2007年9月18日

奥会長記者会見(三井住友銀行頭取)

斉藤専務理事報告

 事務局から4点ご報告する。
 1点目は、全銀協の次期会長を内定したことである。先週9月13日開催の正副会長会議において、みずほ銀行の杉山頭取を次期会長に推薦することを決定し、本日の理事会においてこれが了承された。正式な選任は、来年4月の理事会において行う予定である。
 2点目は、本日の理事会において、平成20年度の税制改正要望について、お手許の資料のとおり最終決定した。この要望の枠組みは、前回7月24日のこの記者会見の場で公表したものである。内容は前回報告したものと同様である。
 次に、今月30日から金融商品取引法が施行されることを踏まえ、銀行で販売するリスク商品の仕組みと留意点についてまとめたリーフレットを、お手許の資料のとおり作成し、銀行の店頭等で配付することとした。このリーフレットは、消費者の皆様に元本割れの可能性や手数料といったリスク商品の特性をご理解いただくための一助となるよう作成したものである。 また、金融商品取引法への対応としては、全銀協では、お手許にお配りしている金融商品取引法周知に関するポスター、チラシを約230万部作成し、会員に送付することとしている。そのほか、会員の態勢整備を支援するために、外部専門家による講演会の開催、会員各行の取組み状況を紹介する事例集や、各種法定書面の参考例の作成、法令に関するQ&Aの取りまとめなども行っている。
 また、全国銀行公正取引協議会においては、外貨定期預金および円定期預金と投資信託とのセットプラン商品についての広告表示例を改正し、会員に通知するとともに、この協議会のホームページでも公表している。
 最後に、決済システムに関する業務継続計画、いわゆるBCP(Business Continuity Plan)への対応について報告する。銀行協会は全銀システム、外為円決済、手形交換所といった決済システムの運営にあたっている。このシステムは経済社会にとって重要な基盤の一部であるので、地震等の災害に対して強固で安定的なサービスを提供していくことが重大な責務であると認識している。
 さる9月1日は「防災の日」であったが、当協会でも、ただいま申しあげた決済システムの安定性確保の観点から、9月を中心に、各決済システムにおいて、災害発生時の対応の訓練・再確認を行った。訓練は、実際にシステムを稼動して実施し、いずれも特段の問題なく完了した。また、これらの運営を預かっている事務局の体制についても、机上訓練による検証を重ねて行った。
 今後も、定期的に訓練を実施し、災害等事故に強い決済システムの運営というものに努めていくこととしたいと考えている。
 私からの報告は以上であるが、詳細については会見終了後、事務局に照会いただきたい。

 

会長記者会見の模様

(問)
 安倍総理が臨時国会の所信表明演説終了後に突然、辞意を表明されたということで、今、自民党では総裁選が行われている最中であるが、こうした政局の混乱が、今後、日本経済にどのような影響を与えるとお考えか。あわせて、次の総理についてはどういう方が望ましいか、あるいは、その総理にどういったことを期待されるのかについてお答えいただきたい。
(答)
 安倍総理が辞意を表明されたことについては、通常の政治日程からいくと、極めて異例かつ突然のことであり、正直なところ驚いている。
 安倍総理におかれては、昨年総理に就任されて以降、特に金融の世界においては、わが国の金融・資本市場の活性化、国際化ということで、行政に指示されて、金融審議会での議論、経済財政諮問会議での議論、そしてアジア・ゲートウェイ戦略会議での議論、そういったものが活発になされる道をつけられてきた。また、従来からの「貯蓄から投資」という流れのなかでの利用者保護の徹底という意味で、金融商品取引法の施行に向けた動きをリードしてこられた。そうしたことをわれわれとしては評価してきているなかで、今回の件は残念ではあるが、健康上の問題等々、いろいろ考えられたうえでの大変なる苦渋のご決断だったと考えている。
 次の総理に何を期待するかということであるが、今、総裁の候補は二人であるので、どちらが云々ということを申しあげる立場にはない。ただ、やはり健康面でも、それから、タフなことが一つの条件であることは間違いないと思うが、金融政策といった意味では、今までの流れをしっかりと引き継いでいただきたいと思う。わが国の政治、そして経済、社会には、大変いろいろな課題が山積しているわけなので、それをしっかりと具体的に解決していただき、経済の着実な成長戦略というものを引き続き具体化していただきたい。そして、金融・資本市場の活性化、国際化、また、「貯蓄から投資」への流れを、利用者の保護というものを徹底しながら、利用者の利便性も拡大していく、そういった大きな動きを引き続き支援していただきたいと思う。


(問)
 2点目はサブプライム問題である。問題が表面化して以降、金融市場の緊張は依然として続いていると思うが、現状をどう見ているか。
 それから、今後、株価、為替、あるいは長期金利に与える影響についてどのように考えているか。
 今、日銀で金融政策決定会合が明日までの予定で開かれているが、この金融政策の今後の流れに影響があるのかについてもあわせてお願いしたい。
(答)
 サブプライムの問題については、7月のこの記者会見においても同様の質問があり、私はこの問題をマーケットが消化していくためには少し時間が長引くのではないかということを申しあげた。8月の中旬に至り、かなり大きな動きになってきているが、サブプライム自体の問題は、前も申しあげたように米国のなかでの低所得者への住宅ローンという問題であり、住宅ローンマーケットにおけるシェアからいえば10%足らずであるので、そう大きな問題ではない。ただ、そこにいろいろな問題が含まれてきていることは皆さんがよく書いていらっしゃるとおりであり、それが1つの引き金になっているというところに今回の問題点がある。
 やはり、流動性が非常に高いいわゆるリスクマネーが、これをきっかけにいろいろと動いたということ。それから、強いてあげれば流動性というものが、金融機関の調達面、それから、アセットバックCPといったようなものの調達金利に波及している。
 もう1つは、格付けに対して物事をどう考えていくかということもあると思う。このため、IOSCO(証券監督者国際機構)もそういった問題に対していろいろと情報交換を始めている。
 リスクの所在という観点でみれば、今回の場合、サブプライムローンをいろいろな形でCDO化したものが分散されて投資家が保有している。したがって従来のような不良債権問題とか、それからかつてのアメリカのS&Lといったような問題で、不動産投資といったようなことでどこかにリスクが集中していた訳ではない。リスクの分散が非常に進んでいったことによって、実態が掴みにくいところに問題があったと思うし、一般の投資家が格付けだけを頼りに買っていったということもあるだろうし、いろいろな問題がここで複雑に入り組んでいる。
 今、LIBORとTIBORを比較してみると、LIBORの方が高いが、日本の外で過剰流動性がどこかで引き始めるといった問題が起きているということであり、これからどのように終息していくのかといった点は、慎重に見極めていかなければならないと思う。
 ファンドは株式のマーケットで流動性の高い日本株を売ることによって、自分のキャッシュのポジションを高める動きになっているのではないかと思う。今まで円キャリーのトレーディングで円を売って外貨を買っていたところも、その巻き戻しが起きてきているということであり、その巻き戻し自体は、一応一巡しているのではないかと思うが、その過程において111円まで円高が急速に進んだあと、今は115~116円と戻ってきている。今後も何かいろいろな事象を基に市場自体がナーバスになっているので、安定化するには、しばらくまだ時間が掛かるのではないかと思っている。
 また、日銀の政策金利の問題については、私がこの立場で何か申しあげることはないが、ただ明らかに6月、7月の状況からは内外、特に外のマーケットの環境が変わってきていると思う。そういうものに引きずられて、長期金利も低下しているし、今後の日本の経済が短期的にどうこうということはないが、長期的に見た場合に米国のサブプライムを中心とした影響が、じわじわと何かネガティブなファクターとして影響し、それが日本の経済にも影響してくるかもしれないということは否定できない。日銀も7月までのポジショニングとは、今後の見方について少し慎重にお考えになっていかれるのではないかと見ている。


(問)
 関連して、サブプライム問題が欧米の金融機関あるいは日本国内の銀行決算に与える影響はどのように見ているか。
(答)
 サブプライムというのは、アメリカの銀行でもいわゆる大手一流の銀行は扱っていないと聞いている。欧州に飛び火したのは、欧州の幾つかの銀行およびその傘下にあるファンドが投資をしていたことから流動性の問題が起きているわけであり、極めて限定的な話ではないかと思っている。それから、欧米の銀行は一般的に言えば資本を十分蓄えているといった意味で、影響はあまりないと見ている。ただ、個別の話では、例えばイギリスで流動性の問題が起きていたりするが、それはサブプライムを契機としているが、それとは切り離した固有の問題ではないかと考えている。
 それから、わが国における金融機関においては、サブプライム自体への投資云々ということについては、極めて限定的な話であるので、決算へのそれ自体の影響は限定的であると思う。ただ、これにより為替が動いたり、株式が動いたり、いろいろなことが動いているので、影響がないということは言えないと思う。


(問)
 3点目は郵政民営化についてである。先般、実施計画が認可されて、来月からいよいよ民営化のプログラムが始まるということであるが、改めて、郵政民営化の抱える問題点、あるいは課題について、お答え願いたい。
(答)
 郵政の民営化というのは国の方針であり、当然それがスムーズに移行していかなければならないと考えている。ただ、郵政改革の本旨は、官業であることに基づく非効率性の解消等によって、1つは利用者利便の向上、2つには官の資金の民間市場への還流、そして3つめには国民の貯蓄を経済の活性化に結びつけることにあり、そういった意味で、この民営化が完遂された時には国民経済的にも大きな効果がある。今回の10月1日以降を称して、郵政の民営化という言葉が使われているが、これが民営化かといえばそうではなく、基本的には旧郵政公社からの事業承継であって、いわば「国営」から「国有」への形態変更である。したがって、郵政が完全に民営化するまでの間というのは、やはり国有という色彩は強いわけであって、民営化という言葉では必ずしも語れない部分が強く、この10月1日というのは民営化に向けたスタートであるというように位置付けているわけである。私どもとしては、従来から申しあげているように、今まで官業ゆえの特典を背景に肥大化を続けてきた結果、非常に大きな、巨大な規模の貯蓄量を持っているわけで、これを地域金融への融合、そしてもう一つは国債管理政策の面からの市場への融合、こういったものがスムーズに行われることが必要であり、それによって、適正な規模への縮小が図られ、公正な競争が担保されるということが本来あるべき姿であるかと思っている。したがって、郵政民営化に係る検討の際には、この民営化の趣旨、本旨というものをしっかりといつも念頭において、郵政民営化委員会においても、木を見て森を見ずではなく、両方つねに見ながら、しっかりと進めていただきたいと思う。


(問)
 最後に関連して、ゆうちょ銀行が地方銀行と住宅ローンの分野で提携するという話があったり、一方、事業計画のなかではいわゆる窓口会社が代理店業務を行うというようなことがあるが、この点に関してお考えがあれば伺いたい。
(答)
 私も新聞報道でしか伺っておらず、個別行である私どもに何か要請が来ているわけではないので、詳細は存じあげない。ただ、一般論として申しあげれば、やはり政府出資が残存する間は、民営化に向けてしっかりと経営の効率化、それから利用者の保護体制の確立、それから経営管理体制の整備、細かいところまでは申しあげないけれども、そういったものがしっかりとできあがっていくというのが前提であって、その間に個別の新規業務を一方的に拡大していくというのは、少し優先順位が違うのではないかと思う。
 住宅ローンの話については、やはり今回の場合、自分でおやりになるということなのか、それとも代理店業務ということなのか、私どもとしては存じあげないが、代理店業務ということで、業務の肥大化につながらないということと同時に、郵便局のネットワークというものを使って利用者にそれなりのメリットがあるということであれば、私は一定の理解ができると思うし、従来からの全銀協の主張を大きく外れるということではないと思う。ただし、代理店業務だけで終わるのかというあたりには、やはり問題があるわけで、なかなか難しいところである。将来、ゆうちょ銀行が自分だけでやっていくということになれば、そこに反対も出てくるだろうし、やらないというところも出てくるだろう。それからどういう住宅ローンをやるのか、その住宅ローンによっては、市場性とか経済的なフィージビリティ等を検討されたうえで、各行がいろいろとご判断していくのではないかと思う。


(問)
 本日、米国において、三菱UFJフィナンシャル・グループのユニオン・バンク・オブ・カリフォルニアに対して、アメリカの金融当局と司法当局から課徴金と民事制裁金が課されるという発表があった。
 特定の銀行グループに対して、繰り返し、マネロン体制の不備について問われている事態について、どのようにお考えか聞かせてほしい。
(答)
 過去に業務改善命令が出された段階で申しあげているが、すでに問題の原因に対する適切な対応はなされていると考えている。過去にあったことについては適切に対応されているし、将来についても、防止措置について最善の手を打っておられると思うので、再発がないように、そういった面での管理をしっかりなされていくと考えている。それ以上のことを申しあげる立場にない。いずれ、子会社の管理上の問題ということであれば、わが国の監督当局も、いろいろ考えられるかもしれないが、当協会の立場から言えば、これまでも適宜適切に対応されているので、その対応を引き続きお願いしたいということだと思う。


(問)
 郵政の民営化の問題についてであるが、仮に、ゆうちょ銀行から御行に対して、住宅ローンを代理店業務で提携したいという意向が示された場合、その内容が理解できるものがあれば、前向きに検討することはやぶさかではないということか。
(答)
 仮定の話にはなかなかお答えできないが、代理業務について言えば、規模の拡大につながらないこと、ネットワークを有効に使い利便性が高まるという観点からは、一定の理解が可能であるという考えを申しあげた。あくまで仮定の話であるが、個別行として話が来れば検討はするだろうが、どういったマーケットがあるのか、フィージビリティがあるのか、将来的にどうなるのか、いろいろ考える要素があり、結論はわからない。


(問)
 サブプライムローンの議論の過程の中で、格付会社への規制論が出ているが、規制が必要かどうかも含めて、どういうことをすべきであると思うか、考えを聞かせてほしい。
(答)
 監督者の立場からの議論であると思うのでコメントは難しい。ただし、言えることは今回のケースでは金融商品というものが非常に複雑化してきていること。そのなかで投資家保護の見地から、商品の格付を行うにあたって、格付機関の信頼性をどう担保していくかという問題であると思う。また、格付けを受ける側と格付会社の間の利益相反の問題等、いろいろな観点が考えられるが、われわれ金融機関として、投資する立場からみれば、格付の信頼性をより高めてほしいということになる。監督者の立場としては、そういったことも含めて別の観点からもいろいろ議論がなされると思われる。規制という立場からいけば、私はやはり難しいと思う。われわれとしても、格付けを信頼してやっていくという民と民の間の話であるが、そこに一定のハードルを設けるかどうかは、監督者が全体的な動向を見て考えることになるのではないか。


(問)
 郵政民営化について改めて確認したい。ゆうちょ銀行がこれから完全民営化に向かうが、民営化後の姿や銀行業界での位置づけについて、会長はどのように考えているか。4つめのメガバンクなのか、巨大な地域金融機関なのか、あるいはまったく別の存在が考えられるのか、どのようなイメージをお持ちか。
(答)
 これについては何とも言えない。民営化の前に、2000年だったか、全銀協でもいろいろと議論をして出したレポートがあり、そのときは「縮小、先にありき」で、縮小の先に例えば特定の国債の運用を目的としたナローバンクとか、いくつかの地域分割ということも考えられるというようなことを言ったこともあるが、今回は、現在の郵政公社を民営化していくということであるから、そういったものは恐らく視野にないと思う。とはいえ、普通の民間銀行と同様の内容の業務をやるにはあまりにも大きすぎるし、経営管理などまだまだやるべき優先課題がたくさんあると思う。どういう姿になるかというのは今ここで申しあげることはできない。そういうことはあまり考えたことはない。


(問)
 1点目は、今回の政局の混乱で株などの日本売りというような動きが外国人投資家のなかであるという見方があるが、それについてどう考えているか。2点目は、金融商品取引法についてであるが、昨年来、金融商品の販売で金融庁から多くの金融機関が処分を受けていると思うが、そのあたりも踏まえて、顧客への説明とあわせて社内の評価とか人事など内部管理体制についてどういうふうに気をつけていくべきかという点を教えてほしい。
(答)
 株価がどうして大きく下げているのかという理由については、私自身が言う立場にはない。今回の政局の混乱というのは、安倍総理が辞意を表明されたことをもってしておられるのか、参議院選の結果をもってしておられるのか、いろいろなことがあると思うし、そこにサブプライムの問題も影響してきているから、その複合形態であると思う。ただ、安倍総理の辞意表明自体が、売りの材料の主原因になっているのかという点については、個人的にはそうは見ていない。政治に若干の空白があったとしても、当然、それは後継者が、自民党から出てこられるわけであるから、一時的なものであって、大きな売り材料とはなっていない。むしろ、経済的な理由、先ほどのサブプライム問題を契機とした市場の混乱といったものが、メインにあるのではないかと思っている。ただ、これはいつも後づけの理由であるから分からないが、長期的にみれば、日本経済が、それで米国の影響を受けたり、円高がさらに進むというようなことになってくると、企業業績にも影響してくるということになるから、株価のネガティブな要因になると思うが、むしろそういった意味での世界的な経済、金融の乱れの方が、今の日本市場の株価の下げに影響しているのではないかと個人的には思う。
 金商法については、各金融機関がしっかりと対応しなければならないことであり、商品のリスク特性からはじまり、販売時の説明義務、書面での重要事項の説明、そういった流れにつき、各銀行ともしっかりと事前の研修をしてきている。それから、例えば、ある一定の条件をお聞きしていれば、この方にはこういった商品までがリスクカテゴリとしては売れないというようなシステム化をしている銀行もあるわけで、あとは、具体的なコンプライアンスをしっかりと遵守していくという意味で、やはり研修が大変大事である。
 当協会においても、冒頭で専務理事から話があったとおり、周知のための広告を約230万部作っているし、お手許にあるような「リスクのくすり」といったようなリーフレットも約130万部作って、皆さまに「法律が変わります、金融機関もしっかりとやっていかないといけない」ということを徹底しているということで、ご理解をいただきたいと思う。


(問)
 金商法への対応については、各行が一生懸命取り組んでいるという話であった。一方で、銀行の収益が、今回日銀の利上げも見送られる模様であり、貸出金利が伸び悩んでいて、金利収入が見込めない分、手数料収益に期待することになると思う。金商法により投信の販売などに影響があると思うが、会長の手数料収益や今後の見通しについて教えていただきたい。
(答)
 金商法の導入当初は、少々説明が多くなったりするため、若干影響はあると思うが、今までの経験から言うと、おそらく短時間の間に習得して回復すると思っているので、そうした要因はあるとしても極めて限定的ではないかと思う。それ以上に、お客さまにとっては、金商法の施行によって、より金融機関の販売に信頼性が高まる、利用者の信頼性が高まるということによるメリットは、時間とともに強くなってくるということで、一時的には影響があったとしても、回復にそう時間がかかるわけではないと考えている。


(問)
 今年12月に保険の銀行での窓販が解禁ということで、今後、金融審議会で議論が進められていくと思うが、一部生保の中には、12月の全面解禁に関して、若干慎重論が出ているようである。これについては、全銀協としてはどのように考えているか。
(答)
 保険の全面的な銀行窓販解禁というのは、基本的には投資商品と、お客さまが将来の安全を買うという商品を、ワンショップでお客さまに提供できる、これが本来の目的であって、お客さまの利便性を高めるというのが本旨である。今までも弊害防止措置というのは幅広く行われてきている。パーフェクトということではないであろうが、私は、解禁の時期が当初決められて、そのための準備も各金融機関がしっかりやっているわけであり、生保さん側がどのような理由で延期ないし12月の解禁を変えられようとしているのか、よくわからない。私は、やはり時期を決めて、それなりのことをきっちりやっているということが確認できれば、これは予定どおり解禁するのが筋であるし、そうした緩和がされても、そのなかでどういう業務を選択するかは銀行側の問題であると思う。十分準備ができていないところはそれにあった対応をするであろうし、準備ができているところは前向きに対応するであろうし、それまでの体制作りということをしっかりと見極めていったらいいと思う。
 また、一部に保険の不払いの問題とこの問題を絡めておっしゃる方もいるが、これはまったく別の問題ではないかと思う。むしろ逆に、不払いの問題というものが、今後の商品販売、窓販においても、教訓として活かされていくわけであるから、そこで売られる商品、説明責任についても、より分かりやすい説明、細部にわたった説明ということにつながっていくことになるのではないかと思っている。


(問)
 サブプライム問題が日本のM&Aに与える影響について教えていただきたいのだが、欧米でサブプライム問題以降、LBOのマーケットが崩壊して資金調達ができなくなって、M&Aの数自体が減っているという統計が出ている。日本のM&Aはそもそも多かったのか、少なかったのかという議論はあると思うが、LBOのマーケットで資金が調達できないという動きが欧米で出てくるなかで、それは日本のM&Aに影響を与えるのか。それともまったく影響を与えないのか。
 仮に外資の金融機関がリスクを取れないということになると、日本の金融機関、三井住友銀行もLBOに力を入れていると思うが、これをチャンスと捉えているのか、そもそもM&Aの数自体が少なくなるとすれば、チャンスも何もなく、外銀と同じようにそこのところのビジネスは小さくなっていってしまうのか、お考えをお聞かせ願いたい。
(答)
 いわゆる海外におけるLBO形態によるM&Aについては、今、リスクマネーというものがかなり敏感になってきており、一時的な現象かもしれないが、投資について慎重になってきていると思う。したがって、LBO絡みの貸金の価格、プライスというのは下がっているわけで、ということは逆に金利は高くなっている。そういった意味でリスクマネーの供給者というのは今、非常に慎重になっていると思うので、リスクマネーをあてにした広義のM&Aはしばらく減るのではないかと思う。非常に質の良いもの、調達が容易であるようなものについては、海外においても出てくると思うが、金利を個別に見ていけば、リスクを含んだ、クレジットのプレミアムがオーバーシュートしていると思うので、ふつうのケースでは控えるとか、先延ばしにするといったケースになってくるのではないか。ただ、良いもので、それに対して自信のあるところは、おやりになられるのではないか。それが国内においてどうかというと、国内のM&Aというものは、海外がいろいろと絡んでいるものについてはリスクマネーの流入は細ってくるかもしれないが、国内だけで考えれば、それほど影響はないのではないか。M&Aというのは合併も含むわけだから、国内ではそう大きく影響が出てくるとは思っていない。繰り返すようだけれども、外国の資金が入ってくる、そこに頼らなければいけないような案件については、ファンドを供給する、リスクテイクする投資家が少し慎重だから、今模様眺めの状況で、減るのではないかと思う。

別添資料:奥会長記者会見(三井住友銀行頭取)