会長記者会見
2026年3月19日
半沢会長記者会見(三菱UFJ銀行頭取)
辻専務理事報告
事務局から6点ご報告申しあげる。
1点目は、お手元の資料のとおり、当協会の「中長期的な金融仲介の在り方検討WG」が報告書等を取りまとめた。本報告書は、銀行が期待される役割を果たしていくために必要となる方策を、「成長投資の具体化」、「資金供給」、「銀行の対応・改革」の各着眼点から提言している。当協会は、本報告書の提言等を踏まえ、銀行が期待される役割を果たし、わが国の金融仲介機能の強化に貢献していけるよう、引き続き取り組んで参る。
2点目は、お手元の資料のとおり、当協会の「国内LBOファイナンスの課題に関する勉強会」が報告書を取りまとめた。本報告書は、市場の「可視化」を主なテーマとして、データ整備・定義整理・集計の試行を通じて、市場の全体像を把握するための基礎的な整理を行うとともに、2026年度以降の検討に向けた主な論点の整理を行ったものである。
3点目は、お手元の資料のとおり、当協会の「実質株主確認制度整備に向けた実務者検討会」が中間報告書を取りまとめた。本報告書は、法制審議会における「実質株主確認制度」に関する議論の状況も踏まえ、当該議論の参考となりうる情報を提供するべく行った、実務者の立場からの意見取りまとめ等の活動概要を中間的に整理したものである。
4点目は、お手元の資料のとおり、当協会が会員銀行向けに作成している企業価値担保権に関する資料を更新した。資料そのものは会員限りの利用を前提としており、一般公開は予定していない。当協会は2026年5月25日に予定されている「事業性融資の推進等に関する法律」の施行に向け、引き続き会員の取組みを支援して参る。
5点目は、当協会と日本証券業協会が発起人となり、2026年4月1日に「一般社団法人株主優待こども・若者貧困対策支援機構」を設立する。お手元に昨日発表した資料を配付している。この機会にご覧いただきたい。
6点目は、お手元の資料(2026年3月19日付プレスリリース)のとおり、当協会の子会社である一般社団法人全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)が、「資金決済システムの将来像に関するスタディグループ」における検討結果を公表した。全国銀行データ通信システム(全銀システム)は稼動から50年以上が経過し、利用者ニーズや国際標準・規制への対応など、現行システムでは対応が難しい課題が顕在化している。今回の検討結果は、こうした課題を抜本的に解決し、持続可能かつ競争力のある新たな決済システムの構築を目指すという方針を提言するものである。
会長記者会見の模様
(問)
まず1点目、2025年度の全銀協の取組みについて会長としての総括と、次期会長に引き継ぐ課題についてどのような認識を持っているか伺いたい。
2点目、本日開催された日本銀行の金融政策決定会合の決定内容についての受止めを教えてほしい。
(答)
まず1点目だが、昨年4月の会長就任以来、本年度を「日本の成長加速と社会課題解決に貢献し、活力あふれる未来への礎を築く1年」と位置付け、活動してきた。本年度の総括ということで、12月にお話しした内容と重複するところもあるが、三つの柱に沿って1年間の取組みを簡単に振り返りたい。
第一の柱、「インベストメントチェーンの活性化を通じた『成長と分配の好循環』の加速」では、NISA制度拡充の議論や現役世代への資産形成広報、顧客本位の業務運営の推進に取り組んできた。また、スタートアップ支援として、新株予約権付き融資の検討会やリバースピッチイベントを開催し、事業性融資についても、5月に施行を控える企業価値担保権の活用に向けたポイント集を策定することで、会員行の取組みを後押ししてきた。
「中長期的な金融仲介の在り方検討WG」における、国民経済の成長を支える「要」の役割を果たすための変革についても、本日、報告書として成果を取りまとめることができた。
第二の柱、「安心・安全で利便性の高い、時代に即した金融インフラの実現」では、手形・小切手電子化の総仕上げに向けた取組みを着実に進めたほか、APIゲートウェイのリリース、次期全銀システムの開発も進めてきた。
また、中長期的な視点で資金決済システムのあるべき姿や将来像を議論するために全銀ネットに設置した「資金決済システムの将来像に関するスタディグループ」においても、決済取引のリアルタイム化や低リスク化に加え、ステーブルコイン等も含む新しい技術との接続性を備えた、新たな決済システムの構築に向けた基本構想を報告書として取りまとめることができた。
第三の柱、「健全かつ強靭な責任ある金融システムの維持・高度化」では、金融機関同士による不正利用口座の情報共有の枠組み構築や、口座売買等の違法性を周知する広報動画の作成・配信を行うなど、官民一体・業界横断での活動に取り組み、多様化・巧妙化する金融犯罪への対策を強化してきた。
昨年12月にも申しあげたが、短期的な課題だけではなく、中長期的に検討すべき課題も、将来を見据えた本質的な議論を行うことができたと手応えを感じている。
来年度以降は、議論した内容の実装段階に入るが、わが国の経済・社会が持続的な発展を続け、近い将来、活力あふれる未来を実感するためには、こうした骨太なテーマに対しても継続性を持って対応することが不可欠であり、業界全体で一致団結して果たすべき役割を全うすることが重要である。
4月からは、みずほ銀行の加藤頭取にバトンを引き継ぐが、引き続き銀行界の一員として、微力ながらしっかりとサポートして参りたい。
2点目だが、個人の見解としてお答えする。
本日の金融政策決定会合では、政策金利の現状維持が決定された。日本銀行は、昨年12月の利上げ以降、その効果を見極める局面にあることに加え、中東情勢の急速な緊迫化等を背景に、海外経済を巡る不確実性が一段と高まっていることを踏まえた判断であるとの見解を示した。
今後の見通しだが、日本銀行は従来示してきた「経済や物価見通しの実現に応じて、引き続き利上げを進める」という考え方に沿って、追加利上げのタイミングを図っていくものと考えている。
植田総裁は、記者会見において、中東情勢が、わが国経済にどのような影響を及ぼすかが重要なポイントと指摘する一方で、中東情勢の悪化前の日本経済は、概ね日本銀行が展望する良好な状態で推移してきたと述べ、金融環境全体としては引き続き緩和的な状態にあるとの認識を示している。
日本銀行は、今春闘における賃金への反映状況やインフレ動向、さらに政府の政策運営や中東情勢をはじめとする海外動向を巡る不確実性が景気・物価に与える影響を含めて、情勢を丁寧に見極めながら、利上げの適切なタイミングを慎重に探っていくことになるのではないかと受け止めている。
(問)
先ほど言及のあった中東情勢の受止めについて伺う。原油高、円安の進行、株価の乱高下など、事業環境の厳しさも予想されるが、全銀協として懸念している点や見通し、対応していく点などを聞かせてほしい。
(答)
米国・イスラエルとイランの軍事衝突は、周辺国も巻き込みながら、中東全域の緊迫度合いを高めている状況かと思う。現時点では双方とも戦闘継続態勢を崩しておらず、先行きの不確実性は極めて高い状況にあると認識している。
こうした下で、ホルムズ海峡が事実上の封鎖状態となったことで、原油価格が一時1バレル120ドル近くに達するなど大幅に上昇しており、実体経済への悪影響が懸念される状況にある。現時点で日本国内には十分な原油備蓄があるとされているものの、日本の原油輸入における中東依存度は95%程度と高く、各国の外交努力で事態の長期化が避けられることを望んでいる。
日本経済への影響としては、エネルギー価格の変動を通じた輸入物価や企業収益への影響が想定される。また、足元では、ホルムズ海峡の封鎖や中東周辺の物流停滞を背景に、一部の業種で原材料や部品の調達への支障、またそれに伴う生産計画の見直し・在庫調整を余儀なくされるといった、供給制約の影響が徐々に顕在化しつつあるとの声も聞こえてきている。
さらに、地政学リスクの高まりが企業の投資姿勢やサプライチェーン戦略にも影響を与える可能性のほか、株価など金融市場の変動を通じた影響もあると思う。
銀行界への影響は、各行の貸出債権額やポートフォリオの構成等によって異なり、一概には申しあげられないが、資材不足や物流停滞による生産制約、コストの高止まりによるお客さまの収益悪化や与信費用の増加につながる可能性がある。引き続き情勢を注視し、地域や産業ごとのリスクを適切に管理することが重要と考えている。
銀行界としては、まずは何よりもお客さまに寄り添い、丁寧かつ親身になって、資金繰りをはじめとしたさまざまな支援を進めて参る所存である。
(問)
1点目は、先ほど公表された金融仲介WGの報告書では、リスクテイクや非金融事業の拡大が盛り込まれている。会長としての、金融仲介の課題認識について伺いたい。また、将来的なあり方に一般事業持株会社化を盛り込んでいると思うが、その理由と必要性についてどのように考えるかに加えて、報告書を受けて、今後会員行にどのような取組みを促していくか教えてほしい。
2点目は、プライベートクレジットについて、日本の金融機関が海外の破綻企業の債権を保有していたり、米国では信用不安が広がり、個人マネーが流出する動きも出ていると思う。邦銀も相応にノンバンクに投融資していると思うが、この影響の広がりをどのように見ているか教えてほしい。
(答)
金融仲介WGの報告書について、まずWGでは、わが国において、企業の投資不足により生じた貯蓄超過と経済の低成長が定着してきたことを踏まえ、産業サイドや金融仲介プレイヤーへのヒアリングを通じて、成長投資を進めるうえでの課題を明らかにするところから検討をスタートした。
その結果、人材・専門性の不足、産業・事業の予見可能性の低さ、多岐にわたる利害関係者の連携の難しさといったファイナンス以前の問題と、資金調達手段の選択肢が限られるといったファイナンスの課題が浮き彫りになった。このため、WGで議論すべき課題を「成長投資の具体化」と「資金供給」の2つと整理し、この2軸で検討を進めてきた。
「成長投資の具体化」では、銀行の人材や情報、顧客基盤を活用し、非金融事業も通じて成長投資をアレンジすることや、企業との対話等を通じて成長投資を促し、事業の再編・再生・承継も支援することが必要である。
「資金供給」では、事業性評価や目利き力を高め、デット・メザニン・エクイティ等のリスクテイクに取り組み、リスク・リターンの適正化を通じた市場の活性化や官民のリスクシェアによって大規模な資金需要に応えていくことが必要であり、その役割を銀行界が果たすことで、成長投資を支えていくことが重要と議論してきた。
今述べた非金融サービスやデット・エクイティ等の資金供給を量・質両面で拡大し、産業界の成長投資の実現により一層貢献していくためには、まずは銀行がリスクカルチャー変革や人材育成等に取り組むことに加えて、現行の銀行または銀行持株会社の制度の枠組みの中で、適切な規制の見直しを行っていくことも必要と考えている。
もっとも、取組みを進めていった結果として、資金供給や非金融事業の展開が銀行持株会社グループを前提としたままでは量的・質的な限界を迎える可能性もある。このため、将来的には一般持株会社化、言い換えると預金を原資としないビジネスモデルの在り方も含めて幅広いオプションを検討する必要があるとの議論に至り、報告書にも盛り込んだ。
金融仲介WGは全銀協としても新たな取組みであったが、ご参加いただいた有識者、他の金融仲介プレイヤー、関係当局の方々に様々な観点から非常に活発なご議論をいただき、報告書として取りまとめることができた。
報告書とあわせて、銀行の今日的な存在意義や果たしていく役割を「我が国の産業成長を支える銀行の在り方」として公表している。全銀協としては、これらの成果物の会員行宛の周知や取組みの進捗状況の確認などを続けていくことを通じて、会員行による「成長投資の具体化」「資金供給」の役割発揮、そのためのリスクカルチャー変革や人材戦略の検討が着実に進むよう促して参りたい。
2点目のプライベートクレジットについて、米国の地銀における融資先のファンドによる不正行為や、自動車ローン会社・自動車部品メーカーの破綻事案、クレジットファンドの解約停止など、昨年来、米国を中心に信用リスクの高まりを意識させる動きがみられてきた。加えて、足元では英国の住宅ローン会社の破綻を受け、欧米の金融機関に影響が波及する可能性を指摘する声も出てきている。
ノンバンクが金融仲介において果たす役割が拡大する中、ファンド等が関与する事案が顕在化したことで、銀行規制の適用外にある分野のリスクやガバナンスの在り方、流動性のミスマッチといった構造的な論点が改めて意識されている状況であると思う。米国ではノンバンク向けの銀行与信が増加する中で、足元で米大手行がプライベートクレジット関連融資を引き締めるといった報道も出ていると承知しており、ノンバンク発の信用不安が金融システム全体へ波及するリスクを注視しておく必要がある。
国内に目を向けると、本邦金融機関による海外ファンド向けの投融資は増加傾向にあるが、現時点ではポートフォリオの分散管理や融資先の選定、融資手法の高度化等を通じ、リスクをコントロールできている状況と理解している。
もっとも、海外ノンバンク部門による日本市場への投資拡大等から、グローバルな金融市場の変動が日本の金融システムに波及しやすくなっている中、ストレス時の資産価格変動や信用コスト増加のリスクは高まっている状況であると思う。今後も国際的な動向を注視しつつ、慎重なリスク管理を継続し、金融システム全体の安定維持に努めて参りたい。
(問)
2点伺う。1点目は、すでに話が出た中東情勢に関して。中東情勢の緊迫化を受けて、原油などの供給制約に加えて、為替も1ドル160円に迫るまで円安が進むなど、金融市場が大きく動いている。こうした状況を受けて、政府と日本銀行にそれぞれどういう対応を求めるかを伺いたい。政府は備蓄放出やガソリンの補助金などをすでに打ち出しているが、さらにどのような対応が必要か。日本銀行については、今後、スタグフレーションの懸念も指摘されるなかで、利上げ路線を本当に維持できるのか難しい局面になってくると思う。会長のお考えを伺いたい。
2点目は、「中長期的な金融仲介の在り方検討WG」の報告書に一般持株会社化の検討が盛り込まれているが、これはWGの趣旨からして、成長投資の拡大、資金供給の拡大の文脈から出てきた話だと思う。この話は、どちらかといえば、異業種との競争環境、イコールフッティングの観点からこれまで議論されることがあったのではないかと理解している。今回の提言では、そうした観点をどのように考えられているのか伺いたい。
(答)
1点目は、先ほども触れたが、米国・イスラエルによるイラン空爆を契機に中東情勢は緊迫度合いを高めており、先行きの不確実性が高い状況にある。こうしたなか、原油価格が急騰しており、原油輸入の中東依存度が非常に高いわが国においては、物価や企業収益に影響が及ぶことが想定され、一部の企業からは、原材料、部品調達への支障、生産計画の見直し、在庫調整といった供給制約の影響が徐々に顕在化しつつあるとの声も聞こえている状況かと思う。
こうしたなかで、政府においては、ガソリン等の供給に支障が生じないよう、国際的な石油備蓄放出の正式決定に先んじて、今月16日から石油備蓄の放出を決定したほか、本日19日出荷分から緊急的にガソリンや軽油、重油、灯油、航空機燃料等の価格抑制策が導入されるなど、必要な対応を素早く打っていただいているものと認識している。
金融政策については、中東情勢の緊迫化を受けた海外経済の不確実性とともに、原油価格高騰が経済・物価に与える影響を慎重に見極められているものと認識している。繰り返しとなるが、先行きは不確実性が高い状況にあり、状況を注視しながら、今後も必要な政策対応を進めていただくことを期待している。
2点目であるが、今回の金融仲介WGの趣旨は、成長投資の具体化、資金供給の課題を中心として、それに対する取組みという大きな流れで検討を進めてきた。検討を進めるに際して規制の問題も出てくるが、今回の金融仲介WGにおいては、規制の中身をより具体的に掘り下げて検討するところまでは至っていない。今回はあくまで成長投資の具体化、資金供給の観点で、我々銀行界としてどのように変わっていかなければならないかに主眼がある。
そのなかで、まずは今の規制の枠組みの見直しを行ったうえで、それでも質・量の両面で不十分ということであれば、将来的には一般持株会社という観点も俎上に乗せていく必要があるのではないか、という流れで主張している。以前から、イコールフッティングの文脈でも一般持株会社の話は出てくるが、今回はそれとは異なり、あくまで金融仲介WGにおける、我々銀行界がどう変わっていくか、どういう取組みを行っていくかという議論の中で、規制の見直しの位置づけに触れたものである。
(問)
国内LBOファイナンスの課題に関する勉強会の報告書について、強調したい狙いやポイント、来年度に向けた課題について教えてほしい。
また、LBOの分野においては、プライベートデットファンド、プライベートクレジットファンドの活用という議論もあり、MUFGもLBOでプライベートデットファンドを活用していると思う。この意義についてどう思われるか、併せて教えてほしい。
(答)
LBOファイナンスについて、全銀協では2023年度から勉強会を設置し、議論を続けてきたが、今年度は市場の可視化を主なテーマに据え、試行的なデータの収集・集計に取り組んだ。その結果、市場規模や案件サイズの分布、案件ごとの特性の整理に活用し得る、基礎的な材料が得られた。本日公表した報告書では、そうした今年度の取組みであるデータ収集・集計を通じて明らかになった国内のLBOローン市場の輪郭を示し、国内外の市場構造の違いにも触れながら、「市場の可視化」と「市場の規律」に関して、今後必要となる検討の方向性を盛り込んだ。
「市場の可視化」の面では、今年度の成果を土台に、来年度においては、将来的な対外公表も視野に入れたうえで、半年ごとのデータ収集を継続しつつ、集計項目・定義の見直し、またデータの正確性の確保、独禁法や守秘義務にも配慮しながら、可能な範囲でプライシング情報についても整理を進めていく予定である。
「市場の規律」の面では、市場参加者の拡大を目的に、契約の標準化のほか、LBOローンの契約実務やモニタリングの枠組み等に関するリスク管理手引き策定の検討をすることを通じて、市場参加者が共通に参照する基本的な考え方も議論していきたいと思っている。これらの標準化やリスク管理手引きは規制や一律の基準を設ける形ではなく、各行の判断を支える共通の考え方を示す位置づけのものとして、議論を進めていきたいと現時点では考えている。
プライベートデットファンドについては、スポンサーの多様なニーズに応え得る追加的な資金調達チャネルとして、一定の意義を持つものと認識をしている。先ほど申しあげたとおり、金融システムの安定の観点で、信用リスクや流動性リスク等に留意が必要であるほか、銀行との間でも役割分担や情報共有のあり方、リスク特性の把握といった論点もあるものの、大型案件やスピード感が求められる案件への対応、柔軟なストラクチャリングといった点で、市場の裾野を広げる効果が期待されるものと考えている。
いずれにしても、事業承継や産業再編が増加するなかで、LBOファイナンスはこれらの資金ニーズを満たす重要な資金供給手段になると考えている。全銀協としては、今後も市場の可視化や規律等に関する取組みを進め、市場の発展と投資家の拡大につながる環境づくりを進めてまいりたい。
(問)
1点目は全銀ネットについて。「新しい決済システム」についての意義と狙いを教えてほしい。また、これを実現するに当たって最大のハードルは何だと考えるか、予算や地銀も含めた金融機関の負担額についてどのように考えているのか伺いたい。
2点目は、「中長期的な金融仲介の在り方検討WG」の報告書について。銀行にメザニンやエクイティの供給拡大を求める提言になっているが、これまで銀行はシニアデットでもリスクを取っていないと言われてきた。ミドルリスク・ミドルリターンの世界さえ築けていないにもかかわらず、より深いリスクのメザニンやエクイティのリスクを銀行が取れるのかという素朴な疑問がある。この点についてどのような考えか伺いたい。
(答)
1点目の全銀ネットに関するご質問だが、まず、現行の全銀システムは日本の資金決済システムの中核として稼動しており、引き続き重要なインフラであることは間違いないと考えている。一方で、稼動から50年以上経過していることもあり、今のニーズの多様化・高度化に応えきれていない等の課題も出てきていると認識している。
こうした中、「資金決済システムの将来像に関するスタディグループ」においては、現行システムの延長線上ではなく、持続可能かつ競争力のある新しい決済システムを構築した方が合理的な可能性があるのではないかとの結論を得て、新しい決済システムの基本構想を取りまとめ、報告書として公表させていただいた。
新しい決済システムでは、決済取引のリアルタイム化、低リスク化が期待できるとともに、将来的な国際送金への拡大や、追加機能の柔軟な実装を通じた利便性向上も展望可能と考えている。加えて、利用者によるデータ利活用やステーブルコイン、トークン化預金等の新技術との連携の基盤としての役割も担うことを想定している。
決済インフラとしての安定性を堅持する観点から、当面の間は現行の全銀システムと併存する前提で考えているが、将来的な現行システムとの役割分担については、なるべく新システムに集約していくことを視野に検討を進めたいと考えている。そのなかで新しい決済システムについては、最速で2030年の稼動を目指し、来年度中に検討を具体化して、構築の是非を判断することを目指している状況である。
構築実現にあたってのハードル、予算金額については、現時点で詳細なお答えをすることは難しい状況である。大きなハードルの一つとして言えるのは、ネットワーク効果の早期実現の観点から多くの金融機関が参加しやすい取組みとしつつ、トークン化預金やステーブルコイン等の広がりに代表される、決済を取りまく環境変化の速さにも対応していく必要があり、これらを両立し続けることだと考えている。
外部環境変化等には機動的に対応する必要があるが、今年度取りまとめた報告書は今後の検討に当たっての礎となるものであり、将来にわたって社会・経済に貢献できる決済システムの実現に向けて、モメンタムを失うことなく取組みを着実に進めて参りたい。
2点目の質問について、まさにご指摘いただいたような問題意識が今回のWGの背景にある。仰るように、シニアデットでもしっかりリスクテイクできているのか、という点も一つの課題認識である。加えて、今はシニアデットだけではなくてメザニンやエクイティまで必要になるため、銀行界としての考え方や動き方を変える必要がある。
実際にできるのか、というと、私はチャレンジでもあると考えている。そのため、シニアデットにおいても、リスクテイクをさらに深める必要があるとともに、メザニンやエクイティを銀行が供給する場合には、すべての領域でいきなりリスクテイクすることはあまり現実的ではなく、各銀行の得意とする領域や強みに応じて、できるところから取り組んでいくというのが現実的な進め方と考えている。
(問)
企業価値担保権について伺う。5月の制度開始まで残り2か月となっている。企業価値担保権を活用するうえでの課題認識と、残りの期間、どのようにその周知を進めていくのか伺いたい。
(答)
いよいよ本年5月25日に施行日が迫るなかで、今年度、全銀協では関連法令等へのパブリックコメントの提出のほか、制度の周知・広報活動として、関係省庁・業界団体とも連携のうえ、「企業価値担保権の活用に向けたポイント」と題する解説資料を作成し、会員行向けに展開している。
こうしたツールも活用しながら、会員行の多くは企業価値担保権を扱う専門部署やプロジェクトチームを設置し、与信、事務、法務をはじめとする各部門が連携して融資手続きや事務手続きの整備を進めるとともに、活用戦略の策定や行内の推進体制の検討に取り組んでいるものと承知している。
企業価値担保権には、担保評価や引当実務の方法、企業価値担保権信託会社の活用、実行手続など、既存の担保制度とは異なる特徴がいくつかある。こうした特徴をしっかりと手続きへ落とし込み、営業現場に周知していくとともに、事業への目利き力を高め、期中管理を高度化させることで、いかに質の高い伴走支援を実現することができるかがポイントであると考えている。
昨年の9月以降、都市銀行や地方銀行、信用金庫を参加者とする金融庁主催の勉強会に全銀協もオブザーバーの立場で参加してきたが、勉強会を通じてこうした課題に対する各行の取組みを相互に共有しながら、円滑な制度の実現に向け議論を深めてきた。
今般、勉強会で得られた示唆をもとに、「企業価値担保権の活用に向けたポイント」をアップデートし、「第二版」として改訂版を会員行向けに展開した。勉強会で議論されたテーマに関する詳細な解説や、会員行の検討状況の紹介等のコンテンツを追加し、勉強会に参加していない会員行にも参考になる内容としている。
また、今年の2月には、金融庁と連携して事業者向けの広報ツールを公表している。こうした媒体も活用しながら、銀行界・事業者の双方が制度の趣旨や特徴を正しく理解し、各社の事業戦略や資金調達ニーズに応じて、ほかの制度との比較のなかで適切な資金調達手法を選択することができるよう、全銀協としても引き続き取り組んで参りたい。
(問)
金融庁がコーポレートガバナンス・コードの改訂案を公表しており、企業に対して現預金を含む経営資源の配分が経営戦略に照らして適切かどうか不断に検証するよう求めている。企業も余計な現預金を持たない傾向が強まる、すなわち企業からの預金が減る一方で、設備投資や運転資金で貸出需要は高まると見られる。そのなかで、銀行としてはどのように調達と貸出をバランスしていくのか、考えをお聞きしたい。
(答)
昨年10月、金融庁において有識者会議が設置され、コード改訂に向けた検討が進められている状況と認識している。先月開催された第2回の会合でコードの改訂案が示され、取締役の役割、責務の一つとして、持続的成長と中長期的な企業価値の向上につなげるために適切なリスクテイクとなる経営資源の配分が実現されるよう、現預金を投資等に有効活用できているかを含め、不断に検証を行うべきであるとの文言が新たに追加された。
企業が手元の現預金や銀行融資を活用しながら、今後、コードで求められるような成長投資を進めるなかでは、個別の企業単位で見れば、法人預金の減少と成長投資に対する融資の増加が同時に進むことがあり得ると見ている。一方で、企業が現預金や融資で調達した資金によって、国内で設備投資を行った場合、その投資に係る設備等を受注した別の企業の現預金の増加につながるなど、銀行界のお客さま企業全体で見れば、法人預金と銀行融資双方の増加が想定されることから、信用創造機能が損なわれるようなことはないだろうと考えている。
今後もコーポレートガバナンス・コードの改訂に向けた議論が続いていくなかで、コードが実効性を持って企業に浸透し、さまざまな成長投資が実現していくことを期待しており、銀行界としても資金供給を含めてしっかり支援して参りたい。
(問)
非常に安定的な協会運営に感謝するとともに、最後でもあるので、一言伺いたい。輪番制でメガ3行の現役頭取が全銀協会長を務める制度は、銀行界にとっては、大きな銀行が金融庁に対して、あるいは永田町に対して銀行界の声を届けてもらうためだと理解してきたが、しばしば銀行界のなかには、全銀協は金融庁の下請け機関になっているのではないかという苦言を耳にすることが多くなってきている。本日公表のあった取りまとめも、多くは金融庁から依頼されているテーマであると理解している。こういう輪番制を続けているから順番にやらざるを得なくて、金融庁に対して強いことが言えないという立場に陥っていないか。そういう意味では、もちろん個別の努力も大変必要だと思うが、日証協がやっているように、銀行のOBを専任会長にして、もっと強い立場の機関として金融庁に対応できるような仕組みにした方がよいのではないか。
もう1点は、今回、様々な金融仲介機能の強化について取りまとめている一方、東京に次ぐ中京圏や近畿圏の地域金融はかなり細ってきているように思う。これは、例えば三菱UFJ銀行は旧三和銀行と旧東海銀行を含めて合併してできた銀行だが、合併で東京集中になることによって、近畿圏、中京圏が手薄になっていないか。実際、メインバンク機能、シェアなどでいえば、三菱UFJ銀行は近畿圏でも中京圏でも下がっている。これは三井住友銀行についてもいえることだと思うが、統合によって、東京圏以外の地域での金融機能が細っていないか。メガバンクの運営の仕方が間違っているからと思わざるを得ない。金融仲介機能の問題を議論する前に、メガバンクそれぞれが地域金融のためにできることが多くあるのではないか。その点はいかがお考えか。
(答)
まず1点目は、全銀協の運営に関するご質問だと思う。ご指摘のとおり、これまで全銀協では現役の頭取、持株の社長が1年交代で会長を務めてきている。まずは現役の経営トップが会長を務めること、これは銀行経営の最前線にある視点を業界運営に直結させられる、この点に私は意義があると思っている。金融・経済情勢等の外部環境、また、銀行経営上の重要なテーマが急速に変化をしているなか、実務感覚を踏まえた機動的な業界活動や政策当局や社会に対して説得力のある対外発信ができると思っている。加えて、1社のトップが長く会長を務めないため、業界活動に多角的な視点を入れられること、また、公平性の担保の観点でも、意味があるのではないかと考えている。
一方で、任期が1年と短いことから、業界として中長期的に対応すべき課題に、腰を据えて取り組み、主張していく、ここに弱さが出る可能性がある。こうした問題意識もあり、金融仲介や資金決済といった骨太なテーマに今年度は積極的に取り組んできた。その際、次期会長行となるみずほ銀行や全銀協の事務局とシームレスに連携をして、来年度以降も継続性を保つことができるように議論を進めてきた。ご指摘のような課題は出てくるかもしれないが、それをどのように補っていくかを常日ごろ考えながら、全銀協の運営をしっかり今後も行っていきたい。
2点目だが、三菱UFJ銀行でいえば、正確な数字は持ち合わせていないが、例えば中京圏で貸出や預金のシェアは下がっているものと上がっているものがあり、どの指標を取るかにもよると思うが、統合した結果として地域金融が弱くなっているかというと、私どもとしては逆にそうならないように努力をしている。中部地域・近畿地域には、シニアマネジメントをしっかり配置している。加えて、これはお客さまからもはっきり言われているが、統合したことによって、従来よりグローバルな提案を受けられるようになった、海外進出に際しての提案内容が深まった、グループベースでの信託・証券も含めた総合的な提案力が高まったという声もいただいている。こうしたかたちで、統合したことによって地域金融が弱くなるのではなく、よりサービスを高度化させる、そういう意思を持って取り組んでいる。それがもう少し目に見えるようなかたちで、しっかり説明できるように、我々も精進していかなければならないと思っている。引き続き、東京圏以外の地域でもしっかり頑張って参りたい。
(問)
この1年間の銀行業界を取り巻く環境を振り返っていただきたい。4月に就任したときは貸金庫問題や、米国の関税問題への対応があった。この1年で金利ある世界が定着しつつも、足元では中東情勢が緊迫化し、不透明な状況も続いている。半沢会長は、3年前の2022年にも全銀協の会長を務めているが、可能であればそのときとの比較も含めて、この1年間の銀行業界を取り巻く環境を伺いたい。
(答)
今振り返ってみると、今年度は、我々が歴史的な転換期にいることを実感させられる1年であったと受止めている。
国際情勢を俯瞰すると、米国の関税政策をはじめ、前例にとらわれない政策運営が、世界各国にさまざまなかたちで影響を与え続けた。これに加えて地政学リスクの高まりも相まって、1年を通じて不確実性が高い状況が続いたと思う。他方で、AI関連投資に象徴される世界の経済・社会構造の変化を促す経済活動が加速したほか、各国の政府・中銀が景気・物価の安定に向けて手を尽くしたことで、景気の極端な減速は避けられ、世界経済は底固さを保ったというのが私の印象である。
日本経済については、さまざまな逆風のなかでも堅実な企業収益、賃上げの継続によって、「賃金・物価の好循環」が徐々に回り始めてきたという印象がある。収益の改善や人手不足への対応、GXやDXなど成長分野への需要を背景に、設備投資も拡大を続けている。企業の資本効率の向上やガバナンス改革の進展といった構造的な変化もあり、日経平均株価が史上最高値を更新する場面も見られた。
もっとも、足元では中東情勢の悪化に伴い、エネルギー価格や国際物流を巡る不確実性が高まっており、世界経済全体にとってさまざまな下押し要因となる可能性も意識されている。こうした動きは、日本経済にとっても、企業活動や経済の先行きに影響を及ぼし得るほか、金融市場の変動を通じた影響も含め、引き続き注視が必要な局面にある。
政策面では、政府が強い経済の実現に向けた投資拡大を後押しする姿勢を示すなか、日本は金利が存在し、着実に成長する経済の実現に向け、歩みを進めた1年であったと総括したい。
金融面では、金融政策が正常化に向かうなかで、超低金利環境にも変化が生じ、短期金利は約30年ぶりの水準をつけた。これまで進めてきた業務の効率化、非金融業務を含めた収益基盤の多様化も相まって、邦銀の収益環境は改善傾向が続いている。
他方で、歴史的な金利環境の変化や構造的な人口動態の影響を背景に、国債の評価損益の管理や、安定した調達基盤の維持の難しさも増している状況だと思う。
銀行界としては、海外経済、地政学リスク、原油をはじめとする資源価格、さらには金融市場を巡る不確実性が引き続き意識されるなかにあっても、経営基盤とお客さまに提供するサービスの向上に取り組み続けることで、日本経済の持続的な成長の実現や、お客さまの課題の解決に引き続き貢献して参りたい。
(問)
対米投資について伺う。高市総理が訪米され、着々と案件が出てきているが、民間金融機関としても融資が必要とされているなかで、対米投資に対して銀行界としてどのように貢献していくお考えか伺いたい。
(答)
対米投資については、先般、日米両政府から公表のあった1号案件に続いて、引き続き複数のプロジェクトが検討されているとの報道があることは承知している。個別案件の具体的な内容について、全銀協の立場でコメントすることは差し控えるが、一般論として申しあげる。
2月の会見でもお話ししたとおり、ファイナンスの検討に際しては、民間銀行としてリスクがコントロールできること、適切なリターンが得られることを前提に、情報や目利き力を活用しながら、政府系金融機関との協調のもと、こうした案件を検討していくことになると思っている。
案件が具体化するなかで、関係省庁や政府系金融機関とよく連携し、日本の産業競争力や供給網の強化、イノベーションの促進、日米両国の関係強化に資する案件に対し、必要な対応を検討していくことが重要と考えている。
(問)
本日が最後の会見となる。改めて半沢会長から一言いただきたい。
(答)
この1年間、全銀協の会長を務めるにあたり、各方面の皆さまから多大なるご支援を頂戴した。改めて御礼を申しあげる。
日本経済が明るい未来への一歩を踏み出そうとしているなかで、銀行界が日本経済の成長やお客さまの課題解決に貢献していくことへの期待が、かつてないほど高まっていると感じている。同時に、その分大きな責任も感じた1年であったと、今振り返ると思う。
そのなかで早急に取り組むべき喫緊の課題に尽力してきたほか、先ほども何度か触れたが、金融仲介WGや資金決済システムの将来像に係る構想など、中長期的な経済・社会構造の変化を念頭に、すぐには実を結ばなくとも、将来必要となる骨太なテーマに腰を据えて取り組み、少しは前進させることができたのではないかと思っている。
来月からは、みずほ銀行の加藤頭取に全銀協会長のバトンを渡すことになる。皆さまご承知のとおり、加藤頭取は3年前にも全銀協会長を務めており、見事なリーダーシップを発揮され、その手腕、実績は申し分ない。
銀行界への大きな期待に応えていってくださるものと信じているし、私も銀行界の一員としてしっかり支えたいと思っている。ぜひ皆さまにおかれても、変わらぬご協力、ご支援をお願いしたい。
30年弱前に全銀協に関わらせていただいてから、全銀協の活動も5回目になるが、本当に皆さまに大変お世話になった。改めてお礼を申しあげ、最後の挨拶の言葉とさせていただく。本当にどうもありがとうございました。




