会長記者会見
2010年6月22日
奥会長記者会見(三井住友銀行頭取)
和田専務理事報告
事務局から4点ご報告する。
1点目は、去る5月27日に重大な法令違反等により金融庁から行政処分を受けた日本振興銀行の全銀協活動自粛についてである。同行から、全銀協活動を自粛する旨の申出があったことを受け、本日の理事会に先だって「自粛勧告等委員会」を開催し、審議した結果、当該申出を受理することとした。
2点目は、税制改正要望についてである。本日の理事会において、平成23年度の税制改正について、お手許の資料のとおり要望書をまとめた。なお、例年は9月にまとめて公表していたが、本年は各省庁による税制改正要望の公募が6~7月にかけて実施されることから、これに対応するため、前倒しで公表するものである。
3点目は、日本経団連低炭素社会実行計画への参加についてである。本日の理事会において、日本経団連が「環境自主行動計画」に続く新たな計画として策定している「低炭素社会実行計画」に全銀協としても参加することを決定した。今後、関係部会において具体的な取組みについて検討する。
4点目は、「振り込め詐欺防止啓発イベント」の開催についてである。全銀協では、6月15日から1ヵ月間を「振り込め詐欺撲滅強化推進期間」と位置付け、活動を展開しているところであるが、その一環として、7月6日に、新宿髙島屋1階JR口特設会場において「STOP!振り込め詐欺 金融犯罪防止啓発イベント」を開催することとした。当日は、女優の菊川怜さんをお迎えし、来場者の方に振り込め詐欺の手口や防止策等をわかりやすく説明するプログラムを用意している。また、オープニングセレモニーには、奥会長も出席するので、是非、ご参加いただきたい。
会長記者会見の模様
(問)
先日、菅政権が発足して、民主党からは参院選マニフェストも発表された。これに対する受け止めと菅内閣に期待することをお聞かせいただきたい。
(答)
菅内閣が発足した。現在の日本の経済状況はリーマン・ショック後の落ち込みから回復の途上にある。長期的な回復の入口にあるのかもしれないが、まだまだ不安定要因も多く、先行きを見通すことがなかなか難しい状況にある。そういった閉塞感があるなかで、菅内閣は首相の所信表明で「強い経済・強い財政・強い社会保障」という大変強いメッセージを出された。期待するところは大きい。
とはいえ、ここ4年ばかり、毎年、国のトップが代わってきたので、やはりここは少し落ち着いて、しっかりと課題の着実な解決に向けて最大限の努力をしていただきたい。トップが代わっても日本の課題は何も変わっていない。民主党のマニフェストも発表されたが、具体的な政策メニューを提示し、具体的に議論を深めて、そしてそれを決めたら迅速に実行していくということが求められていると思う。
私ども銀行業界としても、「強い経済」の実現に向けて最大限の努力をしていきたい。ただ、一つだけ敢えてマニフェストのなかで申しあげると、郵政改革法案については、選挙後の臨時国会において最優先課題として速やかに成立を図るというくだりがあるが、私どもは従来から申しあげている主張のとおり、現在の法案のままでは、国民経済の利益に適っているかどうか甚だ疑問である。改めて議論を深めていただきたいと思っている。
そういう強いメッセージのもと、具体的かつ優先順位を明確にした政策を腰を据えて実行していただく、そして強い経済を実現していただきたいと思っている。
(問)
経済情勢について伺いたい。欧州の財政危機やユーロ安など、金融市場の不安感が高まっている状況。中国については、人民元相場の弾力化が発表された。こうしたなかで、国内外の足元の経済情勢と先行きの見方を教えていただきたい。
(答)
なかなか難しいところではあるが、まず欧州のギリシャ問題を発端とした南欧州の財政問題の顕現化が大幅なユーロ安をもたらした。これに対しては、EU各国、そしてECBが迅速に対応し、IMFも加わって7,500億ユーロの緊急パッケージを発表した。いろいろな意味で取りうる最大限の対策は取っていると判断している。また、ドイツ・フランスを含めた各国より、すぐさま財政再建について、トップのメッセージが発せられている。そういったことについては、これから具体化をしたいということだと思う。
ヨーロッパにおいては、ギリシャのみならず、いわゆるユーロ圏内とは別のところでEUのメンバーではあるが、独自通貨を持っているハンガリーでやはり動揺が起きている。こういった問題が他の中東欧に飛び火するのかしないのか、そういった意味でまだまだ今のところ市場には落ち着きが見られない。
7月に欧州の銀行のストレステストの結果が公表される。こういうものが発表されて市場が消化しきるまでには少し時間がかかるのではないかというふうに見ている。
一方、中国であるが、人民元の弾力化に向けて動き出した。これは、おそらく急激な変更ということではなくて、徐々に穏やかなかたちで調整されていくことと思う。足許の動きについては、昨日は少し基準値対比人民元高に進んでいるが、今日はもみあいの状況。これは一日二日で議論することではないと思う。弾力化を図ったこと自体は、一つは今の人民元売りドル買いということから生じた中国における過剰流動性を吸収する方向に進む。また、人民元高に進むということは、輸入物価の是正をもたらす。したがって、必ずしも中国の経済にとって悪い影響をもたらすものではないことから、引続き中国の経済成長というものについて、時間をかけた調整が行われていくと見ており、すぐさまこれが中国経済にとって非常に大きな減速要因になるとは思っていない。
世界的に見れば、やはり中国・ブラジル・インドといった新興国経済が引続きしっかりしている間に、財政状況に問題のある国、日本も数字の上ではそういう問題を抱えているが、そういう問題に道筋をつけ、具体的なアクションを起こしていくことが市場にとっては非常に大事なメッセージになると考えている。
(問)
銀行の貸出残高の前年割れが続いているところである。就任会見の時に「金融機能の更なる発揮」ということを表明されているが、今後、銀行界としての取組みについてどのようなことを考えているのかお聞かせいただきたい。
(答)
経済が非常に強い回復を示しているわけではないので、資金需要は引続き弱い。足元の3月~5月を見ても、全銀協の数字を見れば大体前年同月比2%~3%減っている。一方で、先ほど経済も少しずつ良くなっているということで、中小企業も含めて、設備投資に少し動きが見られるということであるが、それも減価償却の範囲内の動きであるので、資金需要まで出てくるということにはなかなかなっていない。こういうなかで、我々自身、個別行としても金融の円滑化のためにいかにその機能を果たしていくかという問題は大きな課題である。
今、政府で新成長戦略というものが発表された。こういう新成長戦略のなかで我々は成長に資するための資金供給を果たしていかないといけないと思う。また、日本銀行自体も新成長分野への新金融制度というのを発表した。本日が確か手を挙げる締切だったと思うが、そういったかたちで日本銀行もある意味、非伝統的な分野に踏み込んでデフレ脱却からの強い意思表示をしている。
こういうなかで我々はやはりそういった国全体のまたは、政府・日銀を含めた動きというものに呼応していかなければならないと思う。
全銀協としても融資の相談窓口の設置、中小企業中心であるが、企業のいわゆる情報をネットで掲載しマッチングを行うということも行い、業界としてもしっかりと対応していきたいと思う。
4月の就任時に「金融機能の更なる発揮に向けて自己規律を一層働かせていくことが必要」だと確かに述べた。そういう意味で私は、全銀協としてもこの機を捉えて、金融円滑化に関しても一種の行動指針というかガイドというものを作って銀行の中でその基本的な考え方を共有していきたいというふうに考えており、今、その作業を進めている。来月くらいを目途に公表できるのではないかと思う。
(問)
2点お願いしたい。
1点目は、今日政府が発表した財政運営戦略に関してである。2020年までのプライマリーバランスの黒字化等が柱になっているが、どう受け止められているのか。そのなかで特に税制改革が一番大きな課題となっていくと思うが、それについてもお考えをお聞きかせいただきたい。
2点目は、先ほど幹事社質問にもあったが、人民元に関して特に日本の経済への影響があればお伺いしたい。
(答)
今日出た財政運営戦略は詳しく読んでいないので、細かいコメントは避けたいと思うが、先ほども申しあげたように財政再建は日本の大変大きな課題である。少子高齢化が進み、社会保障費が増加していくというなかで、入りをどうするのか、出をどう絞るのか、ということを本当にしっかりやっていかなければいけない。入りを大きくするためには、強い経済を作り上げていくこと、再生していくこと、これが強い財政に結びつくわけだが、入りのほうは消費税の引き上げ等が一つの課題となってくるわけである。片方でやはり出の方も見直していかなくてはいけない。おそらくこういう議論というのは、所得税、法人税、消費税を一体として総合的に議論を進めて、細部にわたってアクションプランを作っていく必要がある。一挙的な解決方法はないわけである。したがって、それには国民的なコンセンサスというものが前提になるわけだから、それを国民に分かりやすく、そして国の危機というものと将来に対する明るさというものをどういうふうに示していくのか。そういうものを含めて財政の再建というものを議論し、国民に示していくことが必要なのではないかと思う。税の部分については、政府の税調でいろいろとこれから議論をすることになると思うので、私はそういう意味での財政再建に向けた税の議論が総合的に進められることを期待している。
それから、人民元の問題というのは、先ほども申しあげたように一日二日の動向だけで議論するものではない。すぐに日本経済に影響が出てくるわけではないと思うが、中長期的に考えれば、やはり日本の企業というのは、中国に依存してきている。したがって、中国のなかで経済活動を行っているところや、中国から輸出するような業態については、当然元高による影響は出てくるわけである。それから、もう一つ言えば、昨日の動きを見てみると、元だけの問題ではなく全般的にアジア通貨が高くなっている。このことを今後どういうふうに見ていくのかということも大変大きな問題ではないかと思う。日本の経済にとって、まさにアジアの成長を我々の経済の成長に取り入れようとしているわけだから、そういった意味で影響は中期的に見れば少なくなく、なかなか難しい課題だと思う。日本の場合も往復両方ある。中国から外へ出て行くことだけを考えるのか、中国の大きな消費市場をマーケットとしてどう見ていくかによって、それぞれの企業の経済活動の方針が変わってくると思う。日本に対する影響は、今後いろいろなかたちでプラスマイナス両方見ていかなければいけないということだと思う。
(問)
改正貸金業法について、2点お聞きしたい。1点目は、激変緩和措置が取られたとはいえ、ほぼ原案のまま予定どおり完全施行されたことに対するご所見を教えていただきたい。2点目は、改正貸金業法の影響で、貸金市場では供給サイドが大きくシュリンクして需要を賄いきれなくなっていると思うが、需要を賄い切れない部分を銀行が賄うべきであり、貸金業界のかわりに銀行がコンシューマーファイナンスをもっと行うべきだという意見があるのだが、このことに対するご所見を教えていただきたい。
(答)
1点目については、施行後の動きを見ていて今のところ何か大きな動きがあるというわけではない。この法律、今回の場合は第4条施行であるが、これの周知が徹底しているかどうかというと、まだ分からない。新聞もいろいろ報道されたし、貸金業界でも周知を図ってきたわけであるが、実際に周知徹底されているというところまでは至っていないので、これからの状況というのは分からない。ただ、総量規制の面で(年収の)3分の1以上を借りている方々は、全借入人の5割を超えているというアンケート結果があるので、激変緩和措置といっても非常に部分的・限界的なところになってしまい、私どもとしては、それなりに大きな影響があるのではというふうに見ている。じっくり動向を見極めたうえで「何が必要なのか」ということを、業界として、また行政としても、考えていく必要があると思っている。
2点目の、供給サイドが非常にシュリンクしてしまっていることに対して、あふれた人はどうするのか、銀行が供給すべきじゃないか、という考えがあるのは認識している。そういうものに対して、我々はネガティブではない。銀行の与信基準に、適合した案件であれば、当然貸出を行う。ただし、全部が全部、銀行が無条件で貸し出すというような考えがあるとすれば、それは違う。コンシューマーファイナンスを歴史的に振り返ってみると、元々銀行は消費者向け金融というものを自分の手でやろうといろいろ努力をしてきた。そのなかで、住宅ローンは残っているわけだが、個人のローンについては一定の金額から増えなかった。銀行へ来られるお客さまの層の問題もあるかもしれないが、開拓できなかった。その間に、消費者金融というものが、一般的なノンバンクとして大きく伸ばしていた。審査ノウハウ、回収ノウハウも、銀行とはずいぶん大きな差が出てきたことから、銀行の一部のグループは、私どもも含めて、グループの傘下にコンシューマーファイナンス会社を置くという選択をしたわけである。たとえば審査について言えば、コンシューマーファイナンス会社の審査ノウハウを活用しつつ、銀行が貸し出しているケースもある。そのようななか、銀行が全て負うというのは歴史の流れからいくと違うだろう。我々としては、銀行の与信基準をしっかりと守りつつ、そういう案件に取り組んでいる。たとえば、SMBCという個別行で言えば、年収の2分の1以内という、3分の1という今回の規制よりも柔軟な基準で見ている。ただし、量的にはそういうことになるが、返済能力があるかどうかということに関しては、個別に見て判断している。
(問)
先ほども触れられた政府の新成長戦略について、アジアの金融セクターとして総合取引所の創設が盛り込まれたが、それに対する会長のお考えをお聞かせいただきたい。
(答)
考え方としては理解できるが、それぞれの取引所には、これまでに至る経緯、歴史がある。また、グローバルなかたちでのリンケージというものが強くなってきている現在においては、そういうことも含めてよく検討していく必要がある。当然のことながら、グローバル化の過程で、総合取引所になるケースもあれば、それぞれの取引所が海外とのリンケージを強くしていくというケースもある。政府がこうしたことを言っておられるのは、考え方として、抽象的なレベルでは非常にありうる話だと思われる。ただ、具体的に考えていった時に、どこまでできるかという点については、自分自身納得するかたちでコメントするところまでは理解できていない。ただし、テーマとしては、そういう取引所の一体化をグローバル化の流れの中でどう考えるかということだと思われる。
(問)
先ほど会長もおっしゃっていたが、税のことについて、もう少し詳しく伺いたい。消費税について、自民党は10%を目途にという考え方を示しており、一方で政府与党もそれを参考にしたいというふうに菅首相が発言されていたが、消費税に関する銀行界の考え方、産業界の考え方でも結構だが、それと日本経済に対する影響をどのように見るか。プラス、マイナス両面で教えていただきたい。
(答)
先ほど言い忘れたが、消費税について、銀行業界で何か議論しているとか、銀行業界でまとめたものや考え方があるかというと、そういうものはない。先ほど申しあげたのは、あくまでも金融界に身を置く私個人としての意見である。10%がいいのか、自民党が10%、民主党が10%になるのかどうか、その辺は、いろいろ駆け引きもあり、まだよくわからないけれども、何かが必要であろうということ。やはり歳出カットだけではやっていけない部分がある。歳出カットをとことんまでやると言っても、とことんとは一体どこまでがとことんなのか、という議論は抽象的過ぎる。とことんまでやるという考え方は正しいのだろう。だから、いろいろな事業仕分けを行っているわけだが、片方で税の歳入の方を考えなくてはいけない。それは一体いくらがいいのか、導入時期をどうするのか、1回でやるのか、小刻みにやって一つのターゲットに持っていくのか、いろいろな議論を深めないといけない。加えて、前回の引き上げのときのトラウマがある。やはり経済の腰を折りはしないかという肝心な問題があるので、そういった部分への配慮をしながら、導入も慎重に考えないといけない。したがって、今言えることは、所得税、法人税、消費税、これを総合的に考えることが前提。外部環境によって、法人税も所得税も変わってくる。収入の額は当然、経済環境が良くなれば、法人税所得が増え、税収入も増えるし、個人の所得税収入も増える。そういったものを見ながらどういうふうにやっていくかということは、議論していく必要がある。やはり物事の効率を上げていくためにはTPOが非常に大事であるから、そこに対する議論も大いにしていただきたいと考える。
(問)
株主総会がピークを迎えるところであるが、今回の株主総会は、制度変更とともに役員報酬の開示が注目を浴びている。個社ごとの判断というのが原則であるが、銀行界が今までに公的資金注入を受け、一部はいまだに公的資金が残っている状況のなかで、役員報酬の個別開示に対して、業界としての姿勢があるのか、考えをお聞かせいただきたい。
(答)
銀行業界として何かするというものはない。今回の法令改正で、1億円以上の役員報酬を開示するということが、上場会社に義務付けられたわけであるから、その開示ルールに則って粛々とやっていくということである。
(問)
制度改正に絡んで、株主総会の場もしくはその事前に開示するという動きがあるようだが、SMFGとしてはそういうことは考えているか。
(答)
SMFGとしては事前に開示するつもりはない。おそらく開示対象にはならないと思う。
(問)
本日、みずほFGの株主総会が開催された。役員報酬の個別開示はなされなかったが、それについてのコメントはあるか。
(答)
個社の方針であるので、コメントはご容赦願いたい。
(問)
金融円滑化について考えを聞かせていただきたい。亀井大臣が辞任されたが、亀井大臣をどう評価されるか。郵政の話もあり、金融円滑化の話もあり、亀井大臣が就任されたときは奥会長もびっくり仰天されたと思う。中小企業金融円滑化の法律ができて、それまで銀行はずっと中小企業に金を貸していると言っていたが、亀井大臣が折りに触れて言うことで、初めて本気になったという気がする。先ほど、ガイドラインを作るというようなことをおっしゃられたが、中小企業を含めた金融円滑化は、結局、政府に言われなければできなかったことなのか、それともそれとは関係なく銀行が自助努力でやってきたのか、そこのところをどう評価されているか。
(答)
個別の評価ということよりも、おやりになられたことへの評価ということかと思う。亀井大臣が就任されたときにまずおっしゃったことはモラトリアム法案であったが、我々金融界としては、モラトリアムという言葉の強さに驚いた。現在はそういうことを行う状況なのだろうか、と言うことである。金融・銀行というのは、一定の条件で金を貸し、回収していく。安全性、経済性、そして社会性ということを頭に置いて資金を社会に供給してきている。その立場というものを、私たちはひと時も忘れたことはない。モラトリアムという言葉のイメージは、何と言うか、一旦の債権放棄のようなかたち(一律返済猶予)ということで、これはそういうことではないだろうと。いろいろお聞きすると、いまは大変な時期なので、債務の返済時期を延ばしてあげたり、コンサルティングをしっかり行ってほしい、ということであった。そういった意味では、再度そういう状況にあるのかということを、我々が現場も含めて現状を直視する機会を与えていただいたということだと思う。その結果、我々は円滑化法のもとでいろいろな対応をしてきているわけだが、それまでも返済期限の延長をしたり、リスケに応じたりしなかったかというと、銀行界もきめ細かくやってきた。それに加えて、そういう法律ができたということの趣旨をもう一度強く意識したうえで見直してきたということだと思う。したがって、そういう意味で、金融機関の社会的責任、先ほど言った安全性、経済性、社会性のうち社会性というものについて、もう一度しっかりと見直す機会・宿題を与えられたということだと思う。
もう一つ強いて言えば、郵政改革法案に戻るが、これについてはご承知のとおり、全然違う議論になったままで、亀井大臣とは刷り合うところはなかったということである。
(問)
日本のみならず欧州でも財政再建の機運が非常に高まっており、すなわち財政支出が今後減っていくという流れになるが、中期的に見て年度後半あるいは来年度以降、世界的な景気への影響について、どのようになるとお考えかお聞かせいただきたい。
(答)
欧州各国での財政の問題というのは、経済に対する一つのボトルネックになることから、経済的に影響がないというわけではないと思う。先ほど申しあげたとおり、もう一度火種にならないようにするということは市場にとって大切なことだが、財政の緊縮ということでいけば、経済の成長についてはネガティブな要因になっていく。そういうなか、経済成長率が落ち、世界経済にとってはやはりマイナス要因になるであろう。ただし、その他の国、新興国の勢いというのが続く限りにおいて成長の余地はある。したがって、新興国の成長を、それぞれの国がどのように取り込んでいくかということは、大変重要な要素であると思っている。