2011年2月22日

奥会長記者会見(三井住友銀行頭取)

和田専務理事報告

 事務局から1点ご報告する。
 本日の理事会において、お手許の資料のとおり「デリバティブを内包する預金に関するガイドライン」を制定した。このガイドラインは、昨年9月に金融庁から公表された「デリバティブ取引に対する不招請勧誘規制等のあり方について」において、デリバティブを内包する預金について、投資者保護の一層の充実を図る観点から、自主規制による販売勧誘ルールの強化の取組みを踏まえた対応を全国銀行協会等に促す、との方針が示されたことを踏まえものである。
 内容はお手許の資料のとおりであるが、全銀協としては、各会員銀行がこのガイドラインの趣旨を十分に踏まえ、必要な態勢を整備することにより、投資者保護の一層の充実を図るよう努めていきたいと考えている。
 事務局からの報告は、以上である。

 

会長記者会見の模様

 


(問)
 日銀が先日の政策決定会合で足許の景気判断を9ヶ月ぶりに引き上げた。一方で、資源・食料価格の高騰や中東情勢の緊迫もあり、世界経済を取り巻く環境というのは不透明感が強まっている。足許の景気認識と今後の見通しについてご所見をお願いしたい。
(答)
 2月14、15日に日銀の金融政策決定会合が開催され、景気の情勢認識については、「改善テンポの鈍化した状況から徐々に脱却しつつある」ということだったと思う。私も同じような景況感を共有している。年末から年始にかけて、取引先のいろいろなお客さまと話をする機会があったが、全般としてはそういう動きになっているのではないかと思う。もう少し噛み砕いて申しあげると、昨年の10-12月期のGDPは年率で1.1%のマイナスということになったが、これは、7-9月期に、自動車関連のエコカー補助金の打ち切り等があり、比較的いろいろな駆け込み需要でかなり成長率が高くなったことの反動という要素もあり、数字の上では落ち込んだ。しかしながら、その後、足許の月次の指標を見ると、全体としては次第に上向きつつあるのではないかと思う。少し低迷していた鉱工業生産指数もこのところ、11月、12月と連続して上向きになったし、生産計画も1月は結構強い数字が出てきていると思う。特に今、こういった動きを牽引しているのは、アジア向けの輸出だと思う。アジアについては、電子デバイスや生産財の輸出が、在庫調整が進んだことにより、かなり増えてきている。例えば、スマートフォンや、iPadなどが非常に良く出ており、これが牽引していると思う。こうした動きはしばらく続くと思われる。
 また、アメリカもクリスマス商戦が比較的好調であったというふうに聞いており、そのトレンドが今も続いているということで、いろいろとまだ不安定要因はあるものの、少しずつ景気も回復してきていることは間違いないと思う。
 こうしたなかで、わが国の景気も、世界経済、特にアジア、アメリカの回復につられて次第に回復してきているという認識は比較的共通のものではないかと思う。ただし、輸出が牽引している一方で、内需そのものを見るとまだまだ弱いという感じを持っている。例えば、設備投資であるが、中小企業を中心に連続して何ヶ月か増えてきているが、まだ水準はリーマンショック前の8割程度に留まっている。景気を強く牽引するというところまではきていない。大企業も同じだと思う。そういったなかで、中国の金融引き締めの問題が出てきているし、エジプトから始まった、中東というかマグレブの政情不安の影響、それから食料、資源価格の高騰といった問題が、これからどういうふうに企業業績に影響を与えていくかという面でリスクを内在していると思う。したがって、景気の回復は間違いなく進むであろうが、そのスピードというのは比較的緩慢なものにとどまると思っている。内包しているリスクが今後どのように出てくるか、あるいは収まるのか、この辺を注視していく必要があると思う。


(問)
 2月上旬に出揃った銀行の第3四半期決算の受け止めと第4四半期決算の見通しについてご所見をお願いしたい。
(答)
 第3四半期を振り返ってみると、全般的な話であるが、いわゆる不良債権に係るクレジットコストが縮小しており、これはプラス要因になっている。一方、米国、それから国内の長期金利が上昇したことにより、年度の前半6ヶ月で、様々な金利低下局面を捉えて収益を上げた市場営業部門においては、あまり収益が確保できない状況になってきており、プラスマイナスして前半6ヶ月ほどのレベルにはこの第4四半期を含めてならないのではないかと思う。悪くはないけれども、良くもない。したがって、前半戦のおつりが年間収益として残るというかたちの決算になるのではないかというふうに見ている。
 それから、先ほど申しあげた地政学的な問題が、今後、与信も含めてどういうふうに影響してくるのかという観点もある。おそらくクレジットコストについては、引き続き低位で推移すると思われるが、決算全体としてみた場合は、やはり長期金利の動向、それから海外の動き等々をよく見ていく必要があるので、年間見通しについては、そのまま当初見通しを据え置いている銀行が多いのではないかと思う。


(問)
 新日鉄と住友金属が経営統合方針を発表した。鉄鋼に限らず様々な分野でグローバル競争が激化するなかでの大型合併であるが、これをどのように受け止めたかお聞きしたい。
(答)
 新日鉄と住友金属の統合発表であるが、正直言うと、このタイミングでということには驚いた。しかし、こういうことがあり得るということは従来から考えていた。2002年から神戸製鋼を含めた3社の業務・資本提携があったので、こうした点に鑑みれば、今回の統合はその延長線上にあったと思う。その間、やはり新興国の急激な台頭があったり、一方で、資源の寡占、国内経済の低迷、少子化の進行という状況があり、こうしたなかで、やはり国際競争力をいかに保ったかたちで日本の企業として逞しい成長を遂げていくかということになると、帰結としては今回のような選択になるということだと思う。そういう意味では、私は大変な決意に敬意を表するとともに、やはり国際的な企業として逞しい成長を続けていただきたいというふうに思う。
 まだ合併されたわけではなく、これからいくつかの大きなハードルをクリアする必要があるのだろうが、このような大型合併というのが日本の他の産業で起こり得るのかというと、やはり私は今回の統合の発表は大きなトリガーになるような気がしている。日本の経済が成長していく時には、大企業、なかんずく製造業においては、やはり国際競争力というものに焦点が当たっていくわけで、そのためには、やはりビジネスとしてのスコープとスケールとしてのスコープの両方の観点から物事を考えていく必要がある。すでにそういうことを念頭に置いて、自らの事業の強化を図ってこられた企業はあるわけだが、さらにそういった事業を強化するための動きが、統合を含めて出てくるだろうし、またそうしないと日本の企業として世界で戦っていけないということになるかと思う。これは、大企業のケースで言っているが、今後、中堅企業クラスまで含めて同じような問題があると思う。やはり、日本のなかで戦っていくだけでは企業もROAが低く、それから金融もROAが他の国に比べて低いのが実情。企業の数が多い中で戦って体力を消耗するということではなく、そうした状態から脱却し、やはり世界で打ち勝っていくために、そのエネルギーを外に向けていく必要があるというふうに思う。そういった意味で、今回の決断に対して、大変な敬意を表するとともに、これが何かさらなる再編のトリガーになるような予感がしている。


(問)
 本日、ムーディーズが日本国債の格付けの見通しをネガティブに変更すると発表した。日本政府が財政再建を打ち出せないでいることも要因に挙げられるが、金融界として会長は政府に対して、財政再建策についてどういった注文があるか。
 関連して、邦銀は2ヶ月程度連続して国債を買い越すなど、大量の国債を保有している。世界ではソブリンリスクなど財政問題が指摘されているが、買い過ぎることでリスクを高めることにならないか、見解を伺いたい。
(答)
 私も先ほどムーディーズのアウトルックがネガティブに変更されたということを聞いたばかりで詳細は知らないが、先にS&Pが1ノッチ格付けを下げているので、ムーディーズがネガティブに変更した理由もおそらく同じではないかと思う。一つは、やはり国の債務残高が、国債や借入金等を含めて919兆円と、歴史的には一番高い水準になっていることへの懸念、これらの債務をどのように減らしていくかという、従来から言われている問題である。もう一つは、民主党の財政規律に対する不安というものがあると思う。この問題は政府も十分認識しているところであり、財政を建て直す以外に道はない。それを具体的にどう実現していくのか。景気が回復すれば税収も増えてくるが、今の状況は、国債の新規発行額が税収を上回るという、異常と言えば異常な事態がここ2年くらい続いている。こういう問題への具体的な対応は、すぐに効果が現れる訳ではない。政府も十分認識しているように、中期的・長期的なターゲットをしっかりと定めて、それに向けて具体的にどうやっていくのかを考えなければならない。一方で、税と社会保障の一体改革の問題もあり、それも含めてスピード感をもって対応していかなければならない。それについては、政府が6月までに具体的な対応を打ち出すということなので、是非それをやっていただきたい。ただ実際には、今の国会の状況を見ていると、そこまでたどり着けるのかなというイメージがあるので、そういった点も、格付けの見通しが変更された理由になっていると思う。
 二つ目の質問についてであるが、ご承知のとおり、銀行界全体で見れば、貸金が減って預金が増えており、確か新聞報道によれば、昨年、大手銀で13兆円程度預超幅が拡大したという話が出ていたが、個別行としてもそのような状況だと認識している。こうした預超状態のなかで、何で運用をするかということについては、それは各行各様のやり方で対応しており、メガバンクに限らず、地域金融機関においても、そうした状態の下で対応を図っている。
 しかしながら、国債だけに投資するということはマーケットリスクだけをとるということになる。これを今度はいかにクレジットリスクに変えていくかということになるが、クレジットリスクについて言えば、国内では非常に資金需要が弱い。一方、海外に投資する場合には、コストを考えないといけない。このように、国債への投資リスクをALMの中でしっかり管理してミニマイズしていくのと同時に、マーケットリスクをクレジットリスクにいかに変えていくのかということを、我々金融機関は考えなくてはいけないのではないかと思う。各行においても、十分なリスク管理と収益のマキシマイズをどう調整していくのか、ある意味で現在の大きな課題であるということは十分認識している。


(問)
 中東情勢の緊迫感に伴い、原油価格がここ数日急騰している。かつて経験した100ドルを突破しているという状況がまた発生している。足許、中東情勢をどのように見ているか。これが続くような場合、原油価格と国内のマクロ経済との関連について、どのような懸念を持っているかお聞かせいただきたい。
(答)
 中東情勢の隅々まで精通しているわけではないので答えが難しいが、今回の中東で起きている問題の引き金が一体何なのかといえば、それは長期政権に対する一つの反対運動であり、自由化の運動であるという側面に加えて、もう一点は、経済情勢として、茲許、食料・原油などの資源価格が非常に高くなってきており、これにより、市民生活のなかでインフレが進んできていることが指摘できる。
 こうした二つの要因があり、今後、当該国で事態がどう動いていくのかを見通すことはなかなか難しいが、これらの問題が同じような体制を持っている国にいかに飛び火していくのかということも、大きな懸念材料であると個人的に見ている。非常に極端な言い方をすると、20年前のベルリンの壁の崩壊のように周辺まで波及する事態にまでなるのか、すなわち中東のなかのイランまでそうなるのか、またはラテンアメリカまで行くのか。インターネットが非常に発達し、情報が瞬間的に行き渡る今日の状況下で、今後、どういう動きが出てくるのか大変読みにくい。どこまでの拡がりを見せるのかは今のところ正直言ってわからない。
 ただし、経済的な観点からみれば、今、問題が起きている地域は、ご指摘のとおり、原油その他鉱物資源の豊富な国であるので、こうしたところでの政変、政治情勢の不安定化は資源価格の上昇に結びつく可能性が高い。それが長期に継続するということになると、脆弱な経済基盤を有している国、さらには、今、高成長を遂げている新興国にも大きな影響を与える可能性があるので、この辺は、我々は十分注意して見ていかなくてはならないと思っている。また、こうした問題が先進国の経済にどのような影響を与えていくかも見ていかなくてはいけないと思うが、今の先進国経済から見ると、それがインフレに直接結びついていくという懸念は低いのではないかと思う。ただし、現在は、こうしたインフレ懸念を映じた「悪い金利上昇」というよりは、経済が自律的な回復に向かいつつある中で「良い金利上昇」に向かっていると考えられるわけだが、これにどういう影響を与えるのか、どちらの方向への影響を与えるのか、良く見極めていく必要がある。非常に判断の分かれるところではないかと思う。


(問)
 先だって自見金融担当大臣から、政策投資銀行について、金融のあり方としてどう考えるかということに関して、「11年度末までを目処に検討する」とし、「官民のベストバランスを取ることが大事だ」との回答があった。「財務省内で検討すると承知している」という答えであった。まず、この大臣の発言をどのように受け止められるか。会長として政策投資銀行は、民間と思うか官業と思うか、どちらと思っておられるかお聞きしたい。また将来的に、政策投資銀行はどうあるべきとお考えになっているか、お聞かせいただきたい。
(答)
 自見大臣の発言の要旨はわかったが、前後の文脈がわからないのでお答えが難しい。政策投資銀行の生い立ちは官から始まり、一時、民営化ということで舵が切られて、それがリーマンショックの後、いわゆる緊急対策や危機対応の担い手として、やはり政策金融としての役割が重要であるとのことから、仕切り直してもう一度議論しましょうということになっている。したがって、これから始まる議論を注視して行くということである。
 正直に言って、民として業務を行っていく場合の調達の問題とか、すなわち、今はボンドなどで調達しているが、預金で調達する銀行の形態になるのか、といった姿はまだわからない。ただ、原則は、官は民の補完であるということであり、民にできないことだけを行い、民の補完としての役割に徹するべきであるということは全く変わらない。銀行界としての考え方はそういうことである。したがって、民と官を混ぜたような曖昧なハイブリッドの形は考えられない。民の方向に向かうのであれば民で良いし、官としてやっていくのであれば必要最小限の業務に絞ってやってくださいというのが、私ども金融界の意見ということになると思う。民と官を混ぜた形ではなく、何をするのかということを中心に議論していただきたい。


(問)
 政府が進める税と社会保障の一体改革の一つで、共通番号制度についての質問だが、現在銀行口座を通じた所得捕捉を念頭に議論が進められている段階。現時点で、制度のあり方や預金者への影響等について所見を伺いたい。
(答)
 私も民間の共通番号制度の推進団体にメンバーとして加わっているが、基本的には、税の分担の公平性という立場から考えれば、共通番号制度はあった方がいいと思う。金融界としても異議を唱えているわけではない。ただ、よく議論しなければならないのは、何故今必要なのか。民間にどういうメリットがあるのかということ。政府側の便利さだけではなく、それをやれば民間にもどういうメリットがあるのかを十分説明していく必要があるのではないかと思う。また、制度を受け入れる金融機関においては、システム開発等に非常に時間がかかるので、方針を早く決めて、一定の期間を置いて、具体的に詰めていくやり方をしなければならない。
 同時に、何を共通番号にするのかという議論も必要。世界でもいろいろな共通番号制度がある。アメリカの場合だと、ソーシャルセキュリティナンバー(ID)だが、日本の場合は住基ネットの番号かもしれない。共通番号として何がいいのかということを議論しなければならない。
 しかし、それより前に必要なことは、繰り返すが、何故必要なのか、利用者にどういったメリットがあるのか、何故今なのかという疑問にしっかりと答えていくことだと思う。


(問)
 三点質問したい。
 一点目は、日本政府の格付け見通しのネガティブ変更に連動して、本日1時過ぎに同じムーディーズが日本のメガバンクグループに対する格付け見通しをネガティブに変更している。理由としては日本政府に連動しているということと、ストレス状況下での政府による銀行セクターへのサポートの想定を反映したものとされているが、率直にそれに対する受け止め方を教えて欲しい。
 二点目は、先ほど話があった国債の件であるが、大きな課題であると認識しているということであるが、10月に長期金利が上昇してから、その後も、日本の銀行の国債の保有残高が増え続けていると思うが、他に有効な運用方法はないと考えている面もあるのかという見解を伺いたい。
 三点目は、貸付に対する見通しであるが、個別行のことでも結構であるが、景況感の改善をもとに銀行貸出がまた上向くという一部の観測もあるが、会長自身はどのように考えているか教えて欲しい。
(答)
 一点目の格付け見通しの見直し理由の詳細は認識していないが、日本の国債のアウトルックをネガティブにしたから、銀行のアウトルックもネガティブにするというのは、理解に苦しむ。現在の状況下で、相当な事態が生じたとしても、今の日本の銀行であればシステミックリスクを惹起するような状況にはならないと思われるし、今、アウトルックをネガティブにするような格別な理由や見通しがあるとは思えない。国債と同時に、銀行のアウトルックも引き下げたことは理解に苦しむというのが正直なところである。
 二点目については、一つは、国債投資については、デュレーションを十分に考慮して、リスクの小さいものに投資している。たとえば、デュレーションの長いものから短いものに切り替えたり、保有期間を工夫したり、ボラティリティの低いものに投資したりと、国債投資の中でもいろいろな運用の仕方があり、それがまさにリスク管理、ALMの一環である。私が先ほども触れたとおり、リスクのないところに収益はないわけであり、それをクレジットリスクに変えられないのか。ただし、クレジットリスクに変えるといっても、国内に資金需要がないから、国内の円を海外にもっていくということはどうなのか。それは、為替の観点から言えば、円の売り/ドルの買いということになるかもしれないが、そういったことも一つのアイデアとしてはあるかもしれない。
 一方で、国債から、他のクレジットリスクとマーケットリスクの両方を含む証券での運用に切り替えるのかということになると、今の極めて不透明・不確実な環境の中ではなかなか難しい。したがって、基本的には、国債投資において、デュレーションを考えながら、そこでキャリーの収益を稼ぐ、または相場見通しによって金利が下がる見込があるのであれば少し持ってみるとか、各金融機関が自らのポジションの中でどう運用していくか判断している。繰り返すようであるが、クレジットリスクとマーケットリスクが混在しているような証券に運用することが今いいのかどうか、国債投資の方がいいのではないか、あるいは、完全にマーケットリスクからかけ離れたようなクレジットリスクのみの商品がいいのかどうか、さらには、ドルやユーロに転換する際には当然為替のヘッジコストがかかるので、それも含めて収益が上がるのかどうかということなどを、各行が十分に検討している。単純に国債を購入しているのではなく、いろいろな検討を行ったうえで投資している。
 三点目の貸付については、企業の業況感、景況感は徐々に上向いてきているが、国内銀行の貸出は15ヶ月連続で前年比割れという状況が続いている。その背景として、キャピタルマーケットが、リーマンショック後は大変な状況にあったものの、回復傾向にあるなかで、日銀の様々な包括的な金融対策などにより、いわゆるリスクプレミアムが縮小してきていることもあり、資本市場から調達する企業が多くなってきている。こういう状況にもあるので、貸金の先行きについては、底這い状況になりつつある現状から、反転するかといえば、この先半年ぐらいはそのような状況はなかなか見通せないのではないかと個人的には考えている。


(問)
 国際会計基準審議会(IASB)の日本人の理事として住友商事の鶯地(おうち)さんが内定したと発表されているが、改めて国際会計基準審議会に期待することなどがあればコメントをいただきたい。
 もう一つ、業界が違うが、アルジェリアで高速道路建設の未払金の問題が起こっていて、日本のゼネコンにも影響があるのではないかという懸念が浮上しているそうだが、そのあたりの個別の事情でも構わないし、先ほどマクロでの話はお伺いしたが、一般的な話として、新興国あるいは中東、アフリカで投資していかれるなかで、事業法人もしくは金融機関として進出していくことに係るリスクをどう捉えていくべきかということの見解があればお聞きしたい。
(答)
 国際会計基準審議会については、全銀協は従来から、要望・意見書を出している。基本的には国際会計に係る問題については、我々として引き続き言い込んでいくということに変わりはない。
 アルジェリアについては、確かにゼネコンが工事をいろいろとやっているなかで回収が長期化しているケースがあるとは聞いている。個別の会社の話なので、ここでは具体的な話はしないが、資金の回収というものについて、いろいろ交渉をしておられると思うし、その状況を見守っていくという以外にはないと思う。現在の状況が今後どういう影響を与えるのかということについても、今ここで何か情報を持っているわけではないので正直言って分からないが、大きな混乱になることはないのではないかと思っている。


(問)
 日中のGDPが逆転したことが確定し、海外のレポートでは近い将来にアメリカをも中国が抜くのではないかということを言われ始めている状況だが、日中逆転と中国の今後のGDPの成長についてお考えを聞かせていただきたい。
(答)
 これまで日本も成長するなかで、GDPの規模において、様々な国を追い抜いてきたわけであり、成長する国があれば、それに追い抜かれる国もある。今のトータルとしての経済力を考えればやむを得ない。問題はやはり国としてのクオリティであり、それからパーキャピタルでみた生活の程度、つまり個々の人々の生活水準の高さということであるだろう。また、日本のようにずっと世界2位でいた立場から考えれば、製造業の技術力とか、生活水準、勤労意欲といったトータルとしてのクオリティを維持していくことが非常に大事ではないかと思う。(中国については)人口が多く、各々が所得を産み出せば、当然その掛けた総和であるGDPは大きくなってくるわけだし、別に日本が中国に抜かれたことがそれぞれの人々の胸に非常に大きなマイナス要因になってくるかといえば、そういうことはない。だから日本は自信を持って日本の良さというものをさらに強くしていき、そしてクオリティを高めて、アジアの中の成長国とともに発展していくということ、そして、やはり先進国の大きな一国であることから、そこに矜持を持って先進国との関係もしっかりと維持し、協力し合っていくということが必要だと思う。決して3位だからどうだということではないと思う。