解説記事 国内

2017年12月 8日

金融庁、「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン(案)」および「主要行等向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)に係る意見募集を開始

金融庁は、12月8日、「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン(案)」(以下「本ガイドライン案」という。)および「主要行等向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)(以下「監督指針等改正案」という。)を公表し、2018年1月12日を期限としてパブリックコメントに付した。   金融庁は、2019年に予定されている第4次金融活動作業部会(FATF)対日相互審査も踏まえ、官民双方が連携して、マネー・ローンダリングやテロ資金供与(以下「マネロン・テロ資金供与」という。)に利用されない金融システムを確保するための体制強化を図ることが重要であるとの考えのもと、金融機関等の実効的な態勢整備を促すために、マネロン・テロ資金供与等に係るリスク管理の基本的考え方を明らかにするものとして、本ガイドライン案を策定した。   本ガイドライン案は、金融庁による各金融機関等の取組みのモニタリングに当たって、金融当局として、各金融機関等において「対応が求められる事項」「対応が期待される事項」を明確化するとともに、今後の当局としてのモニタリングのあり方等を示すものである。また、監督指針等改正案は、本ガイドライン案の策定に当たって、所要の措置を講ずるものである。  本ガイドライン案に盛り込まれた基本的考え方のうち、金融機関等に求められる取組みは以下のとおり。  1.マネロン・テロ資金供与リスク管理態勢

  • 取り扱う商品・サービス、取引形態、国・地域、顧客の属性等を全社的に把握してマネロン・テロ資金供与リスクを特定・評価しつつ、自らを取り巻く事業環境・経営戦略、リスクの許容度も踏まえたうえで、当該リスクに見合った低減措置を講ずることが求められる。
  • 変化する国際情勢や、これに呼応して進化する他の金融機関等の対応等を踏まえて機動的にリスクに見合った措置を講ずるには、個別の問題事象への対応のみにとどまらず、フォワード・ルッキングに、態勢面の見直しの必要性も含めて幅広い検証を行い、経営陣の関与・理解のもと、組織全体として実効的な管理態勢の構築を行うことが重要である。
  • 管理態勢の構築・維持に当たって、関係法令や本ガイドライン等を遵守することのみを重視し、管理部門を中心として法令違反等の有無のみを形式的にチェックすることとならないよう留意し、関係法令や本ガイドライン等の趣旨を踏まえた実質的な対応を行うことが求められる。

2.経営陣の関与・理解

  • マネロン・テロ資金供与リスクが経営上重大なリスクになり得るとの理解のもと、関連部門等に対応を委ねるのではなく、経営陣が主体的かつ積極的にマネロン・テロ資金供与対策に関与することが不可欠である。
  • マネロン・テロ資金供与対策に関する取組みを全役職員に浸透させるには、業績評価においてマネロン・テロ資金供与対策を勘案するなど、マネロン・テロ資金供与対策に関する経営陣の積極的な姿勢やメッセージを示すことが重要である。
  • 経営陣がマネロン・テロ資金供与リスクを適切に理解したうえで、マネロン・テロ資金供与対策に関する意識を高め、トップダウンによって組織横断的に対応の高度化を推進していくことが重要である。

 3.業界団体や中央機関等の役割

  • わが国金融システム全体の底上げの観点からは、業界団体や中央機関等が、当局とも連携しながら、金融機関等にとって参考とすべき情報や対応事例の共有、態勢構築に関する支援等を行うほか、必要かつ適切な場合には、マネロン・テロ資金供与対策に係るシステムの共同運用の促進、利用者の幅広い理解の促進等も含め、傘下金融機関等による対応の向上に中心的・指導的な役割を果たすことが重要である。
  • 取次・代理等の方法により、中央機関が傘下金融機関等の顧客に係る取引を担っている場合や、業務委託等の方法により、国際的な業務を行っている金融機関等が委託元金融機関等の顧客に係る海外送金等を取り扱っている場合等には、これらの中央機関や金融機関等も必要かつ十分な管理態勢を構築し、リスクベース・アプローチにもとづくマネロン・テロ資金供与対策を講ずることが求められる。

(関係資料はwww.fsa.go.jpから入手可能)