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2016年4月18日

金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」、報告書を公表

金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(座長:神田秀樹 学習院大学大学院法務研究科教授)(以下「WG」という。)は、4月18日、「ディスクロージャーワーキング・グループ報告・建設的な対話の促進に向けて・」(以下「報告書」という。)を公表した。
 WGは、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向け、株主・投資者との建設的な対話を促進する必要との認識のもと、2015年10月23日に開催された金融審議会総会・金融分科会合同会合において、麻生太郎金融担当大臣から、投資者が必要とする情報を効果的かつ効率的に提供するための情報開示のあり方等につき幅広く検討を行うことについて諮問がなされたことを受けて設置された。報告書は、WGにおける5回の審議の検討結果等を取りまとめたものであり、主な内容は以下のとおりである。 1.基本的な考え方
 企業・投資者との対話を充実させていくという要請に鑑みれば、現在の開示制度を見直し、全体として、より適時に、かつ、より効果的・効率的な開示が行われるよう、開示に係る自由度を向上させることが重要である。具体的には、(1)制度開示の開示内容を制度の目的を踏まえながら整理・共通化・合理化し、自由度を高める、(2)対話に資する情報がより適時に開示されるよう、現在の開示制度を見直すことが必要である。 2.具体的な見直しの方向性 
(1)制度開示(決算短信、事業報告等、有価証券報告書)の開示内容の整理・共通化・合理化
 開示内容の自由度を高め、例えば、事業報告等と有価証券報告書の開示内容の共通化や、欧米に見られるような両者の一体的な書類としての開示などをより容易にする。 (2)非財務情報の開示の充実
 有価証券報告書の経営方針・経営成績等の分析等の記載を充実化する。また、任意開示も活用し、対話に資する情報の開示を促進する。  上記(1)、(2)を踏まえ、各制度開示の見直しの方向性をまとめると下表のとおりである。

制度開示の種類見直しの方向性
決算短信
  • 監査・四半期レビューが不要であることの明確化
  • 速報性に着目し記載内容を削減
  • 記載を要請する事項をサマリー情報、業績概要、連結財務諸表等に限定
事業報告等
  • 経団連ひな形に即している必要はない旨を明確化し、有価証券報告書との記載の共通化や一体化を容易に
有価証券報告書
  • 事業報告との共通化(大株主の状況の計算における自己株式の取扱い)
  • 記載の重複排除のための開示内容の合理化(新株予約権等)
  • 経営方針等や経営者による経営成績等の分析等の記載を充実


(3)より適切な株主総会日程の設定を容易とするための見直し
 開示の日程、手続きに係る自由度を高め、株主総会までに十分な期間を置いて情報が開示されるなど、対話に資する情報のより適時な開示を促進する。具体的には下表のとおりである。

論点見直しの方向性
株主総会日程の後ろ倒しを容易にする開示の見直し
  • 大株主の状況の開示に関し、大株主判定の基準日設定を柔軟化
事業報告等の電子化の推進
  • 議決権行使率への影響等に留意しつつ、個別の同意なしに電子化できる書類の影響の範囲を拡大

 
(4)その他

  •  単体IFRSの任意適用の検討
  • フェア・ディスクロージャー・ルールの導入に向けた検討の実施
  • 投資者のリテラシー向上等に向けた取組みの充実

(関係資料はwww.fsa.go.jpから入手可能)