Q.20代で確定拠出年金の利用は早過ぎますか?

<私、悩んでいます>

「将来が漠然と不安です。そこで、老後資金づくりとして確定拠出年金を始めたいと考えています。勤務先には企業型がないので利用は個人型になりますが、まだ20代の私には早過ぎるでしょうか? ちなみに現在は独身ですが、数年後には結婚を予定しています」(28歳/男性)

ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス

  • ライフプランに合わせ、無理のない金額から始める
  • 引出しは60歳以降だが、始めた時点から節税効果が得られる
  • 運用リスクとコストの発生を意識する
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目的は老後資金でも、拠出した金額はすぐに節税効果を生む

老後資金づくりを20代から始めることは、確かに早いと言えるでしょう。老後資金は人生三大資金のひとつですが、一般には教育資金や住宅資金への準備が優先されるからです。特に結婚を予定し、また、子どもを育て、家を購入するライフプランの可能性があるのであれば、それらの準備が先になるでしょう。それよりも後になる老後について、限られた収入の中からより多くの資金を捻出することは得策とは言えません。

では、20代から確定拠出年金(DC)を始めることに意味はないかと言えば、決してそうではありません。老後資金に限らず、ライフプランに係わる資金の準備で重要なのは、いわばバランス。教育資金や住宅資金づくりの負担にならない程度に、少額にとどめておくことが可能なら、老後資金を早い時期から始めることは有利と言えます。さらに、確定拠出年金を通して投資経験を積むことも無駄にはなりません。

確定拠出年金の利点はまだあります。それはさまざまな税金の優遇による節税効果です。とくに注目したいのが、掛け金が全額、所得控除されるという点です。例えば、毎月2万円を拠出すると年間で240,000円。それが課税所得から控除されます。所得税と住民税の合計税率を20%(復興特別所得税は除く)とすると、おおよそ年間で48,000円の節税効果を生みます。

税金が免除されるのですから、これは、その年に同額の利益を得たのと結果的には同じ。そしてこのことは、いつ始めても確実に得られる大きなメリットなのです。

投資商品を積極的に組み入れ、将来のインフレに備えたい

ただし、利用にあたり注意すべき点もあります。まず、原則として拠出した資金は60歳以降でなくては引き出せません。

個人型の確定拠出年金(愛称「iDeCo(イデコ)」)の拠出額は、企業年金のない会社員の場合、月額5000円〜23,000円。この額は年に一度変更ができ、またいつでも停止や再開ができます。したがって、とくに若い世代は、教育資金や住宅資金がかさむ時期など、そのときどきのマネープランに応じて無理のない額に調整することが大切です。

また、確定拠出年金には投資のイメージがありますが、定期預金などの預貯金商品もあり、それを選べば、元本が減るリスクはありません。一方、債券や株式などで組み入れた投資信託で運用すれば、預貯金以上に増えることも、あるいは元本割れをするリスクもあります。

確定拠出年金による老後資金づくりは、本人がどのような商品を選定するかによって大きくその内容が変わります。リスクがあることも十分理解した上で、将来のインフレに備えるのが目的であれば、分散投資(国内外の債券や株式に投資先を分散する)を意識しながら、運用商品を組み入れることは効果的と言えるでしょう。

もうひとつ確定拠出年金を上手に利用するポイントとなるのが、コストを意識することです。個人型の場合、銀行や証券会社、保険会社などの金融機関で専用の口座を開設しますが、その際に年間数千円の「口座管理料」がかかります。さらに、投資信託を選定すれば、信託報酬などの保有コスト(0.1〜数%)も発生します。たとえ少額でも、長期間になればなるほど、運用成績に影響してきます。

これらコストは金融機関によって異なりますので、品揃えとともに、コスト額もチェックすることが金融機関を選ぶ、あるいは変更する際には重要です。