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2016年9月15日

金融庁、「平成27事務年度 金融レポート」を公表

金融庁は、9月15日、「平成27事務年度 金融レポート」(以下「金融レポート」という。)を公表した。 金融レポートは、2015年9月に金融庁が公表した「平成27事務年度 金融行政方針」の進捗状況や実績等の評価を取りまとめたもので、(1)「我が国の金融システムの現状」、(2)「金融行政の重点施策に関する進捗・評価」、(3)「金融庁の改革」で構成されている。(2)の主な内容は以下のとおりである。 <金融仲介機能の十分な発揮と健全な金融システムの確保>

  • グローバルに活動する金融機関は、主要行等の海外向け貸出が拡大する中、市場環境の変化を捉えた機動的な与信管理が必要なほか、安定的な外貨調達の確保等が課題。国内外の貸出利鞘が減少する中、貸出規模の拡大による収益確保は困難になり、国債等からの収益確保も難しい状況。
  • 地域金融機関は、金利低下が継続する中、全体として利鞘縮小を融資拡大でカバーできない状況。今後、人口減少等により借入需要の減少が予想される中、担保・保証に依存した単純な貸出業務の収益性はさらに低下するおそれ。

<活力ある資本市場と安定的な資産形成の実現>

  • 少額からの積立・分散投資促進のためのNISAの改善・普及や、効果的な投資教育の提供が必要。
  • 商品開発や販売等に携わる金融機関に対する、真に顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)の徹底が必要。

<IT技術の進展による金融業・市場の変革への戦略的な対応>

  • 金融サービスのイノベーションを通じて、国民にとってより良いサービスの提供が図られることが重要。利用者保護や不正の防止、システムの安定性等の観点から必要な対応を図りつつ、FinTechの動きを、利用者利便や生産性の向上、コスト削減など、我が国金融・経済の発展につなげていくことが必要。
  • サイバー攻撃への対応能力向上に向け、業界横断的な演習等を通じて、金融業界全体のレベルを底上げしていくことが必要。

<国際的な課題への対応>

  • 世界金融危機以降の金融規制改革は、金融システムの強靭性を高める一方で、過度な規制には金融機関の規制回避行動等を通じた歪みの惹起や、成長資金の供給への悪影響等の懸念が存在。
  • 金融庁としては、金融規制改革が経済の持続的な成長と金融システムの安定性の両立を実現できるものとなっているか、全体として最適な規制体系となっているか、金融システムの脅威にフォワードルッキングに取り組んでいるか、について国際的に意見発信中。

(関係資料はwww.fsa.go.jpから入手可能)