2013年10月17日

國部会長記者会見(三井住友銀行頭取)

和田専務理事報告

 事務局から2点ご報告する。
 1点目は、本日、三菱東京UFJ銀行の平野頭取を次期会長に推薦することが、理事会において了承された。来年の理事会での正式な選定手続きを経て、4月1日付で就任予定である。
 2点目は、本日の理事会において、お手許の資料のとおり、全銀協の金融経済教育活動の推進について対応方針を取りまとめた。対応方針では、「社会人として経済的に自立するための生活スキルの習得・向上」、「利用者保護の推進・投資家責任に係る環境の整備」、「家計による投資促進を通じた日本の成長分野への資金供給の拡大」の観点から、特に、大学生、社会人、高齢者等を対象に取組みの強化を図ることとしている。
 事務局からの報告は、以上である。

 

会長記者会見の模様

 


(問)
 2問お伺いしたい。まず1問目に、消費増税について伺いたい。政府は、来年4月の消費税率引上げと同時に、5兆円規模の経済対策実施を決定した。これに対する評価と、消費増税に伴うATM等各種手数料等への増税転嫁について業界としてどのようにお考えなのか、会長のご所見をお伺いしたい。
(答)
 今回の政府の決定については、消費税率引上げによる景気の腰折れのリスクを回避するとともに、自律回復力強化に向けた足がかりになるものとして高く評価したいと思っている。ポイントを3点申しあげたい。
 まず第一に、消費税率引上げが先延ばしにされず、財政健全化へ向けた取組みが着実に行われたことである。わが国財政に対する信認や、政策に対する予見可能性は維持されたと思う。その後公表された各種指標を見ていても、消費税率引上げを先延ばしにしなければならないような状況を示唆するものはないと思っている。
 第二は、短期的な景気下振れなどのリスク、あるいは低所得者層等家計部門への対策も手が打たれていることである。先月も申しあげたが、今、日本が取り組まなければならないことは、財政再建と経済成長をしっかりと両立させて進めていくことだと思っている。
 最後に、今回の「経済政策パッケージ」について申しあげると、5兆円という規模については、消費税率が3%引き上げられることによって、税収は約8兆円の増収になるが、その負担増による景気下振れリスクを回避するという意味では、妥当な水準ではないかと思っている。重要なのはその中身だが、設備投資減税等、企業活動の活性化を促すものが盛り込まれたほか、景気への即効性が高い公共投資についても、防災や社会資本の老朽化対策、学校施設の耐震化など、将来のためにもなる真に必要な分野の投資が組み入れられている。さらに、税率引上げのマイナス影響を最も大きく受けるであろう家計部門に対し、低所得者向けと住宅購入者向けの給付措置が予定されており、家計の一定の下支えも見込まれると思う。
 いずれも来年度予算と併せて具体化がなされる予定であり、今後、より実効性の高い内容になることを期待したい。
 ATM手数料などの各種手数料に関する消費税率引上げ時の対応であるが、これについては、協会で対応を決めるというようなものではなく、各行で判断する話である。現在、各銀行で検討されているところだと思う。私ども個別行としても、まだ方針について決定しているものはない。いずれにしろ、利用者の方々に、例えば消費税の表示方法であるとか、そういったことで混乱が生じないようにしながら、しっかり取り組んでいきたいと思っている。


(問)
 2問目をお伺いしたい。反社会的勢力排除に対する銀行界の考えと取組みについてお伺いしたい。銀行界はこれまで、業界を挙げて暴力団排除の取組みに取り組んできたわけだが、こうしたなかで発生した今回のみずほ銀行の提携ローン問題について会長はどうお考えか。またこの問題を受け、業界、全銀協としてこれまでの取組みを見直す余地があるのかないのかをお伺いしたい。
(答)
 まず、今回のみずほ銀行の提携ローン問題について、私の考えを申しあげたい。
 銀行界全体としては、反社会的勢力と決別をし、健全かつ適切な業務運営を確保することは大変重要な課題と認識して取組みを進めてきたところであり、その意味では、今回の事態は、非常に残念だと言わざるを得ない。
 銀行界に対する信頼を確保するためには、今後の対応が大変重要になる。みずほ銀行では、事実関係を調査したうえで、10月28日までに業務改善計画を発表し、本件に対する改善対応を着実に実施するというふうにおっしゃっているので、まずはそのとおりしっかりとご対応いただくことが大切だと思う。そのうえで、全銀協としてもやるべきことは当然あると思っている。
 少し、銀行界のこれまでの取組みについて説明する。まず、会員各行では、2007年6月の政府指針、これは、企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針であるが、その政府指針、金融庁の監督指針、および各都道府県が制定した暴力団排除条例等にもとづいて、反社会的勢力のデータベースを整備して、取引先等の反社チェックを行うとともに、警察当局と連携をしながら、契約書、約款等に暴力団排除条項を導入し、取引を謝絶、あるいは解約する等、様々な取組みを行ってきた。
 全銀協としても、会員各行の「共助」の枠組みとして、2010年4月以降、新聞報道等で公表された公知の反社会的勢力の属性情報を独自に収集し、データベースとして、これを会員各行に還元をしている。また、警察庁の反社会的勢力のデータベースとの接続についても、2010年以降、接続に向けた協議を行っているところである。
 こうした取組みは、いずれも反社会的勢力との関係遮断に資するものであり、引き続きしっかりと行っていく所存である。これらに加え、今回の事態を踏まえ、全銀協として、さらに何ができるのか、また何をすべきか、現在、検討を行っているところである。
 今回問題となった提携ローンは、銀行とお客さまの間に信販会社と加盟店が介在する、ある意味で特殊なスキームであり、検討に当たっては、特殊なスキームであることを前提に検討を進める必要がある。現在、みずほ銀行が調査を進められておられるところであり、最終的にはその結果も踏まえながら決定していくことになると思うが、現時点での方向性として5点申しあげる。
 第一に、先ほど申しあげたとおり、全銀協ではこれまで、反社会的勢力との関係遮断に向けた取組みを進めてきており、会員銀行の倫理的な行動規範である「行動憲章」においても「反社会的勢力との関係遮断を徹底する」旨を定めている。今回の事案のような特殊なスキームでも、この点が徹底されるよう、「行動憲章」を改定し、他社との提携により融資等を行う場合でも、反社会的勢力との関係遮断を徹底する旨を明記する。
 第二に、重大な反社会的勢力との取引が判明した場合、暴力団排除条項にもとづき、適切に対応するよう徹底していく。
 第三に、銀行が保有する反社会的勢力のデータベースを利用したチェックをしっかりと行うことが重要であるので、本スキームの提携ローンについても、必要な態勢整備を行うよう徹底したいと思う。
 第四に、入口である信販会社におけるチェック体制強化のため、全銀協が独自に収集して会員各行に還元している反社会的勢力のデータベースの情報を、信販会社等、他業態にも提供可能とするようにしていきたい。
 第五に、今回の事態を契機に、全銀協と警察庁のデータベースとの接続についても、警察庁、金融庁としっかりと協議させていただき、前向きに検討を進めていきたいと思っている。
 なお、これは全銀協としての取組みというわけではないが、大手信販会社がいずれも銀行系であるということを踏まえれば、親銀行と信販会社との間で、反社会的勢力に関する情報を共有するといった対策を進めることも重要だと思う。
 今、こういうことを考えている。いずれにせよ、みずほ銀行の調査結果や業務改善計画の内容等を確認したうえで、具体的な内容を決定していきたい。


(問)
 アメリカの債務問題で、今日、日本時間の午前中に、暫定的な債務上限の引上げ案を含む法案が可決されたが、与野党の対立で協議がすごく難航するなか、格付会社が米国債に対する信任に懸念を表するなど、いろいろと動きが見られた。会長は一連の動きをどのように見ていらしたのか、今回は根本的な解決ではない、ということも踏まえてお聞かせいただきたい。
 それと関連し、日本の金融機関は米国債を保有していると思うが、その保有状況はいかがなのか。今後削減するとか、そういった方針の変更はお考えか。
(答)
 今回の政府債務上限問題については、期限ギリギリで与野党が合意に至り、先ほどオバマ大統領が署名をされたということで、正直、ほっとしている。
 マーケットの大半の参加者もそうだと思うが、私自身も債務不履行という事態になる可能性は極めて低く、合意がなされると見ていたが、万一、債務不履行という事態になった場合には、市場、それから金融機関の運営についても大変大きな影響が出得る話だったので、合意に至って大変安堵しているという状況である。
 今回の一連のプロセスは、上院下院がねじれているという状況下、ある意味政治的な問題から議論が長引いてしまったということだと思う。アメリカの財政に対する信任確保という観点で、このようにギリギリまで解決が長引いてしまうということが今後ないように期待したい。
 ただ、先ほどおっしゃられたように、今回は債務上限の引上げが延長されたわけだが、根本的には、問題が先送りされた、という面もあることは否めない。来年秋の中間選挙までは、上院下院でねじれの状況が続くので、こうした政治リスクについては、引き続き注意をしていかなければいけないと思っている。
 二つ目の質問の米国債の保有状況ということだが、他行の米国債の保有状況は詳細承知していないので、私ども個別行として申しあげると、米国債はALMのオペレーションの観点から保有しており、米国債を含む金利リスク量は、全体として、すでに抑制的に運営している。
 以前も少し説明させていただいたかもしれないが、当行の米国債の保有残高は日本国債に比べると、だいたい1割程度という水準。金利リスク量もかなり抑制されたものになっている。現状程度の金利リスク量の保有ということで、方針を特に変えるつもりは今のところない。


(問)
 反社問題への対応に関し、5点おっしゃったが、2点質問したい。まず、警察庁とのデータベースの接続について、2010年から協議を行っていて今後も前向きに検討するということだが、具体的にどういう前進があるのか、もちろんみずほの調査を踏まえたうえで具体的に決めるということだが、今言える範囲でこういうことやっていきたいということがあれば教えていただきたい。もう1点、会員各行に配信しているデータベースを他業界、信販業界に提供できるようにするということだが、これも具体的に今後決めることであろうが、どのように情報を共有していくのか、今言える範囲で教えていただきたい。
(答)
 まず警察庁とのデータベースの接続だが、警察庁が持っておられるデータベースを我々が利用させていただいて反社のチェックをするということだが、先ほど申しあげたように、我々としても暴力団員や暴力団関係企業に関するより精度の高い情報を得ることにより、我々が持っているデータベースを補完したいということで、2010年以降、接続に向けた協議をしている。
 我々としては、是非接続したいと考えているわけだが、それを実現するためには、情報管理に関する課題であるとか、あるいは銀行取引に即した実効的なチェック体制の整備とか、警察庁、銀行界双方にとって解決すべき課題があるのも事実である。したがって、それを解決するために関係者間で協議を行っていく必要がある。例えば、警察庁のデータベースに接続しても、全てを反社会的勢力かどうか自動的に判別できるわけでもない。その場合は、最終的な確認を個別に警察庁に対して行う必要があるわけで、大量の取引がある銀行取引について、そうした個別の確認を実効的に行うために、どのような対応が考えられるのか、こういったことも検討していかなければいけないと思っている。いずれにせよ、今回の事案を踏まえて、警察庁とは前向きに検討していきたいと思っている。
 2点目については、我々が持っている全銀協のデータベースを信販業界とも共有して、そのデータを個別取引のチェックに使っていただくといったことを検討したいと考えている。また、信販業界以外でも、希望があれば情報の共有を検討していこうと思っている。
(問)
 それぞれ実現するにはどのくらい期間はかかりそうなのか。
(答)
 これから協議を詰めていくので、今いつまでにということは申しあげられる段階にはない。


(問)
 反社会的勢力の取引排除に向けた五つの取組みのなかで、三つ目の「提携ローンについての必要な態勢整備」というのは、現状、どういった点に問題があって、どの点を改めるべきだとお考えなのかを教えてほしい。
 また、全銀協では、2010年4月から独自のデータベースを蓄積されているところだと思うが、現状の有用性というか、どの程度使えるものになっているのかの評価を教えていただきたい。
(答)
 まず一つ目の質問だが、今回の提携ローンというのは、当事者が4者、即ち、銀行とお客さまとの間に信販会社と加盟店が介在するスキームであり、ローン契約の当事者である銀行は、お客さまと面談することもなく、信販会社の口座に融資金を入金し、ローンの返済も信販会社経由で受領するという、ある意味特殊なスキームである。
 このスキームが作られたのは15年以上前であって、大手信販を中心に、幅広く利用されている商品である。今回の件は、スキーム自体の問題というよりは、2007年の政府指針策定以降の、反社会的勢力との関係遮断に対する社会的要請の高まりを踏まえた対応ができていなかった、ということだと思う。
 具体的には、入口である信販会社におけるチェック態勢の強化という点と、銀行サイドでの反社会的勢力のチェック、こういったところが不十分であったということだと思う。
 それから、全銀協が保有しているデータの有用性についてであるが、今我々が持っているデータは、もちろん有用である。これが今の水準で十分なのかどうかということについては、さらにいろいろな情報を蓄積していき、全銀協が保有しているデータベースを拡充、充実していくことが重要だと思っている。


(問)
 一つ目の質問は、反社に関する問題であるが、グローバルで国際的な犯罪組織に対するお金とかマネー・ローンダリングの規制が厳しくなっているなかで、FATFが、日本のマネー・ローンダリング対策が大変遅れているという厳しい評価をくだしていると思う。FATFの評価は形式的なものでしか判断していないという批判も一方であると思うが、こういう指摘についてどのような考えをお持ちか。
(答)
 ご指摘のとおりそもそもマネー・ローンダリングの手口というものは、日々巧妙になり、悪質になっており、日本の金融システムに対する信頼性を確保するといううえでは、国際水準に適合したマネー・ローンダリング対策の強化が大きな課題になっている。国際的なマネー・ローンダリング対策の基準であるFATFの勧告であるが、法人顧客の実質的支配者を個人にまでさかのぼって確認するであるとか、あるいは取引を継続的にモニタリングするなど、金融機関に対して現在の日本の犯収法のレベルを超えた厳格な顧客管理を行うことが求められている。その意味では、我々の現在の対応水準が、FATF勧告が求める水準を完全には満たしていないということになるわけだが、我々銀行界としてもこういった基準に対応する必要性は認識している。現在警察庁が主催する有識者懇談会が開催されており、新たな制度整備に向けた検討が進められているわけであるが、全銀協としても最大限協力していきたいと思う。
 もう一つ勘案しなければいけないことは、やはり利用者利便、お客さまの不便さが増大しないかということ。その意味では、日本における銀行取引の実情をきちんと説明し、現場の混乱を回避し、お客さまにあまり過度な負担をかけないかたちで、FATF勧告の趣旨が実現するように議論していきたいと思う。


(問)
 追加でもう一つ質問したい。先ほどの話にあったとおり、銀行がそれぞれ本気で反社排除の取組みを進めていると思うが、どうしても紛れ込んでしまうという側面もあると思う。全銀ベースで把握はしていないと思うが、例えば三井住友銀行では反社向け融資は今どれくらいの残高があって、どうしてこれがやっぱり紛れ込んでしまうものなのか、教えてほしい。
(答)
 個別行の数字ということであるが、反社会的勢力宛与信額や件数は大変センシティブな情報であるので、具体的な金額の開示は差し控えたい。当行では、融資取引や預金取引等を行う際に取引の相手方が反社会的勢力でないかを事前に確認をするとともに、万が一取引開始後に反社会的勢力宛与信が判明した場合には、暴力団排除条項にもとづいて関係遮断を徹底するなど、しっかりと取り組んでいる。例えば、当初は反社ではなかったが、後から追加情報として、「相手自身が反社である」とか、「役員の中に反社がいる」、あるいは「保証人、担保提供者に反社がいる」といった情報が入ってきて反社認定するようなケースもあるわけである。いずれにせよ、そうした反社取引が判明した場合には、速やかにその解消・回収を図っていくということで取り組んでいる。


(問)
 今回のみずほの問題については、取締役会やコンプライアンス委員会で報告があった後に、対応が放置されたことが問題視されていると思う。
 1点目の質問は、個別行として、役員や取締役会に、反社与信について、残高などの状況が、どのように報告されているのかを具体的に教えてほしい。
 2点目の質問は、先ほど、グループ会社間で反社情報の共有をさらに進めたいという説明があったが、現在、どれくらい共有が進んでいるのか、教えてほしい。
(答)
 最初の質問は、当行において、反社与信についてどのような報告がなされているのかということと思うが、私どもでは、半期に一度、反社与信の残高の推移、それから大口反社認定先、施策の実施状況などを、経営会議と取締役会に報告している。さらに、一定額以上の反社与信が判明した場合には、経営会議のメンバー宛に電子メールで速報されている。
 次に、グループ会社との反社情報の共有についてであるが、これは銀行のデータをグループ会社と共有するというかたちで進めている。
 今回問題となっている信販会社との提携ローンについて申しあげると、当行グループ会社のセディナについては、現在、当行との間では、今回問題となったスキームの提携ローンは取り扱っていないので、同様の事態は生じていない。一方、セディナは、当行以外の金融機関と提携し、同様のスキームの商品を取り扱っている。現時点では、セディナの提携金融機関において、今回のような問題が生じているとは聞いていない。
 当行とセディナとは、すでに反社情報を共有しているが、セディナは、その情報を、加盟店審査等には利用しているものの、個々の取引のチェックにまでは、まだ利用できていない。したがって、今回の事態も踏まえ、セディナが、当行の反社情報を、個々の取引におけるチェックに利用できるよう、体制整備を早急に進めて行きたいと思っている。
 それ以外の、例えば当行でいうと、クレジットカード会社、リース会社、SMBC日興証券、SMBCコンシューマーファイナンスといったグループ会社との間では、反社情報の共有は概ね完了している。セディナは2010年5月に子会社化をしたので、まだ完全ではないということである。


(問)
 1点、お伺いしたい。信販会社との反社情報共有化について一番の問題は情報漏えいであり、警察庁とのデータ接続においても一番重要な問題になっていると聞いている。その対応をどうするのか伺いたい。
(答)
 例えば警察庁との協議においても、その点が検討事項の一つになっている。ただし、当然、守秘義務があり、センシティブ情報を漏洩することの問題については、各従業員がそれぞれ認識しているので、今後の協議により、それをクリアできる方策を作り上げることができると思っている。これから始まる具体的な協議において、よく詰めていきたいと思う。


(問)
 提携ローンは、メガの中ではみずほ銀行だけしか扱っていないが、個別行のことで申し訳ないが、御行で扱っていない理由や、提携ローンをあえてやっていない理由は何か。2点目は感想めいたことを伺うが、今回のみずほ銀行の問題で、取締役会あるいはコンプラ委員会に報告されながら、少なくとも現在のトップは認識するに至らなかったと、こういった事態は、あり得るという感想をお持ちなのか。例えば取締役会の資料は膨大だろうから、そこに紛れ込んでいただけでは気付かないこともありうるだろうということなのか、それともちゃんと口頭で報告されるから、ちょっと信じられない対応だと考えるのか、感想めいたことを教えてほしい。
(答)
 まず、当行で何故、信販会社とこのタイプのローンを扱っていないかということだが、これは各銀行の事業戦略にもとづくもの。私どももグループ会社には、消費者金融会社とかクレジットカード会社、それから信販会社等々、いろいろな会社がある。そのなかで我々としては、例えば個人のお客さまの小口の資金借入ニーズについては、SMBCコンシューマーファイナンス、旧プロミスだが、そこと提携して取り組んでいるということで、信販会社との提携ローンは取り扱っていいないということである。
 二つ目の質問については、これはなかなか答えにくい。そもそもみずほ銀行の例がどうなのかということに関しては、全体の状況がまだ明らかになっていないため、この段階で私がコメントするのは相応しくないと思う。取締役会の資料については、基本的には各取締役が目を通しておられると思う。取締役個々の人によって違うかもしれないが、例えば可能性としては、大量の資料が出てきたときに、全ての資料を全部読み込むことが無いケースもあるかもしれない。そのあたりは状況が分からないので、これ以上は何とも申しあげようがない。


(問)
 先ほど会長が、2007年6月19日の政府のコンセンサスである「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」について言及されたが、これが、今の金融庁検査マニュアルにも大きく反映されていると思う。この中では、「取締役、経営トップが、反社問題において全リーダーシップをとる」「全責任を負う」「反社問題はプライオリティが高く、最重要事項である」と明記している。
 國部会長は、一企業の一取締役だと思うが、ご自身にとって、反社問題というのはどの程度プライオリティが高いのか、普段から、どの程度意識してビジネスをしているのか、他にたくさん重要な決定事項があるとしても、どの程度普段から意識しておられるのか、それを教えてほしい。
(答)
 反社取引については、私自身は相当意識している。
 もちろん、反社取引と事業戦略のプライオリティは、性質が違うものなので、同列にして比較するのはいかがなものかという面もあるが、やはり銀行の信用という観点から考えても、反社取引というのは、非常に重要であり、プライオリティを持って見ている。
 先ほど、「私どもの銀行で、どういう報告がなされているか」ということを説明したが、申しあげたとおり、一定金額以上の新しい反社与信が発生すると、必ずすぐに私のところにメールが来る。そこで、必要な対応について、担当部署と打ち合わせをするケースもある。プライオリティをもって臨んでいる。
(問)
 「反社認定が来ると、すぐ私のところにメールが来る」「反社問題をとても意識している」「非常に重要」とおっしゃったが、銀行のトップとして、数回、取締役会に出席して、そこに「反社」という言葉が複数回出てきたことについて、一般論では、「反社」という言葉が入っている資料、これをPDFに落としてキーワードで探して見つけるぐらいが取締役の仕事だというふうに、政府の合意文書からも類推できるが、ご自身、取締役会に参加される時は、この「反社」という言葉が出ているか出ていないか、そういったことも、通常、気に掛けて出席されるのか。
(答)
 私どもの銀行について申しあげると、「半期に一度、経営会議と取締役会に報告する」と言ったが、毎回、その時点において、当行の反社取引の状況、即ち、残高がどうなっていて、増減がどうなっている、ということは必ず説明される。したがって、「意識する」「しない」以前の問題として、必ず報告されるので、全取締役、全経営会議役員はそれを聞いている。
(問)
 そういった反社のローンで、残高が増えた、減った、これについては必ず説明が口頭であり、そしてメールでも来る。また文書でも取締役会等でも報告される、ということは、経営トップとしては、この「反社」ということを、会議等で見逃すということは通常ありえない、と考えても良いか。
(答)
 私どもの銀行では、必ず毎回説明されるので、認識はしている。
(問)
 先ほどの方の質問を、もう一度だけ繰り返させていただくと、そうした時に、今回の個別の件で恐縮だが、みずほの件を見たときに、やはり、取締役トップ・経営トップが複数回会議に出席していて、しっかりとその反社のデータの推移がアタッチされていたのにもかかわらず、それを見ていなかった、また説明を受けていなかった、というのは、違和感があるとお考えか。それとも、あることだと考えるか。
(答)
 みずほ銀行の件については、まだ全体像が分からないので、今の段階でコメントするのは差し控えたい。


(問)
 銀行のグループ企業間で反社情報の共有化を進めていくという方針は理解できる。ベーシックな質問で恐縮だが、その場合のグループ企業というのはどういう定義なのか。銀行においては、完全子会社もあれば、持ち株割合が50%を超えていないにもかかわらず子会社と呼んでいる場合もある。また、持分法適用会社もある。オリコがそうだったように、もともと持分法適用会社ではなかった会社が、持分法適用になるケースもある。持分法適用会社でなくてもグループ会社と言われることもあり、銀行独特の概念もある。グループ企業といった場合、何を指しているのか教えていただきたい。
(答)
 個別行について言えば、銀行の子会社については、基本的には、反社情報を共有していこうと思っている。持分法適用会社については、その会社が行っている業務の内容などを踏まえて、個々に情報共有の要否を検討していくということになるのではないかと思う。


(問)
 3点伺いたい。全銀協が持たれているデータベースの規模感を教えていただきたい。どのくらいの人数か分かれば教えていただきたい。
(答)
 これもセンシティブな情報なので、回答は差し控えさせていただきたい。
(問)
 2点目は、警察庁、金融庁と協議すると言われたが、会長は今、みずほの件、ある程度全貌というか報告がなされてから動きたいという話をされていたが、そういう理解であれば、早ければ11月ぐらいに今までやってきた協議を再開するというスケジュール感で良いか。
(答)
 警察庁との間では、まだいつからというのは決まっていないが、11月初めくらいから協議を再開したいと思っている。
(問)
 銀行の希望としてということか。
(答)
 そうである。
(問)
 3点目は、これまでの全銀協の取組みの経緯を説明していただくなかで、警察庁のデータベースと是非接続したいという意向がずっと協会側にあったということだが、銀行によって取引量が違うので、データベースを持っていても規模感が大分違うと思うが、全体として底上げを図るためには、やはり接続が不可欠だという認識なのか。
(答)
 結論から言うとそのとおりである。やはり警察庁が持っているデータベースというのは、最も正確で確かな情報だと思うので、その情報を我々としても反社チェックに活用させていただきたいと思っている。


(問)
 警察庁と協議を進めていくうえで、これまで良く言われていた問題として全銀協が自主規制法人としての機能を備えていないという点があるかと思うが、その問題をどのようにクリアしていこうと考えているのか伺いたい。
(答)
 言われたように全銀協は民間の団体で、自主規制機関でもない。私は、警察庁と協議をしていく過程でいろいろ議論させていただきたいと思っているが、本質的な問題は、自主規制機関かどうかということではなく、その情報が適切に管理されているかどうかということだと思うので、そこには解があると思っている。


(問)
 全銀協の反社データベースというもののイメージが掴めない。例えば、大手銀行が持っているデータベースを集めたものだから、それよりも大きなものだというイメージなのか、それとも共有というのが難しくて、それよりも小さなものになっていることなのか。
(答)
 全銀協が持っているデータベースというのは、各傘下金融機関が持っているデータベースを集合したものではなくて、例えば世間に明らかとなったいろいろな属性情報を集約したものである。したがって、それよりはかなり小さいデータ数になっている。
(問)
 そうすると信販会社がメガの傘下にあるということを考えると、当面は個社での対応が重要であるということか。
(答)
 当然、信販会社個社の体制整備が重要である。それとともに、先ほど今後の方針の一つと申しあげた「銀行系信販会社」であれば、親銀行と子会社である信販会社との情報、データベースの共有も重要である。基本的には、親銀行の持っているデータベースのほうが大きいわけである。今回の事案でも、それでチェックをしたらいくつか出てきたということ。したがって、大きい親銀行のデータベースを子会社である信販会社と共有していく。これが必要だと思う。
(問)
 グループ外との提携ローンは、依然として課題を抱えることになると思うがいかがか。
(答)
 グループ会社以外については、情報共有が出来るのかどうか、つまり、全く外部の会社であるので、それが出来るのかどうかということを考える必要がある。ただ、例えば外部の会社と提携している場合には、我々が融資をする際に、我々が持っているデータベースでチェックをする。それが反社取引かどうかは、そこでチェックが出来るので、網が掛かり、問題は生じないと思う。
(問)
 警察庁のデータベースが大きくて一番正確であろうということなので、根本的な解決はそこにあるのかもしれないが、取組みとして証券と比べて遅れている、いないという評価がいろいろあると思うが、少なくとも時間が掛かっているというのはどのような事情が今まであったのか。
(答)
 先ほど申しあげたかもしれないが、いくつか理由はある。一つは、先ほど質問にあった、全銀協が自主規制機関ではないという点。それから、自行のデータベースでチェックをし、もちろんそれで分かることもあるが、判別することが難しいものがあった時には、個々に警察庁に照会することになる。証券業界の取引件数と銀行業界の取引件数というのは圧倒的に銀行業界のほうが多いため、それを個々に警察庁に照会した時にどのようにフロー、プロセスをうまくやっていくのかという問題もある。これからいろいろ協議をしていきたい。