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2016年8月12日

企業会計基準委員会(ASBJ)、 「中期運営方針」を公表

  企業会計基準委員会(ASBJ)は、8月12日、中期運営方針を公表した。
  中期運営方針は、これまで3度公表されており、今回は、2010年以来の公表となる。中期運営方針は、今後3年間の日本基準の開発の基本的な方針および国際的な会計基準の開発に関連する活動を行うに当たっての基本的な方針を示すものである。
 主な内容は以下のとおり。

1.現状の認識と基本的な方針
 わが国の上場企業等では、原則として日本基準を用いて財務諸表が作成されるが、2016年6月30日現在、連結財務諸表に国際会計基準を適用している企業(適用決定および適用予定を含む)は141社となっており、任意適用の拡大促進に向けた取組みがなされている。
 このような状況の中、わが国の上場企業等で用いられる会計基準の質の向上を図るためには、日本基準を高品質で国際的に整合性のとれたものとして維持・向上を図るとともに、国際的な会計基準の質を高めることに貢献すべく意見発信を行っていく必要がある。

2.日本基準の開発
 わが国における会計基準に係る基本的な考え方としては、企業の総合的な業績指標としての当期純利益の有用性を保つこと、事業活動の性質に応じて適切に資産および負債の測定を行うこと(適切な公正価値測定の適用範囲)などが挙げられる。
 こうした考え方のもと、日本基準を国際的に整合性のあるものとするための取組みは、国際的な会計基準を自動的に日本基準に採り入れることを意味せず、国際的な会計基準における個々の会計処理について日本基準に採り入れる範囲を適切に決める必要がある。その際、国際的に整合性のあるものにすることにより、高品質な会計基準となるか否かを判断することが必要である。また、わが国における会計基準に係る基本的な考え方は意見発信の基礎となるべきものであり、国際的な会計基準における考え方がわが国における会計基準に係る基本的な考え方と大きく異ならないことも重要である。
 その中で、具体的に現在取り組んでいるテーマは以下のとおりである。

  • 日本基準を高品質で国際的に整合性のあるものとする等の観点からIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」を踏まえた収益認識に関する包括的な会計基準の開発を現在行っており、2018年1月1日以後開始する事業年度に適用が可能となることを当面の目標として、最も優先的に検討を進めていく。
  • 市場関係者のニーズを反映して日本基準を高品質なものとする取組みも行われており、現在、日本公認会計士協会から公表されている税効果会計および当期税金に関する実務指針について、開示の充実等必要な見直しを行ったうえで、企業会計基準委員会の適用指針等に移管する取組みを行っている。

3.国際的な会計基準の開発に関連する活動
 わが国の上場企業等で用いられる会計基準の質の向上を図るために、国際的な会計基準に対し意見発信することが重要であると同時に、わが国の考えを国際的な会計基準に反映することが可能となるよう、国際的な会計基準の策定の場におけるわが国のプレゼンスの向上および影響力の強化を図る必要がある。
 これまで、わが国における会計基準に係る基本的な考え方を踏まえ、当期純利益の重要性およびのれんの償却の必要性等に関する意見発信を行ってきており、今後も主要な会計基準設定主体等との関係を構築・発展させつつ、共同して意見発信を行っていく。
 また、IFRSのエンドースメント手続を経た修正国際基準はわが国が考える国際会計基準のあり方を実務的に適用可能な一つのセットの会計基準として示すもので、わが国のポジションの明確化を図るものであり、引き続き適時に更新していく。
 加えて、国際的な会計基準の策定の場において意見発信できる人材および国際的な会計基準の策定に直接関与できる人材は十分ではなく、国際的な会計人材の開発は喫緊の課題である。会計人材開発支援プログラムや国際会計基準審議会(IASB)への研究員の派遣等を通じ、この課題に取り組んでいく。

4.その他
 日本基準を国際的に整合性のあるものとする取組みに関する今後の検討課題としてIFRS第9号「金融商品」(分類及び測定、減損、一般ヘッジ)、IFRS 第10号「連結財務諸表」(連結範囲)、IFRS 第13号「公正価値測定」およびIFRS 第16号「リース」の各基準に係る方針が示されており、今後検討が進められる予定である。
(関係資料はwww.asb.or.jpから入手可能)