2026年6月18日

加藤会長記者会見(みずほ銀行頭取)

松本専務理事報告

 事務局から3点ご報告申しあげる。
 1点目は、お手元の資料のとおり、3月に報告書を取りまとめた当協会の「中長期的な金融仲介の在り方検討WG」は、実務レイヤーで議論を行う3つの検討会を設置して議論を行うこととした。
 2点目は、お手元の資料のとおり、本日の理事会において、住宅ローンをご利用のお客さまに対する金利変動リスク等に関する説明について申し合わせを実施した。
 3点目は、お手元の資料のとおり、本日の理事会において、電子交換所における交換廃止時期を決定した。
 

会長記者会見の模様

 冒頭、私からは、フロンティアAI脅威に関するサイバーセキュリティ対応について、皆さまにお伝えしたい。
 フロンティアAIの出現により、これが悪用された場合には想定を超えた高度なサイバー攻撃の増加が懸念され、脅威の次元が大きく変わってきていると認識している。銀行界としては、かかる脅威を経営の最重要課題と捉え、経営陣主導で態勢整備に取り組んでいる。また、フロンティアAIの対応では、銀行とITベンダーなどの関係事業者が、脅威の変化や必要な対応につき早い段階で共通理解を持つことが重要である。こうした認識を揃えることで、より迅速で実効性のある対策につなげることができる。銀行界としても、関係者との連携を一層深めていく。
 フロンティアAIは、脆弱性の早期検知、修正対応などに活用すれば防御側の対応力を高める効果も期待される。銀行界としては、AIがもたらすリスクを直視すると同時に、その有用性も適切に取り入れながら、関係当局やITベンダー等と緊密に連携し、お客さまに安心してご利用いただけるよう、サイバーセキュリティ対策に取り組んでいく。
 今後、銀行界として取り組むべき事項のうち、特に重要と考えている点を二つ申しあげる。
 まず1点目は、リスクの高い、クリティカルな脆弱性が発見された場合の対応である。日頃から金融機関のサービスを信頼いただき、生活やビジネスの基盤としてご利用いただいているお客さまにご不便をおかけしたくないという思いが、我々の基本である。しかしながら、お客さまの「利便性」と「大切な資産」、どちらを優先すべきか、答えは明白である。そのため、万が一重大な弱点が見つかった場合には、お客さまの資産を守るため、被害を未然に防ぐことを最優先に対応を検討する必要がある。影響の範囲や緊急性によっては、各金融機関の経営判断として、インターネットバンキングやATMなどの一部のサービスを能動的に停止し、修正作業や安全確認を行うことも今後想定される。このような能動的なサービスの停止が必要と判断される場合には、お客さまへの影響をできる限り小さくするため、各金融機関における事前のお知らせや適切な周知が必要であり、全銀協としても会員行に促していきたい。新たな脅威の進展に対応していくに当たり、皆さまのご理解とご協力をお願い申しあげる。
 2点目は、サードパーティーリスク管理についてである。金融サービスは金融機関だけで完結しているものではなく、システム開発や運用、クラウドサービス、決済関連サービスなど、多くの関係事業者に支えられている。安全確保のためには、こうした関係先にも速やかな情報共有、修正対応、安全確認などにご協力いただくことが不可欠である。全銀協は、フロンティアAIによる脅威変化を踏まえたサイバーセキュリティ管理態勢の確認・確保を関係事業者に依頼する際の参考例を会員行向けに発信した。今後も会員行と連携しながら、業界全体のサイバーセキュリティ対応の高度化に努めていく。


(問)
 2点伺う。まず1点目、日本銀行の金融政策運営について、一昨日の金融政策決定会合で追加利上げが決まり、政策金利が31年ぶりに1%となった。すでに預金金利や短期プライムレートの引上げをリリースしている銀行も少なくないが、業界への影響や効果をどう認識されているのか。また、マーケットではインフレ下で日本銀行の政策対応が後手に回るビハインド・ザ・カーブのリスクを指摘する声が強まっている。利上げペースの加速や利上げ幅の拡大を求める声もあるが、金融界の見方も踏まえて伺いたい。
 2点目が、先ほど配付された資料の「中長期的な金融仲介の在り方検討WG」について、ポイントや狙い、意気込みを教えていただきたい。
(答)
 まず日本銀行の金融政策だが、日本銀行の専管事項なので、個人的な見解ということでお答えする。金融政策決定会合で政策金利は1%に引き上げられた。政府の対策などによって景気下振れのリスクが低下する一方で、企業物価の上昇などから物価上振れの可能性が高まったことが背景である。また、長期国債買入れの減額計画についても、中間評価を行い、2027年4月以降の減額停止を決定したところである。
 31年ぶりの高水準だが、それでも金融環境は依然として緩和的な状態であると考えている。日本銀行は今後も「経済・物価・金融情勢に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」という方針のもと、景気に対して緩和的でも引き締め的でもない、中立金利の水準に向かって政策金利の引上げを検討していくと見られる。
 日本銀行は、中立金利の水準について1.1%から2.5%と幅を持って示しており、いわゆるターミナルレートについては、利上げを徐々に進めながら、経済や物価の反応を確認して探っていくのではないかと思う。
 米国とイランの和平交渉が合意されたという報道があったが、まだ不透明感は残る状態であり、日本銀行においては、経済への影響を丁寧に見極めながら、適切な金融政策の運営をしていくことを期待している。
 また、日本銀行は、今回利上げをし、今後についても、ビハインド・ザ・カーブにならないように適切に対応していくとコメントしており、今後もそのようになることを期待している。
 2点目の金融仲介WGのあり方と意気込みについてだが、昨年度の金融仲介WGにおいては、有識者の先生方や役員クラスのメンバーによるハイレイヤーでの議論を行ってきた。これに対し、今年度設置する三つの検討会は、実務メンバーが中心となって、昨年度WGで議論した内容の実装に向けた具体的な処方箋を検討する方針である。各検討会で議論した内容については、報告書にまとめて、金融仲介WG本体へ報告することを予定している。
 検討会は三つ立ち上げるが、まず一つ目の検討会は、直接金融と間接金融の連携の必要性を念頭に置きつつ、資本市場中心の米国金融市場の構造分析などを行っている。今後はさらに、プロジェクトファイナンスやローンセカンダリー市場、プライベートデット、社債、CDOなど具体的なテーマを取り上げ、市場・投資家の目線からリスク・リターンを最適化する長期デットファイナンスのあり方を検討して参りたい。
 二つ目の検討会は、昨年度WGで深く議論できなかったデジタルをテーマに取り上げる。特に、金融仲介機能の強化と結びつく資産のトークン化について、対象になり得るアセットクラスや制度整備の必要性などを検討して参りたい。
 三つ目の検討会については、詳細は未定だが、投資専門子会社やLP出資といった銀行による資本性資金の供給、および銀行業高度化等会社も含めた非金融業への参入の現状を改めて分析・整理し、将来的な一般持株会社化の可能性も念頭に置きながら、銀行の果たす役割や法制度のあり方を検討して参りたい。
 各検討会によって参加者は異なってくるが、昨年度のWG同様、関係当局も含む銀行界以外の幅広いプレイヤーにもご参加いただき、多様な視点から検討を進めて参りたい。


(問)
 企業価値担保権が施行されたが、足元の滑り出しを銀行業界としてどのように評価されているか。また、無形資産評価をはじめ、いろいろ課題はあると思うが、今後の展望を伺いたい。
(答)
 5月25日に施行された企業価値担保権は、有形資産に乏しいスタートアップや経営者保証により、思い切った事業展開を躊躇するお客さまへ、事業の将来性にもとづく融資という新たな選択肢を提供するものだと認識している。
 個別行の事例だが、みずほ銀行では、新しい経営体制のもと、事業の再成長に向けた取組みを進める東海地方の飲食業のお客さまに対して、メイン行として伴走支援すべく、同担保権を活用した融資を実行した。
 会員行においても、行内の態勢整備を行うとともに、活用が見込まれるお客さまと対話を重ねるなど準備を着実に進め、同担保権を活用した融資事例が複数出てきている。例えば、地方の社会課題解決を目指す企業やスタートアップ企業に対する成長資金の融資や、事業再生型のM&Aに活用されている旨、報道等で認識している。
 他方で、円滑な活用促進に向けて、制度内容や効果など、活用に関する一層の周知と理解醸成が必要である。何か数を競うということではなく、新たな融資制度として根付かせていくことが重要であり、全銀協は会員行の活用状況をフォローするとともに、セミナー開催などを通じて、積極的な広報、周知活動に努めていく。
 企業価値の判断力をどのように高めていくのかという点は、お客さまの事業計画やキャッシュフロー見通しの蓋然性を適切に検証することが重要である。
 具体的には、将来のB/S、P/Lを認識することであり、財務内容などの定量情報、市場動向や経営体制などの定性状況に加えて、商流データなども加味することも必要である。
 また、ビジネスマッチングを通じた営業支援や、人材紹介・コンサルティングを通じた経営改善サポートなどにより、お客さまの事業理解をより深め、成長性や将来性の判断の一助としているケースもある。
 しっかりとお客さまに向き合い、お客さまと事業内容や状況を共有しながら、資金調達のタイミングや、事業計画の見直しの必要性など、様々なかたちで、メインバンクとして伴走しながら、密なコミュニケーションをとれる間柄になっていくことが求められている。
 スタートしたばかりの制度であり、各金融機関が試行錯誤しながら、事業の将来性に対する目利き力を一層高めていくことが重要である。


(問)
 フロンティアAIについて伺う。ミュトスについて、アメリカ政府による提供の停止命令があったかと思う。これによって金融庁をはじめメガバンク等で進めている対策への影響についてはどう考えているか。また、そういった民間で取り組んでいるようなセキュリティ対策に対して、政府の介入があることについてどう受け止めているか伺いたい。
(答)
 まず1点目、ミュトスのアクセス権の提供停止という報道があったことは承知している。個別の話であり、セキュリティの観点から、アクセス権の有無はお答えしかねるが、一般論として、フロンティアAIのメリット等をお答えする。
 フロンティアAIは、適切に利用すれば、業務効率化、顧客対応の高度化、リスク管理、サイバーセキュリティ対策など、様々な活用可能性がある。
 サイバーセキュリティについて申しあげると、仮にアクセス権を入手できれば、脆弱性や攻撃経路を先回りで発見して初動対応を速やかに実施できるなど、金融機関として必要なリスク管理や検証を行いやすくなるという意味で、一定の意義はある。
 他方で、アクセス権を得られない場合に、直ちに金融機関の安全性や対応力に問題が生じることはないと考えている。セキュリティパッチはソフトウェア企業からいずれは提供される。自社で開発したシステムの脆弱性については、従来から自社で検知し、修正対応を行っている。
 フロンティアAI活用による事前準備ができない場合においても、各金融機関においてはシステムベンダー等と連携し、パッチ適用等、可能な限り迅速に行う。ベンダーや関係者と連携しながら、優先して対応すべきシステムを特定し、経営主導で迅速に取り組んでいくことが重要である。
 2点目について、フロンティアAIは新しいテクノロジーであり、有用性がある一方で、悪用されると脅威となる。脅威となる部分については、政府部門が一定の関与をする必要性もあり得るのではないかと考えている。


(問)
 まず1点目、手形・小切手の電子化について。本日、電子交換所の廃止時期を決定したという内容を発表いただいた。現状、手形・小切手の電子化への移行がどれほど進んでいるか、また移行のネックはどのような点だと認識されているか伺いたい。
(答)
 足元、手形・小切手の電子化は全体として着実に進んでいると受け止めている。具体的な数字を申しあげると、2025年の手形・小切手の流通枚数は約1,400万枚であった。これに対し、2020年度は約4,000万枚であり、この5年間で約65%の削減となっている。さらに直近では、2026年5月の月間の交換枚数が約37万枚で、前年同月対比で約64%の減少である。これは、振込やでんさいなどへの切替えが順調に進んでいる結果であり、電子化は着実に進んでいると認識している。
 一方で、一部の取引先において業務プロセスの変更への懸念や、地域や業種によって準備状況にばらつきがあることも確認している。
 手形・小切手の電子化は、お客さま・金融機関双方にとって業務効率化や生産性向上につながる重要な取組みである。全銀協としても、産業界や関係省庁とも連携しながら、電子化に向けた取組みを加速して参りたい。
 具体的な取組みとしては、全銀協とでんさいネットが一体となり、新聞広告やテレビCM等を通じた周知・広報活動を現在展開している。また、移行支援のセミナー・説明会の開催、個別相談窓口の設置なども通じて、利用者の方々の円滑な移行に向けた支援も継続していく考えである。
 加えて、足元の金融機関向け調査では、最終振出期限の設定を「実施済み」、または「実施予定」と回答した金融機関が、交換枚数ベースで84%となっている。多くの金融機関が2026年9月をもって手形・小切手の振出停止を予定しており、こうした動きも、移行を後押しする大きな流れになっていると認識している。
 さらに、本日の理事会において、これまで2027年度初としていた手形・小切手の交換廃止時期を明確化し、2027年3月31日とすることを決定した。あわせて、2029年6月末をもって電子交換所における交換を廃止し、システムの保守延長を行わない旨も決議している。
 これらはいずれも全銀協のウェブサイトで公開しているが、改めて申しあげると、2027年3月31日が手形・小切手の交換の取扱終了日であり、2029年6月末が電子交換所そのものの廃止となる。お客さまに混乱を生じさせないよう、前倒しで周知徹底にしっかり取り組んで参りたい。
(問)
 2点目、金融犯罪対策の口座情報共有システムの構築を進めておられるという認識だが、開発の進捗と、稼動後にどのようなシステムの効果が得られると考えているか伺いたい。
(答)
 全銀協は、2025年3月に「不正利用口座の情報共有に向けた検討会」が取りまとめた報告書を受け、特殊詐欺等の被害防止や抑制に向けて、「不正利用口座情報共有システム」の構築の検討を開始した。業務の親和性や、人材、知見の活用等の観点から、マネー・ローンダリング対策共同機構を運営主体とし、現在準備を進めている。すでに開発ベンダーを決定し、2026年4月からシステム開発に着手している。
 また一方で、個人情報保護や利用推進の観点から、犯収法施行規則や監督指針の改正等も行われている。同じく2026年4月には会員行向けに説明会を開催し、各行においても準備を進めている。今後、順次開発を進め、2027年4月に稼動開始を予定している。
 続いて、期待される効果について説明する。主な利用目的は、まずは加害者を見つけることである。情報共有により、従来はなかなか検知できなかった犯罪者や共犯者と疑われる口座を検知し、悪用が確認されれば速やかに凍結する。情報共有を通じて、従来よりも迅速に口座を凍結することが期待される。
 加えて、加害者口座に振込を行った被害者口座を検知することが可能となり、被害者の財産の保護留保や、詐欺被害の拡大を防ぐ狙いもある。多くの金融機関が参加することで抑制効果がより高まっていくことから、あらゆる金融機関が参加しやすい枠組みの構築を目指していく。


(問)
 全銀システムと新決済システムの関係で2点伺う。
 まず全銀システムだが、2028年に更改予定で、現在第8次のシステムを開発中と聞いている。フロンティアAIの脅威などを踏まえると、サイバーセキュリティ対策の手当てが必要と考えるが、この具体策はどうか。また、開発スケジュールやコストへの影響も教えてほしい。
 また、新決済システムは2030年の稼動を目指して現在議論が行われている最中だと思う。こちらもフロンティアAIの出現によって対応が必要かと思うが、検討状況に変化はあるのか。
(答)
 まず、全銀ネットは、サイバーセキュリティ対策を最優先の経営課題と位置づけ、関係機関、ベンダーとも緊密に連携しながら、継続的に態勢整備を進めている。
 フロンティアAIの進展によって、サイバー攻撃の自動化・高度化や、標準型攻撃の巧妙化が想定を超えて進むとの認識のもと、第8次全銀システムにおいても、安全性・信頼性の確保を最優先に、対策をさらに強化しているところである。
 例えば、継続的な診断やペネトレーションテスト等を通じた脆弱性管理の高度化、侵入を前提としたインシデント対応手順・復旧手順の整備、定期的な訓練を通じたBCPの実効性向上によるレジリエンス強化など、対策を進めている。
 なお、追加対策については、影響とリスクを確認したうえで、優先順位をつけて対応する。
 現時点においては、第8次全銀システムの2028年5月リリースに向けたスケジュールに変更はない。追加対策によってコストが増加する可能性はあるが、必要な対策をしっかりと実施していく。
 今後も変わりゆく情勢を踏まえながら、必要な対策を確実に実施し、安全性・安定性の確保に万全を期していく。
 続いて、2030年の稼動開始を目指す新決済システムは、3月の「資金決済システムの将来像に関するスタディグループ」報告書でお示ししたとおり、2026年度中に構築するかどうかを判断することを目指し検討を進めている。
 現在はシステムベンダー各社への情報提供依頼、いわゆるRFIを通じて、要件や開発手法、コスト、運用のあり方等の情報収集を行っている。
 フロンティアAIの登場を受けて検討状況に変化があるかについては、先ほどの第8次全銀システムと同じように、サイバーセキュリティを最重要の検討テーマの一つと位置付けており、変わりはない。むしろ、AIの進展により攻撃手法が高度化し得るという前提を、より現実的な条件として織り込む必要があるという意味では、やるべきことが一層明確になってきていると受け止めている。
 例えば、ゼロトラストの考え方、強固な認証、権限管理、侵入を前提にした検知、封じ込め、復旧といった、レジリエンスまで含めて、どの水準を標準として織り込むべきかを、より具体的に詰める必要性が高まっている。
 また、先ほど申しあげたRFIでも、サイバーセキュリティについて情報提供を依頼している。今後のプロセスを通じて、決済インフラとして求められる安全性とレジリエンスをどう具体化するか、丁寧に詰めていきたい。


(問)
 銀証ファイアーウォール規制について伺う。与党側の政策提言で、この見直しに向けた文言が一定程度盛り込まれている。これまでも段階的に規制が緩和されてきているが、まだ中堅・中小の分野など、これから議論が進むところもあると思う。夏に向け、永田町で政策議論が本格化する時期だが、今年以降、銀行界としてどういう議論を望んでいて、留意点はどういうところにあるのか。会長の見解を伺いたい。
(答)
 5月14日に自由民主党の資産運用立国議員連盟が政府に申し入れを行った「2026年度中に銀証ファイアーウォール規制等の見直しに関する研究・検討を開始すべき」という提言のことと認識している。もともと我々としては、わが国の金融資本市場の活性化と「貯蓄から投資へ」のさらなるシフト、その先にある国内リスクマネーの好循環の実現には、業態を超えた多様な金融仲介プレイヤーの連携が不可欠だと考えてきた。
 ファイアーウォール規制のあり方については、これまでも金融審議会「市場制度WG」で議論いただいている。銀行等が産業成長を支える役割を従来以上に果たしていくためのビジネスモデルの発展を期待されているからこそ、金融審議会のWGでファイアーウォール規制のあり方について議論いただいていると我々は理解している。
 銀行界としても、直接金融と間接金融のさらなる一体化がそうしたビジネスモデルの発展に必要であるという認識のもと、ファイアーウォール規制の見直しを引き続き議論することが望ましいと考えている。しかし、当然ながら、銀行における顧客情報管理や利益相反管理、優越的地位の濫用防止が適切に図られていることが、その前提である。
 今年度期待することは、自民党から提言された内容について、しっかりと議論がなされることである。銀行界としては、引き続き、規制の見直しを求めていきたいと考えている。


(問)
 2点伺う。1点目は、フロンティアAIについて冒頭にご説明があった点について。リスクの高さに応じて銀行のサービスやシステムの能動的な停止も想定されるとのことだが、利便性との兼ね合いで、利用者や顧客にどのように理解を求めていくのか。場合によっては急遽システムを止めざるを得ないことを想定すると、なかなか事前のお知らせや適切な周知は難しい局面もあるかと思うが、どうやって理解を深めていくのか。
 2点目は、配付資料の「住宅ローン利用者に対する金利変動リスク等に関する説明について」を、今このタイミングで出された狙いや金利変動リスクに対する問題意識を詳しく教えていただきたい。
(答)
 1点目についてお答えする。お客さまの資産と金融システム全体の信頼を守ることの両方が金融機関の使命だと考えている。冒頭申しあげたように、日頃から、我々金融機関のサービスを信頼してもらい、生活やビジネスの基盤としてご利用いただいているお客さまにご不便をかけたくないという基本的な考えは全く変わらない。
 ただ、判断を躊躇することによって、個別のサイバー攻撃による被害が国内の金融ネットワークに連鎖的に広がって、最終的に日本の金融システム全体に波及するような事態は、絶対に避けなくてはいけないものだと考えている。
 「利便性」と「大切な資産」を守ることのどちらが優先かということについて、我々としては、やはり後者の「大切な資産」を守ることを優先するという経営判断を行う場合がある、という点をご理解いただきたい。
 能動的に急遽サービスを停止することも可能性としてはゼロではないが、できるだけ周知をすることが前提である。全銀協としては、各金融機関での事前のお知らせが必要だということを会員行に促していく。
 仮に大きな脆弱性があり、テストが不十分だった結果として当初予期しないようなシステムの不具合が生じることもあり得るが、このような場合においても、各会員行がリスクの大きさや影響範囲を踏まえ、お客さまへの影響を最小限に抑え、かつ速やかに復旧に努めるということを、お客さまにしっかりお伝えすることが重要である。
 2点目の「住宅ローン利用者に対する金利変動リスク等に関する説明について」は、2004年12月の申し合わせを、昨今の情勢変化を踏まえて見直したものである。長期にわたり低位で推移してきた変動金利が、足元の利上げとともに上昇基調にあることを踏まえ、このタイミングでの見直しに至った。
 今回の見直しでは、これから変動金利型の住宅ローンを検討されるお客さまのみならず、すでに利用されているお客さまも対象に、金利上昇が返済額等に与える影響について、より分かりやすく丁寧な説明、適切な情報提供を各行に求める内容に改めている。
 また、昨今のデジタル化の進展に伴い、非対面での取引も増加している。そういった場面においても、しっかりと必要な情報提供と適切な態勢整備を行うよう、各行に求めている。
 足元、住宅ローン利用者の約8割が変動金利型の住宅ローンを利用している。また、近年の住宅価格の上昇等により、ペアローンや35年を超える超長期のローン利用者も増えていると認識している。住宅ローンの変動金利の上昇は、将来の家計の負担になりうることから、金利リスクの普及啓発の必要性が増している。今回の申し合わせにより、各金融機関での説明内容、態勢の点検、見直しが進むことを期待している。
 また、住宅ローンを利用されるお客さまにおいても、金利変動リスクの理解が深まり、ご自身のライフスタイルや家計状況に合った住宅ローンの選択、家計管理につながることも期待している。


(問)
 日本銀行の利上げについて改めてお聞きする。利上げが進んで銀行間の金利競争が激化していると思うが、こうした動きに対する評価と今後の見通しについてお考えをお聞きしたい。
(答)
 預金金利の上昇ということで、各金融機関で利上げに対応する動きがある。銀行ビジネスにおける預金の重要性は一層高まっている。各行において、預金金利の引上げに加えて、キャンペーンあるいはサービス拡充、利便性向上、こういった施策により、いかに預金獲得に向けた取組みを進めるかという、差別化戦略を図っていると認識している。
 また、資産運用立国という政府の方針において、個人全体の金融資産における預金のシェアが半分を切っており、貯蓄から投資への流れが加速しているということも預金獲得競争の一因である。
 加えて、地方においては、人口減少などを背景により厳しい環境になるということで、預金の重要性が一層増している。
 そういうなかで、銀行において、資金供給が逼迫するのではないかという懸念も耳にするが、足元、銀行からの資金供給が逼迫しているという状況ではないということははっきりと申しあげたい。ただし、今後の資金需要の拡大にしっかりお応えするためには、預金だけに過度に集中しない資金調達戦略が求められるのではないかと考えている。
 また、先ほど冒頭に申しあげた金融仲介WGでの議論、例えば、社債やローンセカンダリー市場の活性化や、商慣行の見直しの議論を進めていくことも大事だと認識している。

別添資料:加藤会長記者会見(みずほ銀行頭取)