2009年9月24日

永易会長記者会見(三菱東京UFJ銀行頭取)

斉藤専務理事報告

 事務局から5点ご報告する。
 1点目は、全銀協の次期会長の内定についてである。先週、9月17日の正副会長会議において、三井住友銀行の奥頭取を次期会長に推薦することを決定し、本日の理事会で了承された。正式な選任は、来年4月の理事会において行う。
 2点目は、普通預金規定等に盛り込む暴力団排除条項の参考例の制定についてである。
 全銀協では、昨年11月に融資取引の契約書等に盛り込むべき暴力団排除条項の参考例を制定したが、反社会的勢力との関係遮断のための取組みを一層推進するため、今般、お手元の資料のとおり普通預金規定等に盛り込む条項の参考例を制定した。
 3点目は、個人年金保険の募集における説明態勢の強化に関する申し合わせについてである。
 個人年金保険の銀行窓口販売に関するトラブル防止について、国民生活センターから、平成17年度に続いて再度の要請を受けたことを踏まえ、今般、お手元の資料のとおり銀行界として申し合わせを行い、トラブル未然防止に向けた説明態勢強化に取り組むこととした。
 4点目は、電子債権記録機関の設立についてである。
 本日の理事会において、お手元の資料のとおり、全銀協が設立する電子債権記録機関の会社名、開業時期等について決定した。
 会社名は「株式会社 全銀電子債権ネットワーク」とし、平成24年5月に開業する予定とした。今後は、開業に向けて中小企業を中心とする利用者、関係団体への周知・啓発活動を行うこととする。
 5点目は、税制改正要望についてである。
 本日の理事会において、平成22年度の税制改正について、お手元の資料のとおり要望していくことを決定した。この要望の枠組みは、前回7月21日のこの記者会見の場でご報告したものと同様である。
 事務局からの報告は、以上である。

 

会長記者会見の模様

(問)
 政治に関連することであるが、亀井金融担当相が、法制化の準備を指示しているモラトリアムの件に関して、銀行への影響が大きいと思うが、見解をお聞きしたい。
(答)
 亀井大臣のご発言であるが、皆さんご高承のとおり、亀井大臣は本当の政策通の政治家であり、かつ金融担当大臣のご発言であるので、銀行界としてもこれは重く受け止めたいと存じている。ただ、私が就任以来、ずっと申しあげていることであるが、この金融危機のなか、円滑な資金供給、なかんずく中小企業に対する資金供給は、銀行本来の役割であり、全力を挙げてやる、ということは都度申しあげているとおりである。また政府におかれても緊急融資枠とか貸出条件緩和債権の要件を見直すとか、いろいろな形でこの金融危機を乗り越えようという施策を打ってこられている訳である。金融界としても、こういう動きにも呼応して、精一杯のことはやってきたという気持ちはある。例えば、個別銀行の例を取れば、去年の年末以降、中小企業のリスケや貸出条件緩和に積極的に応えるべく専任の部隊を現在20名弱揃えているし、融資セクションも80人くらい増やしている。また、各々の支店では、お客様からのご相談には極力丁寧にお応えすると言う形で対応している。
 現実に、半期というか3ケ月と言っても良いが、数千件規模でリスケや貸出条件変更に応えている、ということもまた事実である。
 住宅ローンの話にも言及されていたが、これについても専任セクションを設け、20数名で対応しており、今期に入っても2,000件を超える相談を受け、対応している。
 私どもは、やはり中小企業に対する円滑な資金供給は、本業中の本業であり、精一杯やるという覚悟でやっていることは事実であるということは申しあげておきたいと思う。
 一方、私たち銀行の貸出の原資は預金である。私どもの銀行で言えば、4,000万口座のご預金をお預かりし、そのうち7割くらいは、貸出に活用させていただいている。すなわち、原資は皆さんの預金であり、銀行のものでは全然ない訳である。したがって、預金者に対する配慮も必要である。また、私ども銀行は、どの銀行もそうであるが、株式会社である。貸出をしている会社も一つのステークホルダーであることは間違いないが、ステークホルダーとしての株主の皆様、私どもの例で言えば60万人の国内外の株主がいらっしゃる。したがって、銀行の経営というものは、少なくとも我々が絶対的な権限を持っているわけではなくて、ステークホルダーの皆さまに、経営者として責任を果たしていくことが我々経営の役割であるので、一方的な議論というのはなかなか取りづらいということも事実かと思う。
 かつ、皆さんご存知かと思うが、モラトリアムというものは、戦前に2回ほど発動されている。一つには、関東大震災、震災手形ということである。そのあと、金融恐慌のときにも発動されている。ただ、対象は非常に限定されていたし、金融恐慌のときも期間は3週間であり、かつ銀行が預金を払い出しするのも止められた。モラトリアムの対象は銀行でもあったわけである。かつ、少なくともこの自由主義経済のもと、主要国で一律的かつ長期に亘るモラトリアムというものは、発動された例がないというのもまた事実である。
 したがって、法律を今から検討されていく過程の中で、是非、全ての要素を考慮したうえで、総合的にこうあるべしという形を出していただきたい。その過程で私どもも意見を言わせていただくということになるのではないかと思っている。


(問)
 景況感と今後の見通しについてである。政権交代によって補正予算の執行に影響が生じる可能性が出ているが、足元影響をどう見ているか。また、年末から年度末にかけてどのような見通しを持っているか。
(答)
 足元の景況感としては、漸く底入れをしたというのが実感である。4~6月期の実質GDP成長率は年率2.3%で、5四半期ぶりにプラスに転じた。政府は景気の基調判断を維持、日銀は上方修正している。
 ただ、その要因となると、やはり外需頼み、公需頼みであることは否めない。外需については、中国やアメリカ、その他各国が政策を総動員し、非常に大型の景気対策を実施した。これが、わが国の輸出の回復という形で現れている。また、公需についても、国内で様々な景気対策が実施され、これに伴い4次に亘り予算が策定・執行されている。エコポイント等々の対策が景気に良い影響を与えている。加えて在庫調整もほぼ一巡したことから、底入れから徐々に回復に向かう環境が整いつつあると感じている。しかしながら、これは、民需に引っ張られた力強い回復というわけではないことも、また事実だと思う。雇用情勢や設備投資はまだまだ悪化している、ないし回復は見られないという状態であるので、底入れと言ってもその水準は非常に低いと考えている。
 今後の見通しだが、やはり外需、公需がベースとして非常に効いており、これらに裏打ちされて年末から年初に向けて回復基調に入るというのがメインシナリオであると考えている。ただ、先ほども申しあげたとおり、その回復力は非常に弱いので、回復基調ではあっても非常に緩やかなものとなるであろう。
 また、現在、補正予算の凍結が議論されているが、これは予算を組み替えるという議論であるので、足元の数ヶ月は多少の影響はあると思うが、それは大きいものではなく、かつ来年には形を変えて執行されるという性質のものである。このため、景気全体に大きな影響を与えるものではない、非常に軽微であろうと考えている。


(問)
 モラトリアムについて2点追加質問したい。1点目は、亀井大臣がおっしゃっているモラトリアムが、「3年間の期間で中小企業、住宅ローン、一律に適用される」というスキームになるという前提でおうかがいする。非常に社会経済的インパクトが強い問題なので、メリット・デメリットをしっかり見極める必要があると思うが、永易会長が銀行の経営者としてご覧になると、どのような論点に特に留意しているのか。
 2点目は、何年も前になるが、竹中大臣のときに金融再生プログラムを策定しようとしていたときには、全銀協として声明も出し、正式に発表される直前には7銀行のトップが深夜に共同で記者会見をして、意見をかなり大々的にアピールするといった経緯があったが、当時と比べると業界からの反応が割と冷静でおとなしくみえるが、今後どのように対応・アピールをしていくのか、具体的な考えがあれば教えてほしい。
(答)
 大臣が、例えば3年というように示されているが、これは一つの例として、モラトリアムであればこういうことである、という形で提示されていると思っている。私どもも、今から全銀協の意見も聞きたいと言われているので、是非意見を発信していこうと思うし、総合的に見て良い形になればいいと思っている。もともとこの案は、去年の12月に貸し渋り防止法案という形で提示されて廃案になったものがベースになっている。三党合意でもそういう主旨のことが合意されている。それを前提としているわけだが、ただ今回のインパクトが強かったのは、亀井大臣が「3年」と「モラトリアム」という言葉を使われたから、というふうに思っている。内容がはっきりしないので、ひとつひとつに対するコメントは、現時点では差し控えたいと思う。ただ、大臣も今から3党でよく協議するといわれているし、私どもの意見も聞くといわれている訳だから、そうした場を通じて、意見発信させていただきたいと思っている。


(問)
 消費者金融のアイフルが返済猶予の要請という形で経営再建プロセスに入ったが、ノンバンクの経営不安が金融システムに与える影響についてどうお考えか。
 これに関連して、アメリカではタープ(TARP)という不良資産買取りプログラムを使って、GMACなどのノンバンクを救済したが、わが国において、ノンバンクに関する救済策ないしセーフティーネットは必要か否かについて、どうお考えか。
(答)
 後半の質問からお答えする。アメリカと日本では、ノンバンクが経済に占める役割が決定的に違う。経済に占めるノンバンクの比重はアメリカの方が圧倒的に大きい。また、タープも野放図に実施されたわけではなく、限定的に適用されたと認識している。したがって日本ではより限定的になされるべきであろう。GMへの公的資金注入のときも議論されたが、公的資金を金融機関等に注入するには原則がある。すなわち、個別銀行を救うというのではなくて、金融システムを守るため、ということでないと大義名分が立たない。アメリカはそうした観点を相当意識しながら対応しているし、今後、日本でも同様に対応されることになると思う。前半の質問である金融システムに与える影響だが、アイフルは業界大手であるし、ロットも相応に大きいが、事業再生ADRを利用するとのことであるため、直ちに倒産に結びつくといったことにはならない。あくまでも再生型であるので、少なくとも現状では、金融システムに大きな影響を与えるということは想定されないと思う。


(問)
 個別の問題で恐縮だが、本日、前原国土交通大臣が、JALの経営問題に関して大手行を呼んで話を聞きたいと言っている。JALはインフラを担う大企業であり、この再建問題について、金融機関としてどのような認識を持たれているか。また、支援のスタンス等、お話ができる範囲でお聞かせいただきたい。
(答)
 非常に大々的に取りあげられている問題であるが、この記者会見では個別事案についてはコメントしないという大原則があり、JALという個別問題についてのコメントは差し控えさせていただきたい。
 ただ、企業再生の基本は、再生に向けての再生計画がエッセンスである。これはファンドであろうが、金融機関であろうが、他に支援する様々な企業であっても全て共通で、策定される再生計画がフィージブルであるのかどうかということにある。再生計画によって最低3年後、できれば翌年にはこういう姿になり、そのためにこうした方策を使うという提示があり、そのフィージビリティが検証でき、相当な確度でこれが認められることになってはじめて、再生計画自体も含め、あらゆる方向からの支援がセットされることになると思う。
 したがって、JALに限らず、あらゆる再建事案について、こうした原則のもと、各関係者がいろいろ話し合って検討しているというのが現状と思う。私個人としては、是非JALには再生していただきたいと非常に強い気持ちで思っている。


(問)
 消費者金融についておうかがいしたい。今回、アイフルが私的整理に至った理由を見ると、過払い金返還訴訟が急増していたり、来年6月までに更なる規制強化が貸金業法において予定されているといったことが背景にあるようだ。この来年6月までに予定されている規制強化には見直し規定が盛り込まれていると思うが、現下の状況を鑑みて、見直しを行うべきか否かについて、どうお考えか。
(答)
 当事者ではないので確たることは言えないが、足元、消費者金融業界は、過払い金返還請求への対応で苦慮されているということかと思う。大手各社は引当金を積んでいるはずであるが、それを超えるスピードで請求が増加していることが根本にあると思われる。来年6月までには総量規制等も始まるが、システムの対応を含め、大手各社は準備を進めている。したがって、現時点では見直すべきか否かを言える段階ではないと考えている。これから半年間、来年6月に向けてどのような状況になるのかがポイントになってくるのではないか。


(問)
 非常に大きな話だが、昨日の鳩山首相とオバマ大統領の会談にもあったように、リーマン・ショックから1年経ち、日本やアメリカ、新興国、アジアであれば中国の存在が大きいが、そうした日本・アメリカ・中国の経済関係も含め、金融面から今後どのような動きになっていくのか、永易会長の所見をうかがいたい。
(答)
 大変大きい質問なので、本来、コメントする立場ではないようにも思うが、一連の報道によれば、オバマ大統領は新大統領として国連総会に初めて出席された。鳩山首相も出席して意見陳述された。その後、フェイス・トゥ・フェイスで二人で会談された。この一連の流れは悪いものではない、非常に良い形でスタートしたのではないか。まだ就任から5~6日目だが、良いスタートを切られたのではないかと思う。日米関係については、ジャパン・パッシングといったことも言われるが、防衛問題も含めた日米安保はアメリカにとっても日本にとっても国の存立基盤の1つである。こうしたものを大事にしながら、鳩山首相の言ではないが、互いに言いたいことを言いながら友愛の精神をもって協調していく。これは、具体的ではないが、考え方としては非常に良い形ではないかと思う。ぜひ、鳩山首相にも政府全体にも頑張って欲しいし、アメリカともフランクな意見を闘わせて欲しいと思う。
 経済面についても全く同じことが言えるわけで、この1年間はまさにグローバルベースの金融・経済危機であり、歴史に残るような国際協調が行われてきたと感じている。危機脱却までもう少しというところまで来ていると思うが、最後の仕上げを国際協調のもとでぜひ仕上げていただきたい。その先の新しい成長に向けて、オバマ大統領はグリーン・ニューディールなどを提唱されているが、そうした点でもグローバルベースで協調すべきは協調する、競い合うべきは競い合う、こうした形で世界を引っ張っていただくと良いと感じている。


(問)
 鳩山首相は温室効果ガスの削減について非常に厳しい目標を掲げたが、これにより、例えば国内の排出権取引が拡大したり、いろいろな影響があると思うが、金融機関側からどう見ているのか。
(答)
 これも大変大きい問題である。この問題はグローバルベースの、人類にとっての大問題である。それこそ先ほどの話ではないが、全世界で、特に主要国は、協調・協働してこれに対処するというのが大前提である。そうでないと人類にとって不幸になるので、これを防ぐという方向で協力していくことは、総論では誰も反対しないし、そうあるべきと思う。
 ただ各論になると、新興国にしろ、日本にしろ、アメリカにしろ、各々事情を抱えているので、そういう事情と理念の接点に向けて、これからも協議を続け、是非良い形で合意し、グローバルベースのコンセンサスとしてやっていきたい。グローバルベースのコンセンサスとして25%削減になるのであれば、非常に困難が付きまとうと思うが、日本国も頑張らないといけないと思う。それに向けて産業界も金融界も頑張っていくという形になるだろうし、そのために世界各国が必死に努力していくような循環になると良いと思う。


(問)
 自己資本を含めた金融規制の話をお聞かせ願いたい。足許でバーゼルの声明が出て、金融サミットでもその流れを踏まえて議論がされると思う。主要な論点というのがほぼ出尽くした感じがあり、永易会長は日本の立場を訴えていくということだったが、今の議論の流れを現時点でどう評価されているのかということと、自己資本の質と量の問題とは別に例えばレバレッジ比率の話が出てきたり、金融システムに重大な影響を与える金融機関には追加の健全性を求めるサーチャージの話が出てきたりしていると思うが、特に邦銀に影響を与えるものとして注目されている論点があるとすれば、どのようなところがあるのかというのを教えていただきたい。そして最後に、現在の議論を踏まえて、邦銀としては次に一体どのような手を打っていかなければいけないのかということについて、お聞かせ願いたい。
(答)
 金融危機の再発防止のために、さまざまな手法が取られないといけないというのは当然だと思うが、4~5月頃から、議論が「資本の質」や「資本の量」等、自己資本に片寄っていることに対しては危惧を申しあげてきた。欧米紙に全銀協会長として寄稿したり、あるいは金融庁長官も寄稿されたりするなど、メディア等も通じながら日本から意見発信を行ってきたが、これらの過程を経て徐々にコンセンサスも得つつある。しかし一方で、先日の9月6日のバーゼル委員会からの発表やその前の9月3日に公表された米国財務省の8原則などでは、自己資本規制の強化は大きい流れになってしまったという印象はある。
 この自己資本規制の議論は、大まかに申しあげれば、損失の吸収力が高いといわれる普通株を厚くさせ、これに内部留保を加えたものを中心とする考え方。報酬の問題や配当の問題等も言及されているが、これは社外流出を抑えさせる議論である。普通株の資本金と内部留保を厚くさせ、これを資本の中心として調整項目等を適用したものが、Core Tier 1であり、更に資本バッファについては、絶対金額として好況時には積み、不況期には取り崩すものとして、各国の当局が主張しているとおりである。
 ただし、私どもが繰り返し申しあげているのは、今回の金融危機を起こした原因は本当はどこにあるのか、ということである。危機から脱却するために我々日本は「失われた10年」において、不良債権問題で非常に苦労した。その経験を踏まえると、これが自己資本比率に拘泥した議論ではなく、アセットサイドの厳格な査定により損失を確定させ、不良債権を銀行から切り離し、そのために資本が足りなくなるのであれば資本注入をするということが大事であって、自己資本を厚くしたからといってそれだけで回復するわけではない。つまり、自己資本規制にあまりとらわれると、かえって逆効果になるのではないかという議論をしてきた。その前提になっているのは、ゴーイング・コンサーン・ベースという考え方で、常にToo big to failという基本的な考え方に基づいている。これを逆から申しあげれば、リスクとしては、「Too bigなのでfailすることはない」という考え方に立てば、逆に極めてリスクを取りやすい体質になってしまう。これをやらせないという仕組みをいろいろ作ろうとしているが、自己資本だけに片寄った議論をすると、先ほどのような虞があるという主張をしている。
 また、今回の経験で、預金を主体にしている商業銀行と自己勘定でトレーディングをやっている投資銀行は、根本的に違うのではないかということも申しあげている。このような特殊性がある中でこれを一律に規制するのではなく、各特殊性を考慮した規制にすべきであるという主張をしている。今回のG20金融サミットでは各論には至らないだろうが、この12月には、資本の質等の具体的な提案が発表される予定である。その後で、新しい規制が今後ディスアドバンテージとして大きな副作用を引き起こさないかという影響度調査が行われる予定。そのうえで、来年の12月くらいまでに全体の規制の枠組みを作るという流れで議論が行われている。我々はこれまでも意見発信を一生懸命やってきたがこれからもやっていく。また、定義だけでなく、どう規制していくかという議論についても申しあげていきたいこともあるので、今後とも意見発信を続けたいと考えている。
 規制強化をしようという大きな流れはほぼ決まりつつあるが、各論部分についてはまだ議論の余地はあると考えている。


(問)
 9月以降、規制強化の流れは避け得ないということで、邦銀の株の希薄化を懸念する売買になっているという見方もあると思うが。
(答)
 例えば米国のTier 1 FHCのように、日本で申しあげればメガバンクだけが規制の影響を受け、他には影響を与えないという考え方もある。
 まだ決まっていることではないが、国際基準行と国内基準行というのがあるが、その中でも全てが規制強化の流れをうけるというのではなく、ある一定の銀行を対象にするというようなこともありえるし、Core Tier 1の議論でも、資本や控除項目等の状況次第で個々に規制しうるという考え方もありうる。したがって、そういうものをよく議論し、我々の意見も汲んでもらう。いろいろな形で意見の一部は取り入れられており、我々が意見を発信する意義はあると考えている。


(問)
 亀井大臣が郵政改革担当大臣に就任したことで、郵政民営化が当初とは大分別の形に進んでいくと思われるが、会長の所見と郵政民営化がこうあって欲しいという要望があれば教えて欲しい。
(答)
 民主党政権は、三党合意に基づき、郵政民営化を見直すと言っており、こうした見直しの方向性自体は、選挙を経て政権が誕生した時から決まっていることである。どういう形で具体的に郵政事業を再構築するのかについては、今後の議論によって、全体のコンセンサスが与党間でもできて行くのではないか。
 民間金融界の立場から見ると、昔から申しあげているとおり、公正な競争環境の確保は必須条件であり、官業の特典や暗黙の政府保証というものを背景に規模を拡大していくことは、国民経済的にみても良いことではないし、問題があると思う。トータルの金融システムに対して、悪い影響を与えるような形の民営化見直しは絶対に困る。大原則は、金融システム全体の問題と公正な競争条件の2つであり、これらをベースにしながら、今後、さまざまな具体的な案が出てくると思うので、それらに対して、我々も意見を発信していきたいと思う。


(問)
 会長は、日本政策投資銀行について、どうなって欲しいと考えているか。迷走極まっていて、民営化するのか、延期なのか、民営化しないのか、さっぱりわからない状態になっている。一方、この銀行がなければ、JAL問題はどうなっていたか、JALの債権を肩代わりする銀行はないと思うが、政投銀は消えてなくなって欲しいのか、やっぱり必要だなという認識を強めたのかどうか、いかがか。
(答)
 今回の危機は、ご存知のとおり、100年に1度とも言われる経済危機であり金融危機である。こうした大前提に立てば、4月以来申しあげているとおり、政官民をあげて、総がかりで危機から脱却するよう最大限の努力をしなければならず、その中で当然のことながら民間も協調してきているところである。ただ、「官から民へ」という大きな流れは不変であるという大前提も申しあげてきた。具体的な方向性は、今後、十分に議論されて結論を出すことになると思うが、景気が巡航速度である中ではどうあるべきかということについて、根源のところから議論をして欲しいと思う。
 我々としては、やはり、大きな流れ、「官業は民業の補完に徹する」「官から民へ」の流れは不変であるという基本的な考え方に立脚して、物事を考えているということである。