平成28年7月14日

平成29年度税制改正に関する要望

1.国民の中長期的な資産形成と成長資金の供給促進のために
(1)NISAおよびジュニアNISAの恒久化等
(2)確定拠出年金税制の拡充等
(3)金融所得課税の一体化の推進等
2.日本経済再生の進展と課税の適正化のために
(1)熊本地震による被害からの早期復旧・復興に向けた税制措置の実現
(2)インフラ資産への民間資金導入促進に資する税制の見直し
(3)不動産投資市場のさらなる活性化・拡大に資する税制の見直し
(4)住宅取得の促進に資する税制措置の拡充等
(5)印紙税の軽減・簡素化
3.適切な経営環境を確保するために
(1)貸倒れに係る税務上の償却・引当基準の見直しおよび欠損金の繰越控除・繰戻還付制度の拡充
(2)国際的な金融取引の円滑化等
(3)個人番号および法人番号の告知・記載書類に関する見直し等
(4)受取配当等の益金不算入制度の見直し

 

1.国民の中長期的な資産形成と成長資金の供給促進のために

 わが国では、少子高齢化が急速に進展しており、今後、本格的な人口減少社会への移行が見込まれている。現役世代の減少と高齢世代の増加に伴い、将来的に、老後の所得確保における公的年金の役割が縮小せざるを得ない可能性も想定されるなか、国民がゆとりある老後生活を送るためには、自助努力による中長期的な資産形成を促していくことが重要である。そのため、少額投資非課税制度(NISA)および未成年者少額投資非課税制度(ジュニアNISA)の恒久化や確定拠出年金税制の拡充等の措置が求められる。
 一方、こうした取組みは、「貯蓄から投資へ」の流れを一層確実にするものである。1,700兆円を超える家計部門の金融資産に適切な投資機会を提供するとともに、成長企業への資金供給を拡大することで、わが国経済の成長を確固たるものにすることが期待される。

 

(1)NISAおよびジュニアNISAの恒久化等

  • 少額投資非課税制度(NISA)および未成年者少額投資非課税制度(ジュニアNISA)について、非課税期間の恒久化および制度の恒久化(投資可能期間の恒久化)を行うこと。少なくとも非課税期間および投資可能期間を延長すること。
  • NISAおよびジュニアNISAについて、お客さまや金融機関の利便性向上および負担軽減の観点から、所要の措置を講じること。

 平成26年1月から開始した少額投資非課税制度(NISA)は、「貯蓄から投資へ」の流れの促進に向けて順調な滑り出しを見せており、平成27年12月末時点の口座数は約1,000万口座、買付額は約6兆4,000億円に上っている。また、平成27年度税制改正において、年間投資上限額が120万円に引き上げられたほか、若年層への投資のすそ野の拡大等を図るため、未成年者少額投資非課税制度(ジュニアNISA)が創設され、0歳から19歳の未成年者の口座開設が可能となった。
 このようななか、今後、これらを一層普及・定着させ、幅広い家計に国内外の資産への長期・分散投資の機会を提供し、国民の自助努力による資産形成を支援する観点から、非課税期間(最長5年間)の恒久化および平成35年までの10年間とされている制度の恒久化(投資可能期間の恒久化)を行うこと、少なくとも非課税期間および投資可能期間を延長することを要望する。
 また、NISAおよびジュニアNISAについて、お客さまや金融機関の利便性向上および負担軽減の観点から、非課税期間終了後の移管先を、原則、特定口座とすることや、ジュニアNISAにおいて特定口座の重複を解消する場合には、課税未成年口座を集約先とすること等の措置を講じることを要望する。

 

(2)確定拠出年金税制の拡充等

  • 退職年金等積立金に対する特別法人税を撤廃すること。少なくとも課税の停止を延長すること。
  • 確定拠出年金に係る拠出限度額の撤廃、少なくとも引上げを行うこと。
  • マッチング拠出制度における従業員拠出額の要件を見直すこと。
  • 確定拠出年金の脱退一時金の支給要件を緩和すること。
  • 老齢給付金の支給要件および個人型確定拠出年金における加入者資格喪失要件を緩和すること。
  • 第3号被保険者による個人型確定拠出年金掛金への税制優遇措置を設けること。

 少子高齢化が進展するなか、自助努力による老後生活の維持向上を図る観点から、公的年金を補完するものとして、確定拠出年金の果たす役割の重要性が高まっている。欧米における同種の年金と同様、拠出時・運用時非課税、給付時課税を基本とする十分な税制上の措置を講じ、国際的に見劣りしない制度とする観点から、平成29年3月まで課税が停止されている退職年金等積立金に対する特別法人税を撤廃すること、少なくとも課税の停止を延長することを要望する。
 また、確定拠出年金については、平成21年度と平成26年度の税制改正で拠出限度額の引上げが行われているが、老後に必要とされる生活資金の水準や公的年金の給付縮減可能性等を勘案すれば、税制面の整備を一層推進する必要があり、拠出限度額の撤廃、少なくともさらなる引上げを要望する。特に、第190回国会で成立した「確定拠出年金法等の一部を改正する法律」により、平成29年1月から、企業型確定拠出年金を導入している企業の従業員についても個人型確定拠出年金への加入が可能となったことを踏まえ、個人型確定拠出年金の加入者となることができることを規約に定めた企業型確定拠出年金の拠出限度額について、従来と比して制限されないことを要望する。
 さらに、企業型確定拠出年金のマッチング拠出の限度額要件のうち、従業員拠出額を事業主拠出額の範囲内とする要件を緩和すること、追徴課税等のペナルティを課した脱退一時金の支給制度を創設するなど、脱退一時金の支給要件のさらなる緩和を行うこと、10年以上の通算加入者等期間が必要となる老齢給付金の支給要件を緩和すること、および60歳となっている個人型確定拠出年金の加入者資格喪失年齢を、規約に定めることで65歳まで引上げ可能な企業型確定拠出年金に合わせ65歳に引き上げることを要望する。
 加えて、第3号被保険者について、配偶者の課税所得から控除する等、個人型確定拠出年金掛金への税制優遇措置を設けることを要望する。

 

(3)金融所得課税の一体化の推進等

  • 金融所得課税の一体化をより一層推進すること。具体的には、金融資産に対する課税の簡素化・中立化の観点から、課税方式の均衡化を図るとともに、預金等を含め損益通算を幅広く認めること。
  • 納税の仕組み等については、一体化の実施時期に応じて、納税者の利便性に配慮しつつ、金融機関が納税実務面でも対応可能な実効性の高い制度とすること。

 わが国においては、個人金融資産の有効な活用が経済活性化のための鍵となっており、それに資する金融・資本市場の構築が喫緊の課題である。そのためには、個人投資家が自らのリスク選好に応じて自由に金融商品を選択できるようにする必要があり、金融資産に対する課税は、簡素で分かりやすく、金融商品の選択に当たって中立的であることが求められる。
 政府税制調査会は、平成16年に金融商品に対する課税方式の均衡化と損益通算範囲の拡大の方向性を打ち出し、この流れに沿って、平成20年度税制改正において、上場株式等の譲渡損失と配当等の損益通算が平成21年以降可能とされた。さらに平成25年度税制改正により、平成28年1月以降、公社債等に対する課税方式が上場株式等と同様、申告分離課税に変更されたうえで、損益通算できる範囲が公社債等にまで拡大され、金融所得課税の一体化に向けた制度整備が進展している。
 このようななか、金融資産に対する課税の簡素化・中立化の観点から、金融商品間の課税方式の均衡化を図るとともに、預金等を含め損益通算を幅広く認めることで、一体化のさらなる推進を要望する。
 その際、金融所得課税の一体化に係る具体的な納税の仕組みについては、これまでの実施状況を踏まえ、納税者の利便性に配慮しつつ、金融機関のシステム開発等に必要な準備期間を設ける等、金融機関が納税実務面でも対応可能な実効性の高い制度とすることを要望する。

 

2.日本経済再生の進展と課税の適正化のために

 わが国経済は、政府・日本銀行による大胆な財政・金融政策に加えて、成長戦略の遂行もあり、企業収益が過去最高水準となったほか、雇用・所得環境も大きく改善した。一方で、平成28年4月に発生した熊本地震は、甚大な人的・物的被害をもたらした。また、新興国経済が減速しているほか、平成28年6月23日に実施された英国のEU離脱を巡る国民投票の結果を受け、金融市場ではリスク・オフの動きが強まり、2年7か月振りの円高水準となるなど、わが国経済の先行きは、不透明感が高まっている。
 こうしたなか、熊本地震の被災地の早期復旧・復興に向けて、必要な税制上の措置を講じることが重要である。
 また、わが国経済の持続的かつ力強い成長を実現するためには、民間企業の活力を引き出し、日本経済の生産性を向上させることが不可欠であり、インフラや不動産に対する投資に係る税制措置の拡充や、住宅投資拡大策としての住宅取得促進に資する税制措置の拡充等は、民間部門の投資・消費需要を喚起していくために有用である。
 さらに、金融取引を含む各種の経済取引には、担税力に着目して印紙税等の流通税が課せられるケースが多いものの、こうした税負担は円滑な経済取引に悪影響を与え、経済の活性化を阻害している側面がある。そこで、流通税の軽減・簡素化により、課税の適正化を図ることが必要である。

 

(1)熊本地震による被害からの早期復旧・復興に向けた税制措置の実現

  • 熊本地震による被害からの早期復旧・復興のために、
    1. 東日本大震災を受けて手当てされた税制上の措置(印紙税の非課税措置、不動産取得税・登録免許税の免除特例等)と同様の措置を講じること。
    2. 上記措置を講じるに当たっては、被災者のニーズを踏まえ対象の見直しを行うとともに、被災者や被災地域の金融機関の負担に配慮し、手続きの簡素化や対象の明確化を行うこと。

 平成28年4月に発生した熊本地震は、九州地方では観測史上初となる震度7を記録し、甚大な人的・物的被害をもたらした。わが国で震度7を記録したのは、平成23年3月11日に発生した東日本大震災以来となる。
 具体的な被害としては、例えば、住宅について、全壊は約7,000棟、半壊は約20,000棟に上り、一部破損も含めると10万棟以上に被害が発生したほか、公共の建物等についても1,000棟を超える被害が発生している。
 東日本大震災においては、被災者の負担軽減のための税制面での優遇措置として、一定の要件を満たす借入に係る印紙税の非課税措置、被災した不動産の建替え等に係る不動産取得税や登録免許税の免除特例等が措置された。
 熊本地震についても、被害からの早期復旧・復興のためには、新たな資金需要発生に伴う借入等に対する税制上の優遇措置や不動産関連税制の特例措置等が不可欠であることから、東日本大震災を受けて手当てされた税制上の措置と同様の措置を講じることを要望する。
 また、東日本大震災で手当てされた印紙税の非課税措置は、借入に係る消費貸借契約書や被災者が作成する不動産の譲渡に関する契約書等が対象とされたが、短期の資金需要に対する手形貸付や震災前に実行された住宅ローン等の条件変更契約等に係る印紙税についても非課税措置の対象とすることが望まれる。
 さらに、東日本大震災においては、印紙税の還付申請手続きにおいて、契約書原本の提出が必要とされたため、金融機関には、代理申請や、契約書の原本を外部へ持ち出すことによる紛失リスクへの対応に係る負担が発生した。加えて、地方公共団体や政府系金融機関等が行う特別貸付を対象とした印紙税非課税措置について、その適用基準が明確でなく、実務上混乱を来たすこととなった。
 したがって、熊本地震に関して、上記措置を講じるに当たっては、被災者のニーズを踏まえ対象の見直しを行うとともに、被災者や被災地域の金融機関の負担に配慮し、手続きの簡素化や対象の明確化を行うことを併せて要望する。
 なお、わが国では、今後も大規模な自然災害が発生する可能性は否定できない。被災地域の早期復旧・復興を迅速にサポートするためにも、これらの措置を恒久化することも期待される。

 

(2)インフラ資産への民間資金導入促進に資する税制の見直し

  • 再生可能エネルギー発電設備(以下「再エネ発電設備」という。)を運用対象とする投資法人の導管性要件について、
    1. 平成29年3月までとされている再エネ発電設備の取得時期に係る要件を撤廃、少なくとも延長すること。
    2. 匿名組合出資を通じた再エネ発電設備の運用方法を賃貸のみとする要件を撤廃すること。
  • PPP/PFIの活用を促進するため、地方税に係る所要の措置を講じること。

 再エネ発電設備を特定資産とする投資法人で、a.平成29年3月までの間に再エネ発電設備を取得していること、b.再エネ発電設備の運用方法が賃貸のみであること、c.設立に際して公募により投資口を募集したことまたは投資口が上場されていること、等の要件を満たすものについては、再エネ発電設備を最初に賃貸の用に供した日から20年以内に終了する事業年度までに限り、再エネ発電設備を資産総額の50%を超えて保有した場合においても導管性要件を満たすこととなっている。
 このうち、「a.」の要件については、平成29年4月以降の再エネ発電設備への民間資金導入促進に支障を来たすため、撤廃するか、少なくとも期限を延長することを要望する。
 また、「b.」の要件については、平成28年度税制改正において、匿名組合出資を通じて再エネ発電設備へ投資を行う投資法人に関する導管性要件が明確化された。しかしながら、運用方法が賃貸の場合に限定されており、投資法人がすでに賃貸以外の方法で運用されている再エネ発電設備を投資対象とする匿名組合に対して出資を行う場合に、スキームを再構築する必要があることから、匿名組合出資における賃貸要件を撤廃することを要望する。
 「c.」についても、インフラファンド市場のさらなる拡大のため、私募の場合であっても導管性要件を満たせることが望ましい。
 さらに、インフラ資産への民間資金導入促進の観点からは、平成32年3月までの時限措置とされている、BOT方式(Build-Operate-Transfer方式)のPFI事業に係る固定資産税等の減免措置について、これを非課税とするとともに、同措置の期限を撤廃することを要望する。
 また、PFIに関しては、政府と民間金融機関等の出資により設立された株式会社民間資金等活用事業推進機構において、法人事業税の外形標準部分に係る相応の税負担が発生しているため、その設立趣旨に鑑み、負担軽減を図るべきである。

 

(3)不動産投資市場のさらなる活性化・拡大に資する税制の見直し

  • 投資法人の導管性要件について、「借入先要件」を緩和し、機関投資家以外の先を追加すること。

 不動産投資市場を牽引するJ-REIT市場は、さらなる成長が期待されており、投資法人には継続的な借入ニーズが存在する。一方で、「借入先要件」により投資法人の資金調達先は金融機関に限定されていることから、将来、金融機関の貸出余力が限界に到達し、J-REIT市場の成長の制約となる可能性も否めない。こうしたなか、株式会社・合同会社を用いて投資法人向けローンを原債権としたCMBS(Commercial Mortgage Backed Securities:商業不動産担保証券)の組成・発行を行い、機関投資家以外の法人投資家、個人投資家、外国人投資家へ販売することが可能となれば、個人投資家や海外投資家等、幅広い層からの投資資金流入を通じたデット市場の多様化に繋がり、不動産投資市場の発展に寄与するものと考えられる。
 したがって、投資法人の導管性要件について、「借入先要件」を緩和し、機関投資家以外の先を追加することを要望する。

 

(4)住宅取得の促進に資する税制措置の拡充等

  • 住宅取得、住生活の安定確保および向上をさらに進めるため、住宅借入金等の所得税額の特別控除制度の恒久化等を行うこと。

 住宅は、国民の社会生活や経済活動の基盤となる重要な資産であり、自然災害に強く良好な居住環境を形成するためには、社会経済情勢等の変化に左右されることのない、安定かつ公平な住宅取得の機会が国民に与えられることが重要である。
 こうしたなか、平成18年に制定された住生活基本法においては、政府の責務として、住生活の安定の確保および向上の促進に関する施策を実施するために必要な措置を講じるべきことが規定された。持家取得に伴う初期負担の軽減により住宅投資を促進し、これが景気浮揚にも資するとの観点から、住宅借入金等の所得税額の特別控除制度は、平成21年度税制改正によって大幅に拡充され、平成25年度および平成27年度税制改正においても、消費税率の引上げに伴う一時の税負担の増加による影響を緩和する観点からの措置が行われたが、わが国経済においては、住宅投資が拡大することに対する期待は依然として大きいところである。
 したがって、住宅取得、住生活の安定確保および向上をさらに進めるため、住宅借入金等の所得税額の特別控除制度の恒久化、税額控除の拡充を行うことを要望する。
 なお、上記特別控除の適用を受けるためには、住宅借入金等に係る債権者が交付する「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」が必要とされている。当該証明書は書面に限定されているが、電子社会の実現を通じた利便性向上等の観点から、電磁的方法での交付も認めるべきである。

 

(5)印紙税の軽減・簡素化

  • 印紙税について、金融取引に悪影響を及ぼさないよう軽減・簡素化すること。

 印紙税は、本来軽微であるべき流通税としては極めて高い税率となっており、金融取引に悪影響を及ぼさないよう整理し、軽減・簡素化することを要望する。

 

3.適切な経営環境を確保するために

 世界経済の不確実性が高まるなか、国内外において企業や金融機関を取り巻く環境は急速に変化している。銀行が金融仲介機能を発揮し、わが国経済の成長を支えるためには、金融機関の競争力を維持すべく、適切な経営環境を確保することが重要であり、法人税、消費税、所得税、相続税等について、わが国の実情や諸外国の制度に配意した税制面の整備を進める必要がある。
 欧米金融機関とのレベル・プレイング・フィールド確保の観点からは、貸倒れに係る税務上の償却・引当基準や欠損金の繰越控除制度等について欧米主要国と遜色のないものとすることが望まれる。なお、将来の損失発生に備えた制度を拡充することは、わが国企業の投資意欲や競争力を高めることにも繋がる。
 また、外国子会社合算税制の見直しなど、OECDが発表したBEPS(税源浸食と利益移転)行動計画の最終報告書の国内法制化に当たり、国際的な金融取引の円滑化とともに、対象となる企業の実務負担等にも十分配意した税制を整備していくことや、国境を越えた取引に対する消費税の課税について、取引の実態に即した所要の見直しを行うべきである。
 さらに、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(マイナンバー法)の施行により、同法の基本理念である行政の効率化や国民の利便性向上等が進展するとともに、銀行における事務手続き等が効率化するよう、税制面の整備が行われることが望まれる。

 

(1)貸倒れに係る税務上の償却・引当基準の見直しおよび欠損金の繰越控除・繰戻還付制度の拡充

  • 貸倒れに係る税務上の償却・引当の範囲を拡大すること。
  • 欠損金の繰越控除と繰戻還付制度について、十分な措置を設けること。

 わが国金融界は不良債権問題からすでに脱却しているものの、わが国経済の持続的成長に資する金融システムの維持や、中小企業者等の経営改善、事業再生支援を積極的かつ継続的に進める金融機関の取組みを一層促進する観点から、不良債権税制の拡充が重要である。また、将来の損失発生に備えた制度を拡充することは、企業の投資意欲を高める効果も大きい。
 現在、会計上の引当金基準と税務上の無税基準が大きく乖離している状態にあるが、不良債権問題の再発防止や金融機関の自己資本の強化等の観点からは、金融機関が実施している自己査定等にもとづく会計上の償却・引当を税務上も幅広く認める等、債権毀損の実情に応じたものとすることが重要である。
 具体的には、法的整理手続き開始の申立てがあった場合の個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入割合(現行50%)を引き上げる等、貸倒れに係る税務上の償却・引当の範囲を拡大することを要望する。
 また、法人税における欠損金の繰越控除・繰戻還付制度は、事業年度ごとの課税負担の平準化を通じ、経営の中長期的な安定性を確保するものであり、わが国企業の投資意欲や競争力を高めるうえで極めて重要な制度である。金融機関にとって、景気後退期における不良債権の規模は大きいことから、その処理に伴い発生する欠損金の控除や還付について、十分な措置を設ける必要がある。

 

(2)国際的な金融取引の円滑化等

  • OECDの「BEPS行動計画」最終報告書を受けた今後の取組みにおいて、
    1. 国内法制化に当たり、金融機関の業務への影響を十分に考慮するとともに、体制整備等を行うための十分な準備期間を確保すること。
    2. 外国子会社合算税制の見直しについて、航空機リース事業の取扱い等を含め、ビジネスの実態に即した、明瞭、かつ、できる限り簡素な制度となるよう、各種基準等を適切に設定すること。
    3. 行動4(利子控除制限)について、金融業の特性を踏まえ検討すること。

 OECDは、各国が二重非課税を排除し、実際に企業の経済活動が行われている場所での課税を十分に可能とするため、平成27年10月、「BEPS行動計画」(Action Plan on Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転)の15の行動計画すべてについての最終報告書を公表した。
 わが国においても、今後、上記最終報告書を受けた国内法制化が検討されることとなるが、検討の結果次第では、海外展開している本邦金融機関において、各種税制の見直しによる税額算定の複雑化および税負担の増大や資金調達への影響等が発生する懸念がある。したがって、国内法制化に当たっては、金融機関の業務への影響を十分に考慮するとともに、体制整備等を行うための十分な準備期間を確保することを要望する。
 外国子会社合算税制については、与党の平成28年度税制改正大綱において、「喫緊の課題となっている航空機リース事業の取扱いやトリガー税率のあり方、租税回避リスクの高い所得への対応等を含め、外国子会社の経済実体に即して課税を行うべきとするBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクト最終報告書の基本的な考え方を踏まえ、軽課税国に所在する外国子会社を利用した租税回避の防止という本税制の趣旨、日本の産業競争力や経済への影響、適正な執行の確保等に留意しつつ、総合的な検討を行い、結論を得る」とされている。
 外国子会社合算税制の見直しにおいては、航空機リース事業の取扱い等を含め、ビジネスの実態に即した、明瞭、かつ、できる限り簡素な制度となるよう、各種基準等を適切に設定することを要望する。トリガー税率については、わが国企業の競争力維持の観点から、適切な水準に設定されるべきであるほか、合算された所得から配当があった場合は、過去10年間の特定課税対象金額まで益金不算入とすることができるが、二重課税を排除する観点から、この期間を廃止すべきである。
 行動4(利子控除制限)については、OECDが金融業の潜在的なBEPSリスクに対処するためのベストプラクティスを平成28年中に策定することとしていることから、金融業の特性を踏まえ、慎重な検討を行うことを要望する。

 

  • 国境を越えた取引に対する消費税の課税について、取引の実態に即した所要の見直しを行うこと。

 平成27年度税制改正により、国境を越えた電気通信役務(電子書籍・音楽・広告の配信等)の提供等に対する消費税の課税方式として、リバースチャージ方式(国内事業者が申告納税する方式)が導入され、平成27年10月から適用されている。これにより、電気通信役務の提供に係る内外判定基準について、役務の提供に係る事務所等の所在地から、役務の提供を受ける者の住所地等に見直された結果、国外事業者から日本市場向けに国境を越えて行われる電気通信役務の提供については、国内における取引となり、国内事業者に消費税の納税義務が課されることとなった。
 しかしながら、国内に支店等を有する外国法人も国外事業者とされ、国外事業者の日本支店から国内事業者に提供される電気通信役務もリバースチャージ方式による課税の対象となっている。日本に支店を有する国外事業者は、自ら消費税申告を行っており、消費税の捕捉は容易であることから、当該国外事業者から受ける役務提供については、リバースチャージ方式による課税対象から除外することを要望する。
 なお、電気通信役務を提供する国外事業者に対しては、国内事業者において納税義務が発生する旨を表示する義務が課せられているが、十分に周知されているとはいえない状況にあることから、国外事業者へのさらなる理解促進を図ることが必要である。
 また、与党の平成28年度税制改正大綱においては、国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税のあり方について、「課税の対象とすべき取引の範囲及び適正な課税を確保するための方策について引き続き検討を行う」とされている。今後、対象取引の拡大等が検討される際には、金融機関の実務負担に十分配慮しながら慎重に検討するとともに、事前に素案を公表し意見を求めるなど、納税者が十分な準備を行い、また納税者側から有用な提案を行えるような環境整備が必要である。
 さらに、金融機関の業務がグローバル化するなか、わが国金融機関が海外で行う金融取引に係る消費税の内外判定基準についても、実態に即した所要の見直しを行うべきである。

 

  • わが国における、米国の外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)に関する対応について、
    1. モデル2IGAにもとづく対応から、モデル1IGAにもとづく対応に移行するための所要の措置を講じること。
    2. モデル1IGAにもとづく対応の開始時期は、できる限り早いタイミングとするとともに、移行に当たっては、お客さまへの周知や、金融機関における体制整備等について十分考慮すること。

 米国の外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)に関する米国と各国との協定(IGA)には、〔1〕各国が国内法を整備し、金融機関が各国税務当局を通じて米国IRS(内国歳入庁)に間接的に米国口座情報を提供するモデル1IGAと、〔2〕金融機関が情報提供について同意を得た口座(協力米国人口座)の情報をIRSに直接提供し、同意を得られない口座(非協力口座)の情報についてはその総件数・総額をIRSに提供するモデル2IGA、の2種類がある。
 わが国においては、FATCAに関して、「国際的な税務コンプライアンスの向上及びFATCA 実施の円滑化のための米国財務省と日本当局の間の相互協力及び理解に関する声明」にもとづき、平成26年7月からモデル2IGAにもとづく所要の対応を実施している。
 一方で、各国の税務当局同士が連携し税務情報を交換する取組みについては、上記のFATCA以外にOECDでも、金融口座情報について自動的情報交換を行う共通報告基準(CRS:Common Reporting Standard)が策定されており、わが国においては平成30年に初回の情報交換を行うことを想定し、「租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律」の改正が平成29年1月1日から適用される。
 CRSにおいては、各国の金融機関は非居住者の口座情報について自国の税務当局に報告することとされていることから、CRSの導入に伴い、本邦金融機関は、米国IRSと本邦税務当局の双方に非居住者等の口座情報を提出することが求められることとなる。さらに、モデル2IGAによる報告に対応するためには、英語でのFATCA制度の理解、制度改正の動向のフォロー、報告システムの整備が必要になる等、本邦金融機関にとって相当な負担が発生している。したがって、わが国のFATCA対応について、モデル2IGAにもとづく対応から、モデル1IGAにもとづく対応に移行するための所要の措置を講じることを要望する。
 なお、モデル1IGAにもとづく制度の開始時期については、できる限り早いタイミングとするとともに、移行に当たっては、お客さまへの周知や、金融機関における体制整備等について十分配意することを併せて要望する。

 

  • わが国金融機関が外国清算機関を通じて行うクロスボーダーのレポ取引に係る特定利子について、非課税措置の対象とすること。

 わが国では企業の海外進出が加速しており、こうした動きを金融面からサポートするためにも、安定的に外貨を調達できる環境を確保することが重要である。
 近年、国際金融規制の強化を受け、保有する外国債券を用いて外貨資金調達を行うレポ取引は、清算機関を経由した取引が主流となっている。そのため、わが国金融機関が外国清算機関を通じて海外金融機関と行うクロスボーダーのレポ取引に係る特定利子(レポ取引から生じる差益および現金担保に係る利子)について、非課税とすることが望まれる。

 

(3)個人番号および法人番号の告知・記載書類に関する見直し等

  • 個人番号および法人番号について、
    1. 告知を不要とする取引および告知方法等の見直しを行うこと。
    2. 記載書類およびe-Taxにおける提供事項の見直しを行うこと。
    3. 番号を活用した確定申告手続きの簡素化を図ること。

 金融機関は、平成28年1月以降、投資信託や債券に係る取引等において、お客さまから個人番号や法人番号の告知を受け、金融機関から税務署に提出する法定調書に個人番号および法人番号を記載することとされた。
 このうち、個人番号については、平成28年3月に成立した「所得税法等の一部を改正する法律」により、同年4月以降、告知が必要とされる一部の取引や手続きにおいて、すでに個人番号の告知を受けている場合には、一定の条件の下、改めての告知を不要とする措置(二度目の告知の不要)が手当てされた。
 しかしながら、例えば手続きの頻度が高い住所変更等においては引き続き個人番号の告知が必要とされているほか、法人番号については二度目の告知の不要が手当てされておらず、お客さまおよび金融機関にとって大きな負担となっていることから、告知を不要とする取引および告知方法等についてさらなる見直しを要望する。
 また、財形貯蓄制度に係る書類における個人番号および法人番号の記載や、少額投資非課税制度(NISA)におけるe-Taxを使用した個人番号の提供などについても見直しを行うべきである。
 さらに、個人番号を活用した複数の特定口座間の損益通算を可能とするなど、確定申告手続きの簡素化を図るべきである。

 

(4)受取配当等の益金不算入制度の見直し

  • 受取配当等の益金不算入制度について、実務に即した見直し等を行うこと。

 わが国の立地競争力を高めるとともに、わが国企業の競争力を高める観点から、平成27年度および平成28年度の税制改正によって法人税率の引下げおよび課税ベースの見直しによる法人税の負担構造の改革が行われた。
 こうしたなか、平成27年税制改正において、受取配当等の益金不算入制度の見直しが行われているが、その具体的な算定方法等について、二重課税排除や実務負担の軽減等の観点から、所要の措置を講じることを要望する。