2018年7月19日

藤原会長記者会見(みずほ銀行頭取)

岩本専務理事報告

 事務局から2点ご報告申しあげる。
 本日の理事会において、お手元の資料のとおり、「平成30年7月豪雨」への対応について、「平成30年7月豪雨にかかる災害を踏まえた金融の円滑化等について」の要請を踏まえた対応の徹底をはじめとする計6項目の申し合わせを行った。
 また、本申し合わせに盛り込まれている「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」については6月18日に発生した「大阪府北部を震源とする地震」にも適用されている。本ガイドラインは、災害救助法が適用された災害における被災者の方々の二重ローン対策として、一定の要件を満たすこと等を前提に、既存の住宅ローンなどの免除・減額を申し出ることができるものである。お困りの方がおられれば、まずは借入先の銀行へご相談いただきたい。
 なお、全銀協では、藤原会長の被災地への訪問も予定している。
 次に、同じく本日の理事会において、お手元の資料のとおり、平成31年度税制改正の要望書を取りまとめた。今後、関係先に対し要望書を提出し、要望の実現に向けて働きかけて参りたい。
 なお、申し合わせおよび税制改正要望の内容についてご不明な点などがあれば、会見終了後、事務局までご照会いただきたい。

 

会長記者会見の模様


 会見を始める前に、大阪府北部地震および平成30年7月豪雨について一言申しあげたい。まずは、お亡くなりになった方々のご冥福を心からお祈りするとともに、被害に遭われた全ての方々に心からお見舞いを申しあげたい。現地では、いまだ安否の分からない方の懸命な捜索活動が続けられている。また、猛暑の続くなか、避難所生活を強いられている方々も大勢いる。さらには、全国各地からボランティアの方々の非常に心強い支援が行われている。
 何より被災された方々が通常の生活を取り戻すとともに、一日も早く被災地域が復旧・復興を果たすことを祈念している。私ども銀行界としても、被災された方々の状況に応じてきめ細かく、柔軟に、かつ迅速な対応を行って、しっかりとサポートしていきたい。


(問)
 幹事社から2点伺いたい。
 1点目は米国発の貿易摩擦の影響についてである。今月6日から米国と中国が幅広い分野で高関税をかけ合う異常事態となっている。米国は日本に対しても鉄鋼、アルミに続いて自動車への高関税を検討している。貿易の停滞により、輸出主導の日本経済に大きな影響が出るのは必至の情勢だが、足元の日本経済への影響、先行きの見通しについて見解を伺いたい。
(答)
 制裁措置が対抗措置および報復措置にエスカレートする、すなわち貿易摩擦が貿易戦争に転ずるという負のスパイラルに陥る可能性について、十分に注視していく必要がある。
 世界経済は全体として底堅い拡大を続けており、その下で日本経済も緩やかな回復基調を維持しているとみているが、ご指摘頂いた、トランプ政権の通商政策に起因する貿易摩擦問題の拡大は、内外経済に悪影響を及ぼしかねないリスク要因のひとつであると認識している。
 米国は7月6日に、知的財産権の侵害を理由に中国に対して「通商法301条」を発動し、340億ドル相当の品目に25%の追加関税をかけた。中国は同日に同額規模の対抗措置を発動したが、米国は、さらに160億ドル相当分への課税を行う方針であるほか、7月10日には、6,031品目、2,000億ドル相当にも上る大規模な追加措置案を公表した。
 また、これに先立って米国は鉄鋼・アルミ製品に対する輸入制限措置を3月に発動し、カナダやEU、メキシコ、トルコ、ロシアなど各国・地域が報復関税を発動している。
 このように、主要国間で貿易制限措置の応酬が行われるようになっており、今後の動向をよりしっかりと見ていく必要があると思っている。
 この問題に伴う影響としては、貿易面を通じた「直接的な影響」に加えて、金融市場などを経由して生じる「間接的な影響」、さらには国際政治情勢に絡んだ「副次的な影響」という、三つの側面からの影響に注意する必要がある。
 まず直接的な影響だが、世界経済はこれまでグローバルなサプライチェーンの高度化によって発展が促されてきた側面が大きい。しかし、米国と主要国の間で貿易制限措置の応酬が続けば、これが寸断されることになり、米国を含む多くの国々の経済に悪影響を及ぼすことになる。
 OECDの試算によれば、仮に米国・中国・欧州の関税引上げによって貿易コストが10%上昇すれば、世界の貿易量は6%減少し、世界のGDPを1.4%押し下げるとのことである。
 次に間接的な影響として、貿易戦争の激化に対する心理的な不安が金融市場に及ぼす悪影響や、先行き不透明感の高まりが企業の設備投資に与える影響など、さまざまなルートで影響が波及する可能性がある。
 さらに副次的な影響として、経済面での直接的な影響に限らず、国際政治の観点からも、主要国間の対立の深まりが、国際協調を困難にする恐れもあるだろう。
 日本経済への影響という意味では、現時点では具体的に深刻な影響が顕現しているわけではないとみているが、引き続き注視が必要である。
 先日公表された日銀短観においても、製造業・大企業の業況判断が2期連続で悪化したことが報じられたが、DIの水準自体はなお高く、非製造業では小幅ながら改善するなど、内需の底堅さが確認できる内容だった。設備投資計画も、大きく上方修正され、例年の同時期に比べてもかなり高い伸びになっているなど、企業の投資意欲は強い。
 なお、鉄鋼の輸入制限に関しては、経済産業省によれば、米国が6月20日に公表した一部の除外品目約1万5千トンのうち、約3分の2にあたる1万トン近くは日本製品であると推計されるとのことである。日本から輸出している鉄鋼の多くが、代替が難しい高品質のものであることが背景にあると思われる。
 ただし、米国は5月下旬に、通商拡大法232条にもとづいて、自動車・同部品に関する調査を開始しており、今後、鉄鋼・アルミ製品の輸入制限措置と同様の措置が、自動車や同部品について発動された場合には、影響ははるかに大きなものとなり得る。
 日本から米国への自動車および同部品の輸出額は、2017年時点で約5.5兆円と、財の対米輸出総額15.1兆円の4割弱を占める。メキシコやカナダなど、日本を除く米国外の国で生産し、米国に輸出しているものも含めると、金額はさらに膨らむ。
 すでに日本政府や日本経団連は、先月29日に、自動車の輸入制限措置に反対する意見書を米国商務省に提出済みである。また、EUの欧州委員会も反対意見を提出しており、米国が自動車輸入制限を発動すれば、米国が貿易相手から、最大で3,000億ドル、約33兆円規模にも上る報復関税を受ける可能性があると指摘している。
 加えて、自動車への追加関税については、米国の消費者にとって大きな負担になるとして、米国内においても大手米自動車メーカーや米自動車工業会、米商工会議所等から反対意見が表明されていると聞いている。
 いずれにせよ、足元の貿易摩擦問題が一段とエスカレートした場合には、世界貿易全体の停滞とそれに伴う生産活動の下押し、先行き不透明感による企業や消費者のマインド悪化、金融市場の不安定化などを通じた悪影響が広がることになり得る。
 こうした貿易戦争のような事態に陥ることのないように、解決が図られることが望ましい。7月17日に行われた米パウエルFRB議長の議会証言において、現段階においては段階的な利上げの継続が最善策であるとのコメントがあったが、そのなかで敢えて「for now」、すなわち「当面は」という慎重な表現を用いたことが非常に印象的であった。引き続き状況を注視していきたい。
(問)
 2点目は、キャッシュレス決済の展望についてである。経産省が今月2日に、みずほをはじめとする100を超える民間企業が参画する「キャッシュレス推進協議会」を設立した。QRコードの規格統一など、オールジャパンで取り組んで、普及にはずみをつけようとしているが、一方、参加する企業、銀行では、戦略や狙いに異なる部分がある。利害関係や主導権争いを乗り越え、消費者や店舗がメリットを実感できる、利用者本位の仕組みを構築できるか。また、官民協議会に先駆けて3メガ銀が進めているQRコード規格統一の進捗具合、今後の展望などについて伺いたい。
(答)
 キャッシュレス化の推進に関しては、3メガによるQRコード規格統一検討など、銀行界も取組みを進めてきているが、今月、業界横断かつ産・官・学が連携した組織として「キャッシュレス推進協議会」が設立された。
 全銀協も団体会員として参加しているほか、私、藤原も、個別行の頭取としてであるが、協議会の副会長をお引き受けすることとなった。
 日本は先進国の中で、現金決済の割合が抜きん出て高い。キャッシュレス決済の比率は、例えば韓国が9割、中国が6割、イギリスが6割であるが、日本は約2割と言われている。この割合には、口座振替等が含まれていないため、一概に比較はできないものの、キャッシュレス化という点ではまだまだ後進国であり、これを変えないといけないという健全なる危機感を持っている。
 一つ目の理由は、キャッシュレス化は、利便性向上という観点に加え、コスト削減による日本全体の生産性向上といった、大きな社会的メリットをもたらすからである。例えば、コスト削減効果に関するみずほの試算では、店舗での人件費など、現金のハンドリングコストは日本の産業界全体で年間約8兆円掛かっているが、キャッシュレス化により、その半分の4兆円程度は削減できる可能性があるのではないかと見ている。
 二つ目の理由は、データ利活用のための基盤構築である。もちろん個人の情報主権を尊重したうえであるが、購買などの決済情報がデータ化されれば、社会として新たな付加価値の創出に繋げられるかもしれない。この点においても、決済を電子化することには大きな可能性が秘められている。
 日本は、安全で、偽造紙幣などのリスクも少なく、どこでも現金が引き出せるなど、「便利な現金社会」である。ただ、生産性向上やデータ利活用など、将来の日本の発展を考えた場合、その「便利な現金社会」に甘んじてはならず、「キャッシュレス先進国」を目指さなければならない。今、我々はその岐路に立っている。
 これまでは、各者が競争原理のもとで多様なサービスを拡充し、キャッシュレス化を推進してきた側面がある。もちろん競争の重要性は変わらないが、今後は、過度なサービス乱立を回避すべく、競争と協働のバランスを考える局面に入りつつあると考えている。
 例えば、QRコード決済の技術仕様・規格の統一など、利用者と加盟店のインターフェースに関連する「プラットフォーム領域」においては、やはり協働し、利用者がより多くの店で同じように使えるシンプルな支払手段を実現するために、極力連携を図っていくべきであろう。
 また、決済用オンライン・ネットワーク・システム等を含む「決済インフラ領域」についても、協働すべき領域では協働することで、異なる決済手段の間でも、利用者がその違いを意識せずに交換・送金できるようにしたり、データ利活用など、まだ発展途上といえる新たな付加価値向上の仕組みについて、将来に向けた柔軟性・拡張性を妨げない方向性を目指すべきだと考えている。
 銀行界が果たすべき役割は大きい。3メガ等の銀行間の連携に加え、「キャッシュレス推進協議会」の場なども通じて産・官・学で連携を図り、利用者本位の決済サービスの提供に繋げることで、スピード感を持って、日本全体のキャッシュレス化の進展に貢献していきたい。


(問)
 データの利活用というところで情報銀行について伺う。総務省と経産省が情報信託機能についての認定制度の検討を進めていて、民間でも三菱UFJ信託銀行が実証実験をするという公表があった。この情報銀行は誰が担うべきなのかということで二つ質問させていただく。
 一つは、担い手としては銀行に限られているわけではないと思うが、担い手としての銀行の優位性はどこにあるとお考えか。
 もう一つは、情報銀行は乱立をするとデータが分断する懸念もあるという指摘もあるが、この分野は業界としての取組みが必要なのか、それともプラットフォーマーを目指す金融機関同士の競争分野として捉えるべきなのか、どのようにお考えか。
(答)
 データ利活用については、デジタル技術が発展し、多種多様かつ膨大なデータを収集・分析できるようになったことがもたらす可能性を見据えて、産業界全体が高い意識を持って取り組んでいると思う。21世紀の石油と言われている情報・データの利活用を、国家戦略レベル、業界横断的なレベル、あるいは個社レベルで考えていくにあたり、「情報銀行」あるいは情報信託機能について、今まさにその枠組みが議論されている。
 まず、担い手として銀行がどのような優位性を持ち得るのかであるが、「情報銀行」認定の枠組みについてはこれから議論が深められると認識しているものの、やはり銀行が持つ「信用」がひとつの礎になるだろう。これまで、国家レベルでも、情報セキュリティ関連の法律や個人情報保護法等で、守りの観点から情報の取扱いについて法整備がされてきた。一方、業界や個社レベルでは、どこであれば利用者が安心して情報を預けられるかという観点で、銀行が持つ優位性は出てくるのではないかと思っている。
 海外を見渡すと、例えば米国や中国ではプラットフォーマーへ個人データが集中しており、これについては幾つかインシデントも起きていて、セキュリティに対する監視レベルが上がってきたと思う。またEUは、GDPR規制(一般データ保護規則)など、個人データを国家戦略における重要なテーマとして取り上げている。この点について、日本もより深く考えるべき転換期にいると考えている。
 総務省は5月11日に「情報銀行」の認定に係る指針の案を公表したが、あらゆる担い手のなかで、銀行が持つ信頼性や「信用」という優位性は大きなポイントになるのではないかと思っている。
 また、業界横断的にやるか個社でやるかという点であるが、基本的にはアプリケーション分野は競争領域、プラットフォーム分野は協働領域と考えている。QRコードに関する3メガ間の規格統一検討の話や今後のキャッシュレス推進協議会での議論と同様、「情報銀行」のプラットフォームについても、できる限り横断的なものとすべきではないかと考えている。


(問)
 1点目は、今、国会で法案審議されている統合型リゾート(IR)の件で、直接全銀協に関係するのか分からないが、銀行界としてはギャンブル依存症対策などもされてきており、また、IR事業者が利用者にいわゆる種銭の貸付をできる制度も入っているなど、金融的な側面も持っている話だと思う。この法案について藤原会長はどのような評価をされているのか、可能であれば教えていただきたい。
(答)
 統合型リゾートの法案は、現在、審議の大詰めと認識している。そもそもは、2018年には年間3,000万人を超えるとも言われているインバウンドの旅行者のさらなる誘致、そして地域経済の発展という大義があると思っている。
 そうしたなかで、カジノ施設利用者への金融面の対応は重要なポイントである。例えば、今おっしゃったようなギャンブル等依存症対策の一環として、全銀協が本年度中に導入を予定している「貸付自粛制度」をしっかりと運営していくことが必要だと考えている。
 本制度は、すでに同じような制度を導入している日本貸金業協会の取組みを参考にしており、本人あるいは家族からの申し出にもとづいて、全銀協が設置している個人信用情報機関に貸付自粛の申告情報が登録されると、その情報を会員銀行宛てに提供するものである。
 他方、カジノ以外のIR施設利用者への金融面の対応としては、例えば利便性確保の観点からATMを設置することなども考えられるが、多重債務防止や、先ほど申しあげたギャンブル等依存症対策の観点も踏まえ、慎重な対応が必要だと考えている。
(問)
 今の話の続きで、いわゆる公営ギャンブルはほかにも競馬などいろいろあるが、ATMが設置されていたが、キャッシングしてしまうからということで、一部ではATMを銀行側が貸付できないようにするような取組みもされている。個人的にはいいことだと思うが、例えば実際にそういうIRの法案が通り、そういう設備が置かれたら、そこに銀行はATMを置くのか、あるいはそこでキャッシングができるようにするのか、それらはすぐれて個社の判断となるのか。
(答)
 ATMをどこに置くかは基本的に個社の判断であるが、銀行界としてIR施設にどのように向き合うのかということについては、業界内でも意見交換をしたいと思っている。先ほど申しあげたように、お客さまの利便性を高めるということと、多重債務問題からお客さまを守るということは、いずれも銀行の社会的役割だと考えている。しっかり目線を上げて対応していきたいと思う。


(問)
 二つお尋ねする。一つ目は、イランの関係で伺いたいが、アメリカがイラン制裁を復活する方針を示しており、制裁復活までの猶予期間が8月上旬、そして11月上旬に期限が切れると思うが、これについて銀行界としてどういう対応を進めているのか教えていただきたい。
 もう一点は、今年リーマン・ショックから10年経つので、ちょっと振り返って伺いたいが、日本の銀行界としてリーマン・ショックからどのような教訓を導き、そしてその教訓を今日の銀行経営にどのように活かしているのか、会長の見解を伺いたい。
(答)
 まず、1点目にお答えする。今回のイランへの経済制裁は、エネルギー産業、石油化学産業、金融業など、イラン経済にとって重要なセクターを対象にしていることを踏まえなければならない。イランと事業を行っている企業に対して、一定の猶予期間の間に撤退するよう促し、撤退しない場合は制裁を科す方針を米国政府が示した。多くの取引先経営者と話をしているが、この制裁の発動はある程度予想されていたもので、各企業に大きな混乱はない模様である。イランの核合意、いわゆるJCPOAからの脱退と90日と180日の猶予期間を設けたうえでの経済制裁の復活は、すでに5月8日付けで米国政府から発表されており、すでに各企業は長期的な投資や進出については慎重なスタンスをとっていた。これからは動向をよくモニタリングしていく時期に来ていると思う。
 金融機関としても、制裁がこのまま発動されれば米国で活動を継続するためには、イラン中央銀行との取引停止を求められる。基軸通貨である米ドル取引に係る不確実性を最小化するためにも、こうした金融制裁措置に銀行としても対応しなければならない。
 日本経済への影響という観点では、特に原油相場を通じた実体経済への影響に十分留意しなければならない。米国のムニューシン財務長官やポンペオ国務長官は、各国のイランからの原油輸入停止について、早期の達成が困難な場合は、特定の場合において制裁免除も検討するとの考えを示し、足元では、WTIの原油価格が60ドル台まで反落している。但し、最終的には「取引執行猶予期間に当該取引を手仕舞う」という米国の制裁の趣旨に沿った対応がなされていくものと認識しており、原油価格上昇の懸念が払拭されたわけではない。
 さらには、今次制裁が長期化した場合、わが国における原油等の供給元ポートフォリオが変化する可能性がある。現在のわが国のイランからの原油輸入シェアは5%から7%程度だと思うが、引き続き動向を注視していく必要がある。
 2点目は、リーマン・ショックから10年ということについてである。ブラックマンデー、アジア通貨危機、そしてリーマン・ショックと、ほぼ10年周期で大きな危機が訪れているなかで、リーマン・ショックから10年目の節目を迎える。この2018年に改めて過去を振り返ることは非常に重要なことだと思っている。
 10年前に、私は全銀協会長行室長を務めていた。当時を思い返すと、GDPが一時は年率換算でマイナス15%にまで落ち込んだほか、失業率は5%台にまで上昇し、さらには日経平均も35%下落したということで、非常に大きな転換期に直面していることを肌身に感じていた。
 リーマン・ショックは、金融機関が目先の収益を重視するあまり、リスクの所在を正しく認識せずに、過度なリスクテイクを行ったことが背景だと私は思っている。これは我々が目指す「顧客本位の業務運営」とは真逆の考え方であり、今ではこのことを当時の教訓として我々自身が強く認識し、経営に活かしてきている。
 また、金融危機の再発防止に向けたバーゼルIIIをはじめとする国際的な規制改革への対応として、金融機関は資本増強やアセット削減などを通じて、バランスシートの健全性を大幅に改善させてきた。一方、中央銀行あるいは政府においては流動性対策、スワップ協定など、広義のセーフティネットを整えられた。
 他方、レバレッジの縮小、あるいは資金調達コストや規制対応コストの増加により、金融機関の収益性が圧迫されていることも確かだと思う。加えて、長引く低金利環境下での収益構造改革の必要性、デジタルテクノロジーや技術革新に伴うお客さまニーズの多様化、さらには銀行以外のプレーヤーも含む競争の激化という新しい課題に我々は直面している。こうした観点から、非常に難しい時代ではあるものの、こういう時にこそ「顧客本位の業務運営」を忘れてはならないと私は思っている。
 どんなに厳しい環境であっても、大事なことが二つある。一つ目は、銀行の矜持を持って、社会的役割と公共的使命をしっかり果たしていくということ、二つ目は、自己改革、構造改革、意識改革に励み、そうしたミッションを遂行できる強くて頼りがいのある存在になるということだと思っている。そして何よりも、投機ではなく、実需にもとづいた金融仲介機能等を発揮する社会的存在であることを忘れてはならない。銀行の存在意義を再確認するという意味で、重要な10年目だと思っている。


(問)
 4月に金融庁の有識者会議で、地銀が合併する場合の競争の考え方についてレポートが出されて、なかには、単純に貸出のシェアだけで見るのではなくて、もう少し総合的にいろいろ考えた方がいいのではないかというのと、あとは金融庁と公取の方で協力していくという提言が載っていたが、それに対して、昨日、公取の会見で杉本委員長から、金融庁が競争を阻害する合併についてどう考えているかという見解が全くなく納得できないという強い批判的な発言があった。
 そこで二つ質問だが、まず地銀が合併する場合の競争への阻害に関する考え方、単純にローンの貸出のシェアだけで考えていいのか、もう少しいろいろ総合的に考えた方がいいのか。
 2点目は、金融庁と公取の戦いについてちょっとご意見をお聞きしたい。
(答)
 1点目について、まず、実際の統合・再編は各行の経営判断である。また、その経営判断のなかでは、何を目的に統合・再編するのかを明確にすることが重要である。
 そのうえで、公正取引委員会の審査について全銀協としてコメントする立場にないので、一般論を述べさせていただく。
 地域金融機関は、地域経済の中核を担う存在として、その持続的な発展に向けた共通価値の創造に取り組んでいる。と同時に、各地域金融機関の置かれている環境が非常に厳しいことも確かである。長引く金融緩和により貸出利鞘は圧縮され、人口減少等を背景に地域によっては経済が大きく伸びていかないところも多い。
 こうしたなかで、統合・再編という選択肢も出てくるが、あわせて、銀行経営における競争上のエリアの考え方、あるいは、エリア戦略の再考が求められているのだと思う。例えば、行政区域ではなく、経済圏やサプライチェーンでエリアを考えることができる。あるいは、物理的な距離も踏まえた与信管理の観点で考えることもある。さらには、店舗の設置、行員の配置、遠方に出向く場合のコスト等の観点も織り込みながら判断していくことも考えられる。こうしてエリアの考え方を規定していくことが、戦略を再考する上での切り口だと思う。
 冒頭で申しあげたとおり、公正取引委員会の判断についてコメントする立場にはないが、各行の戦略上は、こうした観点でエリアを考えていく時代に入ってきていると思う。
 2点目は、全銀協として何かコメントする立場にはない。ただ、我々自身が自ら創意工夫をしてエリア戦略を考えていく、あるいは自己改革にしっかり取り組んでいくことが一層重要な局面に来ていると認識している。


(問)
 冒頭、キャッシュレスの話が出たが、そのなかで会長が社会的コストとして8兆円が4兆円にも半減されるというキャッシュレスの意義を説明されたが、実際に事業者などにキャッシュレスを進めていくうえにおいて、なかなか社会的コストというと、どうしても経済の外部性が働いてしまうので、個々の経済主体の具体的な動機付けにならないと思うが、このあたりをどうマネタイズしていくかということが見えないと、なかなか社会的コストの観点からは実際にその経済主体が動きにくいと思うが、どうお考えか。
(答)
 キャッシュレス化については、社会的コストを減らすという点に加えて、データ利活用を通じてどうマネタイズしていくかという点が、実はより大きなイシューとして我々の前に突きつけられていると思う。
 動機付けという面では、利用者の利便性向上や、人手不足・高齢化を見据えた生産性向上など、銀行のみならず企業や加盟店を含む産業界にとっても喫緊の課題を解決に導く対応策になり得ることが挙げられる。キャッシュが一定程度残る場合にキャッシュのコストをどこまで減らせるのかなど、まだ深掘りをしていくべき議論もあるかと思うが、やはりキャッシュレス化が広がっていくためには、利用者が利便性を感じられ、企業や加盟店がコスト削減や生産性向上の観点で納得がいくような仕組みを作っていかなければならないと思う。
 さらに利便性についていえば、キャッシュレス決済手段は、実際に使ってみれば、便利であることや安心して使えることに気づいていただけると思う。例えば、都内の電車で言うと、今ほとんどの方は改札を通るときにSuicaや PASMOをお使いになっている。これは急速に「チケットレス化」が進んだということだと思う。やはり、使ってみると便利だったという体験が非常に重要で、キャッシュレス化についても、体験することでその利便性・優位性を分かっていただければ、一歩前進するのではないかと思う。
 もう1つの論点のデータ利活用については、先ほども少し触れたが、これからは国家レベル、横断的なものも含めた業界レベル、そして個社レベルで、さまざまなデータ戦略を精緻化・高度化していく局面に入ってくると思う。
 私も月に1回程度海外出張をするが、中国はもちろん、欧米、韓国、その他アジア諸国においても、急速な発展を目の当たりにすることが多い。それは、いわばイノベーションにより、インダストリー4.0やSociety5.0といった世界に一気にジャンプすることが可能であるとの一つの大きな示唆だと思っている。日本は便利な現金社会に安住せずに、次のステップに飛躍することが必要ではないか。
 データについては、保護と活用という、守りと攻めの両方が必要であり、銀行がキャッシュレス社会のなかでどういう役割を果たすべきか、その重要性が増してきていると思っている。


(問)
 先ほどあったイランの関係だが、先ほどあった石油連盟の会見でも、石油の油田に関して、銀行の動向が鍵であるという話があるが、先ほど会長は制裁措置に対応していかないといけないと話したということは、つまり、今後日米とかイランの交渉、政府間の交渉が進展しない場合は、一部報道でも出ているように、イラン関連取引全面停止となるという考え方ができるのかという点を伺う。
(答)
 会員各行が、米国のOFAC規制の内容に従って必要な措置を取っていく方向感だと思っている。
 OFACの公表資料によれば、8月6日に制裁の猶予期限が到来する予定の取引は全体の一部であると認識している。これ以上予断を持ってお話しすることはできないが、どのような影響があるのかについて、実際に取引先と話していると、例えば、調達ルートを多様化する、あるいは備蓄のバッファーや他のオプションをしっかり持つという対応を先んじて行っているところもある。規制のあるなかで、我々は、取引先のためにできる限りのことをしていくという姿勢で臨みたいと思っている。


(問)
 キャッシュレスの協議会に参加されるということだが、その協議会において話されたこと、またはやろうとしていることを全銀協の加盟行に対してどのように伝えていくのか。心意気というか精神的なものは分かるが、具体的に研究会やセミナーを行うなどのアクションを加盟行に対して起こそうと考えているか。
(答)
 全銀協は、キャッシュレス推進協議会の団体会員になっているので、そこでの情報については会員行と速やかに共有することが前提である。例えば、そうした情報を全銀協の会員行向けホームページなどでタイムリーに共有するほか、逆に全銀協の部会で意見を集約し本協議会の活動に反映させることも考えていきたい。私の副会長という立場は個別行の頭取としてお引き受けしたものではあるが、銀行界を代表しているということでもあるので、銀行界全体のキャッシュレス化の旗を振り、サポートしていきたい。また、本協議会には全国地方銀行協会や第二地方銀行協会も団体会員として参加しており、各会員行へはタイムリーに情報の共有が図れるのではないかと思っている。先ほど行った全銀協の理事会でも、地銀・第二地銀を含む理事の間で、このようなテーマについて活発に議論し意見を反映していこうと話したところである。


(問)
 冒頭でも情報銀行について質問があったが、それについて追加でお尋ねさせていただきたい。キャッシュレスの文脈でもデータの利活用というところを非常に大きな問題と捉えているということだったが、キャッシュレスで生じる購買データも情報銀行で扱う個人情報の大事な一要素になってくると思うし、キャッシュレスの担い手としても情報銀行の担い手としても重複する部分があるというか、銀行としてもう少し大きな絵を描いて、前のめりにやっていってもいいのではないかと思うが、こういう環境なので銀行のほうも既存のビジネスモデル以外の何かを探さないといけないというなかで、非常に大きなチャンスになり得る可能性があるのではないかと思う。その情報銀行のデータの利活用と決済をあわせて、どのぐらいの本気度やっていくのかというところを改めてお聞かせいただきたい。
(答)
 この問題については、強い覚悟と決意を持って取り組んでいきたいと思っている。銀行においては、例えばマーケティングにおいて、お客さまの許可をいただいたうえで、購買や決済等の取引情報にもとづいてニーズに合う金融商品のご案内をすることが考えられる。また、与信モデルの高度化において言えば、AIも駆使したビッグデータの活用や、統計的に貸倒リスクを導き出して高度な審査モデルを作るなど、データ利活用の幅には果てしない可能性がある。
 アプリケーションの開発やマーケティング活動については競争領域だと思っているが、例えばサーバーやプラットフォームについては、可能な限り協働領域として効率的にやりたいと考えている。その点については、今後、さまざまな議論が起こると思うが、競争領域と協働領域をどのように線引きすべきかを見極めながら、銀行界で議論を深めていきたいと思っている。
(問)
 追加で伺わせていただきたい。銀行業として新たな収益源、大きな次世代のビジネスモデルとしての収益源になり得ると考えているか。
(答)
 次世代ビジネスモデルの中核になると思う。理由は二つある。一つは、従来から申しあげているとおり、金融仲介機能に加えて、コンサルティング機能・情報仲介機能が銀行のビジネス上で非常に重要な位置付けになってきたからである。さまざまなアドバイザリー機能をお客さまに提供して銀行が存在意義を保っていくためには、情報の利活用は重要なビジネス・プラットフォームになるであろうし、データは必要不可欠な資産になると思っている。
 もう一つは、先ほど申しあげたように、国家レベル、産業レベル、あるいは個社レベルというレイヤーの違いはあるものの、日本がデータ先進国になって社会的課題の解決に向け取り組んでいくためには、さまざまな産業に横断的に関わっている銀行は共通のプラットフォーム構築等にあたってリーダーシップを発揮すべき位置付けにあるからである。また、それ自体をビジネス化していくことについても、大きな可能性を秘めていると思っている。


(問)
 リーマン・ショックの関係で、先日、日銀が2008年1月から6月の決定会合の議事録を公表した。結果を知っている身からすると後講釈は幾らでもできると思うが、当時、ボードメンバーのなかでも最悪の状況を脱していたかどうかについての認識に相違がかなりあったり、なかには利上げの議論もあったようである。藤原会長は先ほど、当時全銀協にいらっしゃったと言われたが、金融の現場にいた身としてリーマン・ショックはやはり防ぐことが困難だったのか。
 今後、金融危機が起こり得ると思うが、危機は未然に芽を摘むのは基本的には難しく、起きた後の影響を最小限に抑えることの方が現実的だとお考えか。
(答)
 確かに「バブルは、はじけた後にバブルと認識する」という話をよく聞くが、リーマン・ショックは、我々の想像を超える影響を世界経済全体に与えた事象だと思っている。特に日本経済という観点で当時を振り返ってみると、日本は震源地のアメリカからかなり遠かったものの、主要先進国・地域のなかでも経済的な影響が最も大きかった。このことは、いかなる地域でいかなる事象が起きても、そこから生じるリスクに対してしっかりと備えをしておかなければいけない、という教訓でもある。
 こうした事象を防ぐことが可能かどうかというよりも、そうしたことが起こり得ることを前提に、リスク管理の枠組みあるいはリスクアペタイト・フレームワークを構築しておくことが必要だと思う。確率の問題は別にすると、テールリスクを含む全てのリスク事象は起こり得るし、それに対して備えることは我々の目の前にある大きな課題である。特に、今のグローバルな経済構造を見ると、実需にもとづくものと投機にもとづくもの、この非常に複合的な要素のなかで、経済理論だけでは説明できないことも起こり得るというのが我々の直面しているビジネス環境である。もちろん、規制やセーフティネットはこれから運用局面に入っていき、金融機関経営の面では資本のバッファーを持ちながら新しいビジネスモデルを構築していくことが急務になっているが、リーマン・ショックのような事象が事前に全て防げるとは考えないというメンタリティーが、銀行経営者にとっては大事なのではないかと思っている。
 未然に防止できるかという二つ目のご質問にも、同じようなお答えになると思う。


(問)
 石炭火力向けの融資について改めて考え方を教えてほしい。この質問は以前もいろいろなところで出ているし、株主総会でも取り上げられたということで、3メガそれぞれ対処方針を出しているが、それはつまり、石炭火力発電向け融資は、状況次第では引き続き継続していくという宣言と理解していいのか。もう1点は、国内は原発がこういう状況なので更新していかなくてはいけないのは分かるが、海外にまでメガバンクがわざわざ行って融資するきちんとした意味があるのか。
(答)
 石炭火力発電に対する融資ポリシーは、各個別行が判断するものであり、今回出されたポリシーの策定も3メガが自主的に取り組んだものである。おそらく共通しているのは、本業である投融資を通じて環境・社会に対してポジティブな影響を及ぼす、さらには環境・社会に配慮した投融資を行うことによってネガティブな影響を抑制することではないかと思っている。石炭火力発電については、政府の第5次エネルギー基本計画においても「非効率石炭火力のフェードアウト」という方向感が打ち出されている。今後は、これを踏まえた対応になるのではないかと思う。ただ、その前提として、気候変動対策への責任を果たすことが必要であり、具体的には、透明性のある開示やステークホルダーとの対話を進め、さらにはお客さまの課題解決のサポートを進めていくことになると思っている。
 開示については、金融機関の社会的責任として透明性を高めていくことが期待されており、国際的にもTCFDで炭素関連資産エクスポージャーの開示が推奨されている。業務実態に即したかたちで、かつ比較可能なものとなるよう、統一的な開示方法のルールをまずは確立するということが必要だと思っている。
 対話については、3メガが責任ある投融資態勢を強化し対外的に開示したことで、エネルギーセクターを中心とするお客さまや市民社会、NGO等との対話がすでに始まっている。
 そして課題解決については、我々は、お取引先あるいはプロジェクトとの関係において、リレーションシップ・バンキングの役割あるいはデットガバナンスを発揮し、対話を通じて投融資先の状況を常日ごろから把握しながら、課題解決をサポートする。同時に、それらを通じた座礁資産化リスクにも対応していかなければならない。
 2点目の海外についてだが、SDGsの本文のなかにも、「各国の発展段階の違い、あるいは能力の違いを考慮に入れ」て、「それぞれの国が置かれた状況および優先事項にもとづく各々に違ったアプローチ、利用可能な手段が変わってくることを認識する」ということが記されている。
 個別行についてだが、みずほはグローバルに展開する金融機関として、資金提供を行う企業や事業が属する国や地域の経済状況、あるいはエネルギー事情等を総合的に勘案して、それぞれの国の実情に応じた最適なアプローチで対応していく。なお、みずほのポリシーは最低年1回見直すことにしており、今後、さまざまなステークホルダーのご意見に耳を傾けて、対話や開示の充実に適時適切に対応していきたい。


(問)
 全銀協には、なぜ奨学金制度がないのか。日本証券業協会には、奨学金基金というのが長らく運営されている。全国の協同組織金融機関を回ると、個別の金融機関で給付型の奨学金制度、小さい協同組織金融機関、例えば新潟でも、秋田でも、福島でも、本当にこまめにやっているが、個別の銀行でやっているケースはあまり耳にしない。同時に、全銀協のホームページを見ても、そういう制度は見当たらない。
 一般国民、消費者というのは、サービスが優れているかどうかだけでは判断しない。その銀行がいい銀行か、Fintechよりも銀行のほうが親切か、そういう要素で選択すると思う。そういう意味合いからも、少しご検討になったらと思うがどうか。
(答)
 ご質問の背景には、格差や貧困の問題があると思っている。格差、貧困というと、発展途上国の問題という見方も多くあるかもしれないが、日本においても目を背けることのできない問題だと私は思っている。
 事実、ジニ係数、上位10%の高額所得者の所得占有率、さらには相対的貧困率など、わが国はOECDのなかでも平均以下である。この20年間、現役世代・高齢者世代ともに、世帯所得の低所得化が進んでいる。
 政府は一昨年、働き方改革実現会議を設けて、同一労働同一賃金などの非正規労働の処遇改善、賃金引上げ、高齢者の就労促進、さらには格差を固定しない教育のあり方などを打ち出している。
 格差、貧困と教育とが連関するというデータもある。例えば、親の年収が高いほど学力や大学進学率が高く、学歴によって生涯賃金に格差が生まれ、この循環により格差が固定化していくという問題が発生している。そうしたなかで、銀行界として取り組むべき分野を考えると、まずは経済の血脈として経済成長をしっかり後押しして、所得水準の向上に取り組むことが大事だと私は思っている。
 加えて、学びたい人がしっかり学べるように、例えば教育ローンといった貸付制度の充実を図る。また、貯蓄から資産形成へという意識を若年層から高めていき、就学に困らないようにする。さらには初等教育、中等教育を含めた金融経済教育により、金融リテラシーの向上に貢献していく。このような取組みが非常に重要だと思っている。
 また、奨学金についてだが、私も福岡県教育文化奨学財団事務局が運営している学生寮で学生時代を過ごし、奨学金を受け、かつアルバイトをしながら大学を卒業した。当時、挑戦の機会を与えてくれたことに対する周囲への感謝の念は、いまだに忘れることはない。
 日本の将来を担う次世代にも、あらゆる面でのサポートが必要だと思っている。それをどのようなかたちで実現するかについて、例えば、みずほには、みずほ育英会の奨学金制度があり、地域金融機関のなかにも奨学金制度のための団体をつくっているところがあるなど、銀行界では個別行で対応しているのが実態である。教育問題は、政府の人づくり革命の中心的課題であり、銀行界としてもしっかり貢献していきたい。


(問)
 先日、東日本銀行が行政処分を受けた。見解をお聞かせいただきたい。
(答)
 個別の金融機関の案件であり、詳細なコメントは差し控えたい。
 ただ、顧客本位の業務運営を徹底することは、融資業務のみならず銀行業務を行ううえでの大原則であり、今回の事態は大変残念だと思っている。
 当社は、今後「お客様本位及びコンプライアンスを最優先とした業務運営の再構築、ガバナンス態勢の強化」に取り組む旨を公表しており、その状況をしっかりと注視してまいりたい。以下、一般論で申しあげる。
 過去を振り返ると、私どもを含めて、ガバナンス等が課題とされた事例があったことも確かである。そのような時にはしっかりと過去を総括し、一銀行のみならず、銀行界としても自らを省みる機会にしなければならない。どんなに状況が苦しくても、銀行の存在意義を考え、銀行の矜持をしっかりと持って、社会的役割と公共的使命を果たしていくことを忘れてはならない。「正しく稼ぐ」という心がけが一層重要な局面に入ってきていると感じている。