2016年11月17日

國部会長記者会見(三井住友銀行頭取)

髙木専務理事報告

 本日の理事会で、お手元の資料のとおり、中小企業金融等への取組みについて申し合わせを行った。
 このなかでは、これから年末に向けては、企業等の資金需要が高まることに伴い、企業金融が逼迫しやすくなる時期であることから、中小企業等の資金需要に柔軟かつ積極的に対応し、中小企業金融等の取組みに全力を挙げることなどを申し合わせている。

 

会長記者会見の模様


(問)
 まず1点、先般行われたアメリカの大統領選挙でトランプ氏が勝利した。これをどのように受け止めているか。また、経済、マーケットへの影響をどのようにお考えか。
 もう1点は、メガバンク3行の中間決算が出揃ったが、どのように総括しているか。マイナス金利の影響や通期の見通しについても併せてお伺いしたい。
(答)
 それでは、まず最初のアメリカの大統領選挙の話だが、今月8日に投開票が行われ、大方の予想を覆し、共和党のトランプ氏が大接戦を制して、第45代米国大統領に就任することとなった。
 前回の会見で、私は、10月初めのワシントンでのIMF・世銀総会において、多くの金融機関のトップの方々からクリントン氏の勝利を予想する声を聞いたと申しあげた。その後、クリントン氏の私的メール問題に対するFBIによる再捜査等から接戦が報じられるにつれ、開票日当日まで勝負はもつれるかと思っていたところ、こうした結果となり、正直驚いた。事前にはクリントン氏有利の見方が多かったわけだが、最終的にトランプ氏が逆転したのは、アメリカ国民の現状への不満、変化への期待、これが我々の予想以上に大きくなっていたのだと思う。
 また、イギリスのBrexitと同様に、経済がグローバル化し、自由貿易が進展するなか、国と国との間や、国内でも富裕層と貧困層等の間でこうした成長メカニズムから享受する恩恵に差が生じ、この潮流に逆行するような内向き志向や保護主義的な動きが広がってきていることが根本的な背景として存在していると思っている。
 トランプ氏は選挙期間中、米国第一主義、過激な保護主義、排外主義を主張してきたことから、トランプ氏勝利確実との報道を受け、日経平均株価が急落した。一方で、勝利宣言における穏当な発言等を受けて急反発するなど、政治や経済をめぐる先行き不透明感の高まりにより、マーケットのボラティリティが高まっていると思う。今後、トランプ氏がどのような政策を打ち出していくのかによってマーケットや経済に与える影響は大きく異なってくるので、トランプ氏の今後の動向には目が離せないということだと思う。
 一方で、トランプ氏は実業家であり、現実主義的な一面も併せ持っていると言われていることから、大統領就任後は、過激な主張のトーンにも変化が見られるのではないかという期待もある。トランプ氏は、「強い米国」をつくるために、金融政策に頼るだけでなく、減税や財政出動を行う意向を示しており、従来の金融・経済環境が全く変わる、言わば「ゲームチェンジ」となる可能性を期待できる面もあると思っている。
 わが国経済に対する影響もまだ見通し難いという状況だが、最大の懸念材料は、保護主義的な貿易政策やドル安志向が強まることである。TPPの発効が不透明になってきた状況下、輸出や企業収益の下振れを通じて、わが国経済にマイナス影響が生じる可能性がある。なお、このマイナス影響は、わが国だけにとどまらず、世界経済のリスク要因にもなり得るわけである。これまでの自由貿易体制の下、グローバル・サプライチェーンの進化などによって経済発展が促されてきたため、世界的に保護貿易への傾斜が広がれば、大半の国で成長率の押し下げ要因として働く恐れがある。
 こうした観点からも、ぜひトランプ氏には、米国経済の成長はもとより、世界経済の成長や国際政治の安定に向けて、力強くリーダーシップを発揮していただきたいと思う。また、我々日本企業がグローバルに活動するうえで、良好な日米関係の維持というのは必要不可欠であり、日本政府にはトランプ政権との円滑なコミュニケーションをお願いしたいと思う。
 それから、2点目の質問の中間決算についてだが、全国銀行ベースの計数については、現在、全銀協で取りまとめているところであり、全体像についてはこの場で説明できる状況ではないが、当行を含む3メガバンクグループの決算を中心に、その概略について説明をしたいと思う。
 3メガグループ連結の2016年度上期決算を総括すると、各グループとも純利益は5月に公表した業績目標は上回ったものの、3メガグループ合算で見た前年同期比では約10%程度の減益、本業の儲けを示す業務純益も約10%程度の減益となっている。
 3メガグループの業績の内容については、例えばグループ会社の構成等が異なるため一概には言えないが、共通する特徴点を三つ申しあげたいと思う。
 1点目は、マイナス金利政策の下、各グループにおいて預貸金利回り差が縮小しており、資金利益がいずれも前年同期比減益となったことである。
 2点目は、マーケット環境が依然不透明ななか、リスクオフムードの広がりによってお客さまが運用に対して慎重になったことから、投資信託などの資産運用商品の販売が振るわなかったことである。
 3点目は、期末の為替相場が前年同期比でいうと19円程度の円高となったことにより利益が下振れしたことである。通期だが、各グループとも上期決算が期初目標比で増益を確保したなかで、期初目標比を上回ったということだが、通期の純利益見通しについては、期初目標を、私どももそうだが、据置きのままとしている。これは、下期もマイナス金利の下、厳しい収益環境が予想されることに加え、次期米国大統領であるトランプ氏が今後どのような政策を行っていくかが不透明であることや、英国のEU離脱問題、米国の利上げ等により当面はグローバルなマーケットの不透明性、不確実性が続くこと、さらに申しあげれば、中国をはじめとするアジア新興国等の景気の下振れ懸念があること等のリスクを勘案したものと考えている。
 こうした環境下ではあるが、先月も申しあげたが、ビジネスチャンスはさまざまな分野であるので、私としては過度に悲観することなく、引き続きCautiously optimisticに臨んでまいりたいと考えている。
 なお、ご質問のなかにあったマイナス金利の影響ということについて、これは個別行として申しあげると、通期の業績見通しについては、足元の10ベーシスのマイナス金利が続く前提で、資金利益の影響としては約300億円、税引き後では約200億円の減益影響を織り込んでいる。さらに言えば、資金利益以外にも、市場金利の低下やリスクオフムードの広がりによる投資商品販売への影響など、マイナス金利が及ぼす影響はもう少し広い範囲に及ぶ。この金額というのは明確に特定できないわけだが、そういったものを織り込むと、影響額は先ほど申しあげた数字よりもう少し大きくなってくると思う。


(問)
 休眠預金をめぐる動きについてだが、10年以上取引がなかった口座に眠っている休眠預金を公益活動に使うという法案が18日の衆議院財務金融委員会で可決され、今臨時国会中に成立する公算が大きくなった。休眠預金の活用をめぐっては旧民主党政権の下でも一度検討されたものの、預金者の財産権に絡む話ということで慎重な意見もあり、実現をしなかったという経緯があるかと思う。当時、金融界のなかには慎重論もあったと聞いているが、この休眠預金活用のための法案が成立する運びとなったことについて会長としてどのように受け止めているか。
(答)
 今の臨時国会で休眠預金の活用に関する審議をいただいていることは承知している。また、11月18日に衆議院財務金融委員会で可決される見通しという報道も承知している。この休眠預金の議論は長い間議論をしてきており、銀行界としては休眠預金の活用について特に反対もしていないし、円滑に進めていこうと考えている。
 休眠預金というのはあくまで預金である。したがって、休眠預金へ編入された後も、例えばお客さまから払戻しのご請求があった場合は各金融機関の店頭で払戻しをさせていただいている。したがって、その点を十分に考慮したうえで休眠預金の活用を考えていかなければいけないと考えている。
 今般の法案でも預金者からの支払い要求には応じる仕組みとなっている。したがって銀行界としては預金保険機構への移管など、具体的な手続きの検討を整斉と進めていく方針である。
 また、本法案では新たに指定活用団体等を設置し、休眠預金が活用される民間公益活動の適切かつ確実な遂行を監督していくこととされており、そうした役割がしっかりと果たされていくことも期待している。


(問)
 次期トランプ政権の下で金融規制、ドッド・フランク法など一部緩和されるのではとの期待感が強まり、金融株も好感されている。その辺をどう見ているか。また緩和された場合、米国戦略はもっと積極的に出ていけるものなのか。
(答)
 トランプ氏が当選後に新設されたウェブサイトに、「ドッド・フランク法を撤廃し、経済成長と雇用増加に寄与する新たな政策に置き換える」という方針が示されたことは承知している。その後、これはトランプ氏本人ではないと思うが、政権移行チーム関係者が、「ドッド・フランク法の完全撤廃を目指すものではない」という趣旨の発言を行ったとの報道もある。そもそもドッド・フランク法の撤廃は規制緩和である一方で、もう一つグラス・スティーガル法の復活も言われているが、これは規制強化であって、その政策の方向性は大きく異なっている。加えて、トランプ次期大統領は、米国の金融機関の規模でいうと大手銀行に批判的な一方で、中小銀行への配慮の必要性も示唆している。
 今申しあげたような背景もあって、今の時点では次期政権として金融規制全般に対して具体的にどのようなスタンスで臨まれるのかがわからないというのが率直な受止めである。したがって、それぞれの法律について個別に私がどう考えているかということを申しあげたい。
 まず、ドッド・フランク法だが、これは金融危機への反省等を踏まえて2010年にオバマ政権下で成立した法律であり、中身は、米国金融システム上重要な金融機関の指定と規制強化、あるいは銀行の業務規制、いわゆるボルカールールと言われているもの、デリバティブ規制、報酬規制等非常に多岐にわたっている。これについては、さまざまな意見があると思うが、金融システム全体をモニタリングする枠組みであるとか、大手行をスムーズに破綻処理するための枠組みなど、有益な規定も少なくないという見方もある。また、現実問題として、アメリカ上院の共和党の議席の数が、フィリバスターを阻止できる安定多数の60に達していないため、ドッド・フランク法が撤廃される可能性はあまり高くないのではないかと見ている。
 とはいえ、見直しが必要な項目も複数あると思う。例えば、金融システム上重要とみなされる基準、現在総資産500億ドル以上だが、これが低過ぎるという指摘であったり、ボルカールール等の規定が市場流動性の低下を招いているとの指摘もある。日本の銀行の立場からいうと、大手外銀に対して米国中間持株会社の設立や資本流動性の積み増しを義務付ける規制等に見直しの期待もある。こうした観点から、必要な見直しを行って、今の規制よりバランスのとれた規制にしていくことが望ましいと思っている。
 もう一つ、グラス・スティーガル法の復活だが、これは銀行と証券の分離を復活させるという意味で用いられているが、アメリカでも銀行と証券の分離が完全に撤廃されているわけではなく、依然として銀行本体での一部の証券業務、例えば証券の引受け等が禁止されているわけである。そうした制約の下で銀行と証券が同じグループに入り、役職員が双方兼務することは認められている。これによって、例えば銀行グループとして、お客さまに銀行貸出と社債発行を合わせて提案することが可能となるわけである。これはお客さまにとってはメリットが大きく、すでに広く一般的に提供されているサービスである。したがって、今後、銀証分離を完全復活させると、そうしたサービスまで制限されてしまうことになるので、銀行と証券の分離についてこれから検討されていくとすれば、そのコストとベネフィットも含めて慎重な検討が必要だと思っている。
(問)
 銀行のATM事業について伺いたい。キャッシュレス化が進むなかで、特に地銀にはセキュリティやATM設置のコストが重く、コンビニのATM等に委ねる動きが進んでいるが、銀行としてのATM事業をどのように位置付けているか。
(答)
 ATM事業の位置付けについては各行それぞれ考えがあると思うので、三井住友銀行の考え方を申しあげたい。近年、FinTechが進展するなかで、キャッシュレス化を含めて決済の多様化が相当進んできている。私どもでも10月21日からVISAブランドのデビッドカード、「SMBCデビッド」を発行したところである。デビッドカードは日本ではなかなか浸透してこなかったが、キャッシュレス化の時代が進んでくると、デビッドカードに対する需要もあるだろうということで発行したわけである。
 しかしながら、一方で、現時点ではまだまだ現金による引出し、あるいは受入れ、振込等に対するお客さまのニーズは高く、引き続きお客さまの利便性、あるいは店頭事務の効率化の観点からATMは重要なチャネルの一つと我々は考えている。
 もっとも、今後決済手段の高度化が進む、あるいはIT技術も進展していくことが予想されるなかで、ATM事業の位置付けはだんだん変わっていくと思う。例えば、ATMが今はキャッシュポイントとして認識されているが、そういう位置付けではなく、お客さまのアクセスポイント、そこで現金の引出しだけではなく、いろいろなサービスを受けられるような拠点として使うこともできると思っている。いずれにしろ、これから大きく技術が進展するので、ATMの位置付けは変わってくると思う。


(問)
 トランプ氏が大統領選で勝利して以降、財政出動への期待もあり、米国で株高や金利上昇が進んでいる。こうした流れがFRBの金融政策にも影響が出る可能性があるかと思うが、米国の利上げについてどのような見通しを持っているか。
 また、この米国の流れを受け、日本の金利も上昇基調にある。本日、日銀が指値オペを初めてオファーし、急激な変動を牽制するような動きも出ているが、この足元の金利動向をどう見ているか。
 また、明日、安倍総理とトランプ氏が初めて会談を行う予定だが、どのようなことを期待しているか。
(答)
 まず、FRBの利上げの見通しだが、米国経済を見てみると、実体経済面では利上げ環境が整いつつあると思う。労働需給の引き締まりに伴う賃金の伸びの高まりを背景に、個人消費が底堅く推移しているほか、企業部門でも業績が持直しに転じると見込まれることから、成長ペースを維持すると予想している。物価動向も、雇用・所得環境の着実な改善が続くと見込まれるなかで原油価格の持直しもあり、物価上昇圧力が強まると予想される。最終的にはFRBの判断ではあるが、マーケットでも12月の利上げをおおむね織り込んでいるようであり、私もそのように考えている。来年以降の動きとなると、トランプ次期大統領の大幅減税や財政投資・出動、インフラ投資等々の政策がうまく回転していけば、来年の利上げのペースはかなりスローだろうと考えていたが、それよりは利上げの回数は増えていく方向にいくのではないかと思う。ただし、次期大統領の政策がまだはっきり出てきているわけではないので、その辺を見てみないと確たることは申しあげられない。
 日本の足元の状況だが、トランプ次期大統領の打ち出す財政政策について、景気刺激への期待が出ている一方で、財政負担が増加するのではないかという不安もある、という両面から、アメリカの長期金利は、約40ベーシスポイント上昇している。これがグローバルに影響しており、日本の長期金利も10ベーシスポイント程度上昇し、プラス圏に浮上した。今の状況がしばらく続くとも思うが、これもトランプ氏が政策をどう打ち出すかにより、非常にボラタイルになると思う。
 今日、日本銀行が初めて「指値オペ」を実施した。結果的には応札ゼロとなったが、この日本銀行の意図は、茲許の短中期債の急速な金利上昇を踏まえ、新しい政策の枠組みである「イールドカーブ・コントロール」の一環として、「最適なイールドカーブ」の形成を促す意図があったと思っている。茲許の急速な金利の上昇というのは、まだ効果がはっきりしていないが、トランプ効果によるところが大きいと思う。今後は、実体経済の回復に伴い金利が上昇していく好循環が実現すればいいと思う。
 安倍総理が17日にトランプ次期大統領と会談をすることになったが、私はこの会談に非常に期待している。トランプ次期大統領はまだ就任前だが、各国の首脳のなかで最初に会うのが安倍総理になる。これは日米の良好な関係の維持、拡大に資すると思う。トランプ次期大統領が選挙戦のなかでいろいろ発言をしてきたこと、一例を挙げるとTPPの問題などがあるが、そういったことのうち安倍総理がどういう内容を話されるかはわからないものの、日米関係の重要性やTPPの意義、それ以外にも多くの項目があると思うが、こうしたことについて説明していただくということが非常に重要だと思う。
 加えて、今後の国と国との関係を考えるときには、首脳同士の信頼関係が極めて大事で、安倍総理がトランプ次期大統領と信頼関係を築くベースをつくっていただくことが最大の目的だと思うので、この会談には非常に期待している。


(問)
 一つ目は、春闘、賃上げについて。政府が昨日、本春闘での賃上げを経団連の方に呼び掛けたが、現状の環境下、企業にとって賃上げができる環境だと思われるか。それから、銀行業界としてはその点はどうなのか、個社としてはどうか。それから、昨日の議論の中身にもあったと思うが、個別交渉のなかで、過年度物価ではなくて期待インフレ率を考慮すべきだという議論があるが、これはなかなか企業には受け入れにくいという感じがするが、その点についてどういうふうに整理するのか。
 二つ目は、10月の会見でも聞いたと思うが、経団連の政治献金の呼び掛けについて、銀行業界として年末に向けてどのように対応するのか。粗い議論をすると、政党にお金を貸しているわけで、利子補給だという指摘もできると思うが、その点はどのように整理するのか。今年は去年と違って、マイナス金利政策で各行預金金利を下げているという環境も踏まえて、今年の方針あるいは姿勢を聞きたい。
(答)
 最初の賃上げだが、まず前提として、賃上げについては各企業がそれぞれ労使交渉によって個別に結論を得るものなので、銀行界については、全銀協として取りまとめる云々ということはない。そのうえで申しあげると、春闘で3年連続で賃上げが実現している。したがって、この裾野を広げていき、経済の好循環の流れをより強くしていくためには、賃上げのモメンタムを維持することが引き続き重要な要素だと考えている。昨日開催された働き方改革実現会議でも、今言われたように、安倍総理から経済界に対して、2017年春闘に向けて「少なくとも今年並みの水準の賃上げを期待している」という要請があったところである。したがって、今言ったような観点から、収益が拡大した企業においては、やはり賃金引上げが行われることを期待したいと思っているし、個別行としても組合の意見を聞きながら、真摯に検討していきたいと思っている。
 それから政治献金だが、これは前回も答えたので繰り返しになってしまうことをご容赦いただくとして、わが国は課題先進国と言われるぐらいいろいろな課題を抱えており、少子高齢化、経済の成熟化、あるいはグローバル化が進むなかで、やはり日本経済の持続的な成長のために取り組むべき課題は非常に多い。その課題を解決するため、政治の果たす役割というのは非常に大きいと考えている。経団連でも、「政治献金は企業の社会貢献の一環として重要性を有する」、「政策本位の政治の実現、議会制民主主義の健全な発展、政治資金の透明性向上を図っていくうえで、クリーンな民間寄附の拡大を図っていくことが求められる」と整理されている。当行においても、企業市民として社会的責任を果たすという観点に立ち、その政党の政策が企業の健全な発展を促進し、日本経済の持続的成長に資するか、ということが、政治献金を行う際の判断の重要なポイントと考えている。現時点では、我々が今年政治献金をするかどうかというのは決めていない。
 それから、質問にあった融資を行っているのにもかかわらず献金することについて問題がないのかということだが、個別事案についてコメントは控えるが、一般論として、融資をすることと寄附をすることとは全く違う行為であり、仮に融資をしている相手に対して寄附を行ったとしても、それぞれ切り離して適切な判断が行われていれば問題はないと考えている。


(問)
 1点目が、3メガバンクのATMから中国の銀聨カードなどの偽造カードを使って10億円以上が引き出されていた事態が明らかになった。このことに関して現状の認識と、これからよりICカード化などの対応が急がれるが、その対策についての考えを教えてほしい。
 2点目が、國部氏も全銀協会長として委員になっていると思うが、東京都の国際金融センターに向けた有識者会議が始まると思う。これに関する期待と要望があれば教えてほしい。
 3点目は先ほどのトランプ氏の話に絡むが、トランプ政権の誕生でTPPが漂流する可能性が高まっていると言えると思う。現状と先行きについてどう見ているのか端的に教えてほしい。
(答)
 1点目のATMの件だが、今日、一部のマスコミで報道された。まず事実関係がどうかということだが、警視庁が公表しているとおり、偽造された中国の銀聨カードによって、大手金融機関のATMで不正に現金が引き出されていたことは事実である。
 本件については、現在警視庁で捜査中の事案であるので、今の段階では詳細は申しあげられないが、海外カードの取引に関しては、銀聨など国際ブランドが定めるルールに従って対応しており、不正出金を防止するためには国際ブランド、カードの発行会社、ATM設置銀行が連携して対策をとっていく必要がある。
 私どもの海外カードの取扱いの詳細については、セキュリティの関係もあり回答を差し控えるが、銀聨カードの1回当たりの出金限度額について、以前は1万元、今の相場でいうと15、6万円から、本年7月に5万円に引き下げている。また、海外発行カードによる取引がより安全に行えるようICチップ取引に対応した海外対応ATMの増設を進めているところである。こういった取組みを進めて、より一層セキュリティ向上に努めていくことが我々の責務だと思っている。
 2点目の東京都の取組みだが、小池東京都知事は選挙公約のなかで、「東京をアジアナンバー1の国際金融市場として復活」するということを掲げられた。具体的には、「国際金融特区や税優遇を活用し、世界から企業や高度人材を呼び込む。英語による諸手続が可能な環境を整備」するといった政策を示されている。
 今般、東京都において「国際金融都市・東京のあり方懇談会」が設置されるのは、こうした都知事の考えの下、国際金融都市としての目指すべき姿や、施策の具体化に向け議論していくことを狙いとしたものと認識している。私も全銀協会長として本懇談会に参加することになっている。
 わが国の持続的成長にとって、首都東京の国際競争力の強化を金融面から進めていくことは大変重要だと思っており、本懇談会における議論が有意義なものとなることを期待している。私も積極的に議論に参加していきたいと思っている。第1回会合は来週25日(金)に開催されることになっている。
 東京の国際金融センター化については、東京都でのこれまでの検討のほかにも、国の有識者会合等々、さまざまな場でも議論が行われており、数多くの提言がなされている。こうしたメニューのなかから、わが国の強み、特徴を見極めながら、優先順位を付けて実行していくことが重要と考えている。昨日も、あるセミナーの関係で都知事と会う機会があったが、都知事は、本件はもうインプリメンテーションのステージに入っていると仰っていた。
 アジアは今後も成長を期待されるエリアであり、わが国経済がアジア諸国と緊密な関係あることを踏まえると、アジアでナンバー1の国際金融都市を目指すことが重要。香港やシンガポールなどアジアのほかの金融都市と比較して最も選ばれる市場としての地位を確立していかなければならないため、特区の活用等による競争力の高い税制度の構築や、グローバルスタンダードなビジネス・生活環境の整備、例えば生活面を含めた英語での行政手続や各種英語表記など、そういったことが必要ではないかと思う。
 また、海外からの企業の進出や投資を促進するためには、そもそも日本が魅力的な市場であることが不可欠であり、日本経済が将来的に成長のポテンシャルを有していること、新たな産業や付加価値の高い商品・サービスを生む土壌を有していることが重要となると思う。このためには、国の成長戦略の実行や、2020年東京オリンピック・パラリンピックの成功などとともに、これらをファイナンス面から支える我々金融機関の役割も大きいと思う。
 さらに、金融市場を国際的に比較した場合の日本の強みといえば、1,700兆円を超える個人金融資産の存在だと思う。したがって、国民の安定的な資産形成の実現を通じてリスクマネーの厚みのある供給を促し、日本経済、そして金融市場の発展につなげていくことが重要だと思う。この点、リスクマネーの供給を含め、ベンチャー企業の起業から事業化までを支えるエコシステムの形成、あるいはNISAの普及促進に向けた制度拡充、確定拠出年金制度の改善等も求められると思う。いずれにしろ、25日から議論がスタートするので、そこでの議論も踏まえ、私としても考えていきたい。
 3点目のTPPについてだが、トランプ氏は大統領選で、「大統領就任初日にTPPからの離脱を表明する」旨コメントされている。今回トランプ氏が勝利したことで、通商政策は保護主義的な傾向が強まっていく可能性が高いことから、正直申しあげてTPPの発効は極めて不透明になってきたと言わざるを得ないと思う。
 TPPはかねて申しあげているとおり、世界のGDPの約4割、人口でいえば約8億人というアジア・太平洋地域にまたがる巨大な経済圏を生み出す非常に意義の高いものであり、TPPの下で参加各国が経済的な相互依存を深めていくことは、日本のみならずアジア・太平洋地域の成長・繁栄・安定につながると思う。特に人口減少社会の到来によって、今後国内市場の大幅な拡大が望みにくいわが国にとっては、TPPは成長戦略の重要な柱であり、成長著しいアジア・太平洋地域の果実を取り込んでいくことや、同地域において高度なバリューチェーンを構築していくことに大きく寄与するものだと思う。
 次期大統領であるトランプ氏はTPPへの反対を明言されているが、米国にとってもTPPは、例えば牛肉や豚肉、小麦といった農産物をはじめとする自国産品の輸出拡大等によって、成長著しいアジア・太平洋地域の需要の取込みに資するほか、TPPを通じて国際的な貿易投資ルールのスタンダード確立に主導的な役割が果たせるなどのメリットがあると思う。トランプ氏は実業家であり、経済合理性を重視して物事を判断されると聞いているので、今後、新政権の具体的な政策が検討されていくなかで、軌道修正が図られていくのではないかと期待している。
 いずれにしろ、日本としては速やかな国内承認とともにTPP協定の実現に向けて米国に粘り強く働きかけていくことが重要だと思う。


(問)
 本日の申し合わせでも言及されている経営者保証ガイドラインについて伺いたい。
 適用開始からまもなく3年が経過するが、銀行界の活用状況についてどのように評価しているか。また、一部では根保証契約を長期的に継続している事例や担保保全と重複して経営者保証を求めている事例もみられるようだが、ガイドラインを活用するうえでネックになっていることがあれば教えていただきたい。
(答)
 「経営者保証に関するガイドライン」の活用状況について、金融庁が開示している統計をみると、2015年度に「新規に無保証で融資を実行した件数」や「保証契約の解除手続を行った件数」は、前年度対比で増加している。したがって、ガイドラインの活用は徐々に浸透してきていると思う。
 当行の状況について申しあげると、例えばお客さまから新規の融資や既存の保証の見直しについて申し出があった際には、お客さまのご要望も勘案したうえでガイドラインにもとづいて保証の必要性を個々に検討していくほか、無保証のご融資商品を提案するなど、真摯な対応を行っている。
 また、保証をいただかざるを得ないケースもあるが、こうしたケースにおいては、今後、保証解除を行ううえで改善が必要となる事由をお客さまに対して具体的に説明している。
 ご融資に当たって、担保・保証に過度に依存しないよう取り組むことの重要性は十分理解しているものの、例えば業況が悪化して信用力が低下している場合でも、担保・保証によってご融資が可能となり、お客さまの業績回復や成長につながるケースもあることから、担保・保証をいただくことが一概に問題があるとは言い切れない面もあると思う。
 ガイドラインを活用していくうえで重要なことは、保証の必要性や保証金額の妥当性について、お客さまとの対話をしっかり行っていくことだと考えている。
 ガイドラインの活用にあたってのネックは今のところ特にないと思う。ただ、ガイドラインを一層普及させていくためには、やはり周知・広報活動を行うことによって、お客さまにもこのガイドラインについてよく知っていただくとともに、会員行にも活用してもらうことが、活用を促進するうえで重要だと思う。


(問)
 先ほども質問で出たが、改めて足元の金利上昇に関する見解について、確認と質問をさせていただきたい。1点目は、要するに足元の金利上昇は、スピードが速過ぎるということと、実態が伴っていないので悪い金利上昇だという趣旨のことをおっしゃったということでいいのか。
 2点目は、米国の金利上昇に関連して、邦銀も米国債をもともと持っていたと思うが、金利上昇で金利リスクが高まっているのかなと思う。米国の金利上昇による金利リスクについて、邦銀に与える影響、懸念があるのか、ご見解を伺いたい。
(答)
 まず最初の質問だが、日本の長期金利の上昇スピードが速いと思っているかということだが、日本銀行はそのように思っているということではないか。
 日本銀行は、イールドカーブ・コントロールで長期金利がゼロ%程度となるようなイールドカーブを想定して、コントロールしていこうということで新しい枠組みをつくったわけだが、現在、トランプ次期大統領の期待感から米国の長期金利が上昇している。それにつれて、日本の金利も上昇しているが、日本銀行は最適なイールドカーブにコントロールするためのオペレーションをしているのではないかと思う。
 今日の指値オペも、現時点で日銀が考えている最適なイールドカーブの水準を示そうとしたものと理解している。
 それから、悪い金利上昇か、良い金利上昇かという点については、今は期待感で上がっている部分もあり、悪い金利上昇とは言わないが、実際にこれからトランプ氏が大統領に就任して打ち出していく政策を見てみないとわからないということを申しあげた。
 米国債については、他行のポジションは正確にわからないが、個別行として、それほど多く保有しているわけではないので、今回の金利上昇が私どもの銀行収益に与える影響はあまり大きくない。


(問)
 マイナス金利政策の影響について、全銀協の会長としてお聞きする。個別行のトップとしては聞かない。というのは、決算発表会見でも、厳しいと言えば株価が下がるので言わないし、まだ平気と言ったらマイナス金利政策が続くから、皆さま本当のことをなかなか言わないので、会長としてお聞きしたい。上期の状況からすれば、日本の銀行は世の中に期待される金融仲介機能を現在のマイナス金利が継続しても果たし続けることができると認識されたか。あるいは、マイナス金利政策が長引くようであれば、日本の銀行全部ではないが、一部では期待される金融仲介機能を果たせなくなるおそれがあるという不安感を持たれたか。
(答)
 全銀協会長としてとお伺いしたので、個々の銀行によって少し感覚は違うかもしれないが、私の感覚としては前者、すなわち、現在のマイナス金利政策下でも我々の金融仲介機能を適切に発揮していこう、継続していこうという考えは変わらない。
(問)
 これまでの金融政策決定会合では、マイナス金利の深掘りがあるかというのが一つの焦点だった。日銀は総括的検証というなかで初めて副作用という言葉を使うことによって議論を進め、マイナス金利の深掘りという決断はしなかったわけだが、深掘りがあった場合はどうか。
(答)
 深掘りがあった場合というのは、仮定の話であるし、市場金利がどう動くかとか、お客さまの行動パターンがどう変わるかなど、予測しにくい面もあるので一概には言えないが、銀行界に対する収益影響はかなり大きくなる。その場合には、金融仲介機能に影響を与える懸念も出てくるということではないかと思う。したがって、従来より申しあげているが、現段階において、マイナス金利政策が企業の設備投資等に大きなプラスの影響を与えているという状況ではないため、マイナス金利の深掘りは慎重に検討してほしいというスタンスは変わっていない。


(問)
 トランプ政権の発足で銀行の海外戦略がどうなるか伺いたい。先ほどゲームチェンジというコメントもあったが、アメリカの拠点をこれまで拡充してきたと思うが、それがどうなっていくのか。逆に新興国は、TPPの撤退やメキシコの国境の壁などがいろいろ言われていて逆風が強まるわけだが、このあたりの展開がどうなっていくのか。その辺の考え方を教えていただきたい。
 また、今、銀行の株価が非常に上昇しており、昨日か一昨日あたりに御社もマイナス金利前の株価水準を回復しているかと思うが、足元の株価の回復、瞬間風速かもしれないが、現時点での受止めについて教えていただきたい。
(答)
 まず、米国のビジネスだが、そもそも米国は世界最大の経済大国であり、非常に懐が深いマーケットである。かつ、今後も安定的な成長が期待できるということで、個別行としても注力しているマーケットである。それに加えて、今、トランプ次期大統領が、大型減税や1兆ドル規模のインフラ投資の実施等々を表明しているので、こうした政策が実施された場合、米国経済がより堅調になる可能性はあると思う。その場合は、我々のビジネスチャンスも拡大していくと思う。実際にトランプ大統領がどういう政策を打ち出すのか、例えば減税についても議会の承認が必要で、そういったプロセスもあるため、本当にどのように政策が運営されていくのかによって変わってきてしまうので、一概には言えないが、冒頭申しあげたとおり、今回の動きはゲームチェンジになる可能性がある。今まで、世界各国は低金利政策できたわけだが、今回トランプ氏が財政政策を唱えてかなり市場のムードが変わっているのも事実である。ただ、これが本当に持続可能性があるのかどうかは、我々もまだわからない。今、足元の段階のこの動きだけで全てを判断することはできないと思う。金融株も、私どもの株価を含め3メガの株価がかなり上がってきている。アメリカの銀行株も上がったわけだが、規制緩和ということも一つ大きく影響していると思う。ただ、規制緩和についても、まだどういう内容を打ち出してくるかわからないので、それを見てみないと、今の我々の株価が今後も上昇していくのかどうかについては、まだ不透明だと言わざるを得ない。ただ、個別行の頭取としていうと、我々のPBRは大変低い水準にあったので、株価が上がることについては、経営者としては大変うれしいことである。