2019年6月13日

髙島会長記者会見(三井住友銀行頭取)

岩本専務理事報告

 事務局から1点ご報告申しあげる。
 今般、お手元の資料のとおり、本日の理事会において、3年後を目途に電子交換所を設立することを決定した。
 現在、金融機関は、お客さまから取立を依頼された手形・小切手について、全国各地の手形交換所を通じて交換し、決済を行っているが、電子交換所の設立後はイメージデータの送受信のみで決済を行うこととするものである。
 なお、詳細について質問があれば、会見終了後、事務局にご照会いただきたい。
 事務局からのご報告は以上である。

 

会長記者会見の模様

 

(問)
 幹事社から2問伺う。6月10日に、今年1月から3月期のGDPの確報値が出た。速報値よりも上方修正されたわけであるが、国内の景気の実態より強めに出ているのではないかとの指摘もある。会長は、この国内の景気の現状についてどう見ているのか教えてほしい。
 2点目は、金融庁は金融検査マニュアルを廃止する方向で、今後、資産分類と引当てに関するディスカッションペーパーが出てくる予定とされている。顧客の実態に即した対応がしやすくなる一方で、恣意性が増すのではないかという指摘もあるが、この点についての受止めと、今後、予防的に引当てを積み増すということになれば、引当ては増える方向にあるのか、2点お願いしたい。
(答)
 まず、1問目の国内景気の見方という話についてである。第1四半期のGDP成長率は年率換算2.2%へ改訂され、2四半期連続のプラス成長ということになっている。緩やかな景気回復が続いていることが確認されたことは明るい材料ではあるが、景気実感よりもやや強めに出ているのではないかというのが正直な感想である。
 GDPの内訳を見てみると、輸入が大幅に減少してGDPを押し上げたというテクニカルな要因があったうえに、国内需要の回復力も脆弱と言わざるを得ない。さらに、4月の景気動向指数の基調判断が前月に引き続き「悪化」となるなど、明らかに弱い動きも見られる。
 総合的に判断すると、私としては足元の景気は足踏み状態にあるのではないかと見ているが、趨勢としては緩やかな回復基調に戻っていくと考えている。
 足元、中国景気の減速により、中国向けの資本財、生産財の輸出が落ち込んだこと、これが製造業の設備投資マインドを抑えたこと等があると考えている。ただし、弱い動きは製造業が中心で、非製造業は引き続き堅調を維持していることから、直ちに景気が腰折れするといった状況にもないと思う。
 当面を展望すると、国内の良好な雇用・所得環境の下で、個人消費が緩やかに持ち直していくと見ている。また、設備投資も人手不足対応の省力化投資や老朽設備の更新需要などが引き続き根強いため、趨勢としては増加基調をたどるのではないか。全体として、消費増税の前後で成長率が上下するという可能性はあるものの、繰返しになるが、趨勢としては緩やかな回復基調に戻っていくと見ている。
 ただし、中国経済については、米中通商交渉や追加関税等の不透明感もあり、引き続き、リスク要因としてしっかりウォッチしていく必要があろう。
 次に二つ目のご質問、金融検査マニュアル廃止後の償却引当て等についての研究会のディスカッションペーパーが決定されるということに関して申しあげたい。
 金融検査マニュアルであるが、邦銀が不良債権問題に苦しんでいた時代に、「金融機関における業務の健全性および適切性の確保」を図ることを目的に導入されたものである。その後の邦銀の財務体質の改善や内部管理態勢の強化を踏まえると、検査マニュアルは十分に機能し、その役割を果たしてきたと言えると思う。
 その一方で、足元では、低金利環境の継続、資金需要の低迷、異業種を交えた競争の激化など、銀行が直面する経営課題は多様化・深刻化してきており、金融機関には、いかに自律的・自主的にそれぞれの経営課題に対処していくかが問われている。
 こうした流れを受け、昨年行われた「融資に関する検査・監督実務についての研究会」における議論を踏まえ、ディスカッションペーパーが取りまとめられる予定と伺っている。ディスカッションペーパーは未公表であるが、今までの議論を踏まえると、これまで各行が築きあげてきた自己査定、償却引当てのあり方を否定しない、としつつ、各行の経営戦略、およびそれに即したリスク管理をベースに、自己査定・償却・引当てについて創意工夫や独自性のある取組みを後押しするものとなり、銀行経営の自由度を高めるという点で大きな意義があるものになると期待しているところである。
 一方で、銀行には、意思決定のプロセスの整備や適切なガバナンスの構築等を通じ、引当ての見積もりにおける恣意性を排除するとともに、説明責任をしっかりと果たしていくことが求められることになる。結果として、引当額にどのような影響をもたらすかについては、各行がそれぞれの経営戦略にもとづき計上するものであるので、一概に増える、減るとは申しあげられないが、いずれにしても、引き続き当局、あるいは公認会計士、投資家などのステークホルダーとの対話を通じ、信頼性、実効性のある枠組みをつくりあげていく必要があると考える。


(問)
 1点目、アメリカのFBO規制について。アメリカの大手外国銀行規制の見直しが行われているが、現状どのように見ていて、影響をどのように見ているか。
 2点目、香港で逃亡犯条例改正に対する抗議運動が展開されているが、これの経済・金融への影響がどのようなものか考えを伺いたい。
 3点目、地銀の7割が最終減益となるなか、データを見ると国債保有残高を大きく減らしていたり、外債の運用もままならないような状況が垣間見られ、資金の滞留が起きているのではないかという話もある。このような状況をどう見ていて、今後の打開策や改善策をどのように見ているか。
(答)
 まず、1点目のアメリカで提案されているFBO(Foreign Banking Organizations)規制についてどう見ているかという質問について。
 今回のG20の財務大臣・中央銀行総裁会議のなかで、日本が議長国として、市場の分断、マーケットフラグメンテーションの論点をとりあげ、すでにご承知のとおり、金融安定理事会(FSB)から報告書が出ている。日本政府がイニシアチブをとって、世界経済に対するネガティブなインパクトについて議論いただいている。我々銀行界としても非常に気にしている論点であり、時宜を得たリーダーシップを日本政府にとっていただいているということで歓迎している。
 その文脈で、米国のFBO規制については、まさしく、いわゆるホスト国による資本、流動性の囲い込みの一種と言っていいと考えている。この4月に公表された改定案では、アメリカにおける外銀をその規模やリスク、特性に応じてカテゴリー分けをし、それに応じて自己資本や流動性規制を課していこうということになっている。私どもとしては、その結果として、アメリカでの外国銀行の活動に大きく制約を加えるということになりかねないと懸念をしているところである。特にアメリカは、ドルの調達源であるし、ドルを使ったビジネスが当然ほとんどであるなか、やはり流動性を確保するために追加のコストが外銀にかかってくる可能性は非常に危惧されるところである。こうした動きが各国に広がっていくと、市場の分断がより一層深刻化する。全銀協としても、こうした懸念を表明する意見書を提出する予定である。日本政府とも相談しつつ、まさにG20で議論されている市場分断の回避に向けた取組みとして、働きかけを強めていきたいと考えている。
 二つ目は、いわゆる中国への犯罪人引渡条例の改正をめぐって、香港で大規模なデモが発生しており、足元、大きなニュースになっていることについて。国連のグテレス事務総長が、「国連は平和的な抵抗、集会と表現の自由を尊重し、そうした活動の重要性を繰り返し主張する」という声明を出しており、その動向に注目が集まっている。現時点で、今回の事態により、直ちに香港や中国からの大規模な資本逃避等、ドラスティックな動きが発生するとは必ずしも見ていないが、仮にこの事態が長期化・深刻化する場合、「香港のアジアの金融センターとしての地位、そして、中国のゲートウェイとしての地位に悪い影響を与えるかもしれない」という懸念が広がる可能性も否定できない。
 したがって、中国を取り巻く新たな不透明要因となりつつあることは否定できない、ということである。引き続きマーケット、特に中国の経済情勢等への影響をしっかり注視していく必要があろう。
 最後に地方銀行の話だが、まず昨年度の決算についてコメントさせていただく。一言で言うと、銀行を取り巻く業務環境の厳しさが反映された決算であったと言っていいと思う。昨年度は、低金利環境の継続、米国の利上げ、米中貿易摩擦を受けた国内景気の不透明感の高まりがあり、非常に厳しい業務環境であった。また、これは、当然のことながら、地方銀行に限らず、大手行についても同様で、大手行の多くでも減益決算を余儀なくされている。
 一方で、今回の決算においては、地方銀行の8割が経費を削減している。そして、半数以上は、非金利収益、役務取引等利益を増加させており、結果として、3割の銀行が最終増益を確保している。各行が、きちんと業務改善に向けた努力を継続しておられ、その実績も同時に窺える。また、ほとんどの地方銀行が、依然として最終黒字を維持しており、過去の失われた10年等々の時期と比べても、相応の自己資本を備えていることについては、冷静に見ていく必要があろうと思っている。
 本年度は、アメリカが利上げを一旦停止しており、どちらかというと、マーケットは利下げを織り込みつつあるので、有価証券の運用面では改善の余地が見られるが、国内においては日本銀行のマイナス金利政策は当面継続されると見られ、また、先ほど申しあげたが、足元、景気は若干足踏み状況であるので、引き続き業務環境としては厳しいと認識している。
 地方銀行におかれても、当然のことながら、相応の危機感をもって構造改革、経費削減等に取り組んでおり、そのような活動を引き続き継続されることが大事だろうと考えている。


(問)
 2点お願いする。1点目は、大手行を中心に金融商品の販売目標撤廃、いわゆる営業ノルマの廃止の動きが出ているが、ノルマ廃止によって顧客重視のビジネスにつながるという期待がある一方で、短期的には収益力が落ちるのではないかという見方もあると思う。個社の話にも絡むと思うが、改めてノルマ廃止の狙いと収益への影響についてお考えを伺いたい。
 もう一つは、先ほども出た構造改革の流れとして、国内の店舗削減、人員の減少など、業界はどちらかというと規模の縮小という話が多い印象を受けている。特に人員に関してAI、ITの活用による合理化によって、今後も人員減の流れは続くのか、あるいは今後の持続的な成長に向けて、仕事によっては人員を拡大させていくという選択肢もあり得るのか。将来の銀行業界の人員管理の考え方についてお願いしたい。
(答)
 まず、ノルマの廃止が特にリテール業務において、大手行で広がっていることについての考え、さらに収益に対するインパクトをどう見ているかという質問であると思う。当然のことながら、販売目標の設定や評価体系は各行が戦略にもとづいて決定することであるので、全銀協として何か申しあげるものではない。しかし、一般論として申しあげれば、お客さま本位の業務運営を推進するにあたり、収益目標、販売目標など、具体的な計数の目標で推進することにより、どうしても行き過ぎが出てくる、あるいは、いろいろな課題が出てきているということもある。
 一概に銀行界全部でこういう動きによって、収益にどのようなインパクトがあるかと申しあげるのはなかなか難しいので、個別行の事例で説明する。我々三井住友銀行においては、本年度からリテール業務、個人のお客さまを対象にした業務における金融商品販売のノルマを廃止した。これは、担当者がいかにお客さま本位の業務運営を徹底していけるか、または、それをやりやすくすることを狙いとして決定したことであり、運用収益や販売額、あるいは残高の計数目標を個々の担当者に割り振らない。チーム、拠点、あるいはエリア全体として見ていくかたちに変えたものである。
 業績への影響を完全に読み通すことは難しいので、経営としては一定のリスクを取った決断である。しかしながら、ここ数年間、お客さま本位の業務運営について、フィデューシャリー・デューティー宣言を行い、そうした取組みや努力を続けており、成果については一定の手応えを感じている。これまで以上にお客さまのニーズを起点として、そのニーズをしっかり把握したうえで、提案のクオリティーを上げていくこと、そして、結果として、それが銀行の収益につながってくるという確信を持って、本年度からスタートしたものである。
   二つ目の質問、経費削減、人員削減等についてであるが、足元、確かに縮小方向のイメージが先行していることは否定できないが、人員を削減して縮小することを志向しているのではなく、ビジネスのリ・エンジニアリング、すなわち業務を再構築していこう、というのが目的である。
 銀行は今、二つの大きな変化の中にいる。すなわち、デジタル化・IT化を踏まえた顧客ニーズの変化と、マイナス金利や新規参入等に伴う業務環境の変化である。実際、インターネットやスマートフォンを利用した取引が増加し、店舗への来客数は減少している。既存業務の収益性の悪化を踏まえて、そのあり方を抜本的に見直す必要もある。こうした変化に対応すべく、各行は必死にビジネスモデルの再構築に取り組んでいる。おそらく皆さまからご覧になると、人員を削減して縮小というイメージに見えているということではないかと思うが、同時に、次の成長に向けて、成長分野にはしっかりと経営のリソースを投入している、ということも強調したい。
 個別行の例で恐縮だが、例えば三井住友銀行では、従業員一人ひとりの付加価値をいかに高めて、全体でより生産性の高いオペレーションにしていけるか、そのためのトランスフォーメーションを進めている。結果としては、低付加価値の業務に従事する人員は減少するが、同時に、ロボティクス、RPA等、戦略的なIT投資は拡大している。また、昨今あらゆる業界でいわゆるデジタル人材を中途採用などで確保しようとしている。行内においても、デジタル技術、あるいはセキュリティ等、ニーズの高い業務についてのトレーニングを強化しており、単に人件費を削減するために人員を削減するというアプローチはとっていない。したがって、銀行は縮小一辺倒ではない、ということを分かって頂けるよう、努力していきたい。


(問)
 キャッシュレス決済について何点か教えてほしい。サービスや手段が乱立していることについてだが、その受止めと本格的なキャッシュレスの普及に向けてどういったかたちで日本が進んでいくことが望ましいと考えているのか教えてほしい。特に、銀行業界でコインの話とかウォレットの話とかペイの話で、いろいろな多くのサービスが銀行業界でも登場しているが、この点、各行がばらばらに取り組んでいることで、ある種無駄なコストにもつながるのではないかという見方もあるが、どのようにお考えか。
 もう一つ、同じキャッシュレス決済についてだが、新しいサービスを通じてIT企業や通信事業、先ほどもあった異業種の参入も相次いでいると思う。データの取得・利用に関して、銀行は口座というかたちでインフラを提供して、IT企業などがそれを利用してうまくデータを集めて活用していくといった、いわゆる銀行が土管化するのではないかという懸念が出ていると思うが、この点について受止めや、銀行としてどういう対策を取っていくのか教えてほしい。
(答)
 まず、キャッシュレス決済の手段が何となく乱立しているのではないかと、そのなかにおいて、ひょっとして社会的に無駄が起こっているのではないかという視点についての見解等というご質問だったと思う。
 これは全銀協の会見であり、全銀協は決して自主規制団体あるいは会員銀行の戦略を調整する立場にはないので、あくまで個人的な見解、あるいは個別行の考えとして申しあげると、要は、競争と協調、このバランスをどうつくっていくかということが一番重要な視点ではないかと考えている。
 大きくざっくり申しあげると、お客さまのニーズに合ったより良いサービスをいかに提供できるかという部分、これはまさに競争領域。銀行であろうとノンバンクであろうと、あるいはeコマースの方々であろうと、いわゆるプラットフォーマーの方々であろうと、まさに競争をすることによって、社会全体で利便性を高める、あるいは安全性を高めるという部分であろうと思う。
 一方、キャッシュレス決済に共通するインフラ部分、例えばいろいろな各種の規格や仕様のようなもの、あるいは業界を横断的に統一すべきルール、こういったものはまさに協調していく分野であろうと思う。考え方としてはそれを二つにしっかりと分けて考えていく必要があるのではないかと考えている。
 したがって、各行がコインなどいろいろなことを打ち出しているが、そうした決済手段を銀行界で統一するというよりは、お客さまにまさに選択していただく、選択いただけるようにお互いに切磋琢磨していく、そういう競争領域にあるわけであり、そうすることによって、またさらに新たなイノベーションが出てくる、新たな利便性・安心性といったものが出てくるというものであろうと思っている。
 片や、協調領域については、例えば銀行界も参加しているキャッシュレス推進協議会において、今年の3月末にコード決済に関する技術仕様や統一用語のガイドラインを公表しているところである。また、異なる決済サービス間での相互運用性、すなわちインターオペラビリティの確保もキャッシュレス決済の普及とお客さまの利便性向上を両立させるという観点からは非常に重要なポイントであろうと考えている。
 もう一つ、銀行口座は土管化していないかというご質問について、先程の話にも絡むわけだが、現在、いわゆる通信会社やSNSのプレーヤーの方々、eコマースの方々など、多くの金融業以外のプレーヤーがキャッシュレス決済に参入しておられるなか、銀行界としてもそれぞれの強みを活かしたキャッシュレス決済の提供に取り組んでいるというのは、まさに乱立気味ぐらいにやっているということであり、ご認識のとおりである。銀行界としても、決済に伴うデータを有効に活用していくことの重要性は理解しており、いかに決済データを収集し利活用するかが、キャッシュレス決済戦略の鍵になると考えている。
 また、今国会で成立した改正銀行法において、銀行本体の付随業務として、当然であるが、お客さまの情報を、お客さまの同意を取ったうえで第三者に提供するビジネスができるということが明確化された。これをしっかりと活用していきたいというのが、まず銀行界として考えているところと言っていいと思う。
 そのうえで、利便性の高い決済サービスを提供することで、より多くの事業者・利用者にご利用いただくことがより多くの決済データの収集につながるわけであるので、銀行としても単なる口座というインフラの提供にとどまらず、そうしたデータの利活用を進めることによって、先ほど言った土管化ということにならないような対策を取っていきたいと考えている。
 同時に、これは規制緩和要望にもつながってくるところだが、その他の業界の方はデータを使ってその他いろいろな活用ができる。片や、銀行法の枠内に縛られている銀行は、その他のいろいろな業務に直接出ていけないということで、データを活用して利用者あるいはお客さまの利便性を高めるという意味ではディスアドバンテージになっている部分があるのではないかということがある。社会全体の利便性を高めていく、あるいは競争を促していくという観点からも、銀行の業務範囲拡大についても、引き続きご提言を申しあげていきたいと思っているところである。


(問)
 先日、金融庁の審議会がまとめた高齢社会における資産形成・管理の報告書について、麻生大臣や官房長官が正式な報告書としては受け取らないということで、老後の資産、生活費が30年間で2,000万円不足するといった内容が政府の見解というか政策と違うからという理由だったと思う。まずこの審議会の報告書を受け取らないという事態への受止めと、報告書の内容そのものについて、どのようにご覧になっているかというのが1点。
 もう1点が、マネロン対策についてである。3メガでは現金での海外送金停止や本人確認の手続強化といった対策が進んでいると思うが、地銀にはばらつきもあると思う。秋にはFATFの審査も控えているが、会員銀行の対応状況と、全銀協としてのサポート状況を教えていただきたい。
(答)
 一つ目は、金融庁の市場ワーキング・グループの報告書についてのご質問だと思う。ご質問の報告書については、金融審の総会の了承を得ていない、正式に承認されていないということであり、今後どのようなかたちでその報告書がとりまとめられていくか、明確ではない段階なので、我々の立場でコメントするのは差し控えたい。
 あくまで一般論として申しあげると、高齢社会のなかで金融機関がどのような役割を果たしていくかということは、従来以上に極めて重要な論点であろうと考えている。高齢のお客さま、あるいは高齢のお客さまでなくても、長期的に人生をどのように設計していくかということに関して、昨今はライフスタイル、高齢者の方であれば健康状態、家族の状況はさまざまである。お客さま一人一人のニーズにしっかりと寄り添って、お客さま本位の商品・サービスの提供に引き続き努めていくということが、我々金融機関に課された任務であろうと考えている。
 次に、マネロン対策についてだが、特に全銀協としての取組みと会員銀行の対応状況についてのご質問だと思う。
 ご承知のとおり、大手行はまさに今週6月10日から預金規定を改定させていただき、本人確認等の手続を強化するというプロセスをスタートしている。各行それぞれの事情あるいは考え方によって、タイミングや内容は異なってくることになるが、他の大手行あるいは地域金融機関におかれても、順次、預金規定の改定等をアナウンスし、手続の厳格化を進めていかれると認識している。金融庁のガイドラインにもとづき、お客さまへの確認の厳格化、既存のお客さまへの継続的な確認を行っていくということで、皆さまそれぞれに取り組んでいると考えている。
 こういう個々の銀行の取組みに加えて、全銀協としては、4月にも公表しているとおり、マネロンやテロ資金供与のリスクがある場合に、取引停止等を可能にするような普通預金規定の参考例を作成して、会員銀行に展開済みである。
 また、4月の会見でもご紹介したが、昨年、対策支援室を全銀協の中に設置し、地域の金融機関、中小の金融機関の皆さまと窓口をしっかりとつくり情報交換をさせていただいている。それ以外にも、お客さまにご理解いただくための広報活動、態勢整備に関するノウハウの共有等を継続的に実施していくことを通じて、中小の金融機関、地域の金融機関を支援していきたいと考えている。


(問)
 冒頭で地銀の経営状況についておっしゃったと思うが、地銀について、厳しい環境が続くなか、資本政策のあり方について、具体的には上場コストを負担してまで上場する意味があるのかどうか、メリットがあるのかどうかについて、ちょっとお答えづらいかとは思うが、会長個人のご見解でも結構なので教えていただきたい。
(答)
 地方銀行の経営環境に関連して、上場し続けることが果たしていいのかという質問だと思う。どのような資本政策を取るかはあくまで各行の経営判断であるので、個々の判断について全銀協としてコメントする立場にはない。
 あくまで一般的な話として申しあげると、中長期的に見て、上場維持コスト、要はコストに見合うメリットが期待できないのであれば、非上場化も選択肢になり得ると思う。
 近年、日本銀行や金融庁が、上場地方銀行による配当、株主還元の動向について注視していることは我々も承知している。上場企業として株主還元は重要である一方で、地方銀行は地域経済を中核として支えていくために十分な健全性を維持していく必要がある。地域活性化あるいは地方創生における地域金融機関の役割は非常に大きい。株主還元と自己資本の充実のバランスをいかに取っていくかというのは、引き続き上場する銀行特有の難しさと言える。
 他方、上場のメリットも忘れることはできない。ご承知のとおり、昨今、人材の獲得競争が激しさを増している一方で銀行はあまり人気がないという現実もあるが、先ほど申しあげたとおり、各行はさまざまなビジネスモデルの変革にチャレンジしており、従来以上に優秀な人材の確保が重要になってきている。人材獲得面において、上場によるブランド力、あるいは社会的な認知度がメリットとなることはやはり否定できない。
 各銀行がこのようなコスト・メリットを比較衡量して判断することが非常に重要であると考えている。


(問)
 1点目は、異業種やネット銀行で先行して取り組んでいるネットで手続が完結する中小企業向けのオンラインレンディングに関して、この手法の将来性をどのように評価するか。銀行取引においては、データには表れない経営者の見極めなども必要かと思うが、その点も踏まえて伺いたい。
 2点目は、市場ワーキング・グループの報告書についてコメントは差し控えたいということだったが、年金制度の議論や目指すべき方向性について可能な限り伺いたい。
(答)
 まず、最初のオンラインレンディングに関しての質問だが、そもそもオンラインによるレンディングであろうと、従来どおりの対面によるレンディングであろうと、お客さまのビジネスや事業の実態にもとづいてご融資させていただくという意味においては、同じだと思っている。多くの場合、オンラインレンディングの手法をとられる銀行は、お客さまの事業実態の把握の一部について、例えばAIあるいは他行の口座の入出金情報等のデータを使って判断をしたうえで、迅速に貸出をするというのが主流ではないかと思う。
 しかしながら、データだけで判断することによって漏れ落ちてしまうものがあるということも、我々が長くこの業務をやっていて気がついているところであり、それをいかに取り組んでいくのかが大切だと思う。例えば、経営者がどういうふうに考えて、どういうふうにその業務をやっていこうとされているのかといったことは、なかなかデータだけではわからない。やはり直接お会いし、しっかりと議論させていただいて、この経営者だったらこの事業をうまく果たされるだろうと判断するというような部分は、どうしても欠かせない点だろうと思う。
 したがって、我々もAI等を、迅速かつより良い顧客取引を行うための材料の一つとして使うことを検討している。その方が、持続的な金融業としてよりふさわしいのではないかと考えている。決して、オンラインレンディングの方々が、将来うまくいかなくなると申しあげているわけではないが、人と人とのコミュニケーションをベースにした判断と組み合わせで活用するというのも非常に重要だと考えている。
 いずれにしても、我々が大いに参考にできる取組みをやっておられる新しいプレーヤーの方がどんどん出てこられている。そのような取組みは、我々もぜひ参考にさせていただきたい。場合によっては、一緒にタイアップして、よりよいサービスにつながるようなものにしていきたいと考えているところである。
 もう一つは、市場ワーキング・グループの報告書に関連して、公的年金制度についてということだが、全銀協は公的年金制度についてコメントをする立場にはないため、あくまで個人的な意見として、一般論を申しあげるにとどめさせていただきたい。
 今後、少子高齢化が進行するなか、国民が、将来、年金を受け取れなくなるのではないかという不安を解消していくためにも、年金制度の持続可能性が極めて重要であることは、論を俟たない。そのためには、一般論として申しあげると、いかに保険料の負担と給付のバランスを長期的に確保していくかということが最も重要なことであろうと考えている。
 他方、少子高齢化が進行するなか、国民一人一人のライフスタイルや考え方はますます多様化してきている。人生設計や資産形成に対する考え方、どのような老後をご家族と過ごしていこうか、そういったお考えはいろいろで、我々も現に日々お客さまとお話をさせていただくなかでも感じるところである。したがって、我々民間の金融機関としては、そういったお客さま一人一人の多様なニーズに寄り添って、お手伝いしていくことが極めて重要になっていると実感している。
 公的年金制度の持続可能性が確保されつつ、同時に、やはり我々民間としては、こうした多様なニーズにしっかりと応えていくことが非常に大事であり、その役割はますます重要になってきていると思っている。信頼されるパートナーとして、こうしたニーズに応えていけるように、引き続きしっかりと取り組んで参りたい。それが、我々にできることだと考えている。


(問)
 デジタル・デバイドの問題、先ほどから高齢化のお話をされているが、デジタル化が加速するなかで、やはり高齢の方々が取り残される、金融排除の可能性があると思う。サービスを提供する銀行側として、どのような姿勢を持たれているのか。
(答)
 デジタル・デバイドという問題について、我々金融機関としては、デジタル化の推進により、顧客利便性の向上、あるいは銀行の業務効率化ということは重要な課題である一方、やはりデジタル化の進展に追いついていけない、主として高齢者が中心ということだと思うが、そういうお客さまが発生してくる可能性は十分に認識している。
 先般のG20財務大臣・中央銀行総裁会議においても「高齢社会と金融包摂」が、GPFIのイニシアチブで、テーマの一つとして議論された。我々銀行界にとっても、高齢社会への対応は、社会問題の解決に向けて本当に尽力していかなければならないと考えている。
 それだけでなく、高齢のお客さまが保有しておられる金融資産の活用が新たなビジネスチャンスにつながるという点も非常に重要だと思う。そういった観点から、一部のお客さまが金融サービスから排除されることがないようにデジタル化を進めていくことが重要だと思う。デジタルに不慣れなお客さまに対しても、万全のサポート体制を構築していくということが、我々金融機関にとっても非常に重要な任務だと思う。
 現に、店頭などにおいて、2種類のお客さまに、我々は日々、相対している。片や、まさにデジタル時代の方々、現物あるいはそういう書類などは要らないというお客さま。片や、スマホで同様のサービスがより簡便にできるけれども、やはりどうしても来店して、フェース・トゥ・フェースでお話をしつつ、書類をもらわないと安心できないというお客さまがいる。その両方のお客さまへの対応をしっかりと行っていくことが我々銀行に課された使命だろうと思う。


(問)
 株主総会シーズンが近づいているが、銀行が持つ政策保有株式の議決権行使について教えていただきたい。スチュワードシップ・コードが浸透して、機関投資家の議決権行使結果の開示が大分進んだ。一方で、銀行は開示していない。もちろん銀行が行使結果を開示すると取引先企業に悪影響を与える懸念があるのは承知しているが、改めて銀行の議決権行使とその結果開示について、どのようにあるべきなのか、お考えを伺いたい。
 関連して、開示する場合としない場合で、どちらのほうが企業価値を高めることになるとお考えなのか伺いたい。
(答)
 政策保有株式に係る議決権行使に関してのご質問だと思う。私どもが政策保有株式の削減を計画的に進めているなか、機関投資家の方々は、いわゆるスチュワードシップ・コードの浸透によって、議決権行使結果の開示を進めておられると認識している。
 一般の機関投資家の方々は、投資家の方々を背後に抱えておられる。したがって、そのなかで、いかに投資先に対して目を光らせているかという観点で、より積極的な開示が必要になってきているということだろうと思う。
 反面、銀行は、機関投資家の方々とは立場が違うということは否定できない。すなわち、銀行の政策保有株式は、自らの判断にもとづき、保有目的等について、取締役会で検証したうえで保有しているものであり、機関投資家がスチュワードシップ・コードへの対応として行っておられる開示を、そのまま銀行の政策保有株式に対しても行うべきとは、必ずしもならないのではないかと思う。
 冒頭申しあげたとおり、銀行自体は計画的に政策保有株式の削減を進めているなか、機関投資家に求められるスチュワードシップにあたるような新たな役割をどのように発揮していくべきなのか、という議論も出てくるのではなかろうかと考えており、引き続き慎重に検討していきたいと思っている。
(問)
 確認だが、これは前に進めていかなければいけない課題だと認識しているということか。つまり、しなくて良いということではないということか。
(答)
 継続的に検討が必要なテーマだと考えていると受け取っていただければと思う。やはり銀行が保有しているものについて、議決権行使結果を開示することによるいろいろな影響をよく検討する必要があると思う。


(問)
 2点お願いしたい。
 まず、先日、金融庁から銀行以外の事業者にも一回100万円超の送金を認める規制緩和の方針が打ち出された。特に企業間の送金で新興企業に基幹業務を侵食されることになりかねない状況かと思うが、この件についての受止めと対応について伺いたい。
 2点目として、気候変動リスクの情報開示に向けたTCFDに賛同する企業が増えているかと思う。髙島会長はこの件について深く関わられているかと思うが、このTCFDに取り組む意義や重要性について所見を伺いたい。
(答)
 1点目の、金融制度スタディ・グループにおける資金移動業に関するディスカッションについて。まず、金融審議会の金融制度スタディ・グループが基本的な考えとして示しておられるのは、同一機能あるいは同一リスクに対しては同一のルールが適用されるべきということ。これは、業務の機能やリスクに注目した基本的な考え方を示しておられると認識している。
 その点については我々も賛同しているところである。
 その考え方にもとづき、資金移動業者をいわゆる三つのカテゴリーに分けて、それぞれにふさわしい、規制等のルールを考えていこうという方向かと思う。その中で、今回、新たに100万円超の大口送金サービスを認めようということについて、従来存在しないカテゴリーであるので、銀行だけが現在行っている分野に参入してこられる可能性があるというのがご質問かと思う。
 この点については、やはりより銀行に近い決済機能を果たされるということであれば、より一層、銀行と同等の安心・安全な対策を確保することが重要だろうと考えている。
 利用者にとって送金手段の選択肢が増えることは、これは国民経済的には良いことである。しかしながら、同時に、同じサービスの提供をしている事業者、プレーヤーが、同じルール、同じプレイングフィールドにあってこそ、最終的にも長期的にも、利用者にとって本当にフェアな選択肢になるということだと思う。共通のルールの下で、ぜひ切磋琢磨しながら、お互いにより良い決済サービスになるように競争していくという考え方が重要なのではないか。
 TCFDの話だが、5月27日にTCFDコンソーシアムが設立されており、私もその発起人の一人ということで式典にも出て、その意義をお話ししたところである。やはり気候変動というのは、日本に限らず、人類全体にとってのグローバルかつ喫緊の社会的な課題であるというのは論を俟たないだろうと思う。そうしたなかで、環境問題に対して積極的な企業に世界中から資金が集まるというふうな仕組みをつくることによって、この世界的な課題に対応していこうというTCFDの発想というのは、民間も含めて非常に重要な視点であろうと思う。個別行としても、先般新たに、気候変動リスクに対する考え方と、それにもとづいて算出したリスクを開示したところである。
 日本では今162社がTCFDに賛同されているということであり、民間を主体としてそういう動きを進めていくことは、大いに意義深いことであろうと考えている。