Q.子の教育資金を祖父母から援助してもらう場合、注意すべき点はありますか?

〈私、悩んでいます〉

「息子が2人います。できれば高校までは公立を希望していたのですが、長男は高校から、次男は中学から私立に通うことになり、貯蓄が大きく減ってしまいました。大学資金が不安で、私の両親に援助してもらうことも考えているのですが、その場合、税金面で注意すべき点はありますか?(女性/45歳)」

ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス

  • 年間110万円までの贈与は原則非課税
  • 教育費が発生したら、その都度贈与することで非課税に
  • 「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」なら事前に一括贈与が可能
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そもそも教育費用は非課税の対象になっている

教育資金は発生する時期や金額が比較的明確なため「準備しやすい資金」とも言われますが、進路によって必要となる金額は大きく違ってきます。ご相談者のように高校、中学から私立に通うことで、想定していた資金が足りなくなるというケースも少なくありません。

このような場合、不足分を祖父母の援助でまかなえれば大助かりでしょう。ただし、そこで気になるのが税金。資金援助はすなわち贈与ですから、贈与税の対象となる可能性があります。そこで、活用できる非課税制度を紹介します。

まずは「暦年贈与」です。1年間(1月1日〜12月31日)に110万円が贈与税の基礎控除額であり、それ以下であれば贈与を受けても、原則、贈与税は発生しません。その使用目的、贈与者、受贈者いずれも限定されず、申告等も不要です。

また、「都度贈与」とは祖父母が孫の教育費や生活費のうち、通常必要と認められるものを、その都度贈与するというもの。例えば、孫の入学金や授業料をその都度負担しても、それは扶養義務の範囲という考えから、これも非課税となります。非課税額の上限は定められていませんが、一般的な金額(大学費用なら400万円前後)を超えない範囲がひとつの目安になります。また、使途を明確にするため、領収書を保管し、できれば手渡しではなく金融機関に振り込むことで、贈与額や贈与日を明確にしておくといいでしょう。

制度の適用は2026年3月末まで

もうひとつが「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」です。30歳未満の受贈者(孫など)が直系尊属(祖父母など)から教育資金の贈与を受けた場合、受贈者1人あたり最大1,500万円までが非課税となります。教育費は入学金、授業料のほか、学校の寮費、通学交通費、修学旅行代や給食費も含まれます。さらに500万円までは進学塾、水泳、英語、ピアノといった習い事にも適用されます。

適用となる受贈者は0〜29歳。ただし、23歳以上は習い事代が非課税の対象外となります。同様に、受贈者側の所得が1,000万円超の場合も対象外となります。

この措置が暦年贈与や都度贈与と大きく異なるのは、事前に一括して贈与を受けることができるということ。銀行や信託銀行などと一定の契約(教育資金口座に係る契約)を締結して専用口座を開設し、受贈者が領収書等を提出することで教育資金をそこから引き出します。

注意点としては、制度の適用が2026年3月末までということ。また、受贈者が30歳に達する(※1)など、教育資金口座に係る契約が終了した場合、その残額は贈与税の課税価格に算入されること、贈与者が亡くなった場合の残額は相続等により取得したものとみなされる(※2)こと等があげられます。
また、2023年度税制改正により、信託等があった日から教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が亡くなった場合、当該贈与者の相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは、受贈者が23歳未満である場合等であっても、残額については、当該受贈者が当該贈与者から相続等により取得したものとみなされること等が措置されました。本改正は、2023年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る相続税について適用されます。
(詳しくは国税庁のウェブサイト等をご確認ください)

なお、暦年贈与、都度贈与、教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置は、それぞれが併用可能です。時期や金額、利用しやすさなどを考慮しながら、上手に組み合わせて活用するとよいでしょう。


(※1)受贈者が30歳に達した時点で在学、教育訓練中であるときは、その期間終了時と40歳の早い日を終了日とする。
(※2)2021年4月1日以後に締結した契約で、受贈者が被相続人の孫(代襲相続人を除く)の場合、相続税額の2割加算が適用。ただし、受贈者が23歳未満、もしくは学校等に在学している場合は、相続等による取得とはみなされない。