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2016年3月 8日

「会計監査の在り方に関する懇談会」、提言を公表

会計監査の在り方に関する懇談会(座長:脇田良一名古屋経済大学大学院教授 明治学院大学名誉教授)(以下「懇談会」という。)は、3月8日、「―会計監査の信頼性確保のために― 『会計監査の在り方に関する懇談会』提言」(以下「提言」という。)を公表した。
 懇談会は、2015年10月に設置され、会計監査を取り巻く環境の変化や最近の不正会計事案の要因等を踏まえ、会計監査の信頼性を確保するために必要な取組みについて議論を行っていた。
 提言は、不正会計問題への対応に際しては、いたずらに規制・基準を強化するのではなく、その費用と便益を検証しつつ、問題の本質に焦点を当てた対応を取るべきとし、会計監査の信頼性確保に向けて講ずるべき取組みを5つの柱に整理した。具体的な施策の概要は以下のとおりである。

1.監査法人のマネジメントの強化
(1)監査法人のガバナンス・コード
(2)大手上場会社等の監査を担える監査法人を増やす環境整備 2.会計監査に関する情報の株主等への提供の充実(1)企業による会計監査に関する開示の充実

  • 有価証券報告書等における、会計監査に関する開示内容の充実

(2)会計監査の内容等に関する情報提供の充実

  • 監査法人の交替理由等に関する開示の充実

3.企業不正を見抜く力の向上
(1)会計士個人の力量の向上と組織としての職業的懐疑心の発揮
(2)不正リスクに着眼した監査の実施

4.「第三者の眼」による会計監査の品質のチェック
(1)監査法人の独立性の確保

  • 監査法人のローテーションについては賛否両論があるとして、諸外国の最近の動向を踏まえつつ、わが国における監査法人のローテーション制度の導入に関し、金融庁が調査を実施。

(2)当局の検査・監督態勢の強化
(3)日本公認会計士協会の自主規制機能の強化

5.高品質な会計監査を実施するための環境の整備
(1)企業の会計監査に関するガバナンスの強化

  • コーポレートガバナンス・コードにもとづく各企業における監査人の選定・評価のための基準の策定
  • 各企業における適正な監査の確保への取組み

(2)実効的な内部統制の確保 

  • 内部統制報告制度の運用と実効性の検証

(3)監査におけるITの活用
(4)その他

  • 試験制度・実務補修等の在り方の検討

 (関係資料はwww.fsa.go.jpから入手可能)