2015年11月19日

佐藤会長記者会見(みずほフィナンシャルグループ執行役社長)

髙木専務理事報告

 事務局から1点ご報告する。
 本日の理事会で、お手元の資料のとおり、中小企業金融等への取組みについて申し合わせを行った。
 わが国経済の好循環を拡大させ、持続的な成長路線を辿っていくためにも、我々民間金融機関は、取引先企業の事業性の適切な評価、地方創生への貢献、「経営者保証に関するガイドライン」の一層の活用等に取り組んでいくとの認識の下、企業等における年末の資金需要に柔軟かつ積極的に対応し、中小企業等に対する金融仲介機能の発揮に全力をあげて取り組むことを申し合わせている。
 事務局からの報告は、以上である

 

会長記者会見の模様


(問)
 今月、邦銀の中間決算が出た。その総括について伺いたい。大手5グループは純利益が2期連続の減少となっており、内容はそれぞれまちまちだったが、利鞘の縮小や海外経済の動向など、足元の経営環境を踏まえて総括をお願いしたい。
(答)
 邦銀全体の上期決算については、全銀協としての取り纏めは完了していないので、主として3メガの上期決算を中心に全体的な傾向をお話ししたい。
 メガバンクの連結中間純利益の合計は、好調であった前年同期の水準を下回ったものの、期初に設定した業績予想に対しては順調に進捗しており、総じて堅調な決算だったのではないかと思っている。
 商業銀行単体について見れば、業務粗利益、すなわちトップライン収益は、資金利益の減少を主因として前年同期を下回っている。  内訳を見ると、資金利益は、国内外において貸出残高が増加した一方で、預貸金利回の縮小が今期も継続したため、前年同期比で減収となっている。これはしばらく続いている傾向である。
 貸出残高は、国内では3メガともに前年同期比で増加している。全銀協の統計でみても、全国銀行の貸出残高は50ヶ月連続で前年同月を上回っており、国内貸出残高は増勢傾向が続いていると考えている。また、海外についても、3メガともに貸出残高は前年同期比で増加している。しかしながら、アジア地域においては減速感が明確になってくるなど、傾向としては従来と比べると増加ペースは比較的緩やかになっている。
 役務取引等利益、いわゆる非金利収益は、前年同期比で増加している。株式相場の低迷が特に7~9月期の投資運用商品の販売にとって逆風となったことが想定されるが、法人向けなどその他の国内部門が底堅かったことに加えて、海外部門が伸びたことが、非金利収益全体の拡大につながったのだろうと思っている。
 市場部門は、前年同期比では減収となっているが、もともと今期は市場がボラタイルになるだろうということで各行とも業績を保守的に計画していることもあり、想定の範囲内だったのではないかと思う。
 経費は概ね横ばいであったが、トップライン収益の減少により、トップライン収益から経費を引いた実質業務純益は前年同期比でマイナスとなった。
 業務純益以下の項目について申しあげると、与信関係費用は、前年同期に大幅な戻入れとなった反動から減益要因となっているものの、国内の倒産総額は前年同期比7.2%減少し9,144億円にとどまるなどきわめて低位で安定しており、引き続き与信関係費用は低い水準で維持されていると思う。
 株式等関係損益は、今回の決算では銀行によって数字はかなり異なっているが、全体としては政策保有株式売却の流れが実際に表れてきていることもあり、株式売却益が増加している。
 以上の結果、3メガの商業銀行部門の当期純利益の合計は、前年同期比で減益となったものの、連結決算と同様、通期の業績予想に対しては概ね順調に進捗していると申しあげられると思う。
 なお、地方銀行・第二地方銀行について申しあげると、メガバンクと同様に貸出からの収益は伸び悩んでいる一方で、非金利収益の増加や与信関係費用の減少、あるいは株式売却益の増加等によって、全体としては前年同期比で増益となった銀行が多い。
 下期については内外に不確定な要素が存在しているため、邦銀の年度全体の業績について一概に予測することは難しい。国内貸出業務などの伝統的な業務は、貸出残高の増加傾向は続くものの、貸出利鞘の縮小傾向が続き、厳しい環境が見込まれる。足元の日本経済は2四半期連続でマイナス成長となったが、個人消費はプラスに転じており、また、輸出等一部には持ち直しの兆候も表れてきており、下期は、景気回復を確実なものとし、中長期的な成長に繋げていくための正念場になると見ている。


(問)
 先日、トルコのG20首脳会合で、国際金融規制の強化について合意があった。この受け止めと邦銀への影響についてご見解を伺いたい。
(答)
 今のご質問はTLACの件だと思うので、それについてお答えする。TLACについては、全銀協としても意見書をFSBに提出するなど、従来から積極的に意見発信してきたが、最終規則文書に対する統一的な評価はとりまとめていない。したがって、個人的な見解としてお話ししたい。
 TLAC規制は、ご承知のとおり、大き過ぎて潰せない、いわゆる“Too Big To Fail”問題への対応として、グローバルなシステム上重要な銀行、すなわちG-SIB(Global Systemically Important Bank)が破綻した際に、納税者負担・公的資金による救済、いわゆるベイルアウトを回避し、秩序ある破綻処理を可能にするために設けられたものである。具体的には、G-SIBに対して損失吸収可能な一定量の負債保有を義務付けるという規制であると理解している。
 最終規則文書は、本邦銀行界を始めとした各国金融機関の意見も反映された内容となっており、各国当局間で十分に議論を尽くされて、この内容に落ち着いたのだと理解している。
 最終規則文書には重要なポイントがいくつかあるが、主要な点について申しあげる。
 第1に、最低所要水準である。リスクアセット対比では、市中協議文書では16~20%のレンジで提案されていたが、最終規則文書では期間が二つに分かれ、2019年1月のTLAC規制導入時には、16~20%のレンジの下限である16%が適用され、2022年1月には18%まで引き上げられることとなった。規制導入時期は、提案されていたなかでは最も早い2019年となったが、16%から18%に引き上げられるまでに時間軸がしっかりと設けられていると感じている。
 また、市中協議文書では、レバレッジ比率のエクスポージャー対比で「2倍以上」となっていたが、最終規則文書では、2019年1月に6%、2022年1月に6.75%が適用されることとなった。具体的な数値が特定され、かつ6%から6.75%への増加割合は、リスクアセットベースの16%から18%への増加割合と平仄がとれた増加の仕方となっており、銀行界の意見が反映されたものと考えている。
 第2に、預金保険制度の取扱いである。最終規則文書によれば、2019年1月にリスクアセット対比2.5%、2022年1月にリスクアセット対比3.5%をTLACとして算入することが認められる見通しである。この点については、わが国の預金保険制度は破綻処理制度として極めて強靭であることが、金融庁や日本銀行といった関係ご当局がご努力されて、グローバルに認められ、結果として、こうしたかたちで最終規則文書に反映されたのであろうと考えている。関係各位のご努力に感謝申しあげたい。
 さらに、本規制への対応方法として、最終規則文書においては、持株会社が発行するシニア債をTLAC適格とすることが認められた。
 邦銀への影響という面で、TLAC適格債の発行コストはイシューの一つであるが、欧州の銀行の発行事例あるいは外部格付等を踏まえれば、持株会社が発行するシニア債は、子銀行が発行するシニア債よりも若干コストが高くなる可能性があることは事実だと思う。
 その際、どれくらいコストが高くなるか、ということはマーケット次第ということもあろうかと思う。しかしながら、他社の発行事例における追加的コストの水準や邦銀のTLAC所要額の規模等を勘案すると、基本的には業績に大きな影響を与えるとは考えていない。
 今後については、TLAC規制導入までの時間軸を活用して、各行が適切に対応していくものと考えている。


(問)
 フランスのパリのテロのことを踏まえてだが、日本の企業、銀行の取引先のなかで、欧州での設備投資や工場を建てている最中であり、それが中止になったり控えたりするケースは出てきているのか。また、銀行としても欧州向けのファイナンスについて慎重になったり、今後またテロも起きるというふうに色々と言われているので、その辺のスタンスをお聞かせいただきたい。
(答)
 全てを把握しているわけではないので、私の知っている限りにおいて個別行の話としてお答えする。今のところ、特にフランスにおいて例えばオペレーションの撤退や、あるいは進出の再考をしているお客さまがいらっしゃるという話は聞こえてきていない。テロの真の原因が何かということの分析もまだ時間がかかる可能性もあるので、本当の影響がどうなるのかを判断するには少し早いのではないかとは思う。
 金融機関としてできることという意味において、テロ資金の対策といったものに、国際的な連携のなかで、個別金融機関としてもしっかりと対応していくことが社会的責任であると理解している。


(問)
 米国が12月に利上げすることがかなり濃厚になってきた。今後、新興国へのリスクがさらに高まってくると思うが、アジア通貨危機のような新興国のリスクが出てくると会長は思われるか、アジア通貨危機の時と何が違うのか。
(答)
 FRBが利上げをするかどうかについて、ここで予断を持ってコメントをするのは適切ではない。ただ、マーケットでは、12月15、16日のFOMCで利上げを決めるのではないかとの見方が一般的である。そのベースとなっている考え方は、一つにはアメリカの賃金が想定以上に上がり、雇用についても良い数字が出ていることから、利上げをする環境が整いつつあるということである。もう一つは、利上げについて疑心暗鬼の状態が続くよりも、一旦、利上げをして、口火を切って欲しいというセンチメントに変わりつつあるということである。このようなことから、12月の利上げの可能性が高まっているのであろう。マーケット関係者の話では、すでに利上げを織り込みつつあるということで、むしろ来年、何回、どんなレベルで利上げをするのかというところに焦点が移っているようである。
 問題はこの利上げがもたらすインパクトであるが、一般的には、今回は利上げがあったとしても25ベーシスポイント程度ではないかと言われている。また、私自身、ワシントンでFRBのメンバーと議論をしたが、FRBとしても、利上げにより、例えばドルの急激な上昇や、新興国からアメリカなど先進国への資本逃避などを引き起こし、世界経済に悪影響を与えることは、是が非でも避けるべきだと気にしていた。したがって、大きな資本逃避が起こるなどの新興国にとって悪影響となるリスクはそれほど大きくはないであろう。
 また、アジア通貨危機との比較で申しあげると、大きな違いは、一つにはASEAN諸国の外貨準備高が、アジア通貨危機当時と比べて概算で約5倍以上になっていると言われるなど、安定性が増しているということである。また、対外債務に対する外貨準備高の比率についても格段に向上しており、ショックに対する抵抗力は以前よりも非常に高まっている。ただし、アジア通貨危機では、経済の脆弱性だけではなく、政治的な問題が多い国から通貨が崩れたという側面がある。全体としては、外貨準備高が増しているという議論が多いが、他方で別の要素として、政治的な脆弱性がある国については注意深く見ていく必要があるだろうと思う。


(問)
 先般の記者会見で自民党への融資の話が出て、佐藤さんは個別行で対応するものであり、企業の社会貢献の一環と仰った。それはよろしいが、みずほ銀行として自民党に総額24億25百万円の融資残が平成25年末にあるということが自民党の収支報告書に出ている。その融資は社会的貢献なのか、それとも収益事業で行っていることなのか。
(答)
 会長記者会見は個別の取引先に対する貸出の目的や条件についてお話しする場ではないが、一言申しあげるとすれば、特に自民党だからといって特別なことがある訳ではない。通常の貸出と同じ審査、あるいは分析を行って、我々としては貸出をする意味があるということで実行している。これは申しあげておく。


(問)
 そこでお伺いするが、銀行はビジネスの相手の収益力とか返済能力とか、そういうものを見て、貸せばどれだけ利益が上がって返済に回るかということを吟味して貸すわけだと思う。しかもそのうえで、確実な仕事であれば担保をとって補てんをする。よく人を見て、仕事を見て、担保を見て、という言い方があり、普通のビジネスならそうかと思うのだが、自民党の登記簿を見てきたら自民党会館にも土地にも何も抵当権がついていない。つまり無担保でみずほ銀行は24億円を貸しているということになるが、どう見ても今仰った通常の業務というよりも、我々から見ると銀行が杜撰な融資をしているように思うが、如何か。
(答)
 個別の取引先にどういう担保がついているのかということは申しあげることはできないが、一般論としては、例えば土地の担保が無くてもいろいろな担保の取り方はある。また、最近では特に中堅中小企業の取引先に対してしっかりと資金供給をしていくという考え方から、例えば物的担保をとらなくても取引先の事業性や、資金使途の妥当性を評価したうえでしっかりとお金を貸すというのが金融機関の役割になっている。個人保証や、オーナーの方の財産を担保にとることありきというのは金融機関としてあるべき姿ではないだろう。むしろコンサルティング機能を発揮してしっかりと金融仲介機能を発揮していこうという流れに変わってきている。担保の取り方も土地に登記をするやり方だけではない。個別案件がどうなっているかということは申しあげられないが、今のご質問に対してはそういうこともあるということをご理解いただきたい。


(問)
 それもよく存じている。それで自民党の収支報告を見ると、資産というのは建物と自動車しかない。収益性と言ったが、収益性のある企業ではなく、ただあるとすれば選挙に勝ちまくればそれこそ政党交付金はあるのだろうが、政党交付金を担保にするというふうにもいかないだろうし、将来の政治リスクはわからない。通常少なくともビジネスの世界では仰ることは妥当だと思う。政党という特殊な団体にそのような一般論は通じないと思うが、そのような考えでやっているということでよろしいのか。
(答)
 大変恐縮ではあるが、これまた一般論でお答えするしかない。例えば貸出には運転資金というものがあり、将来のキャッシュフローを見込んで短期、あるいは中長期でお金をお貸しするということは一般的に行われており、物的担保がないからお金を貸さないということはない。個別の案件の話は申しあげられないが、金融機関のお金の貸し方というのはいろいろなやり方があるということをご理解いただきたい。


(問)
 そういう相手に今度献金をされる。おたくがやるかどうかわからないが、仮に行われるとしたならば、担保もなく24億円を貸しているところにお金を寄付するということはそれこそ債権減免、あるいは利息の帳消しということになるのではないか。普通に考えれば担保もとっていない相手に、しかも収益力もない相手にお金を貸してそこに寄付するというのは、我々預金者から見るとどう見ても銀行にそんなことを頼んでいる訳ではないという感じがする。その辺が、しかもこれはおたくだけじゃなくて、メガバンク3行とりそな銀行でやっていて総額72億円の融資がなされている。これはもちろんおたくの銀行だけではないし、日本を代表するような銀行が、そのような不透明で、しかも理に合わない金融をやっていてよいのか。全銀協会長としてこういう姿というのは健全だと思われるか。
(答)
 ご質問にお答えするが、まず、担保がない取引は全て不透明だというご指摘は当たっていないので、それはまずご承知置きいただきたい。それから、寄付をすることと、貸出をすることは全く違う行為であり、貸出は先ほど申しあげたようにしっかりとした審査を行い、返済能力を吟味したうえで実行するということで他の貸出と全く違いはない。寄付をするかどうかはこれからの問題だが、寄付についてはその寄付の目的の妥当性をしっかり判断して経済社会の一構成員としてその寄付の妥当性があれば行うということである。個別行の話ではあるが、例えば病院や学校などに対して、貸出も寄付も行っている例はたくさんあり、そういう意味では特別な例にはならない。


(問)
 最後に、10年前にもこのことが問題になり、自民党の方が銀行からの寄付はいらないということになった。その時にりそな銀行が多く貸し込んでいたということが問題になり、金融庁から指導が入り、後にりそな銀行は貸出を大幅に減らした。しかしその代わり、メガバンク3行が貸出を増やし、おたくは2005年時点ではわずか7億円であったが、それがこの10年間で3倍になっている。
 それはおたくのご判断でいろいろなことをお考えになったというんだけれども、それはりそな銀行の減額分をメガバンク3行が肩代わったとしか受取れない現象だが、なんでこの後に及んで自民党融資を急増されたのか。
(答)
 それは個別事案でありお答えできない。また、りそな銀行がどうして融資を減らしていったのかは存じあげない。ただし、他行を肩代わることのみを目的とした貸出をすることは通常ありえない。貸出というものは必ず個別に金額や返済能力の妥当性を判断して実行されるものである。残高だけを外形的に見れば今ご指摘のような残高の減少があったかもしれないが、あくまでも個別行の判断としておやりになったことだと理解させていただきたいと思う。


(問)
 銀行は過去に公的資金を注入されているが、やめていた政治献金を復活させることとなった場合に、世論の支持は得られるのか。
(答)
 復活させるかどうかはまだ決めておらず、仮定の質問にはお答えできない。


(問)
 公的な立場として、これも仮定になってしまうかもしれないが、一つの政党に献金するというのはどうなのか。
(答)
 これも仮定の質問ではあるが、あえてお答えするとすれば、経団連は、企業の政治献金は企業の社会貢献の一環として重要性を有するとの考え方に立っている。社会貢献とは何かという問題は従来から議論されていることと思う。政治献金の拠出の是非について銀行界の立場で申しあげれば、公的資金をお借りしていた立場、あるいは過去の経緯として法人税をお支払いしていなかった立場と、今銀行界が置かれている立場とは確かに違うとは思う。一方、それ以上に社会貢献の一環として企業が政治献金をすることの意味はしっかりと捉えられなければいけない。例えば、どの政党に献金を行うか、もしくは行わないかは、その政党の持っている政策、あるいはその政策が日本経済に与えるプラスとマイナスの影響、またそれに対する金融機関の立ち位置をしっかり見極めたうえで、判断すべきである。
 これから検討が行われることになろうが、金融機関が政治献金を行うとすれば、今申しあげたような観点で、社会貢献の意味を含めて、しっかりとした議論を踏まえたうえで行われるべきであると個人的には考えている。


(問)
 同じ話題で大変恐縮であるが、政治献金の話で、先月から会長は経団連の言葉を引き合いにされて社会貢献と仰っておられるが、会長自身は、自民党に限らずどの党でもよいが、政治献金が社会貢献と考えるかということを伺いたい。ポイントは二つあり、1点目は、そもそも銀行は様々な思想信条のお客さんを相手にし、そこからお金を貰っている会社が、特定政党に献金をするというのは、少しおこがましいのではないかということ。2点目は、特に、みずほとして社会貢献をする場合は、みずほの「社会貢献の取組み方針」としてホームページに書かれておられるが、「実際の活動について積極的に情報開示する」と方針されている。ホームページにこの前、ミャンマー洪水被害に50億円を寄贈したというふうにきちんと書かれている。これを社会貢献として会長はしっかりと認識されておられるならば、どこの政党でも良いが政治献金をしたとき、ここはみずほの社会貢献としてやりましたということを、ホームページにもきちんと謳って、いくら出しましたということを店頭でもお客さまにこれが我々の社会貢献ですと胸を張って言えるのか、その辺りをお答えいただきたい。
(答)
 最初のご質問は個人としてという意味かと思う。社会貢献と考えるかどうかについて、個人の見解をお答えする場ではないので、回答は差し控える。
 社会貢献についてはCSR、あるいは最近はもう少し高い次元でESGという考え方があり、みずほとしてもこのESGの取組みを各投資家に説明している。これは、その中の“S”にあたる部分と思われる。今後、個別の金融機関、あるいはみずほが、政治献金をすると判断した場合の仮定の話だと思うが、それをどのように説明していくのかについては、我々の開示レベルを含めて、慎重に検討させていただく。


(問)
 3メガバンクで政策保有株式の削減目標を策定されたが、今後の持合い解消に向けた手ごたえについて、どのように感じているか。
 また、持合い解消による顧客の流失など、ビジネスへの影響はどのようなものが考えられるか。そのデメリットへどう対処するかについてもお伺いしたい。
(答)
 個社の話ではあるが、先般の中間期決算発表において、政策保有株式については全体の4割を売却の対象として考え、そのうちの7割を今年から18年度末までに売却する方針であること、16年度末までにその7割のうち4~5割を売却する方針であることについて説明した。他のメガバンクとは定義が異なるため、水準やスピード感について相互に比較しにくくなっているが、他のメガバンクがどうであれ、我々としては株を保有することが金融機関の抱えている一つのリスクであり、株価変動のリスクにさらされているということは事実であるため、しっかりと対応していきたいと考えている。
 現状を申しあげると、8月にクライテリアを発表して以降、個別の取引先と丁寧に話を続けている。特にクライテリアに届かなかった取引先と交渉を始めているが、やはり「分かりました、売ってください」という先は少ない。政策保有株式の売却は今始めたわけではなく従来から続けてきたものであるが、変化があるとすれば、コーポレートガバナンス・コードはお客さま自身も対応していかなければならないものであり、みずほの「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の考え方に対する理解が進んでいると感じられてきていることである。個別に交渉をした際の反応として、「どういうかたちであればクライテリアをクリアできるのかについて、是非考えさせていただきたい」とおっしゃるお客さまがいるのも事実である。ただし、単に議論をすればいいという話ではなく、お客さまのビジネス、あるいは今後の成長分野がどういうものであり、それをみずほがどのようにお手伝いできるかということを、一社一社詳細に議論をさせていただいたうえで、クライテリアをクリアすることが確実であると判断したお客さまについては、当然、そのことを踏まえて対応していく。
 まだ話が始まったばかりであり、全体観としてどのようなレベルになっているかを申しあげるには少し早く、今はご理解をいただいたうえで交渉が始まっている段階であると思う。ただ、ご質問にあったように、取引を他の銀行に全部移すといった話にはほとんどなっていない。今後交渉が進んでいくなかで、結果としてそういうことが全くないとは言い切れないものの、全体として「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の考え方に対する理解は想像以上に進んでいると感じている。


(問)
 銀行の業務範囲拡大について伺いたい。今年の5月から「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」が開催され、およそ半年間議論がなされてきている。特に、IT分野への買収をどうするかという問題や、経営管理、どこまで親会社の経営管理が及ぶかなどの議論が半年経ったところで、業務範囲拡大について会長の問題意識を伺いたい。
(答)
 11月18日に第8回の「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」が開催され、決済関連IT企業への出資の容易化、ECモール運営会社への出資、銀行グループ間の決済関連事務等の受託など、FinTechがらみのIT・決済関連業務の取扱いについて議論がなされた。
 銀行を中核とする金融グループが、イノベーションやテクノロジー等を戦略的に取り込みながら柔軟に業務展開を行っていくことについて、ワーキング・グループに参加していたほとんどの委員が賛成であったと認識しており、今後議論がとりまとめられていくと思う。
 最終的には、こうしたものについて制度的に、例えば持株会社の中で取り組めるようにするのか、あるいは金融グループ内の中核銀行の傘下で取り組めるようにするのか、いわゆるコーポレートストラクチャーに伴うバリエーションをどうもっていくのかということもあると思う。コーポレートストラクチャーについて全体感を申しあげると、それぞれの金融グループがそれぞれの事情で今の組織を作っている以上、そのなかで実態に合わせて取り組んでいけるかたちで検討されていくべきであろうという意見が多いように感じている。
 なお、経済産業省で行われている産業構造審議会においても、IoTあるいは人工知能といったテクノロジーを日本経済としてどう取り込むのかが非常に大きなテーマとなっている。金融とは少し離れているものの、FinTechの1つについて議論していることには間違いなく、いまの日本の現状が欧米に比べて遅れている面があるということについて、官民ともに認識を一致させつつあると感じている。
 したがって、先ほど申しあげたワーキング・グループにおいて、我々としては日本の金融グループが欧米金融機関と伍して戦っていくために極めて正しい方向に向けて議論をしていただいていると思っている。個別行として、単にこうした議論を待っているだけではなく、積極的に具体的なアクションを起こしていくことが必要と考えている。今から取り組んでいかないと大きなビハインドを取り戻せない虞もあるため、個別行としても、制度面での積極的な議論とともに、具体的なビジネスにおいても積極的に取り組んでいくことが非常に大事なのではないかと私自身感じている。


(問)
 先ほど来、政治献金の話も出ていたが、規制緩和の議論をされているなかで、政治献金等、一定の政治とのパイプ作りというのは効果があるというふうに考えるのか、コストと考えるのか、あるいは切り離して考えるべきなのか。そのあたりの見解をお伺いしたい。
(答)
 ただいまのご質問だが、規制緩和議論を進めていくうえで、現政権との距離感が近い方がよりやり易いのではないか、というご質問でよろしいか。
 人工知能とかIoTといった分野は、私の知る限りでは、ほとんどの方が「もっとやるべきだ」と言っている分野だと思う。
 ただ、個人的な感想だが、それをどうやって進めていくのかということについてのマスタープランがわが国でまだできているわけではないと感じている。例えば人材ということを考えても、シリコンバレーのこうした分野で活躍している人の半分以上が外国人だと思われる。インドやフィリピンなどアジアからの優秀な学生、あるいはすでにテクノロジーを持った方々がシリコンバレーで動いている。それに対して日本では、こうしたテクノロジーを持ち開発ができる人材が決定的に不足しており、そのベースになるところもまだできていない。これは党であるとか、政治集団であるとか、そういったものをはるかに超えた日本企業、日本経済の抱えている課題だろうと感じている。
 例えば、余談になるが、Googleが自動走行という分野に大きく踏み込んできている。これはいわゆるプラットフォーマーという分野で、自動車を製造する人たちが自動車産業をリードするのではなく、作られた自動車をどう使うかということを決めるプラットフォーマーが自動車産業を支配するという発想のもとに動いているわけである。そうしたことから考えると、日本がそのようなプラットフォーマーになるような企業を作り出せるのかという大きな課題がある。同時に、FinTechもそうであるが、例えばロボットのようなモノづくりの技術は日本では進んでおり、それを例えばウェアラブルのロボットにして介護に使うといったかたちでの応用という面では、課題先進国の日本はまだ負けていない部分があると思っている。そうしたグローバルな競争のなかで、日本経済がどこを強化していかなければならないのかということを、国全体として真剣に考えていく時期であろうと考えており、個人的な見解ではあるが、一つの党であるとか、一つの政治集団であるとか、こういったものの力を借りて何かするというようなレベルの問題ではないのではないかと感じている。


(問)
 邦銀の人民元ビジネスについてお伺いしたい。人民元がIMFのSDR構成通貨入りする方向になっているが、邦銀のビジネスへの影響や、人民元が国際化していくなかで邦銀のビジネスチャンスになりうるのか、具体的にどのような業務がそれにあたるのかを教えてほしい。
(答)
 中国が様々な分野で世界の持続的な発展と国際秩序の維持に対して積極的な役割を果たしていくことは、これから極めて重要になると思う。人民元の国際化に関しては、IMFがSDR構成通貨入りを今月末にも判断していくことなるであろうし、色々な考え方があると思うが、「一帯一路」構想やAIIBの創設も、見方を変えればグローバル経済の発展に対して中国経済がそれなりの役割を果たそうということではないか。なんといっても、世界第二位の経済大国であるので、巨大な中国が世界の安定、世界経済の繁栄にしっかりと役割を果たしていくことは、基本的に歓迎すべきことだろう。
 個別に人民元の国際化について申しあげると、SDR構成通貨入りについては、いくつかのハードルがあり、利用の自由度など様々な要件がある。これをIMFが審査して、SDR構成通貨入りを認めるとすれば、人民元がそうした基準に合致していると国際社会が判断したことになると思う。人民元の国際化は、決済通貨の多様化の観点も含めて、中国経済の大きさからすれば歓迎すべきことであろう。
 また、人民元のさらなる利便性の向上、あるいは、公平、公正で透明性の高い金利や為替レートの決定メカニズムの構築が、中国という国が国際的な責務を果たしていくうえで必要となってくるだろう。SDR構成通貨入りが、中国経済が開放的で説明可能な経済体制になることを後押ししていくと考えている。先ほど、「一帯一路」構想やAIIBの話をしたが、まだわからない部分も多いものの、中国経済という限られた枠の中での議論ではなく、アジア、あるいはグローバルなインフラの需要に対して、中国が積極的に地域や世界に貢献するようなかたちで具体的にプロジェクトが進んでいくということであれば、それが公平で公正な競争環境の中で行われる限りにおいては、これもまた歓迎すべきことだろうと思う。そのようなかたちになっていくのかについては、国際社会がしっかりと注視していくことが必要だと思う。
 邦銀のビジネスへの影響については、これはプラスだと思う。我々は世界の拠点で人民元の取扱いを始めているので、人民元の流通が国際的に増えていくことで、我々の決済ビジネスや為替ビジネスにとっては大きなプラス要素になってくると思う。また、先ほどのインフラあるいはプロジェクトファイナンスのエリアが拡大することになれば、我々の戦う土壌が広がっていくことになる。特にプロジェクトファイナンスについては、日本の金融機関はグローバルでもトップ5の地位を占めているので、ビジネスチャンスは広がっていくと思う。隣国の中国が国際社会に入ってくることについては、競争が激しくなる面はあるものの、歓迎すべきことだろうと考えている。


(問)
 冒頭の幹事社質問のなかでも言及があったが、この1年間、特にマーケットについてはボラタイルな状況が続いてきたという事実があると思うが、最近色々な機関が、世界のマーケットで突発的に流動性が低下する事象というのを指摘していて、特に債券市場などでフラッシュ・ラリーと呼ばれるような現象も起きているようである。
 その原因について会長自身はどのような見解で見ているのか、あるいはこうしたボラタイルな環境というのはこれからも続くことが考えられると思うが、銀行経営にとってどういう観点で留意していくべきであるとお考えか。
(答)
 ご指摘のとおり、流動性の低下という問題だが、これはIMFも指摘しているところであり、最近レポートも出ている。市場流動性が低下するということに伴ってボラティリティが高くなっている、という指摘であり、これには複合的な要因があるのだろうと思う。
 これは一つの仮説でしかないが、リーマン・ショック以降金融規制が強化され、レバレッジ比率規制やボルカールールなどが課された結果、一つにはバランスシートを大きくしていくことが金融界として非常にやりにくくなっていることがあると考えている。バランスシートを縮小していこうという動きが過去に比べると圧倒的に強く、特に欧州の銀行に顕著に見られる。そうした傾向が強くなることによって、市場が縮小していき、市場流動性が低下して僅かな変化でボラティリティが高くなる。すなわち、金融規制の強化が市場流動性の低下やボラティリティの上昇といったことにつながってきているのではないか、と思う。
 もう一つには投資家、例えば個人投資家も年金基金も、流動性の高い資産に対するニーズが非常に高くなっていることもあるのではないかと考えている。おそらく世界経済の先行きや構造に対してある程度リスク・コーシャスになる状況になっていて、流動性の高い資産の需要が高くなっているのではないかと思う。ご承知のとおり、リーマン・ショックが2008年に起こったが、その前のマーケットの混乱は1997年から1998年にかけてのアジア通貨危機の時代があり、これはリーマン・ショックの10年前である。その前はブラックマンデーで、1987年、さらにちょうどその10年前。このように一種のシクリカルな資本主義の動きを見ていると、2015年は、リーマン・ショックから8年経っているわけであり、別に運命論者ではないが、あと2、3年のうちにマーケットの混乱があってもおかしくはないと考えている。そういう感覚がマーケットにはあるのだろうと思う。中国のスローダウン、あるいは資源価格の低位安定、それに伴って、アジア、資源国でいえばロシア、ブラジルの今の混乱。こういったものが特定の国の問題として起こっているだけではなく、大きな流れとなりつつあり、安定していた経済が少し揺らいでいるのではないか、という考え方もマーケットのなかではあると思う。
 一つの見方であるが、リーマン・ショックの後に、各先進国が景気刺激策のために、こぞって金融緩和を実施し、これが新興国に流れてBRICsの時代を作り上げたということは、おそらく間違いではないと思う。アメリカが金利を上げるだろう、ということを一つのきっかけとして、その過剰流動性にアンワインドが起こりつつある。一つの大きな流れとして歴史を見たときに、ここから先に何か不確実なことが起こるのではないかというセンチメントが少しずつ広がってきているということではないかと思う。そうしたことから、投資家が流動性の高い資産に集まる傾向になっている可能性がある。これはあくまで私見であるが、こういったことが市場流動性の低下に繋がっているということではないかと考えている。この傾向の捉え方がもし正しいとすれば、これからしばらく注意して見なければいけない。今はそういう環境にあるのだろう。
 各金融機関の経営としてはこうした流れをしっかりと把えて、市場流動性の低下という問題を、色々なストレステストをやりながら、どのようなケースが起こっても安定的に持続的に経営していけるよう、注視していくことがこれから非常に大事になっていく。企業経営者としては、そうした一種の歴史観を持って経営するということが益々大事になってくるのではないかと個人的に感じている。


(問)
 先ほども少し出ていたが、世界経済の不安定化というものが少し見えるようななかで、冒頭おっしゃられたように、銀行決算のなかでアジア向けの貸出が少し落ちている。この下期、それからその先も含めてメガバンクの海外ビジネスの方向感として、何か変えなければいけないようなことになっていくのか、また、どういう方向に進んでいくべきなのか伺いたい。
(答)
 国際部門がこれからどのように伸びていくのかということは、特にメガバンク3行にとって非常に大きなテーマだと思う。このことは、みずほ個別行としても、2016年度から始まる次期中期経営計画の議論において大きなテーマの一つとなっている。ただ、ここから先は方針の取り方によって大きく違ってくる可能性があると思う。
 貸出業務に焦点を当てて考えると、おそらく従来のような伸びや収益が維持されることは、なかなか考えにくいのではないかと思う。
 その理由の一つは、経済のスローダウンによって、資金需要が従来に比べて少し緩やかなものになると見込まれることである。加えて、個別行で見ても、すでに海外業務において貸出スプレッドが少しずつ下がり始めていることもある。もう少しリスクの高いところに突っ込んでいけばスプレッドをキープできるかもしれないが、そういう環境でもないとすれば、比較的グローバルでクレジットが高い取引先のところに金融機関が集中し、そこでの競争が激しくなってくる。そうすると、自ずとスプレッドが下がってくる。国内と同じであるが、貸出残高はかろうじて伸ばせるとしても、預貸の貸出業務だけでの収益力というものは、従来のような高収益から少しスローダウンする可能性が高いだろうと思っている。
 ただ、ここから先はビジネスモデルの問題である。海外業務を貸出だけで検討する場合には厳しくなってくると思うが、例えば、みずほでは、貸出でドアを開けて、その後に、社債、エクイティ、アドバイスという証券や信託のビジネスも含めて提供することで、貸出金収支は伸びなくても収益全体は伸びるという構造を作り上げてきている。そういう意味においては、非金利収入を伸ばしていく余地はまだまだ大きいと思う。
 一例だけ挙げると、私どもがRBSのアメリカにおけるアセットを購入した結果、アメリカの社債引受マーケットにおけるランクはトップ10入りし、社債のアレンジによる非金利収入は非常に増えてきている。したがって、例えばこうした貸出に依存しない収益構造をどう作り上げていけるかが、今後の国際マーケットのボラティリティの高さのなかで、しっかりとした収益力を維持できるかのポイントになってくると思う。個人的な見解ではあるが、環境が厳しくなるからといって、必ずしも邦銀の国際部門における収益力が右肩下がりになっていくということではないだろうと思う。


(問)
 それからもう1点、これも冒頭おっしゃられたテロ資金対策について、具体的に全銀協、あるいは日本の金融機関としてこういう取組みをしていくということがあるのかどうかについてもあわせてお願いしたい。
(答)
 テロ資金対策の話だが、日本全体ということで考えると、昨年の6月、日本はFATFからマネー・ローンダリング対策およびテロ資金供与対策にかかる法整備が不備であるという指摘を受けているが、それについては、昨年の11月に、犯罪収益移転防止法の改正法と国際テロリスト財産凍結法を成立させている。いずれもまだ施行前ではあるが、この改正法あるいは凍結法の内容を踏まえて金融機関としては準備を進めてきている。そういう意味では国際的なレベルにおいて日本の金融機関、特にグローバルに展開している日本の金融機関がテロ資金対策において劣後しているということにならないよう、しっかりと対応が出来ていると思う。
 ただ、今回の事件も含めて、資金の流れがある程度解明されていくなかで、従来のグローバルなテロ資金対策では不十分な面も出てきかねないと思うので、そうした動き、あるいは事実関係についてはしっかりと注意深く見ながら、追加的な対策が必要であれば、個別行としても金融界全体としても対策を打っていかなければならないと思っている。


(問)
 先ほどの政治献金の話に戻って恐縮だが、まだ決まっておらず仮定の話であると思うが、一部報道の中では、97年頃の2千万円程度の規模感という報道も出ているとは思うが、その辺の規模感について、もし再開する場合、どのようなお考えかを教えていただきたい。
(答)
 金額の規模感については全くアイデアを持っておらず、その報道の内容が正しいのかどうかということについても承知していない。まず献金を行うか否かを決めていないので、金額の規模感についてコメントする状況ではなく、回答は差し控えさせていただく。


(問)
 先ほどやるかやらないかと仰っていた政治献金の話だが、10月15日の会長会見後、再開を示唆されるというような報道があり、全銀協としてはこの政治献金についてどのぐらい今現在検討が進んでいるものなのか、その辺ご存じのところを教えていただきたい。
(答)
 全銀協としては何か取りまとめを行う考えはなく、個別行として検討する案件であると考えている。


(問)
 一部報道によると、年内の実施という見方もあるが、その辺は具体的にどうか。
(答)
 スケジュール感について、年内に何かしなければいけないとか、何かするということが決まっている訳ではない。


(問)
 社会的責任ということで伺いたい。先ほど、社会的責任ということを何度か、これまでも仰ったと思うが、出すか出さないかということの社会的責任よりも、やっていることをどう説明するかということの社会的責任が大事だと思う。先ほど、私は融資のことを聞いたが、融資は個別案件だから言えないと何度も仰ったが、自民党への融資というのは中小企業への融資とは全く違う。それを一律にして、経営者の担保をとることはしないといった話をされるが、自民党は収益が無く、政党交付金と寄付しか無い。政党交付金で借金を返す訳にいかないから当然寄付で借金を返していかなければならず、寄付というのは借金の返済と繋がっている話だから私は問題にしている。どういうふうにこれからされるつもりか。
 12月末という話も出ているが、12月末に一応自民党は帳簿をとじる。それまでにそうしたことをする訳だから、いつもこの11月や12月にこの問題は起きる。考えていないといった話をされるが、もう時間が無いので、やるかやらないかを含めて、どうきちんと政治に対してコミットするのか。また融資と献金は一体であり、そこを世の中に個別の案件についてはお答えしませんということで言っていたら、これは逆にそういうことに隠れて、実際本当の姿勢は言わないというふうに受け取られかねないので、その辺についてどうお考えか。ディスクロージャーという話でお伺いしたい。
(答)
 一般論として申しあげれば、説明責任を果たしていくことは、金融機関としての責務だと思う。ただ、繰り返しになるが、融資と献金は一体ではない。そこには見解の相違があると思うが、それを踏まえたうえで、しっかりと説明するということは必要だろうと考える。


(問)
 先ほどの流動性の低下の関連で1点お伺いしたい。ドル調達コストの上昇についてだが、来月、アメリカのFRBが利上げをするのではないか、というマーケットの見方も強まるなかドル調達コストの上昇が続いているが、今般のイスラミック・ステートによるテロ等の激化が進むと、例えば、ドル調達コストの上昇は何かしらの影響があるのか。今後ドル調達コストの先行きをどう見ているか。また、それが邦銀の今後のビジネスに与える影響を、テロとの関連も含めて伺いたい。
(答)
 ドル調達コストが足元上がってきていることは事実で、いまご指摘いただいた点は重要なポイントである。半年前と今とを比較し、ドル・円スワップの数字で申しあげると、1年物から5年物の範囲でおよそ20ベーシスポイントから25ベーシスポイントくらいコストが上がってきていることは事実である。
 少し振り返ると、2011年末は欧州危機のあった時期だが、当時、ドル調達コストは急に上昇した。それから徐々に2014年の前半くらいまで下がったが、2014年の中頃からまた少しずつ上がってきた。この大きなトレンドの原因を特定することは非常に難しいと思うが、先ほど申しあげたような、グローバル経済の不確定要素や不安定性のようなものをプレーヤーが感じ取り、ドル調達について急ぐ、あるいは多く取るといったことが、2014年の中頃から起こり始めたということではないかと思う。
 加えて、足元で申しあげると、今は年末越えの資金を取らなければならないという、もともとドルの需要が高まる時期であることと、それに12月のFOMCでの利上げ観測がある。マーケットは織り込んでいるとは言いながらも、どうしても安全サイドに動いて、ドル調達ニーズが非常に高まっているということだと思う。それから、数字で実証することは難しいが、ご指摘のテロの問題も明らかに影響しているだろうと思う。過去にもこういう問題が起こった際、瞬間的に跳ね上がる程度であったが、事実としてドル調達コストが上がったこともある。そういう意味では複合的な要因だろうと思う。
 邦銀への影響については、二つに分けてお答えする。コストがどうなるかという問題と、資金が取れるかというアベイラビリティの問題とがあると思う。
 まず、コストの問題は、今申しあげたように明らかに上がってきている。これがどれくらい続くのか、どのくらいのレベルで上がっていくのかということは、これから見てみなければ分からないが、先ほど申しあげたような、アメリカの利上げがどのぐらいの幅で行われるのか、あるいはどのぐらいの頻度で行われるのか、そのスピードとレベルによってかなり違ってくるだろうと思う。ここは我々の経営にとっても重要なポイントで、一時的な負担増ということは覚悟しなければいけない。ただし、今のレベルであれば経営に大きな支障をきたすようなことはないと思う。
 もうひとつは絶対量、アベイラビリティの問題である。邦銀はずっとアジアを含めて海外貸出を伸ばしてきたので、やはりドルが必要になってくる。各行ともそうだが、現在、邦銀のクレジットが何か問題になっている訳ではないので、過去のジャパンプレミアムのような理由でコストが上がっている訳ではない。相対的には日本の金融機関は安定していると見られているので、その点では有利である。
 今後とも、貸出だけでなく、お客さまから預金をいただく、あるいは中央銀行から預金をいただく、さらには我々自身がドル建ての債券を定期的にある程度のボリュームで出していき、それを投資家の方に買っていただくということなどに、しっかり取り組んでいかねばならない。こうして調達サイドの構造をしっかりと作り上げていくことがこれから非常に重要になってくるだろうと思う。そういう意味では、海外マーケット、特にドル建てのマーケットにおける日本の金融機関の社債の需要には非常に強いものがあるが、これは日本経済の強さ、あるいは日本の金融機関の安定性というものに支えられているのだろうと思う。そこがベースとなり、今の段階ではアベイラビリティの問題は生じていない。
 ただ、もしこれから中国経済がスローダウンするようなことがあれば、日本経済に対するインパクトという観点から、日本の金融機関のクレディビリティに連鎖反応を起こすというようなことが理論的には無い訳ではないと思う。いずれにしても、コストと調達量すなわちアベイラビリティの両方とも、大きな経営課題としてしっかり見ていくことが非常に大事になってくる。ご指摘の点は、これからの最大の課題の一つだろうと思う。


(問)
 先日、日経新聞の紙面に高市総務大臣のインタビューが掲載され、ゆうちょ銀行の預入限度額引上げについて具体的に言及されていたと思うが、担当大臣からそうした発言が出てくるということは、少し局面が変わってきているのではないかと感じる。改めてゆうちょ銀行の預入限度額引上げについてのご見解と、仮に、引上げを国が進めていくのであれば、銀行業界として受け入れる余地はあるのか、という点についてお聞かせ願いたい。
(答)
 ゆうちょ銀行の預入限度額の件については、9月に公表された郵政民営化委員会の調査審議状況の報告においても、なんら方向が示されているわけではないので、実際に引上げの検討がされているという認識は持っていない。
 11月には、ゆうちょ銀行を含めた日本郵政グループ3社の株式上場が行われ、株価も今のところ堅調に推移しており、これ自体は金融界として歓迎すべきことだろうと思う。日本郵政株式の売却収入が復興財源に充当されることからも、上場が順調に行われたことは、大いに歓迎すべきことだろうと思う。
 今後の問題としては、以前から申しあげているとおり、日本郵政グループ自身が、平成27年4月に公表した中期経営計画に従って、しっかりとした経営を行っていくことが大事である。また、ゆうちょ銀行については、リスク管理の高度化や運用機能の強化等を掲げており、必要な人材の確保などを通じて、成長戦略に沿った企業価値の向上を現実に示していくことが非常に大事である。そうした方向感であれば、銀行界としては、ゆうちょ銀行との間においても、様々な連携・協調関係が構築できると思う。例えば、ATM連携の拡充やファンドの共同組成等、これまでもあったような話が前に進む可能性があり、そうした方向感は、我々銀行界にとっても決して悪いものではないと思う。ただ、預入限度額の引上げとなると、以前から申しあげているとおり、銀行界との関係では、認められない議論になってくると思う。
 なぜならば、これまでも申しあげてきたとおり、ゆうちょ銀行の規模の大きさやバランスシートの中に含まれているリスクの大きさは国民経済的な負担になりうるという問題があるなかで、仮に預入限度額が引き上げられれば、さらなる規模の拡大に繋がるのではないかという懸念があるからである。また、安倍政権が標榜している地方創生という観点からも懸念がある。預入限度額引上げで一番大きな影響を受けるのは、地方の金融機関である。ご存じのとおり、地方創生に向けた取組みでは、県のみならず、市から町、村まで地方創生のプランを作っており、そこに地方の金融機関は大きく噛みこんで、限られた資源のなかで、地方創生のためのアイデアを必死に考えている。そのようななかで、仮に、ゆうちょ銀行の預入限度額が引き上げられ、地方の金融機関の体力を根こそぎそいでしまうということになれば、地方創生という目的を十分に果たせなくなるのではないかと思う。ゆうちょ銀行が運用業務の強化とリスク管理の高度化にしっかり取り組む一方、地方では地域金融機関と連携・協調していくことがあるべき姿であり、決してそれは不可能なことではないと思う。