2011年3月22日

奥会長記者会見(三井住友銀行頭取)

和田専務理事報告

 事務局から2点ご報告する。
 1点目は、日本経団連環境自主行動計画「循環型社会形成編」に係る数値目標の設定についてである。
 日本経団連では、2015年度を目標年度とする新たな計画を策定し、参加団体に幅広く協力を要請している。これを受け全銀協では、本日の理事会において、2015年度における「再生紙および環境配慮型用紙購入率を75%以上とする」ことを決定した。
 2点目は、「銀行におけるバリアフリーハンドブック改訂版」の作成についてである。
 お手許にお配りしているのは、18年3月に作成した「バリアフリーハンドブック」の改訂版であり、「誰もが利用できる銀行」を目指し、銀行員が銀行窓口で活用していくことを目的としている。視覚障害者団体等さまざまな障害者団体から、ご意見ご要望をお聞きし、作成した。
 事務局からの報告は以上である。
 なお、23年度の新全銀協の役員については、奥会長からご説明いただく。

 

会長記者会見の模様

 

 まずは、この度の未曾有とも申すべき大震災に対する全銀協の危機対応について話をさせていただく。
 この度の未曾有の規模と範囲において発生した東北地方太平洋沖地震と津波によって尊い命を落とされた方々に対して衷心よりお悔やみ申しあげる。同時に、ご家族、家屋を失われ、また原子力発電所の問題を含めて被害を受けられ、避難生活を送っておられる方に対して、深甚のお見舞いの言葉を述べたいと思う。
 現在、わが国では政府を始め、国を挙げてこの危機を乗り越えるべく、それぞれが持ち場において全力で取り組んでいるところであるが、我々銀行界としても一刻も早く復興ができるように可能な限りの支援をしていく所存である。
 そうしたなか、みずほ銀行の西堀頭取のほうから、昨日、「現在の諸情勢を踏まえ、現時点での全銀協会長交代は望ましくないと思うので、交代時期の延長、延期をお願いしたい」という申し出があった。この申し出に対して、私の一存では返事はできないので、全銀協の主要理事とも相談したところ、「現下の国難とも言える大震災の情勢を勘案すれば、全銀協の現行体制をこのまましばらく継続することが、この危機を乗り越えるのに必要だ」という意見もいただいた。
 ルールの面から申しあげると本来交代すべきところではあるが、今回の大震災はこれまでのものとは異質・異次元ともいうべき、また想定を超える危機だということも言えるかと思えるので、全銀協としても、会員行が一体として対応する必要があるという認識に至り、金融庁とも相談した結果、当面、3ヶ月くらいというふうに考えているが、現行体制を維持させていただくことで、本日の理事会でご了解をいただいた。
 微力ながら今後数ヶ月、危機対応に対して、特にメディアの皆さま方に我々もしっかりと発信していくが、同時に皆さま方もこの金融という非常に大事なファンクションへのご理解、そしてサポートを是非お願いしたいと思う。
 繰り返すが、一定の期間である程度落ち着きが見られたところで、予定どおりみずほ銀行にバトンタッチをするつもりである。


(問)
 先々週、残念なことに大震災が起きてしまった。戦後最大とも言われる災害の中で日本経済全体と銀行経営を含めた銀行界への影響をどのようにご覧になっているか。また、全銀協として震災にどのように対応をしていくのか。
(答)
 日本経済への影響ということであるが、私は三つの段階に分けて整理して考えている。第1ステージというのは、現在、被災に遭われた方、行方不明の方の「生命を確保する」ということが、第一である。そのためにまさに自衛隊、警察、消防、またボランティアの方、各都道府県、もちろん国を挙げて全力を挙げているところだと思っている。この間は、正直言って、被害の程度とかそういうものは想像にしか過ぎない。これが、第1段階ではないかと思う。
 物事が第2ステージに移ると、これにどのくらいの時間が掛かるか分からないが、1ヶ月程度経ってくると、震災による「経済的な被害」というものが段々明らかになってくると思う。被害総額が出てくると次の復興の対応というものが出てくるということである。
 第3ステージになると、その経済的な被害に対して、それぞれの企業、国、都道府県がどう対応していくのか、「復興の需要」に対してどういうふうに資金面で対応していくのか、ということが議論されるようになると思う。
 市場では、第1ステージで状況がよく分からないなか、いろいろな動きがあった。長期金利は、一旦下がった後、少し戻っているが、まだ見極めようとしている。それから、為替は、これだというものはないが、円の資金を作るために外貨を売ったとか、円キャリー取引を解いたとか、それに乗って投機筋が動いたとか、いろいろな要素があって、通常であれば円安というようなシナリオになるところが、円高に動いた。その後、協調介入が効果を奏して、今日で81円くらいまで戻っている。また、株価は一番乱高下しているわけだが、一旦大きく2千円近く落ちて、1万円台を割り込み、8千円の半ばまで落ち込んだ。それから次第に狼狽売りから現実を見極めて回復に向かっている。
 第2ステージになってくると、おそらく被害の額というものが算定されるので、具体的には、たとえば、個別企業の問題がクローズアップされてくるかもしれない。したがって、特に、株価という面で見ると、いろいろな動きが出てくるかもしれない。
 第3ステージになってくると、復興需要の資金をどうしていくか。一部特別の税金というような時限を区切った税というのは他の国でも見られるし、それから阪神淡路大震災のときにもそういう議論もあった。それから、財政の出動もあるだろう。そういう時の足かせとなるのが、やはり国の債務が増えるということであり、長期金利がどう動くのか。このバランスを本当にうまくマーケットと対話しながらやっていかなければ、いわゆる良い金利の上昇というものから、悪い金利の上昇のほうに変わりうる要素が出てくるかもしれない。したがって、その辺の復興需要に対する資金の手当て、ここがポイントになってくると思う。
 地震自体の日本経済への影響ということであるが、一般的に、マクロ的に見れば、東北の被災の影響の大きい県と茨城県の5県で日本のGDPにおける比率というのは、聞くと7%くらいだということ。しかし、そういったGDPの問題というよりは、私は今回、エネルギーの問題が、今後の日本経済に大きく影響を与えてくると思う。もともと油がこのところ中東の問題をはじめ高くなっていたが、この要因に加え、今回の地震の影響による製油所のキャパシティの問題、これがひとつ。それから、最大の問題はやはり電力だと思う。電力について、巷間言われているが、2~3割くらい供給量が落ちた状態が続いている。これは、東北地方だけの問題だけではなく、東京電力そして東北電力の管轄する地域全体ということになってくるので、電力不足ということで日本のGDPの中で非常に大きなウェイトを占めるこの管轄内での生産活動、製造活動、こういうものが低下するということになる。この部分の影響はかなり見ておく必要があるのではないかと思う。特に電力の問題というのは、すぐには復旧できない。西から東へ簡単に持ってくることができない。それから現在停止している発電所をすぐに起動させることもできない。それでも限界的には、完全に復旧するような、現在の不足をカバーするような状況ではないということなので、この影響は非常に大きい。特に長期化する可能性があるということでもあり、影響は大きいと思っている。
 銀行業界ではどうだ、ということになると、これは現在の状況では分からない。特に銀行業界の一般的なことを言うと、今回の直接的な被害を受けた地域に支店・本店が所在するがゆえにダイレクトに影響を受け、そして、お客さまはその地域の方がほとんどだというところは、相当の打撃を受けるだろう。銀行業界全般ということになると、そういった地域の偏りがあるので、これはどうだとは言えない。共通して言えるのは、今後のマクロでの経済の減速というものに対してのクレジットの劣化というのが、一つ目として考えられるかと思う。二つ目は、株価次第では、期末であることから減損という問題も出てくるかもしれない。そういったことは、一般論としては言えるが、やはり東北・茨城の地震、津波、そして原発の影響、これはやはり実態をまだきちんと掴んでいない。先ほども第二地銀協の会長行とも話したが、正直言って相当の影響を受けているところもあり、現在、その実態を把握中ということである。地域的な偏りはあるが、その地域では相当の影響が出ていると思っている。
 全銀協として何をしてきたかということであるが、3月11日に地震が発生したあと、自見大臣、それから日銀の白川総裁のほうから、こういった危機に際してしっかりした対応をしてくださいという要請があった。それに対して、私どもは今までのいろいろなケースでの知見を活用し、災害に対する金融上の措置というものの要請に応えるべく、被災されている方の当座の資金が必要だということで、預金証書とか、通帳とか、届出の印鑑とか、そういうものを例えば紛失された場合でも、本人の確認さえできれば、上限を決めて払い出しを行うといったことや、定期預金の期限前解約にも応じるといったようなかたちで対応するように会員各行に要請をしてきている。
 今後、これから、第2ステージ、第3ステージへ入ってくるわけだが、被災された個人、法人の方のいろいろな新規融資の話もあるだろうし、借り入れの返済の話もあるだろう。また、手形交換において、交換所自体が機能しなくなっているところもあるから、そういうものに対してしっかりと体制を整えるように要請をしている。まだまだ、これからという感じがするが、前回の阪神淡路大震災の経験から得た知見を踏まえて、こういった個人、特に中小企業、零細企業の対応について金融庁としっかりと連絡を取り、そして各地域の金融機関の要請を踏まえて、金融庁に要請をしていきたいと思っている。


(問)
 15日からみずほ銀行による大規模なシステムトラブルが発生しており、連休中は全部のATMが止まってしまうような異例の事態に発展している。個別行の話とはいえ、利用している顧客の中から決済機能に対する不安の声が挙がっているとも指摘されているが、今回のシステムトラブルについて、どのように受け止めているか。また、25日に給与の集中日が近く迫ってきているが、それに対して銀行界で、どのような対応が考えられるのか。
(答)
 みずほ銀行のシステムトラブルについてであるが、私ども銀行にとってシステム、特に決済というのは、まさに命である。お客さまにとっても大変大事なインフラであり、決済を確実に行うことは銀行に課せられた責務であるというふうに思っている。よって、長期に亘ってお客さまにご不便をおかけしているということは、個別行の問題とはいえ、誠に残念だというふうに思っている。みずほ銀行におかれては、この連休中にかなり処理を済まされて、この会見の前に聞いているところでは、一応順調に復旧の過程にあり、今後一日も早く安定稼動になるということを願っている。
 そういうなかで、そのほかの銀行としても、協力すべきことはしっかりと協力し、支えあっていくということで、いろいろと検討をしてきた。昨日もたしかメガ3行を含む各行のシステム関連の担当者が集まって、やれるべきことをいろいろと検討してきた。いずれにしても、こういう事態が起きたことは誠に申し訳なく思うが、同時に今後こういうことがないような措置をしっかりと考えていかなくてはならないと思っている。
 ただ、余計なことかもしれないが、やはりシステムというのは、バックアップをとったり、容量を見込んだり、何重にもいろいろと手当てをしているが思わぬことが起きる。こういうリスクに対して、銀行のリスク管理(はあっても発現)と同時にお客さまに迷惑を掛けてしまう。何かそういうことも、これからこれだけ、そのいろいろなリスクが絡み合ってくると、お客さまのほうもこういうことに対するリスク管理というものをお考えいただくようなことが必要になってくるのかなと、これは個人的な見解であるが、そういう感じを持っている。
 いずれにしても、ご不便・ご不安をお掛けしたことを同業者としても深くお詫び申しあげたいというふうに思っている。


(問)
 お客さまが考えるリスク管理とは、具体的にはどのようなことを想定されているのか。取引先銀行を複数持つとか、銀行をできるだけ利用しないようにするとか、具体的に教えていただきたい。
(答)
 メインの口座と別にもうひとつ決済口座を持つとか、そういう方法もあるかと思う。私が言っていることは、今回の事象に限ってのことであり、皆さんがいろいろ取引をしていくうえで、まだまだ他にもあるかもしれない。まずは、銀行としてはそういう不安がないように、十分な容量を持ち、バックアップを取るということが重要。ただし、現実に起きている事象から見れば、そういう方法も考えられるのかなと思う。


(問)
 震災を受けて財政問題とか債務が増える可能性があると、会長は指摘されたが、つまり国債の増発も予想され、それが10兆円規模とも言われているが、市場では消化しきれると思うか。政府は不要な予算を削って復興対策にお金を廻して、国債発行を抑える必要はないのか。もし万一、国債を増発した場合、銀行は国債買いを加速することになるのか、ご見解を伺いたい。
(答)
 私がお答えする話ではないが、国債の増発だけに頼ると、いろいろな影響があるとすれば、他の財源を作っていかなくてはならないと思う。国債の増発というのは、シナリオとしては当然ありうるが、マーケットに大きな影響がないようなかたちで、どのように消化していくかを考えなければならない。そして、他の財源の捻出を政府、行政が最大の知恵を出して考えていく。そのうえで我々被災を受けていない人間も、復興への傷みをどのように分かち合っていくかを考えなくてはいけないと思っている。
 繰り返しになるが、国債以外のやり方もいろいろ考えなくてはいけないと、私は申しあげている。国債だけで対応していくということになると、新型の国債をつくるとしても、国内だけでどこまで消化が可能なのかというマーケットの問題がある。したがって、先ほど触れたが、単純に消費税と言わずに、新たな財源としての課税を考えるとか、または子ども手当の問題や高速道路の問題とか、いろいろ財源を考えることが必要ではないか。そういう話が出ている。財源を、いままでの財政の中で捻出できるものと、新たに時限を区切って対応するものと切り分ける等のアイデアが、これから政府で当然議論されていくと認識しており、私は国債だけで対応するということにはならないと考えている。


(問)
 3点質問したい。
 1点目は、被災地以外でも、例えば観光地でお客が急減したり、あるいは被災地向けの仕事を扱っている企業で売上が急減するなど、資金繰りが急速に悪化している中小企業が増えているそうである。政府では、リーマン・ショックの時と同じような対応策を検討し始めているようだが、民間金融機関として資金繰り支援というのはどうお考えか。被災地と被災地以外で別建てであるのであればそれぞれについて、一般論あるいは三井住友銀行としてとなるかもしれないが、お考えをお聞かせいただきたい。
 2点目は、被災地の状況について、先ほど第二地銀協会長との会話があったとのことだが、被災地での金融機関の活動でどんな支障が出ているのか、ご存知の範囲で教えていただきたい。
 3点目は、被災地向けの救援、金融機関向けおよびそれ以外の被災者も含めてだが、一部の傘下の協会では、救援物資を運び出すといったことを始めているようだが、銀行界全体としてどういう活動をしているのか、把握している限りで教えていただきたい。それに関連して、義援金について、銀行界あるいは個別行としてどうお考えなのか教えていただきたい。
(答)
 最初に3点目からお答えする。地震が起きてすぐ、宮城県所在の銀行から全銀協に緊急生活必需品を送ってほしいという要請があり、水・乾パン・缶詰類の食料を第一陣として送っている。一般的に、次第にサプライチェーンが復活してくる中で、今後も同様の要請があるかは分からないが、まずこの1週間震災が起きた時、すぐにそういう動きをしてきた。当然要請があれば、引き続き地域の各金融機関に対して緊急物資の供給を行っていく。
 義援金については、全国銀行協会で取りまとめるという機能はないので、各金融機関の判断にお任せしているが、新聞にも出ていたように、各銀行が早い段階から義援金を出すことを表明している。3メガではとりあえず1億円ずつ出している。いわゆるフィナンシャルグループ単位となると、それからさらに上積みがされて、先ほど聞いた話では、他のグループでは5億円程度という話を聞いたが、SMFGでは今までで3億円程度出している。あくまでもそれぞれ各行の判断であるが、メガという言葉を使うことをお許しいただければ、3メガが1回目に出したのが1億円ずつであり、これからの状況によってはグループ等で上積みされる可能性はある。
 2点目の質問の被災地の状況は、正直申しあげて、まちまちなのでよく分からない。地方銀行、第二地銀、信用金庫、信用組合といった地域の金融機関がどのような状況にあるのか、今、政府・日銀がその実態把握に大変時間と労力を費やしておられると思う。例えば、その地域に本店しかない一つの信用金庫が津波に流されたというケースもあり得るし、原子力問題で避難を強いられている地域に一つしかない信用金庫もしくは信用組合が全て退避しているが、そこの営業をどのように考えるか、というケースもある。地方銀行においても、岩手県・宮城県・福島県・茨城県それぞれで被害の規模も違う。それから、手形交換所は、通常その地域の銀行の本店もしくは支店にあるが、流されたり被害に遭ったりした結果、機能しなくなっている場合もあり、それをどこかに集中させて機能させるとか、そういった問題も含め、「こうだ」ということではなく、いろいろなことを考え想定し、全銀協としてできることをしっかりやっていかないといけない。地銀協・第二地銀協そして私ども全銀協が金融庁・日銀と意思疎通していきたいというのは、その辺にあるとご理解いただきたい。
 それから、一番目の質問であるが、日本の場合は、どうしても災害があった時には、被災地以外でも、たとえば「観光地なんか行けるか」あるいは「遊びに行けるか」といった気持ちが生じるだろうし、「ゴルフどころではない。被災者のことを考えれば、当然自粛すべきである」、「お酒を飲んでいる場合ではない」というような心境が働くことがあると思う。それらに加えて、昨今では、サプライチェーンというものが非常に複雑になってきている。根幹は何箇所かにあるのだが、そこへの供給ルートについては、中越地震の後のいろいろな教訓から分散してきており、非常に複雑になってきている。特に自動車関連、半導体・電機業界について、そのような状況にある中で、その部分がなかなか復活してこないということになると、電気が落ちて正常な操業ができないうえに、物が正常に入ってこないことになり、道路(物流)の問題、工場の再建の問題というのが、相当なボトルネックとなり、この問題は非常に大きいと考えている。
 そして、資金繰り問題については、被災地に対して、我々は阪神淡路大震災の経験があるし、ほかの地域に対しても当然のことながら、いろいろな中小企業向けの特別融資などを相談に預かるように言っている。また、中小企業庁からは、災害関連の別枠保証や、小規模向け設備融資資金の償還期限の延長などについても、即座に公表している。一方、前回の景気対策としての緊急保証が3月に切れることが1月に発表されているが、同時に経産省(中企庁)ではセイフティーネットの保証対象を広げていることもあり、そういったことも今回活きてくると思われる。今後、我々民間としても、当然、中小企業金融について努力していく。
 また、金融円滑化法のもとでのいろいろなコンサルティング業務というものがあるが、それらを含めて、被災した地域などに対して、きっちりとやっていく。片方では、官の制度融資も必要であり、まさに官民あげて中小企業の融資については、できる限りのことをしていきたいと思っている。
 ただ、現実は、その前の段階にある。「工場が流された」、「担保がなくなっている」、「人がいない」という状況にあり、まず探さないといけない。地域の金融機関も同様。メガバンクも例えば当行についても東北地方で千数百億円のエクスポージャーを持っているわけであり、平行してそれらの一つ一つの確認をしていくことが大変になってくる。今はそのために「車が通らない」ので「自転車・徒歩で行く」といった段階である。


(問)
 被災地についてはそのとおりであるが、観光地や飲食店などは、資金繰りで給与も払えないというところが実際に出てきている。先ほどの話の中で、特別融資があるということであったが、どのようなものであるか、具体的にお聞きしたい。
 それから、金融円滑化法については来年度分については国会にかかったままで、棚ざらしになっている。年度末で切れてしまうが、審議に銀行界としての立場があるかということと、もし切れてしまった場合、どういった対応をするのか。その結果、急に貸出条件が厳しくなったりすると、相当現場が混乱すると考えられるが、それについてはどのように考えているか。
(答)
 特別融資の具体的なものについては、後ほど(事務局が)お話しする。
 金融円滑化法の問題は、たとえ3月末に通らなくても、我々はその趣旨をしっかり踏まえてやっていく。これは、全国の銀行が同様だと思う。元々、我々は延長に対して一応の注文をつけたが、実施することに対して注文をつけたわけではなく、むしろ報告等の軽減を求めたわけである。中小企業金融というものは我々にとって、大変大事なものであるので、そこは何も変わらない。
 どこまでが被災地関連かという問題もあるが、一般的な売上の減というものは別に大企業も中小零細企業も変わらないことであり、やはり現在の状況を踏まえて、より親身になってしっかりと対応したいと思っている。


(問)
 3点伺いたい。1点目は、25日の給与振込集中日の対応について、みずほ銀行からの要請というのは、具体的にどういうものだったのか。そして、要請を受けた各行としては、どういう対応が可能なのか。2点目は、今回のトラブルの原因について、みずほ銀行から報告はあったのか。3点目は、同じメガバンクのトップとの立場からお答えいただきたいのだが、今回のようなトラブルは、他行でも起こりうることなのか。
(答)
 まず、1点目であるが、25日の対応について、みずほ銀行から具体的な要請はない。ただ、昨日、メガ3行や(各業態の代表を含む)各行で集まり打合せを行い、その結果として、全銀協で『月末にかけての振込等の早期持込み等のお願いについて』とのリリースを出している。内容としては、振込は25日に集中してお持込いただくのではなく、早めに対応してほしい。それから、各行に分散できるものであれば分散していただきたい。そうすることによって、みずほ銀行への集中を避け、容量をできるだけ空けてあげるというような話をした。


(問)
 振込というのは給与振込のことか。
(答)
 基本的に、25日は給与振込が多いが、その後、月末、年度末に向かうのでそのことも頭に入れている。企業の決済も含めて、いろいろなケースを想定して、メガバンクと地銀等(の各業態の)代表行で協議をしたということである。
 次に、2点目の原因についての報告だが、現在究明中と認識している。まさに今、火事が起きているわけだから、みずほ銀行にとっては、当然、火事を消すことが大事なことである。したがって、原因の究明はこれからだと思う。原因についてのご報告は、特になかった。昨日の記者会見でどう言われたのか、こちらでは認識していないが、触れておられるのであれば、その辺から原因究明がなされると思っている。
 3点目の、他行でも起きるかということだが、原因が分からないのに起きるかどうかわからない。原因とその因果関係をぜひ教えていただいて、我々も参考にしたいと思っている。ただし、先ほど申したように、システムというのは完全を期しているが、人間のやることだから、ちょっとしたことでも、機械が受け付けてくれないということが時々ある。そのような状況への対応というのは、常々考えていかなくてはいけない。システム構築に関して、当然、ベストを尽くすが、保守、メンテナンスなど、多くの問題がある。それから、我々も経験があるが、土日にシステム改定をやると月曜日にシステムがスローダウンするということがある。作り直したシステムとの親和性や相性の話もあるようで、計算上はできていたし、容量もある、通行量も大丈夫です、とやっていても実際にやるとうまくいかないことがある。したがって、こういうことは起こりうるのですか、と言われたら、私どもとしては、「現在は起きていません」と申しあげるしかない。ただ、同じような事態が起きないように、ぜひ原因を教えていただいたうえで、万全を期したいと考えている。


(問)
 人事の関連で確認したい。現行体制を引き続きというのは、かかる震災緊急時に対応してということだが、具体的に次期会長の就任を延期させるというのは今回のみずほ銀行のシステム障害も考慮してということでよろしいか。
(答)
 そういうこと(での申出)である。メインは今回の震災対応のことであるが、加えて現在のみずほ銀行の立場で(システムを)安定させるのが優先順位であろうということで、そういうことも含めてご依頼があったと私は理解している。


(問)
 人事の件でリリースを見ると、奥会長のところだけ肩書きが白紙になっているが、これは1月に発表した三井住友銀行の人事異動を踏まえて白紙になっているのかこの意味を教えてほしい。
(答)
 4月1日で私は頭取を譲るので、銀行の代表者ではなくなる。本来は銀行の代表者が会長になるのが通例だが、今回は緊急時ということもあり、願ってなるわけではないのだが、銀行の代表者以外である私が会長に就任する。具体的に言うと、全銀協の理事には、銀行の代表者以外の理事という枠が4つある。4枠のうち2枠については、既に和田さんと髙木さんが理事に就任している。その残りの枠を使い、私が4月1日付けで理事に就任したうえで、会長になるということである。ややこしい手続きを踏むわけだが、ご質問にあった肩書きがないというのは、SMBCの会長としてなるわけではない、頭取としてなるわけではない、ということである。

別添資料:奥会長記者会見(三井住友銀行頭取)