「相続時精算課税制度」を理解するうえでのポイントは、同制度を利用して贈与した分が、相続発生時に相続税の対象額として再計算されるという点。つまり、贈与の際は非課税となっても、将来、相続する額によっては、相続税が発生するということです。
仮に、相続人が1人だとすれば、相続税の基礎控除額は3,600万円ですから、贈与額と相続した資産の合計額がそれを超えれば、原則、相続税は発生することになります。
そのうえで、この制度のメリットを考えれば、やはり早期にまとまった額の資産を贈与することができるということ。上手に活用すれば、贈与税、そして相続税も非課税のまま、子や孫が資金を必要としている時期に合わせての贈与が可能になります。
気をつけるべき点としては、相続時精算課税選択届出書を一度提出すると撤回できず、暦年贈与に戻ることができないことです。相続時精算課税制度は、同じ贈与者からの贈与について、年間110万円の贈与税の非課税枠となる「暦年贈与」との併用が不可となっていますので、この制度を選択した時点で、それ以降、暦年贈与は利用できないことになります(ただし、別の贈与者からの贈与は利用可能)。
また、同制度を利用して贈与により取得した宅地等については、「小規模宅地等の特例」の適用を受けることはできません。この特例は、居住用等の宅地が相続される際、一定の要件を満たしていれば、その評価額を80%減額して税額を算出できるというものです。宅地の評価額が高ければ大きな節税につながりますので、将来、宅地を相続することが想定される場合は、どちらを選択するか、十分検討するべきでしょう。