Q. 専業主婦がiDeCoを始めるメリットは?

<私、悩んでいます>

専業主婦でも確定拠出年金を利用できるようになったと聞きました。結婚して5年目で、子どもは3歳と1歳の2人。これから教育資金や住宅資金を貯めていかなくてはならないのですが、専業主婦の私が確定拠出年金を始めるメリットはあるのでしょうか?
(30歳/女性)

ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス

  • 所得控除のメリットはないが、運用益が非課税となり、受け取るときも各種控除が適用される
  • 口座管理手数料などのコストにも注意が必要
  • 老後資金づくりが本来の目的。他の資金づくりとのバランスを考えよう
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ほぼすべての人が利用可能となったiDeCo

確定拠出年金は国が支援する、積み立てによる老後資金づくりの制度です。勤務先の企業が従業員のために積み立てる「企業型」と、自分で資金を積み立てる「個人型(愛称「iDeCo[イデコ]」)」があります。以前は個人型を利用できる人は自営業者などに限られていましたが、2017年から、公務員、勤務先に企業年金のある会社員、そして専業主婦も新たに利用可能となりました。

iDeCoを利用するにはまず、自身で金融機関を選択し、専用の口座を開設します。掛け金は月額5,000円から1,000円単位で設定でき、専業主婦の場合は上限2万3,000円。また、掛け金とは別に口座管理手数料、加入時の初期費用、受取時の手数料や、運用商品によっては運用期間中に信託報酬等のコストが発生し、その金額は金融機関によって異なります。運用の仕方によっては、利益よりもコストの方が大きくなってしまう可能性があるので注意しましよう。
実際の運用は、各金融機関がそれぞれに用意している運用商品から選びます。元本が確保される定期預金や個人年金保険のような商品もありますので、リスクを取りたくなければ、そういった商品の選択も可能です。

専業主婦は所得控除のメリットを受けられないが…

iDeCoのメリットのひとつに、積み立て時の掛け金が全額所得控除できるということがありますが、専業主婦で無収入の場合や収入が一定額以下の場合は、そもそも所得税や住民税を払っていませんので、この所得控除のメリットを受けることは出来ません。

では、専業主婦がiDeCoを行うメリットは何でしょうか?
まず、運用益が非課税となり、再投資も可能なため複利効果が得られるという大きなメリットがあります。
また、iDeCoの受給(掛け金の引出し)は、一時金として受け取れば「退職所得控除」、年金(5〜20年の有期年金)として受け取れば「公的年金等控除」が適用となります。前者は退職金、後者は公的年金との合算で税額を計算するため、それらの支給が多い場合は課税される場合がありますが、専業主婦は一般的に退職金はなく、公的年金の額は少ないため、受給時に課税されることなく受け取れる可能性が高いのです。

加えて、今後働く予定があれば、掛け金が全額所得控除になるというメリットも活かすことができます。仮に月2万円積み立てれば年間24万円。この金額が課税対象額から差し引かれるわけですから、所得税が収入の約5%、住民税が約10%の場合で、24万円の15%、つまり3万6,000円が節税できたことになるわけです。

デメリットとしては、掛け金は原則60歳以降でなくては引き出せません。30 歳のときに掛けた資金が手元に戻るのは30年後ということになります。とくにまだ若い夫婦の場合、まずは教育資金、さらには住宅資金も備えなくてはいけません。掛け金の拠出の休止、再開はいつでも可能ですし、金額も1年に1回変更が可能です。ただし、休止中も口座管理手数料などが発生する場合がありますので、絶えずマネープランに合わせた資金配分とコストを意識しておくといいでしょう。