化策に舵が切られてきたという印象を持つ。その過程でも、おそらく日本の当局は必死に日本の立場を主張していただいてきたと思っているし、先ほど申しあげた佐藤前金融庁長官のフィナンシャル・タイムズへの寄稿もその一環であろう。
 最終的な結論は分からない。これは国際的な決め事でもあり、日本の主張すべてが通るとは思っていない。ただし、最低限、我々の主張を入れたコンセンサスにしていく努力はしなければならないし、欧米側にも理解を求めていきたいと考えている。今後もそのような方向で、当局と我々民間とが一緒に努力していく姿勢でやっていきたいと考えている。


(問)
 先日発表のあった、新生銀行とあおぞら銀行の来年に向けての合併の動きについてである。業界6位という大きな銀行になると言われているが、ビジネスモデルの課題があるという見方もあるようであり、これについて会長の見解があれば教えていただきたい。
(答)
 個別行の事案なので、コメントは差し控えさせていただく。一般論で言えば、合併・統合には当然目的がある。企業はさまざまな環境におかれており、それに適合していくにはどのような方法がよいかというなかで、事業・商品等の補完、特定領域における競争力のさらなる強化、事業規模の拡大などを目的に行われるものと思う。
 もう一つ、合併による効率化という側面がある。例えば双方の間接部門の人数が合併によって単純に2倍になることはなく、そうした部分での効率化によって合併メリットを出すということがある。これ以外にも、合併にはさまざまな理由がある。本件も、双方が議論されてそういう結論を出されたのだろうから、それに対して私どもが何かを申しあげることはない。


(問)
 与信費用が高止まりしているという話があったが、傾向として、昨年第4四半期より減っているかどうか教えていただきたい。
(答)
 私どもが巡航速度ないし多少高いという感じる25ベーシスポイントから50ベーシスポイントという水準に照らすと、やはり高いという状況は不変であるとご理解いただきたい。現時点では増減の方向は申しあげられない。決算発表をご覧いただきたい。