2014年2月13日

國部会長記者会見(三井住友銀行頭取)

和田専務理事報告

 事務局から1点ご報告する。
 本日の理事会において、お手許の資料のとおり、本年4月に事務局内に「金融リテラシー推進室」を設置することを決定した。「金融リテラシー推進室」は、昨年10月に方針を示した、金融経済教育活動の更なる推進のために設置するものである。
 事務局からの報告は、以上である。

 

会長記者会見の模様

 


(問)
 この1カ月間で新興国市場を中心に世界の金融市場が不安定な状況になっているが、足元の動きや今後の見通し、あるいは日本への影響についてどう見ているか。
(答)
 先月の後半から、新興国を巡るヘッドラインが続くなか、多くの新興国通貨が下落した。相前後して米国株式が下落し、それにつれて日本も円高・株安という動きになったが、私は新興国を巡る問題と、米国をはじめとする先進国の株価の調整については、背後にある構造が少し異なっており、分けて考えるべきだと思っている。
 まず新興国については、足元、アルゼンチンの通貨急落をきっかけに焦点があたったわけだが、振り返ると、米国の早期テーパリング観測が高まった昨年5月以降、新興国の株式・通貨に対する調整はすでに始まっており、市場は、その都度、各国の打ち出す対策や外貨準備等に注目し、選別の動きを続けてきたと思う。
 一例を挙げると、昨年夏にかけて売り込まれたインド・ルピーについては、その後の利上げ等の政策対応から、足元は堅調な動きとなっており、インドの株価も昨年5月の水準を上回ってきている。
 そもそも新興国経済については、今世紀初めの10年間に亘る高成長を支えた前提条件、すなわち、資源高や中国経済等の急拡大、および、その後の世界的な金融緩和等の前提条件が変わりつつあるなかで、どのように成長を持続していくのか、ということが、共通する構造的なテーマである。
 一方で、各国毎に、その解や、あるいは外貨準備や財政の事情は様々である。したがって、今後、グローバルに流動性を供給していた米国の量的緩和が徐々に縮小し、金融政策が正常化していく過程では、通貨を含めた様々な資産価格が、よりファンダメンタルズを反映した価格形成へと移行し、選別の動きが強まっていくのだと思う。市場がいつどこに焦点を当てるのか予測するのは難しいが、今後、米国の金融政策のフェーズがテーパリングを経て、いずれは、タイトニングに移行していく過程で、程度の差こそあれ、今回のような事態は起こり得るのではないかと思う。
 なお、日本への影響は、もちろん経済的な依存度や、与信や国債保有を通じた金融システムの連関性にもよるが、総じて言えば限定的だと見ている。
 次に米国株について申しあげると、昨年12月にFRBがテーパリング開始を決定したように、「米国景気は強い」というコンセンサスのもと、年末にかけて株価は上昇し新年を迎えたわけであるが、1月10日発表の12月分の雇用統計以降、コンセンサスに反して冴えない景気指標の発表が続いていることから、米国の景気改善シナリオに対する不透明感が高まり、株価の調整が長引いているというのが、基本的な構図だと見ている。そうしたなか、一部新興国通貨が大きく売られたことをトリガーにして、リスクオフの動きが加速し、そして日本市場もその煽りを受けて、海外投資家を中心とした投機筋などの利益確定の動きが加速した、ということだと思う。
 その後、ご承知のとおり、2月に入りマーケットは落ち着きを取り戻しており、先週発表された雇用統計、これも強弱入り混じった斑模様の内容ではあったが、株価は上昇という動きになっている。こうした動きを踏まえると、市場参加者の米国景気改善に対する過度な楽観や、一方的に偏ったポジションの調整は一旦完了し、しばらくは米国経済の基調を見極めていく時間帯に入ったと見ていいのではないか。
 総じて言うと、まさに先日イエレンFRB新議長が議会証言で言われたように、現時点では新興国市場のリスクは限定的であり、米国景気の回復基調は続き、それに伴いテーパリングも継続される、という大きな流れのなかで起きた一時的な調整局面と見ることができると思う。
 今後について申しあげると、現時点では米国の景気鈍化を示す決定的な材料はなく、日米を中心とした先進国が牽引する景気回復が継続するという見方を変える必要はないと思っている。当面は、米国の寒波、これは2月下旬頃までは、例年対比寒い日が続くことが見込まれているが、その寒波の影響が継続することが想定されることに加え、今回の混乱で市場心理が悪化したのも事実であることから、今暫くは金融市場の不安定な動きは続くかもしれないが、今後、経済指標を一つ一つ確認しながら、米国景気に対するコンフィデンスが回復していくにつれて、株価も徐々に上昇していくのではないかと見ている。


(問)
 このところ、金融庁が地方銀行に対して再編を促す姿勢を強めているようだが、地方銀行の置かれている経営環境や地方銀行再編に対する考え方について伺いたい。
(答)
 これは個々の経営判断ということに尽きると思うが、一般論として、銀行界全体について申しあげると、そもそも企業の競争力を強化していくという観点から言えば、もちろん、統合・再編は一つの選択肢であり、個々の企業が、それぞれの戦略、あるいは、自らの経営の状況を踏まえて判断することだと思う。
 そもそも銀行の経営課題には様々なものがあり、ビジネスモデルの見直しであったり、商品・サービスのイノベーション、資本政策、あるいはガバナンスの高度化等、多岐に亘る。銀行の経営者としては、鋭敏なリスク感覚を持って、内外の環境変化を捉えつつ、打つべき手を先んじて打っていくことが経営者の責務だと思う。
 地方銀行のビジネスモデルでは、それぞれが主たる営業地盤を持っており、その地域のお取引先が直面している様々な経営課題に対して、コンサルティング機能を発揮して解決する、いわば「地域密着型金融」を各行実践しておられる。
 お客さまの経営改善計画の策定支援や、ビジネスマッチング、様々な成長産業に対する前向きな資金供給の取組み等、いろいろと努力をされている。こういった取組みを、各地域金融機関はこれからも継続していかれると思う。
 一方、今後、少子高齢化、人口減少が進展するなかで、日本経済、日本の金融市場、預金、貸出マーケットの姿が大きく変わっていく可能性もある。当然地方でもその影響は出てくると思う。
 こうした長期的な環境変化を踏まえて、どういう経営戦略を考えていかれるかということは、まさに各地域金融機関のそれぞれの経営者が考えていかれることだと思う。


(問)
 先日、理化学研究所チームの研究で、いわゆるSTAP細胞、万能細胞を新しく作ったとの明るいニュースがあった。これについての会長の受け止めと、新しい研究というのは金融界からのサポート、支援が必要だと思うが、これについてどのようにお考えか。
(答)
 まず、私自身の受け止めということだが、山中教授がiPS細胞を発見されたことに加えて、今度は若い女性の研究者がSTAP細胞の開発を公表したということで、まさに再生医療分野において日本の研究者の活躍が相次いでいることを、日本人の一人として大変喜ばしく思っているし、大変心強く思っている。
 金融界の関わり方ということについては、こういった再生医療や、医療機器など、日本が国際的に強みを持っていて、グローバル市場の成長が見込める分野は、政府が日本再興戦略において力を入れていく分野であり、我々金融界もしっかりとそれをサポートしていきたいと思う。
 当行の事例になるが、我々も、エネルギーであるとか、環境、農業と並ぶ成長分野として、医療分野に取り組んできている。再生医療の分野について我々の取組みを少し紹介すると、以前も申しあげたかもしれないが、山中教授のiPS細胞の開発について、事業化を推進する会社に直接出資しており、そのほかにも寄附という形で資金援助しているが、まさにiPS細胞の研究、事業化のお手伝いをさせていただいている。また、再生医療については、私どものグループ会社であるSMBCベンチャーキャピタルがエクイティファンドへの出資を決定しており、有望企業の早期のビジネス化の支援も行っている。
 また、お客さま同士のビジネスマッチングも、こういった再生医療分野については有効だと思っている。いずれにせよ、医療分野を含めた将来有望な成長分野については、いろいろ工夫しながら今後もサポートをしていきたいと思っている。


(問)
 地銀のお話があったが、日本の金融の問題点としてオーバーバンキングという点がしばしば指摘されている。オーバーバンキングという言葉には、オーバーデポジットという意味と、銀行の数の問題として多すぎるのではないかという意味の両方を含んでいると思うが、この点について会長はどのようにお考えか。
 2点目は、経常収支の赤字が3カ月連続となった。まだ今しばらく続きそうな気配である。この経常収支の赤字が日本のマネーの流れにとって、どのような意味を持っているのか、かつ、それが金利に与える影響はどのようにお考えになっているのか伺いたい。
(答)
 オーバーバンキングという言葉の定義や評価については、どういう切り口で見るかによって大分違ってくるのでなかなか難しいが、今、日本の銀行が直面している最も大きな経営課題のひとつは利ざやの低下である。日本の銀行の利ざやが低いということについては、いろいろな要因がある。もちろん、日銀の金融政策を背景とした低金利状態が長期化しているということ、そして借り手側の意識、あるいは金融慣行がある。そして今、ご指摘いただいたとおり、銀行の預超状態が継続しているということもある。企業の資金需要が長期に亘って低迷してきたなかで、銀行のバランスシートが、預金が貸出を超過している状態であることから、金融機関間の競争が激化している。こうした様々な要因で利ざやが低下してきているということだと思う。したがって、単純に金融機関の数だけの問題ではない。
 これから資金需要が回復し、金利水準が上昇していく過程においては、我々が直面している利ざやの低下という問題は反転にもっていけるのではないかと思っている。
 それから、経常収支の問題だが、たしかに12月も経常赤字であり、これで3カ月連続で経常赤字ということになった。先般発表された2013年全体の計数も約3.3兆円で、比較可能な1985年以来では最小の経常黒字となった。これは貿易赤字の拡大基調に歯止めがかかっていないということによる。一つは化石燃料需要の拡大。次に、日本の景気が回復しているので、原材料需要が強まって輸入が増加したこと。さらに、輸出サイドでは、企業の国際分業体制の構築や、新興国企業の日本企業へのキャッチアップといった構造変化が進み、円安下においても輸出が伸び悩んでいることから、貿易赤字の拡大基調に歯止めがかかっていない。
 ただし、今後を展望すると、そう早い段階で経常赤字が定着するような状況にはならないのではないかと見ている。
 一つは海外景気の回復により輸出が持ち直してくるということ。また、今日も「より安価なLNGの輸入が2017年から開始される」という報道があったが、今後、化石燃料等の輸入コストが下がってくる可能性が高い。そして、外国人の訪日が増加し、サービス収支も改善してくる。さらには、円安や海外景気の持ち直しに伴い、所得収支黒字も拡大してくるということで、こうしたことを総合的に勘案すると、足もとの経常赤字は一時的なのではないかと私は見ている。
 また、加えて申しあげると、日本は巨額の対外債権国であるので、海外からの債務に依存するような状況に陥ることも想定しがたい。したがって、直ちにご指摘のような金利上昇リスクの顕在化に繋がるとは見ていない。
 ただ、将来の急激な金利上昇リスクを排除するためにも、政府には、今、消費税率引上げ等、難しい課題にも一つ一つ着実に解を出していただいているが、引き続き、目標としている財政再建と経済成長、これをしっかりと両立させて進めていただきたい。


(問)
 先ほど、利ざやの低下を反転にもっていけるのではという話があったが、具体的に時期としていつ頃を見込んでいるのかということ、それと、資金需要の回復が前提になっていると思うが、本当に見込めるのかどうなのか、大企業、中小企業それぞれあると思うが、それがまず1点。加えて、期限を迎える日銀の貸出支援策が、実際どれくらい使われていったのか、それが利ざやの低下にどういうふうに影響を与えているのか、その2点を伺いたい。
(答)
 資金需要と利ざやの反転時期ということだが、今、銀行の貸出残高は、29カ月連続で前年同月末比増加している。以前も申しあげたとおり、個人、大企業が堅調である一方、中堅中小企業が力強く回復しているという状況では未だないが、全体の貸出残高は、増加している。
 水準の話をすると、全国銀行ベースの貸出残高で、ここ3年のボトムは2011年8月の414兆円である。今は441兆円ということで、27兆円増加している。ちなみに銀行が保有している国債残高については、ピーク対比で32兆円マイナスとなっており、ある意味、ポートフォリオリバランスは、一定程度実現していると見ることもできる。
 ただ、先ほど申しあげたとおり、例えば、設備投資等は、本格的な増加に繋がってきていないという状況である。企業のマインドが非常に前向きになり、設備投資をし、タイムラグをもって銀行の貸出が増加をしていくという一連の好循環、前向きな動きを本格的なものにしていくというのが、今年、来年の課題ということだと思う。
 利ざやがいつ反転するかということだが、これはなかなか予測し難い。我々としては早期の反転を願っているわけだが、実際問題、資金需要が強くなってくるのは、あと1年ぐらいかかるかもしれない。それから、今の低金利状態。例えば短期のマーケットを見ると、足元非常に低金利であるし、長期金利も0.6%前後で安定している。日銀がターゲットとしている消費者物価上昇率2%に近づくにつれ、少しずつ上昇していくとは思うが、利ざやの反転は、来年度、再来年度の課題ではないかと思う。これは個人的な意見である。
 日銀の成長基盤強化を支援するための資金供給制度だが、これは2010年6月に創設され、その後、1,000万円以上の投融資を対象とする本則に加えて、動産・債権担保融資を対象とするABL特則や、米ドル建ての資金を供給する米ドル特則等のバリエーションが加えられてきた。
 当行では、こうした日銀の制度を積極的に活用し、いろいろなファンドを作っている。例えば、環境配慮企業支援ファンドであるとか、中国事業支援ファンド、あるいは医療成長支援ファンド、成長企業支援ファンド等様々なファンドを設定しており、当行の利用残高は、既に本則の制度上限である1,500億円に達している。
 米ドル特則についても、ファンド総額は10億ドル超に達しており、ABL特則についても、行内ファンドを設定して積極的に取組んでいるところである。いずれにせよ、この日銀の資金供給制度というのは、まさに日本経済の成長を確保するための、そして、我々が企業に対して積極的に成長資金等、様々な資金を供給するための有効なツールであり、非常に有意義だと思っている。是非延長していただき、今後も活用していきたいと思っている。


(問)
 昨今、コーポレートガバナンスを強化する動きが広まっている。昨年の国会で社外取締役の設置義務化が議論され、東証でも、独立性の高い社外取締役の確保を企業に求めるといった動きがある。金融庁も、近く監督指針を改定し、銀行や持株会社に独立した社外取締役を置くよう促すと言われている。日本は、社外取締役が入っても1~2名に止まる等、まだグローバルスタンダードから遠いのではないかという指摘もあるなか、会長は、社外取締役の義務化について、どのようなご見解をお持ちか。みずほの件ではないが、銀行でも、今後、欧米型モデルに追随していくことになるのか。
(答)
 私の考えを申しあげると、コーポレートガバナンスのあり方というのは、会社によって様々だと思う。我々金融界においても、それぞれの銀行において、自分の会社の実情に応じたコーポレートガバナンスのあり方をしっかりと検討し、社外取締役を導入するのか、あるいは何らかの理由で導入しないのか、経営判断していけばいいと思う。
 「経営に第三者の目を入れる」ということが、社外取締役設置の目的の一つだと思うが、当行においても、現在、3名の社外取締役に就任いただいている。コンサルタント、会計士、弁護士の3名であるが、取締役会では、それぞれ異なる観点から、多岐に亘る非常に有意義なご指摘、ご意見を頂戴している。
 ただこれは、それぞれの銀行によって事情が違うので、全ての企業に一律に導入するというのは、いかがなものかと思っている。
 今回の監督指針の改定は、昨年取りまとめられた「金融・資本市場活性化有識者会合」の提言を踏まえて、上場銀行、銀行持株会社に対して、本国会で審議される会社法改正法案や、東証の改正上場規則に則った対応が行われているかどうかを検証するものだと考えている。したがって、その趣旨はよく理解する。実際に検証いただくにあたっては、適切な準備期間を確保したうえで、独立性の要件といった重要なポイントについては、地域によって実情も違うので、そういった点にも十分配慮いただくようお願いしたいと思っている。


(問)
 2点目の質問であるが、先月、金融庁と総務省がかんぽ生命の学資保険の新商品の販売を認可したが、一方で、ゆうちょ銀行の住宅ローンの新規業務の認可の見通しは全く立っていないと思う。来年上場を控えている日本郵政も収益に繋がるような明確な戦略が見えて来ず、課題もあると思うが、この点について、現段階で全銀協から言えることはあるか。
(答)
 以前と同じ回答になるかもしれないが、今回の新学資保険については保険分野の話になるが、一昨年の11月に条件付認可とされていたものであり、今回認められたのは、金融庁において「保険金の支払い管理体制の確立という認可条件が充足をされた」と判断されたということだと思う。
 一方、ゆうちょ銀行の融資業務については、全く純粋な新規業務であり、既存商品の改定であった学資保険とは違う話だと考えている。昨年の共同声明でも申しあげているが、ゆうちょ銀行が新規業務に参入するためには、「将来的な完全民営化の担保」「経営の抜本的な効率化」、そして「民間企業としての内部管理体制の整備」、この三つの徹底が大前提である。そのうえで、個別業務ごとの新規参入の是非については、四つを軸に判断すべきと主張してきた。第一に、公正な競争条件の確保、第二に適正な規模への縮小、第三に利用者の保護の問題、最後に地域との共存。これらを総合的に検討して判断すべきと申しあげてきた。
 特に、間接的な政府出資が残る状況下での貸付業務等の新規業務への参入については、暗黙の政府保証を背景とした資金調達面の優位性により、民間金融機関の業務を圧迫する懸念が極めて大きいと考えている。したがって、少なくともゆうちょ銀行の完全民営化にかかる具体的な計画が示されて、その実行が担保されない限り、貸付業務への参入は検討されるべきではないと申しあげてきたところである。
 この2月に日本郵政が中期経営計画を取りまとめる予定と聞いている。我々銀行界としては、示された中期経営計画を検討し、申しあげることはきちんと申しあげていきたいと考えている。
 もう一点付け加えると、ゆうちょ銀行の完全民営化に向けた具体的な計画が示されたとしても、現在ゆうちょ銀行が申請している融資業務は、これまでゆうちょ銀行が手がけてきた住宅ローン等の媒介業務とは、求められる能力・体制が全く異なる業務であり、この業務へ参入すること自身が、ゆうちょ銀行の経営リスクを増大させる可能性もある、という点も検討の項目に入るべきと思っている。いずれにせよ、金融庁、総務省におかれては、今、私が申しあげたような点を踏まえて適切に審査いただけるものと理解している。


(問)
 来週で、でんさいネットが開業してちょうど1年になろうかと思うが、この1年、でんさいの広がり具合をどのように評価しているのか。それから、登録している会社は増えていると思うが、実際利用されている状況としてはまだまだ不十分だと思われる。今後普及させるうえでの課題はどのように考えているか。
(答)
 まず、登録社数については、1月末で、当初の想定を上回る33万社に達している。これまでのところ、システムも順調に立ち上がっているということである。ただし、今指摘があったとおり、利用件数については1月末までの累計で16万9千件となっており、着実に積み上がってきているともいえるが、まだ本格的な拡大までには至っていない。これを、どこまで伸ばせるかということが今後の課題である。
 制度面でもいろいろ手当てされており、昨年9月には、中小企業信用保険法の改正に伴い、電子記録債権の割引等が信用保証の対象となった。今月には、日本銀行が資金供給の際に金融機関から受け入れる担保に電子記録債権を追加することが予定されている。このように、制度的な環境整備も進みつつあるが、やはり、でんさいネットの利便性についての周知徹底がまだ足りないのではないかと思っており、今後様々なかたちで努力をしていきたい。
 例えば、ホームページを通じた継続的な情報発信や、参加金融機関の推進支援を目的とした好事例の共有、あるいは経団連会員企業向けの利用促進セミナーの開催や、各参加金融機関がでんさいネットを使った様々な商品開発をしていく、そういった様々な地道な努力を積み上げて、でんさいネットの利用拡大を行っていく必要があると思っている。したがって、利用状況については、まだ満足していない。
(問)
 追加である。課題はいろいろあると思うが、支払う側の大企業とか、地方でいうと自治体、こういったところの参加が広がっていかないと、普及については問題があるのではないかという指摘もある。その点については、どう考えるか。
(答)
 そういう真摯な指摘も踏まえ、しっかりと取組んでいきたいと思う。ある意味、まだ制度がスタートしてから、1年しか経っていないということもあり、まだまだ周知活動や、実際に地方自治体に行って説明する等の努力を続けていかなければならないと思っている。


(問)
 三つお願いしたい。
 一つ目、休眠預金についてだが、公共性のある事業への活用を目指して、与党の中に関連法案を提出する動きがあるが、協会としてこの動きをどう受け止めているのか、またその法制化に向けて課題があるとすればどういうところがあるか、教えて欲しい。
 二つ目、今日は2月13日でNISAの日ということだが、1月開始以降、ここまでの御行グループの状況、それと先ほどコメントもあったが、1月に少し金融市場の動揺があったが、足元の動きや今後の見通しに変化があるかないか。
 三つ目、春闘が本格的に始まり、安倍政権が経済界に賃上げ要請をするなかで、進んでいるが、改めて業界、個別行としてどういう方針で臨まれるか教えて欲しい。
(答)
 まず休眠預金の件だが、もともと睡眠預金の活用については、民主党政権時に議論が開始され、現在政府において具体的なスキームが検討されており、場合によっては、今通常国会に議員立法で法案が提出される可能性がある、と理解をしている。この検討に当たっては、我々銀行界としても引き続き最大限協力をしていくが、いくつか解決すべき課題があると思う。
 まず最も本質的なことは、睡眠預金は、あくまでも預金であるので、預金者から払戻し請求があった場合に、これに応じることが前提である。各金融機関の事例でも、睡眠預金へ編入した後も、預金者から払戻し請求が断続的に発生しており、したがって、通常の預金と大きく異なることはない。これまで、専門の管理機関が睡眠預金を管理活用するという案も言われているようだが、万が一、これによって損失が生じた場合であっても、預金者が安心して払戻しを受けられるスキームにする必要がある、というのが最も大事なところである。
 この他にも、法的な枠組みの整備や、預金者の皆さまの合意形成が必要であり、また、仮に我々が専門の管理機関の業務委託を受けるということであれば、我々に発生するコストの取扱い等々、一つ一つ解決していく必要があると思う。
 いずれにせよ、具体的な案が出た際には、我々としても、そのフィージビリティについて、いろいろ意見を申しあげさせていただき、先ほど申しあげたような点がクリアされるよう、スキームを作り上げていきたいと思っている。
 次に、NISAの位置づけについては、以前の会見でも申しあげたとおり、私は、投資経験のなかった多くの人々が投資に関心を持つきっかけとなる、非常に有効なツールだと思うし、日本が今取り組もうとしている貯蓄から投資への流れの促進ということに、非常に役に立つものだと思っている。
 私どもでも、かなりの数の口座が開設されているし、1月の当行の投資信託の販売実績を見ると、投資信託の購入者の約6割がNISA口座を利用している。また、NISA口座を利用した投資信託購入者の約3割が投資を行った経験のないお客さまであり、投資家層の拡大に加えて、非常に有利な運用手段の提供という観点からも意義があると思う。
 今日、一部で、NISAで運用されている方に若い人が少ない、という報道があったが、私どもの数字も見ても、やはり一定の年齢以上の方が利用されているということなので、若い人のNISA活用をどのように促進していくのかが次の課題だと思っている。若い人向けのNISAというのも、アイデアとしてはあると聞いているが、将来的には、そうしたものを手当てしていければいいのでは、と思っている。
 3点目の賃上げについては、基本的には先月とスタンスは変わっていない。賃上げは、個別企業がその企業の置かれた経営環境、業績動向、そして将来の経営方針を踏まえて判断するということ。個別行としては、上期が非常に好調な決算で、このまま推移すれば、年度決算も好調なものになると見込まれる。したがって、何らかのかたちで、総報酬の引き上げということで、従業員の苦労に報いたいと思っている。もちろん、労使協議のプロセスを経る必要があるわけだが、私としては、そういう思いを持っている。どういう方法をとるかは、これから検討していく。


(問)
 横浜銀行でキャッシュカード関連の問題が発生したが、オリンピックに向けて外国人の方もいろいろなATMを使えるべきだと言われているなか、こうしたことが起きてしまっているということにどう受け止めているのか。
 さらに、日本のキャッシュカードのセキュリティの基準、あるいはデータ処理、オペレーションの基準というのはFISCが定めているかと思うが、見直す必要が時代の変化とともに起きているのではないかという気持ちを持っているが、このあたりのご所見を伺いたい。
(答)
 今回の横浜銀行の件について、私なりのコメントをさせていただくと、今回の件は、横浜銀行がATMシステムの開発・保守管理を委託した会社の、ある意味、事情に非常に精通した責任ある立場にある従業員が、お客さまの情報を不正に取得したうえで、その情報をもとにキャッシュカードを偽造し、お客さまの口座から現金を不正に引き出したという極めて悪質な事案であると聞いている。まず何よりも銀行界として、被害に遭われたお客さまに対し、誠意を持って、真摯に対応して参りたい。
 横浜銀行によれば、本件の直接の原因は、暗証番号を含むATM内部のお客さまのカード情報を再委託先に開示していたことで、これについては、すでに必要な措置を講じたと聞いている。
 システム管理、外部委託先の管理という点について申しあげると、我々金融機関は、お客さまから当然信頼され、安心して取引いただくために、お預かりした大切な資金や暗証番号等の重要情報を安全に保管することを第一に考えて、外部委託先の管理も含めて、しっかりとしたシステム管理体制を構築しなければならない。
 ATMシステムを始めとした銀行のシステムは、各行ごとに様々であり、必要な対策もそれぞれで異なるが、今回の事態が発生したことを踏まえて、全銀協の対応として、会員各行に通達を発出し、銀行システムに関するお客さまの情報管理、および外部委託先の管理について、今一度自行の態勢を検証し、必要に応じて対策を講じるよう、昨日要請したところである。
 それから、キャッシュカードのセキュリティ基準については、私も完全には承知をしていないので、見直しの必要があるかどうかということについては、よく考えていきたいと思うが、いずれにしろ今回のATMの事案、あるいはインターネットバンキングに関する不正出金の問題等々、特にインターネットバンキングについては、手口も巧妙になってきているので、我々としてもしっかりと取り組んでいく必要があると考えている。
 インターネットバンキングについては、全銀協は、警察庁と連携して、新聞やインターネットなど、様々な媒体を通じて、利用者への注意喚起を行う広告活動を検討しており、今年度中、すなわち私どもの会長行期間中に実施したいと考えている。


(問)
 決算についてお伺いしたい。先ほど賃金のところでも会長がおっしゃっていたが、メガバンクは押し並べて第3Qが、非常に好決算で、今期、ほぼ通期でもかなり好決算が予定されている。私も記事のなかで書いているが、まだまだ貸出ボリュームの増加が、利ざやの低下を補っていないということで、本業はまだあまり調子良くないのではないかと思う。一方で、実際本業って何だというところで、10年前と比べると手数料収入も増えているし、連単差も増えているので、そもそも銀行の好不調を見るときに銀行の本業って変わってきているのか。今回の決算は、やっぱり本業から見ても好調と会長は考えているのか。
(答)
 銀行において、預貸金利益が大事であるということは依然として間違いないと思う。ただ、銀行の本業というのが変化してきているというのは、まさにご指摘のとおりだと思う。
 かなり以前に遡ると、銀行業務の大半が貸金業務、預金業務、為替業務という時代があった。その後、様々に業務範囲が広がり、個人部門においては、資金の運用ということで、投資信託の販売が開始され、保険の窓口販売も開始された。法人の取引については、M&A等の投資銀行業務の収益も増加しており、また、海外業務も大きく増加している。こうした銀行単体の動きに加え、グループ経営力、グループ金融総合力の強化に向け、様々な連結子会社を保有している。例えば、SMBC日興証券や、三井住友ファイナンス&リース、三井住友カード、SMBCコンシューマーファイナンスであったり、あるいは、航空機リースや鉄道貨車リースの会社など、様々な業務を追加してきている。
 したがって、今、我々が銀行の本業として何を捉えるかというと、貸金を含め、私が今申しあげた総合的な金融サービス、これがまさに本業であり、そういう意味では、我々のこのトータルな金融力、本業というのは好調であったと言えると思う。
 ご参考までに、国内の預貸金利益がどのくらいのウェイトか、申しあげると、銀行単体では、三井住友銀行単体のトップラインである業務粗利益のうち、国内の預貸金利益は、約4割である。大体連単倍率が1.9倍くらいあるので、おおよそ2倍として、グループ全体の業務粗利益に占める三井住友銀行の預貸金利益は、約2割となる。2割のウェイトを持っているので、預貸金利益の動向は無論全体に影響するが、我々としては、投資家の皆さまには、三井住友フィナンシャルグループ全体の金融力、実力、本業を評価してほしいと思っている。