Q. 高齢で一人暮らしの親、資産管理が心配です

<私、悩んでいます>

「田舎で一人暮らしの母親は75歳。まだまだ元気とは言え、不安なのが認知症です。とくに資産があるわけではありませんが、貯蓄や土地家屋について、ちゃんと管理できているか、詐欺まがいの話に引っかかりはしないかと心配になってきます。遠方のため、同居はもちろん、頻繁に行き来することも難しいため、どうしたらいいものか……(女性/53歳)」

ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス

  • 親の資産管理への備えならば「成年後見制度」の利用も選択肢のひとつ
  • 第三者が後見人であれば、費用は月額2万円ほど
  • 贈与等の方法と比較して、親と納得する方法を選ぼう
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任意後見制度では後見人に「監督」がつく

親が一人暮らしの場合など、子どもに代わって離れて住む親の資産を守る方法のひとつとして「成年後見制度」があります。

成年後見制度とは、認知症を発症した高齢者や知的障害者、精神障害者などが主に所有する財産で不利益を被らないよう、後見人を選定し、その人を保護、援助しようとする制度で、当事者の状況等によって「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つに分かれます。
法定後見制度は、すでに判断能力が失われているか不十分な状態で、後見人を自分で選ぶことができない場合に利用されます。後見人は家庭裁判所が選任します。対して、任意後見制度はまだ本人に判断能力があり、自らが後見人を選び、当事者間で公正証書にて契約(任意後見契約)するというものです。その際、家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、その監督のもと、後見人は適切な保護・支援をします。

後見人は年金の管理から入院の手続きまで幅広くカバー

後見人にはどんな人がなるのでしょうか。本人の親族ということもありますし、それ以外には、弁護士や司法書士、社会福祉士といった法律・福祉の専門家、あるいは福祉関係の公益法人といった場合もあります。

具体的な後見人の役目ですが、自宅も含めた不動産や預貯金の管理、年金の管理、税金や公共料金の支払いなどの財産管理が主となります。また、要介護となった場合の手続きや介護費用の支払い、入院の手続きや医療費の支払いも行います。一方、食事を作る、掃除をするといった生活面のサポートは行いません。
ただし、任意後見制度は本人の能力が衰えたときの備えです。したがって、後見人の実際の仕事は判断な能力が低下した状態になってからということになります。亡くなるまでそういった状態にならず、契約はしたものの、制度自体は使わなかったというケースも当然あります。

この制度の費用ですが、任意後見制度の場合、公正証書の作成費用が1万5,000円ほど。任意後見人に対しては、身内の場合は無報酬が一般的。第三者である場合、月額2万程度が平均額です。

もちろん、成年後見制度を利用しなくても、親の資産を守る方法はあります。資産を贈与するのもそのひとつ。親とよく相談し、納得いく形を選択してみてください。